JP2555812Y2 - ピストンポンプのピストン組立体 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ 本考案は、ピストンポンプのピストン組立体に係り、
詳しくはピストンとスリッパとからなる組立体の改良に
関する。

［従来の技術］ アキシャルピストンポンプの中でも固定斜板型式のポ
ンプ（以下、単にポンプという）は、各種産業機械や産
業車両などに広く使用されており、第４図はとくに斜板
傾角の調節機構を装備した可変容量形のポンプを例示し
たものである。

同ポンプは、ケーシング１及びその開放端を閉止する
エンドカバー２によって密封状の動作空間３が形成さ
れ、この動作空間３内に挿入された駆動軸４は、これら
両部材１、２に軸受５を介して支承されている。駆動軸
４に結合され動作空間３内において駆動軸４と一体的に
回転するシリンダブロック６には、その軸心の周りに軸
心とほぼ平行な複数のボア７が形成され、同ボア７内に
はスリッパ８を介して斜板９に係留されたピストン10が
往復動可能に挿嵌されている。

また、エンドカバー２に固定されて各ボア７の開口端
面を封止する弁板11には、ボア７の開口7aの運動軌跡と
符合して対向円弧状をなす吸入ポート12a及び吐出ポー
ト12bが穿設され、同ポート12a、12bはこれと同一形状
に形成されたエンドカバー２の吸入及び吐出口13a、13b
の端縁と整合すべく構成されている。したがって、駆動
軸４と共動するシリンダブロック６の回転に伴い、斜板
９に係留されて直動するピストン10がボア７の密閉空間
容積を拡大する傾向にあるとき、同ボア７は吸入ポート
12aと対応して作動油を吸入し、逆にピストン10がボア
７の密閉空間容積を縮小する傾向にあるとき、同ボア７
は吐出ポート12bと対応して作動油を吐出するようにな
されている。なお、図示しない支軸に枢支された斜板９
は付勢部材14により常に傾角を増大する向きに付勢され
ており、これに対抗する制御体15を流体圧によって進退
動せしめることにより、斜板傾角つまりポンプ１回転当
りの理論吐出量が変更調節可能に構成されている。

上記ピストンポンプにおけるピストン10とスリッパ８
との組立体は、例えば実開昭57-168778号公報にも開示
されているように、かしめ形式のものが主流となって実
用に供されている。第５図はこのかしめ形式の組立体を
拡大して示したものであって、ピストン10の端末には球
体部10aが一体的に形成され、ほぼ半球状の内孔を有し
て幾分薄肉に形成されたスリッパ８の袴部8aは、該球体
部10aを抱持するようにかしめられている。そしてポン
プの運転時、スリッパ８は背面をリテーナ16によって拘
束されながら斜板９面を回転摺動し、上記かしめによっ
て連動連結されたピストン10はボア７内を往復動して作
動油を吸排する。

［考案が解決しようとする課題］ さて、上記ピストン10が上死点から下死点に向って移
動する吸込行程では、該ピストン10とスリッパ８との間
に引張り荷重が作用し、下死点から上死点に向って移動
する吐出行程では逆に圧縮荷重が作用する。

ところが、一般にスリッパに採用されているCu-Zn系
合金は鉄系金属に比して強度が低く、とくに高速運転
（例えばポンプの回転数3,000rpm以上）の際の引張り荷
重には抗しきれないといった不安がある。しかも、この
ようなかしめ作業は、特殊な治工具を必要とするばかり
か精度の確保も難しく、かねてよりコストアップの要因
の一つとしても指摘されている。

本考案は、ピストン組立体の強度と作業性とを同時に
向上させることを、解決すべき技術課題とするものであ
る。

［課題を解決するための手段］ 本考案になるピストンポンプのピストン組立体は、ケ
ーシング及びエンドカバーによって形成された密封状の
動作空間内に支承された駆動軸と、該駆動軸に一体回転
可能に嵌合され、軸心の周りに軸心と平行な複数のボア
を有するシリンダブロックと、上記ケーシングに支持さ
れた斜板と、該斜板に摺接可能に係留されて上記ボア内
を往復動する複数のピストン組立体とを備えたピストン
ポンプにおいて、同ピストン組立体は、中空円筒状をな
し中空部内の端末に縮径する球状支承面が形成されたピ
ストンと、上記ピストンの中空部に嵌装され上記球状支
承面と填塞材とで挟持された球体と、上記球体に結合さ
れて筒外へ延在し、上記斜板と摺接するスリッパとから
なり、ボア内の作動油を上記斜板とスリッパとの間に導
く導油路を上記填塞材、球体及びスリッパに形成した新
規な構成を採用している。

本考案の好適な形態として、上記スリッパと球体とは
ねじによって結合される。また、ピストンの上端開口か
ら中空部内に挿入される填塞材には金属材料のほか、低
圧ポンプ用として合成樹脂の適用も可能である。

［作用］ 本ピストン組立体の組立は、ピストン上端開口から中
空部内へまず球体を嵌装して上記球体支承面に当接さ
せ、該ピストンの下端開口から挿入したスリッパと該球
体とをねじ結合したのち、再び上端開口から中空部内へ
填塞材を挿嵌して、その端面部と球状支承面との間で上
記球体を挟持することにより完了する。なお、填塞材は
任意の保持手段で中空部内に固支され、このとき球体の
許容遊隙も同時に調整される。

