JP2578302B2 - 新規微生物、該微生物を含有する土壌病害防除剤及びこれらを利用した土壌病害防除方法 - Google Patents

新規微生物、該微生物を含有する土壌病害防除剤及びこれらを利用した土壌病害防除方法

Info

Publication number
JP2578302B2
JP2578302B2 JP4347322A JP34732292A JP2578302B2 JP 2578302 B2 JP2578302 B2 JP 2578302B2 JP 4347322 A JP4347322 A JP 4347322A JP 34732292 A JP34732292 A JP 34732292A JP 2578302 B2 JP2578302 B2 JP 2578302B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
jtf
microorganism
treatment
soil
disease
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP4347322A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH06256126A (ja
Inventor
博之 水野
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Japan Tobacco Inc
Original Assignee
Japan Tobacco Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Japan Tobacco Inc filed Critical Japan Tobacco Inc
Priority to JP4347322A priority Critical patent/JP2578302B2/ja
Publication of JPH06256126A publication Critical patent/JPH06256126A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP2578302B2 publication Critical patent/JP2578302B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Agricultural Chemicals And Associated Chemicals (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、フザリウム菌によって
惹起される土壌病害であるフザリウム病、特にカーネー
ション萎凋病及びトマト萎凋病に有効な新規微生物JTF-
108 菌株及びJTF-139 菌株に関する。また、JTF-108 菌
株及び/又はJTF-139 菌株を含有するフザリウム病防除
剤、並びにこれらを利用したフザリウム病の防除方法に
関する。
【0002】
【従来の技術】フザリウム菌によって惹起される土壌病
害は、多くの野菜或いは花卉で報告されており、作物の
安定生産を阻害する重要な病害の1つである。カーネー
ション及びトマトの栽培においても、フザリウム・オキ
シスポラムによるカーネーション萎凋病及びトマト萎凋
病は最重要病害として位置付けられている。なぜなら、
カーネーションやトマトは、施設で周年栽培され、連作
されるため、一度病害が発生すると大被害につながって
しまうからである。
【0003】これらフザリウム菌による病害に対する防
除手段として、従来からくん蒸剤或いは蒸気による土壌
消毒が不可欠とされてきた。しかし、毒性の高いくん蒸
剤を使用すると環境汚染を引き起こしたり、或いは有用
な微生物が死んでしまって病原菌の占有化が生じるなど
多くの問題点がある。一方、他の防除手段として、抵抗
性品種の育成が盛んに行われている。しかし、カーネー
ションなどの花卉では、花色、生産性及び早生性など、
品種改良においては他の形質が優先されることが多く、
充分に利用されていない。また、トマトの場合には、市
場性の高い品種の中で萎凋病(race J2) に対して抵抗性
を有する品種は存在せず、また菌群が分化することによ
って本来抵抗性品種であるものが罹病したりなど常にフ
ザリウム菌による病害発生の危険に晒されている。
【0004】更に、自然界の中から病原菌に対して拮抗
作用を示す有用菌を選択し、これを生物防除に利用する
研究が活発に行われるようになり、病害防除の一手段と
して注目されてきている。しかし、防除効果が不安定で
あること、また短期間の効果しかないこと、或いはある
限られた使用方法でしか防除効果が得られないこと等の
問題があり、実用的に使用できるものは極めて少なかっ
た。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記事情に鑑
みてなされたもので、その課題は、環境汚染が少なく、
生態系に調和し、かつフザリウム病に対する防除効果の
安定性及び持続性に優れた微生物、該微生物を含有する
フザリウム病防除剤及びこれらを利用したフザリウム病
の防除方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に、本発明者らは、フザリウム菌による土壌病害防除に
有効な天敵微生物を探索した。その結果、カーネーショ
ン栽培地の植物体根部表面より分離された新規微生物
が、カーネーションの土壌病害の1つであるカーネーシ
ョン萎凋病(病原菌:Fusarium oxysporum Schl.f.sp.d
ianthi(Prill etDel.) Snyd.et Hans.)及びトマトの土
壌病害の1つであるトマト萎凋病(病原菌:Fusarium o
xysporum Schl.f.sp.lycopersici(Sacc.)Snyd.et Hans.
