JP2525609B2 - イセエビ類幼生の飼育方法 - Google Patents

イセエビ類幼生の飼育方法

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JP2525609B2 JP62158915A JP15891587A JP2525609B2 JP 2525609 B2 JP2525609 B2 JP 2525609B2 JP 62158915 A JP62158915 A JP 62158915A JP 15891587 A JP15891587 A JP 15891587A JP 2525609 B2 JP2525609 B2 JP 2525609B2
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Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明は主としてイセエビ類のフィロゾーマ期幼生の
飼育方法に関し、水産増養殖に利用するものである。
従来の技術 クルマエビをはじめ多くの海産甲殻類の養殖が可能に
なった現在、今なお養殖の行なわれていない種はイセエ
ビである。
外洋水の洗う岩礁に棲息するイセエビは交尾後産卵
し、一定期間抱卵した後、フィロゾーマと呼ばれる透明
で葉状扁平な成体に似ていない形態の幼生を孵化する。
フィロゾーマは海流に乗って外洋に分散し、約1年間の
浮遊生活を終えた後、プエルルスと呼ばれる稚えびへの
最終変態の前段階(透明なためガラスエビと俗称され
る)に変態して沿岸に回帰する。
天然採集のプランクトンの形態の追跡から、フィロゾ
ーマには11期の幼生段階があると推定されているが、幼
生の完全飼育に成功していない現在、変態までに何回の
脱皮を行なうのかについてはまだ判明していない。
このようにフィロゾーマ幼生の飼育の困難な理由は、
外洋において生育する幼生の生態的特性から当然幼生は
生理的にも繊細で、水質および栄養要求が厳密であり、
また約1年間もの長期間の浮遊生活を営むためであると
考えられる。
因にクルマエビ,ロブスター等、多くの沿岸性甲殻類
幼生の浮遊期間は2〜3週間の短期間である。
イセエビ類のフィロゾーマの飼育に関しては今世紀の
初頭から多数の研究が行なわれてきたが、上記のような
理由からまだ完全飼育の成功例がなく、従って養殖も行
なわれていない。今までになされた最長の飼育記録は井
上(1978,日本水産学会誌44巻5号)の253日間であっ
て、フィロゾーマのほぼ最終段階に近づけることができ
た。しかしそれ以上の飼育結果は示されておらず、再現
性ある飼育方法かどうかも不明である。そしてまたプエ
ルルスまでの飼育に成功した例はない。プエルルスにな
ると後述するように幼生は海底に定着するから減耗する
こともなく、養殖、特に中間育成の種苗として用いるこ
とができるので、プエルルスまでの飼育方法の確立が重
要である。
発明が解決しようとする問題点および解決するための手
段 本発明は上記現状に対しイセエビ類の飼育方法を研究
したもので、その内容は下記する諸観察,諸実験の検討
結果より再現性よく、その育成環境(水質,餌料,流
速,温度等)の整備を計ることができた。その重要な点
は下記の通りである。
(1)、イセエビは産卵,孵化→フィロゾーマ第1期〜
第11期→プエルルス(1回脱皮)→稚えびの生活史をも
つことを確認した。しかしフィロゾーマの育成段階は従
来の天然で採集した個体の形態を分類した結果に基づい
ており、個体の成長過程を追跡したものでないから幼生
の育成過程の詳細は確認されていない。
本発明は困難とされていたプエルルスまでの飼育を達
成し、その育成過程および飼育方法を明らかにした。
(2)、本発明はその幼生段階を表層に浮遊し、小型の
動物プランクトン(本発明のアルテミアのノープリウス
が該当する)を顎脚で捕食する第1期幼生、餌料として
の小型の動物プランクトンを顎脚で,大型の肉片を歩脚
で捕食する第2期〜第7期幼生、胸部付属肢(歩脚)の
遊泳刺毛の発達により遊泳力も備わり、餌料として大型
の肉片を歩脚で捕食する第8期〜第11期およびプエルル
