JP2524693C - - Google Patents

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JP2524693C
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【発明の詳細な説明】 発明の背景 技術分野 本発明は、遺伝子工学的手法による蛋白質の製造方法に関する。さらに具体的
には、本発明は、シグナル・ペプチドをコードする遺伝子の直後に所望の外来性
蛋白質をコードする遺伝子の結合を可能としたDNA遺伝子を具備するベクターを
利用し、宿主菌体内で生産されたその所望蛋白質を菌体外へ分泌させることによ
つて効率的にその蛋白質を回収すること、に特徴を有する遺伝子工学的手法によ
る蛋白質の製造方法に関する。先行技術 組換えDNA技術を用いて所望の遺伝子産物を大量に産生させる技術が確立され
つつあることは、多数の報文や公開特許公報等によつて認められるところである
。これらの技術の確立に伴なつて遺 伝学的解析も行なわれており、シグナル・ペプチドという通常15〜30個のアミノ
酸残基からなる一連のペプチドが発現蛋白の宿主細胞外への分泌に関与している
という知見もその中から見出されたものである。 発現タンパク質の細胞外への分泌に関するこの知見は「シグナル仮説」(J.Ce
ll Biol.、67、835(1975))といわれ、この説を支持する実験結果も蓄積されつ
つある(Secretory Mechanisms,,Cambridge University Press Cambridge(1
979)、生化学、52、141(1980)等)。シグナル・ペプチドの概要および機能につ
いてはたとえば特開昭58-69897号公報等に説明がなされており、シグナル・ペプ
チドは蛋白の膜通過に関与するものとして認識されている。 現在、シグナル・ペプチドを利用した発明は、特許公開公報等で種々開示され
ている(特開昭55-19092号、同55-45395号、同56-137896号、同56-145221号、同
56-154999号、同57-192400号、同58-69897 号各公報等)。これら公報記載の方法では、いずれも、宿主菌の分泌すべき蛋白
をコードする構造遺伝子を適当な制限酵素認識部位で切断し、そこへフレームを
合わせるためのリンカーを介して外来性遺伝子を接続している。その結果、この
ような融合遺伝子から発現してくる外来性蛋白のN末端側には余分なペプチドが
付着していることになる。従つて、この余分なペプチドが外来性蛋白の分泌を阻
害したり、外来性蛋白の生物活性に悪影響を与えたりする可能性も考えられる。
また、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、77、3988〜3922(1980)やScience、219
620〜625(1983)によれば、これらはいずれも発現させようとする蛋白質が本来か
らもつているシグナル・ペプチドを利用したものであるので、このシグナル・ペ
ブチドの利用は本来の蛋白質の分泌のときにのみ利用できることになる。 このように、シグナル・ペプチドを利用した従来の技術は種々の問題点をかか
えているというべく、従つてこれらの改善が望まれているところで ある。 ところで、従来は、遺伝子工学的手法によつて比較的低分子の蛋白質を産生さ
せることは困難であつたが(例えばソマトスタチン〔Science,198、1056(1977)
〕)、その後雑種蛋白質法〔公開特許公報昭54-92696号〕、すなわち所望蛋白質
を大腸菌蛋白質との雑種蛋白質として生産するという方法、によつて、低分子蛋
白質であつても産生可能となつた。しかしながら、雑種蛋白質法によれば、所望
蛋白質を得るには、大腸菌蛋白質をコードする遺伝子と所望蛋白質をコードする
遺伝子との融合点にメチオニンをコードする遺伝子を挿入したのち、この遺伝子
を所要の工程に従つて発現させ、ついでメチオニンに特異的な臭化シアンによつ
て切断して所望蛋白質を得る方法(上記Science)や、リジンやアルギニンに特異
的なトリプシン消化によつて所望蛋白質を得る方法〔Nature、285、456(1980)
〕を利用しなければならず、いずれの方法によつても所望蛋白質のアミノ酸組成
によつては該方法の使用が制限をうけ ることになる。臭化シアン処理の場合はメチオニンが、またトリプシン消化の場
合はリジンやアルギニンが所望蛋白質を構成するアミノ酸中にあれば、そこで切
断され完全な所望蛋白質を得ることができないからである。 一方、ある程度の分子量をもつ蛋白質では、いわゆる直接発現法〔Nature、28
1、544(1979)〕によつて大腸菌由来のアミノ酸配列を含まない所望蛋白質の生産
を行わせることができる。この直接発現法は、所望蛋白質をコードする遺伝子の
直前に開始コドン(通常はメチオニンをコードするAUG)をつけた遺伝子を所要
の工程を経て発現させるものであるが、蛋白質の種類によつてはN末端にメチオ
ニンが付されたままになつたものが産生され(例えば、SV40t抗原〔Nucleic Acid
s Res.、、4057(1980)〕、β-グロビン〔proc.Natl.Acad.Sci.USA、76、559
6(1979)〕等)、天然のものが得られないことになる。 従つて、上記いずれの遺伝子工学的手法による蛋白質の製造方法も、その所望
蛋白質の種類によ つては使用の制限を受けるところから、上記したような制限を受けることなく、
如何なる蛋白質をも製造可能な方法の提供が望まれているところである。 発明の概要 要旨 本発明は上記の点に解決を与えることを目的とし、シグナル・ペプチドをコー
ドする遺伝子の直後に所望の外来性蛋白質をコードする遺伝子の結合を可能とし
たDNA遺伝子を含むベクターを利用し、遺伝子工学的手法によつて所望蛋白質を
宿主菌体内で産生させ、さらにこれを菌体外に分泌させて、これを回収するとい
う蛋白質の製造方法を提供することによつてこの目的を達成しようとするもので
ある。 従って、本発明による蛋白質の製造法は、シグナルペプチドをコ−ドする遺伝
子の下流側末端直後に所望の外来性蛋白質をコ−ドする構造遺伝子が結合した遺
伝子を含むベクタ−で宿主細胞を形質転換し、該形質転換細胞を培養して産生さ
れた所望の外来性蛋白質を回収すること、を特徴とするものである。効果 このように、本発明は、シグナルペプチドによる外来性遺伝子由来蛋白質の菌
体外への分泌を行わせるべく、(イ)シグナルペプチドをコードする遺伝子の下流
側末端直後に所望の外来性蛋白質の構造遺伝子が結合した遺伝子を含み、かつ(ロ
