JP2542560B2 - 2−イソチオシアナトアシルアミドメチル化芳香族ポリスルホンおよびその製造方法 - Google Patents

2−イソチオシアナトアシルアミドメチル化芳香族ポリスルホンおよびその製造方法

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JP2542560B2 JP5340985A JP34098593A JP2542560B2 JP 2542560 B2 JP2542560 B2 JP 2542560B2 JP 5340985 A JP5340985 A JP 5340985A JP 34098593 A JP34098593 A JP 34098593A JP 2542560 B2 JP2542560 B2 JP 2542560B2
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和雄 寺本
直人 穂苅
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、イオン性物質や生理活
性物質等の吸着、分離、固定等に用いるのに有用なアミ
ノ基を有する芳香族ポリスルホン重合体またはその成型
品、およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】生理活性物質を不溶性担体に固定化した
ものは、アフィニティークロマトグラフ用吸着剤、治療
用血液処理剤、細胞培養用機材、抗菌性材料、その他、
分析用試薬などとして広く利用されており、今後、さら
に幅広い応用が期待される重要な分野である。
【0003】反応性の官能基を持つ重合体は、生理活性
物質の固定化等に用い得るのでアフィニティークロマト
グラフ用吸着剤、治療用血液処理剤、抗菌性材料等の原
料として、有用である。反応性の官能基を持つ重合体と
しては、ポリスチレンの誘導体が良く知られているが、
脆い重合体なので成型に限界があり、例えば、中空糸や
カテーテルには成型できない欠点がある。
【0004】芳香族ポリスルホンは、成型性が良いの
で、エンジニアリングプラスチックとして汎用されてい
るが、中空糸の形で物質分離用途にも用いられている。
ポリスルホンに反応性の官能基を導入すれば、生理活性
物質の固定化や、物質の選択的分離等にも用いることが
でき、さらに用途の広がることが期待される。
【0005】しかし、ポリスルホンに反応性の官能基を
導入する反応はあまり知られておらず、スルホン化反応
〔A.Noshay,L.M.Robeson,Jou
rnal of Applied Polymer S
cience,20,1885(1976)〕や、ハロ
メチル化反応〔A.Warshawskyほか,Jou
rnal of Polymer Science,P
art A,Polymer Chemistry,2
8,2885(1990)〕などの数例にすぎない。そ
して、前者には限られた用途しか無く、また、広い用途
の期待される後者には、発癌性の高い試薬(アルキルハ
ロメチルエーテル)を用いねばならなかったり、可溶性
のポリマーがゲル化したりする欠点がある。可溶性のポ
リマーが得られれば、利用の範囲が画期的に広がるにも
拘らず、得にくい現状である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明者等は、かかる
従来技術の問題点に鑑み、有用な反応性の官能基を導入
したポリスルホンが簡便な方法で得られないか、種々検
討した結果、ポリスルホンのアミドメチル化反応法によ
り得られるハロアセトアミドメチル化ポリスルホンから
2−イソチオシアナトアセトアミドメチル化ポリスルホ
ンの調製に成功し、本発明に到達した。
【0007】すなわち、本発明は、イオン性物質や生理
活性物質の吸着、分離、固定等の処理材料として有用な
可溶性の新規イソチオシアナトまたはチオシアナトアミ
ドメチル化芳香族ポリスルホン重合体を提供することを
目的とするものである。
【0008】また、本発明は、イオン性物質や生理活性
物質の吸着、分離、固定等に好適に使用し得る前記芳香
族ポリスルホン重合体からなる成型品を提供することを
目的とするものである。
【0009】また、本発明は、前記芳香族ポリスルホン
重合体またはその成型品を製造する方法を提供すること
