JP2544834B2 - ポリビニルアルコ―ル系合成繊維 - Google Patents

ポリビニルアルコ―ル系合成繊維

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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は高強度、高弾性率および耐疲労性等の優れた
機械的特性を有し、かつ容易にパルプ化可能であること
を特徴とするポリビニルアルコール(以下PVAと略す)
系合成繊維に関するものであり、特に産業資材や複合材
料の補強分野さらには合成紙、石綿代替分野に広く応用
できるPVA系合成繊維に関する。
(従来の技術) 従来、PVA系繊維は他の汎用繊維に比べて強度、弾性
率が高く、ビニロンという商品名で、主として産業資材
用繊維として広く利用されてきた。また最近では、石綿
代替合成繊維としてセメント補強にも利用されてきてい
る。しかし、かかる産業資材製品の高性能化にともなつ
て、PVA系繊維に対してもさらに高強度、高弾性率化の
要求がある。またロープやコードの分野においては、高
強度、高弾性率化と共に、その上さらに耐摩耗性、耐疲
労性をより向上させ製品寿命を長くしたいとの要求があ
る。さらにまた石綿代替セメント補強用分野において
は、高強力、高弾性率化繊維であると共に真に石綿のよ
うな極細のパルプ状にしたいという要求がある。
合成繊維の高強度、高弾性率化の技術向上は、剛直な
液晶ポリマーを出発原料とすること以外にも、屈曲性の
汎用ポリマーでも、超高分子量の原料をゲル紡糸するこ
とによつても得られることがポリエチレンで証明されて
以来、他の汎用ポリマーに対しても試みられてきた。PV
A系ポリマーに対しても、例えば特開昭59−100710号、
特開昭59−130314号、特開昭61−108711号等に開示され
ている技術が提案され、従来の市販PVA系繊維に比べる
とかなり高いレベルの強度、弾性率を有する繊維が得ら
れるようになつたが、いまだポリエチレン繊維程の超延
伸による高性能化レベルには達していない。その基本的
な差は、PVAの強い分子間水素結合力にあると考えられ
ており、PVA系繊維では実質的に20倍程度の延伸によつ
て白化が生じ、それ以上延伸しても強度は低下してしま
うのが従来技術の限界であつた。
一方耐摩耗性については、特開昭63−85105号公報に
おいてその改良手段が示されているが、それは紡色原液
濃度を紡糸可能な範囲で高目に設定するにとどまり、抜
本的な改質・改善にはなつていない。
さらに、従来PVA繊維は高強度と親水性を生かしてセ
メント補強分野等で石綿代替合成繊維として利用されて
きたが、石綿に比べるとその直径が10倍以上であつて成
形加工性に問題がある。すなわち、スレート等の抄造過
程では補強繊維の直径が大きいとセメント粒子の捕捉性
が悪く、天然パルプ等を混抄する必要がある。またブレ
ーキデイスク等の成形加工においても石綿に比べてパル
プ化不可能な合成繊維では樹脂の捕捉性が悪くてグリー
ン高度が低下するという問題のために代替は難しい。合
成紙の分野においてもパルプ化可能な微細な繊維程、上
質の紙が製造可能である。かかる要求に対し、高性能な
合成繊維を微細化する方法の一つとして、極細のノズル
から紡糸する方法も試みられているが、物理的な細化に
は限界がある。またカツトしただけでバラバラのパルプ
状物になつてしまつてはその後の工程の取扱い性に問題
が生じるので、できれば湿式リフアイナーにかけた時点
ではじめてパルプ化できるような繊維も望まれていた。
(発明が解決しようとする課題) 以上の背景をふまえて、本発明者らは超延伸が可能で
強度、弾性率や耐摩耗性、耐疲労性等機械特性に優れ、
かつパルプ化可能で、さらに望ましくは白化の生じない
PVA系合成繊維を得るために鋭意努力した。本発明者ら
は一本の繊維が無数のフイブリルの集合体からなること
が、超延伸による高強度、高弾性率化の本質であり、耐
摩耗性の向上、あるいは湿式パルプ化も可能であると考
えて、原液の段階から工夫し、延伸前の原糸の段階です
でにフイブリル集合体の原形いを形成せしめる製法を見