)予定した宿主細胞内で増殖可能なベクター(以下、分泌機能を有するベクター
と記す)を利用するという点に特徴を有する、遺伝子 工学的手法による蛋白質の製造方法に関するものである。 そして、そのような、シグナルペプチド遺伝子と所望の外来性蛋白質遺伝子と
が直結した形の遺伝子は常法によってすべて合成して用意してもよいが、本発明
の別の好ましい態様によれば、シグナルペプチド遺伝子の下流側末端直後への所
望蛋白質の構造遺伝子の結合を容易にするためには、必要ならば、シグナルペプ
チド遺伝子の塩基対の少なくとも一つを構成員の少なくとも一部として人工的に
創出された制限酵素認識部位を有するものを用いる。 この部位を創出するに当つては、DNA塩基対からなるコドンには縮重があると
いうことを巧みに利用することができる。すなわち、創出された制限酵素認識/
切断部位を該制限酵素で切断すれば、その切断部位がシグナルペプチド遺伝子DN
Aの下流側末端に接して存在する場合は該制限酵素切断端と相補性の端部を上流
側に形成させた外来性遺伝子を用意してこれを上記切断端においてシグナルペプ
チド遺伝子と結合させることによつてシグナルペプチド遺伝子の下流側に外来性
遺伝子を直結させることができる。また、シグナルペプチド 遺伝子の切断部位が該遺伝子の下流側末端より上流側に存在する場合は、該遺伝
子の該切断部位より下流側の部分を合成して外来性遺伝子の上流側に結合した断
片を用意して上記と同じに結合を行なえば、一旦切断されたシグナルペプチド遺
伝子がDNAの両鎖について復元されると共にその下流側に外来性遺伝子が直結さ
れた構造が実現される。 さらに、粘着末端の部分または一部がシグナルペプチドをコードする遺伝子D
NAの下流側末端より下流側に突出している場合には、S1ヌクレアーゼまたは
DNAポリメラーゼ等により一本鎖DNA部分を水解してブラントエンドとし、
先に述べたような方法で調製した他の外来性遺伝子を含む遺伝子を結合させれば
よい。その結果、所望蛋白質はシグナルペプチド直後に結合しているので、前記
したようなシグナルペプチドの働きによつてその蛋白質は宿主菌体内で発現後、
菌体外へ分泌される。所望蛋白質が菌体外へ分泌されるに際してシグナル・ペプ
チドは膜酵素(シグナル・ペプチダーゼ)によつて水解されるので、該蛋白質に
は余分なアミノ酸は結合されておらず、完全な成熟蛋白質として得ることができ
る。 本発明はこのように、シグナル・ペプチドによる菌体外への分泌機能を巧みに
利用して所望蛋白質を成熟蛋白質として得るようにしたものである。 なお、本発明において「菌体外への分泌」という表現は、宿主菌が大腸菌のよう
なグラム陰性菌においては所望蛋白質が菌体内から少なくともペリプラズム(細
胞質膜と外膜との空間)に移行したことを意味し、枯草菌のようなグラム陽性菌
においては細胞膜外に移行したことを意味するものである。 本発明による蛋白質の製造方法は、所望遺伝子を分泌機能を有するベクターに
組み込み、ついでこのベクターを用いて宿主の形質転換を行い、該宿主菌を培養
したのち、所望蛋白質を回収することからなるものである。 従つて、本発明は、前記の問題点を回避するとともに下記の利点を有するもの
である。 (イ) 所望蛋白質の精製が簡単である。従来は、宿主菌の生育を行い、適当な時
期に宿主菌を破壊したのち、菌が本来持つている雑多の物質の中から所望蛋白質
を抽出精製していたため、多大な労力が必要であるうえ、精製困難な物質もあつ
た。本発明の蛋白質の製造法によれば、前記シグナル・ペプチドの働きにより産
生される蛋白質は菌体外に分泌され、菌の生育培地はその構成成分が判つている
のであるから、培地からの目的物質の確認、 回収が容易となる。 (ロ) 産生物質がペプチダーゼによる分解から保護される。すなわち、菌体内に
は多くのペプチダーゼ(プロテアーゼ)が存在するので不必要な蛋白は速やかに
水解されてゆくが、本発明によつて目的の有用蛋白質を菌体内に留めることなく
直ちに菌体外へ分泌させれば、この目的蛋白は上記の水解酵素から保護される。 (ハ) 如何なる外来性蛋白でも発現可能である。すなわち、従来の雑種蛋白法で
は、目的とする蛋白を純粋に得るためにたとえばメチオニンに特異的な臭化シア
ン処理(前記Science誌)によつて余分な蛋白を切断したり、リジンやアルギニ
ンに特異的なトリプシン消化(前記Nature誌)を行う場合には、目的とする蛋白
のアミノ酸組成中にこれらのアミノ酸が含まれているときはそこでも切断が生じ
るため完全な形で所望の蛋白を得ることができず、一方直接発現法(前記Nature
誌)によつて蛋白を産生させる場合には、遺伝子N末端には開始コドン(メチオ
ニン)が必要であつて産生 蛋白もN末端にメチオニンが付いたものとして得られるものもあり(前記文献、
ならびに特開昭56-68399号公報参照)、このような末端のメチオニンは臭化シア
ン処理により分解除去することが技術的に難しいので、結局産生させた蛋白は天
然のものとは異質のものとなる。これに対して、本発明によるDNA遺伝子をベク
ターとして外来性遺伝子を宿主菌内で発現させると、いつたんシグナル・ペプチ
ドとの融合ないし雑種蛋白として産生された蛋白は宿主菌内のシグナル・ペプチ
ダーゼによつて特異的にシグナル・ペプチダーゼ部分が切断されて、所望組成の
成熟蛋白となつて宿主菌細胞外へ分泌される。 発明の具体的説明 所望蛋白質をコードする遺伝子 所望蛋白質をコードする遺伝子(構造遺伝子)としては、インシュリン、血清
アルブミン、ヒト成長ホルモン、インメーフエロン、上皮細胞成長因子等の真核
性の細胞蛋白質のものが考えられ、天然物(染色体DNA)より調製したものでも
よい し、あるいは合成したものを用いてもよい。 本発明において、所望の外来性蛋白質は、ヒトウロガストロン(hUG/EG
F)、21−ロイシン−ヒトウロガストロン(21−Leu−hUG)、インタ
ーフェロン(IFN)およびヒト成長ホルモン(hGH)から選ばれるものであ
る。」 なお、これら所望蛋白質をコードする遺伝子の調製方法については種々の成書
や文献および公開公報等を参考することができ、主要なものに下記のものがある
。 (1) 直接染色体DNAから所望遺伝子を調製する方法(Proc.Japan Acad.、55B
464、(1979)、特開昭57-130998号、同57-166992号、同57-208994号、同58-135
99号公報等) (2) メツセンジヤーRNA(以下、mRNAという)を調製したのち、これをもとに公
知の所要の工程を経て調製する方法(特開昭58-56684号、同56-2998号、同56-36
499号、同56-63996号、同56-85296号、同56-104897号、同56-131522号、同56-13
