JP2600491B2 - Ab効果素子を用いた測定方法 - Google Patents

Ab効果素子を用いた測定方法

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JP2600491B2
JP2600491B2 JP5017144A JP1714493A JP2600491B2 JP 2600491 B2 JP2600491 B2 JP 2600491B2 JP 5017144 A JP5017144 A JP 5017144A JP 1714493 A JP1714493 A JP 1714493A JP 2600491 B2 JP2600491 B2 JP 2600491B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は電子波干渉素子を用いた
磁界あるいはポテンシャルの測定素子、トランジスタ、
電子の有効質量m* の測定装置、または磁束量子Φ
0 (Φ0 =h/e)の測定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、磁気構造検知については種々の方
法が開発されてきた。電子ビーム試料の微小領域に照射
し、そこから反射電子スピンの情報から磁気構造を知る
スピンSEM(Spin Scanning Elec
tron Microscope)は広く知られている
方法である。しかし、この方法では原子レベルの磁気構
造まで調べることは困難であった。そこで、AB効果を
用いた磁気構造検知装置が特開平3−61880号公報
に記載されている。グラファイトの先端をとがらせて探
針とし、この探針を検知対象物にSTM(Scanni
ng Tunnerinng Microscope)
観察のように近接させる。グラファイトはベンゼン環で
構成されているが、ベンゼン環の電子雲は環状であるの
でこれを電流ループ(磁気感知部)として用い検知対象
物と感知部とをSTM観察のように相対的に移動させる
と、この微小な電流ループに流れる電流は原理的に電流
ループ内の全磁束に応じて振動する(アハラノフ−ボー
ム効果:AB効果)。これによって対象物の微小領域の
磁気構造を検知するというものである。なおフィジカル
・レビュー(Physical Review)115
巻(1959)p485によれば、AB効果とは、電子
波が可干渉性を維持しながら二つの電子波に分割されて
伝搬し再び合流するとき、その二つの電子波の進路によ
って囲まれる空間を貫通する磁束の量によって、その二
つの電子波の位相差が変化する現象である。
【0003】また特開平2−124540号公報には次
のような量子干渉光素子が記載されている。マッハツエ
ンダー干渉計(ループ状の光の導波路)のループの部分
に変調のための光または磁束をあてる。光には磁場成分
があるので、光の強度を変調すると磁場強度を変調した
ことになり、量子干渉効果により出射光の強度が変調さ
れる。これを光検出、二次元位置センサ、または和、
差、否定などの光論理素子に利用する。
【0004】また特開平4−61171号公報には、電
界効果トランジスタのチャネルをループ状に形成し、ル
ープの片側にだけゲート電極を設けゲート電圧を印加す
ることで両チャネルを走行する電子波の間に位相差を生
じさせることあるいはゲート電圧印加の代わりに光入力
ゲートを設けてそこに光を照射することで、素子サイズ
を縮小し、低電界(低光エネルギー)動作させることが
記載されている。
【0005】また特開平3−129881号公報に記載
の量子干渉トランジスタでは、ループの片側にゲート電
極を複数設けゲート電圧を印加することで、両チャネル
を走行する電子波の間に位相差を生じさせ、論理演算
(EX−OR等)を行うことが記載されている。また特
開平2−130964号公報には、電子の弾性散乱長、
非弾性散乱長に比べ小さい寸法を持ついわゆる量子細線
を用いて複数のループを形成し、入力信号に対応する磁
場をループに鎖交させることで電子波の位相差を生じさ
せて特性が変動したときにも正常動作を可能にするトラ
ンジスタが記載されている。
【0006】また特開平1−226182号公報には、
次のような技術が記載されている。GaAs基板にリン
