JP2560925Y2 - 筆記具 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、ホワイトボードマーカ
ーやフェルトチップペン等の筆記具に関し、特に、温度
や気圧変化等の影響を受けずに常に筆記状態が良好な筆
記具に関する。

【０００２】

【従来の技術】ホワイトボードマーカー等の筆記具で
は、インクタンク内に中綿等の多孔性材料を充填し、こ
の多孔性材料にインクを毛細管力によって保持させてい
たが、保持できるインクの量が少なくなってしまうと共
に、速く筆記すると多孔性材料からフェルトチップへの
インクの供給量が少ないので、筆跡がかすれる等の不具
合があった。

【０００３】このため、特開平３−１３３９６号公報に
開示されているように、筒状のインク貯蔵室内に液体状
のインクを直接貯蔵し、このインク貯蔵室内にインクと
空気とを区画する摺動自在なスライド栓を挿入すると共
に、インク貯蔵室の先端に配設したペン体との間に、ペ
ン体方向のみインクの流れを許容する弁座を有する筒状
の弁体を配設し、更に、弁体とペン体との間に副インク
室を形成した筆記具が提案されている。

【０００４】

【考案が解決しようとする課題】この構成における筆記
具では、中綿が割愛されているのでインク貯蔵室内に多
量のインクを貯蔵することができ、また、筆記によるイ
ンク消費量に応じてインク貯蔵室内をスライド栓が摺動
し、弁体が開弁して消費したインク量を補充するので、
筆跡がかすれることがないという利点がある。

【０００５】しかしながら、この筆記具を気温の高い場
所に放置したり、輸送に際して気圧が変化する状況に置
かれると、インク貯蔵室内のインク成分の揮発分が蒸発
し、又は、インクが膨張収縮してスライド栓を尾栓側に
押し上げ、常温や大気圧に戻った際にスライド栓が移動
した位置に留まった状態になり、インクとスライド栓の
間に空気が侵入して筆記ができなくなるという不都合を
生じる。尚、尾栓には空気孔が穿設され、筆記に伴うイ
ンクの消費によるスライド栓の下降を補償している。

【０００６】そこで本考案は、気温が大きく変化したり
気圧が変化したとしても、スライド栓がインクの接触面
から離れないようにした筆記具を提供することを目的と
する。

【０００７】

【課題を解決するための手段】この目的を達成するため
に本考案は、内部にインクが収納されるインク貯蔵室を
形成する筒状のインクタンクと、前記インクタンクの前
方に配設され、軸方向に摺動自在なペン体と、前記イン
ク貯蔵室内に配設されインクと空気とを区画し摺動自在
なスライド栓と、前記ペン体とインク貯蔵室の間のイン
クタンク内に配設され、インク貯蔵室と前記ペン体との
間を遮断し、ペン体がインク貯蔵室に指向して圧入され
た時に、インク貯蔵室とペン体とを連通させるダイアフ
ラム部材と、前記インクタンクの前部に一端が取着され
該インクタンクを包囲する筒状のケースと、前記ケース
の後端を密封し前記インクタンクの開放端に挿嵌される
尾栓と、前記ペン体の先端を覆いケースに嵌着されるキ
ャップと、を備え、前記インクタンクとケースとの取着
部分にキャップ内に開口する空気通路を形成した。

【０００８】

【作用】例えば、気温が高くなるとインクの貯蔵室内の
インク中の揮発分が蒸発しスライド栓を尾栓側に押し上
げようとするが、インクタンクとケースの間の空間に密
封された空気も気温の上昇に伴って膨張し、その圧力が
スライド栓をペン体側に押圧するので、スライド栓は均
衡して動くことがない。

【０００９】

【実施例】図１に示す本考案の筆記具１は、インク貯蔵
室３が形成されたインクタンク２と、該インクタンク２
の一方端に配設されたペン体４と、インクタンク２の他
方の内部にインクと空気とを区画する摺動自在なスライ
ド栓５と、インクタンク２内に配設されペン体４とイン
ク貯蔵室３との間の通路を開閉するダイアフラム部材６
と、前記インクタンク２を包囲するケース７と、ペン体
４を覆いインクタンク２とケース７に嵌着されるキャッ
プ８とからなる。

【００１０】インクタンク２は、例えば、ポリプロピレ
ン等の合成樹脂で成形された適宜の長さを有する透明な
円筒状を呈し、その内部の空間部分にインク貯蔵室３が
形成される。該インク貯蔵室３の後端部側にスライド栓
５が液密且つ軸方向に摺動自在に挿嵌されている。

【００１１】スライド栓５は、前後に環状のシール部
９，10が伸延する断面がＨ形を呈し、シリコンゴム等の
弾性部材で成形され、シール部９，10がインク貯蔵室３
の内周面に密着して液密を保つ。そして、スライド栓５
の後方のインクタンク２内にパラフィン等の潤滑材が塗
布され、スライド栓５の摺動を容易にしている。

