JP2606133B2 - ネットワークの経路制御方法 - Google Patents

ネットワークの経路制御方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ローカルエリアネット
ワーク(LAN)や広域ネットワーク(WAN)などの
ネットワークにおける経路決定(ルーティング)方法に
関し、特に、ネットワークに接続されたコンピュータや
ゲートウェイなどの処理装置(以下、ノードという)
が、RIP(Routing Information Protocol)などのダ
イナミック・ルーティング・プロトコルを用いる場合に
おける経路制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ネットワークに接続されたあるノードか
ら他のノードへの経路決定を制御する方法には、予め経
路情報を設定しておく静的な方法と、経路情報が自動的
に設定されかつネットワーク構成の変化に応じて経路情
報が自動的に変更される動的な方法とがある。この動的
な方法、すなわちダイナミック・ルーティング・プロト
コルとしては、従来から距離ベクトル(Distance Vecto
r)アルゴリズムが使用されている。この方法では、発
側ノードiと到着側ノードjへの経路に必要なコストD
(i,j)を以下に示した式で計算する。
【0003】
【数1】 ここでkは、隣接するゲートウェイ・ノードを示す。こ
こでいうコストは、メトリックとも呼ばれ、距離や伝搬
特性を加味して定められるものであり、値が小さいほど
その経路が良好な経路であることを示している。上述の
式において、式(1)は、自分自身へのメトリックは0で
あることを示し、式(2)は、発側ノードとゲートウェイ
とのメトリックd(i,k)と、そのゲートウェイと着側
ノードのメトリックとの和を求めて評価し、この和が最
小のものを実ルーティング(実際の経路)として採用す
ることを意味する。
【0004】距離ベクトルアルゴリズムを使用するダイ
ナミック・ルーティング・プロトコルの代表的なものと
して、RIPがある。RIPでは、メトリックとして0
または正の整数が使用され、メトリックが16であれ
ば、その経路は回線障害などにより使用できないと判断
される。そしてRIPでは、ネットワーク構成(ネット
ワークトポロジ)の変化に追従するため、隣接するゲー
トウェイが定期的にD(k,j)の情報を送る機能があ
り、送られた情報によって経路情報が逐次再評価され
る。再評価によって経路情報が変化する場合もある。
【0005】ここで、ノード間のリンクがダウンし、そ
のリンクを使用しているルートに関与するノードでルー
ティングの再評価が発生したとする。このとき、上記の
方法では、全ノードに対して正確なルーティング評価が
行なわれるまでには、経路情報の交換が何回も行なわれ
ることになる。最悪の場合、回線断となったリンクを使
用するルートのメトリックが1であって、迂回ルートの
メトリックが15であるとすると、ノード間での経路情
報のピンポン(往復)が14回以上発生する。再評価の
周期すなわち経路情報の送信の周期を例えば30秒とす
れば、障害発生後、7分以上経過しなければ、正確なル
ーティングが行なえないことになる。
【0006】距離ベクトルアルゴリズムにおいて、経路
変更のイベントに対してネットワークが安定状態に遷移
するのに必要な時間を短縮する方法として、トリガード
・アップデート(triggered update)がある。トリガー
ド・アップデートについて、図2を用いて説明する。図
2においてネットワークは太線で表わされており、各ネ
ットワークにそれぞれ接続されたノードA〜Dが相互に
接続されて、ネットワーク間の接続が行なわれている。
なお図において、[]で囲まれた数字は、対応するリン
クのメトリックを表わしている。
【0007】D(i,j)は隣接するノード間で定期的に
送信されているが、このD(i,j)が隣接するノードか
ら一定時間以上送信されてこなかった場合(経路タイム
アウトの発生)、その経路に障害が発生したと判断する
ことができる。トリガード・アップデートでは、経路タ
イムアウトに対して以下のような処理を行なうことによ
り、速やかな経路伝搬を可能としている。ここでは、ノ
ードBとノードDとを結ぶリンクに障害が発生したとす
