JP2607668B2 - 鉄系金属材料の表面硬化法 - Google Patents

鉄系金属材料の表面硬化法

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JP2607668B2
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晨 金子
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不二光 増山
享 西
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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は硬さを必要とする鉄製金属材料の表面硬化法
に関し、例えば石炭灰等により摩耗を受けるボイラチユ
ーブ構造物や自動車部品等の摺動部、その他機械構造物
の製作に有利に適用しうる表面硬化フエライト系材料
(例えば鋳鉄、炭素鋼、合金鉄)、オーステナイト系材
料(Cr,Niを含むステンレス鋼)を提供することができ
る方法に関する。
〔従来の技術〕
石炭灰等により摩耗等を受けるボイラチユーブ、構造
物や自動車部品等の摺動部には、その摩耗対策としてク
ロマイズ処理あるいは浸炭+クロマイズ処理が実施され
る場合がある。クロマイズ処理は金属Cr、アルミナ、塩
化アンモニウムの混合物中に被処理材を埋め込み、水素
雰囲気中で加熱する方法であり、その厚みはフエライト
系鋼の場合、約100μm、表面Cr濃度は10〜40%前後で
あり、また硬さは200Hv前後である。一方、第1段処理
として浸炭、第2段処理としてクロマイズする方法で
は、厚さ30μm、硬さは1000〜1100Hv前後の(CrFe)23
C6あるいは(CrFe)7C3の単一層が得られる。
〔発明が解決しようとする課題〕 クロマイズ処理層の硬さは200Hvと母材のそれ(140H
v)に比較すると大きいが、石炭灰等による損傷抵抗を
示す硬さは800Hv前後なので、これより硬さの低いクロ
マイズ層は約0.5〜1年で消失し、十分な効果を発揮で
きない等の欠点があつた。
一方、浸炭+クロマイズ処理では1000〜1100Hvの硬さ
を有する皮膜が得られるが、その厚さが約30μmと非常
に薄いために耐久性の点で問題があり、さらに皮膜を厚
くする必要があつた。また、この皮膜は単一相であるた
めに、割れ及び剥離等が発生しやすい傾向にあつた。
本発明は上記技術水準に鑑み、鉄系金属材料の表面に
硬く、かつ割れ難い極厚の硬化層を形成させる方法を提
供しようとするものである。
〔課題を解決するための手段〕
本発明は処理温度1100〜1200℃でクロマイズ処理して
鉄系金属材料表面にCr濃度20wt%以上で400μm以上の
極厚皮膜を形成させ、次に温度1000〜1100℃でガス浸炭
処理して該極厚皮膜中に1000〜1400Hvの高硬度を有する
(CrFe)23C6あるいは(CrFe)7C3と比較的低硬度を有
する(CrFe)3Cとをデンドライト状に交互に成長させる
ことを特徴とする鉄系金属材料の表面硬化法である。
本発明で処理対象となる鉄系金属材料は、例えば炭素
鋼、鋳鉄、Cr及びMoあるいはNi,Cr,Mo,V等を含む合金鋼
のようなフエライト系材料及び例えばCr,Niを含むステ
ンレス鋼のようなオーステナイト系材料があげられる。
本発明のクロマイズ処理においては、一般のクロマイ
ズ処理と同じ種類の処理剤(金属Cr粉、アルミナ粉及び
塩化アンモニウム)、同じ雰囲気(H2ガスのような還元
ガス雰囲気)及び同じ処理時間(10〜20時間)が採用さ
れ、これらの条件の変更によつてクロマイズ処理層の膜
厚をある程度変えることができるが、これらの条件のみ
によつては極厚のクロマイズ処理層膜は得られない。本
発明のクロマイズ処理の最大の特徴は処理温度を1100〜
1200℃に設定したことであつて、これによつて400μm
以上の極厚のクロマイズ層が得られる。1100℃未満では
得られるクロマイズ層の厚厚さが100〜200μmと薄く、
かつ該層のCr濃度が20wt%未満となる場合があり、この
濃度未満では(CrFe)23C6及び(CrFe)7C3等の硬い炭
化物が得がたい。また1200℃を越えるとクロマイズ処理
に使用するステンレス製ボツクスが熱により酸化あるい
は変形し処理不能となるからである。
本発明のガス浸炭処理において、処理温度が1000℃以
下ではCr量が多く浸炭せず(CrFe)7C3等は厚く形成さ
れないが、1000〜1100℃に上昇させ、かつ処理時間を5
時間以上にすることにより厚い(250μm程度)の(CrF
e)9C3等が得られるので、ガス浸炭処理温度は1000〜11
00℃に設定すべきである。またガス浸炭以外の浸炭法
(固体浸炭)では炭化物は形成されないので、ガス浸炭
にしなければならない。
〔作用〕 数百μmの厚さで、高硬度の炭化物が形成させたため
に、従来より著しく耐久性が向上するとともに、高硬度
及び低硬度の炭化物が共存するために、従来より割れ発
生が少なく、また耐剥離性も著しく向上した。
〔実施例〕
第1図に示すように0.07%C、2.25%Cr、1%Mo、0.
