JP2544317B2 - 流動接触分解触媒組成物およびその製法ならびにそれを用いる炭化水素油の流動接触分解法 - Google Patents

流動接触分解触媒組成物およびその製法ならびにそれを用いる炭化水素油の流動接触分解法

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JP2544317B2 JP2172500A JP17250090A JP2544317B2 JP 2544317 B2 JP2544317 B2 JP 2544317B2 JP 2172500 A JP2172500 A JP 2172500A JP 17250090 A JP17250090 A JP 17250090A JP 2544317 B2 JP2544317 B2 JP 2544317B2
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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は水熱安定性に優れた結晶性アルミノケイ酸塩
を用いた流動接触分解触媒組成物およびその製造方法な
らびにそれを用いる炭化水素油の流動接触分解法に関
し、さらに詳しくは、安定化Yゼオライトに一定の熱的
負荷をかけることにより得られる特定構造を有する水熱
安定性に優れた結晶性アルミノケイ酸塩を用いた流動接
触分解触媒組成物に関する。
(従来技術) 一般に石油精製においてはオクタン価の高い接触分解
ガソリンを収率よく製造することは最も重要な課題とな
っており、その目的でガソリンを製造する為に原油の常
圧蒸留あるいは減圧蒸留で得られる軽油留分や常圧蒸留
残油及び減圧蒸留残油をXもしくはYゼオライトあるい
はUSYゼオライト(超安定Yゼオライト)のような安定
化ゼオライトと無機質母体とからなる触媒を用いて接触
分解する方法が採用されている。
上記を目的とした触媒についてはすでに多くの技術が
提案されており、例えば安定化Yゼオライトに関しては
米国特許第3,293,192号、第3,402,996号に開示されてい
る。
(発明が解決しようとする課題) しかし、安定化Yゼオライトを含有する触媒を用い炭
化水素油を接触分解した場合、ガソリン留分中のオレフ
ィン分が多くなったり、あるいは灯・軽油留分であるLC
Oの収率が低い等の問題点がある。上記問題を解決する
ためにYあるいは安定化Yゼオライトを希土類金属で修
飾した触媒組成物が提供されているがオレフィン量の減
少は達成出来てもオクタン価が低下するという欠点があ
る。またマトリックスにシリカ−アルミナ、γ−アルミ
ナ等を使用し、Yあるいは安定化Yゼオライトにこれら
を混合しマトリックスにも活性を持たせる技術も提供さ
れているが水素の発生、あるいはコークの生成が増加し
てしまうという欠点がある。
本発明が解決しようとする課題は、オレフィン分が少
いにもかかわらずオクタン価が高く、さらに水素の発生
とコークの生成を抑制するような炭化水素油の接触分解
用触媒組成物およびその製法ならびにそれを用いる炭化
水素油の接触分解法を提供することにある。
(課題を解決するための手段) 本発明者等は上記課題を解決するため鋭意検討した結
果、安定化Yゼオライトに一定の条件で熱的負荷をかけ
た結晶性アルミノケイ酸塩がSiO2/Al2O3モル比、単位格
子寸法および細孔分布において特有の値を示す新規な構
造を有し、この新規な構造を有する結晶性アルミノケイ
酸塩と無機酸化物マトリックスの混合物を用いれば上記
課題を解決するのに有効であることを見い出し本発明を
完成するに至った。
すなわち、第1の発明の要旨は、SiO2/Al2O3モル比が
5〜15、単位格子寸法が24.50以上24.70Å未満、アルカ
リ金属含有量が酸化物換算で0.02重量%以上1重量%未
満である安定化Yゼオライトを600〜1200℃の温度で5
〜300分間、空気または窒素雰囲気下で上記安定化Yゼ
オライトの結晶化度低下率20%以下で焼成し、(A)化
学組成分析によるバルクのSiO2/Al2O3モル比が5〜15、
(B)ゼオライト骨格内Alの全Alに対するモル比が0.3
〜0.6、(C)単位格子寸法が24.45Å未満、(D)アル
カリ金属含量が酸化物換算で0.02重量%以上1重量%未
満、(E)細孔分布において50Å付近および180Å付近
に特徴的なピークを示し、かつ100Å以上の細孔容積が
全細孔容積の10〜40%、(F)Yゼオライトの主要なX
線回折パターン、を有する結晶性アルミノケイ酸塩と無
機酸化物マトリックスとの混合物からなることを特徴と
する炭化水素油の流動接触分解触媒組成物に存し、第2
の発明の要旨は、SiO2/Al2O3モル比が5〜15、単位格子
寸法が24.50以上24.70Å未満、アルカリ金属含有量が酸
化物換算で0.02重量%以上1重量%未満である安定化Y
ゼオライトを600〜1200℃の温度で5〜300分間、空気ま
たは窒素雰囲気下で上記安定化Yゼオライトの結晶化度
