JP2608707B2 - 腫瘍結合マーカーp53を検出するための免疫組織化学検定法 - Google Patents

腫瘍結合マーカーp53を検出するための免疫組織化学検定法

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Description

【発明の詳細な説明】 <産業上の利用分野> 本発明は腫瘍結合マーカーを検査するための方法に関
し、更に詳しくはこの目的のための免疫組織化学方法に
関する。
<従来の技術> p53と命名される腫瘍結合マーカーもしくは抗原はレ
ーン(Lane)らによって動物の腫瘍中で始めて見出され
た〔Nature 278:261(1979);デ・レオ(De Leo)らの
Proc.Natl.Acad.Sci.,76:2420−2424(1979)〕。p53分
子は53,000ダルトンの分子量をもつリン蛋白であり、腫
瘍細胞の核中に通常見出される。ロッター(Rotter)ら
はp53に対して陽である腫瘍が進化する傾向があるのに
対して、p53に対して陰である腫瘍は退化する傾向があ
ることを発見した〔Int.J.Cancer 31:315−320(198
3)〕。また、細胞核中のp53の存在は正常細胞から腫瘍
状態への変換の指標になりうる。
クラウフォード(Crawford)ら〔Int.J.Cancer 30:40
3−408(1982)〕およびベンチモル(Benchimol)ら〔E
MBO J.1:1055−1062(1982)〕は固相放射能免疫検定法
および免疫沈澱検定法を使用して、乳ガン患者の血清中
にp53に対する抗体が存在することを見出した。更に、
クラウフォードらは乳ガン血清中のp53の存在は転移疾
患の徴候でありうることを示唆している。
種々の腫瘍細胞培養物中でのp53の検出がこの抗原に
特異な種々の抗体を使用して行われた。たとえばレーン
(Lane)らのNature 278:261−263(1979);デ・レオ
(De Leo)らのProc.Natl.Acad.Sci.,76:2420−2424(1
979)を参照。モノクローナル抗体もヒトおよびマウス
の細胞培養物からのp53に対して製造された。たとえば
トーマス(Thomas)らのVirology 131:502−517(198
3);ガーネイ(Gurney)らのJ.Virology 34:752−763
(1980)を参照。
これらの従来技術の方法は動物の細胞系中のp53の検
出のための免疫蛍光法およびヒトの細胞系中のp53の検
出のための免疫沈澱法を利用するものであった。然しな
がら、本発明者の知る限りにおいて、p53はヒトの腫瘍
試料またはヒトの腫瘍細胞系中で免疫組織化学方法によ
って局在化されたことはなかった。
<発明が解決しようとする問題点とそれを解決するため
の手段> 本発明者はヒト細胞中のp53のみならず組織試料中のp
53の検出も可能にする免疫組織化学的53の検定法を開発
した。この改良されたp53検定法は従来技術の免疫蛍光
検定法よりも感度がよく且つ安定であり、そして免疫沈
澱法よりも実施が簡単である免疫酵素着色法を利用する
ものである。
本発明によれば、ヒトの組織、部分または細胞をガラ
ス・スライド上に固定して、試料中のp53抗原と反応す
る抗−p53抗体と共に培養する。p53抗原−抗体複合体を
次いで酵素で直接に又は間接に標識化した抗−Igの添加
によって局在化させる。次に、この酵素用の発色性基質
溶液を上記のスライドに加えて発色させる。このスライ
ドを次いで顕微鏡下で検査してp53抗原の存在を示す特
異的着色細胞を調べる。
本発明による腫瘍細胞または組織中のp53を検出する
方法は、検査すべき組織または細胞の調製物をガラス・
スライド上に固定し、固定した組織または細胞をp53に
対する抗体と接触させ、この組織または細胞を酵素で直
接に又は間接に標識化した抗−Igと接触させ、この組織
または細胞を酵素の存在下で色を変化させる発色性色素
原の指示薬と接触させ、そしてこのスライドを検査して
p53の存在を調べることから成る。
本明細書において「酵素で直接に標識化した抗−Ig」
とはIgに対する抗体がネイケン(Nakane)らの方法〔J.
Histochem.Cytochem.22:1084−1091(1974)〕のような
方法によって酵素に結合していることを意味する。抗−
Ig−酵素結合体は1つの試剤を構成する。「酵素で間接
に標識化した抗−Ig」とは抗−Igを1つの試剤としてこ
の検定法に加え、次いでこの発明の検定法において抗−
Igに結合する別のIg−酵素試剤を加えることを意味す
る。酵素で間接に標識化した抗−Igは下記の実施例1に
示す。
<実施例> 以下の実施例は本発明によるp53分析法を具体的に説
明するためのものである。
実施例1 この実施例は本発明の分析法を行うための好ましい操
