JP2601773B2 - 難燃アクリル系複合繊維 - Google Patents

難燃アクリル系複合繊維

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雅人 大野
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【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は、優れた難燃性及び潜在捲縮発現性を有する
難燃アクリル系複合繊維に関するものである。
(従来の技術) 従来、一般のアクリル系繊維は羊毛に類似した崇高な
風合、優れた物理的性質、堅実な染色性や染色鮮明性を
有し、広範囲な用途に使用されている。しかし、アクリ
ル系繊維は大多数の天然繊維や合成繊維と同じく易燃性
であるため、例えば衣料、インテリア製品及び産業用及
び建装用等の用途に於ては火災の伝播を助けるなどその
用途範囲が狭ばめられていた。
一方難燃アクリル系繊維は難燃性自己消火性という性
能を有しているが、製品の腰感、バルキー性、ヘタリ等
の性能において通常のアクリル系繊維に及ばず、量的に
まだ十分使用されている状況ではない。そこで難燃アク
リル系繊維製品において上記欠点の改良の一方法とし
て、他の物性的にすぐれた繊維例えばナイロンやポリエ
ステルやポリアクリロニトリル系繊維等を混紡して使用
する事が一般に行なわれているが、混紡により加工工程
の増加や染色性の低下、風合いの変化、難燃性の低下な
どの不都合な点が新たに生じてくる。難燃アクリル系繊
維単独での製品にバルキー性、腰感、及びヘタリ等の改
良を行なう為には、同等の難燃性を有した収縮綿や潜在
捲縮性を有する繊維、特に後者が必要であり、この潜在
捲縮性を有する難燃アクリル系繊維と通常の難燃アクリ
ル系繊維との混合使用によって難燃性を有し、かつ腰
感、バルキー性、風合い、染色性等の良好な製品を製造
する事が可能となる。
ところがこれまで良好な潜在捲縮性と難燃性を兼ね備
えた難燃アクリル系複合繊維は得られておらず、又その
検討もあまり行なわれていない。
特開昭49-68014号公報はアクリロニトリルを85重量%
以上含有したポリアクリロニトリル系重合体と、難燃ア
クリル系重合体及びハロゲン化アンチモン化合物との複
合繊維であるが、ここで得られた繊維は片成分にポリア
クリロニトリル系重合体を使用する為に難燃性を十分高
める事が出来ない。難燃性を高める為に他成分に含有す
る塩化ビニル含有量やハロゲン化アンチモンの含有率を
上げると両成分間の混和性、相溶性の違いにより紡糸口
金内でのゲル化や、口金詰まり、糸切れが生じるし、又
両成分の凝固性が大きく異なる為に両成分を緻密に凝固
させるような凝固浴条件の設定が困難である。又紡出後
でも両成分間の接着力不足の為に延伸・収縮等で両成分
の剥離によるトラブルの発生など操業性の大巾な低下と
品質の大巾な低下が予想される。更に製品においても染
色性、耐熱性、光沢等性能の低下や、紡績、織編時の糸
切れ、毛羽立ちといった加工性能の低下も予想される。
特開昭59-82410号公報は難燃アクリル系重合体にポリ
ウレタン重合体を添加紡糸した複合繊維であるが、ここ
で得られた繊維は添加したポリウレタン重合体のため繊
維のコストが高くなるばかりでなく、染色後の発色性及
び耐光性等がいまだ満足されるものでなかった。
このように、難燃アクリル系重合体を両成分に用いた
十分良好な難燃性と潜在捲縮性を有する難燃アクリル系
複合繊維は未だ開発されていないのである。本発明者ら
は上記欠点を克服すべく鋭意検討の結果、本発明を完成
するに到ったのである。
(発明が解決しようとする問題点) 本発明の目的とする所は良好な風合い、バルキー性、
腰感等をもつすぐれた潜在捲縮性を有する難燃アクリル
系複合繊維を提供するにある。
(問題点を解決するための手段) 本発明は、偏心的に接合されたA,B両成分がアクリロニ
トリル40重量%以上とハロゲン含有モノマー及びスルホ
ン酸含有モノマー20〜60重量%よりなる重合体であり、
かつA成分重合体中に塩化ビニリデンをB成分重合体中
よりも3重量%以上多く含有する難燃アクリル系複合繊
維である。本発明の重合体においてハロゲン含有モノマ
ーとしては、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニ
ル、臭化ビニリデン等が挙げらるが、これに限定される
ものでない。特に塩化ビニル、塩化ビニリデンが好まし
い。ハロゲン含有モノマーが20重量%未満ではすぐれた
難燃性は得られず、又60重量%を越えれば得られた繊維
の耐熱性強度等の品質が低下するばかりか、難燃性も飽
和に達し経済的でない。従ってハロゲン含有モノマーの
量は20〜60重量%の範囲が操業性の点、品質の点、コス
