JP2604365B2 - 細菌酵素類 - Google Patents

細菌酵素類

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JP2604365B2
JP2604365B2 JP61502923A JP50292386A JP2604365B2 JP 2604365 B2 JP2604365 B2 JP 2604365B2 JP 61502923 A JP61502923 A JP 61502923A JP 50292386 A JP50292386 A JP 50292386A JP 2604365 B2 JP2604365 B2 JP 2604365B2
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Description

【発明の詳細な説明】 この発明は、細菌酵素類の製法並びにこの製法に有用
なハイブリッドプラスミド類および微生物類に関する。
さらにこの発明は、生物物質(biological material)
から核酸類を除去するための、一つの酵素であるヌクレ
アーゼの使用および形質発現を開始するのに有用な調節
領域に関する。
セラチア spp(Serratia spp.)が、多数の加水分解
酵素を産生して培養基中に排出することが見出された。
このことは、蛋白が周囲の培地よりも細胞周辺腔(peri
plasmic space)に優先的に排出される、他のグラム陰
性菌とは著しく異なる。かようなペリプラズミック蛋白
は、特に細胞が高密度に成育する場合に、培養基に漏出
する傾向がある。
この発明によって、細胞外セラチア spp酵素類(す
なわちセラチアに発現されるときは細胞外に分泌され
る)をエンコード(encode)するDNAが単離された。そ
して遺伝子産物の工業的生産に適しかつ前記セラチア菌
のDNAを保有する微生物が培養され、前記セラチア酵素
類を産生することが見出された。
また、細胞外セラチア spp酵素をエンコードする挿
入DNAを有するハイブリッドプラスミドを、通常、遺伝
子産物を培養基に排出しない他の微生物、すなわちエシ
エリヒア・コリに保有させても、前記セラチア酵素がエ
シエリヒア・コリによって培養基にある程度排出される
ことが見出された(実施例1および6参照)。それ故、
エシエリヒア・コリ細胞から培養基に、比較的簡単に排
出される前記セラチア酵素の部分を部分的に精製するこ
とが可能であり、例えば瀘過してエシエリヒア・コリの
細胞を除去し、次いで例えば硫酸アンモニウムを用いて
瀘液から前記酵素を沈澱させて行われる。この明細書に
おいて、“排出”という用語は、遺伝子産物が少なくと
も細胞の細胞質膜を通じて移動することを意味する。
したがって、この発明は、一態様として、細胞外セラ
チア spp酵素をエンコードする、セラチア spp由来の
DNAを含むハイブリッドプラスミドを保有する微生物
を、培養基内で培養し、培養物から酵素を収穫すること
からなる細菌酵素の製造法を提供するものである。
特定の態様として、この発明は、セラチア spp酵素
の部分がセラチア sppから培養基に排出されその培養
基から収穫することからなる、実質的に他の細菌蛋白を
含有しないセラチアspp酵素の製造法に関する。
微生物の培養は、微生物の最適の発育に必要な培養と
無機物を含有する液体培養基で行うのが好ましい。酵素
の収穫は、それ自体公知の方法で行うことができる。上
記のように、酵素の精製は、瀘過して宿主細胞を除去
し、次いで瀘液からヌクレアーゼを沈澱させることによ
って行ってもよい。通常、その沈澱は、例えばトリス−
EDTAのような適切な緩衝液に溶解され次いで透析によっ
て沈澱剤が除去される。
セラチア sppによって産生される加水分解酵素とし
ては、核酸類を加水分解して、ヌクレオチド類,オリゴ
ヌクレオチド類もしくは小さな核酸のフラグメントにす
るヌクレアーゼ、及び脂質類や燐脂質類由来の脂肪酸を
加水分解するリパーゼとホスホリパーゼが挙げられる。
微生物として代表的なものは細菌であり、グラム陰性
菌が好ましい。セラチア sppは日和見病原菌であるの
で、セラチア spp酵素の製造にセラチア sppを利用す
ることは通常好ましいことではなく、生産微生物として
の利用が制限されている。さらにセラチア sppは、所
望の産物を汚染する細胞外プロテアーゼを産生する。セ
ラチア spp酵素類産生用の産生微生物として使用され
るグラム陰性菌として好ましいのは、エシエリヒア・コ
リのような遺伝子産物の産生に一般に用いられる細菌で
ある。
また、この発明は、上記のように細胞外セラチア sp
p酵素をエンコードする、セラチア spp由来のDNAを有
するハイブリッドプラスミドに関する。
この発明による酵素類の産生用のベクターとして有用
なプラスミド類は、問題の微生物内に複製できる、前記
目的のために通常用いられるいずれのタイプのプラスミ
ドであってもよい。問題の酵素類を大量生産するのに用
いてもよりプラスミド類は例えばいわゆるランアウエイ
プラスミド類、すなわち、ある条件下で制御されない複
製の挙動(uncontrolled replication behaviour)を示
すプラスミドである。この挙動を示すプラスミド類は、
例えば、米国特許第4,495,287号およびヨーロッパ特許
願公開第0109150号に開示されている。
細菌ヌクレアーゼは、例えば、遺伝子組換え技術によ
って変性されて天然では問題の細胞と関連のない産物を
産出する細胞を醗酵させることによって産出される産物
のような微生物の発酵によって製造される蛋白質産物を
精製するのに著しく価値の高い酵素である。これらの産
物の精製の重要な工程は、細胞由来の核酸から蛋白性産
物を分離する工程である。この精製が、核酸を沈澱させ
るというような標準の化学処理で行われる場合、所望の
産物を含有する物質が高粘度なために所望物質の分離が
困難になることから、細胞によって産生される所望の産
物をロスする危険をまねくが、一方ヌクレアーゼによっ
て核酸を分解させる方法は、所望の産物を実質的にロス
することは全くない。また産物から核酸を効率的に完全
に除去することは重要である。例えば、産物がヒトへの
投与に用いられるとき、産物は、これを産生するのに用
いた細胞からのハイブリッド生成可能DNAを含有してい
てはいけないということが、いくつか国の衛生当局の要
件になっている。
それ故に、セラチア sppによって産出される非常に
興味深い酵素は、非常に強力であることが見出されかつ
生物物質から核酸類を除去するのに工業的に非常に重要
なヌクレアーゼである。この明細書において、“核酸類
の除去”という用語は、長い核酸の塩基配列が分解され
て短いフラグメントもしくはオリゴヌクレオチド類にな
るか、又はある場合にはモノもしくはジヌクレオチド類
となることを意味する。これは、ヌクレアーゼの作用に
よって生成する産物の方が、通常の分離法によって除去
しやすいことを意味する。
従って、さらにこの発明は、下記アミノ酸配列(公知
の方法でそのDNA塩基配列から推定され、N−末端シグ
ナルペプチドを含む)を有するセラチア sppヌクレア
ーゼである細菌ヌクレアーゼに関する。
この酵素は、例えば上記方法によって製造してもよ
い。
特別な応用の場合、例えば、ヌクレアーゼが、別の方
法で実質的に精製された生合成産物から残留核酸を除去
するのに用いられる場合(以下に詳細に述べる)、酵素
は実質的に純粋な形態が好ましい。実質的に純粋な酵素
を得るために、精製の酵素製剤(enzyme preparation)
を限外瀘過法もしくは例えば硫酸アンモニウムでの沈澱
法によって部分的に精製し、さらに例えばクロマトグラ
フィ(イオン交換クロマトグラフィもしくは親和性クロ
マトグラフィのような)又は分離用ゲル電気泳動法によ
って精製してもよい。場合によっては、適切なマトリッ
クスに固定化された形態で酵素を提供するのが有利であ
る。というのは、このマトリックスは、使用後ヌクレア
ーゼを容易に除去できまた酵素を再度使用できるように
なっているからである。かようなマトリックス物質の例
としては、デキストランもしくはアガロースゲルまたは
石英質物質のごとき無機物質、例えばシリカ,ケイ酸お
よびその誘導体が挙げられる。固定化は公知の方法で行
われる。
潜在的利点のあるもう一つの酵素は、セラチア spp
によって産生されるホスホリパーゼである。それ故この
発明は、下記DNAの塩基配列によってエンコードされる
セラチア sppホスホリパーゼに関する。
別の態様として、この発明は、セラチア sppヌクレ
アーゼからなる、生物物質から核酸を除去するための組
成物に関する。この明細書において、“生物物質”とい
う用語には、少なくとも一つの要素が生物源の要素であ
るいずれの物質も示すと解される。その故にこの用語に
は、核酸類だけの溶液(例えば生体外の実験室での研究
に基づく)、生合成産物を産生する細胞培養物を含有す
る醗酵媒体、生合成産物を産生する細胞培養物が培養さ
れる(それ故自発的な細胞破壊から生成する核酸のみな
らず前記産物を含有していてもよい)醗酵媒体、または
細胞培養物の再懸濁液が含まれる。そしてこれらのもの
は、細胞を、例えば遠心分離によって媒体から収穫した
後に生合成産物を産生するものであり、その細胞培養物
は全細胞もしくは溶解された細胞(lysed cells)を含
有している。
“生合成産物”という用語は、蛋白,ポリペプチド,
グリコリピド,グリコリピドカーボハイドレートもしく
は低分子量化合物であってもよい産物を意味すると解さ
れる。生合成産物が細胞から排出されず、産物を収穫す
るために細胞の溶解(cell lysis)を要する場合には、
核酸は特に重大な汚染物であり、これらの核酸は細胞溶
解物(cell lysate)に粘度を与え産物の精製を困難に
する。それ故に、細胞溶解物の粘度を低下させるため
に、この発明のセラチア sppヌクレアーゼのごときヌ
クレアーゼを含有する組成物を提供することは有利であ
る。このヌクレアーゼは、例えば上記のアミノ酸配列を
もっていてもよい。この発明のヌクレアーゼには、上記
のアミノ酸配列の1もしくは数個のアミノ酸が欠失もし
くは置換することによって、あるいは上記のアミノ酸配
列に1もしくは数個のアミノ酸が付加することによっ