出すことができ本発明に到達した。
(問題を解決するための手段) すなわち、本発明の繊維は 「重合度が1500以上のポリビニルアルコール系ポリマ
ーからなり、透過型干渉顕微鏡像において繊維軸方向に
無数のスリツト状の乱れのある干渉縞を示し、引張強度
が15グラム/デニール以上、撚合せ摩耗回数が10000回
以上であるポリビニルアルコール系合成繊維。」 に関するものである。
本発明のPVA繊維において、一方のフイラメントが実
質的に無数のフイブリルの集合体で構成されていること
は、延伸の際に繊維内部の高次構造の破壊を生じず、フ
イブリル間のすべりによる超延伸を可能にし、その結
果、優れた高強度、高弾性率や耐摩耗性等の機械的性質
を発現する上で重要な要素であり、かつ湿式リフアイナ
ーで容易にパルプ化できるための必須条件であつて、PV
A系合成繊維では本発明によつてはじめて実現可能とな
つたものである。該フイブリルとは繊維軸に沿つた高次
構造の連続体のことで、従来の繊維に見られるような繊
維軸を横切る横縞すなわちミクロボイドとは区別され
る。該フイブリル構造の有無は透過型干渉顕微鏡による
干渉縞にて観察することができる。該干渉縞は原理的に
は屈折率すなわち分子の緻密さのゆらぎを観察するもの
であり、第1図および第2図は本発明による超延伸され
た高強力なPVA系合成繊維のかかる写真例である。該写
真で示される如く、本発明の繊維では、繊維軸に沿つた
無数の筋(スリツト状の乱れ)が観察され、繊維が無数
のフイブリル集合体によつて形成されていることが示さ
れる。本発明は、このような無数のフイブリル集合体に
よつて形成された高強力なPVA系合成繊維を提供せんと
するものである。第3図は従来のPVA系合成繊維の延伸
糸の写真例であり、第1図あるいは第2図のような繊維
軸に沿つた筋は観測されず、フイブリル集合体が形成さ
れていない。即ち、繊維がフイブリル集合体構造となつ
ていないことを示す。第4図は第3図の繊維をさらに高
強力繊維を目的として高倍率に延伸したものの写真であ
り、繊維軸に沿つた方向に筋が表われ、フイブリル集合
体が形成されるが、それと同時に繊維軸と直交方向にも
無数の筋が表われ、実質的にボイドが発生して構造破壊
が進んでいることを物語つている。
高次構造が不完全な材料を強引に延伸することによつ
て、いわゆるスプリツトヤーンと称する荷作りひもにみ
られるようなフイブリル化を進めることもできる。しか
し、かかる繊維は第4図に見られるような内部破壊も進
んでいて、強度的には低いレベルにあり、本発明の目的
とするものではない。
本発明で目的とする繊維は少なくとも15グラム/デニ
ール、好ましくは17グラム/デニール以上の強度を有す
るものであり、特に産業資材製品の高性能化にともなう
PVA系繊維への要求を満足するにはこのレベルの強度を
有するものでなければならない。
また本発明の繊維は前記の如く高強度繊維であると同
時に、これまでの高強力ポリビニルアルコール繊維をも
含めて公知のポリビニルアルコール系繊維では実現でき
なかつた優れた耐摩耗性を有する繊維である。即ち、従
来公知のポリビニルアルコール系繊維の撚合せ摩耗回数
は、せいぜい5000回程度であるのに対し、本発明繊維の
それは10000回以上、好ましくは20000回以上、数万回に
も耐える繊維である。
また本発明の繊維は、前述の如く無数のフイブリル集
合体構造のものであり、機械的な性能を高性能に保ちつ
つバルブ化率が高い。本発明でパルプ化率とは、上述の
フイブリル化の程度をさらに定量的に表現するものであ
り、詳細は後述するようにデイスクリフアイナーで湿式
叩解された後光学顕微鏡で観察カウントされて求めるこ
とができる。本発明による新規なポリビニルアルコール
系合成繊維ではパルプ化率が20%以上、好ましくは50%
以上であつて、パルプ化率が20%より低い繊維は上述の
干渉縞が観測されたとしても構造破壊によるものであ
り、かかる繊維は本発明の目的の一つとする石綿代替分
野における微細化が不可能であつて、セメント粒子等の
捕捉性が不十分である。
また本発明は、上記の如きPVA系合成繊維であつて、
しかも該繊維の密度が、25℃における値が1.30g/cm3
