JP2613241B2 - リグニンパーオキシダーゼmf−1およびその製造方法 - Google Patents
リグニンパーオキシダーゼmf−1およびその製造方法Info
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Description
【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明はリグニンパーオキシダーゼMF−1およびその
製造方法に関するものである。本発明の酵素はリグニン
に作用して、これを低分子化または分解する性質を有す
るため、木材等のリグノセルロース材料を原料とする紙
パルプ製造工程における種々の工程で利用できる。すな
わちパルプ化工程、パルプ漂白工程、排水処理工程など
におけるリグニンの低分子化または分解を行わせること
に利用できる。さらに木材の糖化において、糖化の前段
の処理としてリグニンを分解することによって、セルラ
ーゼ作用を高めるといういわゆるセルロース系バイオマ
ス利用の分野にも適用できる。
製造方法に関するものである。本発明の酵素はリグニン
に作用して、これを低分子化または分解する性質を有す
るため、木材等のリグノセルロース材料を原料とする紙
パルプ製造工程における種々の工程で利用できる。すな
わちパルプ化工程、パルプ漂白工程、排水処理工程など
におけるリグニンの低分子化または分解を行わせること
に利用できる。さらに木材の糖化において、糖化の前段
の処理としてリグニンを分解することによって、セルラ
ーゼ作用を高めるといういわゆるセルロース系バイオマ
ス利用の分野にも適用できる。
[従来技術] 木材等のリグノセルロース物質に白色腐朽菌を接種、
培養することによってイグニンを分解し、セルロースパ
ルプを製造する試みがなされている(特開昭50−46903
号公報参照)。しかし、この方法の白色腐朽菌は共存す
る炭水化物をも分解してしまい、またセルラーゼ欠損変
異株を用いた場合には、本来のリグニン分解力が弱まっ
てしまうこと等の問題点があり、実用化されるに至って
いない。
培養することによってイグニンを分解し、セルロースパ
ルプを製造する試みがなされている(特開昭50−46903
号公報参照)。しかし、この方法の白色腐朽菌は共存す
る炭水化物をも分解してしまい、またセルラーゼ欠損変
異株を用いた場合には、本来のリグニン分解力が弱まっ
てしまうこと等の問題点があり、実用化されるに至って
いない。
一方、このような問題点を解決するため、白色腐朽菌
のリグニング分解酵素をリグノセルロース物質に作用さ
せ、リグニンのみを選択的に分解させようとする試みが
なされている(Science,221,661−662(1983))。
のリグニング分解酵素をリグノセルロース物質に作用さ
せ、リグニンのみを選択的に分解させようとする試みが
なされている(Science,221,661−662(1983))。
この報告は、主としてリグニングモデル化合物を基質
としたものであるが、世界で最初にリグニン分解酵素を
単離、精製したものである。この酵素はファネロケーテ
・クリソスポリウムが生産する菌体外酵素であり、主な
特徴は鉄含有酵素であること、分子量が約42,000である
こと、酵素作用に過酸化水素が必要であること、リグニ
ンモデル化合物の4位のフェノール性水酸基がメトキシ
ル基になった化合物に対して作用することが確認されて
いること等である。さらにファネロケーテ・クリソスポ
リウムが生産する菌体外酵素としては、2つの酵素が報
告されている(FEBS Lett.,169,247−250(1984))。
としたものであるが、世界で最初にリグニン分解酵素を
単離、精製したものである。この酵素はファネロケーテ
・クリソスポリウムが生産する菌体外酵素であり、主な
特徴は鉄含有酵素であること、分子量が約42,000である
こと、酵素作用に過酸化水素が必要であること、リグニ
ンモデル化合物の4位のフェノール性水酸基がメトキシ
ル基になった化合物に対して作用することが確認されて
いること等である。さらにファネロケーテ・クリソスポ
リウムが生産する菌体外酵素としては、2つの酵素が報
告されている(FEBS Lett.,169,247−250(1984))。
これらの酵素の1つは分子量が41,000以下であるこ
と、もう1つの酵素は分子量が46,000以下であること、
さらにいずれの酵素も鉄含有酵素であると推定されてい
ること、酵素作用に過酸化水素が必要であること、リグ
ニンモデル化合物の4位のフェノール性水酸基がエトキ
シル基になった化合物に対して作用することが確認され
ていること等である。
と、もう1つの酵素は分子量が46,000以下であること、
さらにいずれの酵素も鉄含有酵素であると推定されてい
ること、酵素作用に過酸化水素が必要であること、リグ
ニンモデル化合物の4位のフェノール性水酸基がエトキ
シル基になった化合物に対して作用することが確認され
ていること等である。
また、Leisolaらは、ファネロケーテ・クリソスポリ
ウムの培養上清をクロマトフォーカシングによって分
離、分析しているが、4つの等電点の異なるリグニンパ
ーオキシダーゼを検出した。これらの酵素の等電点は4.
