JP2626654B2 - 標的指向性高分子医薬化合物及びその中間体 - Google Patents

標的指向性高分子医薬化合物及びその中間体

Info

Publication number
JP2626654B2
JP2626654B2 JP2085492A JP8549290A JP2626654B2 JP 2626654 B2 JP2626654 B2 JP 2626654B2 JP 2085492 A JP2085492 A JP 2085492A JP 8549290 A JP8549290 A JP 8549290A JP 2626654 B2 JP2626654 B2 JP 2626654B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
drug
targeting
compound
peg
residue
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2085492A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH03287545A (ja
Inventor
靖久 桜井
光夫 岡野
一則 片岡
祥平 井上
昌幸 横山
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Japan Science and Technology Agency
Original Assignee
Japan Science and Technology Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Japan Science and Technology Corp filed Critical Japan Science and Technology Corp
Priority to JP2085492A priority Critical patent/JP2626654B2/ja
Publication of JPH03287545A publication Critical patent/JPH03287545A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP2626654B2 publication Critical patent/JP2626654B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Medicines Containing Antibodies Or Antigens For Use As Internal Diagnostic Agents (AREA)
  • Pharmaceuticals Containing Other Organic And Inorganic Compounds (AREA)
  • Polyamides (AREA)
  • Polyethers (AREA)
  • Saccharide Compounds (AREA)
  • Medicinal Preparation (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は標的指向性高分子医薬化合物及びその中間体
に関するものでる。
更に詳しくは、本発明の第1の目的は親水性セグメン
ト及び薬物を結合せしめた薬理機能セグメントを有する
ブロック(又はグラフト)コポリマーの親水性セグメン
ト以外の部位と標的指向性物質(即ち、生体内の所望部
位又は成分に対して高い親和性を有する物質)とを直接
又は結合鎖を介して結合させてなる標的指向性高分子医
薬化合物を提供することにある。
本発明の第2の目的は親水性セグメントと薬物及び/
又は標的指向性物質を結合する能力のある官能基保有セ
グメントとを有するブロック(又はグラフト)コポリマ
ーからなる標的指向性高分子医薬化合物合成用中間体を
提供することにある。
本発明の標的指向性高分子医薬化合物は分子内に多量
の薬物を安定に結合保有させることが出来、且つその多
量の薬物を生体内の治療部位又は標的に向かって効率的
に到達させる能力を有するものである。
本発明によれば、薬物が疎水性物質の場合でもその疎
水性薬物を多量に結合させた薬理機能セグメントを中心
としてその外側を親水性セグメント即ち親水性高分子鎖
で包囲した状態のミセルを形成して薬物及び標的指向性
物質の結合が安定化され、水中に高濃度で可溶化され、
しかも高分子医薬品の場合問題となる抗原性が殆ど認め
られない優れた特性を有する標的指向性高分子医薬化合
