JP2593736B2 - 耐衝撃性ポリエステル樹脂組成物 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は機械的特性、成形性及び成形品の外観に優れ
た熱可塑性樹脂組成物に関する。更に詳しくは、芳香族
ポリエステル樹脂と特定のアクリル酸エステル系共重合
体とからなる、芳香族ポリエステル樹脂の耐衝撃性が改
善された、しかも外観の優れた成形品を与える熱可塑性
樹脂組成物に関する。

〔従来の技術〕

芳香族ポリエステル樹脂は機械的特性、耐薬品性、耐
摩耗性、電気的特性等の性質に優れている反面、耐衝撃
性（ノッチ付）が低いという欠点を有している。

この欠点を改良する目的で、ABS（アクリロニトリル
−ブタジエン−スチレン）系樹脂、あるいはこれをエポ
キシ等で変性したもの、又は更に第３成分としてエポキ
シ化合物等を添加したもの（特開昭54−57563号、同60
−262847号、同61−130366号、特開平１−123854号、同
１−163249号）、ポリオレフィン、あるいはこれをエポ
キシ等で変性したもの、又は更に第３成分としてエポキ
シ化合物等を添加したもの（特公昭57−54058号、特開
昭59−184253号、同61−204258号、同63−128059号、特
開平１−40555号、同１−204960号）、アクリル系ゴ
ム、又は更に第３成分としてエポキシ化合物等を添加し
たもの（特開昭60−219256号、特開昭63−45746号）が
あったが、これらの樹脂は、耐衝撃性は十分に改良され
ていたものもあったが、補強効果が低いために添加物を
多量に加えたことにより、他の物性が極端に低下した
り、成形品の外観が損なわれたりした。

〔発明が解決しようとする課題〕

このように、芳香族ポリエステル樹脂の耐衝撃性を改
良する試みは数多くなされてきたが、他の物性が極端に
低下したり、成形品の外観が損なわれたりして、実用上
不十分であった。

本発明の意図するところは、耐衝撃性に優れ、ある程
度の物性バランスを有し、しかも美麗な外観を与えるポ
リエステル系樹脂組成物を提供することにある。

〔課題を解決するための手段〕

本発明の概説すれば、本発明は熱可塑性樹脂組成物に
関する発明であって、（Ａ）芳香族ポリエステル樹脂70
〜95重量％、及び（Ｂ）エチレンとカルボン酸ビニルと
アクリル酸エステルと、これらの合計量100重量部に対
し合計量が0.1〜10重量部であるエポキシ基を含有する
ビニル単量体とのエポキシ基含有アクリル酸エステル系
供重合体５〜30重量％を有効成分とすることを特徴とす
る。

本発明者らは、本発明による熱可塑性樹脂組成物が、
耐衝撃性に優れ、ある程度の物性バランスを有し、成形
加工性に優れ、しかもその成形品が美麗な外観を与える
ことを見出した。

本発明で用いられる芳香族ポリエステル樹脂は、芳香
族ジカルボン酸あるいはその誘導体と、脂肪族グリコー
ルあるいはその誘導体とを主成分とする、縮合反応によ
り得られる重合体又は共重合体であり、具体例を挙げる
と、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテ
レフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポ
リペンタメチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレン
テレフタレート、ポリデカメチレンテレフタレート等の
芳香族環を含むポリエステルであり、これらを単独で、
あるいは併用して用いることができる。

本発明では、芳香族ポリエステル樹脂70〜95重量％と
エポキシ基含有アクリル酸エステル系共重合体５〜30重
量％を混合して組成物とするが、エポキシ樹脂基含有ア
クリル酸エステル系共重合体が５重量％未満であると、
耐衝撃値の改良効果が低い。また、30重量％を越える
と、剛性の低下が大きく、成形品の外観も損なわれるこ
とがある。

エポキシ基含有アクリル酸エステル系共重合体とは、
エチレンとカルボン酸ビニルとアクリル酸エステルと、
エポキシ基を含有するビニル単量体との共重合体である
が、用いられるカルボン酸ビニルの具体例としては、酢
酸ビニル、プロピオン酸ビニルがあり、アクリル酸エス
テルの具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸
エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ｎ−ブチル、
アクリル酸２−エチルヘキシル、アクリル酸メトキシメ
チル、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸エトキシ
メチル、アクリル酸エトキシエチルがある。

エポキシ基含有アクリル酸エステル系共重合体中のエ
ポキシ基を含有するビニル単量体の量は、エチレンとカ
ルボン酸ビニルとアクリル酸エステルの合計量100重量
部に対し合計量0.1〜10重量部が好ましいが、0.1重量部
未満であっては得られた組成物の機械的強度が不十分で
あり、成形品に層状のはく離現象が観察されることがあ
り、10重量部を越えると機械的強度あるいは熱安定性を
損なうことがある。

