JP2572231B2 - 核燃料集合体 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明は、原子炉容器内に配置した燃料集合体入り炉
心を経て冷却材を上向きに上昇させる原子炉用燃料集合
体に関する。

各燃料集合体は、核燃料ペレツトの積層体を含み気密
のキヤツプにより閉じた金属製管状被覆によりそれぞれ
形成した燃料要素の束を備えた形式のものである。各燃
料要素は、タイロツドとこれ等のタイロツドに沿い互い
に間隔を隔てたスペーサ格子とにより相互に連結した端
部部材を備えた剛性構造内に保持してある。各燃料要素
は、所定の間隔で配置したスペーサ格子により正方形の
網目の節点に配分してある。

本発明は、ジルコニウム・ベース合金（Zirconium ba
sealloy）作られた金属被覆を持つ燃料要素を備えたPWR
と称する加圧水型原子炉の燃料集合体にとくに適してい
る。

前記したような燃料集合体の格子により若干の各別の
機能が果される。核分裂性物質を含む燃料要素を横方向
に支え突張りをかう作用をする。格子は又燃料集合体を
取扱い中、地震を原因とする事故中又は運転事故の間に
横方向衝撃に対し構造的保護作用を確実にする。又これ
等の格子は、炉心を経て上向きに循環する冷却材の流れ
を混合させる。冷却材のこのような混合は、核分裂性物
質を含む燃料要素により放出される熱の最適の連続的な
規則正しい抽出ができるようにし、冷却材の局所沸騰を
招く冷却材内の局部的温度上昇を避けるのに重要であ
る。すなわち適当な混合によつて冷却材に対し一般的な
エンタルピ増加を得ることができる。この冷却材は、局
所沸騰を避けると共に炉心からの最高の熱出力が得られ
るように炉心内にこの場合混合を伴わないで一層均質に
横方向に分布する。

所定の間隔を互いに隔て前記した機能を生ずるスペー
サ格子を備えた種種の形式の燃料集合体が従来から知ら
れている。PWR原子炉の従来の核燃料集合体は、この集
合体の頂部から下部まで規則正しい間隔で配置した格子
を備えている。仏国文書84 18 645号には、案内管の
ような細長い部材により相互に連結した２個の端部部材
と各案内管に沿い互いに間隔を隔て燃料要素の束のうち
の各燃料要素に対する支持区画を形成する複数個の格子
とを持つ骨組又は剛性構造を備えたこのような燃料集合
体について記載してある。前記の各燃料要素は規則正し
い網目の節点に配分してある。各格子は互いに異なる形
式を持ち、横方向衝撃に耐えるように作られ燃料集合体
に沿う冷却材の流れに乱れを生ずるようにフインを設け
た中間格子と、各燃料要素の支えを確実にし冷却材に対
し中間格子より一層小さい圧力降下を生ずる下部格子及
び上部格子とから成つている。

この解決法は多くの問題を解決する。しかし燃料集合
体のジルコニウム・ベース合金の被覆の特定の場合に、
本出願人は燃料要素の上部部分ではその下部部分におけ
るよりも一層著しく腐食の現われることを知つた。

局部腐食現象は、冷却材の温度と各燃料要素により局
部的に散逸する局部熱出力とに依存し、又炉心の頂部に
存在する冷却材の温度は炉心の底部におけるよりも必然
的に高くなることが知られている。これ等の２つの要因
すなわち冷却材の温度と炉心から局部的に放出される熱
出力とは、燃料要素の頂部及び下部の間の差動腐食を当
業界の熟練技術者に語るものであるが、この同じ論拠に
よりこの技術者はこの現象の避けられないことを確信す
るようになる。

本発明の目的は、原子炉炉心用の新規な燃料集合体を
提供しようとするにある。とくに本発明の目的は、各燃
料要素頂部における腐食を減らした燃料集合体を提供し
ようとするにある。

このために、頂部の腐食の加速の従来知られている原
因のほかに他の原因の存在することが分つてはいるが、
この現象の新らたな解析を行うことが先ず必要になつて
いる。この解析では、各燃料要素のさや状体すなわち被
覆に腐食に基づいて生成する酸化物層が燃料要素とこの
要素を囲む加圧水との間の熱交換を悪化させ従つて腐食
を増すという仮定を行うようになる。この酸化物層の厚
さの増加は燃料要素の下部におけるよりも温度の一層高
い頂部において一層早いということによつて、腐食現象
がさらに著しく増幅される。