グ形状にn型領域を設け絶縁膜を介してその上に超伝導
リングを形成し、さらにその上に絶縁膜を介して磁場発
生用コイルを設ける。超伝導リングの電荷担体の電荷は
2eであるので、この超伝導体リングを貫く磁束はh/
2eを単位に量子化される。これを利用して素電荷測定
を行う。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】特開平3−61880
号公報に記載された磁気構造検知装置では、ベンゼン環
の面積Sは極めて小さいのでこのときの量子磁束Φ0
対応する磁束密度BはB=Φ0 /Sの関係から数Kテス
ラという極めて強い磁場になってしまい、磁気センサー
として意味がない。しかもベンゼン環内の電流をどのよ
うに測定するのかが原理的に不明である。またこの磁気
構造検知装置では測定系から磁場が発生しそれが被測定
系に影響を与え、検出限界が規定されていた。例えばス
ピン系の磁化の測定を考える。色々なケースが考えられ
るが、強磁性体の臨界点近傍の温度における磁化を測定
する場合、磁化はわずかな外部磁界でも変化してしま
う。DCの磁界HDCに対応する磁化M(HDC)を測定す
るためには、この特開平3−61880号公報も含めて
従来はH=HDC+HAC cosωt(HACは交流の振幅、ω
は角周波数、tは時間)のような外部交流磁界Hを印加
し、交流の応答M″(H)cos ωt測定していた。しか
し交流磁界 AC によって磁化Mが乱されるので、HDC
AC比及び測定回路で制限を受けるHACによって測定で
きる最小のHDCが制限されてしまう。具体的限界は場合
によって違うが、大体HDC AC =102〜104 と思
われる。
【0008】また他の上述の発明は素子サイズの縮小、
低電圧動作、論理演算を行うことや光の検出、位置の検
出を目的としているが、トランジスタを構成したときの
スイッチング特性の向上については言及されていない。
【0009】また特開平1−226182号公報ではリ
ングを構成する材料が超伝導材料であるため、リングの
一部に電圧を印加してもリング電流を制御することがで
きない。また磁束Φによるリング電流の変化を見る方法
では、リング径を小さくすることが難しい。これは小型
化する即ち面積Sを小さくすると、B=Φ/Sの関係か
ら非常に大きい磁束密度Bが必要になってしまいそのた
めリングに大電流を流す必要が出てくるからである。ま
た半導体基板上に超伝導リングを形成する必要があり製
作条件が複雑になってしまう。
【0010】本発明の目的は測定系が被測定系に悪影響
を及ぼさないAB効果素子を提供することにある。また
トランジスタとして用いるときのスイッチング特性を向
上させることにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明はリングに電場と
磁場の両方を作用させ、磁束強度の測定は端子間のコン
ダクタンスの静電ポテンシャル依存性を測定することで
行う。磁場の測定に静電ポテンシャルを使うので測定系
による干渉をなくすことができる。同様に静電ポテンシ
ャルの測定は端子間のコンダクタンスのリングを通過す
る磁束に対する依存性を測定することで行う。静電ポテ
ンシャルの測定に磁束を使うので測定系による干渉を除
去することができる。磁束は静磁束かあるいは測定が追
従できる程度の低周波の交流磁束で変調するのがよい。
実際の測定ではノイズの問題もあって後者の方がよい。
本発明で使用するAB効果素子は電子の弾性散乱長の数
倍程度までの長さの細線でリングを形成し、このリング
の対称の位置に端子を設け、この二端子でリングを区切
ったときの少なくとも片方のリングに静電ポテンシャル
を印加し、電子波が端子からそれぞれリングの半環を伝
搬するときに前記静電ポテンシャルの印加の有無で位相
が変調される効果と、リングを通過する磁束によって位
相差が変調される効果(AB効果)の両方の効果によっ
て電子波の干渉効果を起こし、これによって端子間に流
れる電流の変化を起こさせるAB効果素子であって、静
電ポテンシャルを変化させることによって生じる電流変
化を読み取ることによってリングを通過する磁束強度を
測定する。
【0012】この素子で、静電ポテンシャルを変化させ