race J2)の発病を顕著に抑制することを見い出した。
【0007】すなわち本発明によれば、カーネーション
及びトマトのフザリウム病防除に有効で、かつ主要作物
に病原性を示さない新規微生物フザリウム・オキシスポ
ラム(Fusarium oxysporum)JTF-108 菌株(微工研条寄第
3964号)、並びにカーネーション及びトマトのフザ
リウム病防除に有効で、かつ主要作物に病原性を示さな
い新規微生物フザリウム・オキシスポラム(Fusarium ox
ysporum)JTF-139 菌株(微工研条寄第3965号)が提
供される。
【0008】また本発明によれば、JTF-108 菌株及び/
又はJTF-139 菌株を含有し、必要に応じて当該菌株の性
質に影響を与えない希釈剤、及び補助剤を含有するフザ
リウム病防除剤が提供される。更にJTF-108 菌株又はJT
F-139 菌株を植物の苗根部又は土壌に処理することによ
りカーネーション及びトマトのフザリウム病を防除する
方法が提供される。
【0009】以下、本発明の詳細を説明する。
【0010】本発明の微生物であるJTF-108 菌株及びJT
F-139 菌株は、カーネーション栽培地で健全に生育して
いるカーネーションの植物体根部表面より、駒田培地
(K2HPO4 1g、KCl 500mg、MgSO
4 ・7H2 O 500mg、Fe−EDTA 10m
g、L−アスパラギン 2g、D−ガラクトース 20
g、PCNB75%水和剤 1g、オックスゴール 5
00mg、Na2 4 7・10H2 O 1g、硫酸ス
トレプトマイシン 300mg、寒天 20g、水10
00ml、pH3.8〜4.0)を用いて多数のフザリ
ウム菌を分離し、分離した菌の中から、カーネーション
萎凋病に対して防除効果を示し、かつナス、キュウリ、
キャベツ又はダイコンなどの主要作物に病原性を示さな
い菌株を検索することによって得られたものである。ま
た本発明の微生物はカーネーション萎凋病に対する防除
効果のみならず、トマト萎凋病に対しても防除効果を示
すものである。
【0011】本発明の微生物であるJTF-108 菌株及びJT
F-139 菌株は、平成4年8月11日付で、寄託番号 微
工研条寄第3964号及び第3965号をもって工業技
術院微生物工業技術研究所に寄託されている。
【0012】本発明の微生物は、ポテト・デキストロー
ス寒天培地(PDA培地)、ツァペック寒天培地などの
固型平板培地或いは斜面培地で培養することができる。
また糸状菌用液体培地を用いた振蘯培養、或いは静置培
養で培養することも可能である。
【0013】本発明の微生物はカーネーション、トマト
をはじめ他の主要な作物に対して病原性を示すものでは
なく、また人畜に対しても安全である。
【0014】また、本発明の微生物は、土壌病害防除剤
として調製することができる。この防除剤は、必要に応
じて希釈剤および補助剤等と組み合わせることができ
る。
【0015】本発明の防除剤に用いられる希釈剤として
は、本発明の微生物の性質に影響を与えないものであれ
ば、通常農薬に用いられるいずれのものを用いてもよ
い。希釈剤は、当該微生物を適当な濃度に薄め、使用を
容易にするために用いられ、固体状のものであっても液
状のものであってもよい。いずれの性状のものを用いる
かは、防除剤の剤形に依存して選択することができる。
液状の希釈剤としては蒸留水を、固体希釈剤としてはタ
ルクを好ましく用いることができる。
【0016】本発明の防除剤に用いられる補助剤として
は、本発明の微生物の性質に影響を与えることがなく、
かつ当該微生物の防除効果を高め得るようなものであれ
ば、通常の農薬に用いられる何れのものを用いてもよ
い。補助剤としては、例えば、微生物の分散性等を増加
させるための界面活性剤、貯蔵中の安定性を高めるため
の安定剤、展着性を高めて作物によく付着するようにす
るための固着剤、或いはそのもの自身は効力がないもの
の、混合して使用すると本発明の微生物の防除効果を増
加させ得る共力剤などが挙げられる。
【0017】本発明の防除剤の剤形は、粉剤、水和剤等
のいずれの形態であってもよい。剤形は、効果発現のた
めの好適条件、作物の種類及び生育段階、防除方法など
に応じて選択することができる。
