JP2545538Y2 - 吐水口 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本考案は、水栓やシャワーヘッド
等の先端に取り付けられる吐水口に係り、特に給水を非
泡沫の通常吐水と泡沫吐水に切り換えて使えるようにし
た吐水口に関する。

【０００２】

【従来の技術】水栓からの給水に空気を混入させて泡沫
化し、吐水音や水はねを抑えるようにした泡沫キャップ
が従来から利用されている。この泡沫キャップは多数の
小孔を開けた減圧板を流路の中に備え、この減圧板の下
流側の泡沫キャップの周壁に空気孔を開けた構造であ
る。そして、給水されるときには減圧板を通過した直後
に水が増速されると共に内部流路が減圧されるために、
空気孔から外部の空気が吸引され、これによって空気が
水に混入されて泡沫化される。

【０００３】ところが、減圧板を利用する場合ではこれ
による流路抵抗が大きいため、給水の流量を或る一定以
上に設定しないと適切な吐水圧が得られず、減圧板を通
過した後の内部流路の圧力降下も小さいため、充分な泡
沫化ができない。また、吐出される水は泡沫水のみに限
られるので、キッチン等の洗い物作業に好適な通常の気
泡を含まない整流吐水に切り換えることもできない。

【０００４】このような問題に対し、減圧板を利用せず
に給水を強制的に旋回させて増速して円錐状の水膜状に
放出しこの中に空気を吸引させることによって泡沫化
し、且つ泡沫水と通常の非泡沫の給水とに切り換えて使
えるようにした吐水口を、本出願人は特願平２−５２３
９６号によって提案した。この吐水口では、減圧板を使
用しないので流量が小さくても適切な泡沫水が得られ
る。また、吐水口の吐水端に設ける散水板を固定散水板
と可動散水板の２枚重ねとし、可動散水板を回すことで
環状にそれぞれ配列した複数の泡沫水用の泡沫孔及び非
泡沫水用のスプレー孔のいずれかを開いて、泡沫水また
は通常の気泡を含まない吐水に切り換えることができ
る。

【０００５】

【考案が解決しようとする課題】ところが、給水を泡沫
化するのに必要な空気を吸引するための空気孔を散水板
の中央に設け、泡沫孔及び非泡沫水用のスプレー孔はい
ずれもこの空気孔の周りに環状に配列しなければならな
い。このため、散水板の中央部は吐水端としては利用で
きず、非泡沫のスプレー吐水も複数の細い流線のものと
なってしまうので、キッチン等の洗い物作業に必要な１
本の太い流線の通常吐水ができない。

【０００６】また、泡沫化のための空気孔と泡沫孔及び
スプレー孔の３種類の孔を必要とするので、これらの孔
の配列の仕方にも制限がある。このため、泡沫及び通常
のスプレー吐水の範囲を広くしようとすれば散水板が大
きくなり、吐水口が大型で重くなりかねないので、使い
勝手にも影響を与えてしまう。

【０００７】このように、泡沫水と通常の非泡沫のスプ
レー吐水とに切り換えることはできても、用途に応じた
吐水範囲や流線の大きさが得られず、吐水口の小型化や
軽量化にも障害がある。

【０００８】本考案において解決すべき課題は、非泡沫
吐水用の流路を泡沫吐水のための空気流路を兼ねるよう
にして吐水口を小型化すると共に最適な泡沫及び集中吐
水ができ、広い用途に利用できるようにすることにあ
る。

【０００９】

【課題を解決するための手段】本考案は、流体の入口及
び出口と、前記入口と出口との間を連通させる連通路
と、前記連通路に配しされた旋回流チャンバと、前記連
通路からの流体の前記旋回流チャンバの内壁に沿って供
給する流入孔と、該旋回流チャンバのほぼ中央に開けた
放出孔によって該旋回流チャンバに連通する泡沫化チャ
ンバと、前記泡沫化チャンバの吐水端に面し前記本体に
軸線周りに回転可能に取り付けた散水ヘッドとを備え、
該散水ヘッドは前記放出孔とほぼ同軸上であって前記泡
沫化チャンバを外部に連通させる非泡沫吐水孔と、該非
泡沫吐水孔の周りに配列された複数の泡沫吐水孔とを備
え、前記散水ヘッドの回転によって前記泡沫化チャンバ
から泡沫吐水孔への流路を開閉可能とし、更に前記放出
孔からの水の流入時の減圧効果によって前記非泡沫吐水
孔から泡沫化チャンバに空気を吸引可能としたことを特
徴とする。

