JP2560560B2 - 熱型光検出器およびその支持台の製造方法 - Google Patents

熱型光検出器およびその支持台の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】 本発明は、例えばフーリエ変換
赤外分光分析器(FT-IR) に使用される高感度赤外線検出
器などの熱型光検出器、およびその検出器の支持台の製
造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】 従来、FT-IR 用の室温動作型の高感度
赤外線検出器としては、焦電型赤外線検出器が用いられ
ており、その中でも焦電係数が大きい、TGS(triglyc
ine-sulphate) 系のD-TGS,LA-TGSやDLA-TGS などの焦電
結晶を用いたものが多く使用されている。ところが、こ
れらのTGS系結晶の臨界温度Tcは、最も高いDLA-TG
S においても60℃程度であり、その感度が安定する結
晶温度範囲は、24〜36℃と非常に狭い。このことか
ら、焦電結晶の温度制御は不可欠となるが、焦電型赤外
線検出器も熱型光検出器で、焦電結晶への赤外線(熱
線)入射による微小な温度変化を検出しているため、焦
電結晶そのものを直接に温度調節することは、感度の低
下やノイズの混入等の悪影響をまねくため、あまり好ま
しくない。
【0003】そこで、従来では、FT-IR の装置全体とし
ての性能が低下するが、FT-IR の光学系を暗く絞って、
焦電検出器への入射光量が最大時でも、結晶温度が36
℃以上にならならいようにするか、あるいは、焦電検出
器に対して少し離れた場所から温度調節を行っている。
このような温度調節の構造としては、従来、例えば図5
に示すように、焦電検出器51の封入体51aの側壁周
囲に温度調節媒体52を密着させ、かつ、その温度調節
媒体52の他端側には、温度調節手段としてのペルチェ
素子53を配置して、焦電検出器51の焦電結晶の温度
を間接的に調節する構造がある。
【0004】また、使用温度範囲の広い焦電結晶を用い
た場合には、素子の温度が少々高くなっても焦電結晶か
らの熱拡散が少ないほど感度が良好となるため、焦電検
出素子の受光部からの熱拡散を抑えることを目的とし
て、例えば図6 (a) に示すように、焦電素子Pを4本
足の架台61の上に載せることにより、受光部(電極E
の形成部)の熱拡散を防ぐ構造のものや、あるいは同図
(b) に示すように、焦電素子Pの支持基板71に、エ
ッチングによって開口部71aを形成して、受光部の下
方を空洞として熱拡散を防止する構造のものが提案され
ている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】 ところで、上記の図
5の温度調節構造においては、製作・組立が比較的容易
であるものの、焦電素子自体の検出器の封入体51aと
の間の熱伝導度や熱時定数等が検出器ごとに異なる点、
さらに焦電検出器51およびペルチェ素子53と、それ
らを結合する媒体52との間における熱的接触(熱抵
抗)が、それぞれの熱接触面積が大きいことから、組立
ごとにばらついて再現性が悪いといった点があり、これ
らのことから、常に安定した高精度の温度調節を望めな
いという問題があった。
【0006】一方、図6 (a) ,(b) に示した構造は、
熱拡散を極力おさえることを目的としており、素子温度
は考慮していなかった。また図6 (b) に示した構造に
よると、基板71としてMgO等を使用して、その基板
に、フォトリソグラフィの技術により開口部71aのパ
ターンを描き、リン酸エッチングによって開口部を開口
するので、開口部以外はエッチングされないように、図
7に示すように、ワックスW等で保護することが必要
で、その保護工程が複雑になり、またエッチング後の開
口部の寸法精度もあまり良くない。
【0007】また、図6 (a) に示した構造によれば、
焦電素子Pの形状寸法が高々2mm角程度であるため、極
めて小さな架台を製作する必要があり、しかも4本の架
台61を所定の位置に配置した状態で、10μmオーダ
の薄い結晶体を架台61の上に載せる作業は、ほぼ不可