物が提供される。
〔従来の技術〕
低分子薬物と標的指向性物質とを結合させて標的指向
性医薬化合物を製造する際、高分子鎖を中間支持体とし
て両成分を結合させることにより、両成分の結合による
機能低下を防ごうとする試み及び目的とする標的指向性
医薬化合物の水溶性を損なうこと無く多量の薬物を結合
させようとする試みは従来、幾つかなされてきた。
しかしながら、従来の試みで用いられた高分子鎖は単
一成分からなるホモポリマーか、2種の成分を交互又は
順不同に重合させた物であり、それらの高分子鎖を用い
て製造された標的指向性医薬化合物は必ずしも医薬品と
して満足出来るものではなかった。
〔発明が解決しようとする課題〕
従来の高分子鎖を中間支持体として用いて製造された
標的指向性高分子医薬化合物は薬効を上昇させるために
疎水性薬物の担持量を多くすると水溶性が低下する欠点
があった。
本発明の課題は、従来の高分子鎖に代えて新規な構造
の高分子鎖を用いることにより従来の欠点を解消し、薬
物の担持量を多くしても水溶性が低下せず、高い薬効及
び標的指向性を保持する標的指向性高分子医薬化合物を
提供することにある。
本発明者等は上述の目的に合致する新規な構造の高分
子鎖を見出すべく種々研究を重ねた結果、薬物及び標的
指向性物質を係合して薬理機能を発揮するセグメントと
薬物及び標的指向性物が結合していない親水性セグメン
トとを有するブロック(又はグラフト)コポリマーが非
常に優れた特性を有することを見出し本発明を完成し
た。
〔課題を解決するための手段〕
すなわち、本発明は、一般式(I) (式中、lは1〜30、nは5〜400、mは1〜300、xは
0〜300の整数を表し、R1は分子中にm個あり、同一又
は相異なってOH、及び薬物残基から選ばれる残基を表す
が、R1の少なくとも1個以上は薬物残基を表し、R2は標
的指向性物質残基を表し、R3はCH3又はC2H5を表し、A
は直接結合又は結合反応に用いられたカップリング剤に
起因する結合鎖を表す。) で示される標的指向性高分子医薬化合物である。ここ
で、標的指向性物質とは生体内の所望部位又は成分に対
して高い親和性を有する物質をいい、例えば抗体が挙げ
られる。また、薬物としては抗ガン剤、例えばアドリア
マイシンが挙げられ、カップリング剤に起因する結合鎖
としては式(II) −COCH2CH2SSCH2CH2CO− (II) で示される2価の鎖状化合物残基が挙げられ、標的指向
性物質残基R2と結合鎖Aとの結合としてはアミド結合の
ものが挙げられる。
さらに、本発明は、一般式(III) (式中、nは5〜400、mは1〜300、xは零又は1〜30
0の整数を表し、Yは同一又は相異なってOH及び薬物残
基から選ばれる残基を表し、Zは を表し、R3はCH3又はC2H5を表す。) で示されるブロックコポリマー誘導体からなることを特
徴とする標的指向性高分子医薬化合物合成用中間体であ
る。
本発明に於いて、親水性のセグメントとしては、例え
ばポリエチレングリコール,ポリサッカライド,ポリア
クリルアミド,ポリメタクリルアミド,ポリビニルピロ
リドン,ポリビニルアルコール,ポリメタクリル酸エス
テル,ポリアクリル酸エステル,ポリアミノ酸等あるい
はこれらの誘導体が利用出来る。
薬物と結合して薬理機能セグメントを形成する成分と
しては、ポリアスパラギン酸,ポリグルタミン酸,ポリ
リシン,ポリアクリル酸,ポリメタクリル酸,ポリリン
ゴ酸,ポリ乳酸,ポリアルキレンオキシド,長鎖アルコ
ール等あるいはこれらの誘導体が利用出来る。
薬物としては、例えばアドリアマイシン,ダウノマイ
シン,メソトレキセート,マイトマイシンC等の抗ガン
剤,中枢神経系用薬,末梢神経系用薬,アレルギー用
薬,循環器官用薬,呼吸器官用薬,消火器官用薬,ホル
モン剤,代謝性医薬品,抗生物質,化学療法剤等が利用
出来る。
標的指向性物質としては、温血動物又は人間由来のポ
リ(又はモノ)クローナル抗体、レクチン、ポリサッカ
ライド、単糖、トランスフェリン等のような生体内の所
望部位又は成分に対して高い親和性を有する物質が利用
出来る。
標的指向性物質とコポリマーとの結合は、直接又は結
合鎖を介して形成させることが出来る。例えば、2−イ
ミノチオレン,n−サクシニミジル3−(2−ピリジルチ
オ)プロピオネート(SPDP),サクシニミジル4−(P
−マレイミドフェニル)ブチレート等のカップリング剤
を用いるか、還元剤などによって得た−SH基、 などの活性ジスルフィド基、マレイミド基等の間で結合
を形成させることが出来る。
以下に、ポリエチレングリコール由来の親水性セグメ
ント及び薬物として抗ガン剤アドリアマイシンを結合せ