て、上記のアミノ酸配列と比べて修飾されているアミノ
酸配列を有するヌクレアーゼが包含される。なお、酵素
を含む特定の蛋白をその酵素活性を減少させることなく
アミノ酸を置換、欠損もしくは挿入させることによって
修飾する技術は、例えば、ヨーロッパ特許第0077109B1
号又は英国特許第2119804A号等により知られていること
である。この発明のヌクレアーゼ組成物は実質的に蛋白
分解活性のないものが好ましい。というのは、この種の
組成物中にプロテアーゼ類が存在すると、細胞培養物に
よって産生される蛋白性産物を分解する最も重大な原因
になるからである。この発明の方法によって製造された
ヌクレアーゼ、すなわちその遺伝情報を指定する遺伝子
がセラチア spp微生物から得られたヌクレアーゼは、
実際には、実質的に蛋白分解活性を有しないことが見出
された(実施例2参照)。組成物が、別個に精製された
蛋白性産物から、残留核酸を除去するのに用いられる場
合、実質的にプロテアーゼなしの組成物が特に重要であ
るといわねばならない。というのは、ヌクレアーゼが未
精製の細胞溶解物に添加されると、溶解物自体の蛋白分
解活性は、ヌクレアーゼ組成物に残っているいずれの蛋
白分解活性をもはるかに超えているからである。実質的
にプロテアーゼを含有しないヌクレアーゼ組成物は、そ
れ故、すぐにいくつかの精製工程を受けた蛋白性産物に
ついて使用(勿論、実質的に純粋な形態で)するのに特
に有利である。
過剰のヌクレアーゼが細胞溶解物に添加された場合で
も(溶解物の核酸要素に帰因する粘度を低下させるため
過剰に)、核酸類の少量のフラクションが残って蛋白性
産物を汚染する場合があることが実験によって分かっ
た。このことは、例えば、核酸と、溶解物の膜および/
または蛋白要素との相互作用による、核酸類のマスキン
グが原因で起ると信じられる。しかし、組換えDNA技術
もしくは組織培養物で製造される生合成産物が医療目的
に使われる場合、核酸類の完全除去(DNAもしくはRNAプ
ローブによってハイブリッド化可能な核酸がないと定義
される)が、いくつかの国の衛生当局(例えばFDA)に
よってしばしば要求されている。かような産物が、核酸
類が微量存在しても所望の結果を阻害する他の目的に用
いられる場合、残留核酸の完全除去は非常に望ましいこ
とである。この発明の発明者らは、ある種の界面活性剤
もしくは蛋白変性剤をヌクレアーゼとともに添加する
と、かような残留核酸類が完全に除去されることを見出
した。それ故に、核酸類の完全除去を要する用途に対し
ては、この発明の組成物がセラチア sppヌクレアーゼ
のようなヌクレアーゼと、界面活性剤および/またはカ
オトロピック試薬とからなるということは、有利であ
る。界面活性剤は、例えばポリオキシエチレンアルコー
ル例えばBrij 58もしくはオクトオキシノール例えばTr
iton X−100のような非イオン性界面活性剤、ドデシ
ル硫酸ナトリウム(SDS)のようなイオン性界面活性
剤、またはナトリウムデオキシコーレートのようなデオ
キシコーレートであってもよい。カオトロピック試薬
は、尿素,チオ尿素もしくはチオシアン酸の塩から選択
できる。
さらに他の態様において、この発明は、セラチア sp
pヌクレアーゼを生物物質に加えることからなる生物物
質(上記定義どおりの)から核酸類を除去する方法に関
する、特にこの発明の方法は、核酸による汚染が問題で
ある次のような種々の場合に有用である。すなわち生物
物質が、例えば、核酸を用いる生体外の実験から生じか
つ実験設備を汚染する核酸の廃溶液もしくは廃懸濁液か
らなる場合;生物物質が、生合成産物(上記定義と同
じ)を産生する細胞培養物を含有する醗酵培地からな
り、生物物質中の多量の核酸を確実に、除去するため
に、細胞溶解の前後に、充分な量のヌクレアーゼが生物
物質に添加される場合;生物物質が、生合成産物を産生
する細胞培養物を培養し次いでその細胞を実質的に除去
した醗酵培地からなり、その培地が、自発的な細胞破壊
が原因である量の核酸を含有し、および細胞から培地に
排出された生合成産物を任意に含有する場合;および生
物物質が、醗酵培地を除去した後生合成産物を産生する
細胞培養物の再懸濁物からなり、ヌクレアーゼが細胞溶
解の前後に添加される場合である。そのヌクレアーゼは
上記のアミノ酸配列を有するヌクレアーゼである。この
発明の発明者らは、この発明のヌクレアーゼを、細胞溶
解の前に生物物質に添加すると特に有利な結果が得られ
ることを見出した。ヌクレアーゼを、細胞溶解の前に細
胞培養物(懸濁物もしくは媒体中の)に添加すると、例
えば、エシエリヒア・コリの溶解物(凍結融解溶解物や
フレンチプレス溶解物のごとき)の粘度が、高い再現性
をもって消失することが、実験で証明された。またある
相対粘度を得るのに、予想外のことであるが、ヌクレア
ーゼを細胞溶解後に添加する場合よりも、短時間(時間
単位でなく分単位)しかかゝらずかつ低温でよいことが
見出された。このようにすることによって生合成産物が
高収率で得られる(例えば核酸除去の工程での蛋白性産
物の分解が少ないなど)。
多くの衛生当局は、組換え微生物は、閉鎖醗酵システ
ムから取出す前に殺さねばならないと要求している。こ
の処理は、醗酵の最終段階でフェノールとトルエンを添
加することによって行われることが多い。この発明のヌ
クレアーゼは、醗酵器中で細胞を殺すのに必要な量のフ
ェノールとトルエンの存在下でも活性を保持することが
見出されたのである。
生物物質の粘度を低下させるため、この発明に従って
その生物物質にヌクレアーゼを加えると、ヌクレアーゼ
の作用による最終産物は、大きさの異なる核酸フラグメ
ントや、モノもしくはジヌクレオチド類よりもむしろオ
リゴヌクレオチド類を含有している。ある種の目的のた
め、例えばハイブリッド化可能の核酸をすべて除去され
た高純度の最終産物を製造したい場合は、すでに精製さ
れた産物、すなわち生物物質の他の要素から少なくとも
実質的に分離された産物に酵素を加えることが勧められ
る。
上記のように、残留核酸、すなわち限界消化(limit
digest)の後に生物物質中に残る核酸(この限界消化の
場合、ヌクレアーゼは、生物物質の粘度を低下させるた
めに、ヌクレアーゼをさらに添加してもそれ以上核酸の
量が低下しないほど過剰に添加される)は、実際には、
与えられた生物物質中の核酸の全量の0.1%よりも小さ
い微小なフラクションを構成し、前に論議されたよう
に、膜要素および/または蛋白の相互作用により、ヌク
レアーゼに通常近づきにくい核酸であることが見出され
た。このヌクレアーゼ処理が界面活性剤および/又はカ
オトロピック試薬の存在下で行われると残留核酸を消化
することができるということが見出された。
かくして、この発明は、ハイブリッド形成によって検
出できないオリゴヌクレオチドもしくはヌクレオチドと
して存在する核酸類を消化するため、ヌクレアーゼが界
面活性剤および/又はカオトロピック試薬の存在下で添
加される、生合成産物から残留核酸類を除去する方法を
提供するものである。界面活性剤およびカオトロピック
試薬は、ほとんど同様に作用し、核酸のセグメントがヌ
クレアーゼに近づきにくい複雑な構造を形成させる疎水
力と静電気力を妨害する。
選択された界面活性剤とカオトロピック試薬は、生物
物質中に存在する所望の蛋白系産物の二次および三次蛋
白構造を永久的に損傷しないものでなければならない。
すなわちこれらの物質は、その存在下で、ヌクレアーゼ
が、正しい構造の産物が得られるようなしかたで作用し
て核酸を除去した後に除去される。かような界面活性剤
とカオトロピック試薬は、例えば、上記のものであって
もよい。界面活性剤もしくはカオトロピック試薬を用い
る場合は、ヌクレアーゼの活性が損われたり消失したり
するような量で添加しないよう注意しなければならな
い。試薬が非イオン性界面活性剤の場合、通常生物物質
の0.2〜1.5%の量で添加され、特に約0.4〜1.0%が添加
される。イオン性界面活性剤の場合、生物物質の0.01〜
1.0%の量で一般に添加される。カオトロピック試薬は
一般に、2〜8Mの量(生物物質の約10〜50w/v%)で添
加される。
完全に核酸の存在しない産物を得るには、細胞溶解物
の粘度を低下させ、その中に存在する大部分の核酸を除
去するため、生産工程の初期の工程で最初にこの発明の
ヌクレアーゼを用いるのが有利である。精製処理に続く
工程で、産物からいずれの残留核酸も除去するために
は、精製ヌクレアーゼが溶液もしくは固定化された形態
で用いられる。
この発明のヌクレアーゼ含有の組成物は、感染試薬の
感染力を除くために、その感染力自体を確実に除く手段
としてか又はワクチンもしくは診断試薬の製造が強くの
ぞまれるこれら試薬の成分を回収する手段として用いる
ことができる。この明細書において“感染性試薬”とい
う用語は、その感染力が核酸の成分に原因する生試薬
(living agent)もしくは非生試薬(non−living agen
t)を意味すると解される。これらの核酸成分は、感染
力に必須のRNA種(RNA species)および/又は蛋白をエ
ンコードするか(これらの成分は、例えば増殖に必要で
ある)、又は感染性試薬内で純粋に構造的な役割を演ず
る。従って感染性試薬には、プラスミド類,ウイルス
類,細菌類,プリオン類(prions)および寄生虫類であ
ってもよい。
これらの試薬の感染力は、ある場合には化学薬品によ
って破壊することができるが、汚染除去のためにヌクレ
アーゼを用いると有利な場合が多い。培養中、細胞から
遊離されるプラスミドのような遊離のDNA分子は、例え
ばこの発明のヌクレアーゼによって容易に消化すること
ができるが、また実験室からの廃棄物中に存在する潜在
的に感染性のDNAの場合も容易に消化できる。安全対策
として、組換えDNA技術による生合成産物の工業生産か
らもたらされる廃棄物から核酸を除くことが望まれる場
合が多い。かような廃棄物中に存在する感染性試薬の核
酸成分が、この発明のヌクレアーゼに、自由に近づけな
い場合、存在するすべての核酸を除去するには、前記の
ように、同時に界面活性剤もしくはカオトロピック試薬
を添加することが勧められる。
この発明のヌクレアーゼの用途としてもう一つ考えら
れるのは、抗原とワクチンとの製造における用途であ
