JP2512942B2 - ガスタ―ビン用強靱セラミック材料の製造方法 - Google Patents

ガスタ―ビン用強靱セラミック材料の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は、車両用,航空用,発電用などに用いられる
ガスタービンの材料に係り、特に耐熱性,耐蝕性,耐摩
耗性を向上させたガスタービン用強靭セラミック材料の
製造方法に関するものである。
[従来の技術] 従来、車両用,航空用,舶用,発電用などのガスター
ビンの動翼、静翼、燃焼器などとして使用の検討されて
いる窒化けい素は、セラミックス中でも、比較的強度が
高く、耐熱衝撃性が高いが、セラミックス全般の特徴と
して靭性が低い。このため、窒化けい素に、炭化けい素
などのセラミックウィスカーを混ぜ、セラミックスを強
靭化することが試みられている。
従来のウィスカー強化窒化けい素の製造方法は、窒化
けい素粉及び焼結助剤となるアルミナ,イットリア等の
他の金属化合物を数%以上混ぜ、これにウィスカーをさ
らに混合して成形し、加圧焼結を行っている。
[発明が解決しようとする問題点] しかしながら、マトリックスとなる窒化けい素の緻密
化のために、多量の焼結助剤を混ぜるため、成形焼結体
の高温(1,000℃以上)での強度が低下し、また高温燃
焼ガスに対する耐蝕性も低くなる問題がある。
また焼結助剤を全く混ぜないと上述の耐熱性,耐蝕性
は高くできるが、反面焼結しにくく、マトリックスの密
度が向上しにくい問題がある。
本発明は、上記事情を考慮してなされたもので、窒化
けい素をマトリックスとするガスタービン用強靭セラミ
ック材料において、高温強度及び耐蝕性が良好で、しか
もマトリックスが緻密であるガスタービン用強靭セラミ
ック材料の製造方法を提供することを目的とする。
[問題点を解決するための手段及び作用] 上記の目的を達成するために特許請求の範囲第1項の
発明は、金属不純物含有量が0.5%以下で、かつ、平均
粒径1μm以下の窒化けい素粉および金属不純物含有量
が0.5%以下の炭化けい素ウィスカーのそれぞれに対し
て、高温酸化によって3〜20%のシリカ被膜を形成した
後、その炭化けい素ウィスカーを10〜40%含むように窒
化けい素粉と炭化けい素ウィスカーとを混合し、この混
合物を用いて成形を行った後、カプセルをその成形体の
表面上に形成させて1,650〜2,200℃にて熱間等方圧プレ
スにより焼結させることを特徴とするガスタービン用強
靭セラミック材料の製造方法である。
特許請求の範囲第2項の発明は、上記炭化けい素ウィ
スカーに形成されるシリカ被膜の厚さを、その炭化けい
素ウィスカー径の1/100〜1/20とした特許請求の範囲第
1項記載のガスタービン用強靭セラミック材料の製造方
法である。
特許請求の範囲第3項の発明は、金属不純物含有量が
0.5%以下で、かつ、平均粒径1μm以下の窒化けい素
粉に対し、金属不純物含有量が0.5%以下の炭化けい素
ウィスカーを10〜40%含むように混合し、この混合物を
用いて成形を行うと共にその混合物または成形体に対し
て、シリカ添加または高温酸化によって3〜20%のシリ
カを含有させた後、カプセルをその成形体の表面上に形
成させて1,650〜2,200℃にて熱間等方圧プレスにより焼
結させることを特徴とするガスタービン用強靭セラミッ
ク材料の製造方法である。
本発明による強靭セラミック材料は、窒化けい素をマ
トリックスとし、炭化けい素ウィスカーにより強化され
たセラミックスで、特に従来の材料と比較して次のよう
な特徴を有する。
a.窒化けい素の高温強度および耐蝕性の低下の原因とな
るけい素以外の金属の含有量を0.5%以下とした。
b.これに伴うマトリックスの焼結性の困難化に対処する
ため、シリカを3〜20%添加し、緻密な組織とした。
c.炭化けい素ウィスカーと窒化けい素マトリックスの界
面にもシリカの薄層を形成させ、ウイスカーとマトリッ
クスが直接結合している場合よりも、強度と靭性を向上
させる。
[実施例] 以下本発明の好適実施例を添付図面に基づいて説明す
る。
添付図面はガスタービン用強靭セラミック材料の製造
工程を示す。
同図において、原料の炭化けい素ウィスカー1とマト
リックスとなる窒化けい素粉2とを混合3したのち成形