能に近く実現化が難しい。本発明は、上記の従来の問題
点に鑑みてなされたもので、その第1の目的は、焦電素
子等の検出素子を温度調節を高精度に行うことが可能な
構造の熱型光検出器を提供することにある。また、第2
の目的は、その熱型光検出器の支持台を、高精度でかつ
再現性よく製造することのできる方法を提供することに
ある。
【0008】
【課題を解決するための手段】 上記の第1の目的を達
成するための構成を実施例に対応する図1,図2を参照
しつつ説明すると、本発明は、熱型光検出素子1と、こ
の検出素子1を保持し、かつ、冷却媒体(例えばペルチ
ェ素子4が密着されたハイブリッドIC基板3)に熱的
に接続する感光性ガラス製の支持台2を有し、その支持
台2は、検出素子1から冷却媒体3への熱伝導経路の熱
伝導量が、当該熱型光検出素子1に最大光量の光が定常
的に入射した状態で、素子温度の最大値を規定値に制限
できる容量となるような形状に加工されていることによ
って特徴づけられる。
【0009】また、第2の目的を達成するために、本発
明方法では、実施例に対応する図3に示すように、製造
すべき支持台の高さに応じた厚さの感光ガラス板31
aを、その支持台の水平断面形状に対応した遮光部が形
成されたマスクMを用いて露光し (a) 、この後に、そ
のガラス板の片面の所定位置に、例えば、焦電素子Pを
配置し、かつ、その片面のみをワックスWによって保護
した状態で (c) 、感光部をエッチングにより除去する
(d) 。
【0010】
【作用】 まず、本発明方法によると、基本的には、エ
ッチングにより支持台を製造するので量産が可能で、し
かも、感光性ガラスを素子基板として用いることによ
り、基板にフォトレジストをパターニングするといった
煩雑な工程が不要となり、工程の簡略化をはかることが
できる。ここで、感光ガラスは、感光部のエッチングレ
ートが、非感光部に比してかなり速いことから、HF等
のエッチャントによって感光部のみを選択的にエッチン
グすることが可能で、従って、エッチング時に非感光部
の全てを保護する必要がなくなる。しかも、感光性ガラ
スは感光部のエッチング精度が高く、これにより寸法精
度の高い支持台を再現性よく得ることができる。
【0011】従って、このような感光性ガラス製の支持
台を用いた、本発明の熱型光検出器によれば、検出素子
1から冷却媒体3への熱伝導路の伝熱量つまり支持台2
の熱伝導量を、所望の量に正確かつ再現性よく設定する
ことが可能となる。
【0012】
【実施例】 本発明の実施例を、以下、図面に基づいて
説明する。図1は本発明実施例の要部構造を示す図で、
(a) は平面図を、 (b)は縦断面図をそれぞれ示して
いる。また、図2は本発明実施例の全体構成を示す図
で、(a) は平面図を、 (b) は側面図をそれぞれ示し
ている。まず、図2に示すように、焦電素子1は、ハイ
ブリッドIC基板(以下、HIC基板と称する)3の所
定位置に実装されている。このHIC基板3の一端部に
は、ペルチェ素子4が密着されており、さらに、ペルチ
ェ素子4と焦電素子1との間に温度検出素子5が実装さ
れいる。この温度検出素子5は、HIC基板3に密着で
きる構造のもので、HIC基板3の温度を正確に検出で
きるものを使用する(例えばアナログデバイセス社製;A
590 等)。
【0013】また、ペルチェ素子4の放熱側は、銅製の
網線6を通じて熱容量の大きい場所に熱的に接続されて
おり、これらペルチェ素子4および温度検出素子5など
によって、HIC基板3は、例えば24℃に正確に温度
制御される。さらに、HIC基板3の焦電素子1の実装
部の周辺には、この素子の出力信号処理用としてのプリ
アンプ回路(図示せず)が実装されている。なお、7は
遮光およびノイズシールドカバーである。
【0014】さて、焦電素子1は、図1に示すように、
焦電結晶体(DLA-TGS) 1aの中央部の互いに対応する位
置に、それぞれ円形の電極1bおよび1cを形成した構
造でこの電極部が受光部Dとなっている。また、焦電素
子1は、感光性ガラス製の支持台2よって保持され、か
つ、この支持台2を介してHIC基板3に熱的に接続さ
れている。