【００１２】インクタンク２の前方端にペン体４が配設
される。ペン体４は繊維を高密度に固めた芯12と、該芯
12を保持しインクタンク２の先端内を摺動自在な芯ホル
ダー13と、該芯ホルダー13内に画成された中心穴14から
なり、芯ホルダー13の中央軸方向に穿設された中心穴14
の先端の開口に芯12が挿入され、細径に突出した後端近
傍の側壁に、中心穴14と連通し且つ、軸線と直交する方
向に孔部15が穿設されている。

【００１３】前記芯ホルダー13の細径となった後端を包
囲してダイアフラム部材６がインクタンク２内に固着さ
れ、ダイアフラム部材６の内周壁が孔部15を塞いでい
る。

【００１４】前記インクタンクの外周に空間を形成して
断面が三角形状のケース７が配設される。該ケース７の
先端はインクタンク２の先端近傍に嵌着され、この嵌着
部分に複数の空気通路16が画成されている。また、ケー
ス７の後端はパッキン17を介して尾栓18が気密に取着さ
れ、インクタンク２とケース７内の空間とスライド栓５
の後方部分が連通している。

【００１５】ペン体４を覆いケース７の先端に嵌着する
キャップ８は二重構造を有し、内周壁20の先端がインク
タンク２の先端と容着して、キャップを被冠した場合
に、インクタンク２とケース７内の空間と、キャップ８
の内周壁20と外周壁との間の空間が空気通路16を介して
連通する。

【００１６】以上のような構成からなる筆記具１の作用
を詳細に説明する。

【００１７】キャップ８を外して、芯１２を筆面に押圧
すると、筆圧によって芯ホルダー１３がインクタンク２
内に指向して摺動し、芯ホルダー１３の後端部分によっ
てダイアフラム部材６を内部側に押し曲げると共に、イ
ンク貯蔵室３内を加圧してスライド栓５を尾栓１８側に
若干摺動させる。更に、筆圧が加わると、芯ホルダー１
３端部の孔部１５がダイアフラム部材６の内周壁から離
間し、インク貯蔵室３と中心穴１４とが連通して加圧さ
れたインク貯蔵室３からインクが中心穴１４に流れる。
インクの減少によって、スライド栓５がインク貯蔵室３
内をペン体４側に摺動する。

【００１８】インク貯蔵室３内のインクの減少によって
スライド栓５がペン体４側に摺動すると、ケース７に画
成した空気通路16から空気がケース７内に入りスライド
栓５の尾栓18側の負圧を解除する。

【００１９】筆圧が解除されると、ダイアフラム部材６
の弾発力で芯ホルダー13を前方に摺動させて初期状態に
し、孔部15をダイアフラム部材６の内周壁に密着させて
インクの流通を止める。

【００２０】筆記終了後キャップ８を被せると、内周壁
20がインクタンク２の先端と嵌着して、芯12からのイン
クの揮発分の蒸発を飽和すると共に、外周壁がケース７
と嵌着して、ケース７内の空気を密封する。従って、高
温の場所に筆記具が置かれた場合に、インク貯蔵室３内
のインクが熱膨張してスライド栓５を尾栓18側に押そう
とするが、同時に、ケース７内に密封された空気も膨張
してスライド栓５をペン体４側に押す為、圧力が平衡し
スライド栓５が動くことはない。

【００２１】

【考案の効果】以上のように本考案は、インク貯蔵室を
形成したインクタンクに空気通路を画成しながら一端が
取着され且つ、該インクタンクを包囲するケースに、前
記空気通路と連通する部屋が形成されたキャップを嵌着
するようにしたので、高温場所に放置された時や輸送中
に気圧が変化した時でも、インク貯蔵室内のインク成分
の揮発によるスライド栓の押圧力とケース内に密封され
た空気の膨張によるスライド栓の押圧力とが平衡して、
スライド栓の移動を防ぎ、インク貯蔵室内に空気の流入
防止を図ることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案に係る筆記具の縦断面図である。

【符号の説明】

１ 筆記具 ２ インクタンク ３ インク貯蔵室 ４ ペン体 ５ スライド栓 ６ ダイアフラム部材 ７ ケース ８ キャップ 13 芯ホルダー 14 中心穴 15 孔部 16 空気通路 18 尾栓 20 内周壁

Claims (2)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 内部にインクが収納されるインク貯蔵室
   を形成する筒状のインクタンクと、 前記インクタンクの前方に配設され、軸方向に摺動自在
   なペン体と、 前記インク貯蔵室内に配設されインクと空気とを区画し
   摺動自在なスライド栓と、 前記ペン体とインク貯蔵室の間のインクタンク内に配設
   され、インク貯蔵室と前記ペン体との間を遮断し、ペン
   体がインク貯蔵室に指向して圧入された時に、インク貯
   蔵室とペン体とを連通させるダイアフラム部材と、 前記インクタンクの前部に一端が取着され該インクタン
   クを包囲する筒状のケースと、 前記ケースの後端を密封し前記インクタンクの開放端に
   挿嵌される尾栓と、 前記ペン体の先端を覆いケースに嵌着されるキャップ
   と、 を備え、前記インクタンクとケースとの取着部分にキャ
   ップ内に開口する空気通路を形成したことを特徴とする
   筆記具。
2. 【請求項２】 前記キャップの内部に小容積の空間を画
   成し、該空間と前記空気通路を連通したことを特長とす
   る請求項１記載の筆記具。