JP2532778B2 - 大型機関用軸受メタル - Google Patents

大型機関用軸受メタル

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Description

【発明の詳細な説明】
【０００１】
【産業上の利用分野】本発明は優れた耐疲労性及び非焼
付性を有する大型機関用軸受メタルに関するものであ
る。
【０００２】
【従来の技術】本発明者は、本発明に関する先行技術と
して既に特願平３−１７４４９号、特願平３−１７４５
０号、を出願している。
【０００３】
【発明が解決しようとする課題】これらの先行技術の発
明合金は、大型機関用軸受メタルにとって極めて重要な
耐疲労性、非焼付性、埋収性、なじみ性において良好で
ある。特願平３−１７４４９号では非焼付性がさらに改
善されている。又、特願平３−１７４５０号では耐疲労
性が更に改善されている。しかし、最近の内熱機関の急
速な進歩に伴いより厳しい条件下で使用されるケースも
出てきており、耐疲労性、非焼付性の両方において優れ
た軸受メタルが要求される様になってきた。
【０００４】本発明の目的は、前記問題点を解決して耐
疲労性、非焼付性に優れたＡｌ−高Ｓｎ系大型機関用軸
受メタルを提供することにある。
【０００５】
【問題点を解決するための手段】この合金系の軸受特性
は、Ｓｎ量の増加に伴い非焼付性は向上するが耐疲労性
は下がる、反対にＳｎ量が少ないと耐疲労性は向上する
が非焼付性は低下する傾向にある。特願平３−１７４４
９号ではＰｂを添加することによりＳｎ量が少なくても
優れた非焼付性を保つ。又、特願平３−１７４５０号で
はＢｉの添加によりＳｎ量が多くても耐疲労性を低下さ
せないことを主眼として改善してきた。本発明はそれら
の特徴及び相乗効果を追及したものである。すなわち、
本発明の第１の軸受メタルは、鋼裏金層、中間接着層、
及び軸受合金層の３層からなり、中間接着層は、純Ａｌ
もしくはＡｌ合金であり、また軸受合金層の組成は、重
量でＳｎ３５〜６５％、Ｐｂ及びＢｉがそれぞれ０．１
％以上で且つ総量で０．５〜１０％、Ｃｕ０．１〜１．
５％、残部がＡｌ及び不可避的不純物からなることを特
徴とする。本発明の第２の軸受メタルは、鋼裏金層、中
間接着層、軸受合金層及び表面層の４層からなり、前記
中間接着層は、純ＡｌもしくはＡｌ合金であり、また軸
受合金層の組成は、重量でＳｎ３５〜６５％、Ｐｂ及び
Ｂｉがそれぞれ０．１％以上で且つ総量で０．５〜１０
％、Ｃｕ０．１〜１．５％、残部がＡｌ及び不可避的不
純物からなり、また前記表面層は、ＰｂまたはＳｎまた
はそれらの合金であることを特徴とする。本発明の第１
又は第２の軸受メタルの軸受合金層は、更にＭｎ，Ｎ
ｉ，Ｓｉ，Ａｇ，Ｍｇ，Ｓｂ及びＺｎから成る群から選
択された１種又は２種以上、その総量が重量で５％以下
を含有することを特徴とする。
【０００６】
【作用】次に、本発明の大型機関用軸受メタルにおける
各層成分の組成を前記特許請求の範囲に記載の如く限定
する理由（上限、下限の決定理由）とその作用効果につ
いて以下に列記する。 (1) 鋼裏金層 従来公知公用の鋼、例えばＪＩＳで規定された一般構造
用炭素鋼が使用される鋼裏金層の厚さは、１〜２０mmで
あるのが好ましい。 (2) 中間接着層 鋼裏金層と軸受合金層との接着を良好にするためのもの
で、従来公知公用の純Ａｌ、又は、更に強度の必要な時
は、Ｃｕ，Ｓｉ，Ｍｎ，Ｚｎ等を１種又は２種以上総量
で０．１〜２重量％以下を添加したＡｌ合金を使用する
ことができるその場合、添加元素は０．１％未満では添
加の効果が出ず意味がなく２％を越えると脆化して実用
に適さない。中間接着層の厚さは０．０１〜０．１５mm
であるのが好ましい。
【０００７】（３）軸受合金層 軸受合金層の厚さは０．２〜３ｍｍであるのが好まし
い。 （ａ）Ｓｎ：３５〜６５％ 潤滑を主目的とする成分である。３５％未満では、非焼
付性、埋収性ともに不十分であり、６５％を越えると疲
労強度が不十分となる他、鋳造性も阻害する。 （ｂ）Ｐｂ及びＢｉ：それぞれ０．１％以上で且つ総量