ス期の4段階に区分し、それぞれに適合した飼育条件を
明らかにした。
(3)、特にフィロゾーマの最終段階である第11期から
プエルルスへの変態は人工的条件下ではまだ達成されて
いなかったが、この難問題を高濃度に繁殖した単細胞藻
類による水質の維持と、餌料としてイガイ肉の投餌によ
り解決した。
(4)、幼生の飼育水として、単細胞藻類の高密度の培
養液を使用し飼育槽に適当な流速を形成することによ
り、水中の細菌数および細菌相は清澄な外洋水と同じ水
準に保たれ、フィロゾーマの体表に着生してその遊泳機
能に障害を与える水カビ,ツリガネムシ等の病害的寄生
生物の着生を防止することができた。細菌数はクルマエ
ビ幼生飼育水の約1/100以下の少数である。
(5)、フィロゾーマ幼生の餌料としてアルテミアのノ
ープリウスとイガイの肉が有効であり、第1期にはアル
テミアのノープリウス、第2期〜第7期にはアルテミア
のノープリウスと0.5〜1.0mm角に細切りしたイガイの両
者の併用、第8期以降には1.5〜2.0mm角に細切りしたイ
ガイの肉片の投餌が適していることを明らかにした。
(6)、フィロゾーマ幼生にとっては浮遊していること
が必須であり、飼育条件としては底部から給水して飼育
槽内に環流を形成させることが有用である。
強い流速は幼生に損傷を与え病害的寄生生物着生の原
因となる。最適の流速は幼生の成育段階によって異な
り、第1期に対しては1〜2cm/secの微弱な水流、第2
期〜第7期に対しては3〜5cm/secのやや強い水流、第
8期以降に対しては5〜6cm/secの強い水流を与えるこ
とが幼性の浮遊生を助長し、餌の捕捉を容易にすること
において有効であった。また、上記の流速は成育に伴っ
て増大する残餌,排泄物等の堆積を防止し、水質を良好
に維持することにおいても効果がある。
(7)、イセエビ類の種類によりフィロゾーマの要求す
る水温範囲には相違がある。
本実験のゼイサスは20℃以下の比較的低温に適合する
が、我が国のイセエビは20℃以上の比較的高温に適す
る。成長適温はゼイサスは18〜20℃,イセエビは25〜28
℃にあることが明らかになった。
(8)、プエルルスに変態直後の幼生の生態,行動は本
実験によりはじめて明らかになった。
すなわちプエルルスは形態的には腹部の遊泳肢が発達
するが、なおフィロゾーマのような浮遊的運動を行な
い、数日間(5〜7日)は底に着かない。
従ってプエルルスの初期にはフィロゾーマに対するの
と同様な飼育を行ない、変態約5〜7日後からはシェル
ターを設置した水槽で飼育することがその生態に適合し
ていることが明らかになった。
発明の構成 上記により本発明は特許請求の範囲記載の構成により
成立するものであるが、以下その実験及び研究過程を更
に詳述する。
本発明者は南大洋に棲息するイセエビ類(ゼイサス
(Jasus)属)に着目し、そのフィロゾーマを飼育した
結果はじめてプエルルスまでの完全飼育に成功した。ゼ
イサスは環南極海流としての西風表流の影響する大陸の
尖端あるいは大洋の孤島に分布しており、そのフィロゾ
ーマとしての浮遊生活も西風表流に影響されていると考
えられる。西風表流の影響する亜熱帯収斂線沿いの海域
の水温は約12℃であるが、北半球の同程度の低温水域に
棲息するロブスターの幼生は、水温約20℃で最も良く育
成するから、本種(ゼイサス)もまたやく20℃を生育適
温とするのではないかと推察される。
本発明者は、昭和58年10月南アフリカ,ケープタウン
港外で漁獲されたゼイサスに属するイセエビの一種ゼイ
サス・ラランディ(Jasus lalandii)の雌雄個体を我が
国に輸送し実験に供した。
その雌から昭和59年8月10日孵化したフィロゾーマ第
1期幼生を用いて水質,餌料等の飼育条件を検討した。
3〜10μのフィルターで過し、紫外線照射を行なって
滅菌した海水(以下単に滅菌過海水と呼ぶ)を満たし
た3l容のプラスチック製の容器にフィロゾーマ第1期幼
生を1容器当り3〜5尾収容し、僅かに通気しながらア
ルテミアのノープリウスあるいはイガイの肉を与えて毎
日1回飼育水を新鮮な海水で入れ替えて飼育した。
平均水温18.3℃の場合、47尾の第1期幼生は30日後第