る。
【0008】ノードBでは、経路タイムアウトが発生し
たことから、経路タイムアウト発生後に直ちに、ネット
ワークNに対する経路のメトリックが16になったとい
う情報を各ノードに対して送信する。メトリックの変化
が起きたことを知らせるこの情報をトリガード・アップ
デートとよぶ。ノードBに隣接するノードA,Cは、こ
の情報を受け取ったら、ネットワークNに対するメトリ
ックの再評価を行なう。その結果、ノードA,Cのネッ
トワークNに対するメトリックが16に設定される。同
様に、ノードA,Cもそれぞれ隣接するノードに対し、
自ノードのメトリックの変分を通知する。自分自身は、
他ノードから受けたトリガード・アップデートに対し
て、重複してトリガード・アップデートを発信すること
はしない。
【0009】そうこうしているうちに、ノードDは定期
的な経路情報[D(i,j)]を送出し、これに基づき、
ノードCではネットワークNに対するメトリックが11
に再設定される。ノードC内でメトリック情報の変化が
発生したため、逆向きのトリガード・アップデートが新
たに生成され、ネットワーク内を伝搬する。
【0010】つまり、まず、障害の検出を知らせるトリ
ガード・アップデートがネットワーク内を急速に伝搬
し、障害が発生していたリンクを使用する経路にメトリ
ック16が設定される。この場合、障害が発生したリン
クの影響を受けないノードにトリガード・アップデート
が到達した場合、メトリックの変化が起きないので、ト
リガード・アップデートの伝搬はそこで停止する。そし
て、定期的な経路情報の交換により、トリガード・アッ
プデートの伝搬が停止したノードに隣接するノードで、
メトリック情報の変化が生じる。このメトリック情報の
変化に応じて、トリガード・アップデートが生成し、先
程とは逆向きにネットワークを伝搬し、最初にトリガー
ド・アップデートを生成したノード(最初に経路タイム
アウトを検出したノード)に至って伝搬が停止する。
【0011】このようにして、トリガード・アップデー
トを用いる方法は、定期起動型とイベント駆動型の2つ
のタイプのルーティング情報の伝搬によって、経路変化
の遷移時間の著しい短縮を実現している。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、トリガ
ード・アップデートを用いる上述の従来の技術では、最
初にトリガード・アップデートが発生してから、経路情
報を変更する必要があるノードの全てへのトリガード・
アップデートの伝搬が完了するまでに、ある程度の時間
がかかり、また、ノード間で時間差が生じるために、経
路安定状態に至る過程で情報伝搬のループが発生する場
合があるという問題点がある。このようなループが発生
することについて、図3を用いて説明する。
【0013】図3(a)は10個のノードA〜Jによって
構成されるネットワークの初期状態を示したものであ
り、[]で囲まれた数字は、対応するリンクのメトリッ
クを示している。初期状態では、ノードAからノードD
へのルーティングは、図において太線で示されるよう
に、メトリック3でノードA→ノードB→ノードC→ノ
ードDという経路をとる。ここで、図3(b)に示される
ように、ノードCとノードDとの間のリンクに障害が発
生したとする。この障害により、ノードCにおけるノー
ドDへのメトリックが16に変更される。この時点でノ
ードCはトリガード・アップデートを発生し、ノードA
ではノードDに対するメトリックの変更が発生してその
メトリックが7となり、ルーティングはノードA→ノー
ドB→ノードF→ノードG→ノードDに変更される。図
において、トリガード・アップデートを受信したノード
に平行斜線が付されている。
【0014】ここで、ノードAでのメトリックの変更時
点でノードEがトリガード・アップデートを受信してお
らず、かつノードEがノードAに対して定期的な経路情
報の伝搬を行なったとする。この場合、ノードAは、ト
リガード・アップデート以前の状態を最新状態と判断す
ることになるので、トリガードアップデートを再度発
行し、ノードDに対するメトリックをに再設定する
[図3(c)]。この不安定状態は、ノードDからトリガ
ード・アップデートを再度受け取った後に復旧するが、
トリガード・アップデートのタイミングと定期的な経路
