JP2619879B2 - 4輪駆動車用動力伝達装置 - Google Patents

4輪駆動車用動力伝達装置

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JP2619879B2
JP2619879B2 JP62245319A JP24531987A JP2619879B2 JP 2619879 B2 JP2619879 B2 JP 2619879B2 JP 62245319 A JP62245319 A JP 62245319A JP 24531987 A JP24531987 A JP 24531987A JP 2619879 B2 JP2619879 B2 JP 2619879B2
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雅晴 田中
耕治郎 倉持
泰治 中村
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Description

【発明の詳細な説明】 (イ) 産業上の利用分野 本発明は、センターディファレンシャル装置を有する
4輪駆動車用動力伝達装置に係り、詳しくは車検等の検
査時に該センターディファレンシャル装置の差動を機械
的にロックするロック機構に関する。
(ロ) 従来の技術 一般に、4輪駆動車用動力伝達装置は、それがパート
タイム方式である場合は2輪駆動状態と4輪駆動状態の
切換え操作を、またフルタイム方式である場合はセンタ
ーディファレンシャル装置を作動又は解除する操作を必
要とし、運転者は路面状態及びコーナ曲率等に対応して
上述操作を必要とし、4輪駆動の特性を充分に発揮する
には高いドライビングテクニックを必要としている。
そこで、上述操作を必要としないものとして、湿式多
板クラッチ方式の4輪駆動車用動力伝達装置が案出され
ている。
湿式多板クラッチ方式は、パートタイム方式の4輪駆
動車用動力伝達装置例えば前輪駆動を基本とした4輪駆
動車用動力伝達装置と自動変速機とを組合わせ、ライン
圧により圧着される湿式多板クラッチを介して後輪側に
動力伝達するものであり、これによりタイトコーナー時
には該クラッチを滑らせて前後車輪の回転差を吸収しよ
うとするものである。
(ハ) 発明が解決しようとする問題点 前記パートタイムによる多板クラッチ方式は、該クラ
ッチが動力伝達用であることに起因して、トルク容量を
大きいものを必要とし、このため、前述クラッチ滑りに
よる前後車輪の回転差吸収が充分でないため、本出願人
は、フルタイムによる湿式多板クラッチ方式を提案し
た。
該フルタイム多板クラッチ方式による4輪駆動車用動
力伝達装置は、センターディファレンシャル装置の差動
を制御する差動制御装置を湿式多板クラッチ及び油圧ア
クチュエータにて構成し、該油圧アクチュエータにライ
ン圧又は該ライン圧を所定割合で減圧した油圧を常時供
給し、多板クラッチを所定圧着力にて接続して、前後車
輪の回転差を該多板クラッチがスリップすることにより
吸収しつつ、センターディファレンシャル装置にて前後
車輪にトルク分配する。
ところで、上述した湿式多板クラッチを備えたフルタ
イム方式の4輪駆動車用動力伝達装置を搭載した車輌を
車検等で検査する際、現行では車輌を2輪駆動の状態で
トルクを取出す検査装置が一般的であるため、センター
ディファレンシャル装置による差動を作用した状態では
検査を行うことができない。
そこで、センターディファレンシャル装置をロックす
ることが考えられるが、該デフロック機構は車検等の検
査時のみ使用されるものであり、通常の走行状態では使
用されることがないため、デフロック機構の占有するス
ペースを必要最小限に抑えることが好ましい。
本発明は、デフロック機構をコンパクトに構成すると
共に他の部品と干渉しない位置に配置して、該デフロッ
ク機構を備えた4輪駆動車用動力伝達装置の自動車への
搭載性能を維持することを目的とするものである。
(ニ) 問題を解決するための手段 本発明は、上述事情に鑑みなされたものであって、入
力ギヤマウントケース(6)を回転自在に支持・収納す