る変わりに、リングを通過する磁束を変化させることに
よって端子間に流れる電流の変化を読み取り、リングの
二つの半環部にそれぞれ作用する静電ポテンシャルを測
定する。
【0013】また、このAB効果素子を複数段接続する
ことによって、静電ポテンシャルまたは磁束による伝導
度変調を急峻にする。これに加えて静電ポテンシャルま
たは磁束によって伝導度変調を調整する。本発明は、電
子の弾性散乱長の数倍程度までの長さの細線でリングを
形成し、このリングの対称の位置に端子を設け、両端子
でリングを区切ったときの少なくとも片方のリングに静
電ポテンシャルを印加し、リングを通過する磁束及び前
記静電ポテンシャルにより端子間の電子波を干渉させ、
静電ポテンシャルを変化させたときの端子間のコンダク
タンスの静電ポテンシャル依存性を測定し、リングを通
過する磁束強度を測定することを特徴とする。また、
ングを通過する磁束及び静電ポテンシャルにより端子間
の電子波を干渉させ、リングを通過する磁束を変化さ
せ、端子間のコンダクタンスのリングを通過する磁束密
度依存性を測定し、静電ポテンシャルを測定することを
特徴とする。また上記AB効果素子で、静電ポテンシャ
ルを変化させたときのコンダクタンスの周期的な変化を
測定し、その周期を下記理論式と比較することによって
電子の有効質量を測定できる。
【0014】
【数3】
【0015】なおこのとき強磁場を印加して電子が円運
動を描く軌道半径(ランダウ軌道半径)がリングの太さ
よりも小さく電子がリングの端の沿ってリングを通過す
るようにして電子の有効質量を測定すると精度が向上す
る。
【0016】また、静電ポテンシャルと、リングの半環
のそれぞれの径路長Lと、フェルミレベルの電子波長を
下記の式を満足するようにして、二端子間のコンダクタ
ンスの磁束依存性が磁束量子Φ 0 (Φ0 =h/e)の周
期で鋭いピークを示し、それ以外でほぼ0になるような
共鳴条件を満足させ、この条件下で隣接したピーク間の
磁場を測定し、磁場の位相差θ=2πとしたとき2π=
BS/Φ0 から磁束量子Φ0 を測定する。
【0017】
【数4】
【0018】(ここでθ、φはリングの二つの半環を電
子波が通過したときに生じる磁場およびポテンシャルの
位相差、m* は電子の有効質量、Bは磁束密度、Sはリ
ングの面積、n、lは整数である。)
【実施例】(実施例1)図1に本発明の第1の実施例を
示す。図1(a)はその概念を示す図であり、図1
(b)は具体的な構造の例を示す図である。この実施例
では静電ポテンシャルVによるコンダクタンスGの変化
からリングを通過する磁束Φを測定する。図1に示した
リングは、その材質としてはGaAs等の半導体でも、
また金属でもかまわない。作製法の一例としては図1
(b)に示したような、GaAs基板(図示せず)の上
にノンドープGaAs層7を設け、その上にSiドープ
AlX Ga1 - X As層8を形成してGaAs層7との
界面に二次元電子ガスを形成し、リソグラフィ工程でリ
ング状に残す方法がある。このリングは電子がバリステ
ィックに走行するために長さが電子の弾性散乱長より十
分に短く、また電子の一次元の導体とみなせるような非
常に細い細線によって形成されることが好ましい。この
ようなリングに、同じ細線による端子3、4をリングの
対称の位置に設け節点5、6にする。リングのそれぞれ
の半円部を半円形リング1及び2とする。半円形リング
1、2の長さLは電子の弾性散乱長に比べて短いものと
し、この間を電子は殆ど散乱されずに通過できるものと
する。また、半円形リング1上には電極9が設けられて
いる。ここでは細線の側面に電極9を設けている。電極
の材質としては金属が望ましい。更に、この反応系にお
ける温度は、フォノン散乱が無視できる程度の低温(こ
こでは4.2K程度)とする事が望ましい。
【0019】本発明ではこのリングに磁束Φを通過さ
せ、更に半円形リング1に電極9を通じて静電ポテンシ
ャルVを同時に作用させる。このとき、節点5で枝分か
れし、半円形リング1、2を通過して節点6に達した電
子の波動は磁束Φと静電ポテンシャルVによって位相の
変調を受け、節点6で合成波を形成した時の二つの電子
波の位相差によって干渉パターンを形成する。そのた
