JP2605171B2 - 高靭性熱処理用電縫鋼管 - Google Patents

高靭性熱処理用電縫鋼管

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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は、熱処理を施すことにより高い強度と靭性を
付与することができる高靭性熱処理用電縫鋼管に関す
る。
(従来の技術) 熱処理用電縫鋼管は、自動車の懸架機構部に用いられ
る中空スタビライザーなど機械構造用の部材として多用
される傾向にあり、また近年、自動車の軽量化の動向に
対応して鋼管製ドア補強材の開発が進んでいる。このド
ア補強材は、側面衝突時の乗員の保護を目的としてドア
の内部に設置される。このような用途に使用される鋼管
は、成形加工の前は低強度で加工性に優れている必要が
あり、成形加工後の熱処理によって、例えば150kgf/mm2
級までの高強度になることが求められる傾向にあり、さ
らに、衝突時の突発的な応力負荷に対しても脆性的な折
損が生じないよう十分な靭性を有していることが必要と
される。例えば、特開昭64−4424号公報、特開昭64−17
820号公報には加工性の優れた熱処理用電縫鋼管の製造
方法が提案されている。
(発明が解決しようとする課題) 本発明は、製管までの状態では低強度で加工性に優
れ、加工後の熱処理によって、高強度と優れた低温靭性
を有するに到る熱処理用電縫鋼管を提供することを目的
とする。
(課題を解決するための手段) 本発明者は、種々検討を重ねた結果、焼入れ処理後に
高強度ならびに高靭性を有する電縫鋼管を得るために
は、鋼に適量のNbを含有させ、O(酸素)含有量を極力
低く抑えることが必要であることを確認した。本発明は
この知見に基づいて成されたもので、その要旨は下記
およびの電縫鋼管にある(以下、「%」はすべて重量
%を意味する)。
重量%で、C:0.10〜0.30%、Si:0.05〜0.50%、Mn:
0.41〜1.40%、Al:0.005〜0.050%、Nb:0.005〜0.050%
を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなり、不純
物中のPが0.025%以下、Sが0.010%以下、Oが0.0010
%以下である、熱処理によって優れた低温靭性を有する
熱処理用電縫鋼管。
前記記載の成分に加え、さらに、重量%で、Cr:
0.05〜0.50%、Mo:0.05〜0.50%、Ti:0.005〜0.050%
(ただし、Ti≧3.4N%)、B:0.0010〜0.0050%の1種以
上を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなり、不
純物中のPが0.025%以下、Sが0.010%以下、Oが0.00
10%以下である、熱処理によって優れた低温靭性を有す
る熱処理用電縫鋼管。
(作用) 以下、本発明の熱処理用電縫鋼管を構成する鋼に含ま
れる各成分の作用効果とそれらの含有量の限定理由につ
いて述べる。
Cは熱処理後の電縫鋼管の強度を高める元素である。
しかし、その含有量が0.10%未満では強度の確保が不十
分であり、また、0.30%を超えると製管のまま(熱処理
前)での強度が高くなり過ぎ、加工性に乏しくなる。こ
れらの理由からCの適正含有量は0.10〜0.30%である。
Siは製鋼時の脱酸剤として必要不可欠の元素である
が、0.05%未満では十分な効果は得られず、一方、含有
量が0.50%を超えると製管時の溶接性が劣化する。
Mnは強度を高める元素であるが、含有量が0.40%未満
では機械構造用部材としての強度が不十分であり、一
方、1.40%を超えると熱処理前の強度が高くなり過ぎて
加工が困難となり、また、溶接性にも悪影響を及ぼす。
Alは鋼の脱酸に用いる元素であるが、含有量が0.005
%未満では脱酸効果は少なく、一方、0.050%を超える
と鋼の焼入れ性が劣化する。
Nbは微量含有させることにより鋼の強度を大幅に上昇
させる効果を有するが、含有量が0.005%未満ではその
効果は十分ではなく、一方、0.050%を超えると効果が
飽和することから、Nb含有量は0.005〜0.050%とした。
前記の発明の鋼は、上記の成分以外、残部がFeと不
可避の不純物からなるものである。不純物としては、
P、S、およびO(酸素)の上限を抑えることが重要で
ある。
P、Sは鋼の熱間での加工性を向上させるために極力
低減させることが望ましく、その上限を、Pについては
0.025%、Sについては0.010%とした。
Oは150kgf/mm2級の高強度材の靭性を大きく影響す
る。靭性を向上させるためには、その含有量を極力低減
させる必要があり、−40〜−60℃程度の寒冷地での使用
を考慮して、その上限を0.0010%とした。
の発明の鋼は、の発明の鋼に、さらにCr、Mo、Ti
およびBのうち1種以上をそれぞれ所定量加えた鋼であ
