JP2521543B2 - 紙類の移送装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ 本発明は、紙類の移送装置に関するものである。本明
細書の中で、紙類とは、きわめて薄いシート状体ないし
は板状体、たとえば紙片、ポリフィルム、木材の薄板、
あるいはアルミ箔などを特に称するものとする。

［従来の技術］ 量産品の製造ラインの途中で、ラインの側面からライ
ンに向かって紙類を一枚づつ供給し、その上に製品を乗
せる工程を必要とする場合がある。たとえば、一個ない
し一単位量づつの食品を包装紙の上に載せ、その状態で
下流側の包装工程の場所までコンベアで送り届けたい場
合などがそれである。このような場合、従来の方法とし
ては、ラインの側面に位置する人の手によって紙類を一
枚づつ供給し、供給した紙類の上に別のラインに載って
送られて来た食品が正しく移し載せられるまで、紙類を
手で押さえているという方法が取られていた。

これらの作業を、機械力によって自動的に行うための
従来技術としては、たとえば特開昭63−310424号公報に
記載のもの、あるいは特開昭50−52770号公報に記載の
もの、または特開昭54−126368号公報に記載のもの等が
ある。しかしこれらの従来技術は、いずれも移送の対象
として紙類が比較的強靭であり、あるいは比較的剛性を
有する性質の場合においてはじめて効果が期待される技
術であって、本発明が解決の対象とする課題としての、
「構造的に弱くて、破れやすい性質の、薄い紙類の移送
に対し、十分に紙類を損傷から保護し得る移送」の実現
が可能な技術とはなり得ず、依然として手作業に頼って
いる状態である。

［発明が解決しようとする課題］ この種の工程を従来から手作業に頼らざるを得なかっ
た理由は次の通りである。

ａ）量産品の製造ラインに供給される紙類は、ふつうに
は、たとえば50枚とか100枚を単位として、所定の大き
さに裁断したり、穴あけ加工をしたり、ミシン目加工を
施される。このため出来上がった施類は、重なり合った
一枚一枚が可なり強く互いに密着し、食い込んでいるこ
とが多く、これを上から一枚づつ確実に引き離す作業
は、たとえば吸盤を用いるとしても、機械的に行うこと
が容易でなく、このため、この作業は手作業に頼らざる
を得なかった。

ｂ）引き離した紙類をラインの上まで移動してライン上
の定位置に降ろしたとき、たとえ降ろした位置がそのと
きは正確であっても、その上に食品が載るまでに、風な
どによって紙類が正規の位置から移動することがあって
はならないので、それまで紙類がずれないようにその位
置を保持させる必要があり、この作業も、上記ａ）の作
業とともに人手によって行った方が容易であり、確実で
ある。

このように、量産品の製造ラインが機械化され無人化
されている中で、その途中のある工程のみが人手を必要
とし、そのために作業者の介在を欠くことができないと
いうことは、作業の能率の上からも、また工場のレイア
ウトの上からも、解決されねばならない問題点であり、
その改善が強く望まれていた。

本発明は、このような製造ラインの途中において、定
位置に重ねて整頓された紙類を上から一枚づつ確実に引
き離してライン上の他の定位置まで移送する作業を、機
械力によって自動化することにより、製造工程の省力化
と生産能率の向上に寄与し、工場のレイアウトの簡素化
を実現できる紙類の移送装置を提供することを目的とし
ている。

また第２の目的として、他の定位置まで移送された紙
類を、その位置からずれることのないように確実にその
位置を保持させる作用を、あわせて機械力によって自動
化しようとするものである。

［課題を解決するための手段］ 上記の目的を達成するために、本発明の紙類の移送装
置においては、定位置に重ねて整頓された紙類を他の定
位置へ１枚ずつ移送する装置において、紙類を吸着して
移送したのち、吸着を解放して紙類を他の定位置に降ろ
すために紙類の全表面に亙ってほぼ均等に配設した複数
個の移動吸盤と、それらの移動吸盤が上記整頓された紙
類の上面の位置まで一斉に下降して吸着した最上層の紙
類を、これと接する下位の紙類から引き離すために、紙
類を吸着中のすべての移動吸盤に対して紙類の面に沿う
方向の往復動を同時に強制する往復動装置と、紙類を吸
着した移動吸盤を紙類とともに上昇させて上記他の定位
置まで移動して下降させる移動装置と、上記他の定位置
の下面に設けられてその上面まで移動ののち吸着から解
放された紙類をそのままの位置で下面から吸着するため
に移動吸盤の下降時の投影位置を含む下方位置にほぼ均
等に配した複数個の静止吸盤とをそなえ、移動吸盤と紙
類との間の吸着を解放する作用と静止吸盤が紙類を下面
から吸着する作用との各タイミングを相互に関連制御す
る制御装置をそなえている。