2〜3期として11尾生残り、生残率23.4%であった。ま
た水温19.7℃の場合、45尾の第1期幼生は30日後第3期
(一部第2期および第4期)として14尾生残り、生残率
31.1%であった。試みに、水温15℃および25℃でも幼生
を飼育したが、脱皮間期は水温18〜19℃の場合よりも著
しく延長し、ゼイサス属幼生に対する適温は約2℃にあ
ることが示された。
なお熱帯から温帯にかけて分布するイセエビ類の適水
温は同じイセエビ類でもゼイサスとは異なる。日本産イ
セエビの第1期幼生を水温18〜20℃で同様に飼育したが
第2期への脱皮は行なわれなかった。水温約22℃では30
日後第3期が出現した。水温約25℃および28℃ではいず
れも20日後第3期が出現した。生残率は22℃の場合の1
5.3%に対して、25℃および28℃ではそれぞれ22.4%お
よび27.3%であった。このように日本産イセエビに対す
る適温は25〜28℃である。
以上実験の使用海水は滅菌過海水を用いたが、死亡
個体にはほとんどの場合水カビ,ツリガネムシ等が着生
していた。フィロゾーマ飼育が繊細な幼生と生き餌を対
象とする限り、滅菌過処理が最善の方法であると考え
られる。しかし栄養あるいは外傷、その他何等かの原因
で衰弱した幼生への水カビ,ツリガネムシ等の着生がそ
の脱皮を一層遅延させ、死亡に至らせていると考えられ
る。恐らく清浄な外洋水にあってはかかる有害生物の着
生はなく、幼生は健全に生育するものと思われる。
しかし人工的な飼育環境にあっては滅菌過処理をし
ても水カビ,ツリガネムシ等を完全に駆除することが困
難であり、これがフィロゾーマ飼育の未だに完成してい
ない主な理由と考えられる。
又餌料について考えると、アルテミアは一般的に海産
動物幼生に対する好適な餌料である。フィロゾーマの第
1期幼生にとっても1尾1日当り10〜50個体のアルテミ
アのノープリウスを捕食するから有効な餌料である。第
2期以降の幼生に対してはアルテミアのノープリウスよ
り成体型のものが大きさの点で餌料として適していると
思われた。しかし成体型アルテミアからの排泄物は水質
を悪化させる一因であり、それに代る餌料を見つける必
要がある。
そこで第2期〜第7期幼生に対して、アルテミアのノ
ープリウスを第1期幼生に対すると同様、1尾当り日間
10〜50個体与え、さらに0.5〜1.0mm角のイガイ肉の細片
を与えたところ第2期幼生では2片,第7期幼生では4
片のイガイ肉の摂餌がそれぞれ10および50個体のアルテ
ミアの摂餌と共に見られた。第2期および第7期の間で
はこれらの摂餌量は段階的に増加した。
フィロゾーマの形態,生態は期の進むにつれて徐々に
変化してゆくが、摂餌行動からは第1期,第2〜7期,
第8〜11期に特徴づけることができる。
第8〜11期幼生にとっては1.5〜2.0mm角のイガイの肉
片の捕食に適当な大きさであり、第8期幼生は日間2
片、成長につれて捕食量は増加し第11期幼生は4片捕食
した。
昭和60年にはフィロゾーマの体表への水カビ,ツリガ
ネムシ等の着生を生態的に防除するため飼育水として単
細胞藻類の繁殖した海水の使用を試みた。藻類としては
放置した天然海水中より分離した比較的低温に適する珪
藻フェオダクチラム(Phaeodactylum sp.)および緑藻
クロレラ(Chlorella sp.)を用いた。培養は5μのフ
ィルターで過した天然海水1トン当り硝酸カリ100g,
第2燐酸カリ10gを加えて行ない、フェオダクチラムは4
0万セル/ml,クロレラは600万セル/ml以上の濃度になる
ようにした。
なお、上記のような止水的な飼育の場合の幼生の収容
密度は3l当り3〜5尾が適当である。しかしイセエビは
ロブスター等と相違して共喰いしないから流水式にして
沈降を防止すれば50〜300尾/lの高密度で第1期幼生を
収容するのが実際的である。
昭和60年6月26日孵化したフィロゾーマ第1期幼生50
00尾を容量100lの円筒状飼育水槽に収容し、別に設置し
た容量300lの培養槽と直径13〜20mmの数種の塩ビ管で連
結し、揚水量30l/minのポンプを用いて、飼育槽と培養
槽の間で飼育水(すなわち培養水)の循環を行なった。
