JP2597628B2 - ビニルフェノール重合体又は共重合体のスルホン化方法 - Google Patents

ビニルフェノール重合体又は共重合体のスルホン化方法

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は水溶性のビニルフェノール重合体又は共重合
体のスルホン化物を精製なしに高純度かつ高収率で製造
する方法に関する。
〔従来の技術〕 ポリビニルフェノールのスルホン化物は、分散剤、高
分子凝集剤、キレート剤、高分子触媒、イオン交換剤等
種々の分野でその有用性が認められている。ポリビニル
フェノールのスルホン化方法としては、無溶媒で大過剰
の濃硫酸をスルホン化財として作用させる方法(特開昭
49−66580号公報)、ジオキサン又は酢酸を溶剤とし、
実質上過剰量のクロルスルホン酸或いは無水硫酸(S
O3)でスルホン化する方法(特公昭55−24444号公報)
が知られているにすぎない。
〔発明が解決しようとする課題〕
しかしながらこれまでの方法では、スルホン化剤の過
剰使用が必須であるため、炭化物或いはスルホン架橋が
主原因と思われる水不溶分及び硫酸根等(即ちNa2SO4
NaClなどの無機塩)の大量副生を抑制し得ず、水溶性で
かつ高純度のスルホン化物を精製なしで得ることは困難
であった。
〔発明の目的〕
本発明は、水溶性のビニルフェノール重合体又は共重
合体のスルホン化物を高純度でかつ高収率で製造するこ
とを目的とする。
〔課題を解決するための手段〕
本発明者等はこのような状況に鑑み、スルホン化工程
における副生或いはスルホン化剤の過剰使用による硫酸
根(SO4 2-)の生成を抑制すべく鋭意検討を重ね、スル
ホン化反応を詳細に検討した結果、平均分子量が300〜1
00万であるビニルフェノール重合体又は共重合体を溶剤
中でスルホン化するに際し、SO3又はルイス塩基とSO3
の錯体をスルホン化剤として使用し、低温でスルホン化
剤を導入する1段階目と、次いでより高温で硫酸エステ
ルをスルホン酸に転換させる熟成工程としての2段階目
を有する基本的に2段階でスルホン化を行うことによ
り、スルホン等による架橋を極めて効果的に抑制しつ
つ、フェノール核1個当り0.2〜2個のスルホン基を導
入することを可能にし、かつ硫酸根(SO4 2-)が実質的
に殆ど副生しないことを見出し、本発明に到達した。
即ち本発明は、平均分子量が300〜100万であるビニル
フェノール重合体又は共重合体を、溶剤中でSO3又はル
イス塩基とSO3との錯体をスルホン化剤としてスルホン
化するに際し、−10〜40℃の低温でスルホン化剤を導入
し、まずフェノール性水酸基の硫酸化を行い、次いでよ
り高温の50〜120℃でフェノール性水酸基の復元とスル
ホン酸基のフェノール核への導入を行うことを特徴とす
るビニルフェノール重合体又は共重合体のスルホン化方
法を提供するものである。
本発明における出発物質であるビニルフェノール重合
体又は共重合体の製造法については、その来歴は問わな
い。例えば、ポリビニルフェノールは、ビニルフェノー
ルをカチオン重合、ラジカル重合或いは熟重合させるこ
とにより容易に得られる。最近では、丸善石油化学
(株)よりP−ヒドロキシスチレンのポリマーがマルカ
リンカー(商品名)として工業化されている。また、ビ
ニルフェノール共重合体としては、スチレン、アクリル
酸(又はそのエステル)、メタクリル酸(又はそのエス
テル)、マレイン酸(又はそのエステル)、フマル酸
(又はそのエステル)、イタコン酸(又はそのエステ
ル)、酢酸ビニル、フェニルマレイミド等とビニルフェ
ノールとの共重合体が代表的なものであるが、特にこれ
らに限定されるものではない。但し、アルコール性水産
基を有するビニルモノマーを構成単位として含む場合
は、フェノール骨格のスルホン化という意味では問題が
多く、不可能ではないが好ましくない。尚、本発明にお
いて使用するビニルフェノール重合体又は共重合体は、
平均分子量が300〜100万、好ましくは500〜10万の範囲