上であるものを提供せんとするものである。従来、繊維
の密度はその結晶化度の尺度として用いられてきた。す
なわち完全結晶と完全非晶の密度から、その加成性が成
立するとして得られた繊維の密度を求めて結晶化度を算
出するものであるが、本発明においては密度の物理的に
意味するものは若干異なり、超延伸によつてもミクロボ
イドが発生せず、白化しないことを意味する。現実的に
連続した繊維で密度1.30g/cm3以上の繊維を得ることは
困難であつた。というのはX線回折から求めた結晶化度
が、今仮に70%を越え、理論計算上は密度1.31g/cm3
度の延伸糸が得られたとしても、延伸過程で白化が生じ
ると密度が1.29付近に低下してしまうのが通常であり、
本発明は、それをフイブリル集合体繊維によつてはじめ
て白化のない25℃の密度1.30g/cm3以上の連続したPVA繊
維を実現したものである。このミクロボイドがないこと
は該繊維の耐疲労性や耐熱水性、耐薬品性にとつて極め
て重要なフアクターである。
さらに本発明は、上記PVA繊維であつて、しかも繊維
軸に直交方向の屈折率が1.525以上であるものを提供せ
んとするものである。その物理的に意味するものは、分
子配向等の高次構造が十分発達しており、かつ前述のミ
クロボイド等の構造欠陥が発生していないPVA系合成繊
維を表現するものである。従来の連続したPVA系合成繊
維の延伸過程においては、分子配向の進展によつて該繊
維軸に直交方向の屈折率は上昇していくが、前述の密度
と同様に白化と同時に低下してしまう。したがつて、該
屈折率が1.525以上のPVA系合成繊維はフイブリル集合体
繊維を超延伸することによつて得られる本発明繊維によ
つて始めて達成されたものである。
以上本発明の繊維は、高強力でかつパルプ化可能なミ
クロフイブリル集合体構造を基本的に有し、さらに望ま
しい状態として白化のない前記高次構造を有する耐摩耗
性繊維であることを説明した。
以下には、上記本発明繊維を得るための基本的な考え
方並びにその製造法について説明する。
本発明による新規な高次構造を有する繊維を合成する
上で最も重要な点は、ノズルを通して固化させた原糸に
繊維軸に沿つた相分離構造を発現せしめることと、その
後延伸工程まで該相分離構造をできるだけ維持させるこ
とである。
そのような相分離構造を発現させる方法としては、原
液中にすでに相分離したエマルジヨンを形成せしめて紡
糸する方法や、また均一な溶液系からなる原液をノズル
を通過させた後、温度の下降やゲル化、凝固作用を利用
して固化過程で該相分離構造の発現を行わしめる方法が
考えられる。
この考え方を具体化する製造法として、PVAを有機溶
媒または水、あるいは両者の混合溶媒に溶解した溶液
に、1種または2種以上の界面活性剤を、該PVAに対し
て1〜20重量%となる量添加したものを紡糸原液とし、
これをアルカリ性水系凝固溶へ湿式または乾湿式紡糸す
ることが提案される。
使用されるPVA系ポリマーは、30℃の水溶液の極限粘
度から求めた粘度平均重合度が1,500以上、好ましくは
3,000以上のものである。1500より低くては目的とする
強度が得られない場合があり、重合度が大きい程高性能
の繊維が得られる。ケン化度は95モル%以上が好ましい
が、溶剤や製法によつても異なるので、限定されるもの
ではない。また2モル%以下の他のビニル化合物を共重
合したものも使用できる。
用いられるPVA系ポリマーの溶剤としては、エチレン
グリコール、トリメチレングリコール、ジエチレングリ
コール、グリセリン等の多価アルコールやジメチルスル
ホキシド、ジメチルホルムアミド、ジエチレントリアミ
ン、水さらにはこれらの2種以上の混合系あるいはロダ
ン塩水溶液等があげられる。
PVA紡糸原液をアルカリ性水系凝固浴へ紡糸する際
に、紡糸原液にホウ酸またはホウ酸塩を添加することは
公知であるが、本発明においてもこれらを用いることが
できる。後述するように本製造法における凝固浴は、ノ
ズルから吐出された吐出糸条から界面活性剤を積極的に
抽出しない系で構成することが好ましくは、そのために
水系凝固浴を採用する。この場合、吐出糸条の、凝固浴
