JP2524982B2 - 積層型熱交換器 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 この発明は自動車用あるいは産業用等として用いられ
る熱交換器、特に、熱交換媒体通路を形成する複数枚の
板状チューブエレメントが相互間にアウターフィンを包
含する空気流通間隙を介して積層されてなる積層型熱交
換器に関する。

従来の技術 従来汎用の積層型熱交換器は、一般的に、プレス加工
された金属製の一対の成形プレートをもって、熱交換媒
体通路としての偏平管部の両端ないしは一端に熱交換媒
体貯溜用のタンク部を有するものに形成された板状チュ
ーブエレメントと、アウターフィンとを交互に複数段積
層したものであり、負荷の変動に追従し易いこと、容積
に対して比較的優れた性能を有すること等の利点を有し
ている。

而して、このような積層型熱交換器における熱交換効
率を高める手段として、前記成形プレートに多数の凹凸
を設けて伝熱面積を増大したり（実開昭59−116787号公
報等）、あるいは偏平管部内に第10図で示すごときプレ
ス加工等で波形に成形したプレーン型等のインナーフィ
ン（20）を装填して伝熱面積を増大することが提案され
ている。

発明が解決しようとする問題点 しかしながら、上記前者の提案手段のように、成形プ
レートに凹凸を設けるだけでは伝熱面積はさほど大きく
できず、充分な熱交換効率は得られない。また後者の提
案手段において一般的に使用されるプレーン型等の単純
形状のインナーフィンでは、伝熱面積をかなり大きくで
きるが、構造上から熱交換媒体の流れが直線的になる点
から熱交換効率の改善には限界があり、また充分とは言
えない。

ところで後者の提案手段すなわちチューブエレメント
の偏平管部にインナーフィンを装填することは、熱交換
効率の向上効果のみならず、偏平管部を圧縮する方向の
力に対する補強効果をも生じさせるものであるが、偏平
管部内にインナーフィンを配設するのみではチューブエ
レメントの強度を完全なものとすることはできなかっ
た。即ち、熱交換媒体が特にガス化するようなものであ
る場合には熱交換媒体によってチューブエレメントを側
方に押し拡げる方向の内部圧力が加わり、該圧力によっ
てはなはだしくは接合部において成形プレートが分離し
熱交換器の破壊に至るというような問題があった。

この発明は、以上のような問題を解決するためになさ
れたものであって、熱交換効率を向上するとともに、熱
交換媒体による内部圧力に対しても充分な強度を有する
積層型熱交換器の提供を目的とするものである。

問題点を解決するための手段 而してこの発明は、周縁に相互接合面を有する１対の
成形プレートをもって偏平管部の少なくとも一端に膨出
状のタンク部を有するものに形成された板状チューブエ
レメントと、アウターフィンとが交互に複数段積層され
た積層型熱交換器において、前記板状チューブエレメン
トを構成する成形プレートがその接合面相互間に、成形
プレートの周縁に沿う外形を有するインナープレートの
周端部を介在した状態で接合され、かつ該インナープレ
ートにはチューブエレメントの前記偏平管部対応位置
に、インナープレートの表裏に突出し、かつインナープ
レートから対向状に立上がった２個の立上り壁部とこれ
ら立上り壁部の先端部に連設された頂部とを備えた両端
開口の多数の突出部を有するインナーフィン部が一体に
形成されてなり、さらに前記突出部は、インナープレー
トの表側に突出するものと裏側に突出するものとが熱交
換媒体の流通方向と直交する方向において交互に配置さ
れるとともに、前記突出部の両端開口部を介してインナ
ープレートの表裏が連通されていることを特徴とする積
層型熱交換器を要旨とするものである。

実施例 次にこの発明の構成を図示実施例に基づいて具体的に
説明する。

第２図に示す熱交換器において、（１）は水平状態で
かつ上下方向に配置された複数枚の板状チューブエレメ
ント、（２）はその隣接するチューブエレメント（１）
（１）間に介在されたアウターフィンである。

前記チューブエレメント（１）は、中間部に熱交換媒
体通路である偏平管部（３）を有するとともに、両端に
該偏平管部（３）に連通し、膨出高さを相対的に大とな
されたタンク部（４）を有し、かつ隣接するチューブエ
レメント（１）のタンク部（４）どうしがろう接一体化
されている。このチューブエレメント（１）は、第１図
に示すように、一面が開口した上下１対の皿状の成形プ
レート（11）（11）からなるものである。

