JP2594323Y2 - 燃料タンクに取付ける燃料蒸気通気弁の筐体 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本考案は車両の燃料タンク内で発
生する燃料蒸気をキャニスタに導びく燃料蒸散ガス浄化
システムにおいて、燃料タンク内の液状燃料が燃料タン
クから流出し、キャニスタ内に漏入するのを防止する燃
料蒸気通気弁であって、燃料タンクの上面壁体の開口部
から燃料タンク内の燃料面の上方空間内に挿入し、燃料
タンクの上面に固定するものの筐体の構造に関する。

【０００２】

【従来の技術】図９は車両用の燃料タンクの上面から燃
料タンク内の燃料面の上方空間内に挿入し燃料タンクの
上面に固定する形態の燃料蒸気通気弁の従来から使用さ
れているものの構成例を示す。図９において符号１は燃
料タンクの上面壁体、２は燃料面、３は燃料面２の上方
の空間、４は燃料蒸気通気弁で、該燃料蒸気通気弁４
は、樹脂成形になる筐体５と該筐体５内に内蔵された浮
子６と筐体５の底部の開放端に取付けられたキャップ
７、浮子６の重量を打消すコイルスプリング８とからな
り、前記筐体５は円筒状の筐体本体５ａと該筐体本体５
ａの上部に一体に形成された鍔部５ｂとからなる。９は
鋼板等の金属板の成形になるカバーでＯ−リング１０を
介して気密に前記筐体５にかぶせられ、該カバー９は燃
料蒸気流出通路を形成するニップル１１が気密に臘付な
どによって取付けられている。該ニップル１１には燃料
蒸気を（図示してない）キャニスタに導びく可撓性のパ
イプ１２が取付けられる。該可撓性パイプ１２としては
一般に布入ゴムホースが使用される。１３はパッキン、
１４はパッキン１３を介して前記カバー９と燃料蒸気通
気弁の筐体の鍔部５ｂを図示してない螺子部材で固定す
るための燃料蒸気通気弁４の取付座板であって、前記螺
子部材が螺合するタップ孔が形成されているが図が繁雑
となるのを避けるため図示を省略してある。前記取付座
板１４は燃料タンクの上面壁体１に臘付などによって気
密に固定されている。燃料蒸気通気弁４はカバー９、Ｏ
リング１０、パッキン１３を一体に結合して出荷するた
め、燃料蒸気通気弁４の筐体５の鍔部５ｂとカバー９と
を、カバー９の下端周縁の数箇所に設けた折曲げ部９ａ
によって鍔部５ｂ周縁を加締め固定し、パッキン１３は
上面に複数箇所、係止突起を有する柱状突出部１３ａを
設けて燃料蒸気通気弁４の筐体５の鍔部５ｂと、カバー
９の開孔部に挿通係止させている。パッキン１３の下面
に設けられた係合突起１３ｂは、前記取付座板１４に設
けられた透孔１４ａに係合して、取付座板１４に燃料蒸
気通気弁４を取付ける際に前記ニップル１１に正しい向
きを与える役目をする。

【０００３】図１０はカバー９、パッキン１３が組付け
られた燃料蒸気通気弁４を取付座板１４の上に載せた状
態を、燃料タンクの上面壁体１を取除いたものと仮定し
て、下方から見た図で、７が燃料蒸気通気弁４の筐体５
の底部に取付けられたキャップ、７ａがキャップ７に穿
設された燃料蒸気流入孔、９がカバー、９ａが燃料蒸気
通気弁４の筐体５の鍔部５ｂを固定するカバー９の折曲
げ部、１３ｂがパッキン１３の下面の係合突起、１４が
取付座板、１４ａがパッキン１３の係合突起１３ｂが係
合する取付座板１４の透孔であることは前述の通りであ
り、１５はカバー９の上面から燃料蒸気通気弁４の筐体
５の鍔部５ｂとパッキン１３を貫通する螺子部材（図示
せず）が螺合するタップ孔である。

【０００４】図９によって燃料蒸気通気弁４の作用を説
明すると、燃料タンク内の液状燃料の燃料面２から蒸発
した空間３内の燃料蒸気は、燃料面２が正常な状態では
燃料蒸気通気弁４の筐体５の筐体本体５ａの底部に取付
けられたキャップ７の燃料蒸気流入孔７ａと、筐体本体
５ａの側面に開孔している図示してない燃料蒸気流入孔
を通って筐体本体５ａ内に流入し、燃料蒸気流出孔５ｃ
を通ってカバー９の内部に流入し、ニップル１１、パイ
プ１２を通って図示してないキャニスタに導びかれる
が、燃料面２の攪乱又は傾斜によって液状の燃料が燃料
蒸気通気弁４の筐体本体５ａ内に流入すると浮子６が浮
き上って、浮子６の上面の弁体形成部６ａが蒸気流出孔
５ｃを閉じ、液状燃料の流出が防止される。車両の転倒
によって液状燃料が筐体本体５ａ内に流入したときはコ
イルスプリング８の付勢によって浮子６の弁体形成部６
ａが燃料蒸気流出孔５ｃを閉じて同様液状燃料の流出が
防止される。