【００１０】

【作用】旋回流チャンバに流入した水は渦巻き状の旋回
流となり、流れ自体を外側へ押しやるような遠心力が発
生する。このため、放出孔からの水は円錐状の水膜状と
なって泡沫化チャンバの中へ流れ込み、流れの増速によ
る内圧の低下によって外部に開放されている非泡沫吐水
孔から空気が吸引される。したがって、泡沫吐水孔から
は空気が混入された泡沫水が吐出される。

【００１１】また、散水ヘッドを回して泡沫吐水孔への
流路を閉じると、泡沫化チャンバは非泡沫吐水孔のみに
よって外部に連通する。このため、旋回流チャンバから
の水は泡沫化チャンバの中に溜まった後に非泡沫吐水孔
から気泡を含まない通常の吐水として流し出される。

【００１２】このように、散水ヘッドを回す操作によっ
て、非泡沫吐水孔を泡沫吐水の際の空気吸引路及び非泡
沫の通常吐水の際の水流路に兼用でき、泡沫化のための
専用の空気孔を設ける必要がなくなる。

【００１３】

【実施例】図１は本考案の吐水口の縦断面図、図２はそ
の外観図、図３は図１の状態から散水ヘッドを回転させ
たときの底面図である。

【００１４】この例は、キッチン用のスプレーとして使
えるようにしたもので、吐水口は本体１，給水源に連通
するコネクタ２，本体１の内部に収納された異径スリー
ブ３及び本体１の下端にその中心周りに回転可能に取り
付けた散水ヘッド４とから構成されている。

【００１５】コネクタ２は給水源に接続する供給流路２
ａを形成してその下端部の周壁に孔２ｂを開け、本体１
の中の連絡流路１ａに供給流路２ａを連通させて本体１
に連結されている。

【００１６】異径スリーブ３は本体１の中に同軸上に固
定され、その下端部の外周周りに散水ヘッド４を水密状
に回転可能に連接している。この異径スリーブ３の上端
には小径の円筒体とした旋回流チャンバ５を形成し、下
端部は散水ヘッド４の上面に臨む泡沫化チャンバ６を備
えている。図４は図１のＡ−Ａ線矢視による概略横断面
図であり、旋回流チャンバ５は円形の横断面を持ちその
周壁には合計４個の流入孔５ａを開け、底壁のほぼ中央
には放出孔５ｂを開けている。流入孔５ａは旋回流チャ
ンバ５の内周壁に対してタンジェンシャルとなるような
軸線を持つように開けられ、本体１の内壁とスリーブ３
との間の環状の連絡流路１ａからの水は図中の矢印のよ
う旋回流チャンバ５の中に流れ込み、その後時計方向に
流れが向かうように強制的に流れが旋回させられる。ま
た、放出孔５ｂの開口面積を４個の流入孔５ａの開口面
積の合計よりも小さくしておけば、旋回流チャンバ５で
水が滞留するようになり、内圧も幾分か上昇する。した
がって、旋回流チャンバ５内では水自体の流動エネルギ
が増加し、旋回流による遠心力が作用する。このため、
放出孔５ｂから放出される水は遠心力の影響を受けて外
に広がる挙動をし、図１の破線で示すように円錐状の水
膜となって吐出される。