しめたポリアスパラギン酸由来の薬理機能セグメントを
有するブロックコポリマーと人間由来の免疫グロブリン
G(抗体)とをカップリング剤(SPDP)を用いて結合さ
せてなる標的指向性高分子医薬化合物を例にとり、本発
明を詳細に説明する。この標的指向性高分子医薬化合物
の構造概略図は第1図に示すとおりである。
この化合物の合成は、第2図の反応式に示すごとくβ
−ベンジル L−アスパルテートN−カルボン酸無水物
(BLA−NCA)を、片末端メトキシ基等のアルコキシ基、
片末端1級アミノ基のポリエチレングリコール(分子量
250〜18000)を開始剤として重合させ、ポリエチレング
リコールポリ(β−ベンジル L−アスパルテート)ブ
ロックコポリマー(PEG−PBLA)を得、次いでこのPEG−
PELAをアルカリ加水分解してポリエチレングリコール−
ポリアスパラギン酸ブロックコポリマー〔PEG−P(As
p)〕を得る。このPEG−P(Asp)アスパラギン酸残基
の80%がアルカリ加水分解の際にβ−アミド化してい
る。
このPEG−P(Asp)の末端1級アミノ基にカップリン
グ剤(SPDP)を反応させてカップリングの為の官能基で
あるピリジルジオチプロピルオニル基(PDP)を導入
し、(III)式に於けるYがOHの本発明中間体〔PEG−P
(Asp)−PDP〕を得る。この中間体に抗ガン剤アドリア
マイシン(ADRI)と水溶性カルボジイミド(EDC)を加
えることによりアドリアマイシンの1級アミノ基とポリ
アスパラギン酸のカルボキシル基の間にアミド結合を形
成させて(III)式に於けるYが薬物残基の本発明中間
体{PEG−P[Asp(ADR)]−PDP}を得る。
この薬物を導入した中間体をジチオスレイトール(DT
T)で還元し、PDP鎖の−SS−結合を切断して−SHとした
後、あらかじめカップリング剤(SPDP)によってピリジ
ルジチオプロピオニル基を導入してある人間由来の免疫
グロブリンGと反応させ−SS−交換反応によって目的と
する(I)式の本発明標的指向性高分子医薬化合物{PE
G−P[Asp(ADR)]−IgG}を得る。
このようにして合成される本発明化合物のポリアスパ
ラギン酸(P(Asp))部分の分子量は116〜35,000まで
可変であり、また、アドリアマイシンの置換率(アスパ
ラギン酸残基に対して)はP(Asp)の分子量が1900の
場合12〜33mol%、また、10,000の場合3〜37mol%のも
のを得ている。
免疫グロブリンG1分子に対して導入されたアドリアマ
イシン担持ブロックコポリマーの数は平均0.3から25個
までのものを得ている。
合成した本発明化合物はいずれの場合も高いアドリア
マイシン置換率にもかかわらず良好な水溶性を有してお
り、凍結乾燥したり濃縮したり(アドリアマイシン換算
20mg/ml)してもその水溶性は保たれた。
又、本発明化合物は、ブロックコポリマーと抗体との
結合鎖中のジスルフィド結合が還元剤に対し、通常のジ
スルフィド結合に比較して著しく安定化されていた。
これらの理由は、化合物が水溶液中で分子中のアドリ
アマイシン結合部位及びジスルフィド結合部位の囲りを
ポリエチレングリコール鎖で包囲した状態のミセルとし
てミクロに凝集した結果、化合物の水溶性が保持される
と共にジスルフィド結合が還元剤の攻撃から立体的に守
られたためである。
このことは、アドリアマイシンに基づくケイ光がミク
ロ凝集によって消光したことから示された。
〔実施例〕
以下、本発明を更に詳細に説明するために実施例を示
す。なお、以下の説明分中、化合物名又は化合物略記号
の後に付した( )内の数字は本発明化合物の合成手順
を示す第2図に於ける化合物番号を示す。
実施例1 β−ベンジル L−アスパルテート N−カルボン酸
無水物(BLA−NCA)(2)7.21gをN,N′−ジメチルホル
ムアミド(DMF)12mlに溶かし、クロロホルム60mlを加
える。片末端メトキシ基片末端アミノ基のポリエチレン
グリコール(分子量4300)(1)6.00gをクロロホルム6
0mlに溶かしてその溶液をBLA−NCA溶液に加える。70時
間後に反応混合液を2のジエチルエーテルに滴下して
沈澱したポリマーを濾過で回収して、ジエチルエーテル
で洗浄した後に真空で乾燥してポリエチレングリコール
−ポリ(β−ベンジル L−アスパルテート)ブロック
コポリマー(PEG−PBLA)(3)を得る。収量10.09g(8
4%)。
PEG−PBLA(3)10.03gを100mlクロロホルムに溶か
す。水:メタノール:1−プロパノール=1:1:2(体積割
合)に水酸化ナトリウムを0.43N溶かしたアルカリ混合
液をPEG−PBLA溶液に加える。そのアルカリの添加量はP