る。現在細菌やウイルスの弱毒性株は通常、同じ種のビ
ルレントメンバー(virulent member)に免疫反応を引
き出すために用いられ、その重要な利点は、生体内での
該試薬の限られた期限の増殖中の感染性試薬内もしくは
表面の複雑な抗原的な構造を無傷のまゝで保存できるこ
とである。この発明のヌクレアーゼを用いることによっ
て、抗原コンプレキシティーを保持し、免疫反応を問題
の感染性試薬と結合されるいずれの強い抗原決定基に対
してもむけさせ、一方では、弱毒性微生物を用いる生ワ
クチンについて時々みられる予防接種後遺症の危険を回
避することができる。この発明のヌクレアーゼは、核酸
をヌクレアーゼで処理できるようにするために、任意に
界面活性剤および/又はカオトロピック試薬とともに用
いるとができ、界面活性剤もしくはカオトロピック試薬
およびこれらが用いられる際の濃度は、問題の抗原構造
を阻害しないように選択して用いられる。
この発明の方法によって製造されるセラチア spp加
水分解酵素は、その酵素を産生する微生物がセラチア
sppもしくはエシエリヒア・コリのいずれであろうと
も、その微生物の生長周期の後期に発現(express)さ
れることが見出された。実施例で示すように、この後期
での発現は、問題の発現もしくは遺伝子が開始される調
節領域の遺伝子発現調節挙動の結果である。かくして、
培養物の指数増殖期のほとんどでは、加水分解酵素はほ
とんど合成されないかもしくは全く合成されない。一方
細胞が後期指数増殖期に入ると、高率の遺伝子発現が起
こる。この明細書における“調節領域”という用語は、
プロモーター、(遺伝子発現を調節する)調節蛋白質た
とえば環式AMP結合蛋白質(CAP)の結合座位、および転
写調節における機能は知られていないが欠失地図作成に
よって転写調節のために重要であることが見出された配
列のような配列からなる遺伝子の転写調節を行う分子配
列を意味すると解される。
この調節の原理がこの発明によって利用され、ひとつ
の調節領域を有するプラスミド、すなわちその調節領域
の下流側に位置する遺伝子の発現が、そのプラスミドを
有する微生物の生長周期の後期に、その調節領域から開
始又は増大されるプラスミドが提供される。この遺伝子
は、その調節領域に本来関連のない遺伝子である。
遺伝子発現(形質発現)が、微生物の生長周期の後期
に開始もしくは増大される上記の調節機構は、培養物産
生にとって有利で望ましいことが多い。かくして発酵工
程において、高い細胞密度が得られる後期は、潜在的に
培養物が最も生産力のある期間であり、この期間に、大
きな価値があるのは高い比率で形質発現がなされること
である。この発現は公知のプロモーターを用いても通常
得られない。というのはこれらプロモーターの活性は、
通常培養物の生長速度に追随するので、細胞密度が最高
の段階で最小になるからである。微生物は成育がすでに
停止したかほとんど停止した時にのみ有毒物質を合成す
るので、セラチア spp内に見出された調節領域の前記
の特別の挙動は、培養物によって産生されるべき産物が
問題の微生物に対し有毒である場合、特に価値がある。
かくしてこの発明はさらに、一つの調節領域を有する
プラスミド、すなわちその調節領域の下流側に位置する
遺伝子の発現が、そのプラスミドを保有する微生物の生
長周期の後期に、開始または増大されるプラスミドに関
する。かような調節領域は、これを有するプラスミド
が、そのプラスミドを保有する微生物の発酵によって、
広範囲の工業用もしくは医療用の生合成産物を得ること
を目的としてクローニングベクターもしくは産生ベクタ
ーとして用いられる場合のような、その調節領域に本来
関連のない遺伝子の発現を調節するのに特に有用であ
る。かような生合成産物の例は、ポリペプチド類、蛋白
類もしくはそのフラグメント、酵素および酵素と普通培
地中の化合物との反応による非蛋白質の産物、ホルモン
のごとき低分子量産物、並びに核酸類であり;特に重要
と考えられる産物は、真核遺伝子特に哺乳類の遺伝子の
産物、および上記のごとく、これら産物が産生される微
生物に対して有毒な産物である。
調節領域は、類似のものがセラチア spp以外の微生
物内にも見出されうると考えられるが、セラチア spp
遺伝子内で見出されたものでもよい。特にその調節領域
はセラチア spp由来のヌクレアーゼもしくはホスホリ
パーゼの調節領域であり、その例を、第7図の1−385
位置と第9図の201−415位置に示す。
上記の調節領域は、標準の組換えDNA技術によってい
ずれの公知もしくは新規のクローニングベクターや生産
ベクターにも挿入できる。
上記のタイプの調節領域を有するクローニングベクタ
ーもしくは生産ベクターとして有用な特に興味深いプラ
スミドはいわゆるランアウエイプラスミドであり、すな
わち、ある条件下で制御されない複製挙動を示すプラス
ミドである。この挙動を示すプラスミドは、例えば、米
国特許第4,495,287号およびヨーロッパ特許願公開第010
9150号に開示されている。
例えばヌクレアーゼ遺伝子の調節領域に含まれている
プロモーターの強さは、ある種の産生を目的とするとき
には必ずしも充分ではない。それ故、調節領域の下流に
位置する遺伝子の発現が行われる発育相を起こさせる調
節領域の性能は、既存のプロモーターを、前記発育相に
依存する発現が保護されるようなしかたで、より強力な
構成プロモーターで置換することによって利用される。
生合成産物の発現のために調節領域を利用することの
外に、調節領域の特に興味深い応用は、調節領域の下流
側に位置するある遺伝子の転写を増大するのに利用する
ことであり、その遺伝子が、ある細菌のプラスミドの複
製を制御して、非制御のプラスミド複製(いわゆるラン
アウエイ複製)を、そのプラスミドを保有する細胞の発
育相の後期に起こさせる場合である。今まで記述されて
きたほとんどのランアウエイプラスミドは(例えばヨー
ロッパ特許願公開第0109150号参照)、制御されない複
製を開始するには、例えば温度を上昇させるというよう
な、発育条件を外部から操作する必要がある。プラスミ
ドの複製を調節するために上記の調節領域を用いること
によって、新規な方法が可能になった。すなわちそのプ
ラスミドを保有する細胞の発育相にランアウエイ複製を
開始させる方法である。この方法は、三つの観点から有
利である。第一に発育条件の外部からの操作が全く不要
であること、第二にランアウエイ複製を開始するのに、
宿主細胞の特別の性質が不要なこと、第三に微生物の培
養が後期指数増殖期に入るとき、すなわち発現すべき遺
伝子のコピー数を増やす効果が最大のときに、制御され
ない複製が開始されることである。後期指数増殖期にラ
ンアウエイ複製を開始するのに好ましい調節領域は、二
つの制御システムによるホスホリパーゼの調節領域であ
る。一方の調節システムは、ホスホリパーゼ調節領域に
より制御される遺伝子の発現を、確実に、後期指数増殖
期に限定させ、他方の調節システムは、上記の一方の制
御システムを無効にすることができ、グルコース抑制シ
ステムを含むものである。
上記調節領域を実際に利用する場合には、ホスホリパ
ーゼの調節領域からの両方の調節システムを有するDNA
フラグメントが、プラスミドに、単一もしくは複数の複
製調節遺伝子の上流側で挿入され、そのプラスミドは適
切な宿主微生物に形質転換され、その形質転換細胞はグ
ルコースの存在下で選別される。これらの形質転換細胞
はグルコースの供給をたゝれると、後期指数増殖期にラ
ンアウエイ複製表現型を示す。所望の生合成産物を発現
する遺伝子が、前記のようにして作製されたプラスミド
に挿入され、得られたハイブリッドプラスミドが適切な
宿主微生物に形質転換され、その宿主は、グルコースの
非存在下もしくは、宿主微生物の細胞が後期指数増殖期
に入る前に消費する量のグルコースの存在下で、量産規
模の培養物にまで培養される。いずれの場合でも、制御
されない複製は、後期指数増殖相に、調節領域からの増
大された転写によって開始される。生合成産物は、充分
な生産量を確実に得るため、適切な時間後に培養物から
収穫される。上記の特定事項を除けば、培養は、その宿
主として用いられる微生物種に最適であることが知られ
ている通常の栄養培地を含めて通常の技術を用いて適切
に行われる。またその生合成産物の収穫は、特定の生合
成産物の本質と性能、宿主の性能などに採用される公知
の方法によって行われる。
またこの発明は、上記の調節領域をもつプラスミドを
保有する微生物を提供するものである。この微生物の代
表的なものはグラム陰性菌であり、好ましいグラム陰性
菌は生合成産物を製造するのに一般に用いられる細菌、
例えばエシエリヒア・コリである。
アクレアーゼのN−末端部をエンコードする塩基配列
は、そのヌクレアーゼのトランスメンブラン運搬のため
に必須のシグナルペプチドをエンコードするが、遺伝子
産物を排出させるのに用いてもよいと考えられる。所望
の生合成産物の遺伝情報を指定する塩基配列は、ヌクレ
アーゼのシグナルペプチドのC末端を指定して所望の蛋
白を排出させる塩基配列と直接接合させてもよく、そし
てそのシグナルペプチドは工程中で除去される。実際
上、前記シグナルペプチドの遺伝情報を指定する塩基配
列(第7図参照)は、ヌクレアーゼ調節領域と共に1か
ら448位置までのびるDNAフラグメントとして単離され
る。そしてその448位置が好都合にもAha IIIの認識部位
に相当し、(シグナルペプチド認識部位を含む)シグナ
ルペプチドの最後のコドンに正確に相当する。次いでこ
のDNAフラグメントは、適当ないずれかのベクターに挿
入され次いで排出されるべき産物の遺伝情報を指定する
塩基配列に、(クレノウ・ポリメラーゼによって)“挿
入された”(“filled in")Aha III部位に連結され
る。さらに、ヌクレアーゼ調節領域が任意に存在する
と、発現が細胞発育の後期に限定される。
図面の説明 この発明はさらに下記図面によって説明される。
第1図は、線状制限酵素とセラチア・マルセッセンス
(Serratia marcescens)W225のヌクレアーゼ遺伝子(N
uc)を持つハイブリッドプラスミドpNU121−nuc+の遺伝
子地図とを示す。用いられる記号は次のとおり。構造遺
伝子 Ap=アンピシリン耐性;Tc=テトラサイクリン耐性;CI