4する。上記炭化けい素ウィスカー1および窒化けい素
粉2、混合物又は成形体中にシリカ含有5を行い、成形
体にカプセルを形成6する。その後熱間等方圧プレス
(HIP)7にて焼結(緻密化)を行い強靭セラミックス
材料8を得る。
以上のような強靭セラミック材料は、従来の製造法で
は製造が困難なため、本発明では下記のような製造法に
よりこれを可能とした。
以下各工程毎に製造法を説明する。
原料 本発明の強靭セラミックスでは、窒化けい素をマトリ
ックスとするが、後段の焼結の段階での緻密化を容易に
するため、窒化けい素粉としては、平均粒径1μm以
下、望ましくは0.5μm以下とすることが必要である。
平均粒径が1μm以上の窒化けい素粉では、マトリック
スの開気孔率を0とすることが困難である。
またこの窒化けい素粉は、けい素以外の金属不純物の
含有量が0.5%以下、望ましく0.2%以下であることが必
要である。金属不純物がこれを越えると、窒化けい素マ
トリックスの高温強度および耐蝕性が低下し、特にガス
タービンとしての高温高速中の腐食に対しては、これが
重要である。
この窒化けい素粉の表面には、均質にシリカを形成さ
せる必要がある。これによって後段の熱間等方圧プレス
焼結の段階での窒化けい素粉の緻密化が可能になる。シ
リカの量としては窒化けい素に対して3〜20%の範囲が
適当である。シリカ量がこれ以下では、窒化けい素の焼
結に効果が少なく、シリカ量がこれを越えると、緻密化
するものの、マトリックスの高温強度が低下する。
以上の窒化けい素粉に対して、炭化けい素ウィスカー
を混合し、マトリックスの強靭化をはかる。炭化けい素
ウィスカーを選定する理由は、炭化けい素が、窒化けい
素と同様、千数百℃以上での高温強度に優れ、耐蝕性も
高いためであり、更に窒化けい素よりも高い弾性率と熱
膨脹係数を有するため、窒化けい素マトリックスへの引
張応力負荷を低減し、強靭化に効果が大きいためであ
る。
この炭化けい素ウィスカーに対しても、表面に均質な
シリカ被膜生成を行う必要がある。これによって焼結
後、窒化けい素マトリックスと炭化けい素ウィスカーと
の間にシリカないし酸窒化けい素の薄層が形成され、前
記の強靭化の効果が出現するためである。
このシリカ被膜の厚さは、ウィスカーの径に対して1/
100以上1/20程度がよい。これ以下では、マトリックス
とウィスカーとが直接強固に接合することを防ぐ目的に
不充分であり、これ以上では、高温での材料の強度低下
を招くためである。この値は表面シリカのウィスカーに
対する重量%にして約3〜20%に相当する。
以上の窒化けい素粉および炭化けい素ウィスカーの表
面へのシリカ形成の方法としては、900〜1,500℃の高温
において、空気など酸素含有雰囲気における表面酸化に
よってもよいし、シリカゾル溶液を用いてシリカ膜を表
面に沈積させる方法によってもよい。また、SiCl4+H2
+H2Oガス等を用いたCVD法によってシリカ膜を形成させ
てもよい。
また、このシリカ形成は、始めにそれぞれ原料の段階
において行ってもよいし、窒化けい素粉と炭化けい素粉
の混合の段階、或いは混合物の成形後の段階において行
ってもよい。
混合 前記窒化けい素粉と炭化けい素ウィスカーを混合する
が、望ましくは水,非水溶媒,溶融ワックス,溶融樹脂
等の液体の中に分散して行う方がより分散効果を上げる
ことができる。
炭化けい素ウィスカーの窒化けい素粉に対する混合量
は、10〜40%となるように選ぶ。この理由は10%以下で
は強靭化の効果が低く、40%以上では、混合及び成形の
際に、充填密度を高くすることが困難となるためであ
る。
成 形 以上の混合物を、泥しょう鋳込み成形、射出成形,押
出成形,静水圧プレス成形などの方法により、所定の形
状に成形する。
カプセル形成および熱間等方圧プレス焼結 以上の工程で得られた成形体に対して、熱間等方圧プ
レスにより焼結緻密化を行う。
熱間等方圧プレスの温度としては窒化けい素粉に含有
せしめられたシリカが軟化ないし溶融し、焼結の進行す
る温度を選ぶ必要があり1,650℃以上とする必要があ
る。
熱間等方圧プレスの高圧下でも、2,200℃を越えると
窒化けい素等の分解が起り、また更に炭化けい素ウィス