る支持ケース(9)と、リングギヤマウントケース(1
6)を回転自在に支持・収納しかつ前記支持ケースに固
定されて一体となるトランスファーケース(13)と、を
備え、フロントディファレンシャル装置を前記入力ギヤ
マウントケース(6)に収納し、かつセンターディファ
レンシャル装置(2)を前記リングギヤマウントケース
(16)に収納し、前記入力ギヤマウントケース(6)に
入力したトルクが、前記センターディファレンシャル装
置のデフキャリヤ(2c)に伝達されることにより両サイ
ドギヤ(2a)(2b)を介してフロントディファレンシャ
ル装置(3)及びリヤディファレンシャル装置に分岐し
て伝達されてなる4輪駆動車用動力伝達装置(5)にお
いて、 前記センターディファレンシャル装置(2)の差動を
制御する、湿式摩擦材クラッチ(26)及び油圧アクチュ
エータ(27)からなる差動制御装置(10)を前記入力ギ
ヤマウントケース(6)内に配置し、 前記入力ギヤマウントケース(6)に形成したスリー
ブ部(6b)及び前記リングギヤマウントケース(16)に
形成したスリーブ部(16a′)を同軸状に隣接して配置
し、 前記トランスファーケース(13)の収納空間は、前記
センターディファレンシャル装置(2)を収納するリン
グギヤマウントケース(16)部分が膨径すると共に、前
記両スリーブ部(6b)(16a′)を収納する部分が前記
リングギヤマウントケース部分及び前記支持ケース
(9)の入力ギヤマウントケース(6)を収納する部分
に比して小径からなり、 前記入力ギヤマウントケースのスリーブ部(6b)は、
その内周面に前記センターディファレンシャル装置のデ
フキャリヤ(2c)から延びている連結ボス部(2c′)に
連結する連結部(80)を有すると共に、その外周面にス
プライン等の第1の係合部(50a)を有し、 前記リングギヤマウントケースのスリーブ部(16
a′)は、その内周面を前記連結ボス部(2c′)に回転
自在に被嵌すると共に、その外周面にスプライン等の第
2の係合部(51)を形成してなり、 前記トランスファーケース(13)の小径部分に、その
内周面にスプライン等の係合部(22b,22c)を形成した
スライド継手(22)を配置し、 該スライド継手は、前記入力ギヤマウントケース
(6)とリングギヤマウントケース(16)の両スリーブ
部(6b)(16a′)間で自在に摺動して該スライド継手
の係合部(22b,22c)を前記第1及び第2の係合部(50
a)(51)の両方又はいずれか一方のみに係合してこれ
ら両マウントケースを連結又は解除し得るように嵌合さ
れ、 該スライド継手の位置の切換えにより、前記入力ギヤ
マウントケース(6)とリングギヤマウントケース(1
6)を連結して、前記センターディファレンシャル装置
(2)の差動を機械的にロックするように構成したこと
を特徴とする、 4輪駆動車用動力伝達装置にある。
(ホ) 作用 以上構成に基づき、車輌の通常使用時には、スライド
継手(22)が解放位置にあってセンターディファレンシ
ャル装置(2)が差動制御装置(10)によりその差動を
制御されながら、入力ギヤマウントケース(6)に入力
したトルクはセンターディファレンシャル装置(2)に
伝達され、更に該ディファレンシャル装置(2)にてフ
ロントディファレンシャル装置(3)とリヤディファレ
ンシャル装置に分岐して伝達される。
一方、車検等により車輌を検査する際には、作業者が
所定操作にてスライド継手(22)を摺動してその位置を
ロック位置に切換える。これにより、入力ギヤマウント
ケース(6)のスリーブ部(6b)に形成した係合部(50
a)とリングギヤマウントケース(16)のスリーブ部(1
6a′)に形成した係合部(51)とがスライド継手(22)
の係合部(22b,22c)にて連結される。従って、入力ギ
ヤマウントケース(6)及びリングギヤマウントケース
(16)が直結されるため、センターディファレンシャル
装置(2)の差動が規制される。この状態において、プ
ロペラシャフトを外す等して前輪のみを回転して検査を
行う。
(ヘ) 実施例 以下、図面に沿って本発明の実施例を説明する。
第4図に示すように、フルタイム方式の横置き前エン