【０００５】図１１は燃料蒸気通気弁４をカバー９とパ
ッキン１３とに一体に組付けるための他の構成を示し、
燃料蒸気通気弁４の筐体５の鍔部５ｂの上面に係止突起
を有する複数個の突出部５ｄを設けてカバー９の対応す
る開孔部に挿通係止し、鍔部５ｂの下面に柱状突出部５
ｅを複数個設けて、パッキン１３の対応する開孔部に弾
力的に挿通してパッキン１３を結合すると共に該柱状突
出部５ｅを更にパッキン１３の下面下に突出する長さと
して前記取付座板１４の対応する透孔１４ａに係合させ
て、燃料タンクに取付けの際にニップル１１に正しい方
向を与える役目をさせる構成である。

【０００６】而して図９の構成では燃料蒸気通気弁４の
筐体５の鍔部５ｂにカバー９を取付けるための加締め９
ａを行うための工数を要し、又パッキン１３を鍔部５ｂ
に取付ける際、図１２に示す様にパッキン１３の上面の
柔軟で曲り易い複数個の柱状突出部１３ａを前記鍔部５
ｂ及びカバー９の対応する開孔部に挿通した後、カバー
９から突出した柱状突出部１３ａを一本、一本、図１３
に示す様に指でつまんでパッキン１３を引っ張り上げな
ければならず、工数がかかるだけでなく、パッキン１３
の上下面に柱状突出部１３ａ及び係合突起１３ｂを一体
に形成しなければならないからパッキン１３が成形品と
なり、高価となる欠点がある。

【０００７】又図１１に示す構成では、車両が衝突事故
等によって衝撃を受けてカバー９が変形を起すと、図１
４に示す様に燃料蒸気通気弁４の筐体５の鍔部５ｂ上面
の突出部５ｄが衝撃を受けて万一破壊すると、Ｏリング
１０の溝の底面を経て筐体本体５ａの内面にまで亀裂が
到達し、燃料が外部に漏洩して火災を起す危険がある。

【０００８】燃料蒸気通気弁４の筐体５の鍔部５ｂに係
止突起を有する突出部５ｄを設けると、樹脂を射出成形
する際の金型の型開きのストロークが大きくなるから大
形の成形機が必要となってコストアップを招く。即ち図
１５において、燃料蒸気通気弁４の筐体５を成形するた
めの金型１６を鎖線１７で示す分割面で分割して鍔部５
ｂの面方向に型開きする必要があり、鍔部５ｂの径が筐
体５の全高さよりも大きいから型開きストロークが大き
くなって大形の成形機を使用する必要があり、コストア
ップとなる。

【０００９】

【考案が解決しようとする課題】燃料蒸気通気弁４の筐
体５の鍔部５ｂの上面に形成した突出部５ｄにカバー９
を、下面に形成した突出部５ｅに平板から打抜いただけ
の低コストのパッキン１３を押しつけるだけの簡単な操
作で、燃料蒸気通気弁４にカバー９とパッキン１３を組
付けることができ、車両衝突時の衝撃によってカバー９
が変形して、該カバーを係止している突出部５ｄが折損
することがあっても、折損による亀裂が燃料蒸気通気弁
４の筐体５の本体５ａに及んで該本体５ａ内の燃料漏れ
を起すことがない燃料蒸気通気弁を得ることが本考案の
課題である。

【００１０】

【課題を解決するための手段】燃料蒸気通気弁の筐体の
鍔部の上面及び下面に設ける突出部は燃料蒸気通気弁が
出荷時から燃料タンクに取付けられるまでの間カバーと
パッキンが組付けられた状態を保っていれば良く、燃料
タンクへの取付後は螺子部材でカバー、燃料蒸気通気
弁、パッキンはタンクに一体に締付固定され、車両から
受ける衝撃に耐える強度は必要がないから、燃料蒸気通
気弁の筐体を下記構成とすることによって課題が解決さ
れた。

【００１１】即ち車両用の燃料タンクの上面開口部から
燃料タンク内の燃料面の上方空間内に挿入し、燃料タン
クの上面に固定する液状燃料流出防止機能を備えた燃料
蒸気通気弁であって、該燃料蒸気通気弁の筐体が頂面壁
体を有する円筒状の筐体本体と、該筐体本体の上部に一
体成形された鍔部とからなり、該鍔部の上面に燃料蒸気
流出通路を有するカバーを、下面に燃料タンクの燃料蒸
気通気弁の取付面との間に挟むパッキンを組付けて出荷
するため、該鍔部の上面に前記カバーを取付けるための
係止突起を有する突出部が、下面に前記パッキンを取付
けるための突出部が一体に成形されるものにおいて、前
記筐体を前記鍔部上面の突出部と鍔部との接続部を前記
突出部の周縁の一部に限定して周縁の他の部分は鍔部の
上面と下面との間を貫通した空隙とすることによって、
衝撃に伴うカバーの変形によって発生する応力を、前記
接続部に限定集中発生させ、亀裂が該部に限定して発生
されて筐体本体に及ばない様にする。