1598号、同56-150100号、同56-154499号、同56-158793号、同56-158799号、同57
-24400号、同57-141287号、同57-171999号、同57-174085号、同57-206700号、同
58-9687号、同58-56684号各公報等)。 (3) 所望遺伝子が作る蛋白質のアミノ酸配列をもとにDNAを化学合成することに
よつて、所望蛋白質をコードする遺伝子を調製する方法(特開昭57-122096号、
同57-200343号、同57-200400号、同58-10600号各公報等)。 上記のどの方法を参考にして行うかは、所望蛋白質をコードする遺伝子の種類
によつて決定すればよい。なお、以下の実施態様としては本発明においてはヒト
ウロガストロン(以下、hUGという)およびインターフエロン(以下、IFNという)
等の構造遺伝子を用いているが、前者は化学的に合成したものであり、後者は直
接染色体DNAから構造遺伝子を調製したものである。その操作の詳細については
、各々特開昭60-66992号公報(特願昭58-175742号明細書)特開昭60-28994号公
報(特願昭58-123520号明細書)を参照されたい。分泌機能を有するベクター 遺伝子操作においてベクターとは、外来性遺伝子(所望蛋白質をコードする遺
伝子)を宿主細胞に移入し、この細胞中で外来遺伝子を増殖させる役割をもつ運
搬体DNAのことをいい、微生物細胞 中では、染色体外に存在するプラスミドやフアージが上記増殖機能を有する。 本発明では、上記の機能を具備しかつ分泌機能を有するベクターとして、本発
明者らが先に提案した分泌機能を有するDNA遺伝子(特開昭60-30687号公報(特
願昭58-140748号明細書)を上記プラスミドまたはフアージに組込んだものを用
いることができる。 このようなベクターの一具体例としては、本発明で用いたベクタープラスミド
pTA1529がある。pTA1529は、pTA529(pYK283〔E.coli K12C 600(pYK283)として
寄託済み(微工研条寄第556号)〕から特開昭60-30687号公報(特願昭58-140748
号明細書)に開示された方法に従つてつくつたもの)とPHS1(このプラスミドは
、pBR322を制限酵素EcoRIおよびHindIIIで消化し、このEcoRI-HindIII部分を下
記の合成リンカー で置換したものである。詳細は、特開昭59-71692号公報参照)とから造成したも
のである(造成操作は、後記実験例を参照されたい)。 すなわち上記一実施態様におけるシグナルペプチドをコードする遺伝子は、ア
ルカリ性フオスフアターゼ由来のものであるが、その他にも、後記実施例に述べ
るβ-ラクタマーゼ由来のものなど任意のもの(リポプロテインなど)がありう
る。またこの遺伝子は天然から取得しても合成して取得してもよいことは言うま
でもなく、合成して取得する場合は必要ならばアミノ酸に対応するコドンを適宜
選択して遺伝子を設計、合成することができる。組換体DNA 1)造成 外来性(所望蛋白質)遺伝子が発現しかつ分泌するようにしくまれたベクター
の適当な位置に所望蛋白質をコードする遺伝子を組込むことにより組換体DNAが
造成される。組込操作そのものは、分子生物学の分野で公知の常法に従つて行う
こと ができる。具体的な方法については、後記実験例を参照されたい。 2)リンカー 所望蛋白質の構造遺伝子をベクターに組込むにあたり、フレームを合わせたり
、所望の制限酵素切断片やリボソーム結合部位などを導入するため、合成した種
々のリンカーを用いることは組換えDNA技術上有力な手段である。 本発明の一実施態様においてもリンカーを利用していろが、それはフレームを
合わせるため、すなわちシグナル・ペプチドの分泌機能を利用することができか
つ所望蛋白質に余分なアミノ酸が付着することなく得られることを目的として、
合成リンカーを利用するものである(実際の利用例は、後記実施例を参照された
い)。 リンカーの合成は、十一鎖のそれぞれについて、これをいくつかのフラグメン
トに分けたものを化学的に合成し、ついで各フラグメントを結合する任意の方法
によつて達成される。フラグメントの合成法としては、ジエステル法(Science
203、 614(1976))、トリエステル法(Science、198、1056(1977))、固相法(Nuc
leic Acids Research、、5491(1980))、液相法、あるいは酵素を用いる方
法(J.Biol.Chem.,241、2014(1966))等があるが、合成時間、収率、精製な
どの点から、固相法でトリエステル法によるものが好ましい。 3)方向性の判定 ベクターに組込まれた所望蛋白質をコードする遺伝子の方向性の判定は、構造
遺伝子内に含まれる特定の部位を認識する酵素でその部位を切断し、構造遺伝子
外の特定の位置に別の酵素で切断を入れ、得られた断片の大きさを分析すること
により行うことができる。形質転換株の調製 1)宿主菌 宿主菌は、上記造成DNA組換体がその菌体中で増殖できるものであり、かつそ
の微生物の遺伝的性質が詳細に解明されているものであることが好ましい。 形質転換させる宿主菌の一具体例としては、エ シエリキア・コリに属する大腸菌株K12C600がある。このK12C600は、グラム陰性
桿菌で、胞子を作らず、通性嫌気性等の大腸菌属の一般属性を有する他、F因子
を含まず、サプレツサー遺伝子Eの機能を欠き、遺伝子組換えに関与するヌクレ
アーゼをコードするrecBC遺伝子に欠陥を有する。栄養要求性としては、アミノ
酸のトレオニンとロイシンをその最小培地上での増殖に必要とするものである。
なお、K12C600株の詳細については、Genetics、39、440(1954)およびNature、
217、1110(1968)を参照されたい。 また、宿主菌のもう一つの例としては枯草菌(Bacillus subtilis)が考えら
れろ。枯草因はグラム陽性菌であり、胞子形成能を有し、菌体外酵素の生産菌と
して工業的にも利用されているものである。宿主として適当な株の例を挙げれば
、Marburg168を変異させたRM125(Molec.Gen.Genet、152、65(1977)、同胞子
形成能の欠損した株(NIHガイドライン、フエデラルレジスター、45、6724(198
0))、および組換能欠損株 (recE)(Molec.Gen.Genet.165、269(1978))がある。なお、枯草菌の利用に
ついては種々の文献〔例えば、蛋白質・核酸・酵素、臨時増刊、「遺伝子操作」
26、464〜475(1981)、28、1468〜1479(1983)、同、臨時増刊、「遺伝子操
