JP2016534737A5 - - Google Patents

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生物農薬として使用されるクロノスタキス・ロゼア(Clonostachys rosea)の分離菌株 関連出願の相互参照
本出願は、参照によりその全内容が本明細書に組み入れられる2013年9月11日に出願の米国仮特許出願第61/876,469号明細書の優先権を主張する。
本開示は、真菌クロノスタキス・ロゼア(Clonostachys rosea)の分離菌株に関し、詳細には、植物の処理用の生物農薬(biological control agent)として有用なクロノスタキス・ロゼア(Clonostachys rosea)の分離菌株に関する。
クロノスタキス・ロゼアf.ロゼア(Clonostachys rosea f.rosea)は、野生の多様な植物及びほぼ全ての種類の作物植物の組織中に見られる有益な極微菌(micro-fungus)である。この極微菌は、世界中の農場で収穫される植物の健康な根、葉、茎、花、及び果実、並びに苗木畑、果樹園、ブドウ園、牧草地、及び庭園で一般的である。この極微菌は、亜北極帯、冷温帯及び暖温帯、砂漠、並びに湿潤熱帯まで多種多様な領域からの植物及び土壌で報告されている。C.ロゼア(C.rosea)によってコロニーが形成された植物は、その組織が自然に老化して死ぬまで、この極微菌が存在する目に見える兆候を一切示さない。植物が死んだときに、この極微菌は、胞子を形成することができ、白っぽい増殖物(whitish growth)が、特に拡大鏡を用いると、植物の表面で確認できるようになることがある。病気に関連した病原生物とは異なり、クロノスタキス(Clonostachys)は、植物では病変、斑点、萎れ、又は他の兆候を引き起こさない。クロノスタキス・ロゼアf.ロゼア(Clonostachys rosea f.rosea)は、植物の処理用の有益な生物農薬であることも知られており、植物を病気及び環境ストレスから保護するのに役立ち、かつ植物の成長及び生産性の促進に役立つ。
Stewart et al.(特許文献1)は、クロノスタキス・ロゼア(Clonostachys rosea)菌株88−710を説明し、この菌株が、植物の生命力、健康、成長、及び収量の促進に有利であると述べている。
米国特許第8,101,551号明細書
植物の処理用の生物農薬として有用なクロノスタキス・ロゼア(Clonostachys rosea)の新菌株への要求が依然として存在する。
本発明者らは、真菌クロノスタキス・ロゼアf.ロゼア(Clonostachys rosea f.rosea)の新菌株を分離して特徴付けた。本明細書に記載されるように、「BVT Cr−7」と命名されたクロノスタキス・ロゼアf.ロゼア(Clonostachys rosea f.rosea)のこの新菌株は、植物の処理用の生物農薬として特に有用である。本開示の一態様において、クロノスタキス・ロゼアf.ロゼア(Clonostachys rosea f.rosea)菌株BVT Cr−7の分離菌株(isolated culture)は、2013年9月4日に、1015 Arlington Street,Winnipeg,Manitoba,R3E 3R2,Canadaに所在のNational Microbiology Laboratory,Public Health Agency of Canadaにあるカナダの国際寄託当局に、受託番号:040913−01で寄託されている。
実施例1に記載されるように、生物農薬としての使用に特に有利な特性を有する菌株を同定するために、クロノスタキス・ロゼアf.ロゼア(Clonostachys rosea f.rosea)の一連の異なる菌株を分離して特徴付けた。クロノスタキス・ロゼアf.ロゼア(Clonostachys rosea f.rosea)の他の菌株と比較して、BVT Cr−7は、多数の改善された特性及び/又は生物農薬としての使用に望ましい特性の組合せを示した。例えば、BVT Cr−7は、胞子形成の成長及び存在量、作物植物の根の中及び試験植物の花及び葉の中を含む多様な植物の中に内生的に定着するBVT Cr−7の能力、並びに広範な植物の病気及び/又は病原菌を抑制又は制御するBVT Cr−7の能力に関する、改善された又は望ましい特性を示した。一実施形態では、BVT Cr−7は、クロノスタキス・ロゼアf.ロゼア(Clonostachys rosea f.rosea)の対照菌株、例えば、88−710及び/又はEV1aと比較して1つ以上の改善された特性を示す。
さらに、実施例2〜5に記載されるように、制御された条件下での、現場試験及び温室でのBVT Cr−7の植物への適用は、BVT Cr−7が、多様な条件下で、多種多様な植物に対して、多数の異なる病気に対して高い効能を有する広範な生物農薬であることを実証している。実施例4に示されているように、BVT Cr−7はまた、例えば、収穫した作物の腐敗又は退色のレベルを低下させることによって、植物材料の損傷を低減するのにも有用である。
従って、一態様では、本明細書に記載のクロノスタキス・ロゼアf.ロゼア(Clonostachys rosea f.rosea)菌株BVT Cr−7の分離培養菌株が提供される。一実施形態では、この菌株は、2013年9月4日に、1015 Arlington Street,Winnipeg,Manitoba,R3E 3R2,Canadaに所在のNational Microbiology Laboratory,Public Health Agency of Canadaにあるカナダの国際寄託当局に、受託番号:040913−01で寄託された菌株である。
また、クロノスタキス・ロゼアf.ロゼア(Clonostachys rosea f.rosea)菌株BVT Cr−7から形成される胞子、並びにクロノスタキス・ロゼアf.ロゼア(Clonostachys rosea f.rosea)菌株BVT Cr−7の子孫、及びBVT Cr−7の分離培養菌株、胞子、及び/又は子孫を含む製剤も提供される。また、無性生殖することができるクロノスタキス・ロゼアf.ロゼア(Clonostachys rosea f.rosea)菌株BVT Cr−7の分離細胞も提供される。一実施形態では、胞子形成に適した条件下で、基材でBVT Cr−7の分離培養菌株をインキュベートすることによって得られる胞子が提供される。一実施形態では、安定剤、例えば、ケイ酸カルシウムに結合させたBVT Cr−7の胞子を含む製剤が提供される。
一実施形態では、本明細書に記載のBVT Cr−7の分離培養菌株(isolated culture)は、内生菌(endophyte)として植物にコロニーを形成する(colonize)。一実施形態では、植物をBVT Cr−7と接触させることにより、その植物の葉、花、果実、及び/又は根に影響を及ぼす病気又は病原菌を抑制又は制御する。一実施形態では、この病気は、灰色カビ病、白色カビ病、褐色腐敗病、根腐病、及び/又はホモプシス(phomopsis)である。一実施形態では、この病気は、ボトリティス・シネレア(Botrytis cinerea)、スクレロチニア・スクレロチオラム(Sclerotinia sclerotiorum)によって、及び/又はピシウム(Pythium)種、リゾクトニア(Rhizoctonia)、及び/又はフザリウム(Fusarium)の種によって引き起こされる。
一実施形態では、BVT Cr−7の接種材料でコロニー形成された植物又は植物材料も提供される。
一実施形態では、クロノスタキス・ロゼアf.ロゼア(Clonostachys rosea f.rosea)菌株BVT Cr−7は、植物の処理用の生物農薬として有用である。一実施形態では、植物を本明細書に記載のクロノスタキス・ロゼアf.ロゼア(Clonostachys rosea f.rosea)菌株BVT Cr−7と接触させるステップを含む、植物の処理方法が提供される。例えば、一実施形態では、BVT Cr−7は、BVT Cr−7で処理されていない対照植物と比較して、植物の健康、成長、及び/又は収量を向上させるのに有用である。一実施形態では、BVT Cr−7は、植物の病気及び/又は病原菌の予防又は処置に有用である。一実施形態では、BVT Cr−7は、病原真菌を含む他の真菌の植物へのコロニー形成の排除を促進するのに有用である。一実施形態では、BVT Cr−7は、例えば、病原菌の感染に応答して、植物の病気及びストレスに対する天然の耐性を生じさせるのに有用である。また、植物材料をBVT Cr−7と接触させるステップを含む、植物材料の損傷を低減する方法も提供される。