この解析は、照射された燃料要素の被覆の表面にこの
被覆に沿う複数の位置で生成する酸化物層の厚さを計測
することにより証明されている。これ等の計測はうず電
流探針により行つた。これ等の計測では酸化物の厚さは
下部から上部に進むに伴い著しく増すことを示した。た
とえば解析された燃料被覆のうち40,000MWj/tuを越える
バーンアツプを受けた被覆に対しこの厚さは、この被覆
の下端部分で約18μｍであることが分り、この被覆の上
端部分では50μｍに達する。本出願人は又、酸化物厚さ
は金属及び酸化物間の境界面で燃料要素が原子炉内にあ
る間に温度上昇に伴つて増すことを知つた。従つて上端
部分における酸化物の増大した厚さにより金属及び酸化
物間の境界面における温度が上昇し従つて酸化物の生成
を加速する。

被覆の頂部における腐食増大のこの現象を減らすよう
に本出願者は、各燃料要素と冷却材すなわちこの燃料要
素の頂部におけるPWR内の加圧水との間に生ずる熱交換
を高めるようにした。このために本発明の目的は、とく
に前記したような燃料集合体を提供しようとするにあ
る。この燃料集合体ではこの集合体の上部に位置する各
上部格子を集合体の下部に位置する各下部格子より一層
小さい間隔に配置し、前記各上部格子により、従来の上
部格子の生ずる混合よりも冷却材の一層強い混合によつ
て前記上部格子を経て循環する冷却材流れ（加圧水）の
混合を高める。

このようにして、燃料集合体の頂部における燃料要素
の被覆の表面の腐食の出現を遅らせることができる。こ
のことは、燃料集合体の頂部における冷却材の混合を一
層良好にすると共に良好な状態の原子炉の運転に適合す
る許容できる圧力降下を保持することと、燃料集合体の
下部は不利な状態に置かないで、ジルコニウム・ベース
合金の被覆の頂部におけるこの被覆の腐食に基づく酸化
物の生成を遅らせ、熱交換を良好に保持することに基づ
くものである。

本発明は又、フインを設けた上部格子とフインを設け
てない下部格子とを持つ燃料集合体を提供するものであ
る。この集合体の上端部の近くに位置させた最後の格子
も又フィンを設けない。このことによって燃料要素の満
足すべき機械的保持ができる。

本発明の他の目的は、たとえば仏国文書FR86 02 50
1号に記載してある形式の格子のように比較的軽い構造
を持つ上部格子は提供しようとするにある。このような
格子は、周辺の帯材と少くとも２組の互いに平行な板材
とから成つている。一方の組の板材は他方の組の板材に
対し或る角度を挾みこれ等の２組により燃料要素を通す
ための区画を区切るようにしてある。互いに平行な板材
はこの燃料集合体の縦方向に沿い互いに間隔を隔てた少
くとも２つの床内に配分してある。前記各板材には、前
記の２つの各床内にそれぞれ互いに異なる向きを持つ半
分のフインを設けてある。

以下本発明核燃料集合体の実施例を添付図面について
詳細に説明する。

第１図の曲線は、公知の形式の燃料集合体の縦方向に
沿う計測場所に従つて変化する燃料要素被覆の表面のジ
ルコニア（酸化物）層の厚さの進展を示す。各格子は従
来の控えに沿つて互いに規則正しい間隔を隔てて位置さ
せてある。

燃料要素の下部の端部と計測の行われる要素部分との
間の距離はOx軸に示す。又酸化物層の計測厚さはOy軸に
示す。燃料要素に沿い縦方向に互いに間隔を隔てた各格
子の位置はＡないしＨで識別した上下方向のバーにより
第１図に示してある。格子Ａは燃料集合体の下端部従つ
て調査する燃料要素の底部キヤツプに最も近く位置する
格子である。

本出願人の実施した計測から得られる第１図の曲線は
次のことを示す。すなわち 酸化物層は、格子Ｅ及びＨ間の方がこの集合体の下部
に位置する各格子間におけるよりも実質的に厚い。