作・組換え遺伝子の細胞への導入と発現)〕を参照することができる。 2)形質転換 形質転換操作そのものは、分子生物学の分野で公知の常法〔例えば大腸菌を形
質転換する場合はクシユナー法〔Genentic Engineering 1978、17(1978)があ
り、枯草菌を形質転換する場合は大腸菌の形質転換の一般的手法を適用でき、具
体的には成書「遺伝子組換え実用化技術3」サイエンスフオーラム社刊p33〜(1
982)成書「Molecular cloning a laboratory manual」p247〜268、Cold Spring
Harbor Laboratory刊(1982)〕等に従つて行うことができる。なお、大腸菌に
ついての具体的な形質転換法については、後記実験例を参照されたい。 3)形質転換体 形質転換操作によつて形質転換された株は、組換え体プラスミドの移入によつ
て作り出された組換え体DNAのマーカー(薬剤耐性、栄養要求性等)を指標にし
て選択できる。形質転換体の一具体例としては、大腸菌K12C600をpTA1524(詳細
後記)によつて形質転換させて得た形質転換体K12C600(pTA1524)がある。この
形質転換体は、宿主菌K12C600と下記の性質において異なる菌株である。 Amr、Tcs 従つて、この性質を指標として形質転換体を選択することができる。所望蛋白質の産生および回収 所望蛋白質は、宿主菌(すなわち上記形質転換体)を常法に従つて培養するこ
とによつて産生される。具体的な方法については、後記実験例を参照されたい。 菌体からの所望蛋白質の回収は、宿主菌が大腸菌のようにグラム陰性菌の場合
は所望蛋白質はシ グナル・ペプチドの分泌機能によつてペリプラズムに分泌される。従つて、浸透
圧シヨツク法(J.Biol.Chem.、240、3685(1965))によつてペリプラズムか
ら細胞壁外(培地中)に放出させたのち培地から容易に所望蛋白質を回収するこ
とができる。ペリプラズムにまで分泌された所望蛋白質はさらに培地中にまで移
行することもある。この場合には、菌を集菌後、上清より容易に所望蛋白質を回
収できる。また、宿主菌が枯草菌のようなグラム陽性菌であれば、シグナル・ペ
プチドの分泌作用で所望蛋白質は菌体外へ放出される〔枯草菌を用いて所望蛋白
質を産生させる方法としては、例えばGene、22、229〜235(1983)がある〕ので
培地から容易に回収することができる。なお、宿主菌が大腸菌の場合の培養およ
び所望蛋白質を浸透圧シヨツク法を行つたのち回収する方法についての詳細は、
後記実験例を参照されたい。 実験例 参考例 分泌機能を有するベクターの作製を、下記の通りに行なつた。 本発明の方法に使用するベクターとして、本発明者らが先に提案したプラスミ
ドpTA529〔特開昭60-30687号公報(特願昭58-140748号明細書)参照。プラスミドp
YK283(E.coli K12C600(pYK283)として微工研に寄託(微工研条寄第556号)
)のシグナルペプチドをコードする遺伝子に対応するDNA部分の下流側末端コド
ンおよびその下流側に直結したDNA部分の最初のコドンが第1図に示した通りの
もの〕を改良して、さらに自己複製能力の強いベクターpTA1529を作製した。 なお、第1図は、二本鎖DNAからなるDNA遺伝子の一部を示すものであつて、A
、G、CおよびTはそれぞれアデニン、グアニン、シトシンおよびチミンを示し、L
ys、AlaおよびTrpはそれぞれリジン、アラニンおよびトリプトフアンを示す。
この二本鎖DNAの区域(1)はングナルペプチド遺伝子DNA部分であり、区域(3)は制
限酵素HindIIIの認識部位であり、破線はHindIII切断部位である。区域(2)は、
シグナルペプチド遺伝子DNAの下流側の直後に結合されたDNA部分である。 pTA1529の作製は、以下の手順に従つて行つた。 pTA529(第2図中)5μgを、50μlの反応液〔50mMトリス−塩酸緩衝液(以
下、Tris-HClと記す)(pH8.0)、10mM塩化マグネシウム(以下MgCl2と記す)〕
中で10単位の制限酵素ThaI〔BRL社〕(以下ThaIと記す)を用いて60℃で1時
間加水分解した。ついで、エタノール沈殿を行ない、得られた沈殿画分を、50μ
lの反応液〔10mM Tris-HCl(pH8.0)、7mM MgCl2、100mM塩化ナトリウム(以下
NaClと記す)〕中で4単位の制限酵素Bam HI〔タカラ〕(以下、Bam HIと記す)
を用いて37℃で1時間加水分解したのち、ポリアクリルアミドゲル電気泳動によ
つて目的とするアルカリ性フオスフアターゼ-シグナル・ペプチド領域を含むDNA
断片約220塩基対(以た。 一方、プラスミドpHS1(特開昭59-71692号公報参照)10μgを50μlの反応液〔
10mM Tris-HCl(pH7.5)、10mM MgCl2、100mM NaCl〕中で4単位の制限酵素Psf
I〔タカラ〕(以下、 PstIと記す)を用いて37℃で1時間加水分解した。ついで、エタノール沈殿を
行い、得られた沈殿を二つに分け、一方を50μlの反応液〔上記〕中で40単位のB
amHIを用いて加水分解したのちアガロースゲル電気泳動によつて330bpのDNA断片 方のエタノール沈殿物も同様に50μlの反応液〔6mM Tris-HCl(pH8.0)、20mM
塩化カリウム(以下KCl)、6mM MgCl2〕中で4単位の制限酵素SmaI〔タカラ〕
(以下、SmaI)を用いて37℃で1時間加水分解したのち、アガロースゲル電気 で表示)-Lを得た。 以上の操作で得られた3本のDNA断片(′、-Sおよび-L)を、30μlの
反応液〔20mM Tris-HCl(pH7.5)、10mM MgCl2、10mMジチオスレイトール(以下
、DTT)、0.5mMアデノシントリリン酸(以下、ATP)〕中で30単位のT4 DNAリガ
ーゼ〔タカラ〕を用いて14℃、16時間反応させた。反応終了後、反応混合物で大
腸菌 K12C600を形質転換させて(E.coli K12C600として寄託済み(微工研条寄第115
号))目的とするプラスミド(pTA1529)を含む形質転換株を得た。なお、ここ
で得られた株からプラスミドを調製し(調製法の詳細は特開昭60-30687号公報(
特願昭58-140748号明細書を参照されたい)、各DNA断片の接続部の塩基配列をマ
キサム・ギルバート法〔Proc.Natl.Acad.Sci.USA、74、560(1977)〕によつて
確認した。 実施例1 ヒトウロガストロン(hUG/EGF)および21番目がメチオニンの代わりにロイシ