を目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明は、以下の技術的
手段から構成される。 (1)主鎖の芳香族ポリスルホンに、側鎖として、下記
一般式(I)で示される基(但し、式中、Aは−NCS
または−SCN基を、RおよびRは水素原子を、低
級アルキル基またはアラリル基を示し、RとRは同
一でも異なっていても良い。)を導入した芳香核を有す
る芳香族ポリスルホン重合体またはその成型品。 A−CH(R)−CO−N(R)−CH− (I)
【0011】(2)主鎖の芳香族ポリスルホンが、ポリ
(p−フェニレンエーテルスルホン)であることを特徴
とする前記の芳香族ポリスルホン重合体またはその成型
品。
【0012】(3)主鎖の芳香族ポリスルホンが、ユー
デルポリスルホンであることを特徴とする前記(1)記
載の芳香族ポリスルホン重合体またはその成型品。
【0013】(4)主鎖の芳香族ポリスルホンが、可溶
性であることを特徴とする前記(1)記載の芳香族ポリ
スルホン重合体またはその成型品。
【0014】(5)成型品の形状が、シャーレ、瓶、
膜、繊維、中空糸、粒状物またはこれ等を用いた組み立
て品であることを特徴とする前記(1)記載の芳香族ポ
リスルホン重合体またはその成型品。
【0015】(6)ハロアセトアミドメチル基を有する
芳香族ポリスルホンまたはその成型品を、ロダン酸塩と
接触させることを特徴とする前記(1)記載の芳香族ポ
リスルホン重合体またはその成型品の製造方法。
【0016】本発明でいう、側鎖として一般式(1)で
示される基を導入した芳香核を有する芳香族ポリスルホ
ン重合体とは、主鎖に芳香核とスルホニル基をもつポリ
スルホン重合体であって、その芳香核の一部が一般式
(1)で示される基で置換されているものなら何でも良
く、特に制限はないが、その具体例として、市場に広く
出回っているポリ(p−フェニレンエーテルスルホ
ン):−{(p−C6 4 )−SO2 −(p−C
6 4 )−O−}n −や、ユーデル・ポリスルホン:−
{(p−C6 4 )−SO2 −(p−C6 4 )−O−
(p−C6 4 )−C(CH3 2 −(p−C6 4
−O}n −のほか、−{(p−C6 4 )−SO2
(p−C6 4 )−O−(p−C6 4 )−O}n −、
−{(p−C6 4 )−SO2 −(p−C6 4 )−S
−(p−C6 4 )−O}n −、−(p−C6 4 )−
SO2 −(p−C6 4 )−C(CF3 2 −(p−C
6 4 )−O−(p−C6 4 )−O}n −、等の構造
をした重合体を主鎖とするものであって、かつ、その芳
香核の一部が前記一般式(I)で示される基、例えば、
2−イソチオシアナトアセトアミドメチル基、2−イソ
チオシアナトプロピオンアミドメチル基等で置換されて
いるものをあげることができる。
【0017】本発明でいう一般式(I)中のAは、チオ
シアナト基(−S−C≡N)、または、イソチオシアナ
ト基(−N=C=S)を表す。一般に、後者の方が安定
で、チオシアナト基は加熱によってイソチオシアナト基
に転移する。
【0018】本発明の重合体中における一般式(I)で
示される基の適正な量は、重合体の化学構造および用途
により異なるが、通常、繰り返し単位当たり0.01〜
4個である。一般式(I)で示される基の量が多いもの
の成型品は機械的に脆くなるので架橋基を導入したもの
が好ましい。普通、一般式(1)で示される基の量が多
いものは吸着用途に用いられ、少ないものは固定化用あ
るいは選択分離用に用いられる。少ないものは、ポリス
ルホンに近い成型性を示す。
【0019】本発明の成型品の形状は、シャーレ、瓶、
管、膜、繊維、中空糸、粒状物またはこれらを用いた組
み立て品のいずれでも良い。
【0020】本発明の重合体またはその成型品の製造と
しては、アミノアセトアミドメチル基を有する芳香族ポ
リスルホンにチオホスゲンを作用させたり、ハロアセト
アミドメチル基を有する芳香族ポリスルホンまたはその
成型品を、ロダン酸塩の溶液と接触させることにより達
成されるが、後者の方法が、温和で、安全且つ手軽な方
法なので、特に好ましい。
【0021】ハロアセトアミドメチル基の具体例として
は、α−クロルアセトアミドメチル基、α−クロルプロ
ピオンアミドメチル基、α−クロルブチロアミドメチル
基、α−ブロムアセトアミドメチル基、α−ヨードアセ