酸化物層の厚さは、各格子自体の前方だけでなく又こ
れ等の格子のすぐ下流側でも、各格子のすぐ上流側区域
の被覆部分に認められる厚さに比べて一層薄い。

最後に又本出願人の観察によれば格子の位置に従つて
この作用は格子の下流側約10ないし30cmにわたつて認め
られる。ジルコニアすなわち酸化物層は、格子間空間に
位置する被覆部分で厚くなりこの間隔の中間部のすぐ後
でピークに達する。最高のピークは格子Ｆ及びＧの間に
ある。

第２図は、案内管５のような細長い部材により互いに
連結した下端部３及び上端部４を持つ骨組を備えた燃料
集合体１を線図的に示す。

この燃料集合体１には下部格子6,7,8,9及び上部格子1
0,11,12,13,14,15,16を設けてある。集合体１の上半部
に位置する互いに隣接する２つの上部格子間の距離は、
集合体１の下半部に位置する互いに隣接する２つの下部
格子間に存在する距離より短かい。図示の特定の例では
この集合体は７個の上部格子及び４個の下部格子を備え
ているがこれ等の個数は限定するものではない。

７個の上部格子を図示のように位置させると、この集
合体の上部では従来の燃料集合体により得られる混合よ
りも冷却材を一層よく混合することができる。このこと
は、原子炉から散逸する同じ熱出力と集合体からの冷却
材の同じ放出温度とに対していえる。この場合被覆の温
度が一層低くなり従つてこの部分における酸化物層の厚
さの生長を遅くすることができる。第１図の格子Ｅ及び
Ｈの間の部分の燃料要素の腐食の進行は従つて遅くな
る。

本発明の有利な実施例では上部における格子の個数を
倍にしてある。各燃料要素はたとえば、軸線方向に25cm
ごとに位置させた格子によりつないで支えてある。

第３図は本発明燃料集合体の上部格子10を線図的に示
す。格子10は、各燃料要素を保持し間隔を隔てるように
板材23から成る互いに平行な２つの床21,22を備えてい
る。各板材23には混合フイン24を設けて板材23の支持機
能のほかに流体の流れを混合する機能を果たす。

第４図は２つの床21,22を持つような混合格子を示
す。各床21,22は棒材又はすみ部棒25により互いに接合
してある。各床21,22は互いに異なる２方向に取付けた
板材26を備えている。第３図及び第４図に示すように板
材から成る各床は、燃料要素27の受入れ区画が２つの床
に属する板材によつて初めて完全に仕切られるという意
味で不完全であることが分る。

各上部格子は仏国文書FR86 02 501号に記載してあ
る形状のものであるが、本発明燃料集合体には他の形式
の格子も又適している。

第５図及び第６図は、単一の床を持つ上部格子の１実
施例を示し、又格子30を若干の案内管に固定する締付け
ブレード31を示す。

格子30は２個所の高さ位置で板材35の各表面に位置さ
せた突出部又はボス33,34で燃料要素32を支える機能を
果たす。格子30は、たとえば仏国特許願FR8416803号明
細書に記載してあるようなフイン36を持つ集合体を経て
上向きに流れる冷却材の流れに乱流を導入する。

格子の剛性をさらに増すように、少くとも若干の板材
を縦方向の強め折曲げ部38を持つ突出部分37により延長
するのが有利である。

第７図は本発明集合体に使うのを有利とする下部格子
を示す。これ等の格子はみぞ穴41（第８図）を形成した
２組の板材40を備えている。相互に組付けると各板材40
はたとえば電子銃による溶接部42によつて固定する。各
板材40は型打ちして板材の各側部を第７図の穴すなわち
区画43,44のような互いに隣接する２つの空所内に突出
させる突出部を形成する。これ等の突出部により第７図
の燃料要素45のような核分裂性物質から成る要素を横方
向に支える。

第７図、第８図及び第９図に示した格子は、区画の各
表面に単一のボスを備えている。区画43に対応するボス
は第８図及び第９図でボス46として示してある。２つの
表面のボスは２つの直交表面に設けたボスとは異なる高
さ位置にある。核分裂性物質から成る各要素45は従つ
て、４つのボスとの恒久的な接触により横方向に支えて
ある。各ボス46には、案内管48（第７図）の占める区画
を仕切る壁の場合を除いて反対方向に向いたボス47を協
働させてある。下部格子にはフインを設けてない。従つ
て下部格子は流体流れの混合にはわずかしか関与しなく
て極めてわずかな圧力降下を伴うだけである。