作法を示す。
1.顕微鏡スライド正荷電ポリマー溶液たとえば蒸留水1m
l当り100μgのポリ−1−リジン(分子量30,000〜70,0
00)の溶液で5分間処理してから洗浄および乾燥する。
他の正荷電ポリマー溶液たとえばポリ−1−アルギニン
をスライドを前処理するために使用することもできる。
2.低温装置を使用して試験すべき組織の凍結部分(6〜
8ミクロン)を切断してポリ−1−リジン被覆のスライ
ドに移す。この凍結部分の代わりに任意のヒト細胞また
は組織調整試料を使用することもできる。
3.直ちに、ザンボニ(Zamboni)の固定剤のような固定
剤中のスライド上に凍結組織部分を4℃で10〜15分間固
定し、pH7.4の0.01Mリン酸塩緩衝食塩水(PBS)中で5
分間洗い、−20℃の冷アセトン中に1分間入れ、最後に
リン酸塩緩衝食塩水中で5分間づつ2回洗う。
下記の工程4〜11は18〜25℃の室温で行うのが好まし
い。
4.リン酸塩緩衝食塩水溶液中の2%以上の正常の血清を
組織部分に加えて15分間培養する。過剰の試剤をスライ
ドから除く。
5.抗−p53モノクローナル抗体(2%正常血清/リン酸
塩緩衝食塩水中1:10に希釈したものが好ましい)を組織
部分に加えて30分間培養する。好ましい具体例におい
て、抗−p53モノクローナル抗体はマウス由来したもの
である。リン酸塩緩衝食塩水溶液中でそれぞれ5分間づ
つ2回洗う。
6.抗−Ig抗体(リン酸塩緩衝食塩水溶液中1:20に稀釈し
たものが好ましい)を組織部分に加えて30分間培養す
る。好ましい検定において、抗−Ig抗体は抗−p53抗体
の起源の種たとえば抗−マウスIgG抗体に対して種特異
性である。
7.パーオキシダーゼ/抗−パーオキシダーゼ(PAP)複
合体(好ましくは2%正常血清/リン酸塩緩衝食塩水中
1:50に稀釈したもの)を組織部分に加えて30分間培養す
る。ここでも好ましい検定において、このPAP複合体は
マウスPAP複合体のような抗−p53抗体と同じ種の起源の
ものである。リン酸塩緩衝食塩水中で5分間づつ2回洗
う。
8.発色性基質溶液を調製する。発色性基質溶液の例は当
業技術において周知であり、ジアミノベンチジン、アミ
ノエチルカーバゾールおよび4−クロロ−α−ナフトー
ルがあげられる。好ましい分析において、ジアミノベン
チジン(10mg)+30%過酸化水素(20μl)+リン酸塩
緩衝水溶液(16ml)を発色性溶液として使用する。組織
部分に加えて室温で6分間培養する。流出しつつ飲料水
中で5分間洗う。
9.組織部分を希釈ヘマトキシリン、マラカイトグリー
ン、またはメチレンブルー中で対比着色する。好ましく
は、ハリス(Harris)のヘマトキシリン(1:10希釈水)
を10分間この組織部分に適用する。流出しつつある飲料
水中で5分間洗う。
10.たとえば、95%エタノール中に2分間づつ2回、無
水エタノール中に2分間づつ2回、そしてキシレン中に
2分間づつ2回浸漬することによって組織部分を脱水す
る。
11.たとえば25×10の倍率でスライドを顕微鏡検査して
特異的に着色された細胞を検出する。
実施例2 この実施例はガーネイ(Gurney)らによってJ.Virolo
gy 34:752−763(1980)に記載されているような、p53
に対するモノクローナル抗体の製造を実証するものであ
る。
1.Balb/cマウスにSV40形質転換細胞を注入する。
2.免疫動物からの脾臓細胞を、ポリエチレングリコール
1000を使用して、ガルフレ(Gakfre)らのNature266:55
0−552(1977)に記載の方法によりネズミ科の骨髄NSI
と融合させる。
3.この融合細胞を多重ウエルプレート中で20%子牛胎児
血清、50μMハイポキサンチン、5μMアミノプテリン
および10μMチミジンを含むダルベコ(Dulbecco)の最
小必須培質中で生育させる。
4.生育を示しつつあるウエルからの培養物上澄液を、エ
ングバル(Engvall)およびパールマン(Perlmann)ら
のJ.Immunology 109:129−135(1972)に記載の酵素結
合免疫吸着検定法によって、p53抗原に対する抗体を調
べる。
5.陽性細胞を軟質寒天中でクローン化して、大きな培養
皿中で発展させる。培養上澄液を熱め、−20℃で貯蔵す
る。
実施例3 ここに述べるマウスのパーオキシダーゼ/抗−パーオ
キシダーゼ(PAP)複合体の調整物はスターンバーガー
(Sternberger)らのJ.Histochm.Cytochem.18:315−333
(1970)に記載の方法に基づくものである。
1.マウスにホースラディッシュ・パーオキシダーゼ(HR
PO)を注入して抗血清を作る。
2.マウス抗−HRPO血清を室温でHRPOと培養する。
3.えられた沈澱物を12,000gで4℃において20分間遠心
分離して冷リン酸塩緩衝食塩水(PBS)で3回洗う。