5,3.5,3.4,3.2であり、5以上のものではなく、分子量
は39,000−42,000の間であった。〔J.Biotechnol.2,379
−382)(1985)〕。
ウムの培養上清をクロマトフォーカシングによって分
離、分析しているが、4つの等電点の異なるリグニンパ
ーオキシダーゼを検出した。これらの酵素の等電点は4.
5,3.5,3.4,3.2であり、5以上のものではなく、分子量
は39,000−42,000の間であった。〔J.Biotechnol.2,379
−382)(1985)〕。
一方、カワラタケ属の担子菌が生産するリグニン分解
酵素(特開昭61−92568号)の主な特徴は胴含有酵素で
あること、等電点が3.5付近であること、酵素作用に酵
素が必要であること、分子量が約53,000であること、リ
グニンモデル化合物の4位のフェノール性水酸基がメト
キシルになった化合物に対して作用しないこと等であ
り、前記のファネロケーテ・クリソスポリウムの生産す
る菌体外酵素とは全く性質が異なる酵素である。
酵素(特開昭61−92568号)の主な特徴は胴含有酵素で
あること、等電点が3.5付近であること、酵素作用に酵
素が必要であること、分子量が約53,000であること、リ
グニンモデル化合物の4位のフェノール性水酸基がメト
キシルになった化合物に対して作用しないこと等であ
り、前記のファネロケーテ・クリソスポリウムの生産す
る菌体外酵素とは全く性質が異なる酵素である。
[発明が解決しようとする課題] 本発明では白色腐朽菌をリグノセルロース物質に作用
させるときに生ずるリグニンの分解の他に共存する炭水
化物の分解を起こすという問題点を解決することを意図
するものであり、主としてリグノセルロース物質中のリ
グニンを低分子化または分解する新規酵素およびその製
造方法を提供することにある。
させるときに生ずるリグニンの分解の他に共存する炭水
化物の分解を起こすという問題点を解決することを意図
するものであり、主としてリグノセルロース物質中のリ
グニンを低分子化または分解する新規酵素およびその製
造方法を提供することにある。
リグニンを低分子化する酵素の供給を実用化する場
合、製造方法が容易であること、製造された酵素がより
広い温度やpHの範囲で活性を維持し、作用することが重
要な要件となる。
合、製造方法が容易であること、製造された酵素がより
広い温度やpHの範囲で活性を維持し、作用することが重
要な要件となる。
本発明の目的はこのような要件を満たす新規酵素およ
びその製造方法を提供することにある。
びその製造方法を提供することにある。
[課題を解決するための手段] 本発明は新規なリグニンパーオキシダーゼMF−1およ
びその製造方法に関するものである。
びその製造方法に関するものである。
本発明者らはリグニン分解菌としてよく研究されてい
るファネロケーテ・クリソスポリウムのリグニン分解酵
素活性の強い変異株について鋭意研究を行った結果 該
菌株を増殖せしめ、その培養物から得た菌体外粗酵素を
イオン交換クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラ
フィーにより高度に精製し、従来知られたリグニンパー
オキシダーゼより高い温度で安定に活性が維持され、ま
たよりアルカリ性でも活性を失うことなく作用する該酵
素標品を得て、本発明に到達した。
るファネロケーテ・クリソスポリウムのリグニン分解酵
素活性の強い変異株について鋭意研究を行った結果 該
菌株を増殖せしめ、その培養物から得た菌体外粗酵素を
イオン交換クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラ
フィーにより高度に精製し、従来知られたリグニンパー
オキシダーゼより高い温度で安定に活性が維持され、ま
