JP2616157B2 - モノリス触媒の製造方法 - Google Patents

モノリス触媒の製造方法

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【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明は、金属箔からなるモノリス触媒担体の管状通
路すなわち一般的にはセルと呼ばれる構造の壁面に、ア
ルミナ、セリアなどを主成分とする触媒スラリを塗布す
る方法に関する。
従来の技術 大気汚染の防止を目的として、自動車の排気ガス中の
有害成分を触媒により無害な成分に変換することが行わ
れている。現在、一般的な自動車の排気ガス浄化用モノ
リス触媒は、セラミックモノリス担体または金属箔モノ
リス担体の軸方向に整列した管状通路(一般的にはセル
と呼ばれる)に、白金、ロジウム、パラジウム等の触媒
活性物質と触媒活性物質を細かく分散させるための大き
な表面積を有する耐熱性物質がともに塗布されている。
高表面積耐熱性物質は例えば微粒化されたガンマアルミ
ナ等が粘性のあるスラリとして塗布される。触媒の生産
プロセスにおいては、コストおよび所望のレベルの触媒
性能を得るという観点からすると、高表面積物質や触媒
活性物質を塗布する場合には、反復性のある結果を生じ
るように塗布作業を制御し得るようにすることが極めて
重要である。
従来よりモノリス担体にスラリを塗布するための方法
および装置は種々知られている。
例えば米国特許第3565830号明細書には、セラミック
モノリス担体をスラリに浸漬後、空気を吹き込んでスラ
リを除去し、閉塞した通路を開通させる技術が開示され
ている。
また特開昭59−193140号公報には、スラリを定量印加
後セラミックモノリス担体に真空圧力を与えて両端面に
差圧を生じさせることで、過剰スラリを排出させるとと
もに閉塞した通路を開通させる技術が開示されている。
発明が解決しようとする課題 しかしながら、このような従来の方法においては、触
媒スラリがセルを通過する間に、スラリ中の媒体、例え
ば水分が選択的にセル壁に吸収されるため、セル内でス
ラリが濃縮され粘度が上昇するという問題があった。そ
のため、粘度上昇が著しい時には、従来技術の前者の例
では、セラミックモノリス担体をスラリに浸漬後、空気
を吹き込んでもスラリが除去されず、閉塞した通路を開
通できないという問題があった。一方、従来技術の後者
の例では、スラリを定量印加後、セラミックモノリス担
体に真空圧力を与えて両端面に差圧を生じさせても、上
記と同様の理由により過剰スラリが排出されず閉塞した
通路を開通できないという問題があった。
また、スラリの粘度上昇がそれほど大きくない時に
は、モノリス担体毎に壁による媒体の吸収の仕方に差が
あるため、スラリの粘度上昇の度合が異なり、従来技術
のいずれの例でもセルを閉塞したスラリの除去のされ方
に差が生じ、結果的にセルに塗布されるスラリの量が一
定にならないという問題があった。この現象は特にポー
ラスなセラミック製モノリス担体において著しい。
課題を解決するための手段 本発明はこのような従来の問題点に着目してなされた
もので、金属箔製のモノリス担体に触媒スラリの塗布・
焼成を繰り返し行うにあたり、一回目はいきなり触媒ス
ラリの塗布・焼成を行うものの、二回目以降はモノリス
担体のセルに触媒スラリを通す前に、予め該スラリに使
用されている媒体と同質の媒体でセルを湿潤させること
により、セル壁によるスラリからの選択的な媒体の吸収
を防止し、スラリの粘度上昇によるセルの閉塞を防止し
つつセルに触媒スラリを塗布するものである。
第1図は発明の触媒スラリ塗布工程の例を、また第2
図は従来の触媒スラリ塗布工程の例をそれぞれ示してい
る。
従来の塗布工程例では第2図に示すように、活性アル
ミナやセリアなどの触媒原材料が媒体と一緒にボールミ
ルや振動ミルで粉砕・混合されて触媒スラリになる。そ
の触媒スラリに、米国特許第3565830号明細書の例で
は、軸方向に整列した管状通路を有するモノリス担体が
