JP2590020B2 - 表面高反射鏡 - Google Patents

表面高反射鏡

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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は、カメラ、望遠鏡、顕微鏡等の光学製品に使
用される表面反射多層膜を有する表面高反射鏡に関す
る。
[従来の技術] 光学製品に使用される表面高反射鏡の反射材料として
は、一般に可視から近赤外の範囲にわたって反射率が高
い銀が使用されている。しかしながら、銀を使用する場
合、単層膜では膜付着性、耐湿性、耐硫化性等の点で劣
るという問題がある。このため銀の単層膜に下地層と、
保護層とを形成した多層膜構成とし、膜付着性、耐湿
性、耐硫化性等を付与している。
例えば、第3図に示すように、4層構造として、基板
1e上に酸化アルミニウムからなる酸化物下地層2eを形成
し、酸化物下地層2e上に銀からなる反射層4eを形成し、
さらに反射層4e上に保護層として酸化アルミニウム層5e
と二酸化珪素層6eとを順次形成した例がある[“Reflec
tance and durability of Ag mirrors coated with thi
n layers of Al2O3 plus reactively deposited silico
n oxide,"Appl.Opt.,14(1975),2639]。
また第4図に示すように、6層構造として、基板1f上
に銅からなる下地層2fを形成し、下地層2f上に銀からな
る反射層4fを形成し、さらに反射層4f上に保護層とし
て、酸化アルミニウム層5fと、酸化タンタル層6fと、二
酸化珪素層7fと、酸化タンタル層8fとを順次形成した例
がある["Progress in the development of a durable
silver−based high−reflectance coating for astron
omical telescopes,"Appl.Opt.,24(1985),1164]。
上記方法は、いすれも表面高反射鏡の基板としてガラ
スを使用する場合に効果を発揮する。
[発明が解決しようとする課題] 近年、ポリカーボネート、ポリエステル、アクリル樹
脂等のプラスチック成形技術が発達し、またプラスチッ
クはガラスと比較して複雑な形状を簡単に成形できると
いう利点から、光学部材としてその使用範囲も拡大して
いる。例えば、カメラに使用されているペンタプリズム
は、コスト低減のためにプラスチック化が望まれてお
り、内部中空のペンタ形状成形品に表面反射膜を形成し
た製品も使用され始めている。しかしながら、基板がポ
リカーボネート、ポリエステル、アクリル樹脂等のプラ
スチックで形成されている場合は、基板がガラスで形成
されている場合と比較して、上述と同様の膜構成では、
膜付着性、耐湿性等の点で劣るという問題点がある。
従って本発明の目的は、ポリカーボネート、ポリエス
テル、アクリル樹脂等のプラスチックで形成された基板
に対して優れた膜付着性、耐湿性等を有する表面高反射
鏡を提供することである。
[課題を解決するための手段] 上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者は、基板が
ポリカーボネート、ポリエステル、アクリル樹脂等のプ
ラスチックで形成されている場合に、膜付着性、耐湿性
等に優れた表面高反射鏡を得るためには、基板と銀製反
射層との付着力を強化すればよいが、そのためには基板
上に所定の酸化物層を形成し、その上に所定の硫化物層
を形成し、さらにその上に反射層を形成すればよいこと
を発見し、本発明に想到した。
すなわち、本発明の第一の表面高反射鏡は、(a)プ
ラスチック基板表面上に形成され、酸化ニオブ、酸化コ
バルト及び酸化チタンからなる群から選ばれた少なくと
も1種の酸化物からなる酸化物下地層と、(b)前記酸