たよりアルカリ性でも活性を失うことなく作用する該酵
素標品を得て、本発明に到達した。
すなわち、本発明は下記の性質を有する新規なリグニ
ンパーオキシダーゼMF−1である。
ンパーオキシダーゼMF−1である。
(1) 作用 (I)過酸化水素存在下でベラトリルアルコールを酸化
してベラトリルアルデヒドを生成する。
してベラトリルアルデヒドを生成する。
(II)過酸化水素存在下でジアリルプロパンを酸化的に
分解する。
分解する。
(2) 基質特異性 アルコキシ基を有するジアリルプロパンおよびβ−O
−4型等リグニンの2量体モデル化合物を酸化的に分解
する。
−4型等リグニンの2量体モデル化合物を酸化的に分解
する。
またアルコキシベンジルアルコール構造を有する化合
物を酸化する。
物を酸化する。
(3) 至適pHおよびpH安定性 pH2.5付近でベラトリルアルコールを酸化する作用が至
適であり、pH4ないし8の範囲で安定である。
適であり、pH4ないし8の範囲で安定である。
(4) 至適温度および熱安定性 40℃付近でベラトリルアルコールを酸化する作用が至
適であり、60℃までの熱に安定である。
適であり、60℃までの熱に安定である。
(5) 等電点は5.0−5.1付近である。
(6) 本酵素の分子量は約42,000である。
(SDSポリアクリルアミド電気泳動法による。) (7) 本酵素はMnSO4、CuSO4により弱く阻害を受け、
EDTA、KCN、メルカプトエタノール、メルカプトプロパ
ノール、NaN3、ヒドロキシルアミンで強く阻害される。
EDTA、KCN、メルカプトエタノール、メルカプトプロパ
ノール、NaN3、ヒドロキシルアミンで強く阻害される。
(8) 本酵素はヘム含有酵素であり、407nm付近に極
大吸収をもつ。
大吸収をもつ。
(9) 本酵素の作用には過酸化水素を必要とする。
本酵素の力価測定はベラトリルアルコールを基質とし
て下記の第1表に示した反応液中30℃で酵素を作用せし
め。生成するベラトリルアルデヒドの紫外吸収値を310n
mで経時的に記録測定して行なう。1分間に1nmol生成せ
しめる酵素量を1単位とする。 第1表 酵素力価測定のための反応液組成 5mMベラトリルアルコール 0.1ml 0.5M酒石酸ナトリウム緩衝液(pH3.0) 0.2ml 5.4mM過酸化水素 0.1ml酵 素 液 0.6ml 本酵素は次式に示すリグニンのモデル化合物としてよ
く用いられるベラトリルアルコール(化合物I)、ジア
リルプロパン(化合物II)、β−O−4−ダイマーモデ
ル化合物(化合物III,IV,V)に作用して、ベラトリルア
ルコールをベラトリルアルデヒドに酸化し、またジアリ
ルプロパンおよびβ−O−4型2量体、モデル化合物の
プロパンのα,β炭素結合又はβ−O−4結合を酸化的
に切断する。
て下記の第1表に示した反応液中30℃で酵素を作用せし
め。生成するベラトリルアルデヒドの紫外吸収値を310n
mで経時的に記録測定して行なう。1分間に1nmol生成せ
しめる酵素量を1単位とする。 第1表 酵素力価測定のための反応液組成 5mMベラトリルアルコール 0.1ml 0.5M酒石酸ナトリウム緩衝液(pH3.0) 0.2ml 5.4mM過酸化水素 0.1ml酵 素 液 0.6ml 本酵素は次式に示すリグニンのモデル化合物としてよ
く用いられるベラトリルアルコール(化合物I)、ジア
リルプロパン(化合物II)、β−O−4−ダイマーモデ
ル化合物(化合物III,IV,V)に作用して、ベラトリルア
ルコールをベラトリルアルデヒドに酸化し、またジアリ
ルプロパンおよびβ−O−4型2量体、モデル化合物の
プロパンのα,β炭素結合又はβ−O−4結合を酸化的
に切断する。
以上のように本発明の酵素の作用機序は従来より知ら
れているリグニンパーオキシダーゼの作用機序となんら
変るものではない。
