JP2515762B2 - 微量遠心分離用セル - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は分析のための生物試料作製法に係り、特に通
常の遠心沈澱管を用いた操作では試料の紛失を招くよう
な微量な試料を沈降せしめるのに好適な遠心分離用セル
に関する。

〔従来の技術〕

従来の微量遠心分離用セルは、「遺伝子観察への旅」
山岸秀夫編、東京大学出版（1981年）第124〜127頁に記
載のように、試料を沈降付着させるためのグリツドの挿
入と取り出しを試料誘導路を通じて行うように構成され
ていた。しかし、この方法では1000細胞を直径3mmのグ
リツド上にランダムに沈降できるだけであり、より微量
な試料をグリツド上の一定の位置に確実に沈降付着させ
るという点については配慮されていなかつた。

〔発明が解決しようとする問題点〕

上記従来技術は試料を沈降付着させるためのグリツド
メツシユを試料誘導路を通じて出し入れする。そのため
に試料誘導路の直径はグリツドメツシユの直径より大き
くなつており、試料の沈降をグリツドメツシユ上に限定
することができないばかりでなく、取り出しの際に沈降
した試料が脱落しやすく、非常に微量な試料の遠心分離
には問題があつた。

本発明の目的は、微量な試料を確実に目的とする試料
台上に沈降させ、操作後の試料の取り出しが簡便な遠心
分離用セルを提供することにある。

〔問題点を解決するための手段〕

上記目的は、試料を挿入するための誘導路の少なくと
も一方の端の口径面積を、試料を沈降させる試料台の面
積よりも小さくし、セルの試料誘導路を含む部分を、試
料台の保持部から分離可能な構成とすることにより達成
される。また、試料保持部と試料台保持部を分離可能な
二体構成にし、遠心分離後に試料保持部を取り去つて、
ピンセツト操作の十分可能なスペースを確保することに
より、試料台の簡便な取り出しが達成される。

〔作用〕

試料は遠心力によつて試料誘導路に添つて試料台に沈
降する。試料誘導路の試料台に接する端の口径の面積は
試料台よりも小さいので、遠心力の作用により試料は誘
導路に添つて沈降し試料台上に到達する。試料沈降後、
セルの試料誘導路を含む部分を分離して取り去ることに
よつて、試料台の取り出しが可能になる。

〔実施例〕

以下、本発明の一実施例を図を用いて説明する。

実施例１ 第１図において微量遠心分離用セルは試料誘導路１を
有する試料保持部３と、試料台２を保持する試料台保持
部４より構成されている。試料を含む溶液５は試料誘導
路の試料導入口21より導入される。本実施例では、試料
保持部３と試料台保持部４としてアクリル材を、試料台
２として第２図に示すような電子顕微鏡用グリツドメツ
シユ（厚み15μｍの＃300の銅メツシユ）10の表面に試
料吸着材（カーボン膜、コロジオン膜等、電子顕微鏡観
察に用いる支持膜）11を保持したものを用い、微量遠心
分離用セルを構成した。このセルの試料導入口21の直径
は3mm、試料誘導路の試料台側の直径は1mmであり、後者
の中心は直径3mmの試料台（グリツドメツシユ）２の中
心とほぼ一致している。本発明者等は、大腸菌細胞に浸
透圧シヨツクをかけて細胞内容物を放出させたものを試
料として3000×ｇで５分間遠心操作を行うことにより、
常にグリツドメツシユ上のほぼ中央付近の直径約1mmの
範囲に試料を吸着させることができ、透過型電子顕微鏡
による観察効率をあげることができた。また、試料誘導
路をすり鉢状の構成にしたことにより、試料導入口への
試料注入の簡便化と、試料台上の一定位置への遠心沈降
の確実化を同時に達成することができた。

試料保持部と試料台保持部の接合部分は直径20mmであ
り、遠心後に試料保持部を取り去ると、試料台保持部に
はピンセツト操作を行うに十分なスペースができ、試料
台の取り出しは用意であつた。

実施例２ 第３図において、試料保持部３の試料誘導路１は、円
筒状の空隙となつており、その直径は試料台２の直径よ
りも小さい。本発明者等は試料保持部３、試料台保持部
４をアクリル材で構成し、前者には直径1mmの試料誘導
路を設けた。試料台として前出グリツドメツシユ上にカ
ーボン膜を保持したものを用い、前出細胞試料を試料導
入口より注入し、4000×g,15分間遠心分離することによ
り、細胞内容物をカーボン膜上に吸着させることができ
た。本実施例の構成により、１μｌ中に約100細胞を含
む溶液を20μｌという従来法の約1/20の細胞数を含む微
量な試料の遠心処理を達成することができた。

実施例３ 第４図において、試料保持部３の中央には直径約1mm
の穴が貫通しており、その部分には試料を含む溶液５を
保持する試料保持管６（ここでは、ラムダピペツト５μ
ｌ用を用いた）がＯリング状のゴム製のストツパ22によ
り固定されている。本実施例の構成により１〜５μｌの
溶液中の試料をも、試料台の目的の位置に沈降させるこ
とが可能となつた。

実施例４ 第５図において、試料台保持部４は試料台の機能をも
兼ね備えており、遠心後に試料は試料台保持部のくぼみ
に沈降している。遠心後、試料保持部を取り去り、試料
台保持部のくぼみに試料を吸着させたまま通常の処理を
行い、走査型電子顕微鏡により試料の表面構造を観察す
ることができた。

〔発明の効果〕

本発明によれば、微量な試料でも直径1mm程度の範囲
内に確実に沈降できるので、従来不可能であつた100細
胞以下、あるいは５μｌ以下という微量サンプルを遠心
処理することが可能になつた。また、セルを二体構成に
したことで、従来試料取り出しの際に多かつた、沈降試
料の脱落を防ぐことができるようになつた。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明の実施例１の遠心用セル全体の縦断面
図、第２図は第１図の試料台部を拡大して示した断面
図、第３図は本発明の実施例２のセルの試料誘導路周辺
の断面図、第４図及び第５図はそれぞれ本発明の実施例
3,4のセル全体の断面図である。 １……試料誘導路、２……試料台、３……試料保持部、
４……試料台保持部。

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】試料を沈殿付着させるための試料台と、上
   記試料台を保持する試料台保持部と、上記試料台上に下
   端が配置された試料誘導路を有する試料保持部とからな
   る微量遠心分離用セルにおいて、上記試料台は電子顕微
   鏡用グリッドメッシュとその表面に配置された試料吸着
   材とを有し、かつ上記試料誘導路の下端の口径面積を上
   記試料台の上面の面積よりも小さくしたことを特徴とす
   る微量遠心分離用セル。