すなわち第１図に示すように、各成形プレート（11）
は、中間部にチューブエレメントの偏平管部形成用の偏
平膨出部（11a）を有するとともに、該偏平膨出部（11
a）の両端にチューブエレメントのタンク部（４）形成
用の膨出高さを相対的に大とした膨隆部（11b）を有
し、かつ膨隆部（11b）に成形プレートの幅方向に沿っ
て複数個の熱交換媒体流通孔（11c）を有する。さらに
成形プレート（11）の周縁部には所定幅の平坦状の接合
面（13）が形成されている。なお（14）は偏平膨出部
（11a）の両側縁を接合面（13）に連続して樋状に折曲
されることにより形成された結露水集受溝、（16）は結
露水集受溝の立上り側壁（15）に連続して形成された水
平突出縁、（17）は膨隆部（11b）周縁において接合面
（13）に連続して形成された突縁である。このような成
形プレート（11）の製作は、プレス加工により行われ
る。

（12）は成形プレート（11）（11）間に介在状態で接
合されるインナープレートである。このインナープレー
トは成形プレート（11）の周縁に沿う外形を有を有する
とともに、幅方向の両側縁（12a）（12a）のみが接合状
態において成形プレート（11）の接合面（13）端縁から
外側に突出するように、その幅が設定されている。さら
にこのインナープレート（12）にはチューブエレメント
（１）の偏平管部（３）の対応位置にインナーフィン部
（12b）が一体に形成されている。即ち、インナープレ
ート（12）の長さ方向の中間部には、該プレートをプレ
ス加工することにより多数の突出部（12c）が形成され
ている。この突出部（12c）は第５図にその一部を拡大
して示すように、インナープレート（12）の長さ方向す
なわち矢印（Ｈ）で示す熱交換媒体流通方向において対
向状に立上がった２個の立上り壁部（121）（121）とこ
れら立上り壁部の先端部に連設された頂部（122）とを
それぞれ備えて、上向きに突出する断面状のものと、下
向きに突出する断面状のものとが、インナープレート
（12）の幅方向すなわち熱交換媒体流通方向と直交する
方向においては連続して交互配置となるように、また長
さ方向すなわち熱交換媒体流通方向においては平坦部
（12e）を介して交互配置となるように形成され、全体
として上下両面においてそれぞれちどり配置状に形成さ
れている。そしていずれの突出部（12c）もインナープ
レート（12）の幅方向の両端部が矩形孔の開口部（12
g）となされると共に、該開口部（12g）を介してインナ
ープレート（12）の上下が連通され、かつ上下頂部（12
2）の突出高さは相互に等しく設定されるとともに、チ
ューブエレメントの完成状態において頂部（122）が第
３図、第４図に示すように、それぞれ上下の成形プレー
ト（11）にほぼ当接するように設定されている。このイ
ンナーフィン部（12b）は、偏平管部（３）の補強用か
つ熱交換効率向上用として機能するものである。またイ
ンナープレート（12）の長さ方向の両端には、成形プレ
ート（11）の熱交換媒体流通孔（11c）に対応する位置
に、それぞれ複数個の熱交換媒体流通孔（12d）が形成
されている。而して前記上下１対の成形プレート（11）
（11）は、開口面を向かい合せ状態にしかつインナープ
レート（12）の周端部を接合面（13）（13）相互間に介
在された状態でろう接一体化され、かつインナーフィン
部（12b）がチューブエレメント（１）の偏平管部
（３）内に位置するものとなされている。尚第１図に示
す（５）はチューブエレメント（１）のタンク部（４）
と偏平管部（３）との連接縁部に形成された結露水排出
口である。

前記アウターフィン（２）は、チューブエレメント
（１）の幅と同程度の幅を有し、その中間部がチューブ
エレメントの偏平管部（３）に、また両端部が水平突出
縁（16）にろう付されている。かかるアウターフィン
（２）としては一般的にはアルミニウム製のコルゲート
フィンが用いられ、望ましくはルーバーを切り起したも
のが用いられる。