ラムダ・リプレッサー遺伝子;λpR=ラムダ・モロモー
ター;P=Pst I;E1=EcoR I;E5=EcoR V;F2=FnuD II。
第2図は、エシエリヒア・コリのX−プレスによる溶
解物(lysate)をヌクレアーゼ処理した場合の時間経過
を示し、縦軸は相対粘度(0℃の水を基準とする)、横
軸はX−プレスによる溶解後の0℃における培養のhr数
である。
第3図は、エシエリヒア・コリのフレンチプレスによ
る溶解物をヌクレアーゼ処理した場合の時間経過を示
し、縦軸は相対粘度(0℃の水を基準とする)、横軸は
フレンチプレス溶解後の0℃における培養時間(hr)で
ある。
第4図は、エシエリヒア・コリのフレンチプレスによ
る溶解物をヌクレアーゼで処理した場合の時間経過を示
す。左欄は細胞の溶解前もしくは溶解後に添加されたヌ
クレアーゼの濃度(U/ml)を示す。6つの試料はそれぞ
れ別個に時間経過実験を行った(0℃での培養時間,mi
n);時間の零はフレンチ・プレスから放出された時間
に相当する。粘度の肉眼判定を、各ラインに示すよう
に、0〜70分間にわたって行った(ラインの下に示す記
号を参照のこと)。相対粘度(0℃の水を標準とする)
を、0℃での培養の70minと15hr後に測定した。
第5図は、相対粘度(0℃の水を基準とする)(縦
軸)、ヌクレアーゼの濃度(横軸)および0℃での培養
期間との関係を示す。数字は第5図に与えられたデータ
を示す。横軸は対数目盛である。
第6図は、粘度が一般に“水状”と評価された際、ダ
イジェスト(digest)中に存在する非消化の(non−dig
ested)核酸のアガロースゲル電気泳動パターンを示
す。試料は第5図に示すダイジェストから採取した。
第7図(図7aと7bとで構成される)は、セラチアW225
由来のヌクレアーゼ遺伝子を有する1.3KBDNAフラグメン
ト(第1図に示すF2フラグメント)のヌクレオチド塩基
配列を示す。
第8図は、線状制限酵素と、4.5KbベクターpNU121
と、ホスホリパーゼオペロンの遺伝子を有する3.2Kbセ
ラチア spp A1DNAの挿入物とで構成されるハイブリッ
ドプラスミドpNU121−phl+の遺伝子地図を示す。
はその遺伝子のプロモーターと転写の方向を示す。
は構造遺伝子を示す。ApとTcはそれぞれアンピシリンと
テトラサイクリン耐性の遺伝子を示す。CIはλリプレッ
サー遺伝子を意味する。制限酵素類:E1=EcoR I,E5=Ec
oR V,P=Pst I,Sa=Sal I,Sm=Sma I,N=Nar I,H3=Hin
d III,Bc=Bcl I,Ba=BamH I 第9図(9aと9bとからなる)は、ホスホリパーゼ(ph
I)遺伝子を有する3.2Kbセラチア spp A1DNAの1.6KbD
NAヌクレオチドの塩基配列を示す。少数の制限部位の位
置が示されている。アンダーラインの施された塩基配列
を有するCAPは、推定上のカタボライト活性化蛋白の結
合部位の位置とホスホリパーゼ遺伝子の調節領域を示
す。S.D.はリボソーム結合部位のシャイン−ダルガルノ
ホモロジイの位置を示す。その遺伝子は416位置から始
まり1372位置で終わる。
原料と方法 エシエリヒア・コリK−12とセラチア・マルセッセン
スW225の菌株類を第1表に挙げる。使用されるプラスミ
ド類とバクテリオファージ類を第2表に挙げる。
利用した実験技術はすべて、T.Maniatis:Molecular C
loning,Cold Spring Harbor Laboratory,1982,及びJ.Mi
ller:Experiments in Molecular Genetics,Cold Spring
Harbor,1972に記載の標準技術である。
すべての細胞は、ビタミン類やアミノ酸類を添加した
LB培地(Bertani,J.Bact.62,1951,p.293)もしくはA+B
最少培地(Clark and Maalφe,J.Mol.Biol.23,1967,p9
9)で培養した。細菌培養用のプレートは、LB培地と抗
生物質:テトラサイクリン8μg/ml,アンピシリン50μg
/ml,クロラムフェニコール20μg/mlを含有もしくは含有
しない1.5寒天を含有している。ヌクレアーゼ活性のス
クリーニング用プレートは、DNアーゼ活性用のDNアーゼ
試験寒天(Difco)を含有している。
実施例1 セラチア・マルセッセンスW225の染色体DNAの調製 セラチア・マルセッセンスW225の培養物は、1985年5
月8日、DSM(Deutsche Sammlung von Mikroorganisme
n,ドイツ微生物寄託局、西ドイツ D−3400 ゲッチン
ゲン グリセバッハストラツセ 8)に、第3308号でブ
タペスト条約に基づいて国際寄託された。以下、単に寄
託とあるのは、ブタペスト条約に基づく国際寄託を意味
する。その培養物をLB培地で一夜培養し、遠心分離(80
00rpm,5分間)にかけて取出した。その細胞をTEN−緩衝
液(10mMトリス塩酸緩衝液pH8,EDTA 1mM,Nacl 100m
M)で2回洗浄し、リゾチーム1mg/mlとリボヌクレアー
ゼ(RNアーゼ)0.1mg/ml含有のTEN緩衝液20ml中に再懸
濁させた。その細胞を37℃で30分間培養し、20%ドデシ
ル硫酸Na(SDS)を加えて最終的に1%の濃度にした。
〔完全溶解(total lysis)のために〕37℃で60分后、
溶解物を4℃で1晩培養した。翌日、細胞の組織片は、
遠心分離(18000rpm,25分間)で除去した。上澄液を3M
酢酸ナトリウム2mlとイソプロパノール2容量部の入っ
た新しい試験管に移した。ゆっくり攪拌するとDNAは糸
状の形で沈澱し、湾曲したガラス針で取り出した。この
沈澱したDNAは80%EtOHで2回洗浄し、TEN緩衝液に再懸
濁させた。このDNAはさらに遊離密度勾配遠心法(buoya
nt density gradient centrifugation)により精製した
後、適当に希釈して、フェノールで抽出し、TE−緩衝液
(10mMトリス−塩酸pH8,1mM EDTA)に対して透析した。
最後に、DNAは37℃で制限酵素の緩衝液で培養すること
によりヌクレアーゼの有無がテストされた。
セラチア・マルセッセンスW225からのジーンバンク(ge
ne bank)の作製 クローニングベクタープラスミドのpNU121をセラチア
・マルセッセンスW225のジーンバンクの作製に用いた。
このプラスミドはアンピシリン耐性とテトラサイクリン
耐性の遺伝情報を指定するpBR322の誘導体であるが、テ
トラサイクリン耐性遺伝子のプロモーターはフアージλ
プロモーターのλpRで置きかえられ、そのλリプレッサ
ー遺伝子のCIがpNU121に存在しているから、テトラサイ
クリン耐性は通常発現しない。しかしながらもしCI遺伝
子の中にDNAを挿入することによりCI遺伝子が破壊され
ると、この耐性が発現する。
故にCI遺伝子に唯一つのEcoR I座位を持つpNU121DNA
は制限酵素EcoR Iで消化(digest)され、次いで、EcoR
Iで一部が消化されたセラチア・マルセッセンスDNAと
混合した。このDNAを15℃で一夜T4リガーゼで連結し、
エシエリヒア・コリ菌株MT102に形質転換した。テトラ
サイクリン8μg/ml含有のLB板上37℃で選択すると、挿
入したDNAをもつpNU121を保有する細胞だけがコロニー
をつくる。セラチア・マルセッセンスW225のジーンバン
クを示す約2500のコロニーがこの方法で単離された。
セラチア・マルセッセンスW225からヌクレアーゼ遺伝子
の単離 セラチア・マルセッセンスW225からのジーンバンクは
DNアーゼインジケータープレート(原料及び方法の項参
照)にレプリカ培養され、2日間37℃で培養した後、プ
レートを0.1N塩酸で展開した。DNアーゼ陽性のコロニー
は、透明領域(clearing zone)で囲まれた。1つの陽
性クローン,pNU121−nuc,+が主プレートから再分離さ
れ、細胞外酸素をコードする他の遺伝子の存在をテスト
された。〔エシエリヒア・コリMT102/pNU121−nuc+はDS
Mに1985年5月8日第3309号として寄託された)。この
クローンは、RNアーゼも発現することが見出されたがこ
のクローンから他の細胞外酵素は発現されなかった。そ
のヌクレアーゼ遺伝子を有するEcoR Iフラグメントをラ
ンアウエイクローニングベクターpBEU50に挿入し、プラ
スミドpBEU50−nuc+とした。〔エシエリヒア・コリ C6
00/pBEU50−nuc+はDSMに1985年58日第3310号として寄託
された)。
ヌクレアーゼ遺伝子の制限酵素地図の作成 ヌクレアーゼ遺伝子を保有するイー・コリ(E.coli)
菌株MT102由来のプラスミドDNAを調製し、制限酵素EcoR
I,Pst IおよびEcoR Vの各々で消化した。消化されたフ
ラグメントをアガロースゲル電気泳動法で分析し、第1
図に示す地図を得た。Pst Iで消化されたDNAは、T4DNA
リガーゼで再連結されMT102菌株に形質転換させた。8
μg/mlテトラサイクリン含有のDNアーゼインジケーター
プレートで選択を行った。培養后、プレートを展開した
ところ、全コロニーがヌクレアーゼ陽性表現型を示し
た。EcoR Vで消化されたDNAを再連結し、MT102に形質転
換し、アンピシリン耐性で選択したが、全形質転換細胞
がヌクレアーゼ陰性であった。それ故、ヌクレアーゼ遺
伝子は、第1図で示す2KbのPst I−EcoR Iフラグメント
が有している。
さらにサブクローニングの為に、そのプラスミドDNA
はPst IとEcoR Iの両方で消化し、電気泳動法に付した
後、ヌクレアーゼ遺伝子を有するPstl−EcoR Iフラグメ
ントをゲルから精製した。そのDNAを制限酵素EnuD II
(ヌクレアーゼ遺伝子内にいくつかの切断座位をもつ、
4塩基ブラント末端制限酵素)で部分的に消化し、制限
酵素Sma Iで切断されたプラスミドpGV403からのDNAと混
合した。混合したDNAはT4リガーゼで連結され、MT102に
形質転換した。クロラムフエニコール20μg/ml含有のLA
プレートで選択を行い(pGV403の耐性)、その形質転換
細胞はDNアーゼインジケータープレート上でレプリカ培