【0018】以上述べてきた本発明の微生物及び該微生
物を含有する土壌病害防除剤は、フザリウム菌によって
惹起される土壌病害であるフザリウム病、特にカーネー
ション及びトマト萎凋病の防除に用いられる。
【0019】フザリウム病は、本発明の微生物を植物の
苗根部または土壌に処理することにより防除することが
できる。その処理方法としては、植物苗根部浸漬処理、
植物苗根部粉衣処理、株元灌注処理、土壌混和処理など
が挙げられる。
【0020】植物苗根部浸漬処理は、微生物処理液に植
物苗根部を浸漬することによって行うことができる。微
生物処理液としては、本発明の微生物を適当な液体培地
で培養し、この培養液を濾過及び遠心処理して得られた
分生胞子様菌体を好適な液体に懸濁することにより得ら
れる微生物懸濁液が好ましく用いられる。微生物懸濁液
の濃度は104 〜108 胞子/mlの範囲が好ましく、
特に好ましくは106〜107 胞子/mlである。また
微生物処理液として、上記微生物懸濁液中の胞子を発芽
させ、かつ菌体を完全に除去して得られる胞子発芽液を
用いることも可能である。
【0021】植物苗根部粉衣処理は、植物苗根部に微生
物吸着タルクを粉衣することによって行うことができ
る。微生物吸着タルクは、本発明の微生物及びタルクを
一定の割合で混合することによって微生物をタルク吸着
させ、これを自然乾燥することにより得られる。微生物
及びタルクの混合重量比は1:1〜1:10の範囲が好
ましく、最も好ましくは1:2である。苗根部に粉衣さ
れる微生物吸着タルクの微生物濃度は、103 〜107
胞子/gの範囲が好ましく、特に105 〜106胞子/
gの濃度が好ましい。
【0022】株元灌注処理は、植物苗根部を土壌に定植
する時、すなわち定植時に微生物処理液を株元に灌注す
ることによって行うことができる。微生物処理液として
は、上記植物苗根部浸漬処理に用いることができるいず
れのものも使用することが可能である。また、この株元
灌注処理は、発根させる前の採穂を発根用土に挿する
時、すなわち育苗開始時に微生物処理液を株元に灌注す
ることによっても行うことができる。更に、両時期に処
理を行うことにより、より防除効果を高めることができ
る。
【0023】土壌混和処理は、定植時に植物苗根部を定
植するための土壌に微生物吸着タルクを混和することに
よって行うことができる。微生物吸着タルクとしては、
上記植物苗根部粉衣処理に用いたものと同じものを用い
ることができる。土壌中に混和される微生物の濃度は1
4 〜107 胞子/gの範囲が好ましく、特に106
107 胞子/gの濃度が好ましい。なおこの土壌混和処
理も、育苗開始時に採穂を発根させるための発根用土に
微生物吸着タルクを混合することによっても行うことが
できる。また、両時期に処理することも効果を高めるた
めに好ましい。
【0024】このように本発明の微生物及び該微生物を
含有する土壌病害防除剤を、植物の苗根部又は土壌に処
理することによりカーネーション及びトマトのフザリウ
ム病を防除することができる。
【0025】
【作用】本発明の微生物及び当該微生物を含有する土壌
病害防除剤は、フザリウム病、特にカーネーション萎凋
病及びトマト萎凋病に対する防除効果の安定性及び持続
性に優れている。
【0026】
【実施例】以下本発明の実施例を説明する。
【0027】実施例1:JTF-108 菌及びJTF-139 菌の分
離および同定 (1)JTF-108 菌及びJTF-139 菌の分離;長年に渡って
土壌消毒を行っていないカーネーション栽培地で健全に
生育しているカーネーションから、植物体根部を採取し
た。採取した根部の表面に付着している土壌をできるだ
けふるい落とした後、該根部10gを90mlの殺菌水
が入っている三角フラスコにいれた。充分に振蘯した
後、殺菌水を更に103〜105 倍に希釈した。各濃度
の液0.1mlを、既述した駒田培地に添加・塗抹した
後、これを28℃の恒温器中で培養し、生育してきた微
生物を分離した。こうして分離された微生物のカーネー
ション萎凋病に対する病害抑制効果について検定した結
果、優れた防除効果を示し、かつ主要作物に対して病原
性を示さない微生物JTF-108 菌及びJTF-139 菌が得られ
た。
