JP2535871B2 - 起毛経編地及びその製造方法 - Google Patents

起毛経編地及びその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明は、起毛経編地及びその製造方法に関し、詳し
くは、引裂強力3.5kg以上、破裂強力15kg/cm2以上であ
って、特に高級スポーツ靴における補強部材、特に前
胛、鳩目、踵等に用いるに好適なスエード調高強度合成
皮革用の基布及びその製造方法に関する。
従来の技術 従来、スエード調合成皮革は、ポリエステル系合成繊
維糸条、ポリアミド系合成繊維糸条等よりなる編布や織
布を起毛し、これを基材として、その起毛面に樹脂を含
浸加工して、多孔質層を形成した後、その表面にバフィ
ングやスカイビング等の研削加工を施して製造されてい
る。
しかしながら、上記のような従来の合成皮革は、高級
スポーツ靴に用いるには不適当である。即ち、高級スポ
ーツ靴に用いる合成皮革は、引裂強力3.5kg以上、好ま
しくは4.0kg以上を有すると共に、破裂強力15kg/cm2
上、好ましくは20kg/cm2を有することが必要であること
が経験上知られているが、上記のような従来の合成皮革
は、かかる強力をもたない。そのために、従来は、合成
皮革の裏側に織布、編布又は不織不等をバッキングとし
て貼り合わせることによって、上記強力を得ており、従
って、加工工程数が増えて、製品価格が高いものとなら
ざるを得ない。更に、従来の合成皮革は、縦及び横方向
の伸度の差が大きいので、適宜に裁断した場合に方向性
を有することとなり、作業性や加工性に裂る問題を有す
る。
また、最近においては、スポーツ靴に鮮明に着色され
たデザインが強く要求されているが、ポリエステル系糸
条からなる編布や織布を基材とする合成皮革は、染色性
に劣るために、上記要求に応えることができない。
発明が解決しようとする問題点 本発明は、上記したような従来の合成皮革における問
題を解決するためになされたものであって、バッキング
による補強なしにて前記強度要求を満たすと共に、鮮明
で堅牢な染色が可能である高強度のスエード調合成皮
革、特に、引裂強力3.5kg以上、破裂強力15kg/cm2以上
であって、高級スポーツ靴における補強部材に用いるに
適するスエード調合成皮革用の基布及びその製造方法に
関する。
問題点を解決するための手段 本発明によるスエード調合成皮革用の基布は、表側の
起毛面は、ポリアミド系マルチフィラメント糸条が4針
又は5針の振り幅を有する振り編み編成され、起毛され
てなると共に、中側及び裏側は、ポリアミド系マルチフ
ィラメント糸条の2本がそれぞれ3針以下の異方向振り
編み編成されてなり、引裂強力3.5kg以上、破裂強力15k
g/cm2以上を有することを特徴とする。
また、かかる合成皮革は、本発明に従って、3枚おさ
(筬)の経編機にてトータルデニール50〜100のポリア
ミド系マルチフィラメント糸条を各おさの振り幅をフロ
ントおさ>ミドルおさ≧バックおさとすると共に、ミド
ルおさとバックおさの振り編方向とし、且つ、フロント
おさの振り幅を4針又は5針として振り編み編成して経
編地とし、次いで、この経編地のフロントおさに配して
ポリアミド系マルチフィラメント糸条を起毛することに
よって製造することができる。
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明によるスエード調合成皮革用の基布として用い
るポリアミド系マルチフィラメント糸条からなる経編地
は、3枚おさの経編機による経編地であって、フロント
おさ、ミドルおさおよびバックおさによる編組織からな
り、表側の起毛面は、マルチフィラメント糸条が4針又
は5針の振り幅を有する振り編み編成されてなる編組織
を有し、中側及び裏側は、2本のマルチフィラメント糸
条が振り幅を中側≧裏側とし、且つ、それぞれ3針以下
の異方向振り編み編成されてなる編組織を有する。
本発明において、振り幅は、第1図に示すように、わ
たり針の数を意味するものとし、第1図に示す編組織に
おける振り幅は、マルチフィラメント糸条aがわたり1
から入って、針Aを巻いてわたり0に至り、次いで、わ
たり3から針Dを巻いてわたり4に至り、この後、再び
わたり1から入って、針Aを巻いてわたり0に至り、こ
れを繰り返して編組織を形成するので、1−0/3−4で
