JP2564309Y2 - 車室内騒音の低減装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本考案は車室内騒音の低減装置に関し、特に周期的な
音源を有する自動車等の車室閉空間内の低周波の騒音を
アクティブに低減する装置に関するものである。

〔従来の技術〕

自動車等の車室内の騒音は、閉空間を形成する車室が
一定の条件下で共振現象を起こすことに困るものであ
り、その原因たる起振力はエンジンの回転振動成分等に
よるものと考えられている。

このような騒音を低減させるための対策として当初採
られていた手段は、パッシブ（受動的）なものであり、
例えば振動源であるエンジン系に対して結合剛性を向上
させ、伝達系に対しては各マウントのチューニングを行
い、車室内の発音体に対してはパネル剛性アップを図
り、更に共振対策として、マスダンパー、ダイナミック
ダンパー等を共振部分に施していた。

このようなパッシブな手段では、コストの上昇及び重
量の増大を招くと共に、その効果は不十分なものであっ
た。

このため、実願平１−139310号において第３図に示す
ようにアクティブに車室内騒音を低減できる装置が提案
されている。

即ち、同図において、１は車室、２は自動車のエンジ
ン、３はエンジンの騒音源パラメータとしてのエンジン
の回転に同期した基準信号を検出する手段としての振動
センサ又はエンジン回転数センサ、４は運転者の耳元付
近に設置されて車室内騒音レベルを検出するマイク、５
はセンサ３及びマイク４の出力により所定の演算を行う
コントローラ、６は車室内騒音の定在波の腹となる位置
に設置されてコントローラ５の演算した出力を車室内に
発するスピーカである。

ここで、センサ３としてエンジン振動センサを用いる
場合には、コントローラを適応ディジタルフィルタで構
成し、適応アルゴリズムとしてLMS（Least Mean Squar
a）法を用いることができる。

即ち、第４図に示すように、振動センサ３で検出され
るエンジン振動Ｘ（ｎ）を各サンプル毎に遅延素子Z^-1
で遅延させ、ｎ個のフィルタ（タップ）係数ｈ（０）〜
ｈ（ｎ−１）を各遅延素子Z^-1の出力に対し乗算する。

この場合の各フィルタ係数はLMSアルゴリズム、即
ち、 ｈ（ｉ＋１）＝ｈ（ｉ）＋２μｅ（ｎ）Ｘ（ｎ−ｉ） に従ってサンプル毎に更新される。但し、ｉ＝０…n,μ
はステップサイズである。

そして、このようなフィルタ係数を各サンプルのエン
ジン振動Ｘ（ｎ）に掛け且つ加算するという畳み込み演
算を行うことにより車室内の定在波の腹部に設置された
スピーカ６への出力信号ｙ（ｎ）が求められる。

このスピーカ出力ｙ（ｎ）を、実際にドライバーの耳
元で観測される音圧Ｙ（ｎ）から差し引くことにより、
マイク４からの出力ｅ（ｎ）＝Ｙ（ｎ）−ｙ（ｎ）が発
生され、これに基づいて再びLMSアルゴリズムによりフ
ィルタ係数を更新すれば、徐々に車室内の振動系の逆伝
達関数Ｇを同定して行うことができ、マイク出力ｅ
（ｎ）を最小値に収束させることができる。

〔考案が解決しようとする課題〕

しかしながら、このような従来の車室内騒音の低減装
置においては、マイクを用いているので、マイク内部の
金属膜が車室内の環境の変化、即ち湿度、温度、及び気
圧の変化に弱く、また経時変化を受け易く且つゴミが付
着し易いという特質があり、更には、車両のウインドウ
の開閉による風音や、オーディオ等の外乱ノイズ等の影
響を受け易いため、最適な適応動作が行えないという問
題点があった。

従って、本考案は、マイクを用いずに車室内騒音を低
減させる装置を実現することを目的とする。

〔課題を解決するための手段〕 上記の目的を達成するため、本考案に係る車室内騒音
の低減装置では、エンジンの回転に同期した基準信号を
検出する手段と、該エンジンを起振源とする車体の振動
を検出する振動センサと、スピーカと、該基準信号に基
づき該振動センサへの入力が最小となるように該スピー
カの出力を適応制御するコントローラとを備え、車室内
騒音の定在波の腹となる車体位置に該スピーカと該振動
センサとを対向して設けたものである。

また、本考案では、スピーカの代わりに、制御用アク
チュエータとして、振動発生装置を用いることもでき
る。

〔作用〕

自動車（乗用車、小型トラック等）の車室の形状は車
両の構造上の制約の関係から大体は決まっており、エン
ジンを起振源とする車室内騒音は車室内の寸法によって
決まる共鳴現象で発生する低周波の定在波によって引き
起こされる。