でのゲル化を促進させるために凝固浴をアルカリ性とす
ると共に、原液中にもホウ酸またはホウ酸塩を添加する
ことが好ましいものである。その添加量は、PVAに対し
て0.1〜10重量%、より好ましくは0.5〜5重量%であ
る。またpH調整のために、酢酸、酒石酸、シユウ酸等有
機酸の添加も無論さしつかえない。さらにまた酸化防止
剤、紫外線吸収剤等の添加剤を加えることも可能であ
る。
添加される界面活性剤はアニオン、カチオン、両性、
ノニオンのいかなるものをも単独または複合して用いる
ことができ、その添加量はPVAに対して1〜20重量%が
適当である。1重量%より少ない場合はその効果が少な
くて適当な原糸中の相分離構造を形成することができ
ず、20重量%より多い場合は凝固・固化が不十分で、単
繊維間で膠着が生じ、超延伸が不可能となつて目的の繊
維が得られない。
相分離構造を形成する界面活性剤としてはノニオン系
の活性剤が特に有効で、PVAに対して3重量%以上添加
することがより好ましい。
ノニオン系としては、高級アルコールエチレンオキサ
イド付加物、アルキルフエノールエチレンオキサイド付
加物、脂肪酸エチレンオキサイド付加物、多価アルコー
ル脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物、高級アル
キルアミンエチレンオキサイド付加物等のポリエチレン
グリコール型とグリセロール、ペンタエリスリトール、
ソルビトール、グルコース、庶糖などの多価アルコール
の脂肪酸エステル、多価アルコールのアルキルエーテル
等の多価アルコール型の、いずれであつてもよく、HLB
値として6以上が好ましい。
PVAの溶媒が水の場合、とりわけ、HLB12〜19の範囲の
上記ポリエチレングリコール型ノニオン活性剤が好まし
い。またPVAの溶媒が有機溶媒の場合、上記多価アルコ
ール型ノニオン活性剤、とりわけ庶糖など環状多価アル
コールの脂肪酸エステルが好ましい。
原液中に相分離したエマルジヨンを形成せしめる系に
おいては、原液の安定性、工程通過性、得られた糸の強
度等の点から、エマルジヨン粒径はできる限り小さい方
が好ましい。その粒子径としては、100μ以下、好まし
くは50μ以下、更に好ましくは20μ以下である。細粒化
する手段としては、ミキサー等により攪拌あるいは振動
を与える機械的方法と、アニオン、カチオン、又は両性
界面活性剤をノニオン界面活性剤に対して1〜50重量%
の割合で併用する化学的方法がある。この細粒化は原液
の攪拌条件、温度条件、界面活性剤等の添加剤の選択に
よつてコントロールが可能である。
紡糸原液の温度は60〜140℃が好ましく、PVAの溶媒が
水の場合、90〜130℃が特に好ましく、またPVAの溶媒が
有機溶媒の場合、70〜100℃が特に好ましい。
界面活性剤を添加した紡糸原液は出来るだけ短時間の
内に紡糸することが肝要で、5時間以内、好ましくは1
時間以内、さらに好ましくは30分以内に紡糸することが
望ましい。そのために、PVAを溶解し、脱泡が完了した
後のPVA溶液にバツチまたはインラインで界面活性剤を
添加・混合して、直ちに紡糸することが推奨される。
紡糸方法は、湿式法でも、また乾湿式法(ノズルを凝
固浴面からわずかのギヤツブを持たせて配置し、紡糸原
液を一旦空気等の気体中に吐出し、直ちに該吐出糸条を
凝固浴中に導き凝固させる方法)でも、いずれも採用す
ることができる。
吐出糸条を原糸として固化させる凝固浴としては、そ
こで、界面活性剤の多くが抽出される系であつては、原
糸に、その繊維軸に沿つた相分離構造を発現せしめるこ
とがむつかしくなる。したがつて、凝固浴としては、界
面活性剤を積極的に抽出しない系で構成することが好ま
しく、ゲル化能のあるアルカリ性としてカセイソーダ水
浴液などアルカリ性の水系凝固浴が用いられる。凝固浴
ばかりでなく、それ以降の延伸処理までの諸工程にあつ
ても同様であり、積極的に界面活性剤を抽出しない処理
工程を採用することが好ましく、最終的に延伸前の原糸
として0.3重量%以上、好ましくは0.5重量%以上、さら
に好ましくは1.0重量%以上の界面活性剤が含有される
ことが好ましい。