化物下地層上に形成された硫化亜鉛からなる硫化物下地
層と、(c)前記硫化物下地層上に形成された銀からな
る反射層と、(d)前記反射層上に形成され、20〜100n
mの膜厚を有する酸化アルミニウム層を少なくとも含む
保護層とを有することを特徴とする。
また本発明の第二の表面高反射鏡は、(a)プラスチ
ック基板表面上に形成され、酸化ニオブ及び酸化コバル
トからなる群から選ばれた少なくとも1種の酸化物から
なる酸化物下地層と、(b)前記酸化物下地層上に形成
された硫化アンチモンからなる硫化物下地層と、(c)
前記硫化物下地層上に形成された銀からなる反射層と、
(d)前記反射層上に形成され、20〜100nmの膜厚を有
する酸化アルミニウム層を少なくとも含む保護層とを有
することを特徴とする。
[作用] 表面高反射鏡において、ポリカーボネート、ポリエス
テル、アクリル樹脂等のプラスチックからなる基板上
に、それとの付着性が高い酸化物下地層を形成し、その
上に順次硫化物下地層及び銀製反射層を形成すると、プ
ラスチック基板と銀製反射層の膜付着力が強化される。
これにより膜付着性及び耐湿性の高し表面高反射鏡が得
られる。
[実施例] 第1図は、本発明の一実施例による表面高反射鏡を概
略的に示す。本実施例の表面高反射鏡は4層構造であ
り、各層は真空蒸着法、スパッタリング法等により形成
されている。本実施例では、ポリカーボネート、ポリエ
ステル、アクリル樹脂等のプラスチックからなる基板1c
上に表面高反射鏡が形成されている。基板1c上に酸化物
下地層2cが形成され、酸化物下地層2c上に硫化物下地層
3cが形成され、硫化物下地層3c上に銀製反射層4cが形成
され、さらに反射層4c上に保護層5cが形成されている。
酸化物下地層2cは、プラスチック製基板1cと硫化物下
地層3cとの付着性が高い酸化物により形成する。硫化物
下地層3cが硫化亜鉛から形成されている場合、このよう
な酸化物として酸化ニオブ、酸化コバルト及び酸化チタ
ンからなる群から選ばれた少なくとも1種を使用する。
また硫化物下地層3cが硫化アンチモンから形成されてい
る場合、このような酸化物として、酸化ニオブ及び酸化
コバルトからなる群から選ばれた少なくとも1種を使用
する。酸化物下地層2cの厚さは10nm以上であり、特に15
〜50nmであるのが好ましい。酸化物下地層2cの膜厚が10
nm未満であると、十分な付着力が得られない。
硫化物下地層3cは、上記酸化物下地層2cと、銀製反射
層4cとの付着性が高い硫化物により形成するが、上述し
たような酸化物下地層2cとの組合せに従った硫化亜鉛ま
たは硫化アンチモンが好ましい。硫化物下地層3cの厚さ
は10nm以上であり、特に15〜50nmであるのが好ましい。
硫化物下地層3cの膜厚は10nm未満であると、十分な付着
力が得られない。
硫化物下地層3c上に形成された銀製反射層4cの膜厚は
45nm以上とするのが好ましく、特に100〜200nmとするの
が好ましい。膜厚が45nm未満であると、完全な反射とな
らず、ハーフミラー化するので好ましくない。
最後に、反射層4c上に形成した保護層5cは、酸化アル
ミニウムにより形成するのが好ましく、また膜厚は20nm
以上、特に20〜100nmであるのが好ましい。膜厚が20nm
未満であると、反射層4cの保護作用が充分でない。
第2図は、本発明の別の実施例による表面高反射鏡を
概略的に示す。この実施例では、保護層5dは酸化アルミ
ニウム層と透明材料からなる層との多層膜からなるが、
基板1d及びその他の層(酸化物地下層2d、硫化物下地層
3d及び反射層4d)については、第1図の実施例と同じで
ある。
透明材料としては、酸化ジルコニウム、酸化タンタ
ル、酸化チタン、酸化セリウム、酸化ニオブ、二酸化珪
素、フッ化マグネシウム等の誘電体が挙げられ、その膜
厚は20nm以上、特に20〜100nmであるのが好ましい。
酸化アルミニウム層と透明材料からなる層とは一層す
つでもよいが、交互に積層させてもよい。積層の場合、
各層は2〜5層程度とするのがよい。