【0028】(2)JTF-108 菌及びJTF-139 菌の同定;
上記で分離した微生物JTF-108 菌およびJTF-139 菌の同
定は、該微生物を、ポテト・デキストロース寒天培地
(PDA培地:ジャガイモ塊茎200gの煎汁液100
0ml、デキストロース20g、寒天15g)で培養
し、菌糸の伸長速度、胞子の形態及び形成状況などを調
査することにより行った。
【0029】ポテト・デキストロース寒天培地において
は、両菌の菌糸の伸長は早く、大型分生胞子及び小型分
生胞子、及び厚膜胞子を多数形成した。なお、小型分生
胞子はO隔膜、無色、楕円形で菌糸から側方にできる短
担子梗上に擬頭状をなして形成されることから、Snyder
とHansenの検索表によってFusarium oxysporumと同定さ
れた。
【0030】(3)JTF-108 菌及びJTF-139 菌の性質; <各培地における成育状況>PDA及びツアペック(N
aN03 2.0g,K2 HPO4 1.0g、MgS
4 ・7H2 O 0.5g、KCl 0.5g、FeS
4 ・7H2 O0.01g、ショ糖 30.0g、寒天
15.0g、水 1000ml)平板培地上で、28
℃の恒温器中で培養すると、両菌株とも5日目にはペト
リ皿(9cm)全体に広がる。JTF-108 菌は白色綿毛状
の菌叢で、PDA培地で10日間培養すると、培養子座が
赤紫色を呈する。一方、JTF-139 菌は白色綿毛状の菌叢
であるが、培養子座は白色である。両菌株ともツアペッ
ク培地に比べてPDA培地の方がやや生育が早く、JTF-
108 菌では色素の産生も多い。
【0031】<発育温度およびpH>生育温度は両菌株
ともに最高35℃位、最低10℃位であり、最適温度は
25〜30℃である。しかし、JTF-108 菌に比較する
と、JTF-139 菌は10℃や35℃の低高温域における初
期の生育が極めて緩慢である。
【0032】また、両菌株ともにpH4.0〜8.0の
間で生育可能であるが、最適pHは6.0〜7.0であ
る。
【0033】<作物に対する病原性>両菌株ともに、カ
ーネーションをはじめ、トマト、ナス、キュウリ、キャ
ベツおよびダイコン等の主要作物に対して病原性を示さ
ない。
【0034】<マイコトキシン産生>フザリウム属菌で
あるムギ類赤かび病菌(Fusarium graminearum Schwab
e)が産生するデオキシニバレノール及びニバレノール
等のトリコテセン系マイコトキシンや、ゼアラレノンは
人畜に健康障害を引き起こす原因菌としてよく知られて
いる。加えて、他のフザリウム属菌についても、上記の
マイコトキシン産生が報告されている。例えば、Fusari
um oxysporumについては従来マイコトキシン産生に関す
る報告は少なく、安全であるという認識が強かったが、
近年になって、ニバレノール、フザレノン−XおよびT
−2トキシン等のトリコテセン系マイコトキシンや、ゼ
アラレノン等のトキシンを産生する菌株の存在が報告さ
れている(W.F.O.Marasas et al.,1984, TOXIGENIC FUS
ARIUM SPECIES, The Pennsiylvania State University
Press: 254-262)。
【0035】そこで、香川大学の芳澤教授に依頼し、本
発明に係る新規微生物についてトキシン産性能を調査し
た。この調査は、デオキシニバレノール、3−アセチル
デオキシニバレノール、15−アセチルデオキシニバレ
ノール、3,15−アセチルデオキシニバレノール、ニ
バレノール、フザレノン−X、4,15−ジアセチルニ
バレノール、ネオソラニオール、HT−2トキシン及び
T−2トキシンについてはガスクロマトグラフ/マスス
ペクトロメータを用いた分析により行い、またゼアラレ
ノンについては高速液体クロマトグラフを用いた分析に
より行った。その結果、何れのトキシンも検出されず、
本発明に係る新規微生物が人畜に対して安全であること
が確認された。
【0036】<菌体内可溶性エステラーゼのアイソザイ
ムパターン>図1に示した各種の菌の夫々を、28℃で
7日間に亘り、ポテト・デキストロース液体培地および
ツアペック液体培地中で静置培養した。こうして得られ
た菌糸体を、0.05Mトリス塩酸緩衝液(pH7.