浸漬され、一定時間経過後に引き上げられてエアブロー
により余剰のスラリを吹き払い乾燥される。この時、モ
ノリス担体のセル内でスラリの粘度上昇が著しい時にに
はエアブローにより余剰のスラリを吹き払うことができ
ない。1回の操作で触媒スラリの所望の付着量が得られ
ない場合には、これらスラリへの浸漬、エアブロー、乾
燥のサイクルが繰り返され、触媒スラリの所望の付着量
が得られた時点で焼成することにより、触媒スラリをモ
ノリス担体に固着させて触媒スラリの塗布されたモノリ
ス担体を得るとされている。
一方、本発明の工程例では、第1図に示すように活性
アルミナやセリアなどの触媒原材料を媒体と一緒に従来
と同様の方法で粉砕・混合して触媒スラリにする。この
触媒スラリに対して例えばステンレス系の金属箔製のモ
ノリス担体が浸漬され、一定時間経過後に引き上げられ
てエアブローにより余剰のスラリを吹き払い、乾燥、焼
成される。スラリが一旦塗布・焼成されたモノリス担体
は二回目の触媒スラリに浸漬される前に、該スラリに使
用されている媒体、本例では純水に浸漬され、一定時間
経過後に引き上げられてエアブローにより余剰の水分が
除去される。純水への浸漬の代わりに純水をシャワーし
てもよいし、エアブローの替わりに吸引してもよい。こ
の操作によって、セル壁にスラリに使用されている媒体
を充分に吸収せしめる。
加湿処理されたモノリス担体は再度触媒スラリに浸漬
され、一定時間経過後に引き上げられたエアブローによ
り余剰のスラリを吹き払い、乾燥、焼成される。この
時、モノリス担体は事前に該スラリに使用されている媒
体を充分に吸収しているので、セル内のスラリから媒体
を選択吸収してスラリの粘度を上昇させることはない。
したがって、余剰のスラリは確実に除去される。そし
て、所望のスラリ付着量が得られるまで上記の加湿処理
以降のサイクルを繰り返す。ここで、毎回焼成するの
は、次回の加湿処理でそれまでにセル壁に形成された触
媒スラリ層が崩壊しないように固化させるためである。
実施例 活性アルミナ(比表面積120m2/g)75重量部と酸化セ
リウム25重量部を混合した粉末10,000gと塩酸解膠ベー
マイトゾル11,420gをバッチ型振動ミルで混合・粉砕し
て触媒スラリを得た。該スラリの固形分は52wt%で、粘
度は100CPSであった。このスラリに、ステンレス系の金
属箔製で1インチ平方当り400ヶのセルを有する1.3Lの
モノリス担体No.J5−1(表−1参照)を60秒間浸漬
し、引き上げてエアブローにより余剰のスラリを吹き払
った。セルが閉塞されることなく余剰のスラリが除去さ
れて、ウエット状態で110gのスラリがモノリス担体に付
着した。80℃の温風をセルに吹き込んで該担体を乾燥さ
せた後、300℃で焼成したところドライ状態で59gのスラ
リが付着したモノリス担体を得た。
触媒スラリの付着量を増やすため、1回目のコーティ
ングの終わった担体No.J5−1を、容器に入った純水に6
0秒間浸漬し、引き上げてエアブローにより余剰の水分
を吹き払った。この操作により、該モノリス担体No.J5
−1は67gの純水を吸収した。この加湿処理を施したモ
ノリス担体No.J5−1に1回目と同じ条件で2回目のコ
ーティング操作を行ったところ、ウエット状態で170gの
スラリが付着し、それを乾燥、焼成したところドライ状
態で106gの触媒スラリを新たに付着させることができ
た。合計で165gの触媒スラリを付着させたモノリス担体
を得た。No.J5−2〜J5−5のモノリス担体について同
様の操作を行い表−1の結果を得た。
なお、1回目のコーティングを行う前に加湿処理を行
わないのは、モノリス担体を構成するステンレス系金属
箔が全く吸収しないためである。
ここで、純水に浸漬後のモノリス担体から余剰の水分
を吸引方式で除去す場合には、第3図の装置を用いて吸
引除去することができる。
第3図の装置は、内部に液飛散防止板2を設けた吸引
タンク1の開口部3の上部にリング状の支持台4を介し
てワークたるモノリス担体Wをセットするとともに、モ
ノリス担体Wの上にシール材5を介してホッパ6を接続