情報の交換のタイミングとの関係によっては、ノードA
とノードEとの間で永久にトリガード・アップデートが
往復し続ける(ピンポン現象)ことになる。
【0015】本発明の目的は、定期的な経路情報の交換
とトリガード・アップデートとの干渉が防止され、高速
かつ確実に経路更新を行なうことのできるネットワーク
の経路制御方法を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】本発明の第1のネットワ
ークの経路制御方法は、ネットワークに接続された各ノ
ードが、距離ベクトルアルゴリズムに基づく動的ルーテ
ィングプロトコルを使用し、定期的に経路情報を交換す
るとともに経路情報の変更を行なうべきことを検知した
場合に経路更新情報を交換して経路の更新を行なうこと
によって動的な経路制御を行なう場合における経路制御
方法において、前記各ノードが、前記経路更新情報を受
信した場合に、経路制御に関する他のノードからの応答
、当該ノードから到達可能なノード全てへの伝搬が確
実に行われるのに十分な時間T t の2倍の時間にわたっ
て無視する。
【0017】本発明の第2のネットワークの経路制御方
法は、ネットワークに接続された各ノードが距離ベクト
ルアルゴリズムに基づく動的ルーティングプロトコルを
使用して動的な経路制御を行なう場合における経路制御
方法において、トリガード・アップデートを受け取った
各ノードから、当該ノードより到達可能なノード全てへ
の伝搬が確実に行われるのに十分な時間をTtとし、前
記各ノードが交換する定期的な経路情報の周期をTc
して、前記各ノードが、トリガード・アップデートを受
信した場合に、 Tc×N > 2×Tt を満足する最小のNをNminとして、他のノードからの
経路制御に関する応答をNmin回にわたって無視する。
【0018】
【作用】本発明では、トリガード・アップデートのアル
ゴリズムに、隣接ノードからの定期的な経路情報を受け
取るかどうかのガードタイミングを設けることにより、
トリガード・アップデートのピンポン現象を回避してい
る。具体的には、当該ノードから到達可能なノード全
てへの伝搬が確実に行われるのに十分な時間をTt
し、各ノードが交換する定期的な経路情報の周期をT
cとして、各ノードが、トリガード・アップデートを受
信したときに、 Tc×N > 2×Tt (3) を満足する最小のNをNminとして、各ノードからの経
路制御に関する応答をNmin回にわたって無効とすれば
よい。
【0019】上述の式(3)の右辺の2×Ttは、最も伝搬
時間のかかるノードにトリガード・アップデートが到着
し、それと同時にそのノードが定期的な経路情報の送信
を行なったとして発生する逆方向のトリガード・アップ
デートの到着時間を表わしている。各ノードからの定期
的な経路情報の送信は非同期で行なわれるが、最低限、
上述のNmin回だけ各ノードからの応答を無視すること
により、各ノードにトリガード・アップデートが伝搬し
た状態で定期的な経路情報を受信することとなって、上
述したようなトリガード・アップデートのピンポン現象
を回避することができる。
【0020】
【実施例】次に、本発明の実施例について説明する。こ
こでは、ネットワークのダイナミック・ルーティング・
プロトコルとして、距離ベクトルアルゴリズムを用いる
RIPが使用されるものとする。
【0021】図1(a)は、本発明の一実施例の経路制御
方法が適用されるネットワークの構成例を示している。
図において、[]内の数字は対応するリンクのメトリッ
クを表わしている。ここでネットワークの各ノードA〜
Jは、それぞれ、ルーティングテーブルとタイマを備え
ており、経路タイムアウトを検出し、定期的に経路情報
を隣接ノードに送出し交換するようになっている。さら
に各ノードA〜Jは、トリガード・アップデートを受信
した場合には、2×Ttの時限をタイマにセットしてタ
イマを起動し、このタイマの動作中には、隣接するノー
ドから定期的な経路情報の交換によるデータを受け取っ
たとしても、実際のルーティングテーブルの再評価を行
なわないようになっている。ここでTtは、当該ノード
から到達可能なノード全てにトリガード・アップデート
が伝搬するのに十分な時間である。
【0022】図1(a)に示す初期状態において、ノード