れているリグニンパーオキシダーゼの作用機序となんら
変るものではない。
本発明の酵素はファネロケーテ・クリソスポリウムに
属し、高窒素条件下(120mM)の培地で培養器内の気相
の酸素分圧を空気より高めることなく培養することによ
り、培養液中にリグニン分解酵素を生成する能力のある
変異株を、上記の方法で培養し、培養物から該酵素を採
取することによって得られる。
属し、高窒素条件下(120mM)の培地で培養器内の気相
の酸素分圧を空気より高めることなく培養することによ
り、培養液中にリグニン分解酵素を生成する能力のある
変異株を、上記の方法で培養し、培養物から該酵素を採
取することによって得られる。
本発明に用いる微生物としてはファネロケーテ・クリ
ソスポリウムに属し、リグニンパーオキシダーゼMF−1
を生産する能力のある微生物であればいずれも用いるこ
とができるが、以下の菌学的性質を示すファネロケーテ
・クリソスポリウムが特に適しており、ファネロケーテ
・クリソスポリウムME446に由来する変異株であるファ
ネロケーテ・クリソスポリウムMA−4株が例示される。
ソスポリウムに属し、リグニンパーオキシダーゼMF−1
を生産する能力のある微生物であればいずれも用いるこ
とができるが、以下の菌学的性質を示すファネロケーテ
・クリソスポリウムが特に適しており、ファネロケーテ
・クリソスポリウムME446に由来する変異株であるファ
ネロケーテ・クリソスポリウムMA−4株が例示される。
(1) 高濃度窒素源およびo−ジアニシジンを含む培
地で培養すると赤褐色色素を生成する。
地で培養すると赤褐色色素を生成する。
(2) 気相の酸素分圧を空気より高めることなく、培
養して、リグニンパーオキシダーゼMF−1を生産する。
養して、リグニンパーオキシダーゼMF−1を生産する。
(3) 高濃度窒素源を含む培地で培養してリグニンパ
ーオキシダーゼMF−1を生産する。
ーオキシダーゼMF−1を生産する。
本発明で使用する培地としては、下記第2表のカーク
(Kirk)の培地が代表的である。
(Kirk)の培地が代表的である。
*Kirk′s salts (1L中) KH2PO4 20g MgSO4・7H2O 5g CaCl2・2H2O 1g チアミン 10mg ニトリロ三酢酸 150mg MgSO4・7H2O 300mg MnSO4・H2O 50mg NaCl 100mg FeSO4・7H2O 10mg CoSO4 10mg CaCl2・2H2O 10mg ZnSO4 10mg CuSO4・5H2O 1mg AlK(SO4)2 1mg H3BO3 1mg NaMoO4 1mg 培地中に添加する各成分の種類や量は必ずしも上記の
組成に従う必要はないが、窒素源の濃度はアンモニア態
窒素として10から120mMであることが望ましい。
組成に従う必要はないが、窒素源の濃度はアンモニア態
窒素として10から120mMであることが望ましい。
リグニンパーオキシダーゼMF−1生産のための培養は
以下のように行なう。胞子を滅菌生理食塩水に懸濁し、
窒素源として例えば120mMのアンモニウムイオンを含む
カークの培地に接種する。培養容器は綿栓など通気性の
ある栓で蓋をする。
以下のように行なう。胞子を滅菌生理食塩水に懸濁し、
窒素源として例えば120mMのアンモニウムイオンを含む
カークの培地に接種する。培養容器は綿栓など通気性の
ある栓で蓋をする。
野生株の培養のように酸素で培養容器内の気相を置換
する必要はない。培養は静置培養で39℃以下で行なう
が、37℃程度が望ましい。3日目ないし8日目には培養
液中にリグニンパーオキシダーゼMF−1を検出すること
ができる。変異株の活性は野生株に比べて4−5倍高
い。
する必要はない。培養は静置培養で39℃以下で行なう
が、37℃程度が望ましい。3日目ないし8日目には培養