め、端子3、4間のコンダクタンスGが磁束Φ及び静電
ポテンシャルVの関数として図2に示すように振動的な
振る舞いを示す。但し、図2では標準のコンダクタンス
0 =e2 /hに対する比(正規化コンダクタンス)で
示してある。このVに対するGの振動パターンは同図か
ら明らかなように磁束密度B(同図では0、0.05、
0.103、0.207テスラの場合を表示)によって
変化する。従って測定すべき磁束密度Bの下でのG−V
曲線を測定し、それと理論G−V曲線とのフィッティン
グによって磁束密度Bの測定値を決定することができ
る。
【0020】このような測定が可能となる原理の概略を
以下に説明する。図1で磁束ΦまたはポテンシャルVに
よるリングを通過した2つの電子波の位相差θ及びφは
それぞれ次式で与えられる。なおθは磁束のみの位相
差、φはポテンシャルのみの位相差である。
【0021】
【数5】
【0022】但し、θの正の方向はリングを貫く磁場の
方向で決まり、φの正の方向は静電ポテンシャルV(バ
イアス)を印加した方の半円形リング1の位相変化から
印加しない方の半円形リング2のそれを差し引いたもの
とする。またeは電子の電荷、cは光速、hはプランク
の定数、m* は電子の有効質量、Eは電子のエネルギ
ー、Lは半円形リング1または2の通路の長さである。
また磁束Φはリングを通過する磁束密度をB、リングの
面積をSとするとΦ=BSで与えられる。次に1次元2
端子素子のコンダクタンスGは次式で与えられる。
【0023】
【数6】
【0024】ここでTt o t は系における透過確率、f
はフェルミディラックの分布関数である。ここでT
t o t
【0025】
【数7】
【0026】で与えられる。但し
【0027】
【数8】
【0028】a,b,εは節点5、6における電子波の
反射と透過を表す散乱行列の成分であり、
【0029】
【数9】
【0030】と定義される。pはa−b= ip で定義さ
れる位相である。本実施例ではL=1000オングスト
ローム(4.2K程度では電子の弾性散乱長はGaAs
で数μmである)、m* =0.067m0 (GaAs、
0 は自由電子の質量)、GaAsの場合ε=0.5,
a=−0.5、b=0.5、p=0で、半円形リング
1、2は完全に対称とし、節点5、6間の電子波動の伝
搬も右向きと左向きで同じとなるように半円形リング1
と2を通過する電子の散乱行列成分を簡単化してある。
【0031】この測定法では磁場の測定に静電ポテンシ
ャルを利用するだけであるから、何ら被測定系に磁場を
作用させずに測定することが出来る。このことは例えば
磁性体の弱磁場を測定する場合に極めて有効である。ま
た微弱な磁場を測定する場合、磁束をかせごうとすると
リングの面積を大きくしないといけない。これは磁場の
場所による分布を測定する場合空間分解能を落とすこと
を意味する。しかるに本発明の素子ではリング内を貫通
する量子磁束が1個以下の場合でも精度よく測定出来る
ので極めて高感度で且つ空間分解能のよい磁場測定が可
能となる。
【0032】なお図1では電極9は細線の側面に設けた
が、細線の上、下あるいは上下両方に設けてもよい。
【0033】(実施例2) 本発明の第2の実施例では第1の実施例と同一構造の素
子でリングを通過する磁場によるコンダクタンスGの変
化からリングに印加された静電ポテンシャルを測定す
る。図3にコンダクタンスGと磁束密度Bとの関係を示
す(G/G 0 で表示)。コンダクタンスGは磁束密度B
に対し振動的な振る舞いを示す。ここでL=1000オ
ングストローム、m * =0.067m 0 、GaAsの場
合ε=0.5,a=−0.5,b=0.5,p=0であ
る。リング内は完全にバリスティック伝導であるとし
た。図3から明らかなようにBに対するGの振動パター
ンは静電ポテンシャルVによって変化する。従ってG−
B曲線を測定し、それと理論G−B曲線とのフィッティ
ングによって静電ポテンシャルVの測定値を決定するこ
とが出来る。
【0034】(実施例3) 本発明の伝導度変調装置では第1の実施例で用いたもの
と同じ構成のリングの片側に静電ポテンシャルを印加し
て、さらにリングを通過する磁束を印加している。これ
