JP2512552B2 - 磁歪式トルクセンサ軸の製造方法 - Google Patents

磁歪式トルクセンサ軸の製造方法

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JP2512552B2 JP1102856A JP10285689A JP2512552B2 JP 2512552 B2 JP2512552 B2 JP 2512552B2 JP 1102856 A JP1102856 A JP 1102856A JP 10285689 A JP10285689 A JP 10285689A JP 2512552 B2 JP2512552 B2 JP 2512552B2
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Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明は、伝達トルクを、この伝達トルクにより発生
する応力変化に伴う透磁率の変化として感知するように
した磁歪式トルクセンサ軸の製造方法に関する。
従来の技術 この種の磁歪式トルクセンサ軸においては、透磁率の
変化を感知可能とするために、その表面の一部に螺旋方
向の磁気異方性が付与される。このような磁気異方性を
付与する方法として、従来、特開昭63−252487号公報に
示されるものがある。これは、軸体に過度の捩りひずみ
を加えて残留応力区域を生成することにより、この残留
応力にもとづく磁気異方性を付与するものである。具体
的には、たとえば熱硬化させる軸では、マルエージング
鋼からなる軸に熱硬化前に過度の捩り歪を与え、短時間
で時効硬化させている。
発明が解決しようとする課題 しかし、単に過度の捩りひずみを加えて残留応力を付
与するのでは、捩った際の引張応力が残留するため、機
械的強度の面では著しく不利である。特にトルクセンサ
軸用の材料として使用される確率の高いNi鉄合金のよう
な材料では、切欠感度が高く亀裂進展抵抗が小さいた
め、疲労強度が損なわれるという欠点がある。
そこで本発明はこのような問題を解決して、機械的強
度、特に疲労強度にすぐれた磁歪式トルクセンサ軸の製
造方法を提供し、またこのトルクセンサ軸の磁化容易軸
を面垂直方向としてセンサ特性のヒステリシス低減と感
度向上とを図ることを目的とする。
課題を解決するための手段 上記目的を達成するため本発明の方法は、軸体に捩り
トルクを負荷して引張歪を発生させたままの状態で、こ
の軸体の表面に、ショットピーニングによってさらに引
張歪を生じさせて、前記捩りトルクにもとづく引張主応
力の方向の引張歪の合計を、軸体の材料の引張降伏時の
歪よりも大きくするものである。
本発明の方法は、引張降伏応力が小さくなる温度条件
下で実施することができる。
さらに本発明によれば、軸体の中央部の両側の部分に
それぞれ逆方向の捩りトルクを負荷して、両部分におけ
る引張主応力の方向が軸心に対してそれぞれ逆方向に傾
斜するように、捩りトルクによる引張歪を発生させるこ
とができる。
作用 本発明によれば、軸体に捩りトルクを負荷することに
より、軸心と+45度の方向には引張主応力が作用し、軸
心と−45度の方向には圧縮主応力が作用する。かつ、こ
の引張主応力により+45度の方向に生ずる引張歪を+ε
とすれば、−45度の方向には圧縮歪−εを生ずる。
捩りトルクをかけたままの状態で、軸体の表面にショ
ットピーニングによってさらに引張歪εを生じさせる
と、+45度の方向にはε+εの歪が生じ、−45度の
方向にはε−εの歪が生ずる。このとき、少くとも
+45度の方向すなわち少くとも引張主応力の方向の引張
歪の合計ε+εが、軸体の材料の引張降伏時の歪ε
よりも大きくなるようにする。
捩りトルクを取り去るとともに、ショットピーニング
を停止すると、軸体は、その表面に生じた歪が引張降伏
時の歪εを超えた分だけ、引張側に塑性加工されたこ
とになる。圧縮側には、ショットピーニングによる引張
歪と、ショットピーニングによる引張歪とが相殺される
ことになるため、引張側のような塑性加工は行われな
い。
したがって、上記引張側の塑性加工に対応する圧縮残
留応力が、軸体の表面に生ずることになる。この圧縮残
留応力の大きさは捩りトルクにより生じた引張歪の大き
さに比例する。よって、この圧縮残留応力は、引張歪の
大きさが最大となる引張主応力の方向で最大となるとと
もに、引張歪の大きさが最小となる圧縮主応力の方向で