8)で洗浄した後に凍結した。次いで、これを0.05
Mトリス塩酸緩衝液(pH7.8)と共に磨砕し、1
0,000Gで遠心を行い、その上清を供試材料とし
た。この供試材料の夫々を、pH9.4用のポリアクリ
ルアミドゲルを用いて15mAで電気泳動させた。酵素
活性染色は、Berry J.A.等(American J.Bot. 60:976-9
86(1973))に準じ、エステラーゼ染色により行った。図
1は、こうして得られた夫々のアイソザイムパターンを
示している。図1から明らかなように、本発明に係る新
規微生物、即ちJTF-108 菌及びJTF-139 菌のアイソザイ
ムパターンは、カーネーション萎凋病菌(Fusarium oxy
sporum Schl.f.sp.dianthi)、トマト萎凋病菌(Fusari
um oxysporum Schl.f.sp.lycopersici race J1及びrace
J2)およびナス半枯病菌(Fusarium oxysporum f.sp.me
longenae)のアイソザイムパターンとは明確に異なるも
のであった。
【0037】実施例2:JTF-108 菌及びJTF-139 菌を含
有するフザリウム防除剤の製造 (1)液状防除剤 上記の実施例1で分離した微生物JTF-108 菌及びJTF-13
9 菌の夫々を、ポテト・デキストロース液体培地(PD
培地)において、28℃、110rpmの条件下で5日
間振蘯培養し、菌体約1〜2×108 胞子/mlを得
た。これをガーゼで濾過し、4000rpmで5分間遠
心した後、沈殿した分生胞子様菌体を107 胞子/ml
の濃度になるように蒸留水で希釈してJTF-108 菌懸濁液
を調製した。これは、フザリウム防除剤としてそのまま
使用することができる。
【0038】(2)固体防除剤 上記の振蘯培養で得られた胞子とタルク粉末とを、重量
比1:2の割合で混合することによりタルク粉末に吸着
させ、次いでこれを自然乾燥することにより、粉末状の
フザリウム防除剤を調製した。この固体防除剤は長期間
保存が可能であり、病害防除剤として実用的に使用可能
である。
【0039】実施例3:JTF-108 菌の定植苗根部浸漬処
理によるカーネーション萎凋病の防除効果試験 (1)処理液の調製 上記実施例2で製造した、JTF-108 菌の液状防除剤を用
いた。比較例として、ベノミル水和剤(有効成分50
%)を蒸留水で1000倍に希釈したベノミル処理液を
用いた。なお、対照として蒸留水を用いた。
【0040】(2)浸漬処理 上記の工程(1)で調製した各処理液を、ビーカーに深
さ2cmとなるように注入し、そこにカーネーション発
根部(品種:レナ)を入れ、30分間浸漬した。
【0041】(3)汚染土壌の調製 カーネーション萎凋病菌をポテト・デキストロース液体
培地(PD培地)において、28℃で5日間振蘯培養し
た。得られた菌体とタルクを重量比1:2の割合で混合
することにより、該菌体をタルクに吸着させた後自然乾
燥させた。これを、汚染濃度が104 胞子/gになるよ
うに、カーネーション用土(容積比でバーミキュライ
ト、赤玉土及びピートモスを4:2:2の割合で混合し
たもの)と混合して汚染土壌を調製した。
【0042】(4)定植 上記で調製した汚染土壌800gを、直径18cm、深
さ20cmの丸型プラスチックポットに充填した後、こ
こに(2)で処理した苗を定植した。
【0043】(5)防除効果試験 28℃のガラス温室内で3か月間栽培して発病状況を調
査した。結果を下記表1および表2に示す。
【0044】
【表1】 なお、罹病度は以下の式を用いて求めた。
【0045】 罹病度=(ΣDI×n/N×4) × 100 DI:罹病指数(下記表2参照) n:同じDIを示した個体数 N:各処理区の供試個体数
【表2】 上記表1に示した結果から、対照区、及びフザリウム病
に対して苗処理で最も有効とされているベノミル処理区
では100%発病してほとんど全株が枯死するのに対し
て、JTF-108 菌処理区においては顕著な抑制効果が見ら
れることがわかる。
【0046】実施例4:JTF-139 菌の定植苗根部浸漬処
理によるカーネーション萎凋病の防除効果試験 実施例2で調製したJTF-139 菌を含有する液状防除剤を
用いた。それ以外は全て実施例3と同様に行い、発病状
況を調査した。結果を下記表3に示す。なお表3におい
て罹病指数の基準及び罹病度の算定は表1に準じて行っ
た。
【0047】
【表3】 上記表3から明らかなように、対照区においては90%
程度発病して罹病度も高くなるのに対し、JTF-139 菌処
理区では発病も少なく顕著な発病抑制効果が見られた。
【0048】実施例5:JTF-108 菌の株元灌注処理及び
土壌混和処理によるカーネーション萎凋病の防除効果試
験 発根苗根部浸漬処理による効果と比較して、株元灌注処
理及び土壌混和処理による防除効果を検証した。
【0049】(1)発根苗根部浸漬処理 発根苗根部浸漬処理は実施例3(1)〜(4)の方法に
準じて行った。
【0050】(2)株元灌注処理 実施例3(3)の方法により作成された汚染土壌にカー
ネーション苗を定植した後、実施例2で調製したJTF-10
8 菌を含有する液状防除剤を、1株当たり20ml用い
て株元に灌注した。
【0051】(3)土壌混和処理 実施例2で調製したJTF-108 菌を含有する固体防除剤