【0015】支持台2は、その中央部に円筒形状の開口
部2aが開口されており、焦電素子1の受光部Dの熱拡
散を制限できる形状となっている。また、その各部の形
状寸法は、この支持台2によって形成される焦電素子1
からハイブリッドIC基板3への熱伝導経路の熱伝導量
が、焦電素子1の受光部Dに、最大光量の光が定常的に
入射した状態で、素子温度を最大温度36℃に制限でき
る容量となるように、感光性ガラスや焦電結晶体の熱伝
導率等を考慮して決定されている。
【0016】以上の構造とすることにより、焦電素子1
に光が入射していない状態では、素子温度は、HIC基
板3の制御温度つまり24℃に保たれ、一方、最大光量
の光が定常的に入射したときには素子温度は36℃に保
持される。これにより、素子温度は、入射光の光量に応
じて24〜36℃間において変化することになる。すな
わち、焦電素子1は、焦電結晶体(DLA-TGS) の感度が安
定する温度範囲内において常に正確に温度調節されるこ
とになる。
【0017】ここで、以上の本発明実施例によると、焦
電素子1の形状寸法は、3mm角で厚さ10μm程度と非
常に小さく、正確に温度制御されているHIC基板3と
の接触面積が極めて小さいことから、その両者の熱的な
接続は再現性が良く、しかも焦電素子1に比してHIC
基板3の形状寸法が大きいので、安定した温度調節を行
うことができる。なお、HIC基板3は焦電素子1に対
しては大きいものの、基板自体としては、さほど大掛か
りなものではなくので、ペルチェ素子4による温度制御
を、低電力でかつ安定に行うことができる。さらに、H
IC基板3に、焦電素子1,プリアンプ回路および温度
調節回路等を実装しているので、検出器を全体のモジュ
ール化をはかることができ、しかもそのモジュールをコ
ンパクトに纏めることができるいった点の効果もある。
【0018】なお、この実施例においては、焦電素子1
を支持台2を介して、温度制御されたHIC基板3に熱
的に接続しているが、本発明はこれに限られることな
く、例えばヒートシンク等の他の冷却媒体に感光性ガラ
ス製の支持台を介して熱的に接続してもよい。図3は本
発明方法の実施例の手順を説明する図で、焦電型赤外線
検出器の製造に本発明を適用した例を示す。
【0019】まず、 (a) に示すように、感光性ガラス
板31aを、マスクMを用いて、紫外線によって露光し
て、 (b) に示すように、検出器の支持台に相当する部
分以外を感光部31bとする。次に、 (c) に示すよう
に、感光したガラス板31aを基板として、蒸着法等の
技術を用いて焦電素子Pを形成した後、この素子側の面
のみをワックスWによって保護しておく。そして、5%
HFを用いて、感光部31bをエッチングすることによ
り、焦電素子Pの受光部の下方に円筒状の空洞を設けた
構造の支持台、つまり図1の実施例において用いた支持
台2を得ることが可能となる。
【0020】なお、この例においては、支持台31の開
口部の水平断面形状を円形としているが、これに限定さ
れず、その断面形状は例えば四角形であってもよい。図
4は本発明方法の他の実施例の手順を説明する図であ
る。なお、この例においても、焦電型赤外線検出器の製
造に本発明を適用した例を示す。まず、先の実施例と同
様にマスクを用いた露光を行って、 (a) に示すように
感光性ガラス板41aの検出器支持台に相当する部分以
外を感光部41bとし、次いで、 (b) に示すように、
ガラス板41aの片面をワックスWによって被覆した
後、感光部41bを所定の深さまでエッチングする。
【0021】次に、ガラス板41aの上部に、焦電素子
Pを載置する (c) 。そして、ワックスWを除去した
後、残っている感光部41bをエッチングにより除去す
ることによって、架台41・・41を得る (d)。なお、
このエッチング時において、必要であれば焦電素子Pを
載置した側の面を、ワックスにより保護しておいてもよ
い。また、 (d) の工程は特に行わなくてもかまわな
い。
【0022】この実施例においては、 (c) 工程におい
て、ガラス板41a上に、焦電素子Pを載せるといった
作業は残るものの、この工程では、各架台41・・41は