BLA部分のベンジルエステルの1.5倍当量になるようにし
た。0℃、10分撹拌後、2のジエチルエーテルに滴下
する。沈澱したポリマーを濾別して、20mlの蒸留水に溶
かしてSpectrapor 7透析膜(分子量分画=1000)を用い
て水中で39時間透析する。膜内の溶液を凍結乾燥してポ
リエチレングリコール−ポリアスパラギン酸ブロックコ
ポリマー〔PEG−P(Asp)〕(4a)を得る。収量3.94g
(49%)。
このブロックコポリマー鎖1本当り、17個のアスパラ
ギン酸残基があることがプロトンNMRの測定よりわかっ
た。
PEG−P(Asp)ブロックコポリマー(4a)1.022gをpH
9.5,0.1Mホウ酸ナトリウム緩衝液200mlに溶かす。N−
サクシニミジル3−(2−ピリジルチオ)プロピオネー
ト(SPDP)1.021gを10mlのDMFに溶かしたものを、室温1
0分間隔で等量ずつ2回に分けて(4a)の溶液に加え
た。
2回目の添加から10分後に反応液を蒸留水中で一晩透
析(スペクトラポア7の分子量カット1000の透析膜を使
用)した後、セファデックスG−25のゲルを充填したカ
ラムで蒸留水中でゲル濾過し、凍結乾燥した。収量523.
1mg(収率51%)。
ブロックコポリマーのアミノ基末端に導入した3−
(2−ピリジルジチオ)プロピオニル基(PDP)の定量
は50mMジチオスレイトールで還元した際に放出される2
−ピリジンチオンの343nmの吸収により定量し、20%の
末端にPDPが導入されていることが分かった。
ここで得た〔PEG−P(Asp)−PDP〕ブロックコポリ
マー(4b)523.1mgを0.1Mリン酸緩衝液(pH7.5,0.1M Na
Cl含有)(PBS)5mlに溶かし、これに1,4−ジチオスレ
イトール77.4mgを水1mlに溶かして加え、室温下20分間
反応させて、ブロックコポリマー末端PDP鎖中のS−S
結合を−SHに還元した。
還元反応後、透析(スペクトラポア7,分画分子量1000
の膜を使用,蒸留水中)次いでゲル濾過(セファデック
スG−25,蒸留水中)して低分子物を除いたものをチオ
プロピルセファロース6B(55ml,PBS中)のゲルカラムに
通塔し、−SH末端を有するブロックコポリマーをこれに
固定した。ゲルカラムをPBSで充分洗浄した後、還元剤
の2−メルカプトエタノール20mMを含むPBS 370mlを通
塔し、固定したブロックコポリマー〔PEG−P(Asp)−
末端SH〕を流出させ、凍結乾燥した。
透析(スペクトラポア7,分画分子量1000,蒸留水
中)、次いでゲル濾過(セファデックスG−25,PBS中)
して低分子物を除いて得たブロックコポリマー溶液40ml
に、2,2′−ジピリジルジスルフィド199.8mgをエタノー
ル20mlに溶かして加え、室温で2時間反応させた後透
析、ゲル濾過して精製し、凍結乾燥した。収量31.9mg
(収率6%)。ブロックコポリマー末端へのPDP基の導
入率は前記と同じ方法で定量した結果48%であった。
PEG−P(Asp)−PDP(4b)へアドリアマイシン(AD
R)を導入してPEG−P[Asp(ADR)]−PDP(6)を合
成するため、アドリアマイシン塩酸塩9.5mgをDMF9.5ml
に溶かし、これに1.3倍当量のトリエチルアミンを加え
た。このアドリアマイシン溶液にブロックコポリマー
(4b)12.4mgを蒸留水0.4mlに溶かして加え、これに50m
lの1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)
カルボジイミド(EDC)を加え、0℃で4時間反応させ
た。
さらに20mlのEDCを加えて室温で19時間反応させた。
反応後、0.1Mの酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.5)で3時
間透析(スペクトラポア7,分画分子量1000)し、セファ
デックスG−25でゲル濾過(0.1M酢酸ナトリウム緩衝液
中、pH4.5)として精製した。
得られたPEG−P[Asp(ADR)]−PDP(6)のADR導
入率は485nmの吸収より求めた結果、ポリアスパラギン
酸のカルボキシ基に対し約30当量%であった。
カップリングのための抗体へのPDP基の導入は人間の
イムノグロブリンG(IgG,シグマ社製)35.2mgをPBSに
溶かし、0.45μmのフィルターを通して凝集物を除き、
セファデックスG−25カラムを通して低分子不純物を除
いた後、SPDP(5)20mMを含むエタノール溶液146μ
を加えて、室温で30分間反応させた。反応後ゲル濾過
(セファデックスG−25,PBS中)してIgG−PDP(8)分
画を得た。