AからノードDへのルーティングは、図において太線で
示されるように、ノードA→ノードB→ノードC→ノー
ドDというメトリックが3である経路である。ここで、
図1(b)に示されるように、ノードCとノードDとの間
のリンクがリンク障害になったとする。この障害はノー
ドCで検出され、ノードCにおけるノードDへのメトリ
ックが16に変更され、ノードCにトリガード・アップ
デートが発生する。その結果、ノードAではノードDに
対するメトリックが7に変更され、そのルーティングは
ノードA→ノードB→ノードF→ノードG→ノードDと
変更される。
【0023】ここで、ノードAのメトリック変更の時点
ではノードEはトリガード・アップデートを受信してお
らず、かつノードEがノードAに対して定期的なルート
情報伝搬を行なった場合を想定する。ノードAでは、ト
リガード・アップデートを受信した時点で、ネットワー
クの全ノードへの経路伝搬に必要十分な時間Ttの2倍
の時限がセットされてタイマが起動される。このため、
ノードDからの定期的な経路情報メッセージを受信した
場合、タイマ内であれば実際のルーティングテーブルの
再評価は行なわれない。したがって、トリガード・アッ
プデートのピンポン現象の発生が回避される。
【0024】トリガード・アップデートが必要な全ての
ノードに伝搬された時点では、各ノードのルーティング
評価は、図3(c)に示すような安定状態に遷移する。
【0025】
【発明の効果】以上説明したように本発明は、トリガー
ド・アップデートのアルゴリズムに、隣接ノードからの
定期的な経路情報を受け取るかどうかのガードタイミン
グを設けることにより、トリガード・アップデートのピ
ンポン現象の発生が回避され、定期的な経路情報の交換
とトリガード・アップデートとの干渉が防止されるの
で、高速かつ確実に経路更新を行なうことができるよう
になるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)〜(c)はそれぞれ本発明の一実施例の経路制
御方法を説明する図である。
【図2】ダイナミック・ルーティングにおける各ノード
のルーティングメトリックの一般的な状態遷移図であ
る。
【図3】(a)〜(c)はそれぞれ従来の経路制御方法を説明
する図である。
【符号の説明】
A〜J ノード N ネットワーク

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ネットワークに接続された各ノードが、
    距離ベクトルアルゴリズムに基づく動的ルーティングプ
    ロトコルを使用し、定期的に経路情報を交換するととも
    に経路情報の変更を行なうべきことを検知した場合に経
    路更新情報を交換して経路の更新を行なうことによって
    動的な経路制御を行なう場合における経路制御方法にお
    いて、 前記各ノードが、前記経路更新情報を受信した場合に、
    経路制御に関する他のノードからの応答を、当該ノード
    から到達可能なノード全てへの伝搬が確実に行われるの
    に十分な時間T t の2倍の時間にわたって無視すること
    を特徴とするネットワークの経路制御方法。
  2. 【請求項2】 ネットワークに接続された各ノードが距
    離ベクトルアルゴリズムに基づく動的ルーティングプロ
    トコルを使用して動的な経路制御を行なう場合における
    経路制御方法において、トリガード・アップデートを受け取った各ノードから、
    当該ノードより到達可能なノード全てへの伝搬が確実に
    行われる のに十分な時間をTtとし、前記各ノードが交
    換する定期的な経路情報の周期をTcとして、 前記各ノードが、トリガード・アップデートを受信した
    場合に、 Tc×N > 2×Tt を満足する最小のNをNminとして、他のノードからの
    経路制御に関する応答をNmin回にわたって無視するこ
    とを特徴とするネットワークの経路制御方法。
  3. 【請求項3】 前記動的ルーティングプロトコルがRI
    Pである請求項2に記載のネットワークの経路制御方
    法。
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