で０．５〜１０％ Ｐｂ、及びＢｉは、何れもＳｎの潤滑特性並びになじみ
性を向上させる。又、ＢｉはさらにＳｎと合金化しＳｎ
相の硬度を上昇させ、これが耐疲労性の向上に寄与す
る。すなわち、Ｓｎ相にＰｂとＢｉの両者を共存させる
ことにより非焼付性と耐疲労性を同時に向上させる。Ｐ
ｂ及びＢｉの添加量は、それぞれの量が０．１％未満で
且つ総量で０．５％未満では添加の効果はなく、総量で
１０％を越えて添加すると融点が下がりすぎて高温での
強度不足の原因になる他、製造上問題を生ずる。
（ｃ）Ｃｕ：０．１〜１．５％ Ｃｕは軸受特性である耐疲労性を向上させ、かつ、表面
層との接着力を改善するのを目的とする成分である。
０．１％未満では添加の効果がなく１．５％を越えて添
加すると合金硬度が大きくなりすぎて、初期なじみ性、
埋収性を劣悪させる。しかも、延性を阻害するため製造
も困難となる。 （ｄ）Ｍｎ，Ｎｉ，Ｓｉ，Ａｇ，Ｍ
ｇ，Ｓｂ，Ｚｎの１種又は２種以上その総量：５％以下 Ａｌマトリックスの機械的強度を向上させる目的で添加
含有させる成分である。前記総量が５％を越えると初期
なじみ性と埋収性を劣悪させるので５％を上限とした。
【０００８】(4) 表面層 軸受特性である非焼付性、埋収性およびなじみ性等を向
上させるために設けるもので、ＰｂまたはＳｎまたはそ
れらの合金を主成分とし、性能向上の為にＣｕ及びまた
はＩｎを添加元素として加えても良い。また、軸受合金
層と表面層の接着を良好にする目的で、軸受合金層と表
面層の間にニッケルメッキ等の薄層を設ける場合もあ
る。また、前記表面層の被覆手段として電気メッキ以外
にもＰＶＤ等により接着することも可能である。前記表
面層の厚さは、１〜３０μｍであるのが好ましい。
【実施例】以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に
説明する。表１および表２は、本発明の第１及び第２の
軸受メタルに使用した軸受合金層等と従来のＡｌ−Ｓｎ
軸受合金層の化学成分を示したものである。本発明の第
１の軸受メタルは、表１および表２の組成の合金板と、
Ａｌ箔とを重ね合わせて圧延機に通して圧延結合して、
厚さ１mmの複合板とし、この複合板と厚さ２mmの鋼裏金
とを重ね合わせたものをロール圧接して厚さ１．６５mm
の三層の複合体（軸受合金層＋中間接着層＋鋼裏金層）
を得た。この時の軸受合金層の厚さは０．４２〜０．４
３mmであり、中間接着層の厚さは０．０２〜０．０３mm
であり鋼裏金層の厚さは１．２mmであった。この三層の
複合体をプレス加工して直径５３mmで長さ１７mmの半円
形の多層軸受を得て、それらを表３に示す条件での焼付
試験と疲労試験に使用した。図１に本発明の第１の軸受
メタル即ち３層からなる軸受メタルの拡大断面図を示
す。図１で１は鋼裏金層、２は中間接着層、３は軸受合
金層である。焼付試験と疲労試験の結果を表５、６に示
す。本発明の第２の軸受メタルは、第１の軸受メタルの
場合と同一の条件で３層の軸受メタルを作成した後、表
７に示す公知のホウフッカ浴中及びメッキ条件で前記軸
受合金表面上に表面層を電気メッキ手段により被覆し
て、２０μｍの厚さの表面層を有する四層の複合体を得
て、それらを表３、４に示す条件での焼付試験、疲労試
験に使用した。図２に４層からなる軸受メタルの拡大断
面図を示す。図２で１は鋼裏金層、２は中間接着層、３
は軸受合金層、４は表面層である。この疲労試験、焼付
試験の結果を表５、６にそれぞれ示した。
【０００９】
【発明の効果】本発明は以下の様な優れた効果を奏す
る。 １）表５、表６、の各試験結果より、Ｂｉが添加される
ことによって非焼付性を損なうことなく耐疲労性が向上
している。例えば、本発明品Ｎｏ．７は先行技術品Ｎ
ｏ．１９にＢｉを３．５重量％添加したものである。焼
付試験結果はともに１０２５kgｆ／cm2 であるが、疲労
試験結果を見ると先行技術品Ｎｏ．１９は２２５kgｆ／
cm2 で疲労したのに対し本発明品のＮｏ．７は２５０kg
ｆ／cm2 で疲労し耐疲労性が向上していることがわか