を、濃度が106 胞子/gになるように、実施例3
(3)の方法により作成された汚染土壌と混合すること
によって土壌混和処理を行った。
【0052】(4)防除効果試験 上記(1)〜(3)の方法により処理したカーネーショ
ンを28℃のガラス温室内で3か月間栽培して実施例2
と同様の方法により発病状況を調査した。結果を下記表
4に示す。なお対照は蒸留水を用いた発根苗根部浸漬処
理とした。罹病指数の基準及び罹病度の算定は表1に準
じて行った。
【0053】
【表4】 上記表4より、株元灌注処理区や土壌混和処理区におい
ても、浸漬処理区と同様に顕著な発病抑制効果が見られ
ることがわかる。
【0054】実施例6:JTF-108 菌の根部粉衣処理及び
胞子発芽液処理によるカーネーション萎凋病の防除効果
試験 発根苗根部浸漬処理による効果と比較して、根部粉衣処
理及び胞子発芽液処理による防除効果を検証した。
【0055】(1)発根苗根部浸漬処理 発根苗根部浸漬処理は実施例3(1)〜(4)の方法に
準じて行った。
【0056】(2)根部粉衣処理 実施例2で調製したJTF-108 菌を含有する固体防除剤
(濃度:106 胞子/g)を、定植苗根部に粉衣するこ
とにより根部粉衣処理を行った。
【0057】(3)胞子発芽液処理 実施例2で調製したJTF-108 菌を含有する液状防除剤を
9cmの滅菌シャーレに薄く広げ、25℃で48時間放
置した後、0.45μmのミリポアフィルターを通して
菌体を完全に除去し、胞子発芽液を調製した。該液に発
根苗根部を30分間浸漬することにより胞子発芽液処理
を行った。当該処理を行った苗を実施例3(3)の方法
により調製された汚染土壌が入ったポットに定植した。
【0058】(4)防除効果試験 上記(1)〜(3)の方法により処理したカーネーショ
ンを、28℃のガラス温室内で3か月間栽培し、実施例
3と同様の方法により発病状況を調査した。結果を下記
表5に示す。なお対照は蒸留水を用いた発根苗根部浸漬
処理とした。罹病指数の基準及び罹病度の算定は表1に
準じて行った。
【0059】
【表5】 上記表5の結果から、根部粉衣処理区や胞子発芽液処理
区においても、根部浸漬処理区と同様に発病抑制効果が
みられることがわかる。
【0060】実施例7:JTF-108 菌の定植苗育成時処理
によるカーネーション萎凋病防除効果試験 カーネーションは母株から採穂して、これを発根用土に
挿し、約3週間かけて発根させることによって定植苗を
育成するのが一般的である。そこで、苗育成時にJTF-10
8 菌を処理することによって、定植後に防除効果が発揮
されるか否かを検証した。
【0061】(1)発根苗根部浸漬処理 発根苗根部浸漬処理は実施例3(1)〜(4)の方法に
準じて行った。
【0062】(2)発根時用土混合処理 定植苗を育成する発根作業時の発根用土(容積比でパー
ライト及びメトロミックスを7:3の割合で混合したも
の)に、実施例2で調製した固体防除剤を濃度が106
胞子/gになるように混合した。この用土で約3週間か
けて発根させ、苗を育成させた。
【0063】(3)発根時株元灌注処理 発根用土に穂を挿した後、実施例2で調製した液状防除
剤を、穂の株元に1株当たり5mlづつ灌注して苗を育
成した。
【0064】(4)防除効果試験 上記(1)〜(3)の方法により育成した苗を、実施例
3(3)の方法により調製された汚染土壌が入ったポッ
トに定植し、28℃のガラス温室内で2か月間栽培し
て、実施例3と同様の方法により発病状況を調査した。
結果を下記表6に示す。なお、対照は蒸留水を用いた発
根苗根部浸漬処理とした。罹病指数の基準及び罹病度の
算定は表1に準じて行った。
【0065】
【表6】 上記表6の結果から、発根苗に処理した場合のみなら
ず、育苗時処理によっても防除効果が得られることがわ
かる。
【0066】実施例8:JTF-108 菌及びJTF-139 菌のト
マト萎凋病(race J2) に対する防除効果試験 (1)処理液の調製 実施例2で調製したJTF-108 菌を含有する液状防除剤
と、JTF-139 菌を含有する液状防除剤とを用いた。な
お、対照処理液としては蒸留水を用いた。
【0067】(2)浸漬処理 上記の各処理液をビーカーに深さ2cmとなるように注
入し、そこに、播種後50日を経過した本葉5葉期のト
マト苗根部(品種:桃太郎)を入れ、30分間浸漬し
た。
【0068】(3)汚染土壌の調製 トマト萎凋病菌(race J2) をポテト・デキストロース液
体培地(PD培地)において、28℃で5日間振蘯培養
した。得られた菌体及びタルクを重量比1:2の割合で
混合することにより該菌体をタルクに吸着させた後、自
然乾燥させた。これを、汚染濃度が103 胞子/gにな
るように、土壌と混合して汚染土壌を調製した。
【0069】(4)定植 上記で調製した汚染土壌800gを直径18cm、深さ
20cmの丸型プラスチックポットに充填した後、ここ
に上記(2)で処理した苗を定植した。
【0070】(5)防除効果試験 28℃のガラス温室内で2か月間栽培し、発病状況を調
査した。結果を下記表7に示す。
【0071】
【表7】 なお、罹病度の算定は表1について既述した方法に準じ
て行い、また罹病指数の基準は表2に示したものを用い
た。
【0072】上記表7から、対照区はほぼ100%発病