最小となるような異方性を呈する分布となる。これによ
り、軸体の表面に、圧縮残留応力にもとづく磁気異方性
が付与される。
通常の材料は温度が上昇するほど引張降伏応力が低下
するため、このような引張降伏応力が小さくなる温度条
件下、すなわち高温条件下で、磁気異方性を与える処理
を施すのが有利である。
また本発明によれば、軸体の中央部の両側の部分にそ
れぞれ逆方向の捩りトルクを負荷して、両部分における
引張主応力の方向が軸心に対してそれぞれ逆方向に傾斜
するように、捩りトルクによる引張歪を発生させること
により、シェブロン状の異方性が付与される。
実施例 第1図において、1はトルクセンサ軸を製造するため
の軸体で、軟磁性体により構成されている。
まず、第1図の軸体1において、捩りトルクTを加え
る。すると、この捩りトルクTにもとづく剪断応力が発
生し、この剪断応力にもとづく引張応力と圧縮応力と
が、軸体1の表面に生ずる。そして、この引張応力にも
とづく引張歪2が図示のような分布で発生し、この引張
歪2は、引張主応力の方向すなわち軸心3と+45度の方
向Aでは、この引張主応力に対応して大きさが最大とな
る引張歪+εとなる。また軸体1の表面には圧縮応力
にもとづく圧縮歪4が図示のような分布で発生する。こ
の圧縮歪4において、圧縮主応力の方向すなわち軸心3
と−45度の方向Bでは、この圧縮主応力に対応して大き
さが最大となる圧縮歪−εとなる。
このように引張歪+εと圧縮歪−εとが生ずるよ
うに捩りトルクTをかけたままの状態で、軸体1の表面
に、捩りトルクによらない引張歪ε(伸び)を生じさ
せる。この引張歪εは、軸体1の表面にショットピー
ニング5を施すことにより発生させることができる。
すると、+45度の方向Aにはε+εの歪が生じ、
−45度の方向Bにはε−εの歪が生ずる。このと
き、少くとも+45度の方向の引張歪の合計ε+ε
が、軸体1の材料の引張降伏時の歪εよりも大きく
なるようにする。なお、このように引張歪は合計ε
εで歪εよりも大きくなればよく、捩りトルクTに
よる引張歪+εは弾性歪の範囲内でよい。
このように引張歪+εに引張歪εを加えて、その
合計ε+εが引張降伏時の歪εよりも大きくなる
様子を応力−歪曲線上で説明したグラフを第3図に示
す。
次に、捩りトルクTを取り去るとともにショットピー
ニング5を停止する。すると、軸体1は、その表面に生
じた歪が引張降伏時の歪εを超えた分だけ、引張側に
塑性加工されたことになる。そして、たとえば+45度の
方向では、この塑性加工にもとづき、塑性加工がなされ
なかった部分との釣り合いで、第3図に示すようにε
+ε−εの引張残留歪を生ずる。そして、この+45
度の方向Aには、この引張残留歪ε+ε−εに対
応した圧縮残留応力を生じ、結局、軸体1の全体として
は、第2図に示すような分布の圧縮残留応力6を生ず
る。
この圧縮残留応力6の大きさは、捩りトルクTにより
生じた引張歪の大きさに比例する。よって、圧縮残留応
力6は、第2図に示すように、最大の引張歪εを生ず
る引張主応力の方向(+45度)で最大になるとともに、
引張歪2の大きさが最小となる圧縮主応力の方向(−45
度)で最小となるような異方性を呈する分布となる。
捩りトルクTにもとづく圧縮歪−εは、ショットピ
ーニング5による引張歪εと相殺されることになるた
め、両者の合計ε−εが引張降伏時の歪εを越え
ることはない。したがって、この圧縮歪−εを原因と
しては、軸1の表面に残留応力が生じることはない。
このように、あらかじめ捩りトルクTを付与したうえ
でショットピーニング5により引張歪εを与え、この
引張歪εと捩りトルクTにもとづく引張歪+εとの
合計ε+εが引張降伏時の歪εよりも大きくなる
ようにするものであるため、付与する捩りトルクTの大
きさは弾性限界内でよく、過大なトルク負荷を必要とし
ない。また、残留応力の異方性を付与する方法として、
上記とは逆に、あらかじめショットピーニングを行った
後にトルクを作用させることも考えられるが、上記のよ
うにトルクを作用させたままショットピーニングを行っ
た方が、トルク負荷が小さくてすむ利点がある。
このようにして圧縮残留応力による磁気異方性を付与
する作業は、もちろん常温下において実施することがで
きる。しかし、通常の材料は温度が上昇するほど引張降
伏応力が低下するため、このように引張降伏応力が小さ
くなる温度条件下、すなわち高温下で異方性を付与する
処理を行うと、加えるべき捩りトルクTや、与えるべき
引張歪εを小さなものとすることができる利点があ