のものである。平均分子量が100万を越えると水不溶性
のスルホン化物の量が急激に増大する。一方、平均分子
量が300を下まわると原料ポリマー中の重合性の未反応
モノマーの含量が増大するため、スルホン化時の不飽和
結合のスルホン化、重合反応の併発等の副反応が顕著に
なり、目的生成物が得られない等の不都合が生じる。
本発明においては、スルホン化時に溶剤を使用する。
溶剤としては原料ビニルフェノール重合体又は共重合体
の良溶剤で、かつスルホン化剤(例えばSO3)と錯体を
形成し、スルホン化剤の反応性を緩和する効果を有して
いるものが好ましい。このような溶媒としては、例えば
ジオキサン、酢酸が挙げられる。中でもジオキサンは、
スルホン化反応及び中和反応においても消耗を殆ど伴わ
ず、特に好ましい。尚、ビニルフェノール共重合体の場
合には、スルホン化剤の反応性を緩和する効果は有しな
いが、クロル化炭化水素を溶剤として使用することがで
きる。クロル化炭化水素としては、ジクロロメタン、1,
2−ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、ク
ロロホルム、四塩化炭素が例示される。
溶媒の使用量は、原料のビニルフェノール重合体又は
共重合体1重量部に対して、1〜30重量部、好ましくは
2〜20重量部とするのが適している。ここで、ビニルフ
ェノール重合体又は共重合体のスルホン化物(又は中和
物)中の硫酸根等の無機酸(又は無機塩)含量を特に少
なくさせたい場合には、原料であるビニルフェノール重
合体又は共重合体を溶解させた溶液から溶剤を一部留出
させ、共沸によりスルホン化剤導入前の系中の水分を極
力減少させること、或いは使用する原料ビニルフェノー
ル重合体又は共重合体及び溶剤の脱水を十分に行ってお
くことが肝要である。
本発明では、上記のようにビニルフェノール重合体又
は共重合体を溶解させた溶液にスルホン化剤を作用させ
るわけであるが、そのスルホン化剤としてはSO3或いは
ルイス塩基とSO3との錯体を使用することができる。SO3
は液体SO3、SO3ガス、SO3希釈ガスのいずれであっても
よい。例えば、SO3希釈ガスとしては、窒素、乾燥空気
等で代表されるSO3に対し不活性なガスで、SO3濃度を1
〜10vol%としたものが好ましく、2〜5vol%としたも
のが特に好ましい。
また、SO3錯体のルイスの塩基としては、ジオキサ
ン、チオキサン、トリアルキルアミン、トリアルキルア
リールアミン、ジアルキルアニリン、ピリジン、2−メ
チルピリジン、キノリン、ジメチルホルムアミド、ビス
(2−クロロエチル)エーテル、トリアルキルホスフェ
ート、トリアルキルホスフィンオキサイド、トリアルキ
ルホスフィン、安息香酸、塩化水素(即ちクロルスルホ
ン酸)、テトラヒドロフラン等が挙げられるが、特にこ
れらに限定されるものではない。
スルホン化財の使用量は、得ようとするスルホン化度
の1.5倍モル以下、好ましくは、1.2倍モル以下が望まし
い。即ち、スルホン化度0.2〜2を目標とするならば、
原料ポリマーのフェノール性水酸基(即ち、フェノール
性ポリマー構成単位)1モル当り0.2〜3モル、好まし
くは0.2〜2.6モルの量を使用するのが適当である。モル
比(SO3/フェノール性ポリマー構成単位)が3を越える
と架橋生成物及び炭化物が副生しやすく、水不溶分量が
増加するとともに硫酸根(SO4 2-)の量もモル比増大と
ともに急激に増加する。一方、モル比が0.2未満になる
とスルホン化度が低くなりすぎ、水溶性のものが得られ
なくなる。
スルホン化反応条件は、スルホン化反応を2段階に分
け、スルホン化剤を導入する工程を1段階目とし、その
反応条件を−10〜40℃、好ましくは0〜30℃とし、続く
フェノール性水酸基の復元とスルホン酸基のフェノール
核への導入を行う2段階目の反応条件としては1段階目
よりも基本的に高温にし、50〜120℃、好ましくは60〜1
00℃で、反応時間は1〜20時間とすることが望ましい。