養した。20ケのヌクレアーゼ陽性のコロニーが単離さ
れ、プラスミドDNAが調製された。その最小のプラスミ
ドは1.3KbのDNA挿入部分をもち、その挿入部分は第1図
に示されるEcoR V座位に関して地図化した。このプラス
ミドをpGV403−SD2/10と表示した。同じ挿入物を有する
プラスミドであるが、pGV403の唯一のECOR IとHind III
認識部位に関して反対方向に有するプラスミドはpGV403
−SD2/14と表示した。
ヌクレアーゼ遺伝子のヌクレオチド配列 シークエンシングベクタープラスミドpGV403(Amersh
am)を用いるマクサム・ギルバート法を用いた(Proc.N
atl.Acad.Sci USA 74,1977,pp560−64)。配列されるべ
きDNAはベクターのSma I座位に挿入される。Sma Iは、
制限酵素Tth111 I(種々の5−prime overhanging ends
を与える)の2つの制限座位を両側に有し、その酵素は
対称的に開裂するので、DNAは32pでラベルした後直接に
配列することができる。
それ故pGV403のSma I座位にもともとクローンされた
1.3Kbのヌクレアーゼフラグメントは、ハイブリッドプ
ラスミドをTth111 Iで消化した后アガロースゲルから単
離した。このDNAフラグメントは制限酵素EnuD Iもしく
はHae IIIの一つで消化され、Sma Iで開裂された、pGV4
03DNAに連結され、脱リン酸化された。ついでこのDNA
は、MT102に形質転換され、フロラムフエニコール20μg
/ml含有のLA板で選択された。形質転換細胞からプラス
ミドDNAが作製され、分析された。このように、1.3Kbフ
ラグメント全体をカバーする200−400bP(塩基対)由来
のDNAを挿入することによって、一連のpGV403ハイブリ
ッドプラスミドが組立てられ、そして両ストランド中の
これらプラスミドの配列によって上記のヌクレオチド配
列が得られた。
第7図に示されるヌクレオチド配列を分析した結果、
ヌクレアーゼが386〜1165位置にコードされているのを
示している。第一に、読み取り枠が30000ドルトンの蛋
白をエンコードしているこの領域全体にわたってのびて
いる。第二に完全なリボゾーム結合座位が、374−78位
置すなわち開始コドンのちょうど上流位置にある。第三
に調節領域を構成する配列は、330〜336位置(“−10塩
基配列”)及び306〜313位置(“−35シークエンス”)
にある。
ヌクレアーゼが、相補的ストランドにある長い読み取
り枠からよりもむしろ指示された配列によって実際にエ
ンコードされることを確認する為に、pGV403−SD2/10お
よびpGV403−SD2/14へ挿入物は、EcoR IとHind IIIとに
よる二重消化で切除された、これら挿入物の方向はpGV4
03ベクターの二つの制限座位に関して、反対側であるこ
とに留意すべきである。切除されたフラグメントは、Ec
oR IとHind IIIで二重に消化されたpPL195と連結され
た。このベクターpPL195は、λpLプロモーターの下流に
EcoR IとHind III認識座位を有するポリリンカーを挿入
することによりpLc28から誘導される。イー・コリNF1に
形質転換した後、30℃でのApRについての選択を行うこ
とによってpPL195−SD2/10とpPL195−SD2/14の2つのプ
ラスミドが分離された。前者には、λpLプロモーターが
上述の推定上のヌクレアーゼコーディング領域の上流に
位置し、一方後者のプラスミドには、λpLプロモーター
が相補ストランドが転写されるようなしかたで位置して
いる。イー・コリNF1は、cI857遺伝子によってエンコー
ドされる温度感受性λ−リプレッサーの遺伝情報を指定
する欠陥λに対して溶原性である。cIリプレッサーは30
℃で活性であり、pPL195上にあるλpLのようなリプレッ
サーによって調節されるプロモーターはこのようにして
抑制される。37℃以上ではそのリプレッサーは不活性で
ありpPL195中のλpLからの転写がおこる。30℃と42℃と
でヌクレアーゼの活性を比較すると、pPL195−SD2/14で
なくてpPL195−SD2/10が温度誘導ヌクレアーゼ合成を行
い、それはλプロモーターに関するヌクレアーゼコーデ
ィング領域の方向はpPL195−SD2/10が正しいことを示し
ている。
更に、予測されるヌクレアーゼコーディング領域が直
接λプロモーターと結合する時、高水準の(温度誘導)
ヌクレアーゼ合成がなされる。357から1295までの位置
の領域にわたっているpGV403−SD2/10由来のRsa I−Hin
d IIIフラグメント(第7図)は、Sma IとHind IIIで消
化されたpPL195と結合させた。この事によりコーディン
グ領域は、λプロモーターに関してはpPL195−SD2/10内
にあると位置づけられる。このプラスミドはpPL195−SD
2/R Iと表示した。
ヌクレアーゼのアミノ末端に対応するヌクレオチド配
列は部分的に精製した蛋白のアミノ酸配列分析により認
識されてきた。ヌクレアーゼのカルボキシ末端に対応す
るヌクレオチド配列は、第二の塩基配列決定法のサンガ
ーら(Sanger et al)のジデオキシ(dideoxy)ヌクレ
オチド シークエンシング法、Proc.Nat.Acad.Sci.USA
74,pp5463−5467を用いて、その領域の配列を決定する
ことによって証明された。
ヌクレアーゼの予測されるアミノ末端の塩基配列は、
20ケのアミノ酸のシグナルペクチドの存在を示し、この
ペプチドは、448位にある、シグナルペプチターゼの認
識塩基配列によって終結する。
ヌクレアーゼの酵素活性 セラチアマルセツセンスW225株と、プラスミドpBEU50
−nuc+を保有するイー・コリC600との培養物を、30℃に
てLB培地で指数増殖させた。OD450とヌクレアーゼ活性
を測定するために、種々の時間に1mlづつの試料を採取
した。ヌクレアーゼ活性は、クロロホルム100μlを加
えてペリプラズムから酵素を放出させることによって測
定した。10,000r.p.m,15分間の遠心分離後、上澄液25μ
をヌクレアーゼ活性の測定用に採取した。そのヌクレ
アーゼ含有試料を、0.05Mトリス(pH8.0)+0.01M MgCl
2に溶解された鮭の精液のDNA(1mg/ml)の0.5ml中に添
加し、得られた混合物を37℃で1hr培養した。ついで4
%PCA(過塩素酸)0.5mlを加えて30分間氷上に放置し
た。未消化のDNAの沈澱を遠心分離で除き、OD260(波長
260nmの紫外線吸収)値を、分光光度計を用いて、石英
キャベット中で測定した。第3表に示す活性は、定常増
殖をしている培養物の試料について上記のようにして得
られたOD260値である。両方の培養液において、その酵
素は、成長サイクルの後期に優先的に合成されることは
明らかである。
平行実験において、ペリプラズムと増殖培地間のヌク
レアーゼの分布を培養物試料を2つの部分に分けて測定
した。その一つは細胞の存在しない増殖培地だけを含有
し、他方は、ペリプラズムと増殖培地の両者(上記クロ
ロホルム処理)を含有している。その結果を第4表に示
す。
上記の通り、セラチア・マルセッセンスW225では本質
的に全ヌクレアーゼが全部排泄されるが、一方イー・コ
リからは約50%しか排出されない。
実施例2 ヌクレアーゼの精製 定常増殖期を16〜20hr経過後、プラスミpGV403−SD2
を含むイー・コリMT102(実施例1に記載)の培養液25
から、発酵液を0.5μmの薄膜を介して限外濾過して
収穫し、次いでフィルターを用いて限外濾過を行って濃
縮し、10,000ダルトンでカットオフした。10mMトリス−
HCl(pH7.5)、1mM EDTAに対して透析した後、得られた
製剤をグラスフィルタで濾過し、次いで0.45μmと0.22
μmのフィルターで濾過した。
得られた酵素製剤(enzyme preparation)を次に要約
する標準分析法で種々のパラメータについて、試験し
た。
50mMトリス(pH8.2)、1mM MgCl2および50μg/ml BSA
含有の緩衝液400μと、100mlのDNA溶液(鮭精液DNAの
水溶液、5mg/ml)および上記緩衝液(DNAなし)で希釈
された25μの酵素製剤を37℃で60分間培養した。この
反応混合物に4%の冷過塩素酸400μを加えた。反応
混合物を30分間氷上に放置しついで5分間15000×gで
遠心分離した。250nmの吸収を測定した。標準定量分析
法において、DNが1hrに1ml当り可溶性物質の1OD260を放
出する活性を1単位と定義する。
最適pHを決定するために標準定量法用緩衝液のpHを変
化させDNAを加えた後に測定した。ヌクレアーゼ活性に
ついての最適範囲は7.5−9.6で最高のPHは8.5−9.2であ
る。最適のMg2+は、標準定量法でMgCl2の濃度を0から1
00mMに変化させて決定した。0.1〜1mM MgCl2の範囲に明
確に定義される最適域がある。しかしその酵素は、MgCl
2を加えなくても約40%の活性を保持した。1価の陽イ
オンの最適濃度は標準定量法でNaClとKClの濃度を変化
させて決定した。活性はNa+濃度が増加すると急速に減
少した。その酵素はKCl0〜50mMで活性であることが分か
った(活性は減少しなかった)。そして特にイー・コリ
の細胞が溶解するときには、そのK+の細胞内濃度が100
−150mM K+であるためむしろ適量に産生するので重要で
ある。短期間の酵素安定性は標準定量用緩衝液中でDNA
なしで、4,23および37℃でそれぞれ1,4および18時間、
酵素を予備培養することにより決定した。DNAを加えて
酵素活性を標準定量法で決定した。下記第5表に、標準
定量法による250nmにおける吸光度の測定値を示す。安
定な酵素は各カラムで同じ値を示す。
第5表から、酵素は、4℃と23℃の時緩衝液中18時間
安定であることが分かる。37℃では長時間の培養では活
性が減少している。
変性剤の影響は尿素、非イオン性界面活性剤(Brij
58,Triton ×−100)及びイオン性界面活性剤(SDS及
びデオキシコール酸ナトリウム)の存在下で酵素活性を
試験することによって測定した。これらの物質は、標準