表わされる4針振り幅である。同様に、第2図に示す編
組織における振り幅は、1−0/4−5で表わされる5針
振り幅である。これらは閉じ目と称される振り幅である
が、本発明においては、開く目と称される4針又は5針
の振り幅でもよい。例えば、第3図は、0−1/4−3で
表わされる開き目の4針振り幅を示す。
本発明においては、フロントおさの編組織は、4針又
は5針の振り幅を有する。振り幅が4針よりも少ない場
合、例えば、1−0/2−3や、0−1/3−2のような振り
編み編成にては、フロントおさに配したマルチフィラメ
ント糸条を起毛したときに、起毛立ちが悪い。従って、
このような起毛面に樹脂を含浸させ、多孔質層として
も、得られる合成皮革は、繊維層が少なく、樹脂層が多
いので、スエード調を呈しないこととなり、外観及び商
品価値の観点から好ましくない。他方、振り幅かせ5針
を越える場合、例えば、1−0/5−6(閉じ目)や、0
−1/5−6(開き目)の振り編み編成にては、フロント
おさの繊維層が過多であるので、これを起毛したとき、
起毛が過多となり、糸条の層が厚すぎることとなる。従
って、かかる起毛面に樹脂を含有加工して、発泡層を形
成しても、表面が均質な発泡層を有する合成皮革を得る
ことが困難となるほか、表面にピンホーメが発生したり
する。
本発明においては、合成皮革用の基布が前記所用の強
度を有するためには、経編地の編成に用いるポリアミド
系マルチフィラメント糸条のトータルデニール数と、ミ
ドルおさ及びバックおさの編組織が所定の条件を満たす
ことが必要である。
先ず、経編地の編成に用いるポリアミド系マルチフィ
ラメント糸条は、そのトータルデニール数が50〜100デ
ニールであることが必要である。
即ち、トータルデニール数が50デニール未満の場合
は、本発明による編成によっても前記した所用の強度を
付与することができず、他方、100デニールを越える場
合は、第1図に示すように、編地におけるコース数×ウ
エル数で表わされる編地密度が粗くなるので、同様に、
本発明による編成によっても前記した所用の強度を与え
ることができない。
次に、ミドルおさとバックおさの編組織は、その振り
幅がフロントおさ>ミドルおさ≧バックおさなる条件を
満たすと共に、ミドルおさとバックおさの編組織が相互
に異方向の振り幅にて編成されることが必要である。フ
ロントおさ、ミドルおさ及びバックおさのそれぞれの振
り幅が上記条件を満たさない場合は、得られる経編地が
起毛性に著しく劣るからである。上記振り幅の条件を満
たすには、前述したように、フロントおさの編組織にお
ける振り幅が4針又は5針であるので、本発明において
は、例えば、ミドルおさを1−0/2−3や0−1/3−2等
とし、バックおさを1−2/1−0等とすればよい。他
方、ミドルおさとバックおさの編組織が相互に同方向の
振り幅である場合は、マルチフィラメント糸条が殆ど交
叉することなく揃うために、特に、前記所定の引裂強力
を有せしめることができないので、本発明においては、
ミドルおさとバックおさの編組織を相互に異方向の振り
幅にて編成するのである。
上記のようにして編成される編地を常法に従って精練
リラックスし、染色、乾燥しねフロントおさに配したマ
ルチフィラメント糸条を起毛し、通常の所用の仕上げ加
工を施こすことによって、本発明による高強度スエード
調合成皮革用の基布を得ることができる。勿論、編地を
先に起毛し、その後に精練リラックスしてもよい。
発明の効果 以上のように、本発明による合成皮革用の基布は、所
定のトータルデニール数を有するポリアミド系マルチフ
ィラメント糸条にて表側、中側及び裏側が所定の振り幅
数及び振り幅方向を有するように振り編み編成され、表
面側が起毛されてなるので、引裂強力3.5kg以上、破裂
強力15kg/cm2以上を有し、従って、バッキングなしに高
級スポーツ靴の補強部材として好適に用いることができ
る。
更に、本発明による合成皮革用の基布は、上記したよ
うな編組織を有するために、縦及び横方向の伸度の差、
即ち、方向性が小さく、従って、例えば、靴製造におけ
る作業性及び加工性にすぐれ、そのうえ、基材が編布か
らなるので、切口にほつれが生じず、外観にすぐれるス
ポーツ靴の製造を可能とするものである。また、本発明
による合成皮革用の基布は、マルチフィラメント糸条が
ポリアミド系合成繊維からなるので、鮮明に染色するこ