により端子間のコンダクタンスが変調される。 また静電
ポテンシャルを変えることによって伝導度変調の度合い
を変えることが出来る。先に示した図3はリングが一つ
の場合のAB効果の磁場依存性について示した図である
が、コンダクタンスGのカーブの“振幅”、“振動
数”、“位相”は静電ポテンシャルVの値によって変化
している。コンダクタンスの“振幅”をポテンシャルV
により増大させたり減少させたりが可能であり、また
“振動数”や“位相”も変調することができる。静電ポ
テンシャルVをφ=(n+1/2)π(nは整数)にな
るように選ぶと、コンダクタンスGが普通、磁束の関数
として磁束量子Φ 0 =h/eの周期を持つのに対しその
半分の周期1/2Φ 0 の周期を持つようにすることがで
きる。“振動数”を二倍にすることができる。これらの
性質は伝導度の変調による信号と雑音の識別に有効であ
る。
【0035】また静電ポテンシャルの値がV 1 ,V 2
ときの、磁束に対するコンダクタンスの周期的なカーブ
1 ,G 2 を測定し、その差(G 1 −G 2 )のカーブを
求める。差のカーブはG 1 ,G 2 のカーブより鋭いピー
クを持った周期的なカーブになるので、コンダクタンス
の周期的なカーブそのものを測定するより、“振動数”
を精度よく測定し周期を読み取ることができる。
【0036】次にリングを複数直列に接続した場合を示
す。 図4は第1の実施例と同一構造のリング10を端子
12,13の間に三つつなぎ、Vをバイアスとした三端
子の素子を構成した、静電ポテンシャルだけによる伝導
度変調装置である。各リングの一方の半円形リングには
同一ポテンシャルVを印加している。このポテンシャル
によってコンダクタンスが振動する。このようにリング
を多段に接続することによって、図5に示すようにポテ
ンシャルによるコンダクタンスの変化の度合いが急峻に
なり、その結果この素子をトランジスタとして用いたと
きトランジスタの立ち上がり速くなるつまりスイッチン
グ特性が向上する。 (実施例4) 図6は本発明の第4の実施例である。本実施例は第1の
実施例のリングを複数個直列に接続した、磁場による伝
導度変調器である。図6ではリング10に端子15,1
6をつけそれぞれ同一磁束Φが貫通し、しかも静電ポテ
ンシャルVがそれぞれのリングの一方の半円形リングに
印加されている。多段接続により伝導度変調の度合いが
急峻になる。
【0037】(実施例5)本発明の第5の実施例は第2
の実施例のリングを多段接続したものである。その結
果、静電ポテンシャルによるリングの伝導度変調が急峻
になり、しかもその度合いを磁界によって変えることが
出来る。先に示した図2はリングが一つの場合のAB効
果の静電ポテンシャル依存性について示した図である
が、コンダクタンスGのカーブの”振幅”、”振動
数”、”位相”は磁束密度Bの値によって変化してい
る。数個連結した場合でも、この1つの場合と同様にコ
ンダクタンスの”振幅”を磁界により増大させたり減少
させたりが可能であり、また”振動数”や”位相”も変
調することができる。伝導度変調が非常に微小な電圧で
可能となりその度合いがさらに改善される。
【0038】(実施例6)本実施例では電子の有効質量
の測定について述べる。第1の実施例の構造(図1)の
リングを用いるが、ここでは磁界を印加しない。図2の
中にB=0テスラのときのG−V曲線が示してある。こ
こでGが最小になる電圧Vを読みとる。次に、ここでは
絶対温度Tが0K付近を考えるので実施例1の(3)式
【0039】
【数10】
【0040】となることから G=(2e2 /h)・| tot (EF )|2 となる。これから、エネルギーは、フェルミエネルギー
をとればよいことがわかる。このあと(2)式から電子
の有効質量m* を決定するわけである。そのためにはあ
とL,e,h,φの値を代入しなければならない。L,
e,hはすでにわかっている。またコンダクタンスGは
ポテンシャルVの位相差φに対し周期2πで変化するの
で、G−V曲線で隣合う二つの極小値についてそれぞれ
のポテンシャルを読み取りV1 ,V2 とし、(2)式か
らV1 ,V2 に対応するφを求めそれらの差を2πとお
く、つまり
【0041】
【数11】
【0042】とする。ここでe、h、Lは既知とすると