トアミドメチル基、α−フルオロアセトアミドメチル基
等があげられるが、これ等のものに限定されるものでは
ない。しかし、とりわけ、α−クロルアセトアミドメチ
ル基、α−ブロムアセトアミドメチル基、α−ヨードア
セトアミドメチル基等が製造容易で、反応性が高く、か
つ、取り扱いやすいので好ましく用いられる。
【0022】ロダン酸塩の具体例としては、リチウム、
ナトリウム、カリウム、カルシウムおよび鉄等のロダン
酸の塩があげられるが、これ等に限定されるものではな
い。溶媒としては、ロダン酸塩を溶解させるものなら何
でも良く、特に制限はないが、ポリマーを溶解するもの
であると、反応がよく進むので、特に好ましい。その具
体例として、水、メタノール、エタノールアセトン、ジ
オキサン等のほか、N−メチルピロリドン、ジメチルス
ルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド等があげら
れるが、これ等のものに限定されるものではない。特
に、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、
N,N−ジメチルホルムアミドは、ポリマーの溶媒でも
あるので特に好ましい。
【0023】溶媒を用いる場合、均一系反応にはジメチ
ルスルホキシドやN、N−ジメチルホルムアミドが用い
られ、成型品を不均一系で処理するときは水やアルコー
ルが好ましく用いられる。反応の温度には特に制限はな
いが、通常、10〜150℃が採用される。
【0024】本発明の芳香族ポリスルホン重合体または
その成型品は、カルボニル基のα位のアルキル基に位置
するイソチオシアナト基をもつので、反応性があり、生
理活性物質の固定化にも用いることができる。例えば、
アミノ基をもつものに対しては尿素結合を形成して固定
化し、水酸基をもつものに対してはウレタン結合を形成
して固定化することができる。本発明の芳香族ポリスル
ホン重合体のイソチオシアナト基は、芳香核に直結した
ものと異なり、反応性が温和で、安定性が高く、ポリマ
ーの成型条件に耐える特徴がある。具体的用途として
は、生理活性物質やイオノファーを固定化した選択分離
膜や細胞活性化材料としての利用も期待できる。さら
に、細胞培養用器具、人工臓器、人工血管、カテーテル
等への用途等があげられる。
【0025】
【実施例】以下、実施例により本発明をさらに具体的に
説明するが、本発明は、当該実施例に限定されるもので
はない。なお、実施例中の評価方法は、以下に従った。 1.赤外線吸収スペクトル 島津フーリエ変換赤外分光光度計FTIR−4300を
用い、フィルム状またはKBr錠剤に成型して測定し
た。
【0026】〔実施例1〕ニトロベンゼン100mlと
硫酸200mlの混合溶液を0℃に冷却し、30gのN
−メチロール−α−クロルアセトアミドを加え、0〜1
0℃で溶解して、アミドメチル化液を調製した。
【0027】240gのユーデル・ポリスルホン(P3
500)を1200mlのニトロベンゼンに溶かした溶
液中に、10℃に昇温した上記アミドメチル化液を強く
攪拌しながら加え、15℃で2時間攪拌した。その後、
反応液を−20℃のメタノール5l中に投じ、沈澱した
ポリマーをメタノールで洗浄、乾燥して、クロルアセト
アミドメチル化ポリスルホン29.3gを得た。元素分
析で硫黄6.6%、窒素2.0、塩素2.8%であっ
た。このポリマーは、赤外線吸収スペクトルで1672
cm-1(アミド−I)および3362cm-1(N−H)
にアミド基の強い吸収が認められたことからその構造を
確認した。
【0028】得られた重合体8.0gを150mlのジ
メチルスルホキシドに溶解し、これにチオシアン酸ナト
リウム16gを150mlのジメチルスルホキシドに溶
解した液を加え、室温で3日間攪拌した。反応液をメタ
ノール中に投じ、9.2gのポリマーを得た。このポリ
マーは、赤外線吸収スペクトルで1672cm-1にアミ
ド基の強い吸収のほか2056cm-1にイソチオシアナ
ト基の鋭い吸収が認められたことから2−イソチオシア
ナトアセトアミドメチル化ポリスルホンであることを確
認した。このポリマーは、クロロホルムに溶けにくくな
ったが、N,N−ジメチルホルムアミドに良く溶け、こ
の溶液から強靱なフィルムが得られた。
【0029】〔実施例2〕ニトロベンゼン570mlと
硫酸1135mlの混合溶液を0℃に冷却し、113.