液中にリグニンパーオキシダーゼMF−1を検出すること
ができる。変異株の活性は野生株に比べて4−5倍高
い。
変異株の培養上清中には、培養開始後3−4日目に高
いリグニンパーオキシダーゼ活性を検出することができ
る。この活性は野生株の培養液で活性が最大となる4−
6日目の培養液中の活性と比べて5−20倍も高い。
いリグニンパーオキシダーゼ活性を検出することができ
る。この活性は野生株の培養液で活性が最大となる4−
6日目の培養液中の活性と比べて5−20倍も高い。
本発明の酵素は主として培養液中に分泌生産されるの
で、本酵素を採取するには培養終了後の培養物から菌態
を濾過、遠心分離等の方法で除去した培養上清から、通
常の酵素単離の方法により行なうことができる。
で、本酵素を採取するには培養終了後の培養物から菌態
を濾過、遠心分離等の方法で除去した培養上清から、通
常の酵素単離の方法により行なうことができる。
例えば陰イオン交換体によるカラムクロマトグラフィ
ー、高速液体クロマトグラフィー等で行なうが、もちろ
んこれらの方法を繰り返すこと、他の常法の精製手段を
必要に応じ組み合わせて用いることもできる。
ー、高速液体クロマトグラフィー等で行なうが、もちろ
んこれらの方法を繰り返すこと、他の常法の精製手段を
必要に応じ組み合わせて用いることもできる。
なお本発明の酵素は従来より知られているファネロケ
ーテ・クリソスポリウムME446のリグニンパーオキシダ
ーゼとは以下の点が異なっている。
ーテ・クリソスポリウムME446のリグニンパーオキシダ
ーゼとは以下の点が異なっている。
1) 等電点:野生株ME446の酵素は3以下であり、ATC
C24725株では4.5以下であるが、本発明の酵素は5.0−5.
1である。
C24725株では4.5以下であるが、本発明の酵素は5.0−5.
1である。
2) 温度安定性:野生株ME446の酵素は、55℃10分の
処理で完全に失活するが、本発明の酵素は60℃でも100
%活性を維持しており、65℃で完全に失活する。
処理で完全に失活するが、本発明の酵素は60℃でも100
%活性を維持しており、65℃で完全に失活する。
3) pH安定性:野生株ME446の酵素はpH4−6の範囲で
安定であり、7.5で直ちに失活するが、本発明の酵素は
4−8の範囲で安定である。
安定であり、7.5で直ちに失活するが、本発明の酵素は
4−8の範囲で安定である。
実施例1 ファネロケーテ・クリソスポリウムMA−4株をマルト
アガー(Difco社製)のスラントに接種し、7日以上37
℃に保温して胞子を充分に形成せしめた後、滅菌生理食
塩水を加えて胞子懸濁液を作成し(約107個/cc)、120m
Mの酒石酸アンモニウムを含むカークの倍地に培地容量
の0.5%の胞子懸濁液を添加し、紙栓をして37℃に静置
した。培養開始後3−4日目に培養を止め、以下の要領
で酵素を採取した。
アガー(Difco社製)のスラントに接種し、7日以上37
℃に保温して胞子を充分に形成せしめた後、滅菌生理食
塩水を加えて胞子懸濁液を作成し(約107個/cc)、120m
Mの酒石酸アンモニウムを含むカークの倍地に培地容量
の0.5%の胞子懸濁液を添加し、紙栓をして37℃に静置
した。培養開始後3−4日目に培養を止め、以下の要領
で酵素を採取した。
菌体をガーゼで濾過除去し、更に遠心分離により除菌
した培養液を限外濾過(Amicon YM−10)により濃縮
し、20mMこはく酸緩衝液(pH4.5)に対して透析した。
した培養液を限外濾過(Amicon YM−10)により濃縮
し、20mMこはく酸緩衝液(pH4.5)に対して透析した。
次いで20mMこはく酸緩衝液(pH4.5)で平衡化したDEA
E−セファロース(Pharmacia社)カラム(径1 x 3.5c
m)に通した。
E−セファロース(Pharmacia社)カラム(径1 x 3.5c