ンにおきかわつた21-ロイシン-ヒトウロガストロン(21-Leu-hUG)を本発明の方
法に従つて産生させて、その回収を行つた。なお、以下の実施例1の操作につい
ては、hUGと21-Leu hUGとは同様なので、hUGを主体にして記述する。hUG(および21-Leu-EGF)構造遺伝子の合成 hUG(および21-Leu-EGF)構造遺伝子の合成は、特開昭60−28994号公
報(特願昭58−123520号の明細書)に開示してあ る方法に従つて行つた。すなわち、鎖長10〜17のフラグメントを予め合成してお
き、ついでこれら合成フラグメントをブロツクごとに分けて結合反応を行い、最
後にこれらブロツクを結合させて、完全なhUG構造遺伝子を合成した。合成したh
UG構造遺伝子の塩基配列は、第3図に示す通りであ ★は終止点を示す。また、同図中Met等はいうまでもなく、メチオニン等のアミ
ノ酸を示すものであり、A、T、CおよびGは塩基を示すものであつて各々アデ
ニン、チミン、シトシンおよびグアニンの略号として当業界で承認されているも
のである。さらに、図中の数字はフラグメントの塩基数を示し、Eco RI等は制限
酵素認識部位を示すものである。なお、21-Leu hUGの塩基配列は21番目がMetの
かわりにLeuをコードするものに改変されているが、同図中Metの上に(Leu)と
記しており、他はhUGと同一である。hUG(21-Leu-hUG)遺伝子を含有するプラスミドの作製 (第4図参照) pTA1529 5μgを、50μlの緩衝液〔10mM Tris-HCl(pH7.5)、10mM MgCl2、50
mM NaCl〕中で4単位の制限酵素HindIII〔タカラ〕(以下HindIII)を用いて37
℃で1時間加水分解した。ついで、エタノール沈殿を行い、得られた沈殿物を、
30μlの反応液〔67mM Tris-HCl(pH8.8)、16.6mM硫酸アンモニウム(以下)(NH
4)2SO4)、6.7mM MgCl2、10mM 2-メルカプトエタノール、6.7μMエチレンジアミ
ン四酢酸塩(以下EDTA)、0.66mMずつのdATP、dCTP、dGTP、TTP)〕中で1単位のT
4 DNAポリメラーゼを用い37℃で15分間処理した。ついで、エタノール沈殿を行
つたのち、得られた沈殿物を、50μlの反応液〔6mM Tris-HCl(pH8.0)、6mM Mg
Cl2、150mM NaCl〕中で4単位の制限酵素SalI〔タカラ〕(以下、SalIと記す
)を用いて37℃で1時間加水分解した。反応終了後、アガロースゲル電気泳動に
よつて、3900bpのDNA断片(第4図中)を得た。 プラスミドpBR322-hUG(pBR322(E.coli K12C600(pBR322)として寄託済み(微工研条寄第235号))をEco RIおよびSal
Iで消化したものに上記で合成したhUG構造遺伝子をEco RIおよびSalIで消化し
た断片を組み込んだもの)5μgを、50μlの反応液〔100mM Tris-HCl(pH7.5)
、50mM NaCl、50mM MgCl2〕中で4単位の制限酵素EcoRI〔タカラ〕を用いて37℃
で1時間加水分解したのち、上記と同様にT4 DNAポリメラーゼ反応を行い、さら
にSalI処理を行つたのち、アガロースゲル電気泳動によつて160bpのDNA断片(
第4図中)を得た。21-Leu-hUGのときは、pLE6527(特開昭60−28994
号公報(特願昭58−123520号明細書)EcoliXA35(pLE6527)として寄託
済み(微工研条寄第514号))から同様に構造遺伝子を切り出してきた。 上記で調製した二つのDNA断片(第4図中および)を、30μlの反応液〔20
mM Tris-HCl(pH7.5)、10mM MgCl2、10mM DTT、0.5mM ATP〕中で300単位のT4 D
NAリガーゼ〔タカラ〕を用いて14℃で16時間反応させた。反応終了後、 これで大腸菌K12C600を形質転換させ、目的のプラスミド〔以下、pTA1522〕(第
4図中)を含有する形質転換株(E.coli K12C600(pTA1522))を得た。また、21
-Leu-hUGのこのようなプラスミドはpTA1523であり、(pTA1522のときと同様な操
作を経て、形質転換株E.coli K12C600(pTA1523)を得た。なお、上記実験例
と同様にここで得られた株からプラスミドを調製特開昭60-30687号公報(特願昭
58-140748号明細書参照)して、各DNA断片の接続部の塩基配列をマキサム・ギル
バート法〔文献上記〕によつて確認した。hUG(21-Leu-hUG)の産生および回収 1)形質転換株の培養 形質転換株E.coli K12C600(pTA1522)を、20μg/mlのアンピシリンを含む
L-培地〔1%バクトトリプトン、0.5%イーストエキストラクト、0.5%NaCl、0
.1%グルコース〕80mlで前培養した。ついで、前培養したものを0.64mMのリン酸
二水素カリウム(以下、KH2PO4)を含む合成培地〔Biochim.Biophs.Acta 38
470(1960)〕 2.4リツトルに移し、37℃で一夜振とう培養を行つた。培養終了後、集菌したの
ち菌体を32μMのKH2PO4を含む上記合成培地に懸濁させて、さらに37℃で5時間
振とう培養を行つた。また、21-Leu-hUGについても同様に培養を行つた。 培地組成は、下記の通りである。 0.1M Tris-HCl(pH7.2)、80mM NaCl、2mM KCl、20mM NH4Cl、3mM Na2SO4、1mM M
gCl2、0.2mM CaCl2、2μM FeCl3、2μM ZnCl2、0.2%グルコース、20μg/mlア
ンピシリン、40μg/mlロイシン、40μg/mlスレオニン、10μg/mlチアミン 2)浸透圧衝撃法(オスモテイツク・シヨツク法)によるhUG(21-Leu-hUG)の回
収 宿主菌のペリプラズムに分泌されたhUG(または21-Leu-hUG)を、オスモテイ
ツク・シヨツク法〔J.Biol.Chem.240、3685、(1965)〕によつて菌体外に放
出させて、回収した。すなわち、集菌した菌体を反応液〔20%シユークロース、
30mM Tris-HCl(pH8.0)、1mM EDTA〕120mlに 懸濁させ、室温で10分間放置した。ついで、集菌し、これを冷水80mlに懸濁させ
て氷浴中で10分間放置したのち、遠心を行なつて上清を回収した。 3)hUG(21-Leu-hUG)の定量 オスモテイツク・シヨツクで得た上清の一部を3倍に希釈し、これを用いてラ
ジオリセプターアツセイ(RRA)法によつてhUGおよび21-Leu-hUGの定量〔A.