4.沈澱物をHRPO溶液中に再び懸濁させ、次いで1Nの塩酸
を使用してpH2.3に調製することによって溶解させる。
5.溶液を直ちに1Nの水酸化ナトリウムを使用してpH7.4
に中和する。
6.次に0.08Nの酢酸ナトリウム(2.7ml)と0.15Nの酢酸
アンモニウムを加える。
7.沈澱物を冷50%飽和硫酸アンモニウム中で1回洗う。
8.沈澱物を蒸留水にとかし、酢酸ナトリウム/酢酸アン
モニウム食塩水に対して透析する。
9.透析溶液を20,000gで4℃において16分間延伸分離し
て残存沈澱物を除く。
10.えられたマウスPAP複合体を分別(小口分け)して−
20℃で貯蔵する。
実施例4 この実施例はネイケン(Nakane)らのJ.Histochem.Cy
tochem.22:1084−1091(1974)に記載の方法のようにし
て抗−Igに酵素を結合させる操作を示すものである。
1.ホースラディッシュ・パーオキシダーゼ(HRPO)酵素
をpH8.0の0.1M重炭酸ナトリウム中の過ヨウ素酸ナトリ
ウムで30〜35分間処理することによって活性化する。
2.0.01Mの炭酸ナトリウム(pH9.5)中で平衡させたファ
デックスG−25(米国ニュージャージー州ピスカタウエ
イのファーマシア・インコーポレーテッド製)上のよう
なカラム・クロマトグラフによって、過剰の過ヨウ素酸
ナトリウムをHRPOから除く。
3.活性化したHRPOを抗−Igに加えて室温で2時間培養す
る。
4.この溶液を氷浴中で4摂氏に冷却する。
5.ナトリウム・ボロハイドライドを冷0.01M炭酸ナトリ
ウム(pH9.5)中にとかして4℃で12〜24時間かけて抗
−Ig−HRPOに加える。
6.この溶液にアセトンを加えて過剰のナトリウム・ボロ
ハイドライドを加え、室温で30分間放置する。
7.抗−Ig−HRPO複合体を蛋白安定化用溶液中で希釈して
−20℃で貯蔵する。
上記のp53の免疫組織化学検定法には多くの利点があ
る。第1に、この検定法は殆どの病理学研究室において
標準の凍結組織部分を使用してきまりきった手順で実施
することができる。ポリアクリルアミドゲル電気泳動お
よび免疫沈澱のような従来の検定は臨床研究室できまり
きった手順で実施されない。第2に、この検定法は高度
に安定な反応生成物を利用する免疫パーオキシダーゼ着
色技術を提供する。それ故、着色された試料をp53抗原
の局在の損失なしに数年間貯蔵することができる。他
方、免疫蛍光着色試料は局在を保存するために特別の条
件下で貯蔵しなければならない。第3に、この検定法は
特別の指示、訓練または装置なしに容易に行うことがで
きる。
本発明を特定の具体例について説明したけれども、そ
れらの詳細は限定条件と解釈すべきではない。本発明の
精神と範囲を逸脱することなしに種々の均等操作、変化
および変形が実施しうることは明らかだからである。そ
れ故、このような均等操作は本発明に包含されるもので
あることを理解すべきである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 デビツド イー ドイル アメリカ合衆国イリノイ州 60005 ア ーリントン ハイツ サウス リツジ アベニユー 1222 (56)参考文献 VIROLOGY,Vol.131, (1983)P.502−517 Patol,Pol.,Vol.34, No.2(1983)P.173−184 J.Microscopy,Vol. 125,No.3(1982)P.359−363

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ヒト細胞または組織試料中のp53抗原を検
    出するための免疫組織化学検定法であり、 (a)顕微鏡スライドをポリ−1−リジン及びポリ−1
    −アルギニンからなる群から選ばれる正荷電ポリマー溶
    液で処理し、 (b)組織又は細胞試料を切断してこの試料を顕微鏡ス
    ライドに移し、 (c)スライド上の試料を固定剤中で固定し、 (d)この試料をマウス抗−p53モノクローナル抗体と
    接触させ、 (e)この試料を抗−マウスIgG抗体と接触させ、 (f)この試料をマウスのパーオキシダーゼ/抗−パー
    オキシダーゼ(PAP)複合体と接触させ、 (g)この試料をジアミノベンチジンと過酸化水素とを
    含む発色性基質溶液と接触させ、そして (h)着色した細胞の存在についてスライドを顕微鏡で
    検査する、 ことからなる免疫組織化学検定法。
JP61117728A 1985-05-28 1986-05-23 腫瘍結合マーカーp53を検出するための免疫組織化学検定法 Expired - Lifetime JP2608707B2 (ja)

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