また単なる通気による水流よりも注水による水流の方が
フィロゾーマの浮遊に適しているので、給水装置の下端
を盲管にして底面に垂直に固定し、先端周縁部に多数の
細孔をあけ、給水が細孔より噴射するようにした。これ
によって飼育槽内には適度の環流が形成された。
飼育水温は20℃とし、培養槽は明るい室内に設置した
が、飼育槽には直射日光が当らないようにした。餌料と
しては第1期幼生にはアルテミアのノープリウス、第2
期以降の幼生にはアルテミアのノープリウスと細切りし
たイガイの肉片を投餌した。
フィロゾーマは餌料と共に流れに乗って浮遊してい
る。水流が弱いとフィロゾーマ,餌料共に底に沈降して
フィロゾーマは衰弱する。水流があまり強すぎるとフィ
ロゾーマは餌料を捕捉するのが困難になると共に、水流
に振り回され、水槽の壁面に接触して損傷し、その損傷
箇所から水カビ,ツリガネムシ等の着生が始まる。フィ
ロゾーマの水流に耐える力は成長するに伴ない増大す
る。
一方、飼育槽内の水流分布は分水孔によって影響さ
れ、底層部で強く、表層部で弱い。
フィロゾーマの摂餌行動,水流への抵抗性からみた最
適の水流は表層周縁部において、第1期に対しては1〜
2cm/sec,第2期〜第7期に対しては3〜5cm/sec,第8期
以降の幼生に対しては5〜6cm/secであった。
これらの藻類培養水を飼育水とした場合、換水しなく
てもフィロゾーマの体表への水カビ,ツリガネムシ等の
着生はほとんど認められなかった。また滅菌過海水を
飼育水にした場合に比べるとフィロゾーマは活力があ
り、第2期からイガイの肉片を好んで摂餌した。
フィロゾーマ幼生は頭胸部が扁平な円板状をしてお
り、体の大きさに比べて体の表面積が大きい。またその
脱皮間期が8〜30日と比較的長いため体表に付着生物が
着生しやすく、運動機能が阻害されて死亡する個体が出
現する。しかし上記のように比較的高い密度に藻類の繁
殖した海水中は、藻類の生理状態が良好な限り水カビ,
ツリガネムシ頭の付着は抑制され、フィロゾーマは順調
に育成した。比較的高温に適する珪藻スケルトネマ(Sk
eletonema)を1万〜10万セル/mlであるいは緑藻クロレ
ラを100万〜400万セル/mlの密度で含んだ飼育水が時に
は魚類あるいは甲殻類の種苗生産で使用されている。し
かしスケルトネマを40万セル/ml以上あるいはクロレラ
を600万セル/ml以上も含む高密度の藻類の繁殖は鰓を有
する魚類およびミシス期以降の甲殻類にとっては呼吸を
阻害する要因にもなりかねないから一般に適用されてい
ない。しかしフィロゾーマ期幼生には鰓が形成されてい
ないから全く障害を受けない。フェオダクチラム40万〜
150万セル/mlおよびクロレラ600〜2500セル/mlの培養を
単独に、あるいは両者を併用または両者の混合培養を用
いてクロレラ600万セル/ml,フェオダクチラム150万セル
/mlからクロレラ2500万セル/ml,フェオダクチラム40万
セル/mlの組合せの範囲の種々の濃度の培養をつくり使
用した場合、フィロゾーマの成長,生残りは従来の飼育
例に比べると非常に良好で、孵化42日後約20%が第6期
に育成した。
幼生飼育の日数の経過につれて水中にはイガイ等餌料
からの溶解物,アルテミアおよびフィロゾーマ自身の排
泄物,残餌,死体等が蓄積して水質の悪化が進行する。
かかる場合には3〜10μのメッシュのフィルターで飼
育水を過することにより、有害な老廃物および発生し
た原生動物が除去され水質は改善される。
またイガイの肉には甲殻類の生合成できない必須アミ
ノ酸および必須脂肪酸がことごとく含まれており、フィ
ロゾーマにとっても栄養的に完全な餌料であると考えら
れる。しかしイガイ肉には粘質物および溶出物が多く、
滅菌過海水あるいは通常の種苗生産で使われるような
比較的低密度の培養藻類によっては充分に浄化されず、
水質が悪化し幼生が死亡する。
上記本実験でしめしたような高密度の培養藻類によっ
て水質の悪化を改善することができた。
変態したプエルルス幼生は形態的にはフィロゾーマと
著しく相違し、むしろ稚えびに近いが行動としてはフィ
ロゾーマ的に旋回しながら遊泳することが多いことも今
回はじめて確認された。しかし行動は徐々に稚えびに似
