JP2539795B2 - 海水から飲料水を得る方法 - Google Patents

海水から飲料水を得る方法

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  • Separation Using Semi-Permeable Membranes (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】 【産業上の利用分野】
本発明は、逆浸透膜を利用した海水の淡水化により、
飲料に適する水を得る方法の改良に関する。 ここで「海水」とは、海水のほか、それに類似した溶
存塩類を含有する液を総称する語であって、「かん水」
を包含する。
【従来の技術】
逆浸透法により海水から淡水を製造する際には、逆浸
透膜の種類にもよるが、その保護およびアルカリスケー
ルの析出防止のために、供給する海水を前処理して酸性
サイド(好ましくはpH6.5前後)にしなければならない
ことが多いから、その透過水も、多くの場合に酸性であ
る。これを飲用に供するには、中和して飲料水基準を満
たすものにする必要がある。 こうした中和には、従来、アルカリ剤による中和法、
脱炭酸塔法または石灰石充填塔法のいずれかが採用され
ている。第一のアルカリ中和法は、水酸化ナトリウムや
炭酸ナトリウムなどの薬品を使用するが、その取扱いに
は危険を伴う。アルカリ中和法によるときは、pHのコン
トロールは確実にできるが、pH計などの付属機器を必要
とするほかに、プラント設置場所が遠隔地である場合に
は薬品輸送の問題があり、コスト高になる欠点がある。
これに対し、第二の脱炭酸塔法や石灰石充填塔法には、
アルカリ剤を取扱う危険はないが、いずれもこれら処理
方法単独では、pHの上昇の度合が低く飲料水基準値に達
しない場合が多く、とくにWHOで規定するpH7.0〜8.5を
満足させることは難しい。
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、逆浸透法により海水を淡水化して飲
料水を得る方法に伴っていた上記の問題を解消し、薬品
を用いた場合の取扱いや輸送上の困難がなく、透過水の
pHを容易に、しかも低いコストで飲料水として適切な7.
0〜7.5の値にすることができる、逆浸透膜装置を使用し
て海水から飲料水を得る方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
図面を参照して説明すれば、本発明の海水から飲料水
を得る方法は、海水を前処理してそのpHを酸性サイドた
とえば6.5前後に調整したのち、第1図に示すように、
前処理海水下をラインR1により逆浸透膜装置1に供給
し、ラインCから濃縮水をとり出すとともにラインR2か
ら透過水Woとして淡水を得、この淡水を、石灰石を主剤
とする炭酸塩を含有するアルカリ物質を充填した充填塔
2を通過させて20〜60秒間接触させ、接触に当って充填
塔に空気Aを吹き込み、アルカリ物質からの炭酸水素イ
オンの溶出および過剰に溶解している炭酸イオンの脱炭
酸を行なわせて、上記淡水のpHを7.0〜7.5の範囲とし、
飲用に適する水とすることを特徴とする。 アルカリ物質充填塔2には、石灰石、サンゴ砂(コー
ラルサンド)、ドロマイトなどのCaCO3を主成分とする
アルカリ物質を充填しておく。低pH値の透過水Woは、こ
こで飲料水として適切なpHに調整される。透過水Woは、
図示した態様ではアルカリ物質充填塔2の下方から流入
し、同時にブロワ4からの空気Aが、ラインR4の先端に
設けた散気装置3から送入される。透過水Woは、空気と
ともに充填塔内を上昇する間にそのpHが高まって、飲料
水基準を満足するpH調整水Wとなり、ラインR3を経て、
飲料水として提供される。透過水と空気とは、向流的に
接触させてもよいことはもちろんである。 充填する石灰石やサンゴ砂の粒径は、通常10mm前後で
あるが、透過水との接触効率をはじめから良好に保つた
めには、約5mm以下の比較的小径のものにすることが好
ましい。透過水の流通によりアルカリ物質は少しずつ溶
解して微粒化するが、石灰石などを適宜追加充填するこ
とによって減少分を補い、あわせて適切な通水速度とす
ることで、調整水Wへの流出を防止することができる。 アルカリ物質充填塔2における操作条件には、とりた
てて厳しい管理は要求されず、たとえば水温は5℃から
40℃の範囲で好適に実施することができる。接触時間
は、後述する実施例でも明らかなように、LV=10m/Hr以