PDP基の導入量は前記の方法で求めた結果、IgG1分子
あたり3.5〜5.6であった。
ブロックコポリマー(7){PEG−P[Asp(ADR)]
−末端SH}とIgG−PDP(8)とのカップリングで目的と
するPEG−P[Asp(ADR)]−IgG(9)を得る反応は、
超音波照射を行った場合と行わなかった場合の2通り行
った。
(イ)超音波照射を行わない場合 0.40mgの結合ADRを含むPEG−P[Asp(ADR)]−PDP
(6)をPBS4.9mlに溶解し、100mMのジチオスレイトー
ル水溶液250mlを加えて室温下20分間反応させて、PDP鎖
中の−SS−結合を還元して末端−SH基のあるブロックコ
ポリマー(7)に変換した後、ゲル濾過(セファデック
スG−25,PBS中)して低分子物を除いた。この液にIgG
−PDP(8)(IgG1分子当りPDP鎖5.6個含む)9.3mgをPB
S 9mlに溶かして加え、室温で17時間反応させた。
反応後、反応混合物をゲル濾過(セフアクリルS−20
0,PBS中)により分画し、各分画について、高速液体ク
ロマトグラフィー(HPLC)〔カラム:アサヒパックGS−
520,溶媒:0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.5,0.3M Na
Cl含有)〕で分析した。
ゲル濾過の流出曲線は第3図に示し、HPLCによる分析
チャートは第4図に示した。
第3図の105ml付近に流出する第1のピークは抗体と
反応しなかったPEG−P[Asp(ADR)]−末端SH(7)
のミセルのピークと一致した。第3図の第2のピークは
HPLCによる分析の結果IgGとほぼ同じ分画に流出し、且
つADRに基づく470nmの吸収を示したことから目的とする
本発明の標的指向性高分子医薬化合物PEG−P[Asp(AD
R)]−IgG(9)であることが確認された。
(ロ)超音波照射を行う場合 0.89mgの結合ADRを含むブロックコポリマー(6)をP
BS 5.25mlに溶解し、100mMのジチオスレイトール水溶液
250mlを加えて室温下20分間反応させてPDP鎖中の−SS−
結合を還元して末端−SH基のあるブロックコポリマー
(7)に変換した後ゲル濾過(セファデックスG−25,P
BS中)して低分子物を除いた。
この液にIgG−PDP(8)(IgG1分子当りPDP鎖3.5個含
む)12.6mgをPBS 10mlに溶かして加え、超音波照射(機
種:Valet cell disrupter model UCD 110)を1分間照
射、1分間静置の繰り返しで行いながら、15℃で2時間
反応させた。
反応後、反応混合物をゲル濾過(セフアクリルS−30
0,PBS中)により分画し、各分画についてHPLC〔カラ
ム:アサヒパックGS−520,溶媒:0.1Mリン酸ナトリウム
緩衝液(pH7.5,0.3M NaCl含有)〕で分析した。
ゲル濾過の流出曲線は第5図に示し、HPLCによる分析
チャートは第6図に示した。
ゲル濾過の流出曲線は左に肩を持ったピークを示し、
その前後を5個のフラクション(F1〜F5)に分画して分
析した。F1からF3には目的とするPEG−P[Asp(AD
R)]−IgG(9)が流出し、その後に流出するF4とF5に
は抗体とカップリングしなかったブロックコポリマーPE
G−[Asp(ADR)]−末端SH(7)が低濃度のためミセ
ルを形成すること無く流出した。
超音波照射の反応に及ぼす効果を調べるため、上記
(イ)及び(ロ)で得た各フラクションについて、280n
mと485nm(又は470nm)の吸収からカップリング効果及
び取得した目的物の組成を調べ第1表に示す結果を得
た。
カップリング効率は原料(7)中の全ADRに対する目
的化合物(9)中のADRの比率(%)で示し、組成はADR
/IgG及びPEG−P[Asp(ADR)]/IgGで示した。
第1表の結果から明らかなように、超音波照射を行っ
た方が高いカップリング効果を示した。その理由は、超
音波照射により原料PEG−P[Asp(ADR)]−末端SH
(7)のミセル構造が破壊されてIgGとの反応が起こり
やすくなったためと考えられる。
得られた化合物が目的とするPEG[Asp(ADR)]−IgG
(9)であることを確認するため、(ロ)と同じ条件
で、末端にカップリングのための基を有しないPEG−P
[Asp(ADR)]とIgGとを混合してHPLCで分析した結
果、両成分は明瞭なピークで分離され、PEG−P[Asp
(ADR)]はミセルとして流出し、IgGのピークを示す成
分にはADRに基づく470nmの吸収が認められなかった。こ
のHPLCチャートは第7図に示した。
