JP2510209B2 - 射出成形用難燃性ポリエステル系樹脂組成物 - Google Patents

射出成形用難燃性ポリエステル系樹脂組成物

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JP2510209B2 JP62185676A JP18567687A JP2510209B2 JP 2510209 B2 JP2510209 B2 JP 2510209B2 JP 62185676 A JP62185676 A JP 62185676A JP 18567687 A JP18567687 A JP 18567687A JP 2510209 B2 JP2510209 B2 JP 2510209B2
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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は射出成形用難燃性ポリエステル系樹脂組成物
に関する。さらに詳しくは、難燃性、高耐熱性を有し、
高強度で、しかも低温金型を用いて成形したばあいにも
均一な表面を有する成形体がえられる射出成形用難燃性
ポリエステル系樹脂組成物に関する。
[従来の技術・発明が解決しようとする問題点] 熱可塑性ポリエステル系樹脂は、繊維、フィルム、成
形品などとして広汎に使用されている。
しかし、熱可塑性ポリエステル系樹脂は機械的強度や
熱変形温度が充分でないうえ、難燃性に乏しく、とくに
建材部品や電気部品への適用には問題の生じるばあいが
あり、用途上の制限がある。
従来より、熱可塑性ポリエステル系樹脂の機械的強度
や熱変形温度の向上のためにはガラス繊維の充填、難燃
性の付与のためにはハロゲン系難燃剤およびアンチモン
化合物の添加が広く行なわれてきている。
しかし、これらの方法を用いると上記特性は改良され
るものの、通常採用される金型温度40〜80℃で射出成形
を行なうと、成形品の表面はガラス繊維の浮きが激し
く、流れ模様が顕著であり、不均一なものとなることが
多く、商品として受け入れられるような外観のものは到
底えられない。この欠点を除くには、ガラス繊維を充填
しなければよいが、ガラス繊維を用いないと機械的強度
や熱変形温度を高めることはできず、ガラス繊維を含有
した難燃性ポリエステル系樹脂組成物の成形品に均一な
表面状態を付与する手段が強く求められている。
[問題点を解決するための手段] 本発明者らはかかる問題点を解消するため鋭意検討を
重ねた結果、驚くべきことに、ガラス繊維を含有した難
燃性ポリエステル系樹脂配合物に、特定少量のエチレン
−酢酸ビニル共重合樹脂とタルクとを特定比率で添加す
ることにより、難燃性や高耐熱性を損なうことなく、高
強度で、かつ金型温度40〜80℃で射出成形したばあいに
も、均一な表面を有する成形品がえられることを見出
し、本発明を完成するに至った。
すなわ本発明は、 (1)(a)熱可塑性ポリエステル系樹脂100部(重量
部、以下同様)、 (b)ハロゲン系難燃剤3〜30部、 (c)アンチモン化合物0.5〜10部、 (d)エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂0.5〜6部およ
び (e)タルク2.5〜15部 からなるもの100部(ただし、(d)成分/(e)成分
が重量比で0.2〜1.0の範囲である)と (2)ガラス繊維10〜100部 とからなる射出成形用難燃性ポリエステル系樹脂組成物
に関する。
[実施例] 本明細書にいう熱可塑性ポリエステル系樹脂とは、酸
成分としてテレフタル酸またはそのエステル形成能を有
する誘導体を少なくとも90モル%含有したものと、グリ
コール成分として炭素数2〜10の脂肪族ジオールまたは
そのエステル形成能を有する誘導体を少なくとも90モル
%含有したものとを用いてえられる線状飽和のポリアル
キレンテレフタレート系樹脂や、後述のポリエーテル化
合物のごときソフトセグメントで改質されたポリアルキ
レンテレフタレート系樹脂などを含む概念である。この
ような熱可塑性ポリエステル系樹脂としては、たとえば
ポリエチレンテレフタレート系樹脂やポリブチレンテレ
フタレート系樹脂、さらにはエチレンテレフタレートオ
リゴマーを代表例として含むアルキレンテレフタレート
系樹脂オリゴマーおよび(または)ポリエチレンテレフ
タレートを代表例として含むポリアルキレンテレフタレ
ート系樹脂とポリエチレングリコール、ポリプロピレン
グリコール、一般式(I): (式中R1はC2〜C4の2価の炭化水素基、Xは、たとえば
−C(CH3)2−、−CH2−、−S−、−SO2−、−CO−など
の2価の結合基または直接結合、mおよびnはそれぞれ
5〜20の整数、(m+n)個のR1は同じである必要はな
い)で表わされる単位を有するポリエーテル化合物など
および該ポリエーテル化合物などの誘導体の少なくとも