ジン式4輪駆動車用動力伝達装置5は、図示しないエン
ジンからトルクコンバータ及び自動変速機を介して動力
伝達される入力ギヤ1を有しており、該入力ギヤ1はギ
ヤマウントケース6に固定されている。該マウントケー
ス6は、分割ケース片からなると共にボルト12により入
力ギヤ1と共締めされており、かつ支持ケース9にテー
パードローラベアリング7a,7bにより支持され、そして
その内部に、フロントディファレンシャル装置3及び差
動制御装置10が収納されている。更に、フロントディフ
ァレンシャル装置3は、マウントケース6内に後に詳述
する2個のニードルベアリング11a,11bにより回転自在
に支持されているフロントデフケース3cを有しており、
該デフケース3cはピニオン3pを支持するピニオン軸3dを
縦方向に延びて回転自在に支持してキャリヤを構成して
おり、また左右サイドギヤ3a,3bが左右方向に延びて回
転自在に支持されており、そして各サイドギヤ3a,3bに
はそれぞれ左右フロントアクスル8l,8rがそれぞれ動力
伝達可能に連結されている。
また、前記入力ギヤマウントケース6の右側、即ち、
エンジンの後方に左右二分割可能なトランスファーケー
ス13が一体に組付けられていて、このトランスファーケ
ース13内に入力ギヤマウントケース6、フロントディフ
ァレンシャル装置3と同軸的にトランスファー部15が組
付けられている。該トランスファー部15はリングギヤマ
ウントケース16を有しており、該リングギヤマウントケ
ース16は左右二分割可能であって、ハイポイドギヤから
なる後輪駆動用のリングギヤ17を一体的に支承している
と共に、トランスファーケース13に一対のテーパードロ
ーラベアリング19,19を介して回転可能に支持されてい
る。そして、ギヤ17にはドリブンピニオンシャフト20に
形成されたハイポイドギヤからなるギヤ21が常時噛合し
ており、該ドリブンピニオンシャフト20はユニバーサル
ジョイント24、図示されていない公知のプロペラシャフ
ト及びリヤディファレンシャル装置を介して左右リヤア
クスル軸に動力伝達可能に連結されている。そして、リ
ングギヤマウントケース16内にはセンターディファレン
シャル装置2が配置されており、センターディファレン
シャル装置2は先端が開放状態になっているデフキャリ
ア2cを備えている。更に、該デフキャリア2cは入力ギヤ
マウントケース6から延びているスリーブ部6bに連結さ
れていると共に、連結ボス部2c′の反対側が開口して開
放端になっており、かつ該開放端部分及び連結ボス部2
c′にニードルベアリング23,23を介在してリングギヤマ
ウントケース16に回転自在に支持されている。また、該
デフキャリア2cにはピニオン2pを支持するピニオン軸2d
が取付けられており、右方のサイドギヤ2bがリングギヤ
マウントケース16に直接スプライン結合しており、また
左方のサイドギヤ2aが、デフキャリヤ連結ボス部2c′内
を嵌挿しかつ右フロントアクスル軸8rに被嵌しているス
リーブ部3c1′を介してフロントディファレンシャル装
置3のデフケース3cに連結している。そして、前記トラ
ンスファーケース13の収納空間は、前記センターディフ
ァレンシャル装置2を収納するリングギヤマウントケー
ス部分が膨径すると共に、入力ギヤマウントケース6か
ら延びているスリーブ部6b及びリングギヤマウントケー
ス16から延びているスリーブ部16a′を収納する部分が
前記リングギヤマウントケース部分及び支持ケース9の
入力ギヤマウントケース6を収納する部分に比して小径
からなっている。
また、入力ギヤマウントケース6のスリーブ部6bの先
端外周面には、第1図に示すように、大径部50a及び小
径部50bからなる段差状にスプラインが形成されてお
り、かつその内周面には前記連結ボス部2c′と連結する
スプライン80が形成されている。また、左右に2分割さ
れ得るリングギヤマウントケース16の一方16aに形成し
たスリーブ部16a′は、その内周面を連結ボス部2c′に
回転自在に被嵌していると共に、その先端外周面に、前
記スリーブ部6bの段差状のスプラインのうち小径のスプ