水系凝固浴は、通常の芒硝浴や、硫安浴ではスキン−
コアが生成し、延伸性を低下せしめるため、ゲル化能の
あるアルカリ性とすることが必要であるが、アルカリ成
分としては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム、その
他の苛性アルカリが主として用いられる。これに芒硝な
どの脱水能を有する塩類を併用することも無論可能であ
る。アルカリ単独浴の場合は250g/以上、好ましくは3
00g/以上の濃度で、塩類を併用する場合はアルカリ5g
/以上、塩類は200g/以上で、塩類の濃度は飽和に近
い程好ましい。
また凝固浴の温度は特に限定されるものではないが、
紡糸原液にホウ酸またはホウ酸塩を用いる場合は、55〜
95℃が好ましい。55℃より低くては延伸性が低く、高強
力な繊維が得られない。また一方95℃を越える温度では
凝固浴の沸騰及び単繊維間で膠着が生じるため好ましく
ない。
凝固浴を出たゲル糸は、その後湿延伸、アルカリの中
和、湿熱延伸、水洗、乾燥、乾熱延伸、さらに必要に応
じて熱処理を実施する。
アルカリ中和前の湿延伸は、中和熱によるゲル糸の膨
潤や表面浴解を防止するために望ましく、1.5倍以上の
延伸が好ましい。アルカリ中和後の湿熱延伸は、例えば
高濃度硫酸ナトリウム水浴液の80℃以上の浴で行なわれ
る。引続き水洗、乾燥が行なわれるが、前記アルカリ中
和前の湿延伸から乾燥工程までの間で、合計2倍以上、
好ましくは3〜6倍の湿延伸を行なうのがよい。この効
果は、水に対する繊維の膨潤度を低下させ、ローラーへ
の粘着や単糸同志の膠着を抑える点と、紡糸時に生成し
た微結晶を湿延伸で低下させ、分子鎖を動き易くして高
倍率延伸を可能にならしめる点にある。
乾燥後は乾熱延伸を行なう。この乾熱延伸は、200℃
以上で、前記湿延伸との合計で、全延伸倍率が16倍以上
となるように、好ましくは220℃以上で18倍以上となる
ように、延伸を行なうことが本発明の目的の高強力・高
弾性率なPVA繊維を得る上で好ましい。
延伸方式は1段で実施しても、また多段で実施しても
よい。また乾熱方式でも、オイルバスでも、あるいはま
た不活性ガス雰囲気中でも、さらにまたゾーン延伸で
も、いずれでも実施できる。
本発明での界面活性剤を多量添加した原液を用いる場
合では、それを添加しない場合の条件よりもさらに高い
倍率で延伸を行うことができ、これによつて本発明の前
述繊維が得られるものである。
(発明の効果) 以上本発明のPVA系合成繊維は15グラム/デニールの
高い強度と高い弾性率、撚合せ摩耗回数10000回以上と
いつた優れた耐摩耗性、さらに優れた耐疲労性、耐熱水
性、耐薬品性を有する外に容易にパルプ化可能という利
点を有しており、従来からのタイヤコード、ロープ、ケ
ーブル、ベルト、ホース、帆布、漁網ネツト等の産業資
材分野以外にもセメントやFRP等における補強繊維や、
ブレーキ用摩耗材、合成紙不織布等の分野にも広く応用
できるものである。
(実施例) 以下実施例により、本発明をさらに具体的に説明する
が、本発明は実施例によつて何ら限定されるものではな
い。なお、以下に述べる実施例中並びに本明細書中にお
ける各種の物性値、パラメータは以下の方法で測定され
たものである。
1)引張強伸度、弾性率 JIS L−1013に準拠し、予め20℃65%pHの雰囲気下
で調湿されたマルチフイラメントヤーンを試長20cm、引
張速度10cm/分で定速伸長試験を行つて、破断強伸度、
初期弾性率を求めた。デニールは重量法により測定し
た。
2)密度 キシレン−四塩化炭素混合液を用いた密度勾配管にて
25℃で測定した。
3)干渉顕微鏡による干渉縞の観察と、屈折率の測定 カールツアイスイエナ社(CARL ZEISS JENA)の透過
型干渉顕微鏡ペラバルインタフアコ(RERAVAL Interpha
ko )を使用し、589nmの単色光を用いて干渉縞を観察
した。
また屈折率の測定は、特開昭48−35112(Dupont)に
記載の方法により、繊維を屈折率の異なる2液で封入
し、それぞれの干渉像をポラロイドで撮影、計測して求
めた。