カーの劣化が起こるため、焼結の上限温度は2,200℃と
する必要がある。圧力は高い程効果が大きいが、通常の
熱間等方圧プレスの圧力範囲、即ち100〜2,000気圧程度
でよい。
このような条件による熱間等方圧プレスは、カプセル
法、即ち、気密かつ柔軟なカプセルを成形体上に形成さ
せた後行なう。このカプセル成形法については、成形体
の形状が、比較的単純な場合には、窒化ほう素粉を充填
したシリカ・ガラス管中に真空封入する方法によっても
よいが、複雑形状の成形体の場合には、本発明者らが、
先に特許出願を行っている方法(特開昭61−15902号,
特開昭61−17902号)が有効である。これら先願の方法
を、本発明に適用すれば、成形体上に第1層として離型
材としての窒化ほう素粉の層、第2層として、熱間等方
圧プレス時の圧力伝達材として、シリカガラス+アルミ
ナ粉など、第3層として、カプセル気密化のためにパイ
レックスなど、低融点ガラス層を形成させ、真空中加熱
などによりカプセルを気密化させた後、所要の温度と圧
力により、熱間等方圧プレス焼結を行う。
熱間等方圧プレス焼結後、カプセルを除去することに
より、炭化けい素ウィスカーで強化され、緻密でかつ金
属不純物をほとんど含まない窒化けい素マトリックスか
らなり、マトリックスとウィスカー境界にシリカまたは
酸化けい素の薄層を有する強靭セラミック材料から成る
ガスタービン部品が得られる。
次に本発明の具体的な実施例により更に詳しく説明す
る。
実施例1 金属不純物0.1%以下、平均粒径0.3μmの窒化けい素
粉を1,300℃の乾燥空気中にて酸化し、約5%のシリカ
を形成させた。同様に平均径2μmの炭化けい素ウィス
カーを1,400℃にて乾燥空気中にて酸化し、表面に約0.0
5μmのシリカ層を形成させた。この窒化けい素粉と炭
化けい素ウィスカーとを70%:30%となるように混合
し、ワックスを主体とする溶融有機材料中で100℃にて
混練した。その後、射出成形機を用いてガスタービン動
翼形状に成形した。この成形体上に、第1層を、窒化ほ
う素粉,第2層をシリカ及びアルミナ混合物粉,第3層
をバイコール粉とする層を形成し、加熱して気密なカプ
セルを形成させた後、1,900℃,2,000気圧にて熱間等方
圧プレスを行った。カプセル除去後、試験片採取を行っ
た所、見掛気孔率0,金属不純物0.2%以下、ウィスカー
とマトリックス境界にシリカを主成分とし、若干の酸窒
化けい素を含む約0.05μmの層を有し、曲げ強度60kgf/
mm2、破壊靭性10MPa・m1/2を有する強靭セラミック材
料であることが判った。
比較のため、高温酸化によるシリカ層形成を全く行わ
ない窒化けい素粉と炭化けい素粉とを同様に成形し、熱
間等方圧プレス焼結を行った所、得られた材料は残留気
孔率を有し、曲げ強度40kgf/mm2、破壊靭性5MPa・m1/2
と特性の低いことが判った。
実施例2 金属不純物0.1%以下、平均粒径0.4μmの窒化けい素
粉と、同じく金属不純物0.1%以下の炭化けい素ウィス
カーとを、それぞれ水溶液中に分散させた後、混合し、
素焼の型を用いて泥しょう鋳込み成形を行い、ガスター
ビン静翼の形状を製作した。この成型体にシリカゾルの
20%水溶液を含浸させ、乾燥後1,000℃まで加熱して成
形体に対し約17%のシリカを含有させた。これを窒化ほ
う素を充填したバイコールガラス管中に真空封入してカ
プセルとした後、熱間等方圧プレスにて2,000℃,1,500
気圧の条件下で処理し、冷却後、バイコールガラスのカ
プセルを除去した後、更に窒素雰囲気中で1,400℃にて
熱処理した。得られたガスタービン静翼部品の微視的構
造を調べた結果、ほぼ理論密度の緻密な窒化けい素多結
晶が、炭化けい素ウィスカーで補強され、マトリックス
とウィスカーの境界に酸窒化けい素を主にする層が形成
されていることが確認された。
比較のため、窒化けい素粉に各々1%の酸化アルミニ
ウムと酸化イットリウムを添加したものを用い、同様の
製造工程によりガスタービン静翼部品を製作した。先の
金属酸化物添加のない静翼部品と共に並べ燃焼器後方の
高温高速ガス流中に晒した所、部品表面温度1,200℃,
ガス流速200m/s,10hrにて、酸化アルミニウム,酸化イ
ットリウム添加の部品は著しく腐食を受けたのに対し