キング(King)らの方法(J.B.C.,257、3053(1982)〕を行つた。すなわち、
ヒト鼻咽腔上皮癌細胞由来のKB細胞(ATCC No.CCL17)を800mlのフラスコ中でダ
ルベツコ変法イーグル(DME)培地(日水)中で単層培養する。培地を除き、0.0
5%のEDTAを含むリン酸平衡化塩溶液(PBS)を用いて細胞をはがして、細胞
懸濁液をつくる。その後、20mM Hepes(pH7.4)を含むHanks平衡塩類溶液(HBSS
)で2回細胞を洗浄する。細胞をBinding solution(DME培地・20mM Hepes(pH7
.4)・0.35g/lNaHCO3・100μg/mlストレプトマイシン)に懸濁後、細胞数を
計算して30万〜40万/0.2ml Binding solutionと なる様調整し、チユーブに0.2mlずつ分注する。種々の濃度のhUG(または21-Leu
-hUG)および125I-mEGF(マウスEGF)を含む試料液0.2mlをチユーブに加えて、
37℃で1時間インキユベートする。細胞を氷冷したHBSSで3回洗浄後、10%のト
リクロロ酢酸〔以下、TCA〕に懸濁させ、グラスフイルターを用いて細胞を固定
する。アセトンでTCAを除いた後、液体シンチレーシヨンカウンターを用いて計
数する。 比較のため、mEGF(東洋紡)およびβ-ガラクトシダーゼを臭化シアン処理し
て得られたペプチド画分についても同様な実験を行なつた。第5図は、その結果
を示すものである(同図中●はmEGFを、○はhUGを示す)。図から明らかなよう
にhUGを含むペプチド画分は125I-mEGFとKB細胞EGFリセプターとの結合を拮抗的
に阻害し、その用量-反応曲線はmEGFのそれとよく一致している。 その結果、mEGFに挨算して6.24ng/μlの、EGF活性を持つペプチドが含有され
てい ることが確認された。これは、カルチヤー1リツトルあたり208μg(以下、μg
/リツトル・カルチヤーと記す)のhUGが分泌生産されていたことになる。21-Le
u-hUGについても同様に定量を行つた結果、185μg/リツトル・カルチヤーのペ
プチドが分泌されたことになつた。hUG(21-Leu-hUG)の精製 オスモテイツク・シヨツク法によつて得た上清を凍結乾燥して粉末とし、これ
を水6mlに溶解したのち、25mM酢酸アンモニウム〔以下、AcONH4カラム(直径7.5cm×長さ90cm)にかけた。溶出は9.5ml/画分/14分の流速で行
い、活性のあつ G-50にかけたときの溶出・パターンおよび活性(前記RRA法)の測定結果は、第
6図に示す通りで ついで、この画分(34〜39本画分)を25mM AcONH4(PH5.8)で平衡化したDEAE
セフアロースDE-52(ワツトマン社)〔直径1.2cm×長さ12 cm〕にかけた。溶出に際してAcONH4の緩衝液25mM〜300mMまでの濃度公配(300ml
)を行い、溶出は3.12/画分/7.6分の速度で行い、活性のあつた画分のうち39
〜45本を集めた。このときの溶出パターンおよび活性(前記RRA法)の測定結果
は、第7図に示す通りであつた。同図中 ついで、ここで得た活性のある画分を高速液体クロマトグラフイー(以下HPLC
)〔μBondapakC-18、カラム;直径0.6cm×長さ30cm、溶出:0.1%TFA、アセト
ニトリルの20%〜50%までの濃度公配、流速:1ml/分〕にかけて精製を行つた
。そのときの溶出パターンは、第8図に示す通りであつた。図中、保持時間24分
にhUGのものと思われる単一のピークが得られた。また、21-Leu-hUGについても
同様に精製を行つた。hUG(21-Leu-hUG)の確認 hUG(21-Leu-hUG)の確認は、アミノ酸組成分析、N末端分析およびC末端分
析によつて行つた。 アミノ酸組成分析は、上記HPLCで精製した画分を6N HClで加水分解し、つい
で乾燥したのち0.02N HClに溶解し、これをアミノ酸分析器〔HLC-803D OPAシス
テム(東洋曹達)〕にかけることによつて行つた。そのときの結果は、表1に示
す通りであつた。 また、N端分析はエドマン法(生化学実験講座1、タンパク質の化学II、p13
2、日本生化学会編、東京化学同人刊)によつて行なつて、N端から20番目まで
のアミノ酸配列を確認した。 さらに、C端分析はカルボキシペプチダーゼYを用いて行つて、C端より4番
目までのアミノ酸配列を確認した。 これらの結果より、分泌されたものはhUGであることが確認された。 また、本発明者らが先に提案した21-Leu-hUGについても、上記と同様に一連の
操作を行つて確認した。 【表1】 上表中、Asp等は、いうまでもなく、アスパラギン酸等のアミノ酸を示す当業
界で承認されている記号である 比較例1 実施例1はシグナル・ペプチドを有するプラスミドを用いてhUG(21-Leu-hUG
)を産生させたものであるが、シグナル・ペプチドの分泌機能を調べるための比
較実験としてシグナル・ペプチドを具備しないプラスミドpTA1502(下記)を作
製して同様にhUGの産生を試みた。 なお以下は制限酵素、リガーゼ反応、DNA断片の調製等は上記実施例1と同様
に行つたので詳細な条件については記述しないものとする。また、制限酵素はAa
tIIのような記述をする。pTA1502の作製(第9図参照) pTA1522〔上記〕をAatIIおよびRsaIで消化したのち、小さい断片を得た(同
図中)。同様に、pTA1522をBglIIおよびAatIIで処理したのち、大きな断片を
得た(同図中)。 一方、pBR322-hUGをEcoRIおよびBglII処 理することによつて、hUGの構造遺伝子(一部を欠いたもの)を得た(同図中
)。また、上記〜のDNA断片を結合するためのリンカー(同図中)を合成
した。ついで、これら〜について所要の方法に従つて結合を行なつて、シグ
