JP2623785B2 - 磁気ディスク - Google Patents

磁気ディスク

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JP2623785B2
JP2623785B2 JP28132288A JP28132288A JP2623785B2 JP 2623785 B2 JP2623785 B2 JP 2623785B2 JP 28132288 A JP28132288 A JP 28132288A JP 28132288 A JP28132288 A JP 28132288A JP 2623785 B2 JP2623785 B2 JP 2623785B2
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【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は磁気ディスクに関し、さらに詳しくは基体と
の密着性に優れ、かつ硬度が高く、耐摩耗性と潤滑性と
を兼備えた表面保護膜を有する磁気ディスクに関する。
[従来の技術] 磁気ディスクや磁気ヘッドは、磁気ディスク装置に組
込み、コンピュータ端末の情報記憶装置として広く用い
られている。
このうち磁気ディスクは、アルミニウム等の金属ない
しはプラスチック等の基板上に、フェライトや鉄、コバ
ルト、ニッケルないしはこれらの化合物、またはネオジ
ミウム、ガドリニウム、テルビウム等の希土類金属や、
これらからなる磁性体を塗布法やスパッタ法等により薄
い膜状に付着させて磁気記録媒体としたものが用いられ
ている。
磁気ヘッドは種々の構造があるが、例えばアルミニウ
ム粉末と炭化チタンとの混合粉末を板状に成形焼結した
焼結基板上に、薄膜状でコイルやヨークを形成する薄膜
磁気ヘッドが高密度磁気記録ヘッドとして採用されつつ
ある。この磁気ヘッドは、記録媒体に書込まれた磁化の
向きに応じた磁束の変化を信号として取出すもので、可
能な限り磁気ディスク面に近づけて使用されるものであ
る。この時、磁気エィスクは回転と停止を頻繁に繰返
し、その結果、磁気ヘッドと磁気ディスク面は互いに接
触、摩擦を繰返す。このため、磁気ディスクの表面に発
生する傷等から記録媒体を保護するための保護膜を必要
とする。
保護膜の備えるべき要点は、耐摩耗性に優れているこ
と、基板ないしは下地との密着性が高いこと、表面の潤
滑性に優れていること等が挙げられる。膜の硬度は耐摩
耗性の評価に用いることができ、硬度が高いほど耐摩耗
性に優れている。密着性は、磁気ヘッドの接触時あるい
は摩擦時に保護膜が剥離しないために重要で、磁気ディ
スク媒体の作製方法によってその表面性状が異なるため
に、媒体の表面性状にあった保護膜材料および作製方法
を選択することが必要である。潤滑性は磁気ヘッドと磁
気ディスク媒体との摩擦で生ずるトルクを小さくし、磁
気ディスクの高速回転動作の安定性や信頼性を保つため
に重要である。
従来この保護膜としては、厚み800Å程度の二酸化珪
素(SiO2)やアルミナ(Al2O3)等の酸化物や、窒化珪
素(Si3N4)ないしはカーボン膜等が用いられている。S
iO2やAl2O3は通常シリコンやアルミニウムの有機金属化
合物を溶媒中に溶解したものをコーティング塗布し、乾
燥後熱処理する方法や、アルゴンと酸素等の混合ガス中
でスパッタリングするか、ないしは蒸着法で作られる。
カーボン膜は、特開昭52−90281号公報等に記載され
ているような炭素電極を用いた放電によって作られる炭
素イオンビーム蒸着法、ないしは1980年発行のジャーナ
ル・オブ・ノンクリスタリン・ソリッド誌(Journal of
Non Crystalline Solids),第35および36巻,435頁に
記載されているような炭素の蒸発付着等の方法で作られ
ていた。
磁気ディスク表面に炭素を主成分とする被膜を設けた
例としては、例えば特願昭52−58140号にみられるよう
に、磁性記録媒体の無い部分に炭素を主成分とする被膜
を設けたり、磁気ヘッドとの衝突摩擦の生じやすい領域