て、金属酸化物添加のない部品はほとんど腐食されなか
った。
実施例3 金属不純物0.1%以下、平均粒径0.6μmの窒化けい素
粉を、水溶液中に分散させ、60時間のボールミル粉砕を
行った結果、平均粒径0.4μm,生成シリカ量5%を得
た。この窒化けい素粉に対し、炭化けい素ウィスカーが
40%となるように混合し、更にコロイダル・シリカを窒
化けい素粉+炭化けい素ウィスカーの3%となるように
添加し、充分混合分散を行った。このスラリーを噴霧乾
燥し、得られた顆粒をゴム型に充填して静水圧プレス成
形により燃焼器ライナー部品形状を製作した。得られた
成形体に窒化ほう素粉を被覆し、シリカ・ガラス粉を充
填した黒鉛モールド内に装入し、ホットプレスを用いて
2,000℃,500kgf/cm2に加熱加圧し、溶融シリカガラスを
カプセルとする熱間等分圧プレスを行った。得られた燃
焼器ライナー部品は緻密であり、また表面を若干機械加
工するのみで充分形状精度も有するものであった。
[発明の効果] 以上説明してきたことから明らかなように本発明によ
れば次のごとき優れた効果を発揮する。
窒化けい素マトリックスを炭化けい素ウィスカーで
強化したため、通常の窒化けい素より強度、靭性が高
い。
シリカゾルなどを用いて、窒化けい素粉を均質にシ
リカで覆ったため、焼結性が向上し、HIP焼結によりマ
トリックスが緻密する。
シリカゾルなどを用いて、窒化けい素ウィスカーを
均質にシリカで覆ったため、焼結後も窒化けい素マトリ
ックスと炭化けい素ウィスカーの界面にシリカの薄層が
形成され、境界の強度が適切となって、強度と靭性が向
上する。
焼結助剤等として、けい素以外の金属化合物をほと
んど含まないため、高温強度が高く、耐蝕性も高い。
以上のような特徴を有する強靭セラミック材料であ
るため、ガスタービン部品、特に動翼、静翼等に適用す
ることができる。
【図面の簡単な説明】
添付図面は本発明のガスタービン用強靭セラミック材料
の製造工程を示す図である。 図中、1は炭化けい素ウィスカー、2は窒化けい素粉、
5はシリカ含有、8は強靭セラミック材料である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 大橋 英雄 東京都江東区豊洲3丁目1番15号 石川 島播磨重工業株式会社技術研究所内 (56)参考文献 特開 昭62−265173(JP,A) 特開 昭63−265864(JP,A)

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】金属不純物含有量が0.5%以下で、かつ、
    平均粒径1μm以下の窒化けい素粉および金属不純物含
    有量が0.5%以下の炭化けい素ウィスカーのそれぞれに
    対して、高温酸化によって3〜20%のシリカ被膜を形成
    した後、その炭化けい素ウィスカーを10〜40%含むよう
    に窒化けい素粉と炭化けい素ウィスカーとを混合し、こ
    の混合物を用いて成形を行った後、カプセルをその成形
    体の表面上に形成させて1,650〜2,200℃にて熱間等方圧
    プレスにより焼結させることを特徴とするガスタービン
    用強靭セラミック材料の製造方法。
  2. 【請求項2】上記炭化けい素ウィスカーに形成されるシ
    リカ被膜の厚さを、その炭化けい素ウィスカー径の1/10
    0〜1/20とした特許請求の範囲第1項記載のガスタービ
    ン用強靭セラミック材料の製造方法。
  3. 【請求項3】金属不純物含有量が0.5%以下で、かつ、
    平均粒径1μm以下の窒化けい素粉に対し、金属不純物
    含有量が0.5%以下の炭化けい素ウィスカーを10〜40%
    含むように混合し、この混合物を用いて成形を行うと共
    にその混合物または成形体に対して、シリカ添加または
    高温酸化によって3〜20%のシリカを含有させた後、カ
    プセルをその成形体の表面上に形成させて1,650〜2,200
    ℃にて熱間等方圧プレスにより焼結させることを特徴と
    するガスタービン用強靭セラミック材料の製造方法。
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