なお第２図において、（７）（７′）は最外側のアウ
ターフィン（２）の外側に配置された上下のサイドプレ
ート、（８）（８′）は熱交換媒体流入用、流出用の入
口ヘッダー部材と出口ヘッダー部材、（９）（９′）は
熱交換媒体入口管と同出口管である。

図示実施例の熱交換器においては、入口管（９）から
供給された熱交換媒体は、入口ヘッダー（８）から最下
段のチューブエレメントに入り、最上段のチューブエレ
メントに至るまでの各チューブエレメント（１）を流れ
る間に、チューブエレメント間のアウターフィン（２）
を含む空気流通間隙を矢印（Ｗ）の方向に流通する空気
と熱交換したのち、出口ヘッダー（８′）から出口管
（９′）を介して図示しないコンプレッサ等に送られ
る。各チューブエレメント（１）内において、熱交換媒
体はインナープレート（12）を挟んで上下の流路をイン
ナープレートの長さ方向に沿って流れるが、インナーフ
ィン部（12b）に上下両側にちどり配置状に形成された
突出部（12c）の存在により、第６図に示すように、矢
印のごとく細かく蛇行して著しくかくはんされつつ流れ
る。しかも、インナープレートの幅方向において、突出
部（12c）の両端部は開口部（12g）となされているか
ら、冷媒の一部は該開口部から突出部（12c）の内部へ
と流れ込んで、該突出部の裏面とも接触し、従って突出
部の全表面と冷媒との接触機会が益々増大する。かつま
た、前記開口部（12g）を介してインナープレートの上
下が連通しているため、熱伝達交換媒体は上下にも著し
く蛇行し撹拌されつつ流れ、益々伝熱性能が高くなり、
交換熱量も大きく増加する。一方インナープレート（1
2）が装填されたチューブエレメント（１）内において
は、熱交換媒体によるタンク部（４）を側方に拡げる方
向の内部圧力が加わっても、成形プレート（11）（11）
間にインナープレート（12）が介在しているから、該プ
レートが補強材として作用し、成形プレート（11）（1
1）の接合部が分離する虞れがない。またチューブエレ
メント（１）の偏平管部（３）に配置されたインナーフ
ィン部（12b）の上下の突出部（12c）により偏平管部
（３）に圧縮方向の力が加わっても偏平管部（３）が変
形することもない。特に、突出部（12c）は、２個の立
上り壁部（121）（121）とこれら立上り壁部の先端部に
連設された頂部（122）とを備えているから、偏平管部
（３）に加わった圧縮方向の力に対して、２個の立上り
壁部（121）がこれを十分に支えるものとなる。

第７図はインナープレート（12）におけるインナーフ
ィン部（12b）の変型例を示すものである。この例では
両端開口部（12g′）を有するインナーフィン部（12
b′）の上下の突出部（12c′）が、インナープレート
（12′）の幅方向においても平坦部（12f′）を介して
交互に形成されたものを示している。なお、第７図にお
いて、（121′）は立上り壁部、（122′）は頂部であ
る。

第８図及び第９図はインナープレート（12）のさらに
他の変型例を示すもので、両端開口部（12g″）を有す
インナーフィン部（12b″）の突出部（12c″）形状を断
面山形に形成したものを示している。なお、第８図及び
第９図において、（121″）は立上り壁部、（122″）は
頂部である。

なお以上の実施例においては、インナープレート（1
2）の幅方向の両端が成形プレート（11）の接合面（1
3）から外側に突出しているものとしたが、突出してい
なくとも良い。またインナーフィン部（12b）（12b′）
（12b″）の突出部（12c）（12c′）（12c″）の形状は
上記実施例に限定されるものではない。さらにはチュー
ブエレメントを水平に配した横式の積層型熱交換器を例
にとって説明したが、垂直に配した縦式のものであって
も良い。

発明の効果 この発明は上述の次第で、チューブエレメントの偏平
管部に配設されたインナーフィン部を、表裏に突出した
突出部を有するものに形成したから、該突出部により、
チューブエレメント内で熱交換媒体が著しく攪拌されつ
つ流れるため、伝熱性を向上し得て熱交換効率を向上す
ることができる。また、突出部はインナープレートの表
側に突出するものと裏側に突出するものとが熱交換媒体
の流通方向と直交する方向において交互に配置されてい
るから、いずれか一方側に偏って突出している場合に比
べて熱交換媒体をインナープレートの表裏に沿って分流
させることができるとともに、突出部の両端は開口し該
開口部を介してインナープレートの上下が連通している
ため、熱伝達交換媒体はインナープレートの表裏にも著
しく蛇行し撹拌されつつ流れる。このため、益々伝熱性
能が高くなり、交換熱量も大きく増加する。