して罹病度も高くなるのに対し、JTF-108 菌及びJTF-13
9 菌処理区は発病株も少なく顕著な発病抑制効果を示す
ことがわかる。
【0073】実施例9:JTF-108 菌及びJTF-139 菌の他
の作物への病原性調査 実施例8(1)と同じ処理液を用いて、下記表8に示す
15科26種の植物に対して以下に示す方法で病原性調
査を行った。
【0074】
【表8】 まず、ホウレンソウ及びイネ以外の作物については、こ
れらの苗根部を上記処理液に30分間浸漬した後、定植
した。一方、ホウレンソウ及びイネについては、ポット
に播種した後2週間を経過した苗に上記処理液を1株当
たり20mlづつ用いて株元灌注処理した。
【0075】それぞれの方法で処理した苗を25℃の温
室で栽培し、その後の生育状況を調査したところ、いず
れの植物においても両菌株共に対照区(水処理)と同様
な発育状況を示し、病原性を示さないことがわかった。
【0076】
【発明の効果】本発明の微生物及び該微生物を含有する
土壌病害防除剤を用いると、環境を汚染したり、人畜或
いは他の作物に影響を与えることがないため、生態系の
調和を崩すことなく、安定かつ持続的にカーネーション
及びトマトのフザリウム病を防除することができる。
【0077】また、本発明の微生物及び該微生物を含有
する土壌病害防除剤を用いることにより、環境への影響
が懸念されている土壌消毒剤の使用を低減させても、市
場性の高い品種の栽培が可能となる。
【0078】更に本発明の防除方法を用いると、有益な
微生物を殺生することなく病害防除を有効に行うことが
できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の微生物JTF-108 菌株及びJTF-139 菌株
のアイソザイムパターンを、各種萎凋病菌およびナス半
枯病菌のアイソザイムパターンと比較して示す図であ
る。

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 カーネーションのフザリウム病防除に有
    効で、かつ主要作物に病原性を示さない新規微生物フザ
    リウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)JTF-108
    菌株(微工研条寄第3964号)。
  2. 【請求項2】 カーネーションのフザリウム病防除に有
    効で、かつ主要作物に病原性を示さない新規微生物フザ
    リウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)JTF-139
    菌株(微工研条寄第3965号)。
  3. 【請求項3】 請求項1記載のJTF-108 菌株及び/又は
    請求項2記載のJTF-139 菌株を含有する、カーネーショ
    ンのフザリウム病防除剤。
  4. 【請求項4】 請求項1記載のJTF-108 菌株及び/又は
    請求項2記載のJTF-139 菌株を、植物の苗根部又は土壌
    に処理することによりカーネーションのフザリウム病を
    防除する方法。
JP4347322A 1992-12-25 1992-12-25 新規微生物、該微生物を含有する土壌病害防除剤及びこれらを利用した土壌病害防除方法 Expired - Fee Related JP2578302B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP4347322A JP2578302B2 (ja) 1992-12-25 1992-12-25 新規微生物、該微生物を含有する土壌病害防除剤及びこれらを利用した土壌病害防除方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP4347322A JP2578302B2 (ja) 1992-12-25 1992-12-25 新規微生物、該微生物を含有する土壌病害防除剤及びこれらを利用した土壌病害防除方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH06256126A JPH06256126A (ja) 1994-09-13
JP2578302B2 true JP2578302B2 (ja) 1997-02-05

Family

ID=18389444

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP4347322A Expired - Fee Related JP2578302B2 (ja) 1992-12-25 1992-12-25 新規微生物、該微生物を含有する土壌病害防除剤及びこれらを利用した土壌病害防除方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2578302B2 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP0823202A4 (en) * 1996-02-29 2000-08-30 Idemitsu Kosan Co ROCK WOOL FOR CULTIVATION OF PLANTS, METHOD OF MANUFACTURE AND METHOD OF CULTURE OF PLANTS USING THE SAME

