JP2540510B2 - 耐摩耗部材およびその製造方法 - Google Patents

耐摩耗部材およびその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 〔発明の属する技術分野〕 本発明は、例えばプラスチックおよびセラミックス成
形機に使用するシリンダの内面などのように摩耗し易い
面に耐摩耗層を形成した耐摩耗部材およびその製造方法
に関するものである。
〔従来技術とその問題点〕
従来、前記のような耐摩耗部材の耐摩耗層の形成に
は、窒化処理などの表面処理や、溶射,肉盛または遠心
鋳造等による耐摩耗合金のライニングなどの方法が採用
されていたが、いずれも性能的または製造上の問題があ
り、いまだ十分と言えるものはなかった。本願出願人
は、先にWC粉末のような硬質物粉末を基材に直接または
予備的な層を介して間接的に接触させて充填し、この充
填層にNiまたはCo基自溶合金などの金属の融液を浸透さ
せ、前記金属中にWCなどの硬質物の微細粒子を分散させ
るようにした耐摩耗層を提案した。この耐摩耗層は、耐
摩耗性が非常に優れていると共に、硬質物粉末の充填層
を中子などの適宜な型を用いて形成すれば、該充填層へ
の金属の浸透は比較的容易にできるため、種々の形状の
基材表面に対して広く適用できる利点を有している。と
ころで、この耐摩耗層は同層が厚くなると同層に小さな
空孔を生ずることがある。これは前記硬質物粉末と金属
が焼結する際の収縮によるものと考えられるが、耐摩耗
層の厚さが2〜3mmの場合、直径が数10μmないし数100
μm程度の空孔を生ずることがある。この空孔が非常に
小さい場合は問題とならず、また工作機械の摺動面のよ
うに、空孔の存在が問題にならないかむしろ潤滑油が入
って好ましい場合もあるが、例えばプラスチック成形機
の成形用シリンダの内面の場合には、プラスチックが前
記空孔に入って滞留し、過度に加熱されてこげた後には
がれて正常なプラスチック中に混入するなどの問題を生
ずることがある。
〔発明の目的〕
本発明は、前述したような点に鑑みなされたもので、
前記のような耐摩耗層から空孔をなくすと共に耐摩耗性
をより一層向上させることを目的とするものである。
〔発明の要点〕
本発明による耐摩耗部材は、基材と、同基材の少なく
とも一部の表面上に形成された耐摩耗層とからなり、前
記耐摩耗層は、粒度が数μm以下の硬質物粉末を主成分
とし、これとほぼ等しい粒度のNi粉またはCo粉にて焼結
した粒度が50〜150μmの硬質物焼結粒子と、同硬質物
焼結粒子間およびこれらと基材を結合するNi基合金また
はCo基合金とからなることを特徴とするものである。
なお、硬質物粉末は、WC粉末であることが好ましく、
また上記耐摩耗部材は、基材が一軸または二軸式のプラ
スチックまたはセラミックス成形機用のシリンダ母材で
あり、耐摩耗層が前記シリンダ母材のシリンダ内面に設
けられているものであることが好ましい。
本発明による耐摩耗部材の製造方法は、基材の耐摩耗
層形成面に沿って、粒度が数μm以下の硬質物粉末を主
成分とし、これとほぼ等しい粒度のNi粉またはCo粉にて
焼結した粒度が50〜150μmの硬質物焼結粒子を充填
し、真空炉内で該硬質物焼結粒子の充填層にNi基合金ま
たはCo基合金の融液を浸透させることを特徴とするもの
である。
〔作用〕
基材の耐摩耗層形成面に沿って充填された硬質物焼結
粒子は、それ自身の密度が高く、かつ比較的大きな粒度
に形成されているため、数μm程度の粉末をそのまま充
填した場合に比較し、硬質物の充填密度を高めることが
できる。また、前記硬質物焼結粒子間に前記のような金
属の融液を浸透させると、この融液は前記硬質物焼結粒
子間により完全に浸透する。そのため、金属の融液を浸
透させて焼結を行なわせた時、焼結による収縮が極めて
小さくて済み、先の提案のように、硬質物粉末を焼結に
よって粒状化することなく直接充填した場合のように空
孔を生じることがない。その上、前記のように、硬質物
焼結粒子がより高い密度で均一に充填されるため、硬質
物の分散がより一様化される。
〔発明の効果〕
本発明は、硬質物焼結粒子を用いたため、耐摩耗層中
から空孔をなくすことができ、さらに耐摩耗層中の硬質
物の分散をより均一にできると共に、該硬質物の含有率
を高めることができ、より優れた耐摩耗性を得ることが
できた。
〔実施例〕
第1図に示すように2軸型プラスチック成形機のシリ
ンダ用母材を基材1として用い、該基材1の内面1aに後
述する耐摩耗層7(第4図参照)を形成するため、その
中に型としての中子2を設置し、基材1の内面1aと中子
2の外周面2aとの間に硬質物粉末としてのWC粉末5を充
填するためのすき間3を形成し、該すき間3の下端を溶
接部4によって閉塞した。ここで、前記すき間3の長さ
lは200mm,中子2の直径Dは50mmであり、基材1の内面
1aの直径はすき間3の厚さtが3mmとなるように形成し
た。
前記すき間3内に硬質物粉末として粒度が約10μmの
WC粉末5を図示しない加振機を用いて充填し、前記すき
間3の上に、第3図に示すように、Ni基自溶合金の粉体
6を置き、真空度0.55Torrの真空炉中で1080℃にて20分