試験例1(耐還元剤安定性試験) 実施例で合成した本発明化合物PEG−P[Asp(AD
R)]−IgG(9)(ADR)1.87×10-5Mを含むPBS溶液600
μにジチオスレイトール100mMを含むPBS溶液600μ
を加え、これを28℃で30分間放置した場合と超音波照射
(機種:Valet cell disrupter Model UCD 100)を1分
間照射、1分間静置の繰り返しで25℃で35分間反応させ
た場合の2種の反応混合物を試料とし、ゲル濾過型HPLC
〔カラム:アサヒパックGS−520,溶媒:0.1Mリン酸ナト
リウム緩衝液(pH7.5,0.3M NaCl含有)〕で分析した。
その結果、単に放置した試料は、ピークが無処理の場
合と変化せず、IgGの流出体積(と同じ場所)に流出し
た。このことは、ブロックコポリマーと抗体とを結合す
るジスルフィド結合がジチオスレイトールによって還元
されなかったことを示すものである。一方、超音波照射
した試料は一部のジスルフィド結合が切れて抗体から離
れたPEG−P[Asp(ADR)]−末端SHがミセルを形成し
てIgGより先に流出した。
以上のことから、通常のジスルフィド結合が完全に解
離するジチオスレイトールの存在下に於いても、本発明
化合物PEG−P[Asp(ADR)]−IgG(9)中のジスルフ
ィド結合は非常に安定であることが確認された。
なお、この試験に於けるゲル濾過型HPLCのチャートは
第8図に示した。
試験例2(ミセル安定性試験) ADR,PEG−P[Asp(ADR)]及びPEG−P[Asp(AD
R)]−IgGの3種の化合を試料とし、それぞれの試料に
ついてADR濃度が10-6〜10-4Mの範囲の各種濃度の試料溶
液(pH7.4のリン酸等張液中)を調製し、それれの試料
溶液について、ADRに起因する蛍光(励起:471nm,蛍光59
5nm)を測定した結果、PEG鎖の結合した試料溶液はADR
溶液に比較して著しく蛍光強度が弱かった。
次に、上記3種の試料溶液にドデシル硫酸ナトリウム
(SDS)を1%濃度になるように添加した後、上記と同
様に蛍光を測定した結果、いずれの試料溶液も蛍光強度
が著しく増加したが、その強度順位はADR>PEG−P[As
p(ADR)]>PEG−P[Asp(ADR)]−IgGであり、本発
明化合物の蛍光強度が最も弱かった。
以上のことから、本発明化合物は溶液中でADRがPEG鎖
によって包囲された状態のミセルを形成してADRに起因
する蛍光強度が弱くなっており、そのミセルが界面活性
剤(SDS)の添加によって破壊されることによって蛍光
強度が増加したものと考えられる。
又、このミセルの形成が試験例1に於けるジスルフィ
ド結合の安定性をもたらしていることも分かった。
〔発明の効果〕
本発明により、分子内に多量の薬物を結合させても水
溶性が低下せず標的指向性物質を安定な結合で保持して
いる新規な標的指向性高分子医薬化合物及びその合成中
間体が提供された。
本発明の標的指向性高分子医薬化合物は、生体内の所
望部位又は成分に向かって、多量の薬物を効果的に到達
し、且つ抗原性が殆ど認められない優れた特性を有する
ものであり、今後の医療分野において多大の貢献が期待
されるものである。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の標的指向性高分子医薬化合物の構造概
略図、第2図は本発明化合物の合成手順、第3図は本発
明化合物を合成する際のブロックコポリマーと抗体との
カップリング反応を超音波無しで行った反応混合物のゲ
ル濾過の流出曲線、第4図は第3図の流出フラクション
を分析するためのHPLCチャート、第5図はブロックコポ
リマーと抗体とのカップリング反応を超音波照射下に行
った反応混合物のゲル濾過の流出曲線、第6図は第5図
の流出フラクションを分析するためのHPLCチャート、第
7図は抗体IgGとPEG−P[Asp(ADR)]との混合物を分
析するためのHPLCチャート、第8図は本発明化合物の還
元剤に対する安定性を評価するためのHPLCチャート、第
9図は本発明化合物のアドリアマイシンに基づく蛍光強
度と溶液濃度及び界面活性剤(SDS)によるミセルの破
壊有無との関係を類似化合物と比較した図面をそれぞれ
示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 横山 昌幸 東京都品川区東大井5―26―25 (56)参考文献 特開 昭58−79162(JP,A) 特開 昭57−18727(JP,A) 特開 昭51−126281(JP,A) 特開 昭60−168726(JP,A) 特開 昭58−167519(JP,A)