に被膜を厚くし、記憶領域ではその被膜を薄く設けた構
成のものもある。この時、被膜の厚みは500〜1000Åの
記憶領域に、1000〜10000Åを磁気ヘッドが停止する領
域に設けていた。
近年の高度に発達した情報処理技術は、ますます大容
量の情報記録技術を必要としており、これに伴って高密
度磁気記録媒体およびその表面保護膜技術は重要な位置
を占めている。特に保護膜技術は一層薄膜化し、100Å
以下の厚みを有するものであることが要望されている。
[発明が解決しようとする課題] しかしながら、上記従来の保護膜材料は、十分な硬
度、密着性、耐摩耗性、潤滑性を有しておらず、例えば
ビッカース硬度の値はSiO2保護膜で、2000Kg/mm2、アル
ミナで300Kg/mm2であり、また、スパッタ法によるカー
ボン膜あるいは窒化珪素で3000Kg/mm2程度で密着性も良
好とはいえなかった。例えば磁気ヘッドを約10g程度の
荷重で膜表面に押付け、摩擦による傷の発生を調べる試
験方法では、500Km程度の走行距離以内で摩耗傷が発生
してしまうという問題があった。
また、保護膜の厚みも500Å程度が最小厚みで、これ
以下の膜厚では、その硬度、耐摩耗性や耐腐食性は格段
に低下してしまう欠陥を持っていた。このため、特願昭
52−58140号にみられるような特殊の構造とする必要が
生じ、加工技術上製造コストが高くなる問題点もあっ
た。
本発明は以上述べたような従来の欠点を改善し、高硬
度で、特にCo−Ni−P系の磁気記録媒体上に付着せしめ
た時、耐摩耗性および基体との密着性に優れ、かつ潤滑
性も良好な表面保護膜を有する磁気ディスクを提供する
ことを目的とする。
[課題を解決するための手段] 本発明は、表面に保護膜が形成された磁気ディスクに
おいて、保護膜が、磁気ディスク基体上に形成された燐
ドープしたシリコン被膜と、該シリコン被膜上に形成さ
れた水素、シリコンおよびフッ素を含有する硬質非晶質
炭素膜とからなることを特徴とする磁気ディスクであ
る。
本発明における磁気ディスクは、その保護膜として、
燐(P)ドープしたシリコン被膜層と、水素、シリコン
およびフッ素を含有する硬質非晶質炭素膜層の多層構造
を用いることによって、記録媒体との密着性に優れ、か
つ硬度が高く、耐摩耗性と、潤滑性に優れた保護膜が形
成されていることをその要旨とする。
本発明において、燐ドープシリコン被膜中の燐含有量
は、100原子ppm〜1原子%であることが好ましい。この
範囲外となると、基体との密着性が悪くなる場合があ
る。また、最適の耐摩耗性を有するためには、硬質非晶
質炭素膜中の水素、シリコンおよびフッ素の含有量は、
それぞれ10〜30原子%、100原子ppm〜0.1原子%および5
00〜1000原子ppmであることが好ましい。なお、上記元
素中、フッ素の含有量が上記範囲外の場合には、摩擦係
数が大きくなり、潤滑性も悪くなりやすい。
第1図は本発明の基本的構成を示す磁気ディスクの平
面図(第1図(a))およびX−X′線による縦断面図
(第1図(b))である。同図に基づいて本発明を説明
すると、磁気ディスク11は、基板12の表面に設けられた
磁気媒体層13上に、ほぼ全面にわたって、リンドープ・
シリコン被膜14を設け、その上に更に水素、シリコンお
よびフッ素を含有する硬質非晶質炭素膜15を設けたもの
である。基板12としては、有機フィルムや、アルミニウ
ム等の金属ないしは合金を用いることが可能であり、磁
気記録媒体層13を保持できるものであれば特に材質は問
題とならない。磁気記録媒体層13の厚みは、通常10μm
ないしはそれ以下の厚みとし、記録された情報を保持す
るために必要な厚みとされるものである。
リンドープ・シリコン被膜14と硬質非晶質炭素膜15を
両者併せて保護膜と称する。保護膜の厚みは可能な限り
薄いことが望ましいことはいうまでもない。リンドープ
・シリコン被膜14を形成する方法は、均質な被膜が形成
される方法であれば特にその作製方法が制限されるもの
ではない。蒸着やスパッタあるいはシリコン化合物、例
えばシラン(SiH4)の熱分解ないしはプラズマ気相化学