芳香族ポリエステル樹脂とエポキシ基含有アクリル酸
エステル系共重合体の混合は、通常の溶融混練装置を用
いて行うことができるが、好適に使用できる溶融混練装
置としては、スクリュー押出機、バンバリーミキサー、
コニーダー、混合ロール等がある。

〔実施例〕

以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する
が、実施例及び比較例で用いた部及び％はすべて重量基
準である。また、これらはいずれも例示的なものであっ
て、本発明の内容を限定するものではない。

なお、各種性質の測定方法は次の通りである。

耐熱性:ASTM Ｄ−648に従い、厚さ1/4″の射出成形品
を用いて、荷重18.6kg/cm²で加熱変形温度（HDT）を測
定した。（アニールなし） 衝撃強度:ASTM Ｄ−256に従い、厚さ1/8″の射出成形
品によりノッチ付きアイゾットを測定した。雰囲気温度
は23℃。

流動性:ASTM Ｄ−1238に準拠して、温度265℃、荷重10
kgでメルトフローレート（MFR）を測定した。

外観:5オンス射出成形機で裏面にボス、リブを有し、か
つ開口部を有する成形品を成形して成形品の外観を目視
判断した。成形温度は250℃。

剛性:ASTM Ｄ−790に従い、厚さ1/4″の射出成形品を
用いて曲げ弾性率を測定した。

（１） 芳香族ポリエステル樹脂（Ａ） 一般に市販されている標準のPBT樹脂（ａ−１）。

（２） エポキシ基含有アクリル酸エステル系共重合体
（Ｂ） エチレン５重量％、酢酸ビニル15重量％、アクリル酸
ｎ−ブチル80重量％と、グリシジルメタクリレート０部
（ｂ−１）、1.5部（ｂ−２）からなら共重合体。

実施例−１〜２及び比較例−１〜４ 前記芳香族ポリエステル樹脂3.4kg、エポキシ基含有
アクリル酸エステル系共重合体0.6kgを、20リットルヘ
ンシェルに投入しブレンド後、TEM35B押出機（東芝、２
軸同方向）にて、250℃で押出しペレット化した。この
ペレットを使用し、射出成形機により物性測定用の試験
片を作成し、各種物性等を測定した。結果は表−１に示
す。同様に、実施例−２、比較例−１〜４も行った。比
較例−２及び３は、エポキシ基含有アクリル酸エステル
系共重合体中のエポキシ基含量が範囲外。比較例−１及
び４は、エポキシ基含有アクリル酸エステル系共重合体
の含有量が範囲外。

なお、成形温度は250℃を標準とし、成形品の状況に
よって、若干の修正を行った。

実施例及び比較例の結果から次のことが明らかであ
る。

実施例−１と比較例−２及び実施例−２と比較例−３
から、エポキシ基含有アクリル酸エステル系共重合体中
にエポキシ基の含有が重要であり、含有していないと衝
撃値の改良効果が小さく、外観も不良になることが判
る。

また、実施例−１及び２と比較例１から、エポキシ基
含有アクリル酸エステル系共重合体を添加することによ
り、衝撃強度が飛躍的に向上していることが判る。

比較例−４から、エポキシ基含有アクリル酸エステル
系共重合体を添加し過ぎても、外観不良、成形性（流
れ）の低下を生じることが判る。

以上のように、アクリル酸エステル系共重合体がエポ
キシ基を含有し、この共重合体が適量である時のみ、物
性その他のバランスが良好となること判る。

〔発明の効果〕

本発明の樹脂組成物は、耐衝撃性が良好で、その他の
物性バランスもよく、成形加工性に優れ、しかもその成
形品の外観が美麗であり、各種の工業部品材料として実
用的価値が極めて高い。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭64−75557（ＪＰ，Ａ) 特開 昭63−312313（ＪＰ，Ａ) 米国特許4461871（ＵＳ，Ａ) 米国特許4284540（ＵＳ，Ａ)

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】（Ａ）芳香族ポリエステル樹脂70〜95重量
   ％、及び（Ｂ）エチレンとカルボン酸ビニルとアクリル
   酸エステルと、これらの合計量100重量部に対し合計量
   が0.1〜10重量部であるエポキシ基を含有するビニル単
   量体とのエポキシ基含有アクリル酸エステル系供重合体
   ５〜30重量％を有効成分とすることを特徴とする熱可塑
   性樹脂組成物。