m)に通した。
野生株のリグニンパーオキシダーゼはおおむねこのカ
ラムに吸着するのに対し、本発明の酵素は吸着せずに素
通りした。
ラムに吸着するのに対し、本発明の酵素は吸着せずに素
通りした。
続いてこの素通り画分をpH5.5の20mMこはく酸緩衝液
に対し一夜透析し、該緩衝液で平衡化したDEAE−セファ
ロースのカラムに通して酵素を吸着せしめた後、0−50
0mMの食塩濃度勾配をかけて溶出せしめた。約200mMの塩
濃度で本発明の酵素は溶出した。活性画分を集め、限外
濾過により濃縮し、更にセントリコン−10(Amicon社
製)で濃縮したのち、20mMこはく酸緩衝液(pH4.5)1L
に一夜透析し、該緩衝液で平衡化したTSK−gel DEAE−5
PWカラム(7.5mm I.Dx75mm)を用いて高速液体クロマト
グラフィーにより精製した。溶離条件は流速1ml/minと
し、20mMこはく酸緩衝液(pH4.5)を、試料50−200μ
を注入後6分間流し、80分かけて0−500mM食塩濃度勾
配で溶出した。本発明の酵素は最も早く溶出し、しかも
最も大きいピークであった。
に対し一夜透析し、該緩衝液で平衡化したDEAE−セファ
ロースのカラムに通して酵素を吸着せしめた後、0−50
0mMの食塩濃度勾配をかけて溶出せしめた。約200mMの塩
濃度で本発明の酵素は溶出した。活性画分を集め、限外
濾過により濃縮し、更にセントリコン−10(Amicon社
製)で濃縮したのち、20mMこはく酸緩衝液(pH4.5)1L
に一夜透析し、該緩衝液で平衡化したTSK−gel DEAE−5
PWカラム(7.5mm I.Dx75mm)を用いて高速液体クロマト
グラフィーにより精製した。溶離条件は流速1ml/minと
し、20mMこはく酸緩衝液(pH4.5)を、試料50−200μ
を注入後6分間流し、80分かけて0−500mM食塩濃度勾
配で溶出した。本発明の酵素は最も早く溶出し、しかも
最も大きいピークであった。
活性画分をSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動にか
け、単一のバンドであることを確認した。
け、単一のバンドであることを確認した。
以下に本発明の酵素の性質について述べる。
(1) 作用機序 本酵素の作用機序を確認するために、リグニンモデル
化合物として、ベラトリルアルコール(化合物I)、ジ
アリルプロパン(化合物II)、およびβ−O−4型2量
体モデル化合物(化合物III、IV、V)を用いて試験を
行なった。
化合物として、ベラトリルアルコール(化合物I)、ジ
アリルプロパン(化合物II)、およびβ−O−4型2量
体モデル化合物(化合物III、IV、V)を用いて試験を
行なった。
酵素反応は力価測定法の項で述べた第1表に示す組成
の反応液中で行ない、基質はそれぞれ終濃度が0.5mMと
なるように、ベラトリルアルコールの代りに加えた。反
応は30℃で5時間行ない、反応前後の反応液の酢酸エチ
ル抽出液を薄層クロマトグラフィー又は高速液体クロマ
トグラフィー(HPLC)で分析した。
の反応液中で行ない、基質はそれぞれ終濃度が0.5mMと
なるように、ベラトリルアルコールの代りに加えた。反
応は30℃で5時間行ない、反応前後の反応液の酢酸エチ
ル抽出液を薄層クロマトグラフィー又は高速液体クロマ
トグラフィー(HPLC)で分析した。
HPLCはODS逆相カラムを用い、アセトニトリルと水の
グラージェントにより行なった。
グラージェントにより行なった。
一例として化合物Vを基質として用いた場合のHPLCに
よるクロマトグラムを第1図に示す。図中のピークAは
β−0−4結合部で酸化分解した生成物である環状カー
ボネートのピークであり、その構造についてはHPLC分取
後、MS、IR、NMRにより決定した結果、次式の構造を有