し、他方の開口部7から吸引ブロアにより吸引するよう
にしたものである。8は開閉バルブ、9は圧力計であ
る。
同様に第3図の装置を用いて、加湿(湿潤)処理後の
モノリス担体に吸引方式でスラリの塗布を行うこともで
きる。この場合には、モノリス担体Wの一方の端面に第
3図のホッパ6を用いて触媒スラリを供給し、第3図の
装置で他方の開口部7から吸引して余剰のスラリを除去
するようにする。
比較例 活性アルミナ(比表面積120m2/g)75重量部と酸化セ
リウム25重量部を混合した粉末10,000gと塩酸解膠ベー
マイトゾル11,950gをバッチ型振動ミルで混合・粉砕し
て触媒スラリを得た。該スラリの固形分は51wt%で、粘
度は90CPSであった。このスラリに浸漬する、コージラ
イト(Cordierite)製で1インチ平方当り400ヶのセル
を有する1.3Lのモノリス担体No.H2−1(表−2参照)
を触媒スラリに60秒間浸漬し、引き上げてエアブローを
行った。余剰のスラリが除去され、ウエット状態で102g
のスラリがモノリス担体に付着した。80℃の温風をセル
に吹き込んだ該担体を乾燥させたところ、ドライ状態で
41gのスラリが付着したモノリス担体を得た。
触媒スラリの付着量を増やすため、同様のサイクルを
2回繰り返したところ、各々ウエット状態で125g、148g
のスラリが付着し、それを乾燥させたところドライ状態
でそれぞれ52g、61gの触媒スラリを新たに付着させるこ
とができた。最後に300℃で焼成して合計で154gの触媒
スラリを付着させたモノリス担体を得た。No.H2−2〜H
2−10のモノリス担体について同様の操作を行い表−2
の結果を得た。
上記実施例と比較例とを比較すると明かなうように、
両者はモノリス担体そのものの材質が異なるものの、実
施例では2回目のスラリのコーティング処理に先立って
湿潤処理を行うことにより、2回のコーティング処理で
ありながら、3回のコーティング処理を行った比較例よ
りもスラリ付着量が大幅に増大することが判明した。
発明の効果 以上説明したようにこの発明によれば、一旦触媒スラ
リの塗布・焼成が行われた金属箔製のモノリス担体のセ
ルに再度触媒スラリを通す前に、予め該スラリに使用さ
れている媒体と同質の媒体でセルを湿潤させることによ
り、セル壁によるスラリからの選択的な媒体の吸収を防
止し、セル内でスラリの粘度を上昇させてセルを閉塞さ
せることなくモノリス担体のセルに触媒スラリを塗布す
ることができ、かつモノリス担体毎のスラリ付着量のば
らつきが小さいという効果が得られるほか、スラリの付
着量が多いのでスラリのコーティング処理を少なくとも
2回繰り返すだけで必要量のスラリを付着させることが
でき、生産性にすぐれるという効果が得られる。
また、本発明によれば、比較的固形分濃度が高かった
り、ランタンなどの成分が添加されて粘度の高い触媒ス
ラリでもセルを閉塞させることなくセルに塗布できると
いう効果がある。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の処理手順を示す工程説明図、第2図は
従来の製造方法による処理手順を示す工程説明図、第3
図は吸引型コーティング装置の構成説明図である。 1……吸引タンク、W……モノリス担体(ワーク)。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】軸方向に整列した管状通路を有する金属箔
    製のモノリス担体に触媒スラリを塗布する方法におい
    て、 モノリス担体の管状通路に触媒スラリを通して該触媒ス
    ラリを塗布したのちにこれを焼成する工程と、 前記触媒スラリが一旦塗布・焼成されたモノリス担体の
    管状通路を触媒スラリに含まれる媒体と同質の媒体で湿
    潤させてから、再度触媒スラリを管状通路に通して触媒
    スラリを塗布する工程、 とを含むことを特徴とするモノリス触媒の製造方法。
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