ライン50bと同径にスプライン51が形成されている。な
お、スリーブ部6bのスプラインは、大径スプライン50a
のみでもよい。更に、前記スリーブ部6bの先端スプライ
ン50には、これと同径状に大小のスプライン22b,22cを
その内面に形成した段差状のスライド継手22が摺動自在
にスプライン嵌合しており、これによりスライド継手22
は、スリーブ部6bとスリーブ部16a′を連結して入力ギ
ヤマウントケース6とリングギヤマウントケース16を直
結し、センターディファレンシャル装置2の差動機能を
規制し得るロック位置と、入力ギヤマウントケース6及
びリングギヤマウントケース16を解放してセンターディ
ファレンシャル装置2の差動を作用する解放位置とに適
宜スライドして切換えられる。
そして、第1図及び第2図に示すように、前記トラン
スファーケース13の小径部分においてスライド継手22に
隣接して左右方向に配置されたスライドバー60には、シ
フトフォーク61が、一端に形成したスライド部64の摺動
溝64aを摺動自在に嵌合しかつその他端を前記スライド
継手22の外周に形成した環状の係合溝22aに嵌め込んで
配置されている。更に、スライドバー60に隣接して該ス
ライドバー60と直交するように回動軸62がトランスファ
ーケース13に回動自在に支持されて設置され、また該回
動軸62の一端は該ケース13の外方に突出し、かつ該一端
には断面クランク状のアーム63の一端が取付けられてい
る。更に、回動軸62の他端にはアーム65を設けたパイプ
66が回動不能にして嵌合されており、かつ該アーム65の
先端はシフトフォーク61のスライド部64に形成した切欠
部64bに係合している。また、第3図に示すように、シ
フトフォーク61のスライド部64の上面には、中央に凸部
を持った凹部61a,61bが形成され、かつスライド部64の
上方にはトランスファーケース13に螺合したボルト67に
てその一端を係止された圧縮スプリング69がその他端に
よりボール70を前記凹部61a,61bに付勢した状態で配置
されており、これによりシフトフォーク61には直接ディ
テント機構が備えられている。また、ボルト67はケース
13への螺合時、後述するバルブユニット31(第4図参
照)のソレノイド68の固定部と共に締結されるため、ソ
レノイド固定用のボルトとして共用されて部品点数の減
少が図られている。
一方、第1図及び第2図に示すように、トランスファ
ーケース13の外方にはベルクランク状の操作アーム71が
中央部をボルト72により回動自在に支持されて設置され
ており、該操作アーム71の一端にはボルト72を中心とす
る円弧状に形成した長孔71aが形成され、かつ該長孔71a
にはボルト74が嵌挿されている。また、前記アーム63の
先端には、トランスファーケース13に摺動自在に支持さ
れたロッド73の一端がピン75にて回動自在に取付けられ
ており、かつ該ロッド73の他端には、操作アーム71の他
端に回動自在に支持したロッド76の先端が回動自在に連
結されている。従って、操作アーム71を第1図時計方
向、反時計方向に回動すると、操作アーム71の他端にて
ロッド76を介してロッド73がアーム63を回動し、更にア
ーム65を回動することによりシフトフォーク61をスライ
ドバー60上で移動して、スライド継手22をスリーブ部6b
上でスライドし、これにより該スリーブ部6bとスリーブ
部16a′、即ち入力ギヤマウントケース6とリングギヤ
マウントケース16を直結してセンターディファレンシャ
ル装置2の差動を機械的にロックし得る。なお、図中71
bは操作アーム71を回動する際に使用する把持部であ
る。
また、差動制御装置10は、第4図に詳示するように、
フロントディファレンシャル装置3を覆うようにかつ該
装置3と同軸的に設けられた入力ギヤマウントケース6
内に配置されており、湿式摩擦多板クラッチ26及びその
油圧アクチュエータ27からなる。該クラッチ26はそのセ
パレータプレートがマウントケース6に連結されかつそ
の摩擦板がデフケース3cに連結されており、更にこれら
セパレータプレート及び摩擦板は油圧アクチュエータ27