有効質量m* を決定することができる。なおφとVの関
係は必ずしもG−V曲線の極小点で読み取る必要はな
く、実測曲線が理論曲線と一致するようにm* を決定す
る方が精度が向上する。具体的にはGとVの関係を理論
式(3)を用いて最小自乗法でフィッティングする。な
お(従来の技術)の欄で述べた特開平1−226182
号公報ではリングを構成する材料が超伝導材料である
が、一般に超伝導リングにおけるAB効果では静電ポテ
ンシャルによる位相シフトはなく、従って本実施例のよ
うにしてキャリアの有効質量を決定することはできな
い。
【0043】(実施例7)図1の測定装置で強磁場をリ
ング10を貫くように印加する。それにより電子は円運
動(サイクロトロン運動)を行う。その軌道半径(ラン
ダウ軌道半径)がリングの幅(太さ)よりも充分小さく
なるような強度の磁場とする。このような条件下では電
子は半円を描いてリングの端に衝突しては次の半円を描
くという軌道を繰り返しながらリングを通過する。この
ような電子のパスをエッジチャネルといい、電子の後方
散乱の確率が0磁場のときよりも少なくなることが知ら
れている。リング中の不純物等に起因する乱れがリング
の太さと同程度またはそれ以下ならば、磁場が強いほど
電子のエッジチャネルは狭くなり不純物などによって散
乱される度合いは減少する。G−V曲線は電子がバリス
ティックに伝導しているとき振幅が大きい即ちコンダク
タンスGの変化が大きい。従って強磁場を印加してエッ
ジチャネルを形成して測定した場合は、エッジチャネル
を利用しない弱磁場の場合に比べてより一層電子の有効
質量m* を精密に測定できる。
【0044】(実施例8) 本実施例では磁束量子Φ 0 の測定について述べる。本実
施例でも図1と同じ構造のリングを用いる。今4.2K
近辺の十分低温の場合を考え、電子のフェルミエネルギ
ーに対する波数kとリングの周囲長2Lの間に kL=nπ(nは整数) が成立したとする。φ=lπ(lは整数)つまり
【0045】
【数12】
【0046】のとき式(4)から透過確率Ttot (θ,
φ)の分子は常に0となる。従って分母が0でなければ
コンダクタンスGはθの関数としてみたとき常に0にな
る。ところがTtot (θ,φ)の分母はθとφが共にπ
の偶数倍あるいは奇数倍のとき0になる。つまりこの条
件のときコンダクタンスに共鳴がおこる。このときには
分母と分子に0となる共通因子が現れこれがT
tot (θ,φ)→0/0つまり不定になってしまう原因
なので、この共通因子を約分してしまうとこの不定性が
とれ tot (θ,φ)→1となる。つまりこの条件を満
たすθでTtot は1となり、それ以外のθでは0にな
る。従ってコンダクタンスはTtot =1となるθで鋭い
極大を示す。例えばパラメータである静電ポテンシャル
(電圧)をφ=πになるように設定すればコンダクタン
スはθ=(2n+1)π(nは整数)でピークになる。
これを示したのが図7である。この図で隣接したピーク
間の磁場を測定してθ=2πにおく。次にθ=(e/
h)BS(Sはリングの面積)よりe/h=(2πθ)
/BSとなるのでこれよりe/hを決定できる。なお図
中実線はφ=(2l+1)πのとき、点線はφ=2lπ
(lは整数)のときを示している。
【0047】本実施例では特開平1−226182号公
報に記載の超伝導リングを用いるものに比べ小型化でき
しかも超伝導リングを用いずに済むので製作も簡単であ
る。
【0048】
【発明の効果】本発明により、高感度の磁界測定、ポテ
ンシャル測定及び伝導度変調が出来る。また電子の有効
質量を高精度に測定できる。また小型で作製も簡単な量
子磁束測定装置が得られる。
【0049】なお本発明の基本原理は式(3)のコンダ
クタンスGを式(1)、(2)に含まれる二つの外部変
数Φ、Vによって制御できることを利用した点にある。
従ってこうした概念による素子はすべて本発明に含まれ
る。また実施例ではすべてリングの半環の長さLが弾性
散乱長に比べて短い場合で説明したが、Lが弾性散乱長
より3〜5倍程度の場合まで許容できる。また実施例で
はリングの幅が極めて細く電子の一次元導体と見なせる
条件で説明したが、次のような場合も本発明に含まれ