一実施形態では、BVT Cr−7は、植物の健康、成長、及び/又は収量に影響を及ぼし得る病気及び/又は病原菌を予防又は処置するための植物の処理に有用である。一実施形態では、病原菌は、微生物、例えば、真菌又は細菌である。BVT Cr−7によって制御することができる、植物の健康、成長、及び/又は収量に影響を及ぼし得る病原菌の例として、限定されるものではないが、ボトリティス・シネレア(Botrytis cinerea)、スクレロチニア・スクレロチオラム(Sclerotinia sclerotiorum)、ピシウム(Pythium)種、アルテルナリア(Alternaria)、モニリア(Monilia)、モニリニア(Monilinia)、コレトトリカム(Colletotrichum)、クラドスポリウム・リゾクトニア(Cladosporium Rhizoctonia)、ストレプトミセス(Streptomyces)、ディジメラ(Didymella)、及び/又はフザリウム(Fusarium)が挙げられる。BVT Cr−7の適用によって制御することができる、植物の健康、成長、及び/又は収量に影響を及ぼし得る病気の例として、限定されるものではないが、灰色カビ病、白色カビ病、褐色腐敗病、及び/又は根腐病が挙げられる。他の例として、例えば、ブルーベリー又はブドウにおけるホモプシス(phomopsis)病、及びジャガイモそうか病が挙げられる。
一実施形態では、この植物は、クロノスタキス・ロゼアf.ロゼア(Clonostachys rosea f.rosea)菌株BVT Cr−7によって内生的にコロニー形成され得るあらゆる植物又はその一部である。一実施形態では、植物は、開花植物、穀物、マメ科植物、又は野菜植物である。例えば、一実施形態では、本明細書に記載の方法及び使用は、植物、例えば、開花植物又は作物、例えば、野菜、果実、穀物、及びこれらの種子又は実生苗の処理に有用である。一実施形態では、本明細書に記載の方法及び使用は、針葉樹実生苗/移植苗の処理に有用である。一実施形態では、植物は、樹木、例えば、マツ、クロトウヒ、又はマツ移植苗である。一実施形態では、この植物は、コムギ、オオムギ、ヒマワリ、キャノーラ、ブルーベリー、イチゴ、ラズベリー、ブドウ、ジャガイモ、ピーマン、キュウリ、トマト、芝草、ピーマン、トマト、キュウリ、ブロッコリ、カリフラワー、モモ、リンゴ、キャノーラ、花が咲く観賞植物、例えば、バラ、ゼラニウム、シクラメン、キンギョソウ、エキザカム(Exacum)、ベゴニア、又はユリである。一実施形態では、この植物は、屋外で栽培される。一実施形態では、この植物は、温室で栽培される。
一実施形態では、本明細書に記載の方法及び使用は、植物を、BVT Cr−7、例えば、BVT Cr−7培養菌株、胞子、又はこれらの製剤と接触させるステップを含む。一実施形態では、BVT Cr−7培養菌株、胞子、又はこれらの製剤は、接種材料として有用である。一部の実施形態では、BVT Cr−7は、噴霧、ミスト、浸漬、粉末、又は栄養液として、及び/又は昆虫媒介によって、例えば、参照によりその全内容が本明細書に組み入れられるPCT出願PCT/CA2013/050179号明細書に記載のハチ媒介の使用によって、植物又はその一部に適用される。
また、生物農薬の製造方法も提供され、この方法は、分離培養菌株BVT Cr−7を基材(substrate)に接種するステップ、及び真菌の成長に適した条件下でこの基材をインキュベートしてクロノスタキス・ロゼアf.ロゼア(Clonostachys rosea f.rosea)菌株BVT Cr−7を生成するステップを含む。任意選択的に、この方法は、真菌の胞子形成に適した条件下で基材をインキュベートするステップ、及び胞子をこの基材から取り出して(remove)、接種材料を得るステップをさらに含む。
本開示の他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。しかしながら、詳細な説明及び特定の実施例が示されているが、本開示の趣旨及び範囲内の様々な変形形態及び変更形態が、当業者にはこの詳細な説明から明らかになるため、本開示の好ましい実施形態が単なる例示によって示されることを理解されたい。
定義
本明細書で使用される「クロノスタキス・ロゼアf.ロゼア(Clonostachys rosea f.rosea)菌株BVT Cr−7」又は「BVT Cr−7」は、2013年9月4日に、1015 Arlington Street,Winnipeg,Manitoba,R3E 3R2,Canadaに所在のNational Microbiology Laboratory,Public Health Agency of Canadaにあるカナダの国際寄託当局に、受託番号:040913−01で寄託された真菌株を指す。「クロノスタキス・ロゼアf.ロゼア(Clonostachys rosea f.rosea)菌株BVT Cr−7」、「BVT Cr−7」、又は「クロノスタキス・ロゼアf.ロゼア(Clonostachys rosea f.rosea)菌株IDAC 040913−01」という語はまた、前記菌株の分離菌株(isolate)、又は前記菌株から、例えば、無性生殖によって産生されるあらゆる細胞、培養菌株、胞子、及び子孫も含む。
当技術分野で公知の様々な方法をBVT Cr−7の培養又は真菌胞子の調製に使用することができ、このような方法には、限定されるものではないが、本明細書に記載の方法、並びに参照によりそれぞれの全内容が本明細書に組み入れられるSutton et al.“Gliocladium roseum:a versatile adversary of Botrytis cinerea in crops.”Plant Dis 1997;81:316−28;Sutton et al.“Ability of Clonostachys rosea to establish and suppress sporulation potential of Botrytis cinerea in deleafed stems of hydroponic greenhouse tomatoes”Biocontrol Sci Technol 2002;12(4):413−25、及び米国特許出願公開第2012/0021906号明細書“Fungal Inoculant Compositions”に記載の方法が含まれる。
本明細書で使用される「植物」は、BVT Cr−7によって内生的にコロニー形成され得る植物界の任意の植物を指す。好ましい一実施形態では、植物は栽培植物である。一実施形態では、「植物」はまた、植物になる塊茎、種子、及び/又は実生苗も含み、任意選択的に植物材料も含む。本明細書で使用される「植物材料」は、植物から収穫又は分離され、かつ病気及び/又は病原菌による感染によって損傷しやすい食物として又は他の用途に使用されることになるあらゆる材料を指す。植物材料の例として、限定されるものではないが、収穫された穀物、果実、又は野菜が挙げられる。
本明細書で使用される「内生的にコロニー形成される(colonized endophytically)」とは、病気の兆候又は他の側面を引き起こさず、かつ他の方法で宿主を傷つけることなく、真菌の胞子が植物宿主に侵入してその中に真菌コロニーを形成するプロセス、又はその一部を指す。
本明細書で使用される「生物農薬(biological control agent)」は、植物の健康、成長、生命力、及び/又は収量を促進し;発芽率及び/又は種子品質を向上させ;病気、害虫、及び/又は環境ストレス、例えば、悪天候又は土壌条件に対する耐性を向上させ;病気若しくは病原菌を制御する若しくは対処する、又は病気若しくは病原菌の処理若しくは予防に有用であり;或いは外傷及び/又は感染からの植物の回復を促進する作用物質を指す。生物農薬の好ましい例として、本明細書に記載されるクロノスタキス・ロゼア(Clonostachys rosea)菌株BVT Cr−7が挙げられる。