析出法等も使用できる。磁気記録媒体層13とシリコン被
膜14との密着性の良好な手法としては、プラズマを用い
る手法が好ましい。
硬質非晶質炭素膜15は、例えば原料ガスとして水素で
希釈した炭化水素ガスを用い、シリコンおよびフッ素
は、シラン(SiH4)、フッ化炭素(CF4)等の形でガス
状に混合させた混合気体を用いた直流グロー放電プラズ
マ気相合成法によって成膜することができる。硬質非晶
質炭素膜15を直流グロー放電プラズマ気相合成法によっ
て成膜した場合は、均一性に優れ、かつ表面平坦性の極
めて良好な膜が形成できるので、この方法は特に望まし
いものである。
[作用] 従来の炭素を主成分とする保護膜においては、特願昭
52−58140号に見られる如く、記録媒体に直接付着させ
て用いているが、この方法では先に述べたように密着性
が悪く、また付着させた炭素膜の均一性も良好とは言え
なかった。この原因は、詳細については不明の点もある
が、炭素膜と記録媒体間の結合力が関係していると考え
られ、二酸化珪素(SiO2)やアルミナ(Al2O3)等の膜
をシリコン被膜の代わりに用いても同様の事態が発生
し、密着性に問題がある。
通常メタン等の炭化水素と水素の混合ガスを直流グロ
ー放電させることによって得られる膜は非晶質で、約20
%以上の水素を含有している。水素は炭素原子のダング
リングボンドの部分に入り、炭素の結合を閉じることに
よって非晶質状態を安定化させている構造とされてい
る。
本発明者らは、このような非晶質膜の高硬度化と潤滑
性の良好な材料を得るために、種々の添加元素の添加効
果について、炭素原子のタングリングボンドの一部を水
素以外の金属元素または非金属元素で閉じることを意図
して鋭意研究を進めた結果、特にCo−Ni−P系の磁気記
録媒体上で密着性の向上と高硬度化と潤滑性に効果的
で、かつ表面平坦性に優れた膜材料として、リンドープ
したシリコン被膜上に、シリコンおよびフッ素を添加し
た非晶質炭素膜を形成することで所望の性能をもつ磁気
ディスク保護膜が得られることを見出した。
このシリコンおよびフッ素原子の添加による密着性や
潤滑性の向上と高硬度化のメカニジムについては、シリ
コンあるいはフッ素原子と炭素との結合や基板媒体元素
と保護膜界面での化学結合が形成されることによってい
るものと考えられる。即ち、Co−Ni−P系磁気記録媒体
とリンドープ・シリコン被膜の界面、およびシリコン被
膜と硬質非晶質炭素膜との界面において何らかの化学結
合力が働き、例えばシリコンカーバイトないしはその不
定比化合物SiXC等が生成し、薄膜の密着性をよくする働
きを生じさせているものと考えられる。実際、硬質非生
質炭素膜とシリコン層の界面にSiXCのようなシリコンと
炭素との合金層が形成されている場合に良好な結果が得
られやすかった。
また硬質非晶質炭素膜の成膜を直流グロー放電プラズ
マ気相合成法によって行った場合には、主放電部分から
離れた位置でのプラズマを利用するため、基板付近の電
解強度が最適の値に制御でき、イオン衝撃等による基板
の損傷や付着した膜のエッチング等の問題がなく、磁気
ディスク保護膜としても実用可能な表面平坦性の極めて
良好な膜が生成でき、また均一性にも優れたものが得ら
れる。
[実施例] 次に本発明の実施例について図面を参照して詳細に説
明する。
本実施例の磁気ディスクの作製には、まずアルミニウ
ム合金基板上にCo−Ni−P系の磁性媒体を成膜した上
に、マグネトロンスパッタ法で約80Åのリンドープ・シ
リコン被膜を形成した。次に硬質非晶質炭素膜の合成に
は第2図に示すような直流グロー放電プラズマ気相合成
装置を用いた。
第2図において、真空反応槽21内に設置した基板支持
台22上に基板25を設置し、直流電源23によって、基板支
持台22の側面に設置した電極24との間に直流電圧を印加
できるようにする。真空反応槽21内は排気装置26によっ
て排気し、0.1Torrから50Torr程度の真空度に保持す
る。原料ガスは、ボンベ28a〜28d内に充填したものをガ
ス供給口27を通して、真空反応槽21内に導入する。側面