ここで、スルホン化度が1以下の場合は上述の条件でよ
いが、スルホン化度が1を越えるビニルフェノール重合
体又は共重合体のスルホン化物を得たい場合には、一度
スルホン化度1付近のものを上記方法で得た後、さらに
上記方法を繰り返すことによりスルホン化度を1〜2に
することが可能である。ここで、2段階目の反応、即ち
フェノール性水酸基の復元とスルホン酸基のフェノール
核への導入を行うために熟成反応を行いつつ、一部の溶
媒を留去させても特に問題はない。尚、反応温度が−10
℃を下まわると反応系が凝固したり、反応速度を遅くす
るおそれがあり、一方120℃を越えると架橋反応等の副
反応が併発しやすいため、好ましくない。
本発明においては、スルホン化反応中及び反応終了後
もビニルフェノール重合体又は共重合体のスルホン化物
は溶媒中に均一溶解した状態であるため、反応操作にお
いても極めて取り扱いが容易である。
本発明では、反応終了物から溶媒を留去することによ
りスルホン化度が0.2〜2のビニルフェノール重合体又
は共重合体のスルホン酸が得られる。更に、反応混合物
或いは溶剤留去後の当該スルホン酸を中和することによ
り、硫酸塩等の無機塩含量の極めて少ない高純度でかつ
水溶性のビニルフェノール重合体又は共重合体のスルホ
ン酸塩を得ることが本発明により初めて可能となった。
尚、当該スルホン化物中の硫酸根(SO4 2-)量は、スル
ホン化物100重量部当り20重量部以下である。
〔発明の効果〕
本発明によれば、スルホン化条件を厳選して反応を行
うため、硫酸根等の無機酸或いは無機塩の含量ならびに
水不溶分の極めて少ない高純度のビニルフェノール重合
体又は共重合体のスルホン酸或いはその塩を高収率で得
ることができる。一般に、フェノール類とスルホン化剤
との反応では、親電子体であるSO3に対する反応性が、
ベンゼン核よりもフェノール性水酸基の方が大きいた
め、まずは硫酸エステルを生成しやすい。従来の方法で
は、直接ベンゼン核にスルホン酸を導入しようとしたた
め、本来目的としないフェノール性水酸基まで硫酸化す
ることになり、結果的にビニルフェノール重合体又は共
重合体の主要構成単位であるフェノール核に対して過剰
のスルホン化剤を使用する必要があった。この過剰のス
ルホン化剤のために望ましくない水不溶分の副生、及び
生成物中への硫酸根(SO4 2-)等の大量含有を余儀なく
させたものと考えられる。本発明では、その詳細な反応
機構については未だ明確でないが、スルホン化剤を構成
単位であるフェノール核に対し、基本的に目的のスルホ
ン化度に応じたモル数だけの最少量で良好にスルホン化
できることを見出したものであり、更にSO3の反応性を
緩和しうる溶剤を選択したこともあって、ビニルフェノ
ール重合体又は共重合体のようないわゆる重合物のスル
ホン化では避けがたいスルホン生成等による架橋反応、
或いはスルホン化剤の過剰使用等による炭化による水不
溶分の副生を大幅に抑制することを可能とさせたもので
ある。尚、副次的に見出された結果であるが、ビニルフ
ェノール共重合体の場合には、ビニルフェノール構成単
位以外にスルホン化されうる骨格(例えば、芳香環、カ
ルボン酸或いはそのエステル)が含まれていても、スル
ホン化されるのは主にフェノール核である。
本発明において、2段階目の熟成工程によりフェノー
ル性水酸基の復元とスルホン酸基のフェノール核への導
入が進行するのは、フェノール性水酸基の酸素原子のオ
ルト/パラ配向性により、ベンゼン環状のオルト位(水
酸基から見て)が攻撃を受けやすくなり、硫酸エステル
の−SO3H基が球電子的に転位するためと考えられる。
本発明では、スルホン化反応が反応開始時から反応終
了時に至るまで常に均一系で進行するため局部的な副反
応が抑制され、更にスルホン化剤の過剰使用が殆ど不要
であり、その結果、スルホン等による架橋が少なく且つ
高純度の当該スルホン酸或いはその塩が得られるため、
無機塩除去等の精製工程を全く設ける必要がない。この
ように、本発明による製造方法は、工業的製造プロセス