低下率20%以下で焼成し、無機酸化物マトリックスを混
合することを特徴とする上記第1の発明の接触組成物の
製法に存し、第3の発明の要旨は、上記第1の発明の触
媒組成物を用いて、ガソリン範囲以上で沸騰する炭化水
素油混合物を流動接触分解することを特徴とする炭化水
素油の流動接触分解法に存する。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の触媒組成物の製造原料として用いる結晶性ア
ルミノケイ酸塩の製造において出発原料として使用する
安定化Yゼオライトは、いわゆるYゼオライトを高温、
水蒸気処理を数回行うことにより得られ、結晶度の劣化
に対し耐性を示すものである。
安定化YゼオライトはSiO2/Al2O3モル比が5〜15、単
位格子寸法は約24.50以上24.70Å未満、好ましくは約2
4.50以上24.60Å未満である。
また、アルカリ金属含有量が酸化物換算で約0.02重量
%以上1重量%未満、好ましくは、約0.05重量%以上0.
8重量%未満であることを特徴とするYゼオライトのこ
とを意味する。
安定化Yゼオライトは天然のホージャサイトと基本的
には同一の結晶構造を有し、酸化物として表して組成
式: (式中、RはNa、K又はその他のアルカリ金属イオンま
たはアルカリ土類金属イオンであり、mはその原子価で
ある。)を有する。本発明方法で使用する原料の安定化
Yゼオライトは、その中でも の含有率が低いもので、上記係数が0.01〜0.1相当のも
のである。
すなわち、本発明で用いる安定化Yゼオライトは、下
記の特性を有する結晶性アルミノケイ酸塩である。
本発明の触媒組成物中で用いる結晶性アルミノケイ酸
塩(以下、この種の記載を「本発明の結晶性アルミノケ
イ酸塩」といった具合に簡略化して記載する。)は、上
記安定化Yゼオライトを一定の熱的負荷(以下、「ヒー
トショック」ということもある。)をかけることにより
得ることができる。熱的負荷は、約600〜1200℃、好ま
しくは約600〜1000℃の温度で約5〜300分間、好ましく
は約5〜100分間の範囲内で、かつ上記安定化Yゼオラ
イトの結晶化度低下率が約20%以下、好ましくは約15%
以下となる条件で焼成すればよい。
温度が低すぎると所望のものが得られず、逆に高過ぎ
たり、焼成時間が長過ぎるとゼオライトの結晶構造が崩
壊する。通常、電気炉または焼成炉内で空気または窒素
雰囲気下の常圧で焼成を行う。
ヒートショック条件下では、ゼオライトの結晶構造を
出来るだけ崩壊しないようにすることが望ましく、上記
安定化Yゼオライトの結晶化度低下率が約20%以下、好
ましくは約15%以下である条件下で行う。
安定化Yゼオライトの結晶化度は、ASTM D−3906
(Standard Test Method for Relative Zeolite Diffra
ction Intensities)法に従って求められる。
標準試料はY型ゼオライト(Si/Al比5.0、単位格子寸
法24.58Å、Na2O量0.3重量%)とし、試験試料と標準試
料との相対的X線回折の強度比として求められる。
本発明のヒートショックによる安定化Yゼオライトの
結晶化度低下率は、次式から求められる。
ヒートショックを与えるに際し、試料は上記温度到達
後、焼成炉内に入れても良いし、あるいは試料を焼成炉
内に置いた後室温から徐々に昇温し所定温度に到達させ
ても良く、昇温速度は特に規定されない。
ヒートショック結晶性アルミノケイ酸塩は、後に、無
機酸化物マトリックスと混合して、炭化水素油の接触分
解に供せられるが、ヒートショックを与える時期は、こ
の混合前であり、ヒートショックを与える時期をこの混
合後にした場合には本発明の特有の効果は得られない。
勿論、この混合後の模擬平衡化の為の熱処理は、無機
酸化物マトリックスの配合後であるし、また苛酷な条件
下で行われるためヒートショックとは区別される。
なお、本発明のヒートショック結晶性アルミノケイ酸
塩は、安定化Yゼオライトを熱処理して得られるが、Y
ゼオライトの熱処理で本発明のヒートショック結晶性ア
ルミノケイ酸塩を直接製造しようとすると結晶構造が崩
壊してしまい目的を達することができない。その理由は
つまびらかではないが、Yゼオライトを熱処理してまず
安定化Yゼオライトを製し、その状態で結晶構造が落ち
着く、すなわち安定化する、のを待ってから改めて熱処
理を行うことが必要なためと一応考えられる。
本発明のヒートショック結晶性アルミノケイ酸塩は、
上記方法により得ることができ、新規な構造を有する。
本発明のヒートショック結晶性アルミノケイ酸塩は、
化学組成分析によるバルクのSiO2/Al2O3モル比が約5〜
15、好ましくは約5〜12である。
単位格子寸法は約24.45Å未満、好ましくは約24.42Å
未満である。単位格子寸法の測定はASTM D−3942/85
に準拠し、X線回折のピークを用いて計算することがで
きる。この値が大き過ぎると耐水熱性が悪くなる。
全Alモル比に対するゼオライト骨格内Alの割合は約0.