このように本ピストン組立体ではかしめに伴うスリッ
パの物理的弱小部がなく、材料選択の自由度も拡大され
る。

［実施例］ 以下、第１図に基づいて本考案の実施例を具体的に説
明する。

中空円筒状をなすピストン20は、中空部の下端開口近
傍に縮径する球状支承面20aが形成され、該中空部に嵌
装された球体21は、該球状支承面20aと中空部の上端開
口から圧入された填塞材22の端面部とによって挟持され
ている。勿論、該填塞材22の端面部には上記球状支承面
20aと共に球体21と整合する球面座22aが形成されてお
り、該球体21のピストン軸方向の許容遊隙は通常20〜50
μｍ程度となるように調整される。23はその脚部23aが
上記球体21にねじ結合されて、上記ピストン20の下端開
口から筒外へ延在したスリッパであって、該ねじ結合部
にはロックタイト（接着剤）等により強固な緩み止めが
施されている。そしてこれら填塞材22、球体21及びスリ
ッパ23には導油路として通し孔24が貫設され、その端末
はスリッパ23の摺動面に形成された座繰孔23bと連通さ
れている。なお、図示の填塞材22はピストン20の上端縁
と合致して中空部を埋めつくすように形成されている
が、填塞材22の長さを適宜選択してピストン20の上端部
分に所要の空洞を設けるように構成することもできる。

このようにかしめ部を有しない本ピストン組立体は、
きわめて簡易化された組立作業も重要な特長の一つであ
る、すなわち、ピストン20の上端開口から中空部内へま
ず球体21を嵌装して上記球体支承面20aに当接させ、該
ピストン20の下端開口から挿入したスリッパ23と該球体
21とをねじ結合したのち、再び上端開口から中空部内へ
填塞材22を圧入して、その端面部球面座22aと球支承面2
0aとの間で上記球体21を挟持することにより作業は完了
する。そしてかしめ部の消去はこうした作業性の改善と
同時にスリッパ23に課せられていたかしめに適し且つあ
る程度の強度を有するという材質の制約、或いは又かし
め後第５図に見られるようなスリッパのかしめ部8aの先
端がピストン10の球部10aから円筒部に移行する部分と
干渉しないようにするといった寸法上の制約をも取除く
ので、設計の自由度が拡大される。

第２図に示す他の実施例は、圧入に代えピストン20A
に挿入された填塞材22Aを止め輪25いよって保持したも
のであり、第３図に示すさらに他の実施例は填塞材22B
をピストン20Bにねじ結合させたものである。ただし、
このようなねじ結合の場合は上述のスリッパ23と同様な
緩み止めが施されて、填塞材22Bの調整位置が変動しな
いよう配慮される。なお、26は六角孔に形成されたねじ
回し用工具との係合部である。

［考案の効果］ 以上、詳述したように本考案は、かしめ部を消去し、
しかも継手部となる球体部分をピストン及びスリッパの
いずれとも分離させた独特の構成を有するものであるか
ら、組立作業が著しく簡易化されるとともに、材質や形
状、寸法などの設計の自由度が拡大されて、強度的な不
安も同時に一掃することができる。

また、填塞材の長さの選択などにより、ピストン上端
部分に少なくとも２種類の空洞容積を形成した組立体を
混用すれば、吐出脈動の不規則化が反射波との共振を防
止して騒音の低減にも寄与することができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の一実施例を示す断面図、第２図及び第
３図は同じく他の実施例を示す部分断面図、第４図は従
来のピストンポンプの全容を示す断面図、第５図は従来
のピストン組立体を示す拡大断面図である。 20、20A、20B……ピストン 20a……球状支承面、21……球体 22、22A、22B……填塞材 23……スリッパ

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)考案者 鈴木 茂 愛知県刈谷市豊田町２丁目１番地 株式 会社豊田自動織機製作所内 (56)参考文献 実開 昭57−168778（ＪＰ，Ｕ)

Claims (1)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】ケーシング及びエンドカバーによって形成
   された密封状の動作空間内に支承された駆動軸と、該駆
   動軸に一体回転可能に嵌合され、軸心の周りに軸心と平
   行な複数のボアを有するシリンダブロックと、上記ケー
   シングに支持された斜板と、該斜板に摺接可能に係留さ
   れて上記ボア内を往復動する複数のピストン組立体とを
   備えたピストンポンプにおいて、同ピストン組立体は、
   中空円筒状をなし中空部内の端末に縮径する球状支承面
   が形成されたピストンと、上記ピストンの中空部に嵌装
   され上記球状支承面と填塞材とで挟持された球体と、上
   記球体に結合されて筒外へ延在し、上記斜板と摺接する
   スリッパとからなり、ボア内の作動油を上記斜板とスリ
   ッパとの間に導く導油路を上記填塞材、球体及びスリッ
   パに形成したことを特徴とするピストンポンプのピスト
   ン組立体。