てきて変態5〜7日後には歩脚で物にしがみつこうとす
る。
このような変態直後のプエルルスの行動は従来全く不
明であったが、本実験の成功によりはじめて明らかにな
った。
変態したプエルルスは5〜7日間程度、フィロゾーマ
と同様な水流を与えて飼育し、5〜7日後からは一方か
ら給水し、他方から排水する形式の飼育槽に収容する。
予め付着生物の着生したシェルターを飼育槽に設置すれ
ば稚えびまでの飼育を順調に行なうことができる。
実施例 以下本発明の実施例を示す。
付図は本発明を実施するための装置例を示し、第1図
はフィロゾーマを飼育するための装置の側面図、第2図
は第1図の飼育槽の中心部の斜視図を示し、1は飼育
槽、2は培養槽、3はポンプ、4は給水管、5は給水バ
ルブ、6は逆流防止弁、7は有孔円筒状スクリーン、8
はスクリーンネット、9は給水溜、10は分水孔、11は排
水管、12は排水バルブ、13は送気管、14はエアストーン
を示す。
第3図は変態後5〜7日経過したプエルルスを飼育す
るための水槽の斜視図を示し、15がプエルルス飼育槽、
16は付着生物の付着したシェルターを示す。
実施例1 昭和61年3月22日脱皮、4月10日頃交尾、5月23日産
卵したケープタウン産ゼイサス・ラランデイからのフィ
ロゾーマ幼生の孵化が8月1日に行なわれた。フィロゾ
ーマ第1期幼生15,000尾を100l容の飼育槽1に収容し、
水槽表層周縁部で1〜2cm/secの環流流速を形成させ、
予め培養していた密度600万セル/mlの海産クロレラと密
度40万セル/mlのフェオダクチラムの混合培養槽(容量5
00l)2とを揚水量30l/minのポンプ3と直径20mmの塩ビ
管で接続し、飼育槽1に対する直射日光を遮蔽した明る
い室内で、水温18℃で飼育した。
餌料としては第1期幼生に対してはアルテミアのノー
プリウスを幼生1尾1日当り10〜50個体、第2期以降の
幼生に対してはアルテミアのノープリウスを幼生1尾1
日当り10〜50個体と0.5〜1.0mm角の大きさに調整したイ
ガイの肉片2〜4片を投与した。飼育水の塩分濃度は蒸
発量に相当する蒸留水を加えて3.50〜3.60%,pHは光合
成による上昇傾向を抑えるため照度を調節して8.2〜8.6
を維持するようにした。飼育水中に蓄積する藻類の塊,
アルテミアの排泄物等は3〜10μのフィルターを排水管
の途中に挿入して除去した。
飼育開始8日後第2期,16日後第3期,29日後第4期,4
3日後第5期,59日後第6期となった。第6期の生残り尾
数は466尾で、生残率は3.2%であった。この値は前に行
なった飼育結果に比較するとやや低いが、環境条件の変
化に影響されやすいフィロゾーマにあっては許容しうる
範囲の変動と考えられる。
95日後これらの幼生のうち4尾を約30l容の小型の飼
育槽に移し、飼育槽表層周縁部の流速を5〜6cm/secに
して1.5〜2.0mm角に細切したイガイの肉片を与えて飼育
を継続したところ、97日後第7期,123日後第8期,169日
後第9期,214日後第10期,278日後第11期となり、306日
後プエルルスに変態した。
このようにフィロゾーマはその幼生段階の中期以降に
おいては非常に丈夫で餌料および流速を最適にすれば10
0%近く生残し、プエルルスに変態することが示され
た。
昭和62年6月3日午前0時20分変態したプエルルス
(これは人工飼育によってつくられた世界最初の個体で
ある)は同じ飼育槽で5日間引続いて飼育し、その後30
0l容のFRP水槽に移した。この水槽には予め3ケ月間流
水槽に浸漬して付着生物の着生したコンクリートブロッ
ク(シェルター)を設置した。プエルルスは変態10日後
にはコンクリートブロックの垂直面についているのが認
められた。
以上は南半球のイセエビ、ゼイサス・ラランディにつ
いての実施例であるが、フィロゾーマとしての段階が第
11期あり、約300日間でプエルルスに変態する点、我が
国のイセエビと同様な初期生活史を持っている。
実施例2 昭和61年7月6日孵化した日本産イセエビのフィロゾ
ーマ第1期幼生3800尾を、100lの飼育槽に収容し、予め
培養していた1100万セル/mlの海産クロレラを用いて実