【００１７】泡沫化チャンバ６は下端を開放したもの
で、その内部の下端部には固定散水板７を同軸上に組み
込んでいる。この固定散水板７は、散水ヘッド４の内部
に固定されたライナ８の上面に臨ませて組み込まれ、径
スリーブ３の周壁に組み込んだスプリング９によってこ
のライナ８方向に付勢されている。図５は固定散水板７
を上から見た斜視図であり、下端にベース７ａを形成す
ると共に中央部を円錐台状に立ち上げてこの中に流路筒
７ｂを組み込み、この流路筒７ｂの下端を外部に連通さ
せている。ベース７ａには複数の孔７ｃを環状に配列
し、また流路筒７ｂの上端を放出孔５ｂに臨ませると共
に円板状の逆流防止板７ｄを設けている。なお、流路筒
７ｂの中には十字状断面を持つ集中吐水用整流板７ｅを
組み込み、ベース７ａの上面には各孔７ｃへ給水を均等
に振り分けるための分割整流板７ｇを設ける。また、固
定散水板７がその軸線方向のみに移動可能であって軸線
周りには回転しないように拘束するため、固定散水板７
の外周部分に軸線方向に走るキーを突き出し、このキー
を異径スリーブ３の内周壁に設けたキー溝に摺動自在に
嵌め込む構造とする。

【００１８】ライナ８は散水ヘッド４の内部に一体固定
されたもので、固定散水板７の孔７ｃのピッチ及び内径
に合わせた連絡孔８ａを開け、それぞれの孔７ｃ及び連
絡孔８ａとの間の流路をシールするパッキン８ｂ及び流
路筒７ｂからの流路をシールするパッキン８ｃを、固定
散水板７とライナ８との間に組み込んでいる。したがっ
て、固定散水板７はスプリング９の付勢力によって、ラ
イナ８方向へ付勢されパッキン８ｂ，８ｃに密着した状
態が維持される。

【００１９】散水ヘッド４は下端を平坦面とした碗状で
あり、その内周壁と異径スリーブ３の下端部の外周壁と
の間にパッキン３ａを組み込んで水密状に連接され、そ
の軸線周りに回転できるように一体化されている。散水
ヘッド４の中央には流路筒７ｂと同軸配置となってこれ
に連通し泡沫吐水時の空気吸引路を兼ねる集中吐水孔４
ａを非泡沫吐水孔として開け、その周りには複数の泡沫
吐水孔４ｂを環状に配列して開けている。そして、集中
吐水孔４ａには整流網４ｃを組み込み、泡沫吐水孔４ｂ
には十字状の横断面を持つ泡沫吐水用整流板４ｄを取り
付けている。また、散水ヘッド４の周壁の２か所には円
周方向に走るスリット４ｅが切開され、このスリット４
ｅには本体１の周壁に固定したピン１ｂが緩く差し込ま
れている。したがって、散水ヘッド４はピン１ｂによっ
て本体１に連接され、スリット４ｅの周方向の長さ分だ
け軸線周りに回転させることができる。

【００２０】以上の構成において、図１の状態では、散
水ヘッド４はその泡沫吐水孔４ｂ及びライナ８の連絡孔
８ａが固定散水板７の孔７ｃに整合する位置にある。こ
のとき、前記のように給水を旋回流チャンバ５の中で強
制的に旋回させた後に放出孔５ｂから放出すると、円錐
状の水膜となって大きな流速で泡沫化チャンバ６に供給
される。このため、水膜の流れが速くなるため流路筒７
ｂの上端周りの空間の圧力が低下し、これにより集中吐
水孔４ａから空気が吸引される。したがって、放出孔５
ｂからの水に空気が混入されて泡沫化され、この泡沫水
は固定散水板７の孔７ｃ及びライナ８の連絡孔８ａを経
由して散水ヘッド４の泡沫吐水孔４ｂに流れ込み、泡沫
吐水用整流板４ｄによって整流されながら吐出される。

【００２１】このように、泡沫吐水するときには、１本
の非泡沫吐水のために設けた集中吐水孔４ａを空気吸引
路として利用できる。このため、泡沫化のための空気流
路を別途設ける必要がなく、吐水口の小型化が図られ
る。