本発明は前記した実施例に限定するものではない。本
発明は又とくに、各格子が多角形で非長方形の横断面を
持つ集合体と、下部格子にも混合フインを設けた集合体
と、上部格子又は下部格子或はこれ等の両方の格子が相
互に異なる集合体とを含むものである。

以上本発明をその実施例について詳細に説明したが本
発明はなおその精神を逸脱しないで種種の変化変型を行
うことができるのはもちろんである。

【図面の簡単な説明】

第１図は公知の規則正しい間隔を互いに隔てた格子を持
つ従来の燃料集合体に認められるように照射された燃料
のジルカロイ被覆の酸化物層のこの被覆に沿う厚さの進
展状態の線図である。第２図は本発明により互いに間隔
を隔てた格子を持つ加圧水型原子炉用の燃料集合体の１
実施例の側面図、第３図は、本発明集合体に使うフイン
を備えた２つの板材の床を持つ上部格子の斜視図、第４
図は第３図の板材から成る２つの床を持つ上部格子のフ
インの配置例を示す斜視図である。第５図は本集合体に
設ける上部格子の構成板材の実施例を示す縦断面図、第
６図は第５図の部分平面図である。第７図は本集合体の
区画を仕切る単一の床を持つ格子の板材の交差部の１例
を示す平面図、第８図は本集合体の下部格子の壁の２つ
に形成した突出部を示す斜視図、第９図は第８図のIX−
IX線に沿う断面図である。 １……燃料集合体、３……下端部材、４……上端部材、
6,7,8,9……下部格子、10,11,12,13,14,15,16……上部
格子、24……フイン、32……燃料要素

フロントページの続き (72)発明者 アンドレ、コルマイエ フランス国リヨン69002、リユー・ド・ ラ・ブールス 37番 (56)参考文献 特開 昭51−111593（ＪＰ，Ａ) 特開 昭60−158381（ＪＰ，Ａ) 実開 昭56−124893（ＪＰ，Ｕ) 実開 昭61−154589（ＪＰ，Ｕ) 特公 平５−16759（ＪＰ，Ｂ２)

Claims (3)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】底部から上向きに流通する冷却材によって
   冷却される炉心のための原子炉用燃料集合体において、 ジルコニウムベース合金被覆を持つ燃料要素の束を備
   え、前記束に沿って配分され、前記燃料要素を横切り、
   この燃料要素に接触して支えられたスペーサ格子によっ
   て、前記燃料要素が所定のピッチを持つ配列に保持さ
   れ、 前記スペーサ格子が、 前記燃料集合体の下部部分の前記燃料要素に沿って相互
   に等しい間隔を置いて配分され、冷却材混合フィンを持
   たない相互に同一の下部格子（6,7,8,9）と、 前記下部格子の間隔より小さいが互いに等しい間隔を置
   いて配分された上部格子（10,11,12,13,14,15,16）と、
   から成り、 前記上部格子は、最上部の上部格子（16）を除いて相互
   に同一であり、冷却材混合フィンを備え、最上部の上部
   格子に冷却材混合フィンを設けないことにより、前記上
   部格子の構造及び配置により前記ジルコニウム・ベース
   合金被覆の上端部分における腐食を制限し、前記燃料要
   素の前記ジルコニウム・ベース合金被覆の上端部分と前
   記冷却材との間で前記上部格子により生ずる増大した熱
   交換に基づく前記ジルコニウム・ベース合金被覆の上端
   部分と下端部分との間の温度勾配を低減するようにした
   原子炉用燃料集合体。
2. 【請求項２】前記上部格子（10,11,12,13,14,15,16）を
   15ないし30cmの範囲の距離だけ相互に隔てた特許請求の
   範囲第（１）項記載の原子炉用燃料集合体。
3. 【請求項３】前記上部格子に、周辺帯材と、少くとも２
   組の互いに平行な板材（23,26）とを設け、一方の組の
   前記板材が、他方の組の前記板材に対し斜めになり、前
   記板材の組が前記燃料要素用の通路区画を形成し、前記
   の互いに平行な板材を、前記燃料集合体の縦方向に互い
   に間隔を置いた少くとも２つの床（21,22）に配分し、
   前記互いに平行な板材に、前記２つの床（21,22）にお
   いて互いに異なる向きを持つフィンを設けた特許請求の
   範囲第（１）項記載の原子炉用燃料集合体。