る。
CrおよびMgの鋼の強度および靭性を向上させる元素で
あるが、いずれも含有量が0.05%未満ではその効果は小
さく、一方、0.50%を超えると効果は飽和する。従っ
て、CrおよびMoの含有量は0.05〜0.050%とした。
TiはNbと同様に、微量含有させることにより鋼の強度
を大幅に上昇させる効果を有する。しかし、その含有量
が0.005%未満ではその効果は小さく、一方、0.050%を
超えると効果は飽和する。なお、固溶Nが鋼中に存在す
るとBと結びついて焼き入れ性を劣化させるので、この
NをTiNとして固定するために鋼中のNと等モルのTiを
含有させるとして、Tiの含有量をTi≧3.4N%とする(係
数の3.4はNの原子量に対するTiの原子量の比であ
る)。従って、Ti含有量は0.005〜0.050%で、かつTi≧
3.4N%とした。
BはNbおよびTiと同様に微量含有させることにより鋼
の強度を大幅に上昇させる効果を有する。しかし、含有
量が0.0010%未満ではその効果は小さく、一方、0.0050
%を超えると効果は飽和する。従って、B含有量は0.00
10〜0.0050%とする。
本発明の電縫鋼管を製造するには、上記の各成分を含
有する鋼を熱間圧延により鋼帯とした後、この鋼帯を管
状に成形し、その両エッジをERW法により溶接して鋼管
(ERW鋼管)とすればよい。この鋼管のままのERW鋼管
は、引張強さが約65kgf/mm2であり、通常行われる成形
加工には十分に耐えることができる。
この鋼管は、ユーザー(機械メーカー)側で所定形状
の機械部材に成形加工され、その後焼入れ処理が施され
て高強度と高靭性をもつに到る。焼入れ処理は細粒材を
得るため短時間加熱とするのが好ましい。例えば、高周
波誘導加熱もしくは直接通電加熱(加熱温度は850℃〜9
50℃)の後水冷する焼入れ法が推奨される。このような
焼入れのままで使用してもよいが、150〜350℃で低温焼
もどし処理を施して、焼入れ時の歪みを除去して用いて
もよい。
(実施例) 第1表に示す化学組成を有する鋼を熱間圧延により鋼
帯とした後、これを管状に成形し、ERW鋼管とした。こ
の状態での引張強さ(熱処理前の引張強さ)を第1表に
併せ示す。
この鋼管を高周波加熱(900℃×20秒保持)後水冷
(焼入れ)した後、および焼入れ後250℃で20分間加熱
後空冷する焼もどしを行った後、引張試験(降伏点およ
び引張強さを測定)と切欠き付き鋼管の低温落重試験を
行った。
低温落重試験では、中央部に1mm深さの切欠きをつけ
た試験片を所定の温度に冷やして、切欠きを下にして水
平に支持し、中央部に高さ2mから重さ90kgの重錘を落下
させることにより瞬間的(衝撃的)に応力を負荷し、試
験片が脆性的な折損を生ずるか否かを判定した。
試験結果を第1表に併せ示す。熱処理前の引張強さ、
熱処理後の降伏点と引張強さ、および低温落重試験の欄
において、上段は焼入れまま材、下段は焼入れ後250℃
焼もどし材についての結果である。また、低温落重試験
の欄において、○印は鋼管試験片が延性変形したこと
を、×印は鋼管試験片が脆性的に折損したことをあらわ
す。
第1表の結果から、本発明の鋼管は、熱処理を施すこ
とにより引張強さが著しく増大し、150kgf/mm2を超える
高強度を有するとともに、−100℃でも脆性的な折損を
生ずることなく、優れた低温靭性を示すことがわかる。
(発明の効果) 本発明の熱処理用電縫鋼管は、熱処理を施すことによ
り高強度を有するとともに高い靭性を示し、特に、近年
開発が進みつつある自動車の鋼管製ドア補強材として、
あるいはその他の機械構造用部材として好適な鋼管であ
る。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量%で、C:0.10〜0.30%、Si:0.05〜0.5
    0%、Mn:0.40〜1.40%、Al:0.005〜0.050%、Nb:0.005
    〜0.050%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物から
    なり、不純物中のPが0.025%以下、Sが0.010%以下、
    Oが0.0010%以下である、熱処理によって優れた低温靭
    性を有する熱処理用電縫鋼管。
  2. 【請求項2】請求項(1)記載の成分に加え、さらに、
    重量%で、Cr:0.05〜0.50%、Mo:0.05〜0.50%、Ti:0.0
    05〜0.050%(ただし、Ti≧3.4N%)、B:0.0010〜0.005
    0%の1種以上を含有し、残部がFeおよび不可避不純物
    からなり、不純物中のPが0.025%以下、Sが0.010%以
    下、Oが0.0010%以下である、熱処理によって優れた低
    温靭性を有する熱処理用電縫鋼管。
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