ナル・ペプチドのないプラスミドであつて、hUGの構造遺伝子を含有するpTA1502
(同図中)を得た。hUGの産生、回収、精製等は、すべて上記実施例1と同様
に行なつた。 そして、pTA1522およびpTA1502を用いて蛋白質の製造を行つた楊合のhUGの定
量を以下の三つの画分について行つた。その結果は、下表にまとめた通りであつ
た。 (イ) 所望蛋白質を発現させたのち、宿主菌を破壊して調製した画分 (ロ) 所望蛋白質を発現させたのち、宿主菌をオスモテイツクシヨツク法に付す
ことによつて得られた上清画分 (ハ) オスモテイツクシヨツク法後菌体破壊を行つて得た画分 実施例2 本発明の方法に従つてインターフエロン(以下IFN)の製造を行つた。このIFN
はα型で、本発明者らが提案した特開昭60-66992号公報(特願昭58-175742号明
細書)新規IFNである。また、分泌機能を有するプラスミドベクターとしては前
記pTA1529を用いた。 IFN構造遺伝子を含有するプラスミドの調製(第10図) pTA1529(前記)5μgをSmaIおよびHindIIIで消化したのち、アガロースゲル
電気泳動で大きな断片を得た(第10図中)。一方、IFN構造遺伝子を有するpIF
202(特開昭60-66992号公報(特願昭58-175742号明細書参照。微工研菌寄第7188
号)5μgをSmaI、 DdeIで消化したのち、アガロースゲル電気泳動によつてIFN構造遺伝子(先端の
一部が欠けている)DNA断片を得た(第10図中)。ついで、DNA断片および
をつなぐ為(すなわち本発明の目的に従つてシグナル・ペプチド直後に完全なIF
N構造遺伝子が続くように)、下記の配列を有するリンカーを合成した。 これら三つのDNA断片(、および)の結合(操作は前記実施例1と同じ
)を行ない、これで大腸菌K12C600を形質転換させて、目的とするプラスミドpTA
1524(第10図中)を得た。このpTA1524についても前記hUGのときと同様にマキ
サム・ギルバート法(前記Proc.Natl.Acad.Sci USA)に従つて、塩基配列の確認
を行つた。ところで、pTA1524との比較のため、上記のシグナルペプチドを持た
ず、かつpTA1524と同一のドライブユニツトを有していてIFN構造遺伝子をその制
御下においたプラスミドpTA1504を以 下のようにして調製した(第11図参照)。 pTA1529(前記)をHaeIIおよびRsaIで消化したのち、ポリアクリルアミドゲ
ル電気泳動で180bpのDNA断片を得た(第11図-)。ついで、これをバクテルア
ル・アルカライン・ホスフアターゼ処理して、5′-末端リン酸基を除去した(第
11図-′)。 一方、pIF202(前記)をXbaIおよびSmaIで消化し、IFNの構造遺伝子を回収
し(第10図-)、ついでT4 DNAポリメラーゼ処理を行つて、XbaI切断部分の粘
着末端を鈍感末端に変換した(第10図-′)。ついで、上記で調製した二つ(
′、′)のDNA断片の結合を行い(第10図-)、生成結合体をThaI消化し
て、DNA断片を上記と同様にして得た(第10図-′)。 pHS1(前記。なお詳細は特開昭59-71692号公報参照)をSmaI消化したものに
上記DNA断片(′)を挿入したのち、プロモーターSD配列およびIFN構造遺伝子
が同一方向に正しく挿入されたプラスミドpTA1504を得た。なお、塩基配 列はマキサム・ギルバート法によつて確認した。IFNの産生および回収 上記で調製したpTA1524を含む菌(大腸菌K12C600)を常法に従つて培養するこ
とによりIFNの発現を行い、発現の確認は抗ウイルス活性を測定することによつ
て行つた。 (1) 菌の培養 菌の培養は、プラスミド組換体pTA1524を含む大腸菌K12C600を上記実施例1と
同様にして行つた。 (2) 抗ウイルス活性の測定 培養終了後、集菌を行い、オスモテイツク・シヨツク〔前記〕処理によつて上
清を得て、この上清の抗ウイルス活性を測定した〔蛋白質・核酸・酵素、別冊、
No.25、360、(1980)〕。すなわち、FL細胞(ヒト羊膜由来の株化細胞)をプレー
トに培養し、培養液を捨てたのち、適当に希釈した上清〔上記オスモテイツク・
シヨツク処理で得た もの〕をこのFL細胞のプレートに加えて一夜培養〔培養条件は37℃、5%CO2
下同じ〕した。 培地を捨てたのち、適量の水泡性口内炎ウイルス(Sindbis virus)をプレー
トに接種し、ついで48時間培養を行つた。培地を捨てたのち、細胞変性効果(C
PE)を測定した。なお、pTA1524との比較例として調製したシグナル・ペプチ
ドを有さないpTA1504についても上記と同様に培養を行ない、上清を調製して、
この抗ウイルス活性を測定した。以上の2種のプラスミドpTA1524およびpTA1504
を用いてIFNを培養したときの抗ウイルス活性は、下表に示す通りであつた。 実施例3 本発明の方法に従つてヒト成長ホルモン(以下、hGH)を製造した。なお、hGH
の構造遺伝子は化学合成したものである。すなわち、本発明者らは、hGH構造遺
伝子を含むプラスミドphGH1(Nucleic Acids Symposium Series、12,79〜82(19
83)に従つて作製したもの)から構造遺伝子を切り出し、これを合成リンカーと
ともにpTA1529に組込んだpTA1526を作製し、本発明の方法に従つてhGHを製造し
た。pTA1526の作製(第12図参照) pTA1529(前記)5μgをSalIおよびHindIIIで消化したのち、アガロースゲル
電気泳動で大きなDNA断片を得た(第12図-)。 hGHの構造遺伝子を含むphGH1(上記)5μgをClaIおよびSalIで消化したの
ち、アガロースゲル電気泳動で約600bpのDNA断片を得た。ついで、これをHinf
消化したのち、大きい断片(先端の一部が欠けたhGHの構造遺伝子)を得た(第1