する化合物であった。また、ピークBは化合物Vのピー
クである。
よるクロマトグラムを第1図に示す。図中のピークAは
β−0−4結合部で酸化分解した生成物である環状カー
ボネートのピークであり、その構造についてはHPLC分取
後、MS、IR、NMRにより決定した結果、次式の構造を有
する化合物であった。また、ピークBは化合物Vのピー
クである。
その他の化合物I〜IVについても化合物Vの場合と同
様の条件で反応させた結果、主生成物はα、β結合部で
酸化分解されたものであり、同様に構造を検討した結果
下記のアルデヒドであった。
様の条件で反応させた結果、主生成物はα、β結合部で
酸化分解されたものであり、同様に構造を検討した結果
下記のアルデヒドであった。
化合物I、II、IVの主反応生成物 化合物IIIの主反応生成物 (2) 至適pHおよびpH安定性酒石酸ナトリウム(pH4
以下)、こはくナトリウム(pH4−6)、リン酸ナトリ
ウム(pH7−8)を用いた。
以下)、こはくナトリウム(pH4−6)、リン酸ナトリ
ウム(pH7−8)を用いた。
至適pHの結果は第2図に示す通りであって、至適pHは
2.5付近であった。
2.5付近であった。
pH安定性は本発明の酵素を20mMの所定の緩衝液中で40
℃、10分間保持し、活性を測定した。結果は第3図に示
す通りであってpH4−8で安定であった。
℃、10分間保持し、活性を測定した。結果は第3図に示
す通りであってpH4−8で安定であった。
(3) 至適温度および熱安定性 至適温度は温度条件を変えて本発明酵素の活性を測定
した。その結果は第4図に示す通りであって、その至適
温度は40℃であった。
した。その結果は第4図に示す通りであって、その至適
温度は40℃であった。
熱安定性は20mMこはく酸緩衝液(pH4.5)中20−65℃
の各温度で本発明酵素を10分放置し、酵素活性を測定し
た。その結果は第5図に示す通りであって、本発明酵素
は60℃まで安定であった。
の各温度で本発明酵素を10分放置し、酵素活性を測定し
た。その結果は第5図に示す通りであって、本発明酵素
は60℃まで安定であった。
(4) 等電点 バイオライト(Bio−Rad社製)pH3−6を用いて電気
泳動法により測定した結果、5.0−5.1であった。
泳動法により測定した結果、5.0−5.1であった。
(5) 分子量 SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動により測定し約4
2,000であった。
2,000であった。
(6) 種々の物質の影響 金属塩、阻害剤等種々の物質を反応液中に1mMの濃度
で添加し、活性を測定した。結果は次に示す第3表の通
りであった。
で添加し、活性を測定した。結果は次に示す第3表の通
りであった。
(7) 本酵素はヘム蛋白質の特徴である407nm付近の
吸収があり、水溶液は褐色を呈する。
吸収があり、水溶液は褐色を呈する。
(8) 本酵素の作用には過酸化水素を必要とする 比較例1 野生株の酵素は、ME446株を窒素源濃度を1.2mMに抑え
たカークの培地で3日置きに酸素ガスで培養容器内の気
相を置換しながら培養せしめ、6−8日目の培養上清を
実施例1と同様の方法で処理し、イオン交換カラムで精
製した。野生株の酵素は20mMこはく酸緩衝液(pH4.5)
で緩衝化したDEAEセファロースカラムに吸着し、0−0.
5Mの食塩濃度勾配で溶出すると、0.2M付近で溶出せしめ
られる主要画分が得られた。
たカークの培地で3日置きに酸素ガスで培養容器内の気
相を置換しながら培養せしめ、6−8日目の培養上清を
実施例1と同様の方法で処理し、イオン交換カラムで精
製した。野生株の酵素は20mMこはく酸緩衝液(pH4.5)
で緩衝化したDEAEセファロースカラムに吸着し、0−0.