定量分析法において、種々の濃度で、製剤に添加した。
酵素は尿素1−8Mで活性であることが見出され、実際は
4−8Mで活性が増加し、4Mの時最高であった。また酵素
は、Brij 58(1%)及びトリトン ×−100(0.4%)
のような非イオン性界面性剤の存在下で完全に活性であ
った。イオン性界面活性剤に関しては、SDSは0.01%よ
り高い濃度で酵素活性が完全に抑制され、一方1%のデ
オキシコール酸ナトリウムの存在下では約40%の活性度
が残る。
酵素の純度は、標準変性SDS−PAGE法によって分析し
た。その酵素製剤は、多数の蛋白質のバンドを有してい
た。見掛けの分子量30000のヌクレアーゼに相当する領
域内に、全製剤の5−10%に当る明確なバンドがあっ
た。
そのヌクレアーゼ製剤中のプロテアーゼ活性が、異な
った定量法が測定された。第一に、50μのヌクレアー
ゼ試料を蛋白質(脱脂乳)寒天板(緩衝液中20%乳)上
の水中にスポットした。透明域の形成(板上の乳蛋白の
分解)は、37℃24hr後及び23℃48hr後に全く認められな
かった。
第二に、酵素20μと1mgのアゾーカゼイン[緩衝液:
50mMトリス(pH8.0)、10mM MgCl2]を0、16および30
℃で12hr培養し、次いで酸に可溶なアゾ染料をA370で測
定したが、測定可能なアゾーカゼインの分解は認められ
なかった。第三に、5mM MgCl2の存在下37℃でヌクレア
ーゼを培養してSDS−PAGEで分析した。ヌクレアーゼ製
剤中に存在する約20種の蛋白のパターンの変化すなわち
自動蛋白加水分解は認められず、蛋白分解酵素が存在し
ていないことを示す。このことは、ヌクレアーゼの実際
的応用で、酵素製剤中の蛋白質加水分解活性が低いこと
は、処理される細胞溶解物中の蛋白分解酵素の全量に比
較して最小であることを意味する。
有機溶媒の存在下で、ヌクレアーゼが、DNAとRNAを分
解する能力が測定された。イー・コリMT102のFTL−溶解
物(トリス−EDTA緩衝液1容量部に対して細胞1容量部
で、細胞溶解の前にヌクレアーゼを12000単位/ml加え
た。下記の実施例3参照)の試料に更にフェノール(1
%)、トルエン(1%)、クロロホルム(1%)エタノ
ール(5%)又はEDTA(0.25M)を加えた。4.5hr、20℃
で培養した後試料をアガロースゲル電気泳動法で分析し
た。ヌクレアーゼは上記濃度のEDTAで事実上不活性にな
る為、EDTAが加えられた試料は、コントロールとして利
用できる。種々の有機溶媒を加えても、有機溶媒を全く
添加しなかった試料と比べて、ヌクレアーゼの活性に影
響しなかったが、95%のDNAが200bp以下のフラグメント
に分解された。
実施例3 細胞溶解物の粘度の低下 実施例2で製造された酵素をイー・コリ0.27gの高粘
性のFTL(リゾチーム−凍結−融解)溶解物に、全容量5
00μで約2.6×102及び2.6×103単位をそれぞれ添加し
た。一組の試料にはMg2+イオンを加えないで、他方の組
の試料にはMg2+イオン10mMを加えた。これらの試料を0
℃もしくは24℃で培養した。
下記第6表は、細胞溶解物が、“水状”になった時間
すなわち明らかに水の粘度に近い粘度になった時間を示
す(溶解物の試料をピペットで吸引採取し、溶解物が、
独立の非粘性の液滴としてピペットから排出されるかど
うかを観察することによって測定した)。
しかしながら異なった溶解物を含む実験でかなりの変
化が観察されたことに注目すべきである。例えばFP(フ
レチンプレス)の溶解物を用いると、ある程度せん断さ
れ核酸が得られた。このタイプの溶解物は酵素に対して
良好な基質を提供することが見出された。これは恐らく
FP溶解物のそれほど密にパックされていないゲル構造に
よるものであろう。イー・コリW3110 7.5g(湿重量)か
ら得られたFP溶解物(15ml)の粘度は、21酵素単位/ml
とともに0℃で40分間培養すると、低下して“水状”に
なった。
細胞溶解前のヌクレアーゼの添加 A.TE(TEは10mMトリス(pH8.0)、1mM EDTA)0.25ml
中に再懸濁させた0.25gのイー・コリMC1000(湿重量)
に、実施例2で製造した12単位のヌクレアーゼを添加し
た。この懸濁液を標準方法(凍結−融解3サイクル)に
よるFTL溶解法に付した。粘度は目で監視し、溶解物の
粘度減少の指標として、ピペットで採取して“水状”液
滴の生成を用いた。最後のFTLサイクルの後、溶解物を
0℃で培養した。0℃で5分後、溶解物は“水状”にな
った。
この実験は、細胞破壊に先立って酵素を加えることに
よる予想外の効果を示した。即ちヌクレアーゼを細胞溶
解物に加えた場合、粘度を低下させるのに5200単位/ml
溶解物を添加して12分要したのに比べて、ヌクレアーゼ
を細胞溶解物に添加すると、24単位/mlの酵素を添加す
るだけで粘度を低下させるのに5分しか要しなかった。
B.粘度の低下をより定量的に得るために、凍結−融解効
果と高圧溶解を組合せたX−プレス(Biotec)で作製し
たイー・コリ溶解物で試験した。
7.5gのイー・コリMC1000(湿重量)を7.5mlのTE中に
再懸濁させた。MgCl2を2mM添加し、ヌクレアーゼを25単
位/ml添加した。その懸濁液をX−プレス中で凍結し、
−20℃で5回の圧縮サイクルにかけた。得られたホモジ
ネートを、0℃にて2時間かけて融解させた。眼でみ
て、その粘度は融解時に減少したが(即ちピペット採取
時の“水状”液滴)、融解時間を延長するとヌクレアー
ゼの活性がなくなるタイムゼロを確認することが困難に
なる。それ故、もしヌクレアーゼを溶解前に加える時に
は、X−プレス溶解物の粘度を低下させるのに、24単位
/ml溶解物が有用である。
得られたホモジネートを、(0℃にて)TEで37.5mlに
希釈し、引続いて24時間、粘度を(オストワルド粘度計
で)監視した。ヌクレアーゼ消化を0℃に保持した粘度
計内で続けた。第2図に示す時間(横軸)に粘度を測定
した。第2図の縦軸は、0℃における水の粘度に対する
相対粘度を示す。反応条件は9.6単位のヌクレアーゼ/ml
溶解物であった。相対粘度は、最初の10分間に急速に減
少し、次いで0℃に培養した続く数時間は定常的に減少
した。24hrで相対粘度は1.5であった。
C.イー・コリMC1000(湿重量)7.5gをTE7.5ml中に再懸
濁させた。MgCl2を6mM添加し、ヌクレアーゼを24単位/m
l添加した。細菌+酵素を、10000psiでFrench Pressure
Cellを通過させた。溶解物を直ちに0℃に保持した。
タイムゼロをプレス器から放出された時間とした。放出
直後、溶解物はピペット法で“粘性の”液滴を生成した
が、0℃に保持して5分以内に“水状”の液滴に変化し
た。
それ故溶解物について24単位がFP溶解物の粘度を低下
させるのに有用である。
5分後にこの溶解物を、TE緩衝液(0℃)で30mlに希
釈して、その粘度をオストワイルド粘度計でいろいろの
時間に測定した(第3図、横軸)。その結果は対照とし
て0℃の水の粘度を用いた相対粘度として示した(縦
軸)。粘度計内の反応条件は次の通りである。イー・コ
リMC100 0.25g/mlからの溶解物のml当りヌクレアーゼ12
単位、温度は0℃である。
溶解物にヌクレアーゼを添加することの有利な効果を
説明する為に、次の実験を行った。溶解物は上記と同様
にして調製した。イー・コリW3110(細胞7.5g)の懸濁
液の試料15mlに、ヌクレアーゼの量を変化させて、0.24
〜240単位/mlの最終濃度まで添加した(第4図中のライ
ン1〜5)。フレンチプレスによる溶解に続いて、溶解
物を0℃で培養して、肉眼ですなわちピペットで採取し
て粘度を追跡した。その格付けを第4図に示した。
ヌクレアーゼが240単位/mlの場合(ライン5)、溶解
物は、プレスから放出された時に“水状”であり、一方
ヌクレアーゼが2.4単位/ml(ライン2)の時は、0℃で
約20分後に“水状”液滴となった。0.24単位/ml(ライ
ン1)の場合は、70分後に“グリセロース状”液滴にな
り、続いて0℃で15時間培養した結果、“水状”液滴に
変化した。
上記試料を2.5倍希釈したものの相対粘度を0℃で70
分および15hrs培養した後に測定した。ライン2〜5
は、この実験で“水状”液滴という視覚的印象は、相対
粘度では1.5〜2.1の範囲であることを示している。過剰
の酵素では(ライン5)、1.5という最小値が得られ
る。この最小値は多分70分で到達すると思われ、核酸に
帰因する粘度の成分が除去された事を示している。
特殊な応用に必要なヌクレアーゼの量について情報を
提供する為に、加える酵素の量と、70分および15hrでの
粘度との間の相関関係をプロットした(第5図)。ヌク
レアーゼを3600単位添加すると、0℃での70分と15時間
の培養でほぼ同値、即ちそれぞれ1.52と1.47の値が得ら
れた。それ故1.50という値は、問題の溶解物の相対粘度
の最小値といえる。
0℃で70分間培養した場合、相対粘度は、log(加え
た酵素)或いはlog(酵素濃度)に比例する。外挿法に
よれば、1500単位(100単位/ml)添加すると、核酸の存
在に帰因する場合がある溶解物の粘性成分が完全に除去
され、即ち1500単位という過剰の酵素を添加したり或い
は培養期間を延長しても、それ以上相対粘度は減少せ
ず、最小値は1.5である。
添加する酵素量を1/10に減少すると同じ粘度を得る為
には0℃で培養時間を10倍に延長する必要があることは
第5図から明らかである(例えば36単位/70分対3.6単位
/15hrおよび360単位/70min対36対/15hr)。
細胞破壊前にヌクレアーゼを加える新しい方法を、細
胞溶解後にヌクレアーゼを加える従来法と比較する為
に、溶解物15mlを上記のようにして作製したが、細胞破
壊前にはヌクレアーゼを添加しなかった。フレンチプレ
スで溶解後360単位のヌクレアーゼを添加して最終濃度
を24単位/mlとした。その溶解物を0℃で培養した。第
4図のライン6は、段階的に粘度が低下し、40分で“水
状”液滴になることを示している。その70分での相対粘
度は、ライン3で示す試料(溶解前に8単位/ml添加)
の相対粘度と同等であった。しかし粘度の初期の低下速
度は明らかに異なる。細胞溶解前にヌクレアーゼを約1.