3〜0.6、好ましくは約0.35〜0.6である。この値は上記
化学組成分析によるSiO2/Al2O3モル比および単位格子寸
法から次式(1)〜(3)によって算出される(H.K.Be
yer et al.、J.Chem.Soc.、Faraday Trans.1、1985、8
1、2899頁) NAl=(a0−2.425)/0.000868 (1) a0:単位格子寸法〔nm〕 NAl:単位格子当りのAl原子の数 (Si/Al)計算式=(192−NAl)/NAl (2) ゼオライト骨格内Al/全Al =(Si/Al)化学組成分析/(Si/Al)計算式 (3) なお、(2)式は、Yゼオライトの単位格子寸法当り
の(Si+Al)の原子数が192個であることから求められ
る。
バルクのSiO2/Al2O3モル比が同一の場合、全Alに対す
るゼオライト骨格内Alのモル比が小さ過ぎると接触分解
に必要な触媒活性が失われる。また、骨格外Alすなわち
アモルファスのAl比率が高くなることから選択性もアモ
ルファス触媒に近い挙動を示し、水素の発生、コークの
生成量およびガソリン中のオレフィン量が増加する。逆
に、この割合が大き過ぎると、ガソリン中のオレフィン
量は減少するが、触媒の耐水熱性は低下し、またコーク
生成量も増加する。
アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属酸化物の含有
量は約0.02重量%以上約1.0重量%未満、好ましくは約
0.05重量%以上約0.8重量%未満である。結晶性金属ケ
イ酸塩中にアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属が多
量存在すると触媒の分解活性が低下するとともに原料
油、特に重質油原料油中に多く含まれている重金属であ
るニッケル、バナジウム等が付着した場合、活性劣化を
引き起しやすいという問題が生じる。アルカリ金属ある
いはアルカリ土類金属酸化物の含有量が0.02重量%を下
回ると結晶構造の崩壊が起きやすく、かつ含窒素炭化水
素油を接触分解する際の触媒活性の低下傾向が増大する
ので好ましくない。
全細孔容積に対する100Å以上の細孔容積の割合は約1
0〜40%、好ましくは約10〜35%である。この割合が少
な過ぎると小さい細孔の比率が大きくなり、分子径の大
きなものの反応性が悪くなり、ボトム分解能が低下し、
また、分解後の生成物が活性点よりすみやかに離脱しに
くくなるため、コーク生成量の増大を招く。逆に多過ぎ
ると大きい細孔の比率が大きくなり表面積が減少し反応
性が悪くなる。
また、本発明のヒートショック結晶性アルミノケイ酸
塩は細孔分布において、約50Å付近および約180Å付近
に特徴的なピークを示し、かつ、Yゼオライトの主要な
X線回折パターンを有する。細孔分布および細孔容積
は、BET表面積測定法と毛管凝縮法を適用することによ
り求めることができる。
本発明のヒートショック結晶性アルミノケイ酸塩は、
安定化Yゼオライトに一定の熱的負荷をかけることによ
り得られるが、その大きな特徴は、単位格子寸法が約2
4.45Å未満であり、安定化Yゼオライトの約24.50Å以
上24.70Å未満と比べて小さくなっていることと細孔分
布において約50Å付近と約180Å付近に特徴的なピーク
を示す点である。
さらにもう一つの特徴として、27Al−MAS(Magic Ang
lie Spinning)NMRスペクトルによれば安定化Yゼオラ
イトが2つのピークを示すのに対し(第2図)本発明の
ヒートショック結晶性アルミノケイ酸塩は3つの特徴的
なピークを示す(第1図)。第1図および第2図のピー
クは4配位のAlすなわち結晶格子内のAlによるピーク
を示し、ピークは5配位のAlのピークを示し、ピーク
は6配位のAlすなわち結晶格子外のAlによるピークを
示す。
このピークにあらわれる5配位のAlは、例えばJ.A
m.Chem.Soc.、1986、108、6158−6162に記載されている
ように結晶格子内の4配位のAlから格子外の6配位のAl
に移る途中の不安定な状態のAlの形態と思われる。
しかし、ヒートショック後、長時間経過しても触媒に
5配位のAlのピークは存在するが、水和状態になると
とのピークに隠れ、5配位のピークは検出されなくな