5Mの食塩濃度勾配で溶出すると、0.2M付近で溶出せしめ
られる主要画分が得られた。
該主要画分の酵素について実施例1と同様の方法でそ
の性質を調べ、比較した。
の性質を調べ、比較した。
至適pH、pH安定性、至適温度、熱安定性の結果をそれ
ぞれ第2図、第3図、第4図、第5図に示した。
ぞれ第2図、第3図、第4図、第5図に示した。
本発明により、従来より知られた酵素に比べて、製造
方法が容易であり、より広い温度やpHの範囲で活性を維
持できるリグニンパーオキシダーゼが発明され、実用上
有利な酵素が供給できる。
方法が容易であり、より広い温度やpHの範囲で活性を維
持できるリグニンパーオキシダーゼが発明され、実用上
有利な酵素が供給できる。
第1図は本発明の酵素をリグニンモデル化合物に作用さ
せた後のHPLCによるクロマトグラムである。 第2図は本酵素の至適pH、第3図は本酵素のpH安定性、
第4図は本酵素の至適温度、第5図は本酵素の熱安定性
を示すグラフである。 いずれの図においても、白抜き実線が本発明の酵素の結
果を示し、黒塗り破線は比較例として行なった野生株の
酵素の結果を示す。
せた後のHPLCによるクロマトグラムである。 第2図は本酵素の至適pH、第3図は本酵素のpH安定性、
第4図は本酵素の至適温度、第5図は本酵素の熱安定性
を示すグラフである。 いずれの図においても、白抜き実線が本発明の酵素の結
果を示し、黒塗り破線は比較例として行なった野生株の
酵素の結果を示す。
Claims (2)
- 【請求項1】下記の性質を有するリグニンパーオキシダ
ーゼMF−1 (1)作用 (I)過酸化水素存在下でベラトリルアルコールを酸化
してベラトリルアルデヒドを生成する。 (II)過酸化水素存在下でジアリルプロパンを酸化的に
分解する。 (2)基質特異性 アルコキシ基を有するジアリルプロパンおよびβ−O−
4型等リグニンの2量体モデル化合物を酸化的に分解す
る。 またアルコキシベンジルアルコール構造を有する化合物
を酸化する。 (3)至適pHおよびpH安定性 pH2.5付近でベラトリルアルコールを酸化する作用が至
適であり、pH4ないし8の範囲で安定である。 (4)至適温度および熱安定性 40℃付近でベラトリルアルコールを酸化する作用が至適
であり、60℃までの熱に安定である。 (5)等電点は5.0−5.1付近である。 (6)本酵素の分子量は約42,000である。 (SDSポリアクリルアミド電気泳動法による。) (7)本酵素はMnSO4、CuSO4により弱く阻害を受け、ED
TA、KCN、メルカプトエタノール、メルカプトプロパノ
ール、NaN3、ヒドロキシルアミンで強く阻害される。 (8)本酵素はヘム含有酵素であり、407nm付近に極大
吸収をもつ。 (9)本酵素の作用には過酸化水素を必要とする。 - 【請求項2】ファネロケーテ・クリソスポリウム(Phan
erocaete chrysosporium)に属し、以下の菌学的性質を
有する変異株を培地に接種し、その培養物から請求項1
記載のリグニンパーオキシダーゼMF−1を採取すること
を特徴とする請求項1記載のリグニンパーオキシダーゼ
MF−1の製造方法 (1)高濃度窒素源およびo−ジアニシジンを含む培地
で培養すると赤褐色色素を生成する。 (2)気相の酸素分圧を空気より高めることなく、培養
して、請求項1記載のリグニンパーオキシダーゼMF−1
を生産する。 (3)高濃度窒素源を含む培地で培養して請求項1記載
のリグニンパーオキシダーゼMF−1を生産する。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP63052660A JP2613241B2 (ja) | 1987-03-09 | 1988-03-08 | リグニンパーオキシダーゼmf−1およびその製造方法 |
Applications Claiming Priority (3)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP5384787 | 1987-03-09 | ||
JP62-53847 | 1987-03-09 | ||
JP63052660A JP2613241B2 (ja) | 1987-03-09 | 1988-03-08 | リグニンパーオキシダーゼmf−1およびその製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPS6427469A JPS6427469A (en) | 1989-01-30 |
JP2613241B2 true JP2613241B2 (ja) | 1997-05-21 |
Family
ID=26393290
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP63052660A Expired - Lifetime JP2613241B2 (ja) | 1987-03-09 | 1988-03-08 | リグニンパーオキシダーゼmf−1およびその製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2613241B2 (ja) |
Families Citing this family (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
FR2637292B1 (fr) * | 1988-10-03 | 1992-06-05 | Agronomique Inst Nat Rech | Procede de production de lignine-peroxydase par des cellules non-proliferantes de phanerochaete chrysosporium |
Family Cites Families (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
FR2574427B1 (fr) * | 1984-12-12 | 1987-08-07 | Agronomique Inst Nat Rech | Micro-organismes de souche phanerochaete chrysosporium et leur utilisation |
-
1988
- 1988-03-08 JP JP63052660A patent/JP2613241B2/ja not_active Expired - Lifetime
Non-Patent Citations (2)
Title |
---|
Archives of Biochemistry and Biophysics 241(1)P.304−314(1985) |
Proc Natl Acad Sci USA 81 P.2280−2284(1984) |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPS6427469A (en) | 1989-01-30 |
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