2図-)。 一方、上記二つのDNA断片を、シグナル・ペプチド直後に完全なhGHの構造遺伝
子が接続されるようにつなぐため、下記のリンカー(第12図-)を合成した(
合成法は、前記のリンカーと同じ固相合成法で行つた)(第12図中)。 上記で調製した三つのDNA断片を結合して、目的とするプラスミドpTA1526を得た
。なお、pTA1526の、塩基配列は前記実施例と同様にマキサム・ギルバート法(
文献上記)によつて確認した。hGHの産生および回収 上記実施例と同様に宿主菌を通常の方法に従つて培養したのち、オスモテイツ
ク・シヨツク法によつてhGHを回収した。なお、hGH活性の測定は よつて測定した。 その結果、オスモテイツク・シヨツク法によつて得られた上清画分にはカルチ
ヤー1リツトルあ たり45μgのhGHが含有されていた。 実施例4 以上実施例3まではpTA1529を用いて本発明の方法を行つたものであるが、今
度はpTA1529と同様に分泌機能を有し(pTA1529のシグナルペプチドはアルカリ性
フオスフアターゼのもの)かつhUGの構造遺伝子を含むプラスミドpTA1632を造成
して(pTA1632のシグナルペプチドはβ-ラクタマーゼのものである)、上記と同
様にしてhUGを製造した。pTA1632の造成 1)β-ラクタマーゼのシグナルペプチド(以下、blaシグナル)の合成 β-ラクメマーゼをコードするDNA遺伝子として、下記の配列のものを通常のオ
リゴヌクレオチドの合成法に従つて合成した。なお、blaのアミノ酸配列はProc.
Natl.Acad.Sci.USA,75 3737〜3741(1978)に従つた。 2)pBR322へのblaシグナルのクローニング(第13図参照) 上記で合成したblaシグナルの遺伝子を、以下の手順に従つて造成した。pBR32
2(前記)を Hind IIIおよびRstIで消化したのち、大きなDNA断片を回収した(図中)。ま
た、別にpBR322をRstIおよびEcoRIで消化したのち、小さなDNA断片を回収した
(図中)。これら二つのDNA断片とblaシグナルDNA断片とを結合して、プラス
ミドpBR blaを得た(図中)。 3)hUG遺伝子の連結(第14図) 以下の手順に従つて、上記プラスミド(pBR-bla)にhUG構造遺伝子を挿入した
。 pBR322をSalIおよびEco RI消化したのち、大きいDNA断片を回収した()。
上記pBR-blaをEco RIおよびNaeI消化したのち約70bpのDNA断片を回収した。一
方、pBR322-hUG(前記)をEco RI消化し、ついでT4 DNAポリメラーゼ処理を行な
い、さらにSalI消化して約160bPのDNA断片を得た()。最後に上記DNA断片(
、および)を結合して、blaシグナルの直後にhUGの構造遺伝子が結合して
いるプラスミドpBR-bla-hUGを得た。 4)トリプトフアンプロモーター(Trp)への連 結(第15図) 以下の手順に従つて、hUGをトリプトフアンプロモーターの制御下においたプ
ラスミドpTA1632を造成した。 pTS001(pBR322のEcoRI認識部位に、Trpプロモーターをテトラサイクリン耐性
遺伝子向きに挿入したのち、アテニユエーター部分を除去したもの)をClaI消
化したのち、T4 DNAポリメラーゼ処理を行い、さらにPstI消化したのち、小さ
なDNA断片を回収した()。また、上記pBR-bla-hUGをEco RI消化したのち、T4
DNAポリメラーゼ処理を行い、さらにPstI消化したのち、大きいDNA断片を回収
した()。最後に上記二つ(および)のDNA断片の結合を行つて、pTA1632
を得た。なお、pTA1632の取得方法および塩基配列の決定は、前記実施例と同様
に行つた。hUGの産生および回収 hUGの産生および回収は上記実施例1と同様に行つた。その結果、カルチヤー
1リツトルあたり 180μgのhUGが生産されていた。
【図面の簡単な説明】 第1図は、pTA529のシグナル・ペプチド(1)末端付近の塩基配列を示す説明図
であって、制限酵素認識部位(2)、制限酵素切断部位(破線)およびシグナルペ
プチド切断点(4)を示す。 第2図は、pTA1529製造のフローチヤートである。 第3図は、合成したhUG(および21-Leu-hUG)の構造遺伝子の塩基配列を示す
説明図である。 第4図は、hUG(21-Leu-hUG)の構造遺伝子を含むpTA1522(21-Leu-hUGを含む
場合はpTA1523)製造のフローチヤートである。 第5図は、RRA法の結果を示す説明図である。 マトグラムである。 第7図は、DEAEセフアロースDE-52カラムクロマトグラムである。 第8図は、HPLCでの溶出パターンを示す説明図である。 第9図は、pTA1502製造のフローチヤートである。 第10図は、pTA1524製造のフローチヤートである。 第11図は、pTA1504製造のフローチヤートである。 第12図は、pTA1526製造のフローチヤートである。 第13〜15図はpTA1632製造のフローチヤートである。

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 1. 大腸菌由来のアルカリ性フォスファターゼまたはβ−ラクタマーゼのシ
    グナルペプチドをコードする遺伝子の下流側末端直後に、ヒトウロガストロン(
    hUG/EGF)をコードする構造遺伝子が、それらの遺伝子間にいかなる遺伝
    子も介在させることなく結合した遺伝子を含むベクターで大腸菌宿主細胞を形質
    転換し、該形質転換体を培養して、ヒトウロガストロンと同一のアミノ酸配列か
    らなりかつ本来の活性を有するヒトウロガストロンを分泌させ、このヒトウロガ
    ストロンを回収することを特徴とする、ヒトウロガストロンの製造法。

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