［作 用］ 吸着力を前以て発動している状態とされた移動吸盤
を、定位置に重ねて整頓された紙類の上に下降させ、紙
類の上面に密着させると、移動吸盤は密着と同時に最上
層の紙類を吸着した状態となる。この状態の移動吸盤に
対し、往復動装置を用いて紙類の面に沿う方向の往復動
ないし旋回動を強制すると、最上層の紙類は移動吸盤と
ともに上記の動作を強制されるので、それによって最上
層の紙類とこれに接する下位の紙類との間に地滑りに似
た効果が生じ、その結果最上層の紙類は、これと接する
下位の紙類から確実に引き離され、分離される。

このようにして分離された一枚の紙類を吸着した状態
の移動吸盤を、紙類とともに上昇させ、移動装置によっ
て上記他の定位置へ移動したあと下降させ、移動吸盤の
吸着力を遮断して紙類を解放し、その位置に静置させ
る。

静置と同時にその定位置の下面に設けられた静止吸盤
を作動の状態として、それによって紙類をその位置で確
実に下面から吸着し、紙類の位置を確実して保持する。

以上の操作を通じて、移動吸盤の吸着力の遮断と静止
吸盤の吸着力の発生との各作用のタイミングの関連制
御、および移動吸盤の往復動ならびに移動の各作用との
相互間の関連制御を制御装置によって行うことにより、
各吸盤間における紙類の授受が整然と行われ、紙類の移
送が完了する。

［実施例］ 本発明の実施例を図面によって説明すると、第１図〜
第３図において、移動吸盤1,1,…は、昇降用のシリンダ
2,2,…にそれぞれ付設される。３は移動吸盤１に吸着力
を生じさせるための減圧管であり、４はシリンダ２のピ
ストンに昇降力を発生させるための圧力流体を送給する
加圧管である。シリンダ２はいずれも共通の枠５に取り
付けられる。歪５はレバー６に設けられた往復シリンダ
７のピストン7aに付設されて往復動装置を構成する。そ
のため、往復シリンダ７のピストン7aが往復シリンダ７
に流入する圧力流体によってＡ矢に沿って往復動する
と、すべての移動吸盤1,1,…はそれに従って一斉にＡ矢
の方向の往復動を強制される。８は往復シリンダ７に往
復動力を付与するための圧力流体を送給する加圧管であ
る。

レバー６には、その両側面に両端をそれぞれ固着され
たループ状のチェーン９が取り付けられ、可逆式のモー
タ10とともに移動装置を構成している。モータ10によっ
てチェーン９を張設するスプロケット11を回転駆動する
ことにより、レバー６を一対のガイド12に沿ってＢ矢の
方向に往復移動させることができる。往復移動の折り返
し点に近接スイッチ13がそれぞれ設けられる。14はスプ
ロケット11の軸であり、15はその軸受である。

コンベヤラインの片側に置かれた容器16の中には、紙
17が収容される。18は、コンベヤ19の下面に設けられて
溝の形に作られた静止吸盤で、図例では、移動吸盤1,1,
…が、コンベヤ19に載って送られて来た金網20の上に紙
17を降ろすときの移動吸盤1,1,…の投影位置を含む３本
の溝の形に配置されている。21は、静止吸盤18に吸着力
を生じさせるための減圧管である。

22は制御装置で、移動吸盤１と紙17との間の吸着・解
放の各作用と、静止吸盤18と紙17との間の吸着・解放の
各作用とのタイミング、ならびに移動吸盤１に強制され
るＡ矢の方向の往復動およびＢ矢の方向の移動の各作用
の相互間に関連制御を行うためのものである。

以上の構成よりなる紙類の移送装置によって紙を移送
する作用を説明すると、第１図において、モータ10を駆
動してチェーン９を循環させ、レバー６を図中の指方向
へＢ矢に沿って移動する。図中の左側の近接スイッチ13
にレバー６の側面が近接すると、モータ10が停止して、
レバー６の移動は停止する。ここで、制御装置22によっ
て各シリンダ２に対して移動吸盤１を下降させる指令が
発動されると、移動吸盤１は一斉に下降して、容器16に
収容された紙17の上面に接触し、最上層の紙17を吸着す
る。移動吸盤１の吸着機能は、吸着した紙17を吸盤から
引き離すとき以外は、常に働かせておく方が便利であ
る。

ここで、加圧管８から往復シリンダ７に向かって圧力
流体を送ることにより、最上層の紙17を吸着した状態の
移動吸盤１に対して、枠５を介して第１図中のＡ矢の方
向の往復動を行わせる。これは、最上層の紙を、これと
接する下位の紙からずらせて引き離すために行われるも
ので、勿論そのときの状況に応じて適宜決められること
であるが、たとえば往復動のストロークを10mm前後とし
て、１回ないし２、３回往復動を繰り返すことで十分に
目的が達成されるという場合が多い。