る。
ここでいう水和状態とは、空気中、常温で放置して約
1週間程度で達する状態をいう。
本発明のヒートショック結晶性アルミノケイ酸塩は、
上記のような、新規な構造を有するため、特にボトムク
ラッキング性能が良いという特徴を示し、さらに後述す
るような特有の効果を示したものと思われる。
本発明のヒートショック結晶性アルミノケイ酸塩の特
性を下記に示す。
また、本発明のヒートショック結晶性アルミノケイ酸
塩は実質上、第3図に示すX線回折パターンを有する。
そのX線回折図は代表例としては下記第1表のような値
を有する。すなわち最も強い強度が実測された格子面間
隔(d)は14.1±0.2Å、5.61±0.1Å、3.72±0.1Åで
ある。
本発明の接触分解法は上記ヒートショック結晶性アル
ミノケイ酸塩と無機酸化物マトリックスとの混合物を用
いて炭化水素油を接触分解することにある。
ここで無機酸化物マトリックスとしては、例えばシリ
カ、アルミナ、ボリア、クロミア、マグネシア、ジルコ
ニア、チタニア、シリカ−アルミナ、シリカ−マグネシ
ア、シリカ−ジルコニア、クロミア−アルミナ、チタニ
ア−アルミナ、チタニア−シリカ、チタニア−ジルコニ
ア、アルミナ−ジルコニア等、あるいはこれらの混合物
であり、モンモリロナイト、カオリン、ハロイサイト、
ベントナイト、アタバルガイト、ボーキサイト等の少な
くとも1種の粘土鉱物を含有することも出来る。
上記混合物の製造法は通常の方法によることができ、
代表的には適当な無機酸化物マトリックスとして、例え
ばシリカ−アルミナヒドロゲル、シリカゾルまたはアル
ミナゾルの水性スラリーを用い、それに上述のヒートシ
ョック結晶性アルミノケイ酸塩を加え、よく混合撹拌し
た後、噴霧乾燥し、触媒微粒子として得ることができ
る。
この場合において、混合した触媒組成物中のヒートシ
ョック結晶性アルミノケイ酸塩が約5〜60重量%、好ま
しくは約10〜50重量%、無機酸化物マトリックスが約40
〜95重量%、好ましくは約50〜90重量%の割合になるよ
うに添加して使用することができる。
接触分解は公知の接触分解法により行うことができ
る。
本発明におけるガソリン範囲以上で沸騰する炭化水素
混合物とは、原油の常圧蒸留あるいは減圧蒸留で得られ
る軽油留分や常圧蒸留残油および減圧蒸留残油を意味
し、勿論コーカー軽油、溶剤脱瀝油、溶剤脱瀝アスファ
ルト、タールサンド油、シェールオイル油、石炭液化油
をも包含するものである。
商業規模での接触分解は通常垂直に据付けられたクラ
ッキング反応器と再生器とから成り、前記2種の容器に
前記触媒を連続的に循環させる。再生器から出てくる熱
い再生触媒は分解される油と混合されてクラッキング反
応器の中を上向の方向に導かれる。その結果、一般に
「コーク」と呼ばれる炭素質が触媒上に析出することに
より、失活した触媒は分解生成物から分離され、ストリ
ッピング後再生器に移される。分解生成物は、ドライガ
ス、LPG、ガソリン留分および例えば軽質サイクル油(L
CO)、重質サイクル油(HCO)およびスラリー油の様な
1種又は2種以上の重質留分に分離される。勿論、これ
ら重質留分を反応器に再循環させることにより分解反応
をより進めることも可能である。再生器に移された使用
済み触媒のコークは空気で燃焼されることによって再生
され、再び反応器に循環される。
運転条件としては、圧力は常圧〜5kg/cm2、好ましく
は常圧〜3kg/cm2で、温度は400℃〜600℃好ましくは450
℃〜550℃である。また触媒/原料の重量比は2〜20、
好ましくは5〜15である。
(発明の効果) 本発明によれば安定化Yゼオライトに特定の熱的負荷
をかけたため、新規な構造を有する結晶性アルミノケイ
酸塩を得ることができた。このヒートショック結晶性ア
ルミノケイ酸塩を含有する触媒組成物を用い炭化水素混
合物を接触分解することにより、オレフィン分の少ない
高オクタン価のガソリンを得ることができる。
さらに、本発明の新規な結晶性アルミノケイ酸塩は、
単位格子寸法が小さく、細孔分布において50Å付近およ
び180Å付近に特徴的なピークを有し、かつ100Å以上の
細孔容積が全細孔容積の10〜40%を有するという特徴的
な構成を有するため、灯、軽油に相当する中間留分(LC