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明する
が、本発明はそれらに限定されるものではない。
実施例1〜5 第1図に示す構成の表面高反射鏡を作成するために、
まずポリカーボネートからなる基板1c上に、下記第1表
に示す酸化物の層を真空蒸着法により膜厚15nmに形成
し、酸化物下地層2cとした。この酸化物下地層2c上に、
下記第1表に示す組合せに従い、硫化物の層を真空蒸着
法により膜厚15nmに形成し、硫化物下地層3cとした。こ
の硫化物下地層3c上に、膜厚100nmの銀製反射層4cを真
空蒸着法により形成した。さらに反射層4c上に膜厚100n
mの酸化アルミニウムからなる保護層5cを真空蒸着法に
より形成し、表面高反射鏡を形成した。
第1表 例No. 酸化物下地層 硫化物下地層 実施例1 酸化ニオブ 硫化亜鉛 実施例2 酸化コバルト 硫化亜鉛 実施例3 酸化チタン 硫化亜鉛 実施例4 酸化ニオブ 硫化アンチモン 実施例5 酸化コバルト 硫化アンチモン この表面高反射鏡を、温度40℃及び湿度95%RHの恒温
室に放置し、216時間経過するまで24時間毎にセロハン
テープによる剥離試験を行い、耐湿性試験を行った。な
お実際の使用を考慮すると、剥離するまでの時間は200
時間以上が望ましい。結果を第3表に示す。
実施例6 第2図に示す構成の表面高反射鏡を作成するために、
保護層5dとして酸化アルミニウム層を含む透明材料の多
層膜を形成し、それ以外は実施例1〜5と同じ条件で表
面高反射鏡を形成した。なお、保護層5dは厚さ65nmの酸
化アルミニウム層と、厚さ55nmの酸化ジルコニウムから
なる誘電体層との2層からなる。実施例1〜5と同様に
試験した結果、膜付着性及び耐湿性については、実施例
1〜5と同様であった。
比較例1〜8 酸化物下地層と硫化物下地層とを下記第2表に示す酸
化物と硫化物との組合せにより形成した以外、実施例1
〜5と同じ条件で表面高反射鏡を形成し、実施例1〜5
と同じ耐湿性試験を行った。結果を第3表に示す。
第2表 例No. 酸化物下地層 硫化物下地層 比較例1 酸化クロム 硫化亜鉛 比較例2 酸化モリブデン 硫化亜鉛 比較例3 酸化セリウム 硫化亜鉛 比較例4 酸化アルミニウム 硫化アンチモン 比較例5 酸化チタン 硫化アンチモン 比較例6 酸化クロム 硫化アンチモン 比較例7 酸化モリブデン 硫化アンチモン 比較例8 酸化セリウム 硫化アンチモン 比較例9 第3図に示すような4層構造からなる表面高反射鏡を
作成するために、ポリカーボネートからなる基板1e上に
膜厚30nmの酸化アルミニウムからなる下地層2eを真空蒸
着法により形成し、下地層2e上に膜厚100nmの銀製反射
層4eを真空蒸着法により形成し、さらに反射層4e上に保
護層として、膜厚30nmの酸化アルミニウム層5eと膜厚15
0nmの二酸化珪素層6eとを、真空蒸着法により順次形成
した。得られた表面高反射鏡に対して、実施例1〜5と
同じ耐湿性試験を行った。結果を第3表に示す。
比較例10 第4図において、ポリカーボネートで形成された基板
1f上に、銅を真空蒸着法により膜厚40nmに形成し、下地
層2fとした。この下地層2f上に反射材料として膜厚100n
mの銀製反射層4fを真空蒸着法により形成し、さらに反
射層4f上に保護層として、膜厚60nmの酸化アルミニウム
層5fと、膜厚75nmの酸化タンタル層6fと、膜厚75nmの酸
化珪素層7fと、膜厚75nmの酸化タンタル層8fとを、真空
蒸着法により順次形成した。得られた表面高反射鏡に対
して、実施例1〜5と同じ耐湿性試験を行った。結果を
第3表に示す。
比較例11〜12 第5図に示すような3層構造からなる表面高反射鏡を
作成するために、ポリカーボネートからなる基板1i上
に、硫化亜鉛の層(比較例11)及び硫化アンチモンの層
(比較例12)を真空蒸着法により膜厚15nmに形成し、硫
化物下地層3iとした。この硫化物下地層3i上に反射材料