4)耐摩耗性(撚合せ摩耗) Z方向に80T/m撚糸したマルチフイラメントヤーンを
第5図のようにS撚りして交差させ、1g/dの荷重をかけ
て20℃65%RH下での切断に至るまでの回転数を測定す
る。本発明においては、5回測定した平均値を以て摩耗
回数とした。
5)パルプ化率 長さ1mmに切断した繊維を5g/の濃度で水に分散さ
せ、該分散液をクリアランスなしの条件下でデイスクリ
フアイナー(例えば熊谷理機工業製KRK型)を用いて5
/分の速度で3回通した後、任意に約0.2mgのサンプ
ルを採取し、このサンプルをを透過型光学顕微鏡下で観
察し、計測する。
繊維は、上記の如く該繊維分散液を上記条件下のデイ
スクリフアイナーへ通したとき、1本の繊維が、部分的
あるいは全体的に、乾部分から無数の微細繊維が派生し
た羽毛のごとき形態、あるいは詰綿のごとき形態、ある
いはまた微細繊維に分割する寸前の繊維軸方向への亀裂
が認められる形態、となつているもの(本明細書では、
これらをフイブリル化した状態の繊維と定義する)と、
リフアイナーへ通す前の形態を依然として維持し、分割
寸前の軸方向への亀裂も認められない状態のもの(本明
細書では、これを非フイブリル化繊維と定義する)とに
区別出来る。
従つて前者のフイブリル化した繊維と、後者のフイブ
リル化しない繊維とを顕微鏡下で観察計測し、両者総数
中に占める前者数の割合をパルプ化率として表示するも
のである。
実施例1および比較例1、2 重合度3500、ケン化度99モル%のPVAを濃度12重量%
になるように水に浴解し、さらにホウ酸をPVAに対し重
量%の割合いで添加した。つぎにノニルフエノールエチ
レンオキサイド(20モル添加物)をPVAに対して夫々0
重量%(比較例1)、5重量%(実施例1)、25重量%
(比較例2)添加し、高せん断攪拌して紡糸原液とし
た。該原液を水酸化ナトリウム20g/、硫酸ナトリウム
320g/を水に浴解した70℃の凝固浴(一浴)中へ湿式
紡糸し、6m/分の速度で離浴せしめた。さらに常法に従
つてローラー延伸、中和、湿熱延伸、水洗、乾燥した。
そしてひき続き240℃で乾熱延伸を行つてボビンに巻取
つた。
得られたPVA系合成繊維の物性値を製造条件と共に第
1表に示す。ただし比較例2は乾燥時に単糸間の膠着が
激しく、乾熱延伸ができなかつた。
界面活性剤無添加の比較例1に比べて5重量%/PVA添
加した実施例1では30倍以上の延伸が可能であり、しか
も白化は認められなかつた。かかる繊維の干渉顕微鏡写
真を第1図に示す。第1図に示されるように干渉縞像に
おいて繊維軸に沿つた無数の筋が観測され、内部までフ
イブリル化が進み、しかも繊維軸に直交方向への筋、い
わゆるボイドの発生にともなう構造破壊がないことが示
される。
一方比較例1の繊維の延伸過程で白化が生じる手前で
取出したものを同様に観測すると、第3図に示すように
繊維軸に沿つた筋は全く認められず、フイブリル集合体
構造が生じていない。そしてさらに延伸を進めると白化
し、第4図に示すように繊維軸に直交方向にも無数の筋
が認められ、フイブリルというよりボイドの発生にとも
なう構造破壊が観測される。本発明による実施例1で得
られた繊維は第1表に示す如く、密度、繊維軸に直交方
向の屈折率共に高く、高強度、高弾性率であり、また耐
摩耗性が極めて良好である。
尚本実施例1並びに比較例1で得られたそれぞれの繊
維を3mmの長さに切断し、石綿の代りにセメントスラリ
ーに分散させ、スレート板を抄造したところ、比較例
1、即ち従来のフイブリル化の進んでいないPVA系繊維
ではセメント粒子の保持力に欠けるために若干量のセル
ロース系パルプの併用を余議なくされたのに対し、本発
明による実施例1のPVA系繊維でパルプ化したものでは
セルロース系パルプの添加を必要とせず、その有用性を
確認することができた。
実施例2〜3、比較例3〜5 重合度3300、ケン化度99.5%のPVAと硼酸を、DMSOと
水の混合浴媒(重量混合割合DMSO/水=7/3)に90℃で浴
解し、PVA濃度11%、硼酸2.2%/PVAの紡糸原液を得た。
庶糖と炭素数16の脂肪酸のエステルよりなる多価アルコ
ール系ノニオン界面活性剤を50℃でDMSOに浴解して10%