1種とのブロック共重合体などを例示しうる。
なお、本明細書にいうエチレンテレフタレートオリゴ
マーまたはアルキレンテレフタレート系樹脂オリゴマー
とは、複数のエチレンテレフタレート単位または複数の
アルキレンテレフタレート単位を有するエチレンテレフ
タレートオリゴマーまたはアルキレンテレフタレート系
樹脂オリゴマーのみならずエチレンテレフタレート単位
またはアルキレンテレフタレート単位、さらにはときと
して含まれるテレフタレート単位のみをも含む概念であ
る。
前記10モル%未満の範囲で用いられるテレフタル酸や
そのエステル形成能を有する誘導体以外の酸成分として
は、炭素数8〜14の他の芳香族ジカルボン酸、炭素数4
〜8の脂肪族ジカルボン酸、さらには炭素数8〜12の脂
環式ジカルボン酸などがあげられ、その具体例として
は、たとえばフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレ
ンジカルボン酸、4,4′−ジフェニルジカルボン酸、ア
ジピン酸、セバシン酸、シクロヘキサンジカルボン酸な
どがあげられる。
また、前記10モル%未満の範囲で用いられる炭素数2
〜10の脂肪族ジオールやそのエステル形成能を有する誘
導体以外のジオール成分としては、炭素数6〜15の脂環
式ジオールや炭素数6〜15の芳香族ジオールなどがあげ
られ、その具体例としては、たとえばシクロヘキサン−
1,4−ジメタノール、2,2−ビス(4′−ヒドロキシシク
ロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4′−ヒドロキシ
フェニル)プロパン、ハイドロキノンなどがあげられ
る。
本発明に用いる熱可塑性ポリエステル系樹脂は、前記
ジカルボン酸成分およびジオール成分の10モル%以下の
量をオキシカルボン酸、たとえばε−オキシカプロン
酸、ヒドロキシ安息香酸などでおきかえた共重合体であ
ってもよく、また熱可塑性ポリエステル系樹脂としての
性質を維持する範囲で3価または4価のアルコールある
いは3塩基性酸または4塩基性酸で分岐されていてもよ
い。このような分岐剤の例としては、トリメシン酸、ト
リメリット酸、トリメチロールプロパン、ペンタエリス
リトールなどがあげられる。
前記のごとき成分から製造される本発明における熱可
塑性ポリエステル系樹脂の1つであるポリエチレンテレ
フタレート系樹脂は、通常0.35〜1.20の固有粘度(フェ
ノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン=50/50(重量
比)、0.5%(重量%、以下同様)濃度、25℃、以下同
様)を有するものであるが、結晶化速度と機械的強度と
のバランスがよくなるという点からすると固有粘度0.40
〜0.70のものが好ましく、0.45〜0.65のものがとくに好
ましい。またポリブチレンテレフタレート系樹脂のばあ
い、固有粘度0.5〜1.5のものが好ましく、0.7〜1.3のも
のがさらに好ましい。
本発明における熱可塑性ポリエステル系樹脂の他の例
である前記ブロック共重合体に含有されるポリエーテル
化合物とは、一般式(II): −OR2 O (II) (式中、R2は炭素数2〜18の2価の基、lは5〜40の整
数、l個のR2は同じである必要はない)で表わされる単
位(末端を除く部分)を有する化合物であり、該単位を
含有することにより前記ブロック共重合体を含有する組
成物の結晶化速度を早くするとともに、耐衝撃性を改善
しうる。
前記R2の具体例としては、たとえばエチレン、プロピ
レン、イソプロピレン、ブチレン、ビスフェノールA残
基などがあげられ、一般式(II)で表わされる単位を有
するポリエーテル化合物のうちポリエチレングリコー
ル、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレング
リコール、一般式(I)で表わされる単位を有するポリ
エーテル化合物から選ばれた1種以上のポリエーテル化
合物を用いたブロック共重合体が、えられる組成物の結
晶化速度が速くなり、射出成形時の熱安定性がよくなる
などの面から好ましい。
前記ポリエーテル化合物は、これとエチレンテレフタ
レート系樹脂オリゴマーで代表されるアルキレンテレフ
タレート系樹脂オリゴマーおよび(または)ポリエチレ
ンテレフタレート系樹脂で代表されるポリアルキレンテ
レフタレート系樹脂とからなるブロック共重合体成分10
0部中に好ましくは3〜60部、さらに好ましくは25〜60
部含有される。該量が3部未満では結晶化速度改善効果
が充分期待できず、また60部をこえると成形品の機械的
強度、耐湿性などが著しく低下し、好ましくなくなりが
ちである。
前記のごとき成分から製造される本発明における熱可
塑性ポリエステル系樹脂の1つであるポリエチレンテレ
フタレート−ポリエーテルブロック共重合体は、通常0.