施例1と同様にして水温25℃で飼育した。飼育中の塩分
は3.30〜3.60%,pHは8.10〜8.24であった。餌料として
はアルテミアのノープリウスを1日当り約200000個体と
0.5mm角のイガイ肉片の適量を投与した。
幼生は8日後第2期,16日後第3期,25日後第4期,35
日後第5期に生育し、第5期の生残尾数は約1000尾で、
生残率は26%であった。
以上のように日本産イセエビについても飼育水温を25
〜28℃の成長適温に維持する点を除いて、ゼイサスで得
た飼育条件を適用して好結果を得た。
発明の効果 従来イセエビは重要な水産資源であるに拘らず、また
種苗生産に基づく増養殖は行なわれていない。本発明に
よりはじめてイセエビの増養殖の可能性が示された。
【図面の簡単な説明】
付図は本発明の実施例の要領説明図で、第1図は側面
図、第2図は第1図の飼育槽の中心部の斜視図を示し、
第3図はプエルルスの飼育槽例の斜視説明図である。 1……飼育槽、2……培養槽、3……ポンプ、4……給
水管、5……給水バルブ、6……逆流防止弁、7……有
孔円筒状スクリーン、8……スクリーンネット、9……
給水溜、10……分水孔、11……排水管、12……排水バル
ブ、13……送気管、14……エアストーン、15……プエル
ルス飼育槽、16……シェルター。

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】イセエビ類のフィロゾーマ幼生の飼育槽に
    高密度に繁殖した単細胞藻類を含む液を上向きの水流を
    生じさせるように与え、且つ飼育槽の表層周縁部におい
    て1〜6cm/secの適当な流速が形成されるように操作
    し、餌料としてアルテミアのノープリウスとイガイの0.
    5〜2.0mm角に細切した肉を適宜投餌して飼育することを
    特徴とするイセエビ類幼生の飼育方法。
  2. 【請求項2】フィロゾーマの第1期幼生に対しては、収
    容時の密度を50〜300尾/lとし、表層周縁部に1〜2cm/s
    ecの流速を形成させ、餌料として1尾当り日間10〜50個
    体のアルテミアのノープリウスを与え、第2期〜第7期
    の幼生に対しては、表層周縁部の流速を3〜5cm/secと
    し、餌料として1尾当り日間10〜50個体のアルテミアの
    ノープリウスおよび0.5〜1.0mm角に細切したイガイの肉
    片を日間2〜4片、期令に応じて併用投餌し、第8期以
    降の幼生に対しては、表層周縁部の流速を5〜6cm/sec
    とし、餌料として1尾当り日間1.5〜2.0mm角に細切した
    イガイの肉片を2〜4片、期令に応じて投餌することを
    特徴とする特許請求の範囲第1項に記載のイセエビ類幼
    生の飼育方法。
  3. 【請求項3】単細胞藻類として約40万〜150万セル/mlに
    増殖した珪藻および約600万〜2500万セル/mlに増殖した
    緑藻を単独に使用または併用し、飼育することを特徴と
    する特許請求の範囲第1項に記載のイセエビ類幼生の飼
    育方法。
  4. 【請求項4】変態直後のプエルルス幼生はフィロゾーマ
    飼育と同じ水槽または同型の水槽でフィロゾーマの最終
    段階におけると同様な環流を与えて飼育し、変態約5〜
    7日後からは予め付着生物を着生させたシェルターを設
    置し、且つ一方より給水して他方より排水する型式の水
    槽で飼育することを特徴とする特許請求の範囲第1項に
    記載のイセエビ類幼生の飼育方法。
  5. 【請求項5】イセエビ科ゼイナス属のフィロゾーマに対
    しては水温18〜20℃を与えて飼育することを特徴とする
    特許請求の範囲第1項に記載のイセエビ類幼生の飼育方
    法。
  6. 【請求項6】日本産イセエビの幼生に対しては水温25〜
    28℃を与えて飼育することを特徴とする特許請求の範囲
    第1項に記載のイセエビ類幼生の飼育方法。
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