浴液を得た。90℃のPVA紡糸原液と界面活性剤浴液を別
々のギアポンプで計量し、配管途中の36エレメントのス
タチツクミキサーで攪拌しながら直ちにノズルを通し
て、苛性ソーダ8g/と芒硝250g/よりなる80℃の凝固
浴中に湿式紡糸し、4m/分の速度で離浴せしめた。この
際界面活性剤の添加量は0%/PVA(比較例3)、0.5%/
PVA(比較例4)、4%/PVA(実施例2)、8%/PVA
(実施例3)、25%/PVA(比較例5)となるよう界面活
性剤浴液を吐出するギアポンプの液量を変更した。なお
比較例3は界面活性剤を含まない従来の対照である。得
られた離浴糸をローラー延伸、中和、湿熱延伸、水洗、
乾燥した。次いで236℃で乾熱延伸を施こした。試料を
採取する延伸率は毛羽が出始める倍率の0.95掛けとし
た。これらの結果を第2表に示した。
第2表に示されるように本実施例の延伸糸は全延伸倍
率が大きくなり、密度、繊維軸に直交方向の屈折率共に
高い値であり、白化が生じず光沢に優れた高強度、高弾
性率であり、耐摩耗性も優れている。またこれら実施例
の繊維は耐水性、耐疲労性も良好であつた。さらにまた
これら実施例の繊維の、干渉顕微鏡による観察では、繊
維軸に沿つた無数の筋が観察され、しかも繊維軸に直交
方向への筋が全く認められないものであつた。そしてそ
れら繊維はパルプ化が容易なものであつた。第2図に実
施例2で得られた繊維の干渉顕微鏡写真を示す。
一方比較例3の繊維について同様な観察な行なつた
所、繊維軸方向の細いスリツト状の干渉縞の乱れはとほ
んど観察されず、繊維軸に直交方向にも無数の筋が認め
られ、フイブリルというよりボイドの発生にともなう構
造破壊が観察された。
【図面の簡単な説明】
第1図から第4図は、繊維の内部高次構造を示す図面に
代る写真で、第1図および第2図は本発明のPVA繊維
(延伸糸)のもの、第3図は従来のPVA繊維の白化前の
延伸糸のもの、第4図は第3図の繊維をさらに高倍率延
伸した延伸糸のものをそれぞれ示す。また第5図は、本
発明での耐摩耗性測定手段を説明する概念図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 西山 正一 岡山県岡山市海岸通1丁目2番1号 株 式会社クラレ内 (72)発明者 中原 文夫 岡山県岡山市海岸通1丁目2番1号 株 式会社クラレ内 審査官 船越 巧子 (56)参考文献 特開 昭63−85105(JP,A) 特開 昭63−165509(JP,A) 実開 昭61−202489(JP,U) 特公 昭45−21882(JP,B1)

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重合度が1500以上のポリビニルアルコール
    系ポリマーからなり、透過型干渉顕微鏡像において繊維
    軸方向に無数のスリット状の乱れのある干渉縞を示し、
    引張強度が15グラム/デニール以上、撚合せ摩耗回数が
    10000回以上であるポリビニルアルコール系合成繊維。
  2. 【請求項2】デイスクリファイナーで湿式叩解した後の
    パルプ化率が20%以上である請求項1に記載のポリビニ
    ルアルコール系合成繊維。
  3. 【請求項3】25℃における密度が1.30g/cm3以上である
    請求項1に記載のポリビニルアルコール系合成繊維。
  4. 【請求項4】繊維軸に直交方向の屈折率が1.525以上で
    ある請求項1あるいは3のいずれかに記載のポリビニル
    アルコール系合成繊維。
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JPS6385105A (ja) * 1986-09-22 1988-04-15 Toray Ind Inc 耐摩耗性に優れた有機系高強度繊維
JPS63165509A (ja) * 1986-12-27 1988-07-08 Unitika Ltd 高結晶融解エネルギ−ポリビニルアルコ−ル繊維及びその製造法

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