る。これはＢｉを添加しＳｎと合金化させることにより
Ｓｎ相の硬度が上昇してこれが疲労強度向上に寄与して
いるからと言える。従来、高Ｓｎを含むＡｌ軸受合金
は、Ｓｎの多さ故に疲労強度が低下する傾向にあった。
しかし、本発明のようにＢｉを添加することにより、疲
労強度の低下を抑制することができた。 ２）表５、表６、の各試験結果より、Ｐｂが添加される
ことにより耐疲労性を損うことなく非焼付性が向上して
いる。例えば、本発明品Ｎｏ．１は先行技術品Ｎｏ．１
６にＰｂを５．０重量％添加したものである。疲労試験
結果はともに２００kgｆ／cm2 であるが、焼付試験結果
を見ると先行技術品Ｎｏ．１６は１０２５kgｆ／cm2 で
焼付いたのに対し本発明品のＮｏ．１は１０５０kgｆ／
cm2 で焼付き、非焼付性が向上していることがわかる。
これは添加されたＰｂが、Ｓｎの潤滑特性を改善したた
めである。 ３）以上の結果は、Ｂｉを添加することによって得られ
る耐疲労性の向上と、Ｐｂを添加することによって得ら
れる非焼付性の向上との相乗効果によって得られたもの
である。 ４）よって本発明は、初期の目的を達成することができ
た。すなわち、非焼付性、耐疲労性の両方がより優れて
いることを要求されるような最近の大型機関用軸受メタ
ルに適用できるものである。
【００１０】
【表１】本発明の多層軸受（ｗｔ％）
【００１１】
【表２】先行技術の多層軸受（ｗｔ％）
【００１２】
【表３】疲労試験条件
【００１３】
【表４】焼付試験条件
【００１４】
【表５】疲労試験結果
【００１５】
【表６】焼付試験結果
【００１６】
【表７】表面層の電気メッキ条件
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明の３層軸受の断面図である。
【図２】本発明の４層軸受の断面図である。
【符号の説明】 １ 鋼裏金層 ２ 中間接着層 ３ 軸受合金層 ４ 表面層
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭55−122850（ＪＰ，Ａ) 特開 昭57−164952（ＪＰ，Ａ) 特開 昭62−110021（ＪＰ，Ａ)

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項１】 鋼裏金層、中間接着層、及び軸受合金層
    の３層からなる軸受メタルにおいて、前記中間接着層
    は、ＡｌもしくはＡｌ合金でありまた軸受合金層の組成
    は、重量でＳｎ３５〜６５％、Ｐｂ及びＢｉがそれぞれ
    ０．１％以上で且つ総量で０．５〜１０％、Ｃｕ０．１
    〜１．５％、残部がＡｌ及び不可避的不純物からなるこ
    とを特徴とする大型機関用軸受メタル。
  2. 【請求項２】 鋼裏金層、中間接着層、軸受合金層及び
    表面層の４層からなる軸受メタルにおいて、前記中間接
    着層は、ＡｌもしくはＡｌ合金であり、また軸受合金層
    の組成は、重量でＳｎ３５〜６５％、Ｐｂ及びＢｉがそ
    れぞれ０．１％以上で且つ総量で０．５〜１０％、Ｃｕ
    ０．１〜１．５％、残部がＡｌ及び不可避的不純物から
    なり、また前記表面層は、ＰｂまたはＳｎまたはそれら
    の合金であることを特徴とする大型機関用軸受メタル。
  3. 【請求項３】 特許請求の範囲第１項又は第２項記載の
    軸受メタルにおいて、軸受合金層は更にＭｎ，Ｎｉ，Ｓ
    ｉ，Ａｇ，Ｍｇ，Ｓｂ，及びＺｎの群から選択された１
    種又は２種以上、その総量が重量で５％以下を含有する
    ことを特徴とする大型機関用軸受メタル。
  4. 【請求項４】 特許請求の範囲第１項から第３項までの
    いずれか一項の軸受メタルにおいて、中間接着層のＡｌ
    合金は、ＣｕとＳｉとＭｎとＺｎとから成る群から選択
    された少なくとも一種を合計で０．１〜２ｗｔ％含有す
    ることを特徴とする大型機関用軸受メタル。
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