5単位/ml添加すれば、ライン6と同じ時間的なパターン
が得られるが、得られた相対粘度は、明らかに高い値で
2.13−2.53の範囲である。(酵素所要量に関する)利得
は、“粘度の低下”を定義するのに用いられる基準に依
存するが、3倍もしくは20倍である。
第4図のライン2〜6に示す溶解物が“水状”状態に
達した時に採取した試料をアガロースゲル(1%)の電
気泳動に付し、ついでエチジウムブロミドで染色した。
全レーンにおいて、染色可能な残留産物は21Kbpのマー
カーからブロモフェノールブルーバンドまでひろがった
スミアー(smear)となり、高濃度ヌクレアーゼの試料
ではゆっくり移動する物質の量が少ない。この物質は、
ヌクレアーゼ処理以前には1%未満〜数%の核酸を含有
している(第6図)。
実施例4 残留核酸類の除去 細菌溶解物の限界消化物のゲル電気泳動分析の結果か
ら、溶解物中に存在する約0.1%の核酸は、ヌクアーゼ
の作用を受けないと結論した。核酸の全量のうちごく微
量だけがヌクアーゼ処理後に残留するので、残留核酸が
存在するということは、特定の塩基配列の防御的なマス
キング、恐らくゲノムの膜が関連する領域に帰因するこ
とを示唆している。
残留核酸を除去するため、細胞溶解物を種々の蛋白質
変性試験の存在下、ヌクレアーゼで処理した。
全容積が0.6mlの、0.25イー・コリ(湿重量)のFTL溶
解物を、1〜12Mの尿素の存在下、240単位のヌクアーゼ
で処理した。その溶解物を30℃で、1hrで18hr培養し
た。培養後、5μの残留物をアガロースゲル電気泳動
法で分析し、エチジウムブロミドで染色した。
18hr消化後、2〜4Mの尿素に著しい正の効果があるこ
とが観察された。特に4Mの尿素が存在することによっ
て、ゲル中に入ったすべての染色可能な物質が除去され
た。
全容量2.5mlのTE中の0.68gのイー・コリ(湿重量)の
FTL溶解物を0.1%SDSもしくは0.6トリトン×−100の
存在下、2.6×103単位のヌクアーゼで24hr、16℃で処理
した。ゲル電気泳動分析法は、界面活性剤が存在すると
残留核酸はヌクアーゼによって消化できることを示し
た。
これらの実験から、界面活性剤と蛋白変性剤の両者
が、溶解物中に残留しているマスクされた核酸を、ヌク
アーゼの作用を受けさせるようにすることは明らかであ
る。
実施例5 セラチア sppA1の単離 菌を腐敗したキュウリから採取し、DNアーゼの試験寒
天上にプレートアウトした。高レベルのエクソヌクレア
ーゼ活性を示す一つのコロニイをさらに分析した。グラ
ム染色法によってそれがグラム陰性であることが分かっ
た。予備的な同定法によって、その単離された微生物が
セラチア・リキファシエンス(Serratia liquefacien
s)であることが分かった。しかしその微生物がセラチ
アグループに属することを示す徴候があるので、分類が
完全になされるまで、仮にセラチア sppと命名した。
その微生物はテトラシリンとアンピシリンに対して耐性
であり、セラチア・マルセッセンスと同じ細胞外酵素の
パターンを示す(セラチアリキファシエンスA1は、DSM
に、1985年5月8日、第3307号として寄託された)。
セラチア sppA1由来の染色体DNAの調製 セラチア sppA1の培養物を一夜LB培地で培養し、遠
心分離(8,000rpm,5min)して収穫した、得られた細胞
をTEN−緩衝液(10mMトリス塩酸,pH8;1mM EDTA;100mM N
aCl)で2回洗浄し、1mg/mlのリゾチームと0.1mg/mlのR
Nアーゼ含有のTEN緩衝液20mlに再懸濁させた。その細胞
を30℃で30分間培養し、20%SDSを添加して最終濃度1
%とした。37℃で60分間経過後(完全溶解のため)、溶
解物を4℃で一夜培養した。翌日、細胞の細片を遠心分
離(18000rpm,25分間)で除去した。上澄液を、2mlの3M
酢酸ナトリウムと2容量部のイソプロパノールの入った
新しい試験管に移した。穏やかに攪拌するとDNAが繊維
状に沈澱し、これを湾曲したガラス針で採取した。沈澱
したDNAを80%エタノールで2回洗浄し、TEN−緩衝液に
再懸濁させた。そのDNAをさらに、浮遊密度勾配遠心分
離法で精製し、適当に希釈した後、フェノールで抽出
し、TE−緩衝液(10mMトリス−塩酸pH8、1mM EDTA)に
対して透析した。最後に、そのDNAを制限酵素緩衝液と
ともに、37℃で培養することによってヌクレアーゼの存
在しないことを試験した。
セラチア sppA1由来のジーンバンクの作製 クローニングベクタープラスミドpNU121を、セラチア
sppA1由来のジーンバンクの作製に用いた。このプラ
スミドは実施例1に記載されている。
そのCI遺伝子に唯一のEcoR I座位を有するpNU121DNA
を制限酵素EcoR Iで消化し、セラチア sppと混合し
た。A1DNAはEcoR Iによって部分的に消化された。そのD
NAを、T4DNAリガーゼによって、15℃で一夜かけて連結
し、イー・コリMT102に形質転換した。8μm/mlのテト
ラサイクリン含有のLBプレート上37℃で選択が行われ、
挿入されたDNAをもつpNU121を保有する細胞だけがコロ
ニイを生成した。セラチア sppのジーンバンクを提供
する約8,000のコロニイをこの方法で単離した。
リパーゼ活性のスクリーニング イー・コリMT102細胞をセラチア sppA1のゲノムバン
ク(genomic bank)で形質転換し、ハイブリッドプスミ
ドを有する細胞をテトラサイクリン含有のLBプレート上
で選択した。コロニイを採取し、各ウェルに、A+B培地+
1%カサミノ酸チアミンと、200mg/mlのストレプトマ
イシンと8μg/mlのテトラサイクリンを含有するマイク
ロタイマー皿に移した。細胞を一夜37℃で培養し、前期
皿のレプリカを作製した。リパーゼ酵素の基質のp−ニ
トロフェニルパルミテートを最初6mg/mlの濃度でイソプ
ロパノール中に懸濁させた。その懸濁液10mlを、207mg
のデオキシコール酸ナトリウム含有の0.05M燐酸塩緩衝
液(pH8.0)90mlに添加した。この溶液0.5mlを前記の皿
の各ウェルに添加した。ウェルが黄色になればリパーゼ
活性の存在を示す。リパーゼ活性を示す一つのクローン
が得られた。DNAを調製し、イー・コリCSH50を形質転換
するのに用いた。形質転換細胞はリパーゼ陽性であっ
た。リパーゼ活性の一つのクローンを単離しDNAを調製
した。選択されたクローンは、プロテアーゼ、ホスホリ
パーゼもしくはヌクレアーゼの活性を示さなかった。
リパーゼを有するプラスミドpNU121−lip+ そのリパーゼ陽性クローンから単離されたプラスミド
DNAは、約8.4Kbの挿入されたEcoR Iフラグメントを有す
るpNU121で構成されていた。そのハイブリッドプラスミ
ドをpNU121−lip+と呼ぶ(エシェリヒア・コリCSH50/pN
U121−lip+は、DSMに1985年5月8日、第3313号として
寄託された)。
リパーゼの酵素活性 基質のp−ニトロフェニルパルミテートに対するリパ
ーゼ活性の作用は、OD410で分光光度計によって追跡で
きる。イー・コリ/pNU121−lip+とセラチア sppA1との
両者を、A+B培地+1%カサミノ酸およびチアミン中で指
数増殖した際、その酵素が培養基内に存在していること
を示した。
実施例6 セラチア sppA1由来の染色体DNAの調製 セラチア sppA1の培養物(実施例5参照)を一夜LB
培地で培養し、遠心分離(8000rpm、5分)で収穫し
た。得られた細胞をTEN−緩衝液(10mMトリス−塩酸pH
8,1mM EDTA、100mM NaCl)で2回洗浄し、1mg/mlリゾチ
ウムおよび0.1mg/ml RNアーゼ含有の20ml TEN−緩衝液
に再懸濁させた。得られた細胞を37℃で30分間培養し、
20%SDSを添加して最終濃度1%とした。37℃で60分後
(完全溶解のため)、溶解物を1夜4℃で培養した。翌
日、細胞片を遠心分離(18,000rpm、25分間)で除去し
た。上澄液を2mlの3M酢酸ナトリウムと2容量部のイソ
プロパノールの入った新しい試験管に移した。穏やかに
攪拌すると、DNAが繊維状に沈澱し、これを湾曲したガ
ラス針で採取した。沈澱したDNAを80%エタノールで2
回洗浄し、TEN緩衝液に再懸濁させた。得られたDNAを、
浮遊密度勾配遠心分離法でさらに精製し、適当に希釈し
た後フェノールで抽出し、TE−緩衝液(10mMトリス−塩
酸pH8、1mM EDTA)に対して透析した。最後に、DNAを、
制限酵素緩衝液とともに37℃で培養することによってヌ
クレアーゼが存在していないかどうかを試験した。
セラチア sppA1由来のジーンバンクの作製 クローニングベクタープラスミドのpNU121(実施例1
参照)をセラチア sppA1(実施例5参照)由来のジー
ンバンク作製に用いた。
そのCI遺伝子に唯一のEcoR I座位を有するpNU121DNA
を制限酵素EcoR Iで消化し、EcoR Iで部分的に消化され
たセラチア sppA1DNAと混合した。そのDNAを、T4DNAリ
ガーゼで、15℃で1夜かけて連結し、イー・コリ菌株MT
102に形質転換した。8μg/mlのテトラサイクリン含有
のLBプレート上37℃で選択を行い、挿入されたDNAをも
つpNU121を保有する細胞だけにコロニイを生成させた。
セラチア sppA1のジーンバンクを提供する約8000のコ
ロニイをこの方法で単離した。
ホスホリパーゼ陽性のクローンのスクリーニング イー・コリMT102の細胞をセラチア sppA1のゲムノバ
ンクで形質転換し、ハイブリッドプラスミドを有する細
胞をテトラサイクリン含有のLBプレート上で選択し、得
られたコロニイをテトラサイクリン含有の卵黄プレート
上でレプリカを作製した。コロニイの周囲の透明領域と
コロニイの上部の白色沈澱がホスホリパーゼ活性を示
す。この活性を示す15のコロニイを分離した。DNAを調
製しCSH50に形質転換するのに用いた。用いたホスホリ
パーゼクローンはこのような活性のクローンであった。