しかもこのインナーフィン部をインナープレートに一
体に設け、このインナープレートをチューブエレメント
を構成する成形プレートの接合面相互間に介在した状態
で接合するものとなされているから、熱交換媒体による
チューブエレメントを側方に拡げる方向の内部圧力に対
してインナープレートが補強材となり、成形プレートの
接合面の分離の危険性を回避でき耐圧強度に優れたもの
となしうる。もとより偏平管部を圧縮する方向の力が加
わっても、偏平管部内に配設されたインナーフィン部の
前記突出部が補強材として機能し、偏平管部が押し潰さ
れたり変形したりする危険性がない。特に、突出部は、
２個の立上り壁部とこれら立上り壁部の先端部に連設さ
れた頂部とを備えているから、偏平管部に加わった圧縮
方向の力に対して、２個の立上り壁部がこれを十分に支
えるものとなり、大きな圧縮力にも十分耐えることがで
きる。従ってチューブエレメント、ひいては熱交換器全
体としての強度を向上でき、耐久性に優れしかも熱交換
効率にも優れた熱交換器を提供しうる。

【図面の簡単な説明】

第１図〜第６図はこの発明の一実施例を示すもので、第
１図はチューブエレメントを構成する１対の成形プレー
トとインナープレートおよびアウターフィンを分離して
示す斜視図、第２図は熱交換器の全体を示す一部省略正
面図、第３図は第２図におけるIII−III線断面図、第４
図はチューブエレメントのタンク部の縦断面図、第５図
はインナーフィン部の一部を示す拡大斜視図、第６図は
熱交換媒体の流れを示す平面図、第７図はインナーフィ
ン部の変形例を示す拡大斜視図、第８図およば第９図は
インナーフィン部の他の変形例を示す図で第８図はその
拡大斜視図、第９図は第８図のIX−IX線断面図、第10図
はチューブエレメントの偏平管部に従来装填されていた
インナーフィンの一例を示す斜視図である。 （１）……チューブエレメント、（２）……アウターフ
ィン、（３）……偏平管部、（４）……タンク部、（1
1）……成形プレート、（12）（12′）（12″）……イ
ンナープレート、（12b）（12b′）（12b″）……突出
部、（12g）（12g′）（12g″）……開口部、（13）…
…接合面、（121）（121′）（121″）……立上り壁
部、（122）……頂部。

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】周縁に相互接合面（13）を有する１対の成
   形プレート（11）（11）をもって偏平管部（３）の少な
   くとも一端に膨出状のタンク部（４）を有するものに形
   成された板状チューブエレメント（１）と、アウターフ
   ィン（２）とが交互に複数段積層された積層型熱交換器
   において、前記板状チューブエレメント（１）を構成す
   る成形プレート（11）がその接合面（13）相互間に、成
   形プレートの周縁に沿う外形を有するインナープレート
   （12）（12′）（12″）の周端部を介在した状態で接合
   され、かつ該インナープレートにはチューブエレメント
   （１）の前記偏平管部（３）対応位置に、インナープレ
   ートの表裏に突出し、かつインナープレートから対向状
   に立上がった２個の立上り壁部（121）（121）（12
   1′）（121′）（121″）（121″）とこれら立上り壁部
   の先端部に連設された頂部（122）（122′）（122″）
   とを備えた両端開口の多数の突出部（12c）（12c′）
   （12c″）を有するインナーフィン部（12b）（12b′）
   （12b″）が一体に形成されてなり、さらに前記突出部
   （12c）（12c′）（12c″）は、インナープレート（1
   2）（12′）（12″）の表側に突出するものと裏側に突
   出するものとが熱交換媒体の流通方向と直交する方向に
   おいて交互に配置されるとともに、前記突出部（12c）
   （12c′）（12c″）の両端開口部（12g）（12g′）（12
   g″）を介してインナープレート（12）の表裏が連通さ
   れていることを特徴とする積層型熱交換器。