に設置した電極24には正、および基板支持台22側は負の
電位となるようにして上記圧力範囲にてグロー放電を発
生させる。最も強いグロー放電は側面電極24に最も近い
部分29で発生するが、上記のような配置とすることで基
板上に弱電解のプラズマガスを表面付近にほぼ均一な厚
みに作ることができる。
直流グロー放電は基体を設置していない側の電極を正
極として数百ボルトの電圧を印加した。放電直流密度は
0.1〜1mA/cm2とした。反応ガスはメタンを用い、水素ガ
スによって1体積%〜5体積%になるように流量で制御
した。シリコンは水素で2体積%に希釈したシランガス
を用いた。フッ素は同じく水素ガスで1体積%に希釈し
たフッ化炭素(CF4)を用いた。圧力は0.1〜50Torr、例
えば1〜10Torrの範囲とし、基体の温度はほぼ室温と
し、約5分間反応させた。
混合ガスは、上記の基板上に直流グロー放電によって
発生した弱電界プラズマガス中で、励起分解やイオン化
を起し、直流電界中で加速を受けて基板表面に付着し、
添加元素を均一に含有した非晶質炭素状態の保護膜とな
る。
この結果、得られた膜は厚み100〜1000Åで、均一な
干渉色を呈しており、表面平坦性に優れた膜であること
を示していた。膜が非晶質であることは、透過電子顕微
鏡で確認した。炭素,水素,シリコン,リンおよびフッ
素はイオンマイクロアナライザー,ラザフォード後方散
乱法,プロトンリコイル検出法等によって含有量を評価
した。
非晶質炭素膜中の含有量が10原子%から30原子%、シ
リコンが100原子ppm〜0.1原子%、フッ素が500〜1000原
子ppmの磁気ディスクについて膜硬度を評価したとこ
ろ、ビッカース硬度で8000〜11000Kg/mm2が得られた。
この値は従来の非晶質炭素膜の2〜3倍の値で、しか
も基体のCo−Ni−P系の磁気記録媒体上での密着性の高
い膜であった。
本実施例で得られた磁気ディスクの耐摩耗性は以下に
述べる磁気ヘッドと磁気ディスクの接触摩擦試験法で評
価した。即ち、磁気ヘッドとしてアルミニウムと炭化チ
タンからなる硬度HV=4000Kg/mm2の焼結体基板を加工し
て作製し、磁気ディスク表面の保護膜上に荷重約60gで
押付け、次に磁気ディスクを磁気ヘッドが浮上するまで
高速回転させ、浮上後回転を停止し、再びヘッドをディ
スク面に接触させることを繰返すいわゆるコンタクトス
タートストップ(CSS)試験法では、10万回後も摩耗痕
跡が発生しなかった。
[発明の効果] 以上説明したように、本発明の磁気ディスクは極めて
硬度が高く、かつ耐摩耗性および記録媒体との密着性に
優れていると共に、潤滑性も良好な保護膜を有してお
り、実用上極めて有益である。
また、硬質非晶質炭素膜中に含有させる金属元素また
は非金属元素の種類および/または量によって基体との
密着性も制御できるので、各種の基体に対しても応用が
可能である等の効果を有する。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の磁気ディスクを示したもので、第1図
(a)はその平面図、第1図(b)は(a)におけるX
−X′線による断面図、第2図は本発明の磁気ディスク
の作製に用いられる装置の一例の概略構成図である。 11……磁気ディスク、12,25……基板 13……磁気記録媒体層 14……リンドープ・シリコン被膜 15……硬質非晶質炭素膜 21……真空反応槽、22……基板支持台 23……直流電源、24……電極 26……排気装置、27……ガス供給口 28a〜28d……ボンベ、29……主放電部

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】表面に保護膜が形成された磁気ディスクに
    おいて、保護膜が、磁気ディスク基体上に形成された燐
    ドープしたシリコン被膜と、該シリコン被膜上に形成さ
    れた水素、シリコンおよびフッ素を含有する硬質非晶質
    炭素膜とからなることを特徴とする磁気ディスク。
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