7%Nb、0.6%Ti、BalFeの組成を有するボイラチユーブ
(50.8φ×6.0t×500l)1を金属Cr、アルミナ、塩化ア
ンモニウムの混合物2中に埋め込み水素雰囲気中で1200
℃で10時間加熱しクロマイズ処理を実施した。
第2図はこの処理により得られた皮膜層3の断面の光
学顕微鏡組織を示す写真、第3図は、EPMA(X線マイク
ロアナライザ)によるFe及びCrの濃度分布を示す図表、
第4図はビツカース硬さ測定結果を示す図表である。こ
れらのデータからわかるように皮膜3の性状は、皮膜厚
さが530μm、Cr濃度が10〜50%、また硬さは170〜230H
v前後であつた。
次に、これを1100℃で5時間の処理条件でプロパンガ
ス雰囲気中で浸炭処理を実施した。第5図はこの処理に
より得られた皮膜層の断面の光学顕微鏡組織を示す写
真、第6図はEPMAによるFe,Cr及びCの濃度分布を示す
図表、第7図はビツカース硬さ測定結果を示す図表であ
る。なお、第8図に皮膜層4を拡大してみた光学顕微鏡
組織を示した。
第5図及び第8図において、約250μmの厚さを有す
る皮膜層4において、白色にみえるものは、EPMAによる
元素分析の結果、Cを5.4〜8.3%、Feを29.7%、Crを5
9.5%含有した炭化物で、また黒色にみえるものは、C
を6.3%、Feを78.3%、Crを12.9%含有した炭化物であ
ることがわかつた。これらは、この組成比より白色炭化
物が(CrFe)23C6、(CrFe)7C3及び黒色炭化物が(CrF
e)3Cと推定されたが、第9図に示すようにX線回析結
果によつても、これらの炭化物が形成されていることが
明らかである。
また、これらの炭化物はチユーブ1の管内面方向に向
つてデンドライト状に交互に成長しておりその硬さは、
(CrFe)7C3が1000〜1180Hv、一方(CrFe)3Cは、その
生成領域が小さいために確認することはできなかつた
が、この炭化物の化学組成と第10図に示す基本図(硬さ
と、C、Fe及びCrの組成データ)から推定すると700〜8
00Hv前後と考えられる。
なお、第6図及び第7図において皮膜4のデータは、
(CrFe)7C3を代表してプロツトしている。
また皮膜層5については、フエライト及び(CrFe)3C
が形成されているが、これについては、特に高硬度を示
していないのでその詳細は省略する。
〔発明の効果〕
クロマイズ温度1100〜1200℃で鉄系金属材料の表面に
400μm以上の極厚皮膜を形成させこの際のCr濃度を高
く(20wt%以上)保持し、次に1000〜1100℃で、ガス浸
炭処理を行つたことにより皮膜中に1100〜1180Hvの高硬
度を有する(CrFe)23C6、(CrFe)7C3及び比較的低硬
度を有する(CrFe)3Cをデンドライト状に交互に成長さ
せた。これにより耐割れ性が著しく改善されまた耐摩耗
性も大巾に向上した鉄系金属材料を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明のクロマイズ処理状況を示す概略図、第
2図はクロマイズ処理材の金属組織を示す断面光学顕微
鏡組織写真、第3図はクロマイズ処理材のEPMAによるFe
及びCrの濃度分布を示す図表、第4図は、クロマイズ処
理材の硬さ測定結果を示す図表、第5図は、クロマイズ
+浸炭処理材の金属組織を示す断面光学顕微鏡組織写
真、第6図はクロマイズ+浸炭処理材の断面のEPMAによ
るCrFe及びCの濃度分布を示す図表、第7図はクロマイ
ズ+浸炭処理材の硬さ測定結果を示す図表、第8図は、
クロマイズ+浸炭処理材の金属組織を示す断面の拡大顕
微鏡組織写真、第9図は、クロマイズ+浸炭処理材の表
面からのX線回析結果を示す図表、第10図は、炭化物の
化学組成と硬さとの関係を示す図表である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 篠原 正朝 長崎県長崎市飽の浦町1番1号 三菱重 工業株式会社長崎研究所内 (72)発明者 増山 不二光 長崎県長崎市飽の浦町1番1号 三菱重 工業株式会社長崎研究所 (72)発明者 西 享 長崎県西彼杵郡時津町久留里郷字永之浦 376番地10号 滲透工業株式会社長崎工 場内 (72)発明者 大石 多津也 長崎県西彼杵郡時津町久留里郷字永之浦 376番地10号 滲透工業株式会社長崎工 場内 (56)参考文献 特開 昭63−192854(JP,A)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】処理温度1100〜1200℃でクロマイズ処理し
    て鉄系金属材料表面にCr濃度20wt%以上で400μm以上
    の極厚皮膜を形成させ、次に温度1000〜1100℃でガス浸
    炭処理して該極厚皮膜中に1000〜1400Hvの高硬度を有す
    る(CrFe)23C6あるいは(CrFe)7C3と比較的低硬度を
    有する(CrFe)3Cとをデンドライト状に交互に成長させ
    ることを特徴とする鉄系金属材料の表面硬化法。
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