このあと、シリンダ２を作動させて移動吸盤１を紙と
ともに上昇させ、この状態でモータ10により、レバー６
を第１図中の右方向に移動してコンベヤ19の直上位置ま
で到達させ、ここで右側の近接スイッチ13によって移動
が停止され、この位置でシリンダ２により、吸着中の紙
17とともに移動吸盤１が降ろされる。コンベヤ19の下面
に設けられた３個の静止吸盤18は、移動吸盤１と同様
に、紙17をその吸盤から引き離すとき以外は、常に吸着
機能が働いている状態として置くのが便利であり、この
状態のもとにコンベヤ19に載った金網20の上に紙17が降
ろされると、紙17はその裏側から静止吸盤18による吸着
力を受ける。ここで、移動吸盤１の吸着力を遮断するこ
とにより、紙17の移動吸盤１から静止吸盤18への授受が
きわめて円滑に行われ、紙を相互に異なるタイミングで
上下から引っ張るなどの無理の発生することがない。

この実施例では、最上層の紙を、これと接する下位の
紙から引き離すための往復動の方向を、レバー６の移動
の方向（Ｂ矢の方向）に対して直角の方向（Ａ矢の方
向）とした例を示したが、往復動の方向は直角の方向に
限られるものではなく、上記Ｂ矢の方向と平行の方向と
してもよい。この場合の構成の例としては、第１図のガ
イド12の途中にそのための近接スイッチ23,23を設け、
モータ10を使用して、レバー６に対して近接スイッチ2
3,23間の往復動を強制することにより、目的が達せられ
る。勿論この場合には、レバー６上の往復シリンダ７は
必要でなく、装置としては、一層簡略化される結果とな
る。

また、紙の引き離しの効果を一層高めるために、上記
Ａ矢の方向と、これと直角の方向との両方向の往復動を
同時に、またはずらせて強制し、あるいは紙面に沿う方
向の旋回動を移動吸盤１に対して強制することも行われ
る。

また、本実施例では、レバー６の移動手段をモータ10
によるものとし、一定間隔を隔てる両位置間を移動させ
るための手段としてチェーン９と近接スイッチ13とを使
用する例を示したが、近接スイッチ方式の代わりにモー
タ10の発停をタイマーによって行う方式の適用も勿論可
能である。

さらに、一定間隔の両位置間を反復して移動させるた
めの、上記以外の従来公知の手段、たとえば流体圧シリ
ンダ、あるいはカム装置などの利用ももとより可能であ
り、また、移動吸盤１に強制される紙の引き離しのため
の往復動ないし旋回動についても、シリンダに代えてモ
ータ駆動によるカム装置ないし偏心板装置などの利用が
可能であることは言うまでもない。

［発明の効果］ 本発明にかかる紙類の移送装置は以上のように構成さ
れるので、つぎのような効果がある。

（１）定位置に重ねて整頓された極めて薄い紙類に対
し、機械力によって上から一枚づつ確実に引き離した
後、他の定位置まで移送する作業を、紙類の全表面に亙
って均等に働く吸着と解放との各作用を自動的に駆使す
ることによって、破れたり損傷を受けやすい紙類を安全
確実に行うことができ、その結果、製造工程の省力化と
生産能率の向上に寄与し、あわせて工場のレイアウトの
簡素化を実現することができる。

（２）移送先として他の定位置まで移送された紙類を、
その位置からずれることのないように確実にその位置に
降ろして保持させる作業を、吸着と解放との各作用のタ
イミングを関連制御することによって、破損しやすい紙
類の授受に対してきめ細かい取り扱いの実現が可能とな
り、従来技術によっては実現できない効果を達成するこ
とができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明にかかる紙類の移送装置の一実施例にお
ける平面図、第２図は第１図中のII−II線における断面
図、第３図は第１図中のIII−III線における断面図であ
る。 １……移動吸盤、２……シリンダ、６……レバー、７…
…往復シリンダ、９……チェーン、10……モータ、11…
…スプロケット、12……ガイド、13,23……近接スイッ
チ、17……紙、18……静止吸盤、22……制御装置。

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】定位置に重ねて整頓された紙類を他の定位
   置へ１枚ずつ移送する装置において、 紙類を吸着して移送したのち吸着を解放して紙類を他の
   定位置に降ろすために紙類の全表面に亙ってほぼ均等に
   配設した複数個の移動吸盤と、 それらの移動吸盤が上記整頓された紙類の上面の位置ま
   で一斉に下降して吸着した最上層の紙類を、これと接す
   る下位の紙類から引き離すために、紙類を吸着中のすべ
   ての移動吸盤に対して紙類の面に沿う方向の往復動を同
   時に強制する往復動装置と、 紙類を吸着した移動吸盤を紙類とともに上昇させて上記
   他の定位置まで移動して下降させる移動装置と、 上記他の定位置の下面に設けられてその上面まで移動の
   のち吸着から解放された紙類をそのままの位置で下面か
   ら吸着するために移動吸盤の下降時の投影位置を含む下
   方位置にほぼ均等に配した複数個の静止吸盤とをそな
   え、 移動吸盤と紙類との間の吸着を解放する作用と静止吸盤
   が紙類を下面から吸着する作用との各タイミングを相互
   に関連制御する制御装置をそなえる、 ことを特徴とする紙類の移送装置。