5gのN−メチロール−α−クロルアセトアミドを加
え、0〜10℃で溶解して、アミドメチル化液を調製し
た。
【0030】250gのユーデル・ポリスルホン(P3
500)を2500mlのニトロベンゼンに溶かした溶
液中に、10℃に昇温した上記アミドメチル化液を強く
攪拌しながら加え、15℃で2時間攪拌した。その後、
反応液を−20℃のメタノール10l中に投じ、沈澱し
たポリマーをメタノールで洗浄、乾燥して、クロルアセ
トアミドメチル化ポリスルホン32.9gを得た。この
ポリマーは、実施例1と同様、赤外線吸収スペクトルで
1676cm-1(アミド−I)および3367cm
-1(N−H)にアミド基の吸収が認められ、かつ、元素
分析で3.50%の窒素が認められた。
【0031】得られた重合体10gを150mlのジメ
チルスルホキシドに溶解し、これにチオシアン酸ナトリ
ウム20gを200mlのジメチルスルホキシドに溶解
した液を加え、室温で3日間攪拌した。反応液を水中に
投じ、10.4gのポリマーを得た。このポリマーは、
赤外線吸収スペクトルで1672cm-1にアミド基の強
い吸収のほか2056cm-1にイソチオシアナト基の鋭
い吸収が認められたことから2−イソチオシアナトアセ
トアミドメチル化ポリスルホンであることを確認した。
このポリマーは、クロロホルムに溶けないが、N,N−
ジメチルホルムアミドに良く溶け、この溶液から透明な
フィルムが得られた。尚、前記した他のハアロアセトア
ミドメチル基、および芳香族スルホンを使用した場合に
ついても、同様に処理して同様の結果が得られた。
【0032】
【発明の効果】以上詳述したとおり、本発明は、主鎖の
芳香族ポリスルホンに側鎖として、特定のチオシアナト
基またはイソチオシアナト基を導入することにより、優
れた特性を有する新規芳香族ポリスルホン重合体および
その成型品を得ることを最大の特徴とするものであり、
本発明によって得られる芳香族ポリスルホン重合体は、
イオン性物質や生理活性物質等の吸着、分離、固定等の
処理材料として有用なものである。また、本発明の芳香
族ポリスルホン重合体は、側鎖として導入するチオシア
ナト基またはイソチオシアナト基の量を調節することに
より、その反応性を調節することが可能であり、使用目
的に応じた適宜の反応特性を有する処理材料を容易、か
つ確実に行うことができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 // C08L 81:06

Claims (8)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 主鎖の芳香族ポリスルホンに、側鎖とし
    て、下記一般式(I)で示される基(但し、式中、Aは
    −NCSまたは−SCN基を、R1およびRは水素原
    子を、低級アルキル基またはアラリル基を示し、R
    は同一でも異なっていても良い。)を導入した芳香
    核を有する芳香族ポリスルホン重合体。 A−CH(R)−CO−N(R)−CH− (I)
  2. 【請求項2】 主鎖の芳香族ポリスルホンが、ポリ(p
    −フェニレンエーテルスルホン)であることを特徴とす
    る請求項1記載の芳香族ポリスルホン重合体
  3. 【請求項3】 主鎖の芳香族ポリスルホンが、ユーデル
    ポリスルホンであることを特徴とする請求項1記載の芳
    香族ポリスルホン重合体
  4. 【請求項4】 主鎖の芳香族ポリスルホンが、可溶性で
    あることを特徴とする請求項1記載の芳香族ポリスルホ
    重合体
  5. 【請求項5】 請求項1〜4のいずれか1項に記載の芳
    香族ポリスルホン重合体の成型品。
  6. 【請求項6】 成型品の形状が、シャーレ、瓶、膜、繊
    維、中空糸、粒状物またはこれ等を用いた組み立て品で
    あることを特徴とする請求項5に記載の成型品
  7. 【請求項7】 ハロアセトアミドメチル基を有する芳香
    族ポリスルホンを、ロダン酸塩と接触させることを特徴
    とする請求項1記載の芳香族ポリスルホン重合体の製造
    方法。
  8. 【請求項8】 ハロアセトアミドメチル基を有する芳香
    族ポリスルホンの成型品を、ロダン酸塩と接触させるこ
    とを特徴とする請求項5記載の芳香族ポリスルホン重合
    体の成型品の製造方法。
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