下で、SV=200/Hr以下、すなわち接触時間18〜20秒以上
にすれば十分であり、通常は60秒以内で足りる。
【作用】
本発明の方法に従い、アルカリ物質充填塔2への透過
水の流通に空気吹き込みを伴わせることにより、石灰石
の溶解が促進される。その機構としては、まず、気液混
相の通過により石灰石粒子表面の接触効果が高まること
が考えられ、その際に、つぎの重炭酸塩形成反応が大い
に寄与しているであろう。 CaCO3+H2O+CO2(空気中)→Ca(HCO3 それに加え、空気の吹き込みによる脱炭酸作用が生じ
る。 H2CO3→H2O+CO2↑ さらに、空気吹き込みの効果は、水中の炭酸イオンCO
3 2-により緩衝されて、pHが高くならない。すなわち、
次式の重炭酸イオン形成反応によりpHを低くする傾向と
なってあらわれると思われる。 CO3 2-+H2O+CO2(空気中)→2HCO3 - これらの効果が相乗的に作用する結果、接触時間20〜
60秒間という短時間で透過水のpHを速やかに上昇させ、
かつ安定させることができる。 本発明の方法の特筆すべき利点は、このように、アル
カリ物質充填塔で処理された透過水のpHが7.0〜7.5程度
で止まり、それ以上高くならないことにある。従って、
水酸化ナトリウムなどの薬品を使用した場合のように、
pHの測定機器やコントロールシステムを必要とすること
なく、飲料水基準に合格する淡水を得ることができる。
【実施例】
第1図に示す構成の逆浸透法による海水淡水化装置を
使用して、透過水の中和実験を行なった。 実験に使用した逆浸透膜装置透過水の性状およびアル
カリ物質充填塔の操作条件は、つぎのとおりであった。 逆浸透膜透過水性状 透過水A 透過水B pH 5.80 5.43 導電性(μs/cm) 515 200 比較のため、空気を送入しない場合についても実験を
行なった。接触時間を種々変えて実験した結果は、第2
図に示すとおりである。 第2図から明らかなように、石灰石を充填したアルカ
リ物質充填塔に空気を吹き込むことにより、接触時間27
秒前後で透過水のpHを確実に7.0〜7.5にすることができ
る。一方、接触時間が長くなっても、pHはそれそり上昇
しない。 pHに関する飲料水基準は、わが国では5.8〜8.6、WHO
のそれは7.0〜8.5(または6.5〜9.2)であるから、上記
の結果はいずれの基準をも満足する。
【発明の効果】
本発明の逆浸透法により海水を淡水化して飲料水を得
る方法によるときは、透過水の中和を、石灰石などを充
填したアルカリ物質充填塔に空気を送入しつつ透過水を
通過させるという、きわめて簡便な方法により実施する
ことができ、安全かつ確実に、好適な値へのpHの上昇が
実現する。この目的達成のために、とりたててpH測定機
器などの設備やコントロールシステムを使用する必要は
なく、また、効果的にpHが回復するため、設備は小形の
もので足りる。従って経済的にも有利に実施することが
できる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明の海水から飲料水を得る方法を実現す
るための装置の、基本的な構成の例を示すフローチャー
トである。 第2図は、本発明の方法の一実施例における、逆浸透膜
装置透過水の中和処理の結果を示すグラフである。 1……逆浸透膜装置 2……アルカリ物質充填塔 3……散気装置 4……ブロワ R1〜R4……ライン A……空気 F……前処理海水 C……濃縮水 Wo……透過水 W……pH調整水
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭50−78155(JP,A) 特公 昭56−35498(JP,B2)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】海水を前処理してそのpHを酸性サイドに調
    整したのち逆浸透膜装置に供給し、透過水として淡水を
    得、この淡水を、石灰石を主剤とする炭酸塩を含有する
    アルカリ物質を充填した充填塔を通過させて20〜60秒間
    接触させ、接触に当って充填塔に空気を吹き込み、アル
    カリ物質からの炭酸水素イオンの上記淡水への溶出およ
    び淡水からの脱炭酸を行なわせて、上記淡水のpHを7.0
    〜7.5の範囲とし、飲用に適する水とすることを特徴と
    する海水から飲料水を得る方法。
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