35〜1.20の固有粘度を有するものであるが、結晶化速度
と機械的強度とのバランスがよく改善されるという面か
らは、固有粘度0.40〜1.00のものが好ましく、0.50〜0.
80のものがとくに好ましい。またポリブチレンテレフタ
レート−ポリエーテルブロック共重合体のばあいの固有
粘度は、通常0.40〜1.6、好ましくは0.60〜1.4、とくに
好ましくは0.80〜1.2である。
前記ブロック共重合体はポリエステル合成反応容器中
で共重合させて製造してもよく、押出機中で共重合させ
て製造してもよい。
前記熱可塑性ポリエステル系樹脂は単独で用いてもよ
く、2種以上併用してもよい。熱可塑性ポリエステル系
樹脂を2種以上併用するばあい、ポリエチレンテレフタ
レート系樹脂とポリエチレンテレフタレート−ポリエー
テル共重合体とを併用することが好ましく、ポリエチレ
ンテレフタレート系樹脂/ポリエチレンテレフタレート
−ポリエーテル共重合体=95/5〜5/95(重量比)の範囲
で使用するのが結晶化速度と機械的強度のバランスの点
から好ましい。
本発明における(b)成分であるハロゲン系難燃剤と
しては、熱可塑性ポリエステル系樹脂のハロゲン系難燃
剤として一般に使用されうる化合物が使用されうる。こ
のような難燃剤のうち好ましいものとしては以下のもの
が例示されうる。
(I)下記一般式(1)で示される反復構造単位を有す
るハロゲン化ポリスチレン化合物。
(式中、X1はBrまたはCl、tは1〜5の整数。) たとえばポリジブロモスチレン、ポリトリブロモスチ
レン、ポリペンタブロモスチレンなどがあげられるが、
好ましくはポリトリブロモスチレンが用いられる。
(II)下記一般式(2)で示される反復構造単位を有す
るハロゲン化フェノールより誘導されたハロゲン化ポリ
フェニレンオキサイド化合物。
(式中、X1は前記に同じ、aは1〜4の整数を示す。) たとえばトリブロモフェノールの縮合物、トリクロロ
フェノールの縮合物、テトラブロモフェノールの縮合
物、テトラクロロフェノールの縮合物、ペンタブロモフ
ェノールの縮合物、ペンタクロロフェノールの縮合物な
どがあげられるが、好ましくはトリブロモフェノールの
縮合物である。
(III)下記一般式(3)で示される構造単位を有す
る、ハロゲン化ビスフェノール類とハロゲン化(塩化)
シアヌルとから誘導され、末端が封鎖されたハロゲン含
有S−トリアジン系化合物。
(式中、Rは低級アルキル基またはハロゲン化低級アル
キル基、X1は前記に同じ、b、c、d、eはそれぞれ0
〜4の整数で、b+c+d+e≦8であり、かつ1+d
+e≦2、Yは低級アルキレン基、ハロゲン化低級アル
キレン基、アルキリデン基、−SO2−、−SO−、−S
−、−O−、−CO−または直接結合を示す、またRWは水
酸基、 (式中、R、X1は前記に同じ、f、gはそれぞれ0〜4
の整数で、f+g≦5)、 (式中、R、X1、Y、b、c、d、eは前記に同じ)、 (式中、R、X1、Y、RW、b、c、d、eは前記に同
じ)を示す。) 使用されるビスフェノール類としては、ビスフェノー
ルA、ビスフェノールS、ビスフェノールFなどの2ハ
ロゲン化物または4ハロゲン化物などがあげられ、テト
ラブロモビスフェノールAおよびテトラブロモビスフェ
ノールSが好ましい。
末端を封鎖するために使用されるフェノール類として
は、フェノール、モノブロモフェノール、トリブロモフ
ェノール、ペンタブロモフェノール、モノクロロフェノ
ール、トリクロロフェノール、ペンタクロロフェノー
ル、トリブロモクレゾールなどがあげられるが、トリブ
ロモフェノール、ペンタブロモフェノールがとくに好ま
しい。
(IV)下記一般式(4)で示される反復構造単位を有す
るハロゲン化ポリカーボネート化合物。
(式中、R1は水素原子、低級アルキル基、フェニル基、
X1は前記に同じ、hおよびiはそれぞれ1〜4の整
数。) (V)下記一般式(5)で示されるハロゲン化ビスフェ
ノール型エポキシ樹脂。
(式中、X1は前記に同じ、jおよびkはそれぞれ1〜4
の整数、pは正の整数、Zは低級アルキレン基、ハロゲ
ン化低級アルキレン基、アルキリデン基、−SO2−、−S
O−、−S−、−O−、−CO−または直接結合を示
す。) たとえばビスフェノールA、ビスフェノールS、ビス
フェノールFなどの2ハロゲン化物または4ハロゲン化
物などをエピクロルヒドリンと縮合させてえられるビス