にて押圧制御される。また、油圧アクチュエータ27はマ
ウントケース6に形成されたシリンダ内に油密状に収納
されている第1ピストン28及び第2ピストン29、そして
両ピストン間に位置して油密状に配置されている反力板
30を有しており、これらピストンは、第1ピストン28が
第2ピストン29の外周鍔部に当接し、かつ反力板30がシ
リンダ端面に当接して、ダブルピストンを構成してい
る。また、トランスファーケース13には差動制御装置10
用のバルブユニット31が設置されており、該ユニット31
からの制御油圧がパイプ32、油路33,35を介して油圧ア
クチュエータ27の第1油室27a及び第2油室27bに作用し
ている。
ついで、上述構造に基づく作用について説明する。
エンジンの回転は、自動変速機にて適宜変速され、入
力ギヤ1を介して入力ギヤマウントケース6に伝達され
る。そして、通常の走行時即ち運転者がシフトレバーを
Dレンジに入れオートモードを選択した状態にあって
は、バルブユニット31のソレノイドバルブがオン状態に
あり、ライン圧又は該ライン圧に比例して減圧されたク
ラッチ圧は、パイプ32及び油路33,35を介して油圧アク
チュエータ27の両油室27a,27bに供給され、湿式多板ク
ラッチ26が所定圧着力にて接続状態にある。従って、セ
ンターディファレンシャル装置2はそのデフキャリア2c
と右サイドギヤ2aとが所定結合力で結合され、その差動
が所定規制力により制限されたことになる。これによ
り、路面とタイヤとの摩擦力が上述規制力より小さい場
合、例えば雪道、ダート道路等のよう摩擦係数の小さい
路面の場合摩擦多板クラッチ26の圧着力に基づきセンタ
ーディファレンシャル装置18は略々直結状態にあり、入
力ギヤマウントケース6の回転は、摩擦クラッチ26及び
一体に回転するセンターディファレンシャル装置2を介
してフロントディファレンシャル装置3のデフケース3c
に伝達され、更にピニオン3pを介して左右サイドギヤ3
a,3bにトルク分配されて左右前輪を駆動すると共に、セ
ンターディファレンシャル装置2に固定されているリン
グギヤ17及びギヤ21を介してドリブンピニオンシャフト
20に伝達され、更にリヤディファレンシャル装置により
トルク分配がなされて左右後輪を駆動する。また、路面
とタイヤの摩擦力が上述クラッチ26による規制力と略々
平衡している場合、例えば舗装道路を比較的高速で走行
している場合、路面の摩擦係数の関係において、タイヤ
スリップが生じないようにクラッチ26は滑りながら圧着
する。即ち、センターディファレンシャル装置2は前後
車輪へのトルク分配が50:50に近づくように付勢した状
態で、前後車輪の回転差を吸収しながら前後車輪へトル
ク分配をする。
また、車庫入れ等で、低速で操舵角を大きく切る場
合、前輪及び後輪に回転差が生じるが、この場合スロッ
トル開度が小さく、従ってライン圧又はスロットル開度
に比例したクラッチ圧も低いため、油圧アクチュエータ
27による押圧力も弱く、差動制御装置10の摩擦クラッチ
26の係合力も弱い。このため、前輪及び後輪の回転差に
基づくセンターディファレンシャル装置2の左右サイド
ギヤ2a,2bの相対回転を許容すべく、摩擦クラッチ26は
滑りつつ該センターディファレンシャル装置2の差動を
制御し、タイトコーナーブレーキング現象の発生を防止
しながら、前後輪にトルクを伝達する。
そして、山道等の急なカーブが連続して続く道を比較
的高速で走行する場合、運転者は好みによりオートモー
ドをオフすることができる。この状態では、差動制御装
置10のアクチュエータ27へのライン圧の供給は遮断さ
れ、摩擦クラッチ26は解放される。すると、マウントケ
ース6の回転はスリーブ部6bを介してセンターディファ
レンシャル装置2のデフキャリア2cに伝達され、更にデ
フピニオンから左右のサイドギヤ2a,2bに分岐・伝達さ
れる。そして、左サイドギヤ2aの回転はスリーブ部3
c1′を介してフロントディファレンシャル装置3のデフ
ケース3cに伝達され、更にデフピニオン3pから左右のサ
イドギヤ3a,3bに分岐・伝達されてそれぞれ左右フロン
トアクスル軸8l,8rに伝達される。一方、右サイドギヤ2