トの点で好ましい。
A成分の重合体は塩化ビニリデンを3重量%以上好ま
しくは5%以上含有し、かつB成分の重合体より3%以
上好ましくは5%以上多く含有することが得られた繊維
に良好なる捲縮発現性を付与するために必要である。ま
たA成分重合体は必要ならば他のハロゲンモノマーを含
有しても良く、特に塩化ビニルを併用するのが好まし
い。またB成分重合体のハロゲンモノマーは塩化ビニリ
デンを含有しなくてもよいが、塩化ビニリデンを含有す
る場合はA成分の塩化ビニリデン含有量より3%以上好
ましくは5%以上少なく含有することが、得られた繊維
の良好なる捲縮発現性を付与するために必要である。塩
化ビニリデン及び/又は塩化ビニルよりなる重合体は得
られた繊維の難燃性及び耐熱性が良いので好ましい。本
発明においてA成分重合体中の塩化ビニリデンとB成分
重合体中の塩化ビニリデンの含有率の差が3%未満であ
ると得られた繊維の捲縮発現性が不良となるのである。
A成分重合体とB成分重合体の塩化ビニリデンの差が大
きくなると、沸水処理後の捲縮発現山数が多くなる傾向
を示し、得られた複合繊維を混紡使用する場合の紡績糸
の風合いが堅くなるので、塩化ビニリデンの含有量差を
調整して複合繊維の沸水処理後の捲縮発現山数を5〜50
個/インチに、更に10〜35個/インチとするのが好まし
い。
本発明において、スルホン酸含有モノマーとしてはア
リルスルホン酸ナトリウム、メタリルスルホン酸ナトリ
ウム、スチレンスルホン酸ナトリウム、2−アクリルア
ミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム等が挙
げられるが、これに限定されるものでない。好ましくは
重合体にこれらスルホン酸含有モノマーを0.5〜5重量
%好ましくは1〜4重量%含有した方が、染色性の改
良、紡糸時の凝固性の大巾な改良、及び乾燥緻密化の大
巾な改良及び促進が可能であり、良好な光沢、染色性を
有する繊維が得られるのである。
本発明に使用される重合体は、水性媒体中または有機
溶剤を含む水性媒体中での乳化重合あるいは溶液重合の
如きいずれの重合方法によっても作られる。重合方法と
して乳化重合法を採用する場合、用いる界面活性剤とし
てはアニオン活性剤がとくに有効であり、アニオン活性
剤としては脂肪酸塩、硫酸エステル塩、スルホン酸塩、
リン酸エステル塩等を挙げることができる。なお用いら
れる界面活性剤には、アニオン活性剤の他に通常のノニ
オン活性剤の少量を併用することも可能である。これら
の界面活性剤の使用量は全単量体に対し0.1〜10重量%
とくに0.2〜5重量%用いることが好ましい。また溶液
重合法を採用する場合には、用いられる溶剤はエチレン
カーボネート、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルム
アミド、ジメチルアセトアミド等が挙げられるが、特に
ジメチルホルムアミドを用いることが好ましい。なお重
合媒体としては、これらの有機溶剤の外に共重合体の均
一溶解性や重合性を妨げない程度の少量の水やその他の
有機溶剤を用いることも可能である。
重合に使用される触媒としては、通常のラジカル重合
開始剤、例えば過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムな
どの過硫酸塩;あるいは過硫酸アンモニウムと酸性亜硫
酸ソーダの如き過硫酸塩と酸性亜硫酸またはその塩など
の組合せ;更にはアゾビスジメチルバレロニトリル、ア
ゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ化合物;ジ(2−
エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、t−ブチ
ルパーオキシピバレート、ラウロイルパーオキサイドな
どの過酸化物などがあり、重合方法により適宜選択され
て用いられる。
重合温度は30〜70℃を採用することが好ましく、単量
体濃度は全重合系に対し10〜70重量%であることが好ま
しい。
乳化重合体水溶液から重合体を得るには、通常塩析用
の塩類である塩化ナトリウム、塩化カルシウム、硫酸マ
グネシウム、硫酸アルミニウムなどの電解質の水溶液を
用いることにより重合体が分離され、さらに過、水
洗、脱水、乾燥を経て重合体粉末が得られる。
他方、溶液重合方法により得られた重合体溶液の混合
物からアクリロニトリル、塩化ビニル、塩化ビニリデン
等の未反応の単量体を除去する方法としては、未反応の
単量体として塩化ビニルが存在する場合にはまず常圧下
で塩化ビニルを大部分を除去し、ついで減圧下でアクリ
ロニトリルや塩化ビニリデン等の単量体を回収すること
が好ましい。減圧下での単量体除去の操作条件として
は、10〜200mmHg、40〜90℃で実施することが好まし