フェノール型エポキシ樹脂、好ましくはテトラブロモビ
スフェノールAまたはテトラブロモビスフェノールSを
用いたエポキシ樹脂があげられる。
(VI)下記一般式(6)で示されるハロゲン化ジフェニ
ルエーテル化合物。
(式中、X1は前記に同じ、l、mはそれぞれ1〜5の整
数。) たとえば、ヘキサブロモビフェニルエーテル、オクタ
ブロモビフェニルエーテル、デカブロモジフェニルエー
テルなどがあげられる。
以上、具体例でもって示したが、本明細書にいうハロ
ゲン系難燃剤はこれらのみに限定されるものではない。
また、ハロゲン系難燃剤は単独で使用してもよく、2種
以上併用してもよい。
ハロゲン系難燃剤の添加量は、熱可塑性ポリエステル
系樹脂100部に対して3〜30部、好ましくは5〜25部で
あり、該量が3部未満では難燃効果に乏しく、30部をこ
えるばあいには機械的強度が低下する。
本発明に用いるアンチモン化合物((C)成分)は、
上記ハロゲン系難燃剤((b)成分)と併用することに
より相乗効果を発揮しうる公知のアンチモン化合物であ
り、その具体例としては、たとえば三酸化アンチモン、
五酸化アンチモン、酒石酸アンチモン、アンチモン酸ナ
トリウムなどがあげられ、単独で使用してもよく、2種
以上で併用してもよい。これらのうちでは三酸化アンチ
モンが好ましい。
アンチモン化合物の添加量は、熱可塑性ポリエステル
系樹脂100部に対して0.5〜10部、好ましくは1〜6部で
あり、該量が0.5部未満では難燃相乗効果に乏しく、10
部をこえるばあいには機械的強度が低下する。
本発明に用いるエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂
((d)成分)は、一般式(7): (式中、p、qは正の整数)で示されるメルトインデッ
クス0.5〜70g/min程度の化合物であり、酢酸ビニル含量
が5〜50%のものが好ましい。酢酸ビニル含量が5%未
満のばあいには、系中において相分離が生じやすくなる
とともに、機械的強度が低下しやすくなる傾向にあり、
50%をこえると熱変形温度が低下しやすくなるととも
に、耐溶剤性がわるくなる傾向にある。
エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂の添加量は、熱可塑
性ポリエステル系樹脂100部に対して0.5〜6部、好まし
くは1〜5部である。該量が0.5部未満では、金型温度4
0〜80℃における成形品の表面均一性を充分改良するこ
とはできず、6部をこえるばあいには機械的強度、熱変
形温度が低下する。
本発明に用いるタルク((e)成分)は、組成式:3Mg
O・4SiO2・H2Oで表わされる化合物を主成分とするもの
であり、平均粒径が10μ以下のものが好ましい。平均粒
径が10μをこえるばあいには、組成物中での分散性がわ
るくなりやすく、表面均一性を改良するという本来の目
的が達成されにくくなるうえに、機械的強度が低下しや
すくなる。
タルクの添加量は、熱可塑性ポリエステル系樹脂100
部に対して2.5〜15部、好ましくは4〜12部である。該
量が2.5部未満ののばあいには、低温金型における成形
品の表面均一性が充分改良されず、15部をこえるばあい
には機械的強度が低下する。
本発明におけるエチレン−酢酸ノビニル共重合体/タ
ルクは重量比で0.2〜1.0の範囲でなければならず、0.3
〜0.8であるのが好ましい。重量比がこの範囲をはずれ
るばあいには、組成物中のタルクが凝集しやすくなり、
低温金型を用いたばあいの成形品の表面が充分均一にな
らず、機械的強度が低下する。このことは、エチレン−
酢酸ビニル共重合樹脂がタルクの分散性を高めているこ
とを意味しており、実際、蛍光X線分析法を用いて、成
形体表面のMg(タルクの含有元素)の分布を測定する
と、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂を加えたばあいに
は、加えないばあいに比べてMgの分布が均一であり、タ
ルクが均一に分散していることが判明している。その結
果、低温金型を用いたばあいの成形品の表面が均一にな
るとともに、機械的強度の低下が抑制されるものと考え
られる。
本発明に用いるガラス繊維にはとくに限定はなく、一
般に、市販されているごときチョップドストランドガラ
ス繊維である限りいずれも使用しうる。ガラス繊維は樹