O)の収率が高く、しかも水素の発生およびコークの生
成が少い。本発明の炭化水素油の接触分解法によれば、
有用なガソリンおよびLPGが高い選択率で得られ水素や
コークの生成を抑制できるという利点を有する。
また、ヒートショック結晶性アルミノケイ酸塩は水熱
安定性に優れるため触媒の寿命も延び、安定した製品収
率を得ることが期待できる。
(実施例) 以下に、本発明の内容を実施例と比較例により具体的
に説明する。
実施例1 SiO2/Al2O3モル比が7、アルカリ金属含有量が酸化物
換算で0.2wt%、単位格子寸法が約24.58Åの安定化Yゼ
オライトを電気炉で空気雰囲気、常圧下、800℃で10分
間焼成することにより水熱安定性に優れた結晶性アルミ
ノケイ酸塩を得た。生成物を分析したところ、Yゼオラ
イトの主要なX線回折パターンを示し、かつ下記の物性
値を有するものであった。また、結晶性は原料の安定化
Yゼオライト116%に対し、ヒートショック後では112%
であった(結晶性低下率3.5%)。細孔分布は第4図に
示した。本触媒をHZ−1とする。
SiO2/Al2O3モル比 7 ゼオライト骨格内Al/全Alモル比 0.4 単位格子寸法、Å 24.38 アルカリ金属含有量、wt% 0.2 100Å以上の細孔容積/全細孔溶液、% 25 (触媒Aの調製) 得られた生成物の接触分解特性を評価するため、実施
例1で得られたHZ−1を最終触媒中の含有量が40wt%に
なるように、またカオリンを最終触媒中の含有量が40wt
%となるようにシリカゾルに加えた。次いでこのスラリ
ーをよく混合攪拌した後、スプレードライヤーで乾燥微
粒化した。それを触媒Aとする。
(触媒Bの調製) 実施例1で得られたHZ−1に代えて安定化Yゼオライ
トを用いた以外は、上記記載と同様の方法で触媒を調製
した。これを触媒Bとする。
実施例2、比較例1 (マイクロ活性試験) ASTM基準の固定床のマイクロ活性試験(Micro−activ
ity Test)装置を使用して、同一原料油、同一測定条件
で触媒A、Bの接触分解特性を試験した。試験に先立
ち、各供試触媒は模擬平衡化のため800℃で6時間100%
スチーム雰囲気下で処理した。原料油には脱硫減圧軽油
を使用し、試験条件は下記の通りとした。試験結果を第
2表に示す。
反応温度:500℃ 触媒/原料油:3.0(重量比) WHSV:16h-1 試験時間:75秒 なお、マイクロ活性試験は固定床の試験装置で行った
ものであり、好ましい条件は本文中に記載した工業的な
流動接触分解装置とは必ずしも一致しない。
実施例3、比較例2 (ベンチスケールプラント活性試験) 商業規模の接触分解装置をスケールダウンした装置で
反応器と触媒再生器とを持った循環式流動床反応装置で
あるベンチスケールプラントを使用して触媒A、Bの接
触分解特性を試験した。触媒はマイクロ活性試験の時と
同様に模擬平衡化を行った。原料油には脱硫減圧軽油を
使用し、試験条件は下記の通りとした。試験は触媒A、
Bにつき触媒/原料油4、7、9.5、12.5の条件でそれ
ぞれ行い、得られた結果から、転化率68%を基準にし試
験結果の比較を行った。試験結果を第3表に示す。
反応温度:500℃ 触媒/原料油:4、7、9.5、12.5 触媒循環量:60g/min 第2表および第3表から明らかな通り、触媒Aは触媒
Bに比べて、オレフィンが少ないにもかかわらず高オク
タン価を示す。また、中間留分(LCO)の得率が高く、
かつ水素の発生およびコークの生成を抑制することがで
きた。そして本発明の炭化水素油の接触分解法によれ
ば、有用なガソリンおよびLPGが高い選択率で得られ水
素やコークの生成を抑制できるという顕著な効果を示
す。
耐水熱性の評価 本発明のヒートショック結晶性アルミノケイ酸塩の耐
水熱性を下記の条件にて評価した。結果を第4表に示
す。
条 件 温度;500、600、700℃ 雰囲気;スチーム100% 時間;1.0hr 評価項目; 上記時間経過後の触媒について、(1) 単位格子寸
法の変化および、(2) ヘキサンのクラッキング反応
における反応速度定数の変化をみた。
なお、ヘキサンのクラッキングは、常圧、500℃、ヘ
キサンを0.276g/minで5min、触媒量0.3g、0.7gおよび1.