本明細書で使用される「病原菌」は、植物宿主に侵入してコロニーを形成し、かつ植物の健康、成長、生命力、及び/又は収量を低下させ得る微生物を指す。病原菌の例として、限定されるものではないが、細菌及び真菌、例えば、ボトリティス・シネレア(Botrytis cinerea)、スクレロチニア・スクレロチオラム(Sclerotinia sclerotiorum)、並びにピシウム(Pythium)、アルテルナリア(Alternaria)、モニリア(Monilia)、モニリニア(Monilinia)、コレトトリカム(Colletotrichum)、クラドスポリウム・リゾクトニア(Cladosporium Rhizoctonia)、ストレプトミセス(Streptomyces)、ディジメラ(Didymella)、及び/又はフザリウム(Fusarium)の種が挙げられる。
クロノスタキス・ロゼア(Clonostachys rosea)と植物及び植物病原生物との相互作用
理論に制限されるものではないが、クロノスタキス・ロゼア(Clonostachys rosea)BVT Cr−7は、病気及びストレスに対する天然の植物の耐性を生じさせることを含む様々な機序によって、及び他の病原菌の競合的排除によって植物を保護すると考えられる。
クロノスタキス(Clonostachys)は、非常に多数の微小(5〜7μM)豆型胞子によって繁殖する。植物に付着すると、胞子は、発芽して細い管を形成し、この管から極度に細い枝が形成されて、植物組織中に侵入する。侵入は、生きている花弁、葉、植物の傷、根、塊茎、及び植物の他の部分で起こり得る。組織に侵入すると、各枝は、微小真菌コロニーを形成する。クロノスタキス(Clonostachys)コロニーを有する植物は、病気を引き起こす生物(病原菌)によって引き起こされるような兆候を一切示さない。植物組織内で内生菌として定着すると、クロノスタキス(Clonostachys)は、有益な効果を付与することができ、例えば、病気及びストレスに対する天然の植物の耐性を生じさせる。
微小クロノスタキス(Clonostachys)コロニーと植物組織との関係は、植物の組織が老化し始める、例えば、葉がまず黄色に変わり始める、又は病気若しくはストレスが発症し始めると急激に変化する。この時点で、小さいコロニーが、急速に成長し始めて、しばしば、隣接組織を完全に占拠する。クロノスタキス(Clonostachys)は、老化して死にかけている植物で成長するほぼ全ての他の真菌及び細菌の前に、この成長を始める。従って、クロノスタキス(Clonostachys)は、老化している植物組織の先駆的定着菌群(pioneer colonizer)である。実際に、クロノスタキス(Clonostachys)は、ボトリティス(Botrytis)、スクレロチニア(Sclerotinia)、及びモニリニア(Monilinia)のような破壊病原菌を含む他の生物の前に組織を占拠する。一旦組織が占拠されると、病原菌を含む他の生物が、占拠している生物にとって代わることはない。クロノスタキス(Clonostachys)は、組織の先制占拠だけで病原菌及び他の真菌の成長をブロックすることができる。この競合的排除は、クロノスタキス(Clonostachys)が病原生物及び植物の病気の発症を抑制する主な手段である。実施例に示されるように、クロノスタキス(Clonostachys)BVT Cr−7は、多種多様な植物における病気及び病原菌の制御に特に有効である。
クロノスタキス(Clonostachys)は、コロニー形成された組織が徐々に老化して死ぬときに胞子を形成する。多くの場合、このような胞子は、近隣の生きている植物で内生成長の新たなサイクルを開始する。クロノスタキス(Clonostachys)は、植物材料が生きている間にコロニー形成した死んだ植物材料中にしばらく生存することができる。しかしながら、クロノスタキス(Clonostachys)は、既に他の真菌及び細菌によって占拠されている死んだ植物材料で成長する能力が殆どない。このような状況では、クロノスタキス(Clonostachys)は、植物残渣及び土壌の微生物界に適合した微生物、例えば、ペニシリウム(Penicillium)及びアスペルギルス(Aspergillus)とあまり競合しない。
クロノスタキス(Clonostachys)は、他の真菌の菌糸及び菌糸体上で成長する能力も有する(即ち、菌寄生菌である)。クロノスタキス(Clonostachys)は、通常は、菌糸、菌核、又は真菌の他の部分に非常に密接な接触(即ち、完全な接触又は恐らく1〜5μMの距離に近接)をして初めて、別の真菌を攻撃する。こうすることにより、クロノスタキス(Clonostachys)菌糸は、ときには、寄生した真菌の周りに螺旋状に巻き付き、「宿主真菌」が基本的に死ぬ。
理論に制限されるものではないが、クロノスタキス(Clonostachys)が病原菌及び植物の病気を抑制する主な方法は:A.組織内での病原菌の成長を妨げるように老化又は損傷組織を急速に占拠すること;及びB.植物の病原生物に対する天然の耐性機序を刺激することによるものであると考えられる。さらに、クロノスタキス(Clonostachys)は、寄生(即ち、食物源として真菌上で成長する)によって真菌の生存構造(例えば、土壌中又は土壌上の菌核及び様々な種類の胞子)を不活性化させる又は殺すことができる。BVT Cr−7は、植物の処理用の生物農薬として特に有効にする多数の特徴を有するクロノスタキス(Clonostachys)の分離菌株である。
菌株BVT Cr−7の特性及び特徴
一実施形態では、BVT Cr−7と呼ばれるクロノスタキス(Clonostachys)の分離菌株が提供される。一実施形態では、この株は、2013年9月4日に、1015 Arlington Street,Winnipeg,Manitoba,R3E 3R2,Canadaに所在のNational Microbiology Laboratory,Public Health Agency of Canadaにあるカナダの国際寄託当局に、受託番号:040913−01で寄託された株である。一実施形態では、「クロノスタキス・ロゼアf.ロゼア(Clonostachys rosea f.rosea)菌株BVT Cr−7」又は「BVT Cr−7」は、例えば、無性生殖によって、前記菌株から産生されるあらゆる培養物、胞子、細胞、及び子孫を含む。本明細書に記載されるように、BVT Cr−7は、クロノスタキス(Clonostachys)の他の菌株よりも有利な多数の特性を有する。
例えば、一実施形態では、BVT Cr−7は、標準的な寒天培地及び植物の種子、例えば滅菌穀物種子で、胞子を形成することができる。一実施形態では、BVT Cr−7は、クロノスタキス・ロゼアf.ロゼア(Clonostachys rosea f.rosea)の他の菌株、例えば88−710(又はAFr−710、PG−710として知られる)と比較して、標準的な寒天培地及び植物の種子、例えば滅菌穀物種子で、胞子を形成する改善された能力を有する。菌株88−710は、(参照により全内容が本明細書に組み入れられる)Sutton et al.,Evaluation of the Fungal Endophyte Clonostachys rosea as an Inoculant to Enhance Growth,Fitness and Productivity of Crop Plants.Proc.IVth IS on Seed,Transplant and Stand Establishment of Hort.Crops Ed.:D.I.Leskovar,Acta Hort.782,ISHS 2008 pp.279−286に記載されている。一実施形態では、穀物種子は、コムギ種子又はオオムギ種子である。一実施形態ではBVT Cr−7は、植物の処理に使用される接種材料の作成に有用である。
一態様では、BVT Cr−7は、植物で内生的に定着することができる。一実施形態では、BVT Cr−7は、植物の根、例えば植物作物の根で、内生的に定着することができる。一実施形態では、BVT Cr−7は、クロノスタキス・ロゼアf.ロゼア(Clonostachys rosea f.rosea)の他の菌株、例えば88−710と比較して、植物の根で内生的に定着する改善された能力を有する。例えば、一実施形態では、BVT Cr−7は、植物作物及び/又は植物、例えば小さい粒状の穀物、芝草、エンドウマメ、キャノーラ、ダイズ、ピーマン、トマト、及びキュウリで、内生的に定着する改善された能力を有する。
一実施形態では、BVT Cr−7は、植物の葉及び/又は花で内生的に定着することができる。一実施形態では、BVT Cr−7は、クロノスタキス・ロゼアf.ロゼア(Clonostachys rosea f.rosea)の他の菌株、例えば88−710と比較して、植物の葉及び/又は花で内生的に定着する改善された能力を有する。例えば、一実施形態では、BVT Cr−7は、ミニバラ、イチゴ、ヒマワリ、及びキャノーラの葉及び/又は花で内生的に定着する改善された能力を有する。
別の態様では、BVT Cr−7は、植物の病気を抑制及び/又は制御することができる。一実施形態では、BVT Cr−7は、病原菌、例えば、他の真菌又は微生物によって引き起こされる植物の病気を抑制又は制御することができる。一実施形態では、BVT Cr−7は、クロノスタキス・ロゼアf.ロゼア(Clonostachys rosea f.rosea)の他の菌株、例えば88−710と比較して、植物の病気を抑制又は制御する改善された能力を有する。例えば、一実施形態では、BVT Cr−7は、植物の葉、花、果実、及び/又は根に影響を及ぼす病気を抑制又は制御する改善された能力を有する。一実施形態では、病気は、ボトリティス・シネレア(Botrytis cinerea)(灰色かび病)、スクレロチニア・スクレロチオラム(Sclerotinia sclerotiorum)(白色かび病)によって、及び/又はピシウム(Pythium)種、リゾクトニア(Rhizoctonia)、及び/又はフザリウム(Fusarium)(根腐れ及び他の病気)の種によって引き起こされる。
一実施形態では、BVT Cr−7は、植物材料の腐敗を軽減することができる。例えば、一実施形態では、収穫した植物材料を、例えば噴霧処理によってBVT Cr−7と接触させることにより、未処理の植物材料と比較して腐敗の発生を軽減する。
BVT Cr−7の植物及び/又は植物の一部への適用
一実施形態では、本明細書に記載される方法及び使用は、植物又は植物材料をBVT Cr−7と接触させるステップを含む。一実施形態では、BVT Cr−7を、例えば植物又は植物材料の内生コロニーの形成を促進するように、植物又は植物材料に曝露する。BVT Cr−7は、適用例によって噴霧、ミスト、浸漬、栄養液、及び/又は昆虫媒介を含む任意の既知の方法によって、植物の葉、花、根、塊茎、及び/又は種子を含む植物のあらゆる部分に適用することができる。
例えば、移植用の若い植物を、移植時に土壌培地を浸す又は植物を浸漬することによって処理することができる。
別の例では、花に感染する病原菌によって引き起こされる病気は、しばしば、クロノスタキス・ロゼア(Clonostachys rosea)BVT Cr−7を花に適用することによって、例えば噴霧処理又は虫媒介、例えば、参照によりそれぞれの全内容が本明細書に組み入れられるPCT公開国際公開第2012/135940号及びPCT出願PCT/CA2013/050179号明細書に記載されているハチ媒介技術によって、有効に制御することができる。一実施形態では、(例えば、毎週の噴霧とは対照的に)ハチは開花したての花にクロノスタキス(Clonostachys)を毎日送達するため、ハチ媒介により、開花している穀物の処理が可能となる。
他の例示的な適用例として、以下のものが挙げられる:葉の表面並びに落葉中及び他の刈込み作業中に生じる茎の傷の中の病原菌、例えばボトリティス(Botrytis)を制御するための、ごく少量のミスト又は従来の噴霧によって温室穀物の葉へのクロノスタキス(Clonostachys)の適用;ダラースポット病(スクレロチニア(Sclerotinia))、雪腐れ病(ティフラ(Typhula)、マイクロドチウム(Microdochium))、及び他の葉の病気を制御するための、ゴルフコースの芝生のクロノスタキス(Clonostachys)での噴霧処理;クロノスタキス(Clonostachys)の(48時間以内の)新しい傷への適用は、しばしば、例えば、接ぎ木、挿し木、及び傷ついた植物における多数の傷感染病原生物から長期的に保護する;及び種子をクロノスタキス(Clonostachys)で処理して(続いて、根茎で真菌が成長して)、干ばつ又は(特定の殺虫剤の使用を含む)生産作業によってストレスを受けたときに成長を維持する穀物、例えば、フィールドピーの能力を向上させることができる。
一実施形態では、本明細書に記載のBVT Cr−7は、キャノーラ、ヒマワリ、ラズベリー、ブルーベリー、イチゴ、リンゴ、洋ナシ、キーウィフルーツ、スイカ、コーヒー、マンゴー、アボカド、サクランボ、プラム、アーモンド、モモ、カシュー、グアバ、アルファアルファ、ソバ、クローバー、マメ、エンドウマメ、タマネギ、ダイズ、綿、マスタード、ブラックベリー、グーズベリー、ピーマン、ナス、及びスグリを含む様々な作物における病原菌、例えば、スクレロチニア・スクレロチオラム(sclerotinia sclerotiorum)、モニリニア・バクシニイ−コリムボシ(monilinia vaccinii−corymbosi)、及び/又はボトリティス・シネレア(botrytis cinerea)の制御に有用であり得る。
一部の実施形態では、BVT Cr−7は、単回投与曝露として、又は異なる時点での複数回投与若しくは曝露で植物に適用される。例えば、一実施形態では、植物は、例えば、少なくとも2日間、4日間、1週間、2週間、1か月間、1か月間、若しくは1か月間を超える間隔で、噴霧によって、又は適切な接種材料ディスペンサーを備えるハチの巣箱を用いた昆虫媒介によって、BVT Cr−7が投与されるか、又はBVT Cr−7に曝露される。
一実施形態では、植物は、標的植物の毎年の生育サイクル中に1回以上BVT Cr−7と接触させられる。例えば、一実施形態では、BVT Cr−7は、成長の季節が始まる春及び/又は成長の季節が終わる秋に植物に適用される。一実施形態では、BVT Cr−7は、植物材料の収穫の前、例えば、植物材料の収穫の1週間前、2週間前、3週間前、又は4週間前に植物に適用される。
植物に接種するための製剤
一態様では、植物又は植物材料を接種するのに適したBVT Cr−7を含む製剤が提供される。任意選択的に、この製剤は、固形、例えば、粉末製剤、又は溶液、例えば、水溶液とすることができる。一実施形態では、この製剤は、BVT Cr−7の凍結乾燥胞子を含む。一実施形態では、本明細書に記載の製剤は、植物の処理用の接種材料として有用である。
一実施形態では、この製剤は、クロノスタキス・ロゼアf.ロゼア(Clonostachys rosea f.rosea)菌株BVT Cr−7に由来の分離培養菌株又は真菌胞子と組み合わせられる様々な添加剤を含み得る。
当業者であれば、製剤中の細胞又は胞子の濃度は、製剤が使用される条件(例えば、気候、標的植物、製剤を植物又は植物材料に適用する方法など)によって異なり得ることを理解されよう。
一部の実施形態では、この製剤は、固形剤であり、製剤1グラム当たり約1×10〜約4×10の胞子、任意選択的に、製剤1グラム当たり約2×10〜約4×10の胞子を含み得る。
一部の実施形態では、添加剤は、安定剤、吸湿剤、誘引剤(attracting agent)、希釈剤、及び/又は凝固阻止剤(anti-caking agent)の1つ以上を含む。一部の実施形態では、添加剤は、安定剤、吸湿剤、誘引剤、希釈剤、及び/又は凝固阻止剤の2つ以上を含み得る。一実施形態では、この製剤は、昆虫媒介、例えば、参照により本明細書に組み入れられるPCT/CA2013/050179号明細書に記載されている昆虫媒介に適している。
一実施形態では、この製剤は安定剤を含む。この安定剤は、標的植物に送達される前の品質低下、分解、又は真菌の胞子の活性化を防止又は最小限にする。安定剤の例として、粒状ケイ酸カルシウムが挙げられる。例えば、一部の実施形態では、この製剤は、真菌胞子を含むことができ、真菌胞子は、ケイ酸カルシウムの少なくとも一部に結合することができる。製剤は、胞子が結合するケイ酸カルシウム1グラム当たり約1×10〜4×10の胞子の密度を有し得る。一実施形態では、この製剤は、胞子が結合するケイ酸カルシウム1グラム当たり約2×10の胞子を有し得る。
一実施形態では、この製剤は吸湿剤を含む。この吸湿剤は、製剤を比較的乾燥した状態に維持して、製剤の固化又は凝集を防止するために製剤から湿分を吸収する役割を果たす。吸湿剤の例として、乾燥材、例えば、シリカゲルの粒子又はビーズ、及び超吸収性ポリマー、例えば、ポリアクリル酸ナトリウムが挙げられる。吸湿剤のさらなる例として、木屑及び粘土球が挙げられる。
一実施形態では、この製剤は誘引剤を含む。この誘引剤は、この製剤が植物及び媒介昆虫に引き寄せられるようにするのに役立ち得る。例えば、この誘引剤は、正味の正の静電荷を有することができ、従って、この誘引剤は、正味の負の静電荷を有する植物及び/又は媒介昆虫に静電気的に引き寄せられる。一部の例では、この誘引剤は、ミネラル又はミネラル混合物を含み得る。特定の一例では、この誘引剤は、DYNA−MIN(商標)という名称でAgri−Dynamics(Martins Creek,PA)によって販売されているミネラル混合物を含むことができ、このミネラル混合物は、以下のミネラルを含む:二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、カルシウム、鉄、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、リン、チタン、マンガン、ストロンチウム、ジルコニウム、リチウム、ルビジウム、ホウ素、亜鉛、バナジウム、クロム、銅、イットリウム、ニッケル、コバルト、ガリウム、セシウム、スカンジウム、スズ、モリブデン、及び追加の微量元素。別の例では、この誘引剤は、カルシウム石灰岩を含み得る。
一実施形態では、この製剤は希釈剤を含む。この希釈剤は、適切なデンプン又は小麦粉とすることができる。この製剤が昆虫媒介によって送達される例では、この希釈剤は、昆虫を刺激せず、かつ昆虫に危害を与えず、かつ昆虫に食べられないように選択することができる。希釈剤は、この希釈剤が凝集しないよう、多量の湿分を吸収しないようにさらに選択することができる。昆虫媒介に適し得る希釈剤の例として、トウモロコシの粉及び穀物の粉、例えば、ライムギ、コムギ、米粉、及びスペルトコムギが挙げられる。代替の例では、この希釈剤はカオリンとすることができる。他の例では、この希釈剤は、粉乳又はタルクを含み得る。これらは、製剤が昆虫媒介以外の方法、例えば、噴霧によって送達される例で特に有用であり得る。
一実施形態では、この製剤は、適切な凝固阻止剤を含む。凝固阻止剤の特定の一例は、酸化マグネシウムである。当業者に公知の他の凝固阻止剤も、本明細書に記載の製剤に利用することができる。
一実施形態では、この製剤は、液剤、例えば、水性懸濁液である。一実施形態では、この製剤は、約1〜6×10の胞子/mL、及び任意選択的に約2〜5×10の胞子/mLを含む。一実施形態では、この製剤は、液剤であり、かつ1つ以上の農学的に適した担体又は希釈剤を含む。一実施形態では、この液剤は、1つ以上の安定剤を含む。
また、本明細書に記載の生物農薬、例えば、有効量のBVT Cr−7を含む接種材料を製造する方法も提供される。例えば、一実施形態では、BVT Cr−7の分離培養菌株を用意するステップ、BVT Cr−7の分離培養菌株を基材に接種するステップ、及び、この基材を真菌の成長に適した条件下でインキュベートするステップを含む方法が提供される。一実施形態では、接種された基材は、90%又は95%を超える相対湿度、及び20〜24℃の範囲の温度でインキュベートされる。
一実施形態では、この基材は、滅菌基材である。一実施形態では、この方法は、この基材を真菌の胞子形成に適した条件下でインキュベートするステップをさらに含む。クロノスタキス・ロゼア(Clonostachys rosea)の真菌胞子形成に適した条件は当技術分野で公知である。例えば、一実施形態では、真菌胞子形成に適した条件は、真菌の成長のために、基材、例えば、滅菌種子でBVT Cr−7を数日間、約20〜24℃、(約95%を超える)高い湿度で成長させてから、多数の胞子形成に好ましいように少なくとも10日間、少なくとも2週間、又は2週間超、相対湿度を約50%未満、任意選択的に約20〜50%未満、35〜45%未満、又は約20〜25%未満に低下させることを含む。本発明者らは、少なくとも約2週間、相対湿度を約35〜45%に低下させることが、BVT Cr−7の真菌胞子形成に特に有効であると結論づけた。一実施形態では、滅菌種子はオオムギの種子である。一実施形態では、基材は、胞子形成の間、通気される。好ましくは、基材は、他の微生物の汚染を回避するために滅菌条件下でインキュベートされる。
一実施形態では、この方法は、任意選択的に水溶液中に懸濁することによって、胞子を基材から取り出すステップをさらに含む。一実施形態では、胞子は、接種材料を作成するために基材から取り出される。任意選択的に、胞子を基材から取り出し、次いで凍結乾燥して又は当技術分野で公知の他の方法で処理して生物農薬を製造することができる。一実施形態では、この方法は、接種材料を1つ以上の追加の成分、例えば、安定剤、吸湿剤、誘引剤、希釈剤、及び/又は凝固阻止剤と混合して、本明細書に記載の製剤を作成するステップを含む。一実施形態では、この方法は、基材と滅菌水との混合物により胞子を基材から取り出すステップを含む。一実施形態では、この方法は、混合物を振盪するステップ、凝集材料又は粗材料を濾過するステップ、濾過物を徐々に遠心分離するステップ、及びペレット材料を再懸濁して水溶液を得るステップを含む。
追加の実施形態
一実施形態では、本明細書に記載のBVT Cr−7を植物又は植物材料に投与するステップを含む植物病原菌を制御する方法が提供される。例えば、BVT Cr−7の分離菌株、胞子、及び本明細書に開示の製剤を、植物又は植物材料で起こる感染、特にボトリティス(Botrytis)又はスクレロチニア(Sclerotinia)のような病原性真菌による感染の可能性を低くするための予防剤として使用することができる。
また、植物の病原菌を制御する方法も提供され、この方法は、一群の種子を本明細書に開示の培養菌株又は製剤で処理し、次いで処理した種子を植物の中で培養するステップを含む。
また、本明細書に開示されるBVT Cr−7及び担体又は希釈剤を含み、任意選択的に、追加の生物防除剤、例えば、抗真菌薬又は殺虫剤をさらに含む製剤が提供される。この製剤は、種子処理製剤、植物処理製剤、又は土壌処理製剤とすることができる。一実施形態では、この担体又は希釈剤は、製剤の安定性及び効能を保証するのに役立つ農学的に許容され得る担体又は希釈剤である。一実施形態では、この担体又は希釈剤は、生物農薬に適合し、農学的に許容され得、かつ良好な吸湿性及び適切な嵩密度を有し、容易な粒子の分散及び付着が可能である。
BVT Cr−7を含む本明細書に記載の製剤は、例えば、種子又は植物の珠芽、成長培地(例えば、土壌、若しくは水)、植物の根及び/若しくは植物の葉、植物の花若しくは雌しべ、又はこれらの任意の組合せに適用することができる。この製剤で処理することができる例示的な植物として、限定されるものではないが、作物、例えば、種子作物、穀類作物、繊維作物、豆類(pulse crops)、園芸作物、森林作物、及び芝草が挙げられる。
本明細書に記載のBVT Cr−7を含む製剤は、当技術分野で確立された作業に従って、水性噴霧、顆粒、及び粉/粉末製剤を植物に適用することができる。水性噴霧は、通常は、BVT Cr−7の分離培養菌株又は胞子の湿潤粉末又は乳化濃縮製剤を比較的多量の水と混合して分散液を形成することによって調製される。
上記の開示は、一般に本出願を説明している。以下の特定の実施例を参照することにより、より完全な理解を得ることができる。これらの実施例は、例示のためだけに説明され、本開示の範囲を限定するものではない。均等物の形態及び置換における変化形態は、状況によっては好都合となる又は好都合をもたらす可能性があるため考えられる。特定の語が本明細書で利用されているが、このような語は、説明目的であり、限定を意図するものではない。
以下の非限定の実施例は、本開示の例示である。
実施例1:クロノスタキス・ロゼアf.ロゼア(Clonostachys rosea f.rosea)菌株BVT Cr−7の分離
いくつかの種類の作物(コムギ、ダイズ、トウモロコシ、アルファアルファ、芝生)を、クロノスタキス・ロゼアf.ロゼア(Clonostachys rosea f.rosea)の新菌株の可能な供給源として、Guelph,Ontarioに近い畑で収集した。BVT Cr−7として本明細書に記載の真菌の株は、Arkell,Ontarioに近い畑で収集された健康で若いコムギ植物(初期分げつ期)の根から分離した。クロノスタキス・ロゼアf.ロゼア(Clonostachys rosea f.rosea)(BVT Cr−1〜BVT Cr−14)の一連の他の株も、以下に記載するように分離した。
クロノスタキス(Clonostachys)菌株をコムギ植物及び他の作物の根から分離するために使用した手順は以下の通りであった。全体を通して無菌技術を使用した。いくつかの植物からの根を、水道水で洗浄して土を除去し、ペーパータオルで水分を拭き取り、次いで1〜2cmの長さの切片にカットした。これらの切片を、紙ティッシュで水分を拭き取り、20〜22℃で、ペトリ皿のパラコート−クロラムフェニコール寒天培地でインキュベートした。パラコートは、根の老化を加速させ、これにより、クロノスタキス(Clonostachys)が既にコロニーを形成している根の表面で、クロノスタキス(Clonostachys)が比較的迅速に(例えば、6〜8日以内に)胞子を形成することができる。胞子形成構造(分生子柄及びこの分生子柄が有する分生子)が、真菌を認識して同定するための基本である。分生子(即ち、胞子)を取り出して、培養下で発芽させることができる。
真菌を分離するために、胞子を消毒針で、根の分生子柄から、ペトリ皿の(細菌を抑制するために)ストレプトマイシンで改変されたポテトデキストロース寒天(PDA)培地に移した。胞子が発芽して、寒天培地にコロニーを形成した後に、真菌をペトリ皿のPDA−ストレプトマイシンで二次培養した。二次培養物の胞子を、滅菌蒸留水で懸濁し、この懸濁液を段階希釈してPDAに広げた。単一胞子から成長しているコロニーを、ペトリ皿の新しい寒天培地に移し、可能な生物農薬としてさらに特徴付けるために一連の分離菌株として4℃で培養し続けた。
次いで、一連の分離菌株を試験して、互いに比較し、かつ88−710及びEV−1aを含むクロノスタキス・ロゼアf.ロゼア(Clonostachys rosea f.rosea)の樹立菌株と比較した。菌株88−710は、(参照により全内容が本明細書に組み入れられる)Sutton et al.,Evaluation of the Fungal Endophyte Clonostachys rosea as an Inoculant to Enhance Growth,Fitness and Productivity of Crop Plants.Proc.IVth IS on Seed,Transplant and Stand Establishment of Hort.Crops Ed.:D.I.Leskovar,Acta Hort.782,ISHS 2008 pp.279−286に記載されている。
次いで、分離菌株BVT Cr−7[ハチ媒介技術クロノスタキス・ロゼア(Clonostachys rosea)#7]を、実施例2及び3に明示される実験により優れた分離菌株と同定した。次いで、BVT Cr−7の分離培養菌株を維持し、2013年9月4日に、1015 Arlington Street,Winnipeg,Manitoba,R3E 3R2,Canadaに所在のNational Microbiology Laboratory,Public Health Agency of Canadaにあるカナダの国際寄託当局に、受託番号:040913−01で寄託した。
実施例2:BVT Cr−7のクロノスタキス・ロゼアf.ロゼア(Clonostachys rosea f.rosea)の他の菌株に対する試験及び特徴付け
新たに分離した菌株BVT Cr−7及びクロノスタキス・ロゼアf.ロゼア(Clonostachys rosea f.rosea)の2つの追加の菌株(88−710及びEV−1a)を、植物の処理用の生物農薬としてのこれらの特性を評価するために設計された一連の実験で比較した。BVT Cr−7を、以下の各基準に基づいて88−710及び/又はEV−1aと比較して同等であるか又は優れているかを観察した:
・標準的な寒天培地及び基材、例えば、市販の接種材料の作成に使用することができる滅菌穀物種子(コムギ及びオオムギ)における胞子形成の成長及び存在量
・小さい粒状の穀物、芝草、エンドウマメ、キャノーラ、ダイズ、ピーマン、トマト、及びキュウリを含む多様な種類の作物植物の根の中で(即ち、内生的に)十分に定着する能力
・いくつかの試験植物(ミニバラ、イチゴ、ヒマワリ、キャノーラ)の葉及び花の中で内生的に定着する能力
・葉、花、果実、及び根に影響を及ぼす多様な破壊性の病気、特に、ボトリティス・シネレア(Botrytis cinerea)(灰色かび病)、スクレロチニア・スクレロチオラム(Sclerotinia sclerotiorum)(白色かび病)によって、及びピシウム(Pythium)種、リゾクトニア(Rhizoctonia)、及びフザリウム(Fusarium)(根腐れ及び他の病気)の種によって引き起こされる病気を抑制又は制御する能力。
従って、BVT Cr−7は、多様な種類の作物における多様な病気に対して望ましい効能プロフィールを示し、一般に、88−710及び/又はEV−1aと比較して生物農薬として好ましい活性を示す。
実施例3:植物の病気を制御するためのBVT Cr−7の効能
現場試験でBVT Cr−7の活性を評価するために、BVT Cr−7を一連の植物及び作物に適用した。特に、特定の病原菌によって引き起こされる病気を制御するために、BVT Cr−7を(例えば、ハチ媒介又は噴霧処理によって)以下の植物の花に適用した。
・ヒマワリ:スクレロチニア(Sclerotinia)、ボトリティス(Botrytis)、及びフザリウム(Fusarium)
・キャノーラ:スクレロチニア(Sclerotinia)
・ブルーベリー:モニリニア(monilinia)、スクレロチニア(Sclerotinia)、ボトリティス(Botrytis)、ホモプシス(Phomopsis)
・イチゴ:ボトリティス(Botrytis)、ホモプシス(Phomopsis)、及びリゾプス(Rhizopus)
・ラズベリー:ボトリティス(Botrytis)
・ブドウ:ボトリティス(Botrytis)、ホモプシス(Phomopsis)。
BVT Cr−7を、(栄養液によって)温室水耕作物の根にも適用し、ピーマン、キュウリ、及びトマトで、ピシウム(Pythium)及びフザリウム(Fusarium)によって引き起こされる病気を制御するために観察した。
BVT Cr−7を(噴霧として)、芝草、温室ピーマン、及び温室トマトの葉に適用した。BVT Cr−7を、芝草ではスクレロチニア(Sclerotinia)、ティフラ(Typhula)、及びマイクロドチウム(Microdochium)によって、温室ピーマンではフザリウム(Fusarium)によって、及び温室トマトではボトリティス(Botrytis)によって引き起こされる病気を制御するために観察した。
イチゴの処理のためのBVT Cr−7の現場試験
4つのクマバチのコロニーが、4エーカー(16187平方メートル)の有機イチゴ畑の中心に位置しているOntarioで試験を行った。各コロニー箱(「巣箱」)は、ハチが巣箱を出るときにBVT Cr−7の粉末製剤をハチにまぶすためにディスペンサーを備えていた。BVT Cr−7は、畑全体のイチゴの花の80%超から回収された。BVT Cr−7がハチ媒介された畑の果実の腐敗レベルは、近くの未処理の有機イチゴ畑と比較して極端に低かった。この試験で、BVT Cr−7は、ボトリティス(Botrytis)によるイチゴの腐敗を>90%、ホモプシス(Phomopsis)によるイチゴの腐敗を100%、リゾプス(Rhizopus)による腐敗(「漏汁性腐敗」)を93%抑制した。
ヒマワリの処理のためのBVT Cr−7の現場試験
クマバチによるBVT Cr−7の畑での媒介試験を、Ripley Ontarioの近くでヒマワリに対して行った。処理された畑及びその場所の対照の畑(クマバチ又はBVT Cr−7を用いない)から回収した種子を、実験室での分析で比較した。ハチ媒介処理された種子の発芽は、対照の種子の発芽よりも27%高かった(即ち、70.7%と比較して89.7%)。BVT Cr−7処理はまた、種子のいくつかの望ましくないカビ(フザリウム(Fusarium)、ボトリティス(Botrytis)、及びペニシリウム(Penicillium))のレベルも低減した。
クマバチは、巣箱から花まで少なくとも360メートル、BVT Cr−7を強力に媒介した。BVT Cr−7は、ヒマワリの頭の小さい花と種子の大部分で内生菌として効率的に定着した。破壊性病原菌スクレロチニア(Sclerotinia)は、BVT Cr−7によってコロニーが形成されたヒマワリの頭では見られなかったが、ハチ媒介BVT Cr−7の範囲外では頭の20〜25%に存在した。Growersは、種子の収量が、(受粉及びBVT Cr−7の影響で)20%超増加し、より良い品質、特に大きいサイズの種子(従ってより多くの油)が得られ、収穫した種子のカビが減少したと報告した。
ブルーベリーの処理用のBVT Cr−7の現場試験
Prince Edward Islandでの試験により、粉末製剤として又は胞子懸濁水の噴霧としてクマバチによって適用されるBVT Cr−7が、ローブッシュブルーベリーの花、液果、及び葉に内生的に定着できたことが実証された。この処理は、健康な液果の割合を70〜100%増加させた。BVT Cr−7は、気象条件が病気にとって著しく好ましいときを含め、マミーベリー、即ち、真菌モニリニア・バクシニイ−コリムボシ(Monilinia vaccinii−corymbosi)によって引き起こされる主なブルーベリーの病気の発生を大幅に低減した。BVT Cr−7はまた、これまでに説明されていないスクレロチニア・スクレロチオラム(Sclerotinia sclerotiorum)によって引き起こされる病気が原因であることを本発明者らが見出した、液果の褐色化及び未熟での落下を著しく低減した。1年間の試験で、スクレロチニア(Sclerotinia)病は、未処理のブルーベリーのマミーベリーと少なくとも同じ損傷を与えた。適切な時期のBVT Cr−7の噴霧適用は、Ontarioでのローブッシュブルーベリー及びハイブッシュブルーベリーの試験において、ホモプシス(Phomopsis)癌腫病に対して効果があった。従って、BVT Cr−7は、畑のブルーベリーに影響を及ぼす主な病気に対する広範な生物学的制御ツールである。
従って、クロノスタキス・ロゼアf.ロゼア(Clonostachys rosea f.rosea)菌株BVT Cr−7は、多くの種類の作物において経済的に非常に重要な多様な病気を制御することができる。
実施例4:制御された条件でのBVT Cr−7の効能
BVT Cr−7を、生物農薬としてのその使用を評価するために多数の特定の作物で試験した。
A.キャノーラの実生苗:BVT Cr−7での種子の処理は、滅菌土壌中のリゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)の非常に攻撃的な株及び畑土壌中のピシウム(Pythium)根腐病を非常に強力に抑制した。
B.収穫したニンジン(根):BVT Cr−7は、模擬貯蔵中のニンジンの病原菌と共に接種したときに菌核病(Sclerotinia rot)を強力に抑制した。
C.ブロッコリの頭:BVT Cr−7での噴霧処理は、貯蔵されたブロッコリの頭のアルタナリア(Alternaria)、クラドスポリウム(Cladosporium)、及び早期退色を制御した。
D.モモ:新鮮なモモへのBVT Cr−7のミスト適用は、果実の褐色腐敗病(モニリア(Monilia))の発生及び発症率を著しく抑制した。
E.ススキ(Miscanthus):貯蔵の前にBVT Cr−7の胞子懸濁液へのススキ(Miscanthus)の根茎の浸漬は、低温貯蔵の数か月の間、ピシウム(Pythium)、フザリウム(Fusarium)、及びリゾクトニア(Rhizoctonia)による腐敗から保護した。
これらの結果に基づいて、BVT Cr−7は、C.ロゼアf.ロゼア(C.rosea f.rosea)の他の菌株よりも多くの種類の作物において、多様な条件下で証明されている広範な高効能病気耐性を示した。
実施例5:BVT Cr−7を用いた温室トマトの処理
クロノスタキス・ロゼア(Clonostachys rosea)BVT−Cr7で処理された温室トマトの花及び未処理の対照の花を、クロノスタキス・ロゼア(Clonostachys rosea)、ボトリティス・シネレア(Botrytis cinerea)、及び一般的なカビについて評価した。
Nova Scotia,Canadaの試験現場で、比較的小さい産業用温室(1/4エーカー(16187平方メートル)未満)でトマトの花に接種材料を送達するために、接種材料ディスペンサーを備えたコロニー箱(「クマバチの巣箱」)を設置して、C.ロゼア(C.rosea)BVT Cr−7をハチ媒介で植物に送達した。
実験室での手順
トマトの花のサンプルを試験現場から優れた状態で受け取った。各サンプルは、小さいビニール袋に入れられた4つの花を含んでいた。各サンプルの4つの花を、2014年6月20日にペトリ皿のパラコート−クロラムフェニコール寒天(PCA)培地に移し、透明なプラスチックの箱で、明るすぎない日光で、21〜25℃で7日間インキュベートした。次いで、各花を、クロノスタキス・ロゼア(Clonostachys rosea)、ボトリティス・シネレア(Botrytis cinerea)、及び一般的なカビについて顕微鏡で評価した。パラコートが、植物組織の自然の老化を促進し、これによりクロノスタキス・ロゼア(Clonostachys rosea)が胞子を形成し、これにより同定された。他の真菌も、老化して死ぬときに組織で成長して胞子を形成することができる。
結果
表1に示されているように、生物農薬クロノスタキス・ロゼア(Clonostachys rosea)BVT Cr−7の胞子形成が、処理した花の87.5%で観察され、未処理の花では0%であった。処理した花のC.ロゼア(C.rosea)の雄しべ及び雌しべのクラスターの胞子形成は、ほぼ全ての例で高密度かつ広範囲であり、これにより、円錐様の形のこれらのクラスターが、ほぼ全体が白っぽく見えた。殆どの処理された花の花粉での胞子形成は、中程度から重度であった。
病原菌ボトリティス・シネレア(Botrytis cinerea)の胞子形成は、未処理の花の12%で見られ(全ての例で軽度であった)、C.ロゼア(C.rosea)で処理された花では0%であった。
一般的な温室カビは、様々な温度においてサンプルで観察された。原則として、これらは、クラドスポリウム(Cladosporium)(フルビア・フルバム(Fulvia fulvum)ではない)、アスペルギルス(Aspergillus)、及びペニシリウム(Penicillium)、アルタナリア・アルテルナータ(Alternaria alternata)、及びアクレモニウム(Acremonium)に似た真菌の種を含んでいた。C.ロゼア(C.rosea)のこれらのカビに対する効果についての定量的な情報を提供するために、各花を、表1に示されている、1〜5の尺度(scale)で「カビ」(即ち、C.ロゼア(C.rosea)又はボトリティス(Botrytis)以外のあらゆる真菌)を評価した。評点(rating)1は、カビの痕跡ゼロを表し、評点5は、かなり重度のカビを表している。これらのカビの胞子形成を有する花の領域は、C.ロゼア(C.rosea)が定着して胞子を形成している花では非常に低い(平均評点1.80/5.00)が、C.ロゼア(C.rosea)の存在していない花では高い(平均評点4.55/5.00)(対照の全ての花を含む)。従って、生物農薬BVT Cr−7は、ボトリティス(Botrytis)に加えて、これらのカビを著しく抑制することが観察された。本質的に、プレーティングされた花のC.ロゼア(C.rosea)処理は、未処理の花と比較して非常に「綺麗」に見えた。
Figure 2016534737
注目すべきは、ハチ媒介を使用したBVT−Cr7接種材料の送達により、花がPCAで1週間インキュベートされた後に観察された著しい胞子形成レベルによって判定される、生物農薬の花への迅速かつ完全な内生的定着が可能となった。
「雄しべプラス型」のクラスターへのC.ロゼア(C.rosea)の優れた定着が観察され、この定着は、これらが病原菌侵入の主要な入口であるため特に重要である。
C.ロゼア(C.rosea)によってコロニーが形成された花において、B.シネレア(B.cinerea)の見掛けの完全な抑制及び多様な温室カビの大幅な抑制が観察され、他の真菌に対するBVT Cr−7の(例えば、競合排除による)広範な能力及び活性を示唆している。
本開示は、好ましい実施例と現在見なされるものを参照して説明してきたが、本出願は、開示された実施例に限定されるものではないことを理解されたい。逆に、本開示は、添付の請求項の趣旨及び範囲に含まれる様々な変更形態及び均等な構成を含むものとする。
全ての刊行物、特許、特許出願、及び寄託生物は、それぞれの刊行物、特許、特許出願、又は寄託生物が、参照によりそれぞれの内容が組み入れられるように具体的かつ個別に示されたのと同じ程度に、参照によりそれぞれの全内容が本明細書に組み入れられる。
Figure 2016534737
Figure 2016534737

Claims (45)

  1. クロノスタキス・ロゼアf.ロゼア(Clonostachys rosea f.rosea)菌株IDAC 040913−01である、クロノスタキス・ロゼアf.ロゼア(Clonostachys rosea f.rosea)の分離培養菌株。
  2. 内生菌として植物にコロニーを形成する、請求項1記載の分離培養菌株。
  3. 植物を該分離培養菌株と接触させると、前記植物の葉、花、果実、及び/又は根に影響を及ぼす病気又は病原菌を抑制又は制御する、請求項1記載の分離培養菌株。
  4. 前記病気が、灰色カビ病、白色カビ病、褐色腐敗病、根腐病、及び/又はホモプシス(phomopsis)病である、請求項3記載の分離培養菌株。
  5. 前記病気が、ボトリティス・シネレア(Botrytis cinerea)、スクレロチニア・スクレロチオラム(Sclerotinia sclerotiorum)によって、及び/又はピシウム(Pythium)種、リゾクトニア(Rhizoctonia)、及び/又はフザリウム(Fusarium)の種によって引き起こされる、請求項3記載の分離培養菌株。
  6. 請求項1〜5いずれか1項記載のクロノスタキス・ロゼアf.ロゼア(Clonostachys rosea f.rosea)の分離培養菌株から得られた真菌胞子。
  7. 胞子形成に適した条件下において基材上で該分離培養菌株をインキュベートすることによって得られたものである、請求項6記載の真菌胞子。
  8. 請求項1〜6いずれか1項記載の分離培養菌株又は請求項6若しくは7記載の真菌胞子を含む製剤。
  9. 担体又は希釈剤をさらに含む、請求項8記載の製剤。
  10. 液状又は固体状である、請求項8又は9記載の製剤。
  11. 固体状であり、安定剤、吸湿剤、誘引剤、希釈剤、及び/又は凝固阻止剤の1つ以上をさらに含む、請求項10記載の製剤。
  12. 前記安定剤が粒状ケイ酸カルシウムである、請求項11記載の製剤。
  13. 前記吸湿剤が、乾燥材、シリカゲルの粒子又はビーズ、超吸収性ポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム、木屑、及び/又は粘土球を含む、請求項11記載の製剤。
  14. 前記誘引剤がミネラルを含む、請求項11記載の製剤。
  15. 前記ミネラルが、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、カルシウム、鉄、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、リン、チタン、マンガン、ストロンチウム、ジルコニウム、リチウム、ルビジウム、ホウ素、亜鉛、バナジウム、クロム、銅、イットリウム、ニッケル、コバルト、ガリウム、セシウム、スカンジウム、スズ、モリブデン、及び/又はカルシウム石灰岩の1つ以上を含む、請求項14記載の製剤。
  16. 前記誘引剤がDYNA−MIN(商標)を含む、請求項11記載の製剤。
  17. 製剤1グラム当たり1×10〜4×10の胞子を含む、請求項8〜16いずれか1項記載の製剤。
  18. 植物を、請求項1〜5いずれか1項記載の分離培養菌株、請求項6又は7記載の真菌胞子、或いは請求項8〜16いずれか1項記載の製剤と接触させることを含む、植物を生物農薬で処理する方法。
  19. 前記植物の健康、成長、及び/又は収量を向上させるための請求項18記載の方法。
  20. 前記植物の病気及び/又は病原菌の予防又は処置のための請求項18記載の方法。
  21. 前記植物のカビの成長を制御するための請求項18記載の方法。
  22. 植物の種子の発芽を向上させるための請求項18記載の方法。
  23. 前記病原菌が、ボトリティス・シネレア(Botrytis cinerea)、スクレロチニア・スクレロチオラム(Sclerotinia sclerotiorum)、ピシウム(Pythium)種、アルテルナリア(Alternaria)、モニリア(Monilia)、モニリニア(Monilinia)、コレトトリカム(Colletotrichum)、クラドスポリウム・リゾクトニア(Cladosporium Rhizoctonia)、ストレプトミセス(Streptomyces)、ディジメラ(Didymella)、及び/又はフザリウム(Fusarium)である、請求項20記載の方法。
  24. 前記病気が、灰色カビ病、白色カビ病、褐色腐敗病、根腐病、及び/又はホモプシス(phomopsis)病である、請求項20記載の方法。
  25. 前記植物が、ヒマワリ、キャノーラ、ブルーベリー、イチゴ、ブドウ、ピーマン、キュウリ、トマト、芝草、ブロッコリ、モモ、キャノーラの実生苗、大豆及び/又はススキから選択される、請求項18〜24いずれか1項記載の方法。
  26. 前記植物が温室で栽培される、請求項18〜25いずれか1項記載の方法。
  27. 前記植物を前記分離培養菌株、真菌胞子又は製剤と接触させることが、該植物に、噴霧、ミスト、浸漬、又は栄養液を適用することを含む、請求項18〜26いずれか1項記載の方法。
  28. 前記植物を前記分離培養菌株、真菌胞子又は製剤と接触させることが、昆虫媒介を含む、請求項18〜26いずれか1項記載の方法。
  29. 請求項1〜5いずれか1項記載の分離培養菌株、請求項6又は7記載の真菌胞子、或いは請求項8〜16いずれか1項記載の製剤の、生物農薬としての使用。
  30. 植物の健康、成長、及び/又は収量を向上させるための請求項29記載の使用。
  31. 植物の病気又は病原菌を処置又は予防するための請求項29記載の使用。
  32. 前記病原菌が、ボトリティス・シネレア(Botrytis cinerea)、スクレロチニア・スクレロチオラム(Sclerotinia sclerotiorum)、ピシウム(Pythium)種、アルテルナリア(Alternaria)、モニリア(Monilia)、モニリニア(Monilinia)、コレトトリカム(Colletotrichum)、クラドスポリウム・リゾクトニア(Cladosporium Rhizoctonia)、ストレプトミセス(Streptomyces)、ディジメラ(Didymella)、及び/又はフザリウム(Fusarium)である、請求項31記載の使用。
  33. 前記病気が、灰色カビ病、白色カビ病、褐色腐敗病、根腐病、及び/又はホモプシス(phomopsis)病である、請求項31記載の使用。
  34. 植物材料を、請求項1〜5いずれか1項記載の分離培養菌株、請求項6又は7記載の真菌胞子、或いは請求項8〜16いずれか1項記載の製剤と接触させることを含む、植物材料の腐敗を低減する方法。
  35. 前記植物材料が、果実、野菜又は穀物である、請求項34記載の方法。
  36. 前記植物材料に接触させることが、液状である請求項8〜10いずれか1項記載の製剤を用いて前記植物材料に噴霧、ミスト、又は浸漬を適用することを含む、請求項34又は35記載の方法。
  37. 前記植物材料が収穫されたものである、請求項34〜36いずれか1項記載の方法。
  38. 生物農薬の製造方法において、
    請求項1記載の分離培養菌株を基材に接種するステップ;及び
    真菌の成長に適した条件下で前記基材をインキュベートして、クロノスタキス・ロゼアf.ロゼア(Clonostachys rosea f.rosea)BVT Cr−7を生成するステップ
    を含む、方法。
  39. 前記真菌の成長に適した条件が、95%を超える相対湿度、及び20〜24℃の範囲の温度を含む、請求項38記載の方法。
  40. 前記基材が、滅菌基材である、請求項38又は39記載の方法。
  41. 前記基材を真菌の胞子形成に適した条件下でインキュベートするステップをさらに含む、請求項38又は39記載の方法。
  42. 前記真菌の胞子形成に適した条件が、相対湿度を50%未満に低下させることを含む、請求項41記載の方法。
  43. 胞子を前記基材から取り出して接種材料を作成するステップをさらに含む、請求項41又は42記載の方法。
  44. 前記胞子を担体又は希釈剤と混合するステップを含む、請求項43記載の方法。
  45. 前記植物が種子又は実生苗である、請求項18〜27いずれか1項記載の方法
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