脂との親和性を増すために、シランカップリング剤など
で表面処理されている方が好ましい。
ガラス繊維の配合量は、(1)成分((a)〜(e)
成分の総和)100部に対して10〜100部であり、好ましく
は15〜70部である。該量が10部未満のばあいには機械的
強度や耐熱性が低くなり、100部をこえるばあいには低
温金型を用いたばあいの成形品の表面が充分均一になら
ない。
本発明の組成物を製造するには、(1)の各成分
((a)熱可塑性ポリエステル系樹脂、(b)ハロゲン
系難燃剤、(c)アンチモン化合物、(d)エチレン−
酢酸ビニル共重合樹脂および(e)タルク)および
(2)のガラス繊維を押出機を用いて混合ペレット化す
る方法が一般的であり、各成分が均一に混合したペレッ
トをうるためには、二軸押出機を用いることが好ましい
が、この方法に限定されるものではない。
本発明の組成物には、結晶性を増大させることを目的
として、酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、フタル
酸ナトリウム、フタル酸二ナトリウム、ステアリン酸マ
グネシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カ
ルシウム、パルミチン酸ナトリウム、モンタン酸ナトリ
ウム、p−t−ブチル安息香酸ナトリウムなどをはじめ
とする有機酸塩類;炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、
珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、硫酸カルシウム、
硫酸バリウムなどをはじめとする無機塩類、酸化亜鉛、
酸化マグネシウム、酸化チタンなどをはじめとする金属
酸化物;エチレン−アクリル酸共重合体の金属塩などを
はじめとする、いわゆるアイオノマー類;ポリアルキレ
ングリコールの片末端が有機金属塩になっている構造の
化合物を含有させてもよい。
本発明の組成物には、さらに他の強化充填剤、たとえ
ば鉱物繊維、炭素繊維、炭化珪素繊維、炭化硼素繊維、
チタン酸カリウム繊維、石膏繊維、マイカ、カオリン、
クレー、アスベスト、珪酸カルシウム、硫酸カルシウ
ム、炭酸カルシウムなどを添加してもよく、またポリア
ミド系重合体、ポリカーボネート系重合体などを含有さ
せてもよく、ジエン系ゴム、アクリルゴム系重合体、ブ
チル系重合体、エチレン−プロピレンゴム系共重合体、
ウレタンゴム、エピクロルヒドリンゴム、シリコーンゴ
ムなどの熱可塑性ゴムを含有させてもよく、さらには他
の添加剤、たとえば酸化防止剤、光安定剤、顔料、染
料、滑剤などを難燃性や特性などを損なわない程度に添
加、配合してもよい。
かくして、難燃性、機械的強度および耐熱性を損なわ
ずに、低温金型で成形したばあいにも均一な表面を有す
る成形品がえられる。
以下に実施例をあげて本発明の組成物を説明するが、
本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではな
い。
なお、実施例における成形品の引張強度はASTM-D63
8、熱変形温度(18.6kg/cm2)はASTM-D648、難燃性はUL
-94垂直試験法に準拠して測定した。また、成形品の表
面均一性は、金型温度70℃にて100mm×5mm×2mmの平板
を射出成形し、目視判定し、ガラス繊維の浮きが少な
く、平板全体が均一なものを○、ガラス繊維の浮きが多
く、流れ模様が顕著なものを×とした。
実施例1および比較例1〜3 ポリエチレンテレフタレート100部、臭素化ポリスチ
レン(Br含率68%)10部、三酸化アンチモン3部、エチ
レン−酢酸ビニル共重合樹脂(酢酸ビニル含率25%)3
部、タルク(平均粒径3.2μ)6部をドライブレンドし
たもの100部とガラス繊維(繊維長3mm)40部とを二軸押
出機を用いて混合ペレット化した。エチレン−酢酸ビニ
ル共重合樹脂のタルクに対する重量比は0.5であった。
このペレットを70℃の金型を用いて射出成形し、試験片
をえて評価した。結果を第1表に示す。
比較例1として実施例1よりエチレン−酢酸ビニル共
重合樹脂を除いたもの、比較例2としてタルクを除いた
もの、比較例3としてエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂
およびタルクを除いたものを用いて同様に評価した。結
果を第1表に併せて示す。
第1表の結果から、実施例1のものは引張強度、熱変
形温度および難燃性を損うことなく、表面均一性に優れ
ていることがわかる。しかし、比較例1〜3のものでは
いずれのばあいにも表面均一性が不良であり、そのうえ
比較例1のものは引張強度が低下していることがわか
る。
実施例2〜4および比較例4〜5 ビスフェノールAのエチレンオキシド付加体(平均分
子量1000)を5%共重合させたポリエチレンテレフタレ
ート系樹脂100部、デカブロモジフェニルエーテル(Br
含率83%)7部、三酸化アンチモン3部、エチレン−酢
酸ビニル共重合樹脂(酢酸ビニル含率20%)4部、タル
ク(平均粒径1.8μ)7部、p−t−ブチル安息香酸Na
0.5部をドライブレンドしたもの100部とガラス繊維(繊
維長3mm)40部とを二軸押出機を用いて混合し、ペレッ
ト化した。エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂のタルクに
対する重量比は0.57であった。このペレットを70℃の金
型を用いて射出成形し、試験片をえて評価した。結果を
第2表に示す。
さらに、実施例3として実施例2のエチレン−酢酸ビ
ニル共重合樹脂を1.5部、タルクを5部に変更したも
の、実施例4として同じく4部と5部に変更したものを
同様に評価した。結果を第2表に併せて示す。
比較例4として実施例2のエチレン−酢酸ビニル共重
合樹脂を1部としたもの(エチレン−酢酸ビニル共重合
樹脂のタルクに対する重量比が0.14のももの)、比較例
5として実施例2のエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂を
8部としたもの(エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂のタ
ルクに対する重量比が1.14のもの)を用いて同様に評価
した。結果を第2表に併せて示す。
第2表の結果から、実施例2のものは引張強度、熱変
形温度および難燃性を損うことなく、表面均一性が良好
であることがわかる。しかし、比較例4のものでは引張
強度が低下し、表面均一性が不良であり、比較例5のも
のでは引張強度・熱変形温度が低下し、表面均一性も不
良であることがわかる。
実施例5および比較例6 実施例1のポリエチレンテレフタレートのかわりにポ
リブチレンテレフタレートを用いた以外は実施例1と同
様にして評価した。結果を第3表に示す。
比較例6として、実施例5のエチレン−酢酸ビニル共
重合樹脂を10部、タルクを20部に(エチレン−酢酸ビニ
ル共重合樹脂のタルクに対する重量比は0.5)増量した
ものを用いて同様に評価した。結果を第3表に併せて示
す。
第3表の結果から、実施例5のものは引張強度、熱変
形温度および難燃性を損うことなく、表面均一性が良好
であることがわかる。しかし、比較例6のものでは表面
均一性は改良されたが、引張強度、熱変形温度が低下し
てしまうことがわかる。
[発明の効果] 本発明の組成物を用いて成形品を製造すると、難燃
性、高強度および高耐熱性を損うことなく、金型温度40
〜80℃で射出成形したばあいにも均一な表面を有する成
形品がえられる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 (C08K 13/04 (C08K 13/04 7:04 7:04 3:34 3:34 3:22 3:22 5:02) 5:02)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】(1)(a)熱可塑性ポリエステル系樹脂
    100重量部、 (b)ハロゲン系難燃剤3〜30重量部、 (c)アンチモン化合物0.5〜10重量部、 (d)エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂0.5〜6重量部
    および (e)タルク2.5〜15重量部 からなるもの100重量部(ただし、(d)成分/(e)
    成分が重量比で0.2〜1.0の範囲である)と (2)ガラス繊維10〜100重量部 とからなる射出成形用難燃性ポリエステル系樹脂組成
    物。
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