bの回転は該ギヤとスプライン結合しているギヤマウン
トケース16に伝達され、更に後輪駆動用リングギヤ17及
びギヤ21を介してドライブピニオンシャフト20に伝達さ
れ、そして図示しないプロペラシャフト及びリヤディフ
ァレンシャル装置を介して左右後輪に伝達される。
一方、車検等により、本発明に係る4輪駆動車用動力
伝達装置5を搭載した4輪駆動車を検査する場合には、
把持部71bを掴んで操作アーム71を第1図反時計方向に
回動する。すると、操作アーム71の他端がロッド76を介
してロッド73を第1図矢印A方向に押圧・移動するた
め、アーム63が回動軸62を伴って回動され、これにより
パイプ66に設けたアーム65がシフトフォーク61を第1図
矢印B方向に摺動する。この際、該シフトフォーク61
は、スプリング69にて付勢したボール70がスライド部64
の凹部61a,61bに付勢・当接することによるディテント
機構を有しているため、アーム65による移動前は勿論の
こと移動後も定位置に確実に停止・保持される。このた
め、スライド継手22が同方向にスリーブ部6b上をスライ
ドされてロック位置に移動され、スプラインのうち小径
のもの22cがリングギヤマウントケース16のスリーブ部1
6a′先端のスプライン51に係合する。従って、入力ギヤ
マウントケース6とリングギヤマウントケース16は直接
連結されるので、入力ギヤマウントケース6に伝達され
るトルクはセンターディファレンシャル装置2を介さず
に、デフキャリア2cにて回転されるサイドギヤ2aがフロ
ントデフケース3cのスリーブ部3c′を介してフロント
ディファレンシャル装置3に伝達され、同時にリングギ
ヤマウントケース17、ギヤ21及びドリブンピニオンシャ
フト20を介してリヤディファレンシャル装置に伝達され
る。この状態では、センターディファレンシャル装置2
はスライド継手22により機械的にロックされてその差動
を規制されている。そして、例えばプロペラシャフトを
外して、後輪にはトルクを伝えず前輪のみを回転し得る
状態にして車輪をローラ上に載置して検査を行う。
なお、上述実施例は、油圧アクチュエータ27に常時油
圧を供給して、センターディファレンシャル装置を滑ら
しながら制御しているが、常時は油圧アクチュエータ27
への油圧供給を遮断し、デフロック時のみ油圧を供給す
るものにも適用できることは勿論である。
(ト) 発明の効果 以上説明したように、本発明によると、入力ギヤマウ
ントケース(6)のスリーブ部(6b)とリングギヤマウ
ントケース(16)のスリーブ部(16a′)にスライド継
手(22)を嵌合し、該スライド継手(22)の切換えによ
り入力ギヤマウントケース(6)とリングギヤマウント
ケース(16)を直結し得るように構成したので、簡単な
構成からなるものでありながら、必要時にはスライド継
手22をスライドしてその位置を切換えるだけでセンター
ディファレンシャル装置(2)の差動機能を容易かつ確
実に規制することができ、これにより車検時等にはセン
ターディファレンシャル装置2を直ちに機械的にロック
して必要トルク容量を的確に得ることができ、作業効率
を向上することができる。
また、前記スライド継手(22)は、入力ギヤマウント
ケース(6)のスリーブ部(6b)とセンターディファレ
ンシャル装置(2)のデフキャリヤ(2c)の連結ボス部
(2c′)との連結部分にあって、上記スリーブ部(6b)
とリングギヤマウントケース(16)のスリーブ部(16
a′)との対向する位置に両スリーブ部を被嵌するよう
に配置されるので、コンパクトに構成することができ
る。
更に、上記スライド継手(22)は、トランスファーケ
ースの小径部分に配置されるので、シフトフォーク(6
1)、スライドバー(60)及びディテント機構(67,69,7
0)等の上記スライド継手(22)をトランスファーケー
ス(13)外部に連結する構造が他の部品と干渉すること
なくコンパクトに配置することができる。
これにより、車検等の検査時のみに使用するデフロッ
ク機構を、コンパクトにかつ他の部品と干渉しない位置
に配置して、該デフロック機構を備えたものでありなが