【００２２】泡沫吐水から集中吐水孔４ａを使った通常
の吐水に切り換えるには、散水ヘッド４を回して図３の
ように散水ヘッド４の泡沫吐水孔４ｂ及びライナ８の連
絡孔８ａが固定散水板７の孔７ｃから外れた状態に設定
する。これにより、泡沫吐水孔４ｂはライナ８によって
閉ざされ、集中吐水孔４ａのみが外部に開放する。この
とき、旋回流チャンバ５からの水を供給すると、図１の
場合と同様に円錐状の水膜となって泡沫化チャンバ６の
中に放出される。ところが、泡沫吐水孔４ｂは閉じたま
まなので、泡沫化チャンバ６の中に送り込まれた水は流
路筒７ｂを経由する集中吐水孔４ａしか出口がない。こ
のため、外部からの空気の吸引はなく、泡沫化チャンバ
６の中の水は集中吐水孔４ａから気泡を含まない１本の
太い流線の吐水として放出される。

【００２３】このように、散水ヘッド４を回しさえすれ
ば、泡沫吐水に代えて吐水口の中央部に設けた集中吐水
孔４ａから通常の吐水が得られる。このため、従来例に
比べると吐水口の中央部からの集中吐水ができ、キッチ
ン等での洗い物作業にも便利に使える。また、集中吐水
孔４ａ及び泡沫吐水孔４ｂの２種類のみを開けるだけで
よく、泡沫化のための空気孔を必要としないので、泡沫
吐水及び集中吐水の範囲の分布も広くなり、吐水口の嵩
が張ることなく軽量化も図られる。

【００２４】

【考案の効果】本考案では、泡沫吐水口と通常の非泡沫
吐水とに切り換える際に、非泡沫吐水孔を泡沫吐水の際
の空気吸引流路として兼用するようにしている。このた
め、空気孔を含めた３種類の孔を開けるのに比べると、
非泡沫吐水孔と泡沫吐水孔との分布の自由度が高くな
り、用途に応じた非泡沫水の集中吐水と泡沫吐水の分布
が得られる。特に、非泡沫吐水孔を一つにしておけば、
太い流線の気泡を含まない通常の吐水が得られるので、
キッチン等の洗い物作業に好適となる。また、泡沫化の
ための空気孔を必要としないので、吐水孔の嵩が小さく
なって軽量となり、使い勝っても向上する。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案の吐水口の一実施例を示す縦断面図であ
る。

【図２】図１に示した吐水口の外観図である。

【図３】散水ヘッドを回して集中吐水孔からの集中吐水
に切り換えたときの底面図である。

【図４】図１のＡ−Ａ線矢視による概略断面図であって
旋回流チャンバ内ので流れの旋回を示すための図であ
る。

【図５】固定散水板を上から見た斜視図である。

【符号の説明】

１ 本体 ２ コネクタ ３ 異径スリーブ ４ 散水ヘッド ４ａ 集中吐水孔（非泡沫吐水孔） ４ｂ 泡沫吐水孔 ５ 旋回流チャンバ ６ 泡沫化チャンバ ７ 固定散水板 ７ｃ 孔 ８ ライナ ８ａ 連絡孔 ９ スプリング

Claims (1)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 流体の入口及び出口と、前記入口と出口
   との間を連通させる連通路と、前記連通路に配しされた
   旋回流チャンバと、前記連通路からの流体の前記旋回流
   チャンバの内壁に沿って供給する流入孔と、該旋回流チ
   ャンバのほぼ中央に開けた放出孔によって該旋回流チャ
   ンバに連通する泡沫化チャンバと、前記泡沫化チャンバ
   の吐水端に面し前記本体に軸線周りに回転可能に取り付
   けた散水ヘッドとを備え、該散水ヘッドは前記放出孔と
   ほぼ同軸上であって前記泡沫化チャンバを外部に連通さ
   せる非泡沫吐水孔と、該非泡沫吐水孔の周りに配列され
   た複数の泡沫吐水孔とを備え、前記散水ヘッドの回転に
   よって前記泡沫化チャンバから泡沫吐水孔への流路を開
   閉可能とし、更に前記放出孔からの水の流入時の減圧効
   果によって前記非泡沫吐水孔から泡沫化チャンバに空気
   を吸引可能としたことを特徴とする吐水口。