る。つまりリングが多少太くてフェルミレベル近傍に数
個のエネルギー的に接近した伝搬する量子状態が存在す
る場合、即ち電子の伝搬のチャネルが数本あってそれら
の間の相互干渉が皆無のときおよび弱い干渉がある場合
である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例のAB効果素子の構成を示す図
である。
【図2】磁束密度をパラメータとした、コンダクタンス
と静電ポテンシャルとの関係を示す図である。
【図3】静電ポテンシャルをパラメータとした、コンダ
クタンスと磁束密度との関係を示す図である。
【図4】AB効果素子を三段直列接続した三端子素子を
示した図である。
【図5】コンダクタンスと静電ポテンシャルとの関係の
段数による比較を示した図である。
【図6】AB効果素子を三段直列接続した三端子素子を
示す図である。
【図7】コンダクタンスの共鳴を示す図である。
【符号の説明】
10 AB効果素子 1、2 半円形リング 3、4、12、13、15、16 端子 7 ノンドープGaAs層 8 SiドープAlX Ga1-X As層 5、6 節点 Φ 印加磁束 V 印加静電ポテンシャル

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 電子の弾性散乱長の数倍程度までの長さ
    の細線でリングを形成し、このリングの対称の位置に端
    子を設け、両端子でリングを区切ったときの少なくとも
    片方のリングに静電ポテンシャルを印加し、リングを通
    過する磁束及び前記静電ポテンシャルにより端子間の電
    子波を干渉させ、静電ポテンシャルを変化させたときの
    端子間のコンダクタンスの静電ポテンシャル依存性を測
    定し、リングを通過する磁束強度を測定することを特徴
    とするAB効果素子を用いた測定方法。
  2. 【請求項2】 電子の弾性散乱長の数倍程度までの長さ
    の細線でリングを形成し、このリングの対称の位置に端
    子を設け、両端子でリングを区切ったときの少なくとも
    片方のリングに静電ポテンシャルを印加し、リングを通
    過する磁束及び前記静電ポテンシャルにより端子間の電
    子波を干渉させ、リングを通過する磁束を変化させ、端
    子間のコンダクタンスのリングを通過する磁束密度依存
    性を測定し、静電ポテンシャルを測定することを特徴と
    するAB効果素子を用いた測定方法。
  3. 【請求項3】 電子の弾性散乱長の数倍程度までの長さ
    の細線でリングを形成し、このリングの対称の位置に端
    子を設け、この二端子でリングを区切ったときの少なく
    とも片方のリングに静電ポテンシャルを印加するAB効
    果素子を、静電ポテンシャルを変化させたときのコンダ
    クタンスの周期的な変化を測定し、その周期を下記理論
    式と比較することによって電子の有効質量を測定するこ
    とを特徴とする有効質量測定方法。 【数1】
  4. 【請求項4】 請求項3記載のAB効果素子に電子が円
    運動を描く軌道半径(ランダウ軌道半径)がリングの太
    さよりも小さく電子がリングの端に沿ってリングを通過
    するように強磁場を印加して電子の有効質量を測定する
    ことを特徴とする請求項3記載の有効質量測定方法。
  5. 【請求項5】 電子の弾性散乱長の数倍程度までの長さ
    の細線でリングを形成し、このリングの対称の位置に端
    子を設けたAB効果素子を、静電ポテンシャルと、リン
    グの半環のそれぞれの径路長Lと、フェルミレベルの電
    子波長を下記の二つの式を満足するようにして、二端子
    間のコンダクタンスの磁束依存性が磁束量子Φ (Φ
    =h/e)の周期で鋭いピークを示し、それ以外でほぼ
    0になるような共鳴条件を満足させ、この条件下で隣接
    したピーク間の磁場を測定し、磁場の位相差θ=2πと
    したとき2π=BS/Φ から磁束量子Φ を測定する
    磁束量子測定方法。 【数2】
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