ら、4輪駆動車用動力伝達装置を自動車に搭載すること
が可能となる。
また、入力ギヤマウントケースのスリーブ部(6b)
は、通常の走行状態においてセンターディファレンシャ
ル装置(2)のデフキャリヤ(2c)にトルクを伝達する
ための連結部(80)が形成されているために、耐久性確
保のためスリーブ部の肉厚を厚くする必要があるが、リ
ングギヤマウントケース(16)のスリーブ部(16a′)
は検査時にスライド継手(22)によりデフロックした時
のみトルクが伝達されるだけであるため、入力ギヤマウ
ントケースのスリーブ部(6b)ほどの耐久性は要求され
ない。そこで、リングギヤマウントケースのスリーブ部
(16a′)の肉厚を、入力ギヤマウントケースのスリー
ブ部(6b)の肉厚よりも薄く形成し、リングギヤマウン
トケースのスリーブ部に形成されるスプライン等の(第
2の)係合部(51)を、入力ギヤマウントケースのスリ
ーブ部(6b)の係合部(50a)よりも小径に形成し、か
つスライド継手の小径の係合部(22c)が形成されてい
る位置の外周面にシフトフォーク(61)が係合するため
の環状の溝(22a)を形成しているために、デフロック
機構の径方向寸法を必要最小限に抑えることができる。
更に、スライド継手(22)を摺動切換えするシフトフ
ォーク(61)が、トランスファーケース(13)の外方に
回動自在に支持した操作アーム(71)にロッド(73),
(76)を介して連結されてなると、該操作アーム(71)
を摘んで操作するだけで簡単にスライド継手(22)の位
置を切換えることができ、操作性を向上することができ
る。
また、シフトフォーク(61)が、外方から付勢したボ
ール(70)によりそれぞれの切換え位置に付勢・支持さ
れてなると、シフトフォーク(61)自体にディテント機
能を持たせて、スライド継手(22)切換えのための装置
の構造を簡単かつコンパクトにすることができ、これに
より部品点数を減少することができると共にコストダウ
ンも図ることができる。
【図面の簡単な説明】
第1図はセンターデフメカロック機構を示す側面断面
図、第2図は第1図II−II線による断面図、第3図はシ
フトフォークのディテント機構を示す斜視図、第4図は
本発明に係る4輪駆動車用動力伝達装置を示す断面図で
ある。 2……センターディファレンシャル装置、2a,2b……サ
イドギヤ、2c……デフキャリヤ、2c′……連結ボス部、
3……フロントディファレンシャル装置、5……4輪駆
動車用動力伝達装置、6……入力ギヤマウントケース、
6b……スリーブ部、9……支持ケース、13……トランス
ファーケース、16……リングギヤマウントケース、16
a′……スリーブ部、22……スライド継手、22a……環状
の溝(係合溝)、22b……大径の係合部(スプライ
ン)、22c……小径の係合部(スプライン)、50a……第
1の係合部(スプライン)、51……第2の係合部(スプ
ライン)、80……連結部(スプライン)。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 横山 文友 愛知県安城市藤井町高根10番地 アイシ ン・ワーナー株式会社内 (72)発明者 田中 雅晴 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自 動車株式会社内 (72)発明者 倉持 耕治郎 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自 動車株式会社内 (72)発明者 中村 泰治 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自 動車株式会社内 (72)発明者 明石 光生 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自 動車株式会社内 (56)参考文献 特開 昭62−80355(JP,A) 実開 昭62−3329(JP,U)

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】入力ギヤマウントケースを回転自在に支持