選択されたクローンのpNU121−phl+は、ホスホリパーゼ
活性のみを示した。(エシェリヒア・コリMT102/pNU121
−hpl+は、DSMに1985年5月8日、寄託番号第3311号で
寄託された)。
ホスホリパーゼを有するプラスミドのpNU121−phl+とpO
U57−phl+ ホスホリパーゼを産生するクローンのpNU12−phl+
ら単離したプラスミドDNAは、そのCI遺伝子内に挿入さ
れた3.2KbのEcoR Iフラグメントを有するpNU121で構成
されている(第8図)。このEcoR Iフラグメントをラン
アウエイプラスミドpOU57にクローンさせた。このラン
アウエイハイブリッドプラスミドpOU57−phl+は、他の
イー・コリ菌株にホスホリパーゼ表現型を与え、これが
セラチア菌株に存在すると、ホスホリパーゼの発現の向
上が認められた(エシェリヒア・コリS17−1/pOU57−ph
l+は、DSMに1985年5月8日、第3312号として寄託され
た)。このホスホリパーゼ発現は、前記試験菌株の温度
を30℃から40℃に上昇させると増幅された。
ホスホリパーゼの酵素活性 プラスミドpNU121−phl+を有するイー・コリ細胞を、
A+B+1%のカサミノ酸およびチアミンの培地もしくはLB
培地で培養した際、ホスホリパーゼは培養物が0.7OD450
単位に相当する細胞密度に到達した後の培養基にのみ検
出される。そのイー・コリ菌株の生存率は、そのプラス
ミドの存在に全く影響されなかった。
ホスホリパーゼ活性の定量分析法は、卵黄との反応に
基づくものである。活性は、卵黄と、ゲル内での細胞の
生育と蛋白合成とを阻害するクロラムフェニコールとを
含有する2%アガロースゲル内で定量分析される。
複数の小さなウェルをゲル中に作り、生育培養物の上
澄液試料5μづゝ(細胞は遠心分離によって除去し
た)を、このウェルにピペットで採取した。
卵黄と酵素の反応によって、濁ったゲル中に透明な領
域が生成した。酵素拡散速度、すなわちmm2透明領域/
単位時間が酵素活性の尺度として用いられる。イー・コ
リ/pNU121−phl+とセラチア sppA1の生育培養物とのホ
スホリパーゼ活性の測定値を第7表に示す。
イー・コリ培養物は、セラチアより効果的に酵素を培
養基に分泌することは明らかである。両菌株について、
培地中に酵素が出現するのは、後期指数増殖期であり、
定常増幅期にも発生しつづける。培地中に1%のグルコ
ースが存在すると、上記二つの宿主における酵素の合成
を効率的に阻止する(記載せず)。培養基中に少量の界
面活性剤(0.5% T ween 80)を添加すると分泌を刺戦
する効果がある。(記載せず)。
ホスホリパーゼクローンのDNA配列 ホスホリパーゼ遺伝子を含んでいる3.2KbのEcoR I制
限フラグメントをM13ファージ誘導体のMp8とMp9とに行
うMessingらのショット・ガンクローニング法[Nucl.Ac
id Res.9,1981,p.309)とSangerらのジデオキシチエイ
ンターミネイター法(Proc.Natl.Acod.Sci.USA74,1981,
p.5463)とを用いて配列した。前記フラグメントをサブ
クローニングする場合に次の多くの種々の制限酵素を用
いた。すなわちSau3A,Taq I,Alu I,Rsa I,Sal I,Sma I,
Pst I,EcoR I,Pvu I,BssH IIおよびEcoR Vである。全塩
基配列は、小さなピース(100〜300塩基)のDNA配列の
コレクションをマージ(merge)することによって完成
した。大部分の塩基配列が両ストランドについて測定さ
れた。
第9図の塩基配列は、フラグメントの左端の416位置
から出発して、Sal I座位を通過し1372位置で終わる主
読取り枠(major reading frame)を示す。
この枠の上流に、シャイン−ダルガルノホモロジー
(Shine,Dolgarno,Nature 254,1975,p.34)AAGGAGが、A
TGスタートコドンのすぐ上流の405位置にある。読取り
枠の上流に、351位置の−35塩基配列CTGCCと374位置の
−10塩基配列TATTTAとで構成されたプロモーター領域が
ある。−35塩基配列の上流に、306位置から336位置まで
の潜在CAP−結合座位がある。
この塩基配列は、推定分子量が34056ダルトンの319の
アミノ酸からなる蛋白質をエンコードする遺伝子が存在
することを示している。
0位置からlac遺伝子の上流の441位置のPst I座位ま
でのDNAを挿入することによって、このDNAフラグメント
内に機能プロモータが存在することを示した。このプロ
モータは、細胞の生育集団中に0.7のOD450値でlac発現
を開始する。またこのプロモータは、グルコースの存在
下ではいずれの細胞密度においても非機能性であり、恐
らく前記のCAP結合座位を経由するカタボライトリプレ
ッションを示すものである。
サブクローニングによって、細胞外ホスホリパーゼ活
性に必要な遺伝情報が360位置から、1551位置のFsp I座
位までの1.2Kbのフラグメント内に位置することが確認
された。また、塩基配列の情報を保持させるのに、イー
・コリ細胞内にホスホリパーゼ活性を得るために、この
フラグメントをプロモーターの前にクローンすることが
必要であることが見出された。このように、遺伝子のオ
リエンテーションも確認された。遺伝子の転写の方向は
塩基配列データを保持する左のEcoR I座位からFsp I座
位への方向である。使用されたプロモーターは、c1857
とλpRの温度誘導性システムであった。イー・コリ細胞
内での30℃におけるホスホリパーゼの合成は、通常のプ
レート分析法で判断して非常に低かった。37℃以上では
酵素が多量に産生された。この1.2KbのDNAフラグメント
の遺伝子産物は、放射能でラベルされたメチオニンを組
込むことによって、生体内および生体外の両者で同定さ
れた。SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法によっ
て、遺伝子産物の大きさが34キロダルトンであることが
決定され、またこのゲルシステムにおいて、ホスホリパ
ーゼ活性が放射能でラベルされた34キロダルトンの蛋白
質とともに移動することが分かった。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C12R 1:19) 微生物の受託番号 DSM 3309 微生物の受託番号 DSM 3310 微生物の受託番号 DSM 3311 微生物の受託番号 DSM 3312 微生物の受託番号 DSM 3313 (72)発明者 リーゼ,エリック デンマ−ク、デイケイ−2400 コペンハ −ゲン エヌヴイ ビルケドメルベイ ▲III▼ 10

Claims (8)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】セラチア種のヌクレアーゼをエンコードし
    かつシグナルペプチドをコードする配列を含むセラチア
    種由来の挿入されたDNAを含有し、そのDNAが、 (i)下記のセラチアW225由来のDNA配列: (ii)下記のアミノ酸配列: を有するセラチアW225のヌクレアーゼ(N−末端シグナ
    ルペプチドを含む)をコードするDNA配列、及び (iii)上記(ii)に記載のアミノ酸配列の1もしくは
    数個のアミノ酸に対応するDNAが欠失もしくは置換する
    ことによって、あるいは上記(ii)に記載のアミノ酸配
    列に1もしくは数個のアミノ酸に対応するDNAが付加す
    ることによって上記(ii)に記載のアミノ酸配列と比べ
    て修飾されているアミノ酸配列を有するヌクレアーゼで
    あって、pBEU50−nuc+(DSM3310)によって産生される
    ヌクレアーゼと少なくとも同じ酵素活性を有するヌクレ
    アーゼをコードするように上記(i)のDNA配列又は(i
    i)のアミノ酸をコードするDNA配列を修飾することによ
    って得られるDNA配列 からなる群から選択されるDNA配列であるハイブリッド
    プラスミド。
  2. 【請求項2】セラチア種のヌクレアーゼが、下記アミノ
    酸配列: を有するセラチアW225のヌクレアーゼ(N−末端シグナ
    ルペプチドを含む)、又は上記アミノ酸配列の1もしく
    は数個のアミノ酸が欠失もしくは置換することによって
    あるいは上記アミノ酸配列に1もしくは数個のアミノ酸
    が付加することによって上記アミノ酸配列と比べて修飾
    されているアミノ酸配列を有するヌクレアーゼであっ
    て、pBEU50−nuc+(DSM3310)によって産生されるヌク
    レアーゼと少なくとも同じ酵素活性を有するヌクレアー
    ゼである請求の範囲第1項記載のハイブリッドプラスミ
    ド。
  3. 【請求項3】ある条件下で制御されない複製挙動を示す
    プラスミドである請求の範囲第1又は2項記載のハイブ
    リッドプラスミド。
  4. 【請求項4】調節領域を含有し、調節領域の下流に位置
    する遺伝子の発現が、プラスミドを保有する微生物の発
    育周期の後期に前記領域から開始もしくは増大される請
    求の範囲第1項記載のハイブリッドプラスミド。
  5. 【請求項5】遺伝子が、調節領域に本質的には関連がな
    い遺伝子である請求の範囲第4項記載のハイブリッドプ
    ラスミド。
  6. 【請求項6】遺伝子が、プラスミドの複製調節遺伝子を
    含有する請求の範囲第4項記載のハイブリッドプラスミ
    ド。
  7. 【請求項7】調節領域が、セラチア種から得られる請求
    の範囲第4〜6項のいずれか1つに記載のハイブリッド
    プラスミド。
  8. 【請求項8】調節領域が、セラチア種由来のヌクレアー
    ゼ調節領域又はホスホリパーゼ調節領域である請求の範
    囲第4項記載のハイブリッドプラスミド。
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