0gで流して行った。
第4表の結果からヒートショック結晶性アルミノケイ
酸塩は、SiO2/Al2O3値がほぼ等しい安定化Yゼオライト
に比してスチーミングの温度が高くなっても、単位格子
寸法およびヘキサンのクラッキング反応速度定数の低下
が小さく、水熱安定性に優れていることがわかる。
【図面の簡単な説明】
第1図はヒートショック結晶性アルミノケイ酸塩の、第
2図は安定化Yゼオライトの27Al−MASNMRのスペクトル
を示し、図中横軸は、標準物質であるAl(NO3のピ
ークからのシフト値(ppm)を、縦軸はスペクトル強度
であり;第3図は、本発明の実施例1で得られたヒート
ショック結晶性アルミノケイ酸塩の銅K−α線でのX線
回折パターンであり、図中、1、2、および3は最も強
い回折を示す格子面間隔(d)のピークで各々、14.1±
0.2Å、5.61±0.1Å、3.72±0.1Åであり;そして第4
図は、本発明の実施例1で得られたヒートショック結晶
性アルミノケイ酸塩の細孔分布であり、図中横軸は細孔
径を、縦軸は細孔容積を示す。
フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭54−122700(JP,A) 特開 昭57−100914(JP,A) 特開 昭62−106846(JP,A)

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】SiO2/Al2O3モル比が5〜15、単位格子寸法
    が24.50以上24.70Å未満、アルカリ金属含有量が酸化物
    換算で0.02重量%以上1重量%未満である安定化Yゼオ
    ライトを600〜1200℃の温度で5〜300分間、空気または
    窒素雰囲気下で上記安定化Yゼオライトの結晶化度低下
    率20%以下で焼成し、(A)化学組成分析によるバルク
    のSiO2/Al2O3モル比が5〜15、(B)ゼオライト骨格内
    Alの全Alに対するモル比が0.3〜0.6、(C)単位格子寸
    法が24.45Å未満、(D)アルカリ金属含量が酸化物換
    算で0.02重量%以上1重量%未満、(E)細孔分布にお
    いて50Å付近および180Å付近に特徴的なピークを示
    し、かつ100Å以上の細孔容積が全細孔容積の10〜40
    %、(F)Yゼオライトの主要なX線回折パターン、を
    有する結晶性アルミノケイ酸塩と無機酸化物マトリック
    スとの混合物からなることを特徴とする炭化水素油の流
    動接触分解触媒組成物。
  2. 【請求項2】SiO2/Al2O3モル比が5〜15、単位格子寸法
    が24.50以上24.70Å未満、アルカリ金属含有量が酸化物
    換算で0.02重量%以上1重量%未満である安定化Yゼオ
    ライトを600〜1200℃の温度で5〜300分間、空気または
    窒素雰囲気下で上記安定化Yゼオライトの結晶化度低下
    率20%以下で焼成し、無機酸化物マトリックスを混合す
    ることを特徴とする請求項1に記載の触媒組成物の製
    法。
  3. 【請求項3】請求項1に記載の触媒組成物を用いて、ガ
    ソリン範囲以上で沸騰する炭化水素油混合物を流動接触
    分解することを特徴とする炭化水素油の流動接触分解
    法。
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