とができ、且つ、染色された合成皮革は摩擦堅牢性にす
ぐれる。
実施例 以下に実施例を挙げて本発明を説明する。
実施例1 糸使いとして、フロントおさに70デニール×24フィラ
メント、ミドルおさに50デニール×10フィラメント、バ
ックおさに70デニール×24フィラメントのポリアミド系
合成繊維マルチフィラメント糸条を用い、編組織をフロ
ントおさ1−0/3−4(振り幅4針)、第4図に示すよ
うに、ミドルおさ1−0/2−3(振り幅3針)、第5図
に示すように、バックおさ1−2/1−0(振り編2針)
とし、カールマイヤー社製経編機(28ゲージ×130イン
チ×KE3)を用いて、ミドルおさとバックおさとが異方
向振り幅にて編成された密度60コース×40ウエルの経編
地を製造した。これを精練リラックス、染色、乾燥し、
フロントおさに配したマルチフィラメント糸条を常法に
従って起毛仕上した。
本発明による厚さ1.0mmの起毛経編地を得た。
比較例1 実施例1と同じ糸使いにて、編組織をフロントおさ1
−0/3−4(振り幅4針)、ミドルおさ1−0/2−3(振
り幅3針)、バックおさ1−0/1−2(振り幅2針)と
し、且つ、ミドルおさとバックおさの振り幅を同方向と
して、仕上密度60コース×40ウエルの経編地を製造し、
実施例1と同じ処理によって起毛仕上した後、実施例1
と同じ厚さ1.0mmの起毛経編地を得た。
比較例2 糸使いとして、フロントおさに70デニール×24フィラ
メント、バックおさに70デニール×24フィラメントのポ
リアミド系合成繊維マルチフィラメント糸条を用い、編
組織をフロントおさ1−0/4−5(振り幅4針)、バッ
クおさ1−2/1−0(振り幅2針)とする異方向振り幅
にて、密度60コース×40ウエルの経編地を製造した。こ
れを実施例1と同じ処理によって起毛仕上した後、厚さ
1.0mmの起毛経編地を得た。
以上のようにして得たそれぞれの起毛経編地について
の物性を第1表に示す。尚、引裂強力の測 定はJIS K−6772の方法によって、また、破裂強力の測
定はJIS L−1018Aの方法にそれぞれ準拠した。
本発明によるスエード調合成皮革用の基布は、引裂強
力3.5kg以上、破裂強力15kg/cm2以上を有し、しかも、
伸度差(縦方向−横方向)が15%以下である。これに対
して、編組織においてねミドルおさとバックおさの振り
幅が同方向である以外は、実施例1と同じ方法にて得た
比較例1による起毛経編地は、引裂強力が方向によって
3.0kgに満たず、また、破裂強力も15kg/cm2に満たな
い。更に、伸度差も30%に達する。また、従来の代表的
な起毛経編地の一例として、編組織をフロントおさとバ
ックおさのみとした比較例2による合成皮革は、引裂強
力3.0kg以上を満たさず、伸度差も大きい。
【図面の簡単な説明】
第1図乃至第5図は、それぞれ振り編み編成における振
り幅を示ための編成図であり、図であり、図中、数字は
わたり番号を示し、aはマルチフィラメント糸条を示
し、A、B、C及びDはわたり針を示す。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】表側の起毛面は、ポリアミド系マルチフィ
    ラメント糸条が4針又は5針の振り幅を有する振り編み
    編成され、起毛されてなると共に、中側及び裏側は、ポ
    リアミド系マルチフィラメント糸条の2本がそれぞれ3
    針以下の異方向振り編み編成されてなり、引裂強力3.5k
    g以上、破裂強力15kg/cm2以上を有することを特徴とす
    る起毛経編地。
  2. 【請求項2】3枚おさの経編機にてトータルデニール50
    〜100デニールのポリアミド系マルチフィラメント糸条
    を各おさの振り幅をフロントおさ>ミドルおさ≧バック
    おさとすると共に、ミドルおさとバックおさの振り編方
    向を異方向とし、且つ、フロントおさの振り幅を4針又
    は5針として、振り編み編成して経編地とし、次いで、
    この経編地のフロントおさに配したポリアミド系マルチ
    フィラメント糸条を起毛することを特徴とする引裂強力
    3.5kg以上、破裂強力15kg/cm2以上を有する起毛経編地
    の製造方法。
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