【００１２】

【実施例】図１は本考案の燃料蒸気通気弁の筐体の、一
部断面をとった側面図、図２は筐体を上方から見た図、
図３は筐体を下方から見た図、図４は図１のＡ−Ａ断面
矢視図である。図１、図２、図３、図４において符号５
は筐体で、頂面壁体を有する円筒状の筐体本体５ａと該
筐体本体５ａの上部に一体成形した鍔部５ｂとからなる
筐体本体５ａは頂面壁体に燃料蒸気流出孔５ｃ（図４）
が、筒状壁体の前記鍔部５ｂの下方に燃料蒸気流入孔５
ｆと、底部開放端に近接してキャップ（図９の符号７参
照）を係止する係止孔５ｇが開孔し、鍔部５ｂは上面に
カバー（図１１の符号９参照）を係止するための係止突
起５ｍを有する突出部５ｄを、下面にパッキン（図１１
の符号１３参照）を取付け、かつ車両の燃料タンクに燃
料蒸気通気弁を取付けの際の位置決めの役をする略々柱
状の突出部５ｅを一体に成形してある。鍔部５ｂの上面
及び下面に設ける突出部５ｄ、５ｅは、燃料蒸気通気弁
が車両の燃料タンクに取付けられるまでの間、上側にカ
バーを、下側にパッキンを組付けた状態に保つためのも
のであって、螺子部材で燃料タンクに取付けられた後に
おける車両の衝撃に耐える強度を必要とするもではな
く、むしろ車両の衝撃を受けカバーが変形して図１４に
示した様に鍔部５ｂとの間に亀裂を生じて破損したとき
には、衝撃によって発生する応力が限定された範囲に集
中して破損し、亀裂が筐体本体５ａに及ばないことが必
要であるから、鍔部５ｂとの接続部が部分的に形成され
ている。即ち鍔部５ｂの上面に形成された突出部５ｄは
該突出部５ｄにおける鍔の接線方向両側に空隙５ｈ（図
１、図２、図３）を設け、鍔部の径方向の限定された範
囲（図２、図３）５ｉで鍔部５ｂと突出部５ｄとが接続
されている。鍔部５ｂと突出部５ｄとの接続は図４に示
す様に鍔部５ｂの下面から鋳抜き５ｊを設けることによ
って更に接続部の断面積を小さくして衝撃時の応力を限
定した範囲に集中させることができる。図５は車両の衝
撃によって本考案の構成の突出部５ｄの接続部に亀裂５
ｋを生じた状態を示し、応力の集中によって亀裂範囲が
限定される。突出部５ｄの周囲に上述の様な空隙５ｈを
設けることは筐体５の樹脂成形のコストを下げるために
も有効である。突出部５ｄを全周にわたって鍔部５ｂと
一体に成形する図１１で示した構成では図１５によって
既に説明した様に金型の型開きストロークが大きくなっ
てコスト高となるのに対して、本考案の上記構成では図
６に示す様に金型１８を上下に分割して斜面５ｌと係止
突起５ｍとを形成させることができる。

【００１３】鍔部５ｂの下面の突出部５ｅについても前
記突出部５ｄと同様に図７に示す金型の形状によって周
辺に空隙５ｈを設ける構成として斜面５ｎを形成し、パ
ッキンの弾力的締付による取付けを確実にすることがで
きる。尚５ｐはＯ−リング溝、５ｑは燃料タンクに燃料
蒸気通気弁を取付ける螺子部材の挿通孔である。

【００１４】上記構成の筐体５を有する燃料蒸気通気弁
４は図８に示す様にカバー９とパッキン１３が組付けら
れて出荷される。組付けは筐体５の鍔部上面の突出部５
ｄを対応するカバー９の孔に合わせて筐体５をカバー９
の下面に押し付けて、斜面５ｌにそって突出部５ｄを孔
に挿入し、係止突起５ｍを孔の周囲に係止させ、次に鍔
部５ｂの下面の突出部５ｅと対応するパッキン１３の孔
を合わせてパッキン１３を突出部５ｅの斜面５ｎまで押
し込めば、パッキン１３の孔の内周面が斜面５ｎを弾力
的に締めつけて、パッキン１３は確実に燃料蒸気通気弁
に組付けられる。７は筐体５の底部に取付けられたキャ
ップであり、燃料蒸気通気弁の内部構成及び作用は図９
に示す構成と同様で、作用も図９について説明した作用
と同じである。