    ・収納する支持ケースと、リングギヤマウントケースを
    回転自在に支持・収納しかつ前記支持ケースに固定され
    て一体となるトランスファーケースと、を備え、フロン
    トディファレンシャル装置を前記入力ギヤマウントケー
    スに収納し、かつセンターディファレンシャル装置を前
    記リングギヤマウントケースに収納し、前記入力ギヤマ
    ウントケースに入力したトルクが、前記センターディフ
    ァレンシャル装置のデフキャリヤに伝達されることによ
    り両サイドギヤを介してフロントディファレンシャル装
    置及びリヤディファレンシャル装置に分岐して伝達され
    てなる4輪駆動車用動力伝達装置において、 前記センターディファレンシャル装置の差動を制御す
    る、湿式摩擦材クラッチ及び油圧アクチュエータからな
    る差動制御装置を前記入力ギヤマウントケース内に配置
    し、 前記入力ギヤマウントケースに形成したスリーブ部及び
    前記リングギヤマウントケースに形成したスリーブ部を
    同軸状に隣接して配置し、 前記トランスファーケースの収納空間は、前記センター
    ディファレンシャル装置を収納するリングギヤマウント
    ケース部分が膨径すると共に、前記両スリーブ部を収納
    する部分が前記リングギヤマウントケース部分及び前記
    支持ケースの入力ギヤマウントケースを収納する部分に
    比して小径からなり、 前記入力ギヤマウントケースのスリーブ部は、その内周
    面に前記センターディファレンシャル装置のデフキャリ
    ヤから延びている連結ボス部に連結する連結部を有する
    と共に、その外周面にスプライン等の第1の係合部を有
    し、 前記リングギヤマウントケースのスリーブ部は、その内
    周面を前記連結ボス部に回転自在に被嵌すると共に、そ
    の外周面にスプライン等の第2の係合部を形成してな
    り、 前記トランスファーケースの小径部分に、その内周面に
    スプライン等の係合部を形成したスライド継手を配置
    し、 該スライド継手は、前記入力ギヤマウントケースとリン
    グギヤマウントケースの両スリーブ部間で自在に摺動し
    て該スライド継手の係合部を前記第1及び第2の係合部
    の両方又はいずれか一方のみに係合してこれら両マウン
    トケースを連結又は解除し得るように嵌合され、 該スライド継手の位置の切換えにより、前記入力ギヤマ
    ウントケースとリングギヤマウントケースを連結して、
    前記センターディファレンシャル装置の差動を機械的に
    ロックするように構成したことを特徴とする、 4輪駆動車用動力伝達装置。
  2. 【請求項2】前記第2の係合部は、前記第1の係合部よ
    り小径からなり、 前記スライド継手は、円筒状の部材であって、その内周
    面に前記第1の係合部及び第2の係合部にそれぞれ係合
    し得る大径の係合部及び小径の係合部を有し、かつ該小
    径の係合部の形成された位置に対応する外周面に環状の
    溝を有し、該環状の溝に係合したシフトフォークにより
    位置を切換えられてなる、 特許請求の範囲第1項記載の4輪駆動車用動力伝達装
    置。
  3. 【請求項3】通常走行時、前記油圧アクチュエータにラ
    イン圧に基づく油圧等の所定油圧を供給してなる、 特許請求の範囲第1項記載の4輪駆動車用動力伝達装
    置。
  4. 【請求項4】前記スライド継手を摺動切換えするシフト
    フォークが、前記トランスファーケース外方に回動自在
    に支持された操作アームにロッドを介して連結されてな
    る、 特許請求の範囲第2項記載の4輪駆動車用動力伝達装
    置。
  5. 【請求項5】前記シフトフォークが、外方から付勢した
    ボールによりそれぞれの切換え位置に付勢・支持されて
    なる、 特許請求の範囲第4項記載の4輪駆動車用動力伝達装
    置。
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