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】一般式(I) (式中、lは1〜30、nは5〜400、mは1〜300、xは
    0〜300の整数を表し、R1は分子中にm個あり、同一又
    は相異なってOH、及び薬物残基から選ばれる残基を表す
    が、R1の少なくとも1個以上は薬物残基を表し、R2は標
    的指向性物質残基を表し、R3はCH3又はC2H5を表し、A
    は直接結合又は結合反応に用いられたカップリング剤に
    起因する結合鎖を表す。) で示される標的指向性高分子医薬化合物。
  2. 【請求項2】標的指向性物質が抗体である請求項1記載
    の標的指向性高分子医薬化合物。
  3. 【請求項3】薬物が抗ガン剤である請求項1又は2記載
    の標的指向性高分子医薬化合物。
  4. 【請求項4】カップリング剤に起因する結合鎖が式(I
    I) −COCH2CH2SSCH2CH2CO− (II) で示される2価の鎖状化合物残基である請求項1〜3の
    いずれかに記載の標的指向性高分子医薬化合物。
  5. 【請求項5】標的指向性物質残基R2と結合鎖Aとの結合
    がアミド結合である請求項1〜4のいずれかに記載の標
    的指向性高分子医薬化合物。
  6. 【請求項6】抗ガン剤がアドリアマイシンである請求項
    3〜5のいずれかに記載の標的指向性高分子医薬化合
    物。
  7. 【請求項7】一般式(III) (式中、nは5〜400、mは1〜300、xは零又は1〜30
    0の整数を表し、Yは同一又は相異なってOH及び薬物残
    基から選ばれる残基を表し、Zは を表し、R3はCH3又はC2H5を表す) で示されるブロックコポリマー誘導体からなることを特
    徴とする標的指向性高分子医薬化合物合成用中間体。
JP2085492A 1990-03-31 1990-03-31 標的指向性高分子医薬化合物及びその中間体 Expired - Fee Related JP2626654B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2085492A JP2626654B2 (ja) 1990-03-31 1990-03-31 標的指向性高分子医薬化合物及びその中間体