【００１５】

【効果】燃料蒸気通気弁にカバー及びパッキンを組付け
る作業が簡単となり、車両衝突事故などによる衝撃によ
ってカバーに変形を生じて、カバーを係止する突起５ｍ
を有する突出部５ｄが折損しても亀裂が筐体本体５ａに
及んで燃料の漏洩による火災を起すことがなく、成形に
よらず単に平板から打抜いた低コストのパッキンを使用
することができ、かつカバーを取付けるための前記突出
部５ｄの係止突起５ｍの形成が筐体本体５ａの中心線方
向に金型を型開きすることによって行うことが可能とな
って、型開きのストロークが鍔部５ｂの面方向に型開き
する場合（図１５参照）よりも小さくなり、従って小形
の成形機の使用が可能となってコストが低減され、更に
金型の型開き方向が筐体本体５ａの中心線方向となる結
果、鍔部５ｂの下面の突出部５ｅについても斜面５ｎの
形成が容易となって（図７参照）パッキンを確実に取付
けることができる様になると云う効果がある。型開き方
向を筐体本体５ａの中心線方向となると型開きストロー
クが小さくなるのは鍔部５ｂの径よりも筐体本体５ａの
高さが小さいからである。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案の、燃料蒸気通気弁の筐体の、一部断面
をとった側面図。

【図２】筐体を上方から見た図。

【図３】筐体を下方から見た図。

【図４】図１のＡ−Ａ断面矢視図。

【図５】筐体の鍔部と鍔部上面の突出部との接続部に生
ずる亀裂を示す図。

【図６】鍔部上面の突出部を形成する金型の分割面を示
す図。

【図７】鍔部下面の突出部を形成する金型の分割面を示
す図。

【図８】本考案の構成の筐体を有する燃料蒸気通気弁に
カバーとパッキンを取付けた状態を示す、一部断面をと
った側面図。

【図９】燃料蒸気通気弁の従来構成の例を示す図。

【図１０】燃料タンクの上面壁体を取除いたものと仮定
したときの図９の構成を下方から見た図。

【図１１】燃料蒸気通気弁の従来構成の他の例を示す
図。

【図１２】図９の従来構成の通気弁にパッキンを組付け
る経過を示す図。

【図１３】図９の従来構成の通気弁にパッキンを組付け
る経過を示す図。

【図１４】図１０の従来構成の通気弁の筐体鍔部上面の
突出部折損時の亀裂を示す図。

【図１５】図１０の従来構成の燃料蒸気通気弁の筐体を
成形する金型の型割を示す図。

【符号の説明】

５ 燃料蒸気通気弁の筐体 ５ａ 筐体本体 ５ｂ 筐体鍔部 ５ｃ 燃料蒸気流出孔 ５ｄ 鍔部上面の突出部 ５ｅ 鍔部下面の突出部 ５ｆ 燃料蒸気流入孔 ５ｇ 筐体底部にキャップを取付ける係止孔 ５ｈ 空隙 ５ｉ 接続部 ５ｊ 鋳抜き ５ｋ 亀裂 ５ｌ 斜面 ５ｍ 係止突起 ５ｎ 斜面 ７ キャップ ９ カバー １０ Ｏ−リング １３ パッキン

Claims (1)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 車両用燃料タンクの上面開口部から燃料
   タンク内の燃料面の上方空間内に挿入し、燃料タンクの
   上面に固定する液状燃料流出防止機能を備えた燃料蒸気
   通気弁であって、該燃料蒸気通気弁の筐体（５）が頂面
   壁体を有する円筒状の筐体本体（５ａ）と該筐体本体
   （５ａ）の上部に一体成形された鍔部（５ｂ）とからな
   り、該鍔部（５ｂ）の上面に燃料蒸気流出通路（１１）
   を有するカバー（９）を、下面に燃料タンクの燃料蒸気
   通気弁の取付面との間に挟むパッキン（１３）を組付け
   て出荷するため、該鍔部（５ｂ）の上面に前記カバー
   （９）を取付けるための係止突起（５ｍ）を有する突出
   部（５ｄ）が、下面に前記パッキン（１３）を取付ける
   ための突出部（５ｅ）が一体に成形されているものにお
   いて、前記鍔部上面の突出部（５ｄ）と鍔部（５ｂ）と
   の接続部を、前記突出部（５ｄ）の周縁の一部（５ｉ）
   に限定して他の周縁部は鍔部（５ｂ）の上面と下面を貫
   通した空隙（５ｈ）とし、衝撃に伴うカバー（９）の変
   形によって発生する応力が、前記接続部（５ｉ）に限定
   集中発生される前記燃料蒸気通気弁の筐体。