として極めて優れた特徴を有している。従って、本製造
方法により得られるビニルフェノール重合体又は共重合
体のスルホン酸塩は、全く精製することなしで既に高品
質であり、そのままで、分散剤、高分子凝集剤、キレー
ト剤等の各種応用分野に有効に利用することが可能であ
る。
〔実施例〕
以下、実施例をもって本発明の効果を説明するが、本
発明はこれら実施例に限定されるものではない。
実 施 例 1 平均分子量12,000のポリパラヒドロキシスチレン(水
分含量0.3%)1000g(8.21モル構成単位)を温度計、滴
下ロート、還留冷却管、いかり型撹拌装置付きの10セ
パラブルフラスコに入れ、5005gの1,4−ジオキサンを加
え均一に溶解させた。溶液は赤褐色の透明均一溶液とな
った。この溶液を5〜10℃に冷却した後、よく撹拌しな
がら液体SO3756g(9.44モル)を滴下ロートより約90分
かけて滴下した。尚、液体SO3滴下時の温度は、10〜15
℃に保った。スルホン化剤滴下終了後、反応混合液の温
度を80℃に昇温し、75〜85℃で撹拌下4時間熟成を行っ
た。熟成終了後、赤褐色ないし褐色の均一透明な反応混
合液6739gを得た。この溶液6685gより、減圧条件下一部
溶剤を留去させたところ、全量が3270gのやや粘稠な液
体が得られた。この溶液に10%NaOH水溶液を冷却しなが
ら滴下し中和した。次に、再度溶剤留去を行い、その後
pH調整及び希釈を行った。その結果、赤褐色の粘稠な水
溶液4594gを得た。分析値は以下のとおりであった。
固型分 41.8% Na2SO4 2.5% NaHSO3 0.1% S含量 6.1% Na含量 4.8% 水不溶分量 0.05%(対固型分) 尚、スルホン化度は0.97(物質収支及びNa含量より算
出)で、GPC分析によると重量平均分子量は約24,000(M
w/Mn=3.8)であった。
実施例2〜11、比較例1〜3 ビニルフェノール重合体又は共重合体200gを所定の溶
媒に溶解させた後、各種スルホン化剤を所定の反応温度
に保ちつつ滴下し、更に所定の温度で熟成を行った。
溶剤を一部或いはほぼ完全に留去させた後、NaOH水溶
液により中和を行い、更に溶剤を完全に留去し、ビニル
フェノール重合体又は共重合体のスルホン酸Na水溶液を
得た。尚、スルホン化度については実施例1と同様に、
物質収支及びNa含量の分析より算出(フェノール核に対
し)し、その結果を反応条件とともに表1にまとめた。
表1より、本発明例(実施例2〜11)では、いずれの
場合も硫酸根(SO4 2-)含量は少なく、スルホン化度が
2までの全ての範囲内においても対固型分10重量%以下
で、かつ水不溶分の生成量も1%以下と極めて少ない。
スルホン化度が1以下の場合(実施例1〜6)に至って
は特に良好な結果であり、硫酸根(SO4 2-)は対固型分
5%以下である。これに対して、本発明の請求の範囲外
の条件(比較例1〜3)では、いずれの場合も満足な結
果が得られなかった。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭51−109097(JP,A) 特開 昭52−35189(JP,A) 特開 昭58−198502(JP,A)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】平均分子量が300〜100万であるビニルフェ
    ノール重合体又は共重合体を、溶剤中でSO3又はルイス
    塩基とSO3との錯体をスルホン化剤としてスルホン化す
    るに際し、−10〜40℃の低温でスルホン化剤を導入し、
    まずフェノール性水酸基の硫酸化を行い、次いでより高
    温の50〜120℃でフェノール性水酸基の復元とスルホン
    酸基のフェノール核への導入を行うことを特徴とするビ
    ニルフェノール重合体又は共重合体のスルホン化方法。
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