個別に分離しておらず、その素子載置作業は、従来に比
してきわめて容易に行うことが可能で、これにより、図
6 (a) の構造の実現化も可能となる。なお、この実施
例において、 (a) の工程で、ガラス板41aの上部に
焦電素子Pを配置した後、感光部41bを除去すること
により、各焦電素子Pに4本足の架台を設けるようにし
てもよい。この場合、焦電素子Pを架台上の載せるとい
った煩雑な作業を省略できる。
【0023】以上の実施例においては、焦電検出素子を
用いた光検出器に本発明を適用した例について説明した
が、本発明はこれに限られることなく、例えばサーモパ
イル等の他の熱型光検出器にも適用可能である。
【0024】
【発明の効果】 以上説明したように、本発明の熱型光
検出器によれば、焦電素子等の光検出素子を保持し、か
つ冷却媒体に熱的に接続する支持台を、感光性ガラス製
としたので、その支持台を、高精度でかつ再現性よく加
工することことができ、これによって、検出素子から冷
却媒体への熱伝導経路の伝熱量を、所望の量に正確かつ
再現性よく設定することが可能となる結果、光検出素子
の温度調節を高精度で行うことができ、しかも、検出器
製造ごとの温度調節精度の再現性も高くなる。これらの
ことから、本発明を、例えばFT-IR に使用される高感度
赤外線検出器に適用すると、分光装置全体の性能を低下
させることなく、高感度の測定を行うことが可能とな
る。
【0025】また、本発明方法によれば、非感光部に対
する感光部のエッチング選択比の高い感光性ガラス板
を、所定のマスクを用いて露光して、支持台形成部に相
応する部分以外を感光部としておき、このガラス板の片
面に、例えば焦電素子を形成した後に、その片面のみを
ワックスにより保護した状態で、感光部をエッチングに
よって除去することで支持台を得るので、製造が容易で
かつ量産が可能となる。しかも、エッチング時には、そ
の片面のみを保護すればよいので、製造工程が簡略化さ
れて生産性が向上する結果、コストダウンをはかること
ができる。なお、本発明方法によると、従来では不可能
に近かった4本足の架台を設ける構造も、容易に実現可
能となるいった点の効果もある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明検出器の実施例の要部構造を示す図
【図2】 本発明検出器の実施例の全体構成を示す図
【図3】 本発明方法の実施例の手順を説明する図
【図4】 本発明方法の他の実施例の手順を説明する図
【図5】 焦電検出器の温度調節構造の従来例を説明す
る図
【図6】 焦電検出器の支持台の一般的な構造例を示す
【図7】 焦電検出器支持台の製造工程における従来の
問題点の説明図
【符号の説明】
1・・・・焦電素子 1a・・・・焦電結晶体 1b,1c・・・・電極 D・・・・受光部 2・・・・支持台(感光性ガラス製) 2a・・・・開口部 3・・・・ハイブリッドIC基板 4・・・・ペルチェ素子 5・・・・温度検出素子 31a・・・・感光性ガラス板 31b・・・・感光部 M・・・・マスク W・・・・ワックス

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 熱型光検出素子と、この検出素子を保持
    し、かつ、冷却媒体に熱的に接続する感光性ガラス製の
    支持台を有し、その支持台は、上記検出素子から上記冷
    却媒体への熱伝導経路の熱伝導量が、当該熱型光検出素
    子に最大光量の光が定常的に入射した状態で、素子温度
    の最大値を規定値に制限できる容量となるような形状に
    加工されてなる熱型光検出器。
  2. 【請求項2】 製造すべき熱型光検出器の支持台の高さ
    に応じた厚さの感光ガラス板を、当該支持台の水平断
    面形状に対応して遮光部が形成されたマスクを用いて露
    光し、この後に、そのガラス板の片面のみをワックスに
    よって保護した状態で、上記の露光による感光部をエッ
    チングにより除去する工程を有する、熱型光検出器の支
    持台の製造方法。
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