間加熱して、前記Ni基自溶合金の粉体6を溶融させてWC
粉末5の間すなわちすき間3内に浸透させた後、前記真
空炉中で室温まで冷却した。
なお、前記Ni基自溶合金の組成を第1表に示す。
次いで中子2および基材1の両端を機械加工によって
切削除去し、さらに内面を研磨加工し、前記すき間3の
部分に形成された耐摩耗層7を第4図に示すように基材
1の内面に露出させた。
前記のように形成した耐摩耗層7の断面を顕微鏡で観
察したところ、第5図の写真(400倍)に黒く現われて
いるように空孔を生じていた。この空孔は直径が約20〜
40μmであり、1cm2中に約6個存在した。
〔実施例〕
第1図および第2図に示したすき間3内に硬質物粉末
5に代えて次に述べる硬質物焼結粒子を充填した外は、
前記参考例と全く同じである。
硬質物焼結粒子としては、粒度約1μmのWC粉末と粒
度約1.5μmのCo粉末を、前者が95重量%,後者が5重
量%になるように秤量して粉砕混合して作ったWC−Coの
焼結体を粉砕し、ふるいにより分級して得られた粒度が
50〜150μmの硬質物焼結粒子を用いた。
前記硬質物焼結粒子を、第1図および第2図に示した
すき間3内に加振機を用いて充填し、以下は前記のよう
に、参考例と全く同じ条件で第4図に示したようなシリ
ンダを形成した。
この実施例によって得られた耐摩耗層の断面拡大写真
(400倍)を第6図に示す。この第6図の写真から明ら
かなように、空孔は見られず、かつより微細なWC(硬質
物)が均一に分散している。また、第7図は参考例と実
施例の耐摩耗層につき大越式摩耗試験機により行った摩
耗量の結果を示している。なお、摩耗試験の相手材はSK
D11(HRC58)で、摩擦距離600m,押し付け荷重18.9Kgfで
あり、第7図中の比摩耗量とは、摩擦距離1m,押し付け
荷重1Kgf当りの摩耗量である。
この第7図から明らかなように、実施例のものは耐摩
耗性においても参考例のものより優れていることがわか
る。
【図面の簡単な説明】
第1図は参考例および本発明の実施例に用いた基材と型
(中子)の間に硬質物粉末または硬質物焼結粒子を充填
した状態を示す平面図、第2図は第1図のII−II線によ
る断面図、第3図は第2図に示したものに合金の粉体を
載せた該合金の浸透前の状態を示す断面図、第4図は第
1図ないし第3図に示した基材の内面に耐摩耗層を形成
した後に型(中子)および基材の両端を除去した状態を
示す断面図、第5図は参考例によって形成した耐摩耗層
断面の顕微鏡写真(400倍)、第6図は本発明の実施例
によって形成した耐摩耗層断面の顕微鏡写真(400
倍)、第7図は参考例と本発明の実施例によって形成し
た耐摩耗層の摩耗試験結果を示すグラフである。 1……基材、2……型(中子)、3……すき間、 5……硬質物粉末または硬質物焼結粒子、 6……合金の粉体、7……耐摩耗層。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭57−51203(JP,A) 特開 昭58−77117(JP,A) 特開 昭49−59035(JP,A) 特開 昭57−131532(JP,A) 特公 昭51−27606(JP,B1)

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】基材と、同基材の少なくとも一部の表面上
    に形成された耐摩耗層とからなり、前記耐摩耗層は、粒
    度が数μm以下の硬質物粉末を主成分とし、これとほぼ
    等しい粒度のNi粉またはCo粉にて焼結した粒度が50〜15
    0μmの硬質物焼結粒子と、同硬質物焼結粒子間および
    これらと基材を結合するNi基合金またはCo基合金とから
    なることを特徴とする耐摩耗部材。
  2. 【請求項2】硬質物粉末が、WC粉末であることを特徴と
    する特許請求の範囲第1項記載の耐摩耗部材。
  3. 【請求項3】基材が一軸または二軸式のプラスチックま
    たはセラミックス成形機用のシリンダ母材であり、耐摩
    耗層が前記シリンダ母材のシリンダ内面に設けられてい
    ることを特徴とする特許請求の範囲第1または2項記載
    の耐摩耗部材。
  4. 【請求項4】基材の耐摩耗層形成面に沿って、粒度が数
    μm以下の硬質物粉末を主成分とし、これとほぼ等しい
    粒度のNi粉またはCo粉にて焼結した粒度が50〜150μm
    の硬質物焼結粒子を充填し、真空炉内で該硬質物焼結粒
    子の充填層にNi基合金またはCo基合金の融液を浸透させ
    ることを特徴とする耐摩耗部材の製造方法。
  5. 【請求項5】基材の耐摩耗層形成面に沿う型を設置し、
    該型と耐摩耗層形成面との間に形成されたすき間内に前
    記硬質物焼結粒子を充填し、該型と共に基材を真空炉内
    に入れて前記Ni基合金またはCo基合金の融液の浸透を行
    わせることを特徴とする特許請求の範囲第4項記載の耐
    摩耗部材の製造方法。
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