る。
また本発明によれば、圧縮残留応力の大小の差にもと
づく磁気異方性を付与するものであるため、従来のよう
に過度の捩り歪にもとづく引張応力で異方性を付与する
ものと異なって、磁化容易軸が軸体1の表面に対して垂
直方向を向くことになる。すなわち、磁性体としての軸
体1の磁化過程には回転磁化過程や磁壁移動過程などが
あり、磁壁移動過程がセンサ特性のヒステリシスを大き
くし、感度を下げることが知られている。しかし、本発
明のように磁化容易軸が軸表面に対し垂直方向を向いて
いれば、磁壁移動過程を経ることなく回転磁化過程のみ
を利用できることから、ヒステリシス小かつ感度大とい
うセンサ性能を得ることができる。
磁歪式トルクセンサ軸の磁性材料としてよく用いられ
るNiなどを含有する材料は、切欠感度が高く、引張残留
応力の分布する部分では亀裂の進展が速いという特性を
有する。しかし、本発明のように圧縮残留応力を分布さ
せることで、機械的強度、特に疲労強度を高めることが
できる。
第4図は、本発明の方法により製造される磁歪式トル
クセンサ軸の一具体例を示す。第4図において、センサ
軸を構成する軸体11は、中央部12と、この中央部12の両
側に形成された一対の小径部13,14と、これら小径部13,
14にそれぞれ連続する軸部15,16とを有している。
このような軸体11において、中央部12を固定して両小
径部13,14に互いに逆方向の捩りトルクを付与し、その
状態を維持しながらショットピーニングによりさらなる
引張歪を生じさせる。すると、図示のように、小径部13
と14とで、互いに逆方向に傾斜したシェブロン状の残留
応力の磁気異方性部17,18が得られる。
発明の効果 以上述べたように本発明によると、捩りトルクによる
引張主応力方向の引張歪とショットピーニングによる引
張歪との合計が軸材料の引張降伏時の歪よりも大きくな
るようにしたため、この捩りトルクを取り去るとともに
ショットピーニングを停止することにより、軸体に圧縮
残留応力による磁気異方性を付与することができる。し
たがって、機械的強度、特に疲労強度の高いトルクセン
サ軸を得ることができ、しかも磁化容易軸は軸表面に対
し垂直方向を向くため、回転磁化のみを利用できること
になって、センサのヒステリシスを小さくできるうえに
感度を大きくできる。また、捩りトルクによる引張歪
に、ショットピーニングによる引張歪を加え合わせるも
のであるため、弾性限界内の小さな捩りトルクで容易に
引張降伏時の歪を越える引張歪を発生させることができ
る。
引張降伏応力が小さくなる高温の温度条件下で異方性
の付与作業を実施すれば、加えるべき捩りトルクをさら
に小さくすることができる。
軸体の中央部の両側にそれぞれ逆方向の捩りトルクを
負荷して引張歪を発生させることにより、容易にシェブ
ロン状の磁気異方性を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
第1図および第2図は、本発明による磁歪式トルクセン
サ軸の製造方法の説明図、第3図は本発明において引張
歪の合計が引張降伏時の歪よりも大きくなる様子を示す
応力−歪線図、第4図は本発明にもとづくトルクセンサ
軸の一具体例の斜視図である。 1,11……軸体、+ε……引張歪、ε……引張歪、ε
……引張降伏時の歪。

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】軸体に捩りトルクを負荷して引張歪を発生
    させたままの状態で、この軸体の表面に、ショットピー
    ニングによってさらに引張歪を生じさせて、前記捩りト
    ルクにもとづく引張主応力の方向の引張歪の合計を、軸
    体の材料の引張降伏時の歪よりも大きくすることを特徴
    とする磁歪式トルクセンサ軸の製造方法。
  2. 【請求項2】常温時に比べ引張降伏応力が小さくなる温
    度条件下で実施することを特徴とする請求項1記載の磁
    歪式トルクセンサ軸の製造方法。
  3. 【請求項3】軸体の中央部の両側の部分にそれぞれ逆方
    向の捩りトルクを負荷して、両部分における引張主応力
    の方向が軸心に対してそれぞれ逆方向に傾斜するよう
    に、捩りトルクによる引張歪を発生させることを特徴と
    する請求項1または2記載の磁歪式トルクセンサ軸の製
    造方法。
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