定在波モデルは第１図（ａ）に示すように閉じた筒状
の空間の両端に振幅の大きい半波長の腹の部分があり、
中央部には振幅零の節が存在する。

このような定在波が共鳴によって車室１内に発生した
場合、同図（ｂ）に示すように、一方の腹は運転者10の
頭部部分又は車体パネル部分に発生しており、他方の腹
は対角位置の足元の部分に発生している。

従って、同図（ｂ）に示すように、車室１内に生じる
定在波の２つの腹部の一方にスピーカ６を設置し、他方
の腹部に対応する車体位置に、第３図に示したマイク４
の代わりにエンジン２を起振源とする車体の振動を検出
する手段４を設置し、エンジン２の回転に同期した基準
信号を検出する手段３からの基準信号に基づき、該振動
検出手段４への入力が最小となるように該スピーカ６の
出力をコントローラ５が制御すれば、車内のドライバの
耳元と同等の大きな振幅の車室内騒音を打ち消すことが
できる。

言い換えると、車体を励振させるエネルギーをスピー
カによる干渉効果で最小にするためのキャンセル評価情
報をフィードバック情報として取るものとしては原理的
にマイクでも振動検出手段でも同等の効果が得られるの
であるから、耐環境性に優れた振動検出手段の方を用い
た方が良いことになる。

また、上記のように車室内騒音の評価に振動検出手段
４を用いているので、車室内騒音の低減のための制御用
アクチュエータとしてスピーカの代わりに振動発生装置
を用いれば、構造物の振動についてもこれを制御対象と
してアクティブな振動制御が可能となる。

〔実施例〕

第２図に本考案に係る車室内騒音の低減装置に用いる
振動検出手段としての振動センサを取り付ける場合の実
施例を示したもので、同図（ａ）の場合は、車両のフロ
ントウインドウ上部に取り付けたもので、この取り付け
位置が車室内騒音の定在波の腹部に相当している。ま
た、同図（ｂ）の場合は、車室１内のフロントウインド
ウ11の上部に取り付けたもので、この取り付け位置が車
室内騒音の定在波の腹部に相当している。また、同図
（ｂ）の場合は、同様に車室内騒音の定在波の腹部に相
当する車室１外のリアガラス又はリアパネル12に振動セ
ンサ４を取り付けている。尚、このように振動センサ４
は車室内騒音の定在波の腹部に相当する車体位置であれ
ば、車室の内外は問題にならなくなる。

尚、このような振動センサは圧電素子を使用したセラ
ミック系であるので、必然的な湿度変化、温度変化等の
耐環境性に優れている。

〔考案の効果〕

以上のように、本考案に係る車室内騒音の低減装置に
よれば、車室内騒音の定在波の腹となる車体位置にスピ
ーカと該スピーカに対向した振動検出手段とを設けたの
で、車室内の環境の湿度や温度等の環境の変化に強いと
いう効果が得られる。

また、振動検出手段は車体に取り付け易く、更には見
えない所（車室外）にも取り付けることができることと
なる。

更に、本考案では、スピーカの代わりに、制御用アク
チュエータとして振動発生装置を用いることもでき、こ
の場合には、制御対象を構造物の好ましくない振動とす
ることができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は、本考案に係る車室内騒音の低減装置の構成
図、 第２図は、本考案に係る車室内騒音の低減装置に用いる
振動検出手段の取り付け実施例を示した図、 第３図は、従来の車室内騒音の低減装置の一実施例を示
した構成図、 第４図は、コントローラによる適応制御を説明するため
の図、である。 第１図において、１は車室、２はエンジン、３はエンジ
ン振動センサ（回転数センサ）、４は振動センサ、５は
コントローラ、６はスピーカをそれぞれ示す。 図中、同一符号は同一又は相当部分を示す。

フロントページの続き (72)考案者 山口 一実 神奈川県藤沢市土棚８番地 株式会社ト ランストロン藤沢事業所内 (56)参考文献 特開 昭58−57193（ＪＰ，Ａ) 特開 昭63−170699（ＪＰ，Ａ) 特開 平４−11542（ＪＰ，Ａ)

Claims (2)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】エンジンの回転に同期した基準信号を検出
   する手段と、該エンジンを起振源とする車体の振動を検
   出する振動センサと、スピーカと、該基準信号に基づき
   該振動センサへの入力が最小となるように該スピーカの
   出力を適応制御するコントローラとを備え、車室内騒音
   の定在波の腹となる車体位置に該スピーカと該振動セン
   サとを対向して設けたことを特徴とする車室内騒音の低
   減装置。
2. 【請求項２】該スピーカの代わりに、制御用アクチュエ
   ータとして振動発生装置を用いたことを特徴とする請求
   項１に記載の車室内騒音の低減装置。