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2085492A JP2626654B2 (ja) 1990-03-31 1990-03-31 標的指向性高分子医薬化合物及びその中間体

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH03287545A JPH03287545A (ja) 1991-12-18
JP2626654B2 true JP2626654B2 (ja) 1997-07-02

Family

ID=13860433

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2085492A Expired - Fee Related JP2626654B2 (ja) 1990-03-31 1990-03-31 標的指向性高分子医薬化合物及びその中間体

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2626654B2 (ja)

Families Citing this family (12)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO1995009009A1 (fr) * 1993-09-28 1995-04-06 Hisamitsu Pharmaceutical Co., Inc. Excipient constitue d'acides polyamines pour oligonucleotide
JP3631755B2 (ja) * 1994-03-23 2005-03-23 明治製菓株式会社 ポリオキシエチレン含有脂質二本鎖誘導体
WO1997006202A1 (fr) * 1995-08-10 1997-02-20 Kazunori Kataoka Polymere sequence pourvu de groupes fonctionnels aux deux extremites
JP4039466B2 (ja) * 1995-09-29 2008-01-30 靖久 桜井 新規アンスラサイクリン系化合物誘導体及びそれを含む医薬製剤
DE19636889A1 (de) * 1996-09-11 1998-03-12 Felix Dr Kratz Antineoplastisch wirkende Transferrin- und Albuminkonjugate zytostatischer Verbindungen aus der Gruppe der Anthrazykline, Alkylantien, Antimetabolite und Cisplatin-Analoga und diese enthaltende Arzneimittel
CA2268809A1 (en) * 1996-10-15 1998-04-23 Ebara Corporation Biologically active polymer products
WO1998031392A1 (fr) * 1997-01-17 1998-07-23 Drug Delivery System Institute, Ltd. Medicaments nephrotropiques
JP4535229B2 (ja) * 2003-05-08 2010-09-01 国立大学法人 東京大学 ポリエチレングリコール−ポリカチオンブロック共重合体
WO2004105799A1 (ja) * 2003-05-29 2004-12-09 Toudai Tlo, Ltd. 安定化高分子ミセル
EP2073820A4 (en) * 2006-09-15 2014-07-16 Belrose Pharma Inc TARGETED POLYMER PRODRUGS WITH MULTIFUNCTIONAL CONNECTORS
JP4582821B2 (ja) * 2009-02-13 2010-11-17 国立大学法人 東京大学 カチオン性のポリ(アミノ酸)およびその使用
JP4655298B1 (ja) 2010-02-23 2011-03-23 ナノキャリア株式会社 短鎖のカチオン性ポリアミノ酸およびその使用

Family Cites Families (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS51126281A (en) * 1975-02-04 1976-11-04 Searle & Co Cytootoxic substance
JPS5718727A (en) * 1980-07-07 1982-01-30 Teijin Ltd Reactive polymer and its preparation
US4434150A (en) * 1981-10-19 1984-02-28 Ortho Diagnostic Systems, Inc. Immunological reagents employing polymeric backbone possessing reactive functional groups
JPS58167519A (ja) * 1982-03-30 1983-10-03 Teijin Ltd 細胞毒性複合体及びその製造法
JPS60168726A (ja) * 1984-02-13 1985-09-02 Sumitomo Chem Co Ltd 細胞毒性物質を結合した反応性高分子およびその製造法

Also Published As

Publication number Publication date
JPH03287545A (ja) 1991-12-18

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Yokoyama et al. Molecular design for missile drug: synthesis of adriamycin conjugated with immunoglobulin G using poly (ethylene glycol)‐block‐poly (aspartic acid) as intermediate carrier
US11446238B2 (en) Injectable dendrimer hydrogel nanoparticles
JP3066437B2 (ja) 脂質−ポリマー結合体およびリポソーム
JP2517760B2 (ja) 水溶性高分子化医薬製剤
JP3310000B2 (ja) 水溶性高分子抗癌剤及び薬物担持用担体
JP2626654B2 (ja) 標的指向性高分子医薬化合物及びその中間体
Yokoyama et al. Preparation of micelle-forming polymer-drug conjugates
JP5909755B2 (ja) 非血液凝固タンパク質の糖ポリシアル酸化
KR101759300B1 (ko) 비혈액 응고 단백질의 글리코폴리시알화
JP4332507B2 (ja) 医薬組成物
JP5349318B2 (ja) ステロイド類の高分子結合体
JP2694923B2 (ja) 水溶性高分子化医薬製剤
JP2002506087A (ja) 近位の反応性基を持つポリ(エチレングリコール)誘導体
JP6208269B2 (ja) 非血液凝固タンパク質の糖ポリシアル酸化
JP2001525470A (ja) タンパク修飾のためのヘテロ官能化星形ポリ(エチレングリコール)
JP4422018B2 (ja) ミセルアセンブリ
JPH05117385A (ja) ブロツク共重合体の製造法、ブロツク共重合体及び水溶性高分子抗癌剤
KR20040029359A (ko) 약물 전달을 위한 양친매성 별모양 거대분자
JPH0769900A (ja) 水溶性抗癌剤
US20030103934A1 (en) Drugs having long-term retention in target tissue
CZ372197A3 (cs) Kunjugáty, způsob jejich přípravy a farmaceutické prostředky, které je obsahují
CA2121990A1 (en) Antibody-drug conjugates
KR20050024317A (ko) 미셀 조립체

Legal Events

Date Code Title Description
R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees