JP2578243Y2 - 内燃機関用ピストンの加工装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この考案は、内燃機関用ピストン
の外周部に設けられたリング溝のシール面を平滑に研削
する加工装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来、内燃機関用のアルミニウム合金製
ピストンには、例えば特開昭６３−２８９３７０号公報
に記載されたものがある。このピストンでは、ピストン
本体母材の表面に、硬質アルマイト処理により陽極酸化
皮膜層が形成されている。

【０００３】

【考案が解決しようとする課題】一般に、内燃機関用ピ
ストンに使用されるアルミニウム合金材においては、そ
の化学成分中に多量のＳｉ（硅素）が含まれ、母材表面
に存在するＳｉ粒上には陽極酸化皮膜層を生成し難いと
いうアルマイトの性質上、前記公報記載の内燃機関用ピ
ストンのように母材表面に陽極酸化皮膜層を形成しただ
けでは、この陽極酸化皮膜層を緻密かつ均一に形成する
ことは困難であり、形成された陽極酸化皮膜層の表面は
不均一な凹凸となる性状の場合が多い。このため、陽極
酸化皮膜層の表面に形成された凹凸面がとりわけトップ
リング溝部のシール面、特に下面に存在すれば、機関運
転時、トップリング溝部の下面と、該溝部に挿入された
トップリングの下面との間に微小な間隙を多数発生させ
ることになり、その結果、初期ブローバイガスが増大し
たり、オイルシールのシール性能が低下するなどの不具
合があった。

【０００４】尚、アルマイト処理後、リング溝部のシー
ル面をバイトにより切削して平滑にすることも考えられ
るが、この方法では、芯出しの難しさから作業に多くの
工数を要してコストアップを招くなどの不具合がある。

【０００５】この考案は前記課題を解決するためになし
たもので、リング溝のシール面を短時間で容易に研削で
きる内燃機関用ピストンの加工装置を提供することを目
的とする。

【０００６】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、この考案に係る内燃機関用ピストンの加工装置は、
ピストン本体が嵌挿されるダミーシリンダと、ダミーシ
リンダに嵌挿されるピストン本体のリング溝シール面と
摺接可能なバイト片とからなる内燃機関用ピストンの加
工装置であって、ダミーシリンダは、嵌挿されるピスト
ン本体のリング溝とダミーシリンダ内周面との間の空間
に流体を吹き込み、リング溝内にリング溝に沿った周回
流を発生させる圧力流体供給孔及び圧力逃し孔を備える
と共に、バイト片は、周回流によってダミーシリンダの
内周面を案内としてリング溝内を周回移動し、リング溝
シール面を研削できることを特徴とするものである。

【０００７】

【作用】上記構成により、圧力流体供給孔を介して、バ
イト片が収容されたリング溝に圧力流体を供給すると、
リング溝内にはダミーシリンダの内面に沿った旋回流が
発生する。この旋回する圧力流体によりバイト片が圧送
され、バイト片はダミーシリンダの内面を案内としてリ
ング溝内で回転しながら、リング溝のシール面を研削す
る。

【０００８】

【実施例】以下、この考案の一実施例を図面を参照して
詳述する。

【０００９】図１（１）は装置を示す平面図、図１
（２）は（１）の縦断面図で、これら図において１は加
工すべきピストン本体、２はダミーシリンダ、３はバイ
ト片である。

【００１０】ピストン本体１はアルミニウム合金材製
で、冠面１ａ側の外周部には、トップリングやオイルリ
ング（何れも図示せず）を挿入するための複数のリング
溝４，５が形成されている。このピストン本体１の表面
には硬質アルマイト処理により陽極酸化皮膜層が形成さ
れている。

【００１１】また、ダミーシリンダ２は、前記ピストン
本体１を使用する内燃機関のシリンダとほぼ同一寸法に
形成されていて、該ダミーシリンダ２には、その内面２
ａに沿って径方向とほぼ直角方向に開口する圧力流体供
給孔６と圧力逃孔７とが各１個ずつ形成されている。こ
のダミーシリンダ２内には前記ピストン本体１が嵌挿さ
れている。

【００１２】バイト片３は前記リング溝４，５のうち、
例えばトップリング溝４に収容されており、該溝４のシ
ール面及び溝底面とダミーシリンダ２の内面との間に嵌
合するように、リング溝４，５の溝幅より若干薄く、か
つ溝深さより若干幅広で、該リング溝４，５とほぼ同曲
率の扇状に形成されている。このバイト片３は合成樹脂
製で、リング溝４，５のシール面との対向面には、砥粒
を接着剤で固定した砥石面３ａが形成されている。

【００１３】次に、このように構成されたピストン加工
装置の作用を説明する。

【００１４】まず、トップリング溝４にバイト片３を収
容した状態でピストン本体１をダミーシリンダ２内に嵌
挿した後、前記トップリング溝４がダミーシリンダ２に
形成された圧力流体供給孔６及び圧力逃し孔７に一致す
るようピストン本体１を位置決め配置して、装置の組立
てを完了する。この組立て状態でダミーシリンダ２の圧
力流体供給孔６を介してエア、またはオイルミストの混
入エアを所定の圧力でトップリング溝４に供給すると、
この圧力流体はダミーシリンダ２の内面２ａに沿って旋
回する旋回流となる。トップリング溝４内のバイト片３
は軽量であることと相俟って前記旋回する圧力流体によ
り圧送され、遠心力でダミーシリンダ２の内面２ａと摺
接してこれを案内として回転する。その際、バイト片３
の砥石面３ａがそれぞれトップリング溝４のシール面４
ａに摺接するから、該シール面４ａに形成した陽極酸化
皮膜層の凸部が研削される。

【００１５】なお、実施例ではダミーシリンダ２に圧力
流体供給孔６と圧力逃孔７を１個ずつ設けたが、これら
を複数個設けても良いことは言うまでもない。

【００１６】

【考案の効果】以上の通りこの考案は、シール面を研削
すべきリング溝内にバイト片を収容し、該バイト片をリ
ング溝に沿って回転させることができるから、ピストン
本体の芯出しを要することなくリング溝のシール面を研
削することができ、シール面の研削作業が短時間で能率
よく行えると共に、研削作業の工数低減により製造コス
トの低減も図れる。

【００１７】また、シール面の平滑化によりリング溝に
収容されたコンプレションリングとの密着性がよくなる
ため、初期ブローバイガスの低減や、オイルシールの性
能向上も図れる。

【図面の簡単な説明】

【図１】（１） この考案の一実施例になるピストンの
加工装置の平面図である。 （２） （１）に示すピストンの加工装置の断面図であ
る。

【符号の説明】

１ ピストン本体 ２ ダミーシリンダ ３ バイト片 ４，５ リング溝 ６ 圧力流体供給孔 ７ 圧力逃し孔

Claims (1)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 ピストン本体が嵌挿されるダミーシリン
   ダと、 ダミーシリンダに嵌挿されるピストン本体のリング溝シ
   ール面と摺接可能なバイト片とからなる内燃機関用ピス
   トンの加工装置であって、 ダミーシリンダは、嵌挿されるピストン本体のリング溝
   とダミーシリンダ内周面との間の空間に流体を吹き込
   み、リング溝内にリング溝に沿った周回流を発生させる
   圧力流体供給孔及び圧力逃し孔を備えると共に、 バイト片は、周回流によってダミーシリンダの内周面を
   案内としてリング溝内を周回移動し、リング溝シール面
   を研削できる ことを特徴とする内燃機関用ピストンの加
   工装置。