Family Cites Families (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS63227507A (ja) * 1987-03-17 1988-09-21 Ibaraki Pref Gov フザリウム生菌製剤
JPH0796485B2 (ja) * 1987-09-29 1995-10-18 三井東圧化学株式会社 ナス科作物の病害防除微生物および病害防除方法
JPH07110802B2 (ja) * 1987-12-23 1995-11-29 三井東圧化学株式会社 ナス科作物の病害防除微生物及び病害防除法
JP2809446B2 (ja) * 1989-09-26 1998-10-08 片倉チッカリン株式会社 フザリウム属菌固定資材

Also Published As

Publication number Publication date
JPH06256126A (ja) 1994-09-13

Similar Documents

Publication Publication Date Title
RU2127521C1 (ru) Штамм актиномицета streptomyces lydicus для защиты растений от грибковой инфекции, композиция для защиты растений от грибковой инфекции (варианты), способ снижения чувствительности растения к грибковой инфекции (варианты)
JP3059245B2 (ja) トリコデルマの新規な分離菌、この分離菌を含有する殺菌組成物、並びにb.シネレアおよびs.スクレロチオルムに対するその使用
JP6526011B2 (ja) 生物農薬として使用されるクロノスタキス・ロゼア(Clonostachys rosea)の分離菌株
Chakravarty et al. Differential influence of ectomycorrhizae on plant growth and disease resistance in Pinus sylvestris seedlings
Khmel et al. Biological control of crown gall in grapevine and raspberry by two Pseudomonas spp. with a wide spectrum of antagonistic activity
US4996157A (en) Biological control of phytophthora by trichoderma
JP2016534737A5 (ja)
CN109844095B (zh) 对植物寄生线虫具有杀线虫活性的黑曲霉f22菌株及其用途
EP1774854A1 (en) Microbial pesticide inhibiting the outbreak of plant disease damage
US5165928A (en) Biological control of phytophthora by gliocladium
CZ152494A3 (en) Fungicidal agent
CN105462858B (zh) 一株短密木霉及其在黄瓜枯萎病防治中的应用
KR101773339B1 (ko) 이사리아 푸모소로세아 Pf212 균주 또는 이를 이용한 진딧물, 잘록병균 및 고추 탄저병균의 동시방제용 조성물
JPH07110802B2 (ja) ナス科作物の病害防除微生物及び病害防除法
JP2007082499A (ja) フザリウム・オキシスポラムの新菌株
JP2578302B2 (ja) 新規微生物、該微生物を含有する土壌病害防除剤及びこれらを利用した土壌病害防除方法
JPH0796485B2 (ja) ナス科作物の病害防除微生物および病害防除方法
JP2004143102A (ja) 放線菌を含む微生物製剤
JP3315735B2 (ja) 養液栽培植物の病害防除及び生育促進方法
JP2732905B2 (ja) ウリ科作物の病害防除微生物および病害防除法
CN113861088B (zh) 一种防治植物细菌性病害的化合物及应用
JPS6322505A (ja) ネオヅユギテス・フロリダナ菌類を用いた植物食害だにの抑制方法
WO2003034807A1 (fr) Bouture racinee et procede d'inoculation de bouture racinee avec une souche microbienne
JP2572631B2 (ja) 植物病害用防除菌及びそれによる植物病害の防除方法
US20230000087A1 (en) Endophytic strain of clonostachys rosea for biocontrol of phytopathogenic fungi

Legal Events

Date Code Title Description
LAPS Cancellation because of no payment of annual fees