い。この場合未反応単量体の除去のしやすさや、最終の
重合体濃度を調整するために、各除去工程では、必要に
応じて適宜重合系に用いた有機溶剤を添加することが望
ましい。
なお本発明の重合体の比粘度(重合体2グラム/ジメ
チルホルムアミド1の重合体溶液を30℃で測定)は、
0.13〜0.60が好ましい。
本発明の重合体から繊維を製造する方法としては、通
常の湿式・乾式紡糸法のいずれもが可能である。紡糸原
液の溶剤としては、通常のアクリロニトリル系重合体の
溶剤であるアセトニトリル、アセトン、ジメチルホルム
アミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド
等が用いられる。なお紡糸原液あるいは溶液重合法の重
合系には、必要に応じてエポキシ化合物や有機錫化合物
あるいは有機還元剤等の安定剤や、風合いを改良するた
めのチタン化合物やアルミニウム化合物等の添加剤、あ
るいは難燃性をさらに高めるためのアンチモン化合物、
スズ化合物あるいは臭素化合物等の難燃剤を含有しても
何らさしつかえなく、紡糸原液中の重合体濃度は15〜40
重量%であることが好ましい。紡糸方法としては紡糸原
液をノズルを通じて10〜80重量%の溶剤水溶液中に押し
だして糸条を形成させ、ついで延伸・水洗・乾燥・緻密
化し、捲縮発現性の向上、繊維物性の調整、風合い調
整、紡績性の向上等の為に収縮、延伸、後オイル、機械
クリンプ付与、クリンプセット等を行なってもよい。
(発明の効果) こうして得られた本発明にかかる難燃アクリル系複合
繊維は良好な難燃性と潜在捲縮性とを兼ね備えた繊維で
あり、高度の難燃性とバルキー性、良好な風合、染色性
などが要求される毛布、シーツ、ベッドカバー、カーペ
ット、カーテン、等の寝装インテリア関係及び安全性、
着心地が要求される小児用、老人用の衣服特にパジャマ
等において十分にその性能を発揮できるものである。
(実施例) 次に実施例を示して本発明を具体的に説明する。尚、
実施例中の部、%は特に言及しない限り重量部、重量%
を示す。
捲縮特性はJIS L-1074により行なった。
難燃性は限界酸素指数(以下LOIと略称)で表わし
た。これは繊維を51mmにカットしハンドカードで解繊後
約0.5gの綿を採取し、これを約25cmの長さに均一に伸ば
し、加撚機により70回の撚りをかけた後2つ折りにして
撚り棒をつくる。次いで窒素ガスと酸素ガスの混合ガス
中にて撚り棒の上端に接炎し、試料が5cmだけ燃焼する
際の混合ガス中の酸素ガス濃度(体積)で次式により表
わす。
実施例1 アクリロニトリル(以下ANと略称):塩化ビニリデン
(以下VDCと略称):アリルスルホン酸ナトリウム(以
下SASと略称)=70:10:20(%)の組成を有するポリマ
ーを、ジメチルホルムアミド(以下DMFと略称)を溶剤
としてアゾビスジメチルバレロニトリルを開始剤として
オートクレープ中で重合した。次いで、この重合体とA
N、VDC及び/又は塩化ビニル(以下VCと略称)とをDMF
に溶解し、アゾビスジメチルバレロニトリルを開始剤に
使いオートクレーブ中にて50℃にて9時間重合させ、第
1表の重合体を得た。重合ドープはロータリーエバポレ
ーターにより未反応モノマーの除去・回収を行なった。
モノマー回収後の重合体溶液は透明な薄黄色で粘調な状
態であった。
この粘調なドープに水/DMF混合溶液を添加し、重合体
濃度26%、水分率5%の紡糸原液を得た。これらの重合
体をA,B成分として、A,B成分の紡糸原液はサイドバイサ
イド型の複合紡糸用口金(ノズル孔径0.06mm、孔数4000
個)に各々別の入口から導入して、DMF:水=60:40
(%)の凝固浴中へ紡出した。A,B成分の吐出量比は1:1
である。紡出された繊維はDMF濃度が30%、15%と順次
低下する2個の浴中にて脱溶剤と4.5倍の1次延伸を行
なった後、70℃水洗槽にて十分洗浄して前オイル槽にて
油剤付与後135℃のホットローラーにて乾燥、緻密化し
た。乾燥後は100℃の蒸熱にて1.4倍の2次延伸及び100
℃の蒸熱下で0.95倍の緊張収縮して、後オイル付着、ク
リンプ付与後、乾燥して3デニールの各種難燃アクリル
系複合繊維を得た。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】偏心的に接合されたA,B両成分がアクリロ
    ニトリル40重量%以上とハロゲン含有モノマー及びスル
    ホン酸含有モノマー20〜60重量%よりなる重合体であ
    り、かつA成分重合体中に塩化ビニリデンをB成分重合
    体中よりも3重量%以上多く含有することを特徴とする
    難燃アクリル系複合繊維。
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