として膜厚100nmの銀製反射層4iを真空蒸着法により形
成した。さらに反射層4i上に膜厚100nmの酸化アルミニ
ウムからなる保護層5iを真空蒸着法により形成した。得
られた表面高反射鏡に対して、実施例1〜5と同じ耐湿
性試験を行った。結果を第3表に示す。
第3表 例No. 剥離までの時間 実施例1 216時間以上 実施例2 216時間以上 実施例3 216時間以上 実施例4 216時間以上 実施例5 216時間以上 比較例1 72時間 比較例2 24時間 比較例3 72時間 比較例4 144時間 比較例5 48時間 比較例6 48時間 比較例7 48時間 比較例8 24時間 比較例9 24時間 比較例10 48時間 比較例11 72時間 比較例12 72時間 以上から明らかなように、本発明の表面高反射鏡にお
いては、酸化ニオブ、酸化コバルト及び酸化チタンの少
なくとも一材料からなる酸化物下地層が、プラスチック
基板及び硫化亜鉛からなる硫化物下地層に対する膜付着
性に優れていることが分かる。また酸化ニオブ及び酸化
コバルトの少なくとも一材料からな酸化物下地層が、プ
ラスチック基板及び硫化アンチモンからなる硫化物下地
層に対する膜付着性が優れていることが分かる。
[発明の効果] 以上詳述したように、本発明の表面高反射鏡において
は、カーボネート、ポリエステル、アクリル樹脂等のプ
ラスチックで形成された基板と銀製反射層との間に酸化
物下地層と硫化物下地層とを順次形成している。従っ
て、プラスチック基板と反射層との間の付着力が強化さ
れており、膜付着性は、耐湿性等に優れている。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の一実施例による表面高反射鏡を示す断
面図であり、 第2図は本発明の別の一実施例による表面公反射鏡を示
す断面図であり、 第3図は従来の表面高反射鏡の一例を示す断面図であ
り、 第4図は従来の表面高反射鏡の別の例を示す断面図であ
り、 第5図は従来の表面高反射鏡のさらに別の例を示す断面
図である。 1c,1d,1e,1f,1i……プラスチック製基板 2c,2d,2e……酸化物下地層 2f……銅下地層 3c,3d,3i……硫化物下地層 4c,4d,4e,4f,4i……反射層 5c,5d,5e,5f,5i,6e,6f,7f,8f……保護層

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】(a)プラスチック基板表面上に形成さ
    れ、酸化ニオブ、酸化コバルト及び酸化チタンからなる
    群から選ばれた少なくとも1種の酸化物からなる酸化物
    下地層と、 (b)前記酸化物下地層上に形成された硫化亜鉛からな
    る硫化物下地層と、 (c)前記硫化物下地層上に形成された銀からなる反射
    層と、 (d)前記反射層上に形成され、20〜100nmの膜厚を有
    する酸化アルミニウム層を少なくとも含む保護層とを 有することを特徴とする表面高反射鏡。
  2. 【請求項2】(a)プラスチック基板表面上に形成さ
    れ、酸化ニオブ及び酸化コバルトからなる群から選ばれ
    た少なくとも1種の酸化物からなる酸化物下地層と、 (b)前記酸化物下地層上に形成された硫化アンチモン
    からなる硫化物下地層と、 (c)前記硫化物下地層上に形成された銀からなる反射
    層と、 (d)前記反射層上に形成され、20〜100nmの膜厚を有
    する酸化アルミニウム層を少なくとも含む保護層とを 有することを特徴とする表面高反射鏡。
  3. 【請求項3】特許請求の範囲第1項又は第2項に記載の
    表面高反射鏡において、前記酸化物下地層の膜厚が15〜
    50nmであり、前記硫化物下地層の膜厚が15〜50nmであ
    り、前記銀からなる反射層の膜厚が100〜200nmであるこ
    とを特徴とする表面高反射鏡。
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