JP2505324B2 - タンタル粉末の製造方法 - Google Patents

タンタル粉末の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、金属タンタル粉末の製
造方法にかかわり、特に高容量で漏れ電流の少ないコン
デンサ用として優れたタンタル粉末の製造方法に関する
ものである。
【0002】
【従来の技術】電解コンデンサ用の電極としてタンタル
粉末が使用されている。タンタル電極はタンタル粉末を
圧縮して成形体とし、該成形体を焼結したのち酸化処理
して焼結体表面に誘電体皮膜を形成することによって得
ている。このようなコンデンサはできるだけ大きな比容
量(CV/g)が望まれる。比容量を高めるためには比
表面積の大きなタンタル粉末が好ましい。
【0003】タンタル電極は圧縮成形、焼結工程を経て
作られるのでタンタル粉末には各種の粉末特性のほか電
気特性が要求される。タンタル粉末は一般にフッ化タン
タル酸カリウムをナトリウム還元する方法が採用されて
いる。還元後酸洗し熱処理し、微粉末を凝集させた後、
解砕して所定の粒度とし、圧縮成形体用粉末としてい
る。その際タンタル粉末の諸特性を改善する目的で各種
ドーパントを使用することが提案されている。たとえば
特開昭52−14503には5〜400ppm のリン
(P)を加えて比容量を高め、粉末の流動性を改善する
技術が開示されている。特開昭58−71614には
0.5〜5000ppm のホウ素(B)を加えて比容量を
高め、漏れ電流を低下させる技術が開示されている。特
開昭60−59005には20〜500ppm の硫黄
(S)を添加して表面積が大きく、比容量の大きなタン
タル粉末を得る技術が開示されている。
【0004】特開昭60−149706にはPとBを同
時に添加して比容量と寿命特性を改善する技術が開示さ
れている。特開昭61−133301には炭素(C)
と、窒素(N)または硫黄(S)から選ばれた少なくと
も一つとを100〜10,000ppm 添加し、比容量を
高め、漏れ電流を抑制する技術が開示されている。さら
に、USP4,957,541には50〜1000ppm
のケイ素(Si)と100〜500ppm のPを添加して比
容量を高め漏れ電流を低減させる技術が開示されてい
る。このようにタンタルにリンを添加すればコンデンサ
の比容量を高めることは良く知られている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】タンタル中にPを添加
すると、高温真空下でタンタル粉末の圧縮成形体(ペレ
ット)の焼結をする際に、添加されたPとタンタル中の
酸素がPOなる化合物を作り蒸発する。この時、ペレット
に付随するタンタルワイヤーは粉末よりも酸素含有量が
少ないため、蒸発したPOがワイヤー上で還元され、Ta3P
の形で蒸着する。このTa3Pは誘電体皮膜形成のための陽
極酸化処理の際、酸化皮膜を破壊し漏れ電流が大きくな
り、コンデンサ特性を悪化させる結果を招く。特に陽極
酸化温度が低いとこの傾向が顕著となるため、陽極酸化
温度を80℃以上に高目に維持せねばならず、熱効率、
装置材料の面で不利である。
【0006】緻密で健全な酸化皮膜を効率良く得るため
には陽極酸化温度は60℃程度を上限とするのが好まし
く、この程度の陽極酸化処理温度を採用する限りはP量
はせいぜい30ppm が限度であり、P添加の効果を充分
発揮できないのが実状である。Si、Bを使用した場合も
SiO、BO等の酸化物がタンタルワイヤー上で還元されて
TaxSiy、金属B等の蒸着層となる。これらは安定な酸化
膜を生じるため、漏れ電流特性に対しては全く影響を及
ぼさないが、酸化皮膜の厚さを減少させるので、厚みム
ラにより耐電圧特性のバラツキが考えられ、製品品質上
の不安定要素となっている。したがってSiやBを使用せ
ずに、60℃以下の陽極酸化処理温度でも高い比容量で
しかも低い漏れ電流特性を有するタンタルコンデンサが
要求されている。本発明はこのような要求を満足できる
タンタル粉末を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
本発明ではタンタル粉末に40〜150ppm 相当のPを
添加したのち、真空中で1200〜1600℃の温度で
熱処理し、次いでHFを含む酸で処理する手段を採用し
た。
【0008】本発明で使用するタンタル粉末はフッ化タ
ンタル酸カリウムのナトリウム還元によって得られたも
のでもよいし、インゴットを粉砕した粉末でもよい。も
ちろん微粉末を含んだままでよい。
【0009】タンタル粉末に添加するPは赤リン、黄リ
ン等の純リンであってもよいし、リン酸アンモニウム、
リン酸カルシウム、リン酸水素ナトリウム等の化合物、
GaP等の化合物が利用できる。添加量はエッチング後の
P純分量が30ppm 程度となるよう、純分換算で40〜
150ppm 添加する。Pは微粉の凝集のための熱処理前
に添加しておく。
【0010】次いでPを添加したタンタル粉末を真空中
で熱処理する。通常熱処理温度はペレットの焼結温度よ
り50〜200℃低いとされているが、本発明の場合に
は焼結温度と同等ないしは100℃程度低い範囲、すな
わち1200〜1600℃が適当であることがわかって
いる。焼結はタンタルの酸化を防ぐため10-4Torr程度
の真空下でおこなう。
【0011】この熱処理で微粉末の凝集及び不純物の除
去が行われるわけであるが、この発明では以下の付帯効
果がある。熱処理時とペレット焼結時の間にPの除去工
程が入るためにPによる熱凝集防止効果が異なる。従っ
て、Pの除去なしに熱処理から焼結に進んだ場合と比較
すると、焼結時の収縮がはるかに大きくなる。
【0012】一般的なTa粉の用法を考えると、焼結温度
は少なくとも1400℃以上の一定の水準から変化させ
ることはむつかしいとされている。見方をかえると焼結
温度を一定としてみた場合、本発明によると熱処理温度
を高めにすることが可能になる。このことにより、粉末
の熱凝集を十分に行なうこと、不純物の除去を十分に行
なうことが可能となり、Taコンデンサの電気的特性の向
上が期待できる。
【0013】次に、焼結後のタンタル粉末を解砕し、6
0メッシュ以下の所望の粒度に調整したのち、HFを含
む酸中に浸漬して処理する。HFを含む酸とはHFを3
〜10 vol%含む酸、または、これに H2SO4、HNO3、 H
Cl等を加えた混酸が利用できる。エッチングは常温で適
当な時間撹拌するだけでよい。エッチング処理の時間お
よび酸の濃度は、タンタル粉末の表面積、Pの濃度によ
って適宜調整すればよい。エッチングによって表面部分
のPが除去される結果、表面でのPOの弊害は取り除か
れ、漏れ電流が著しく減少すると同時に内部のPの効果
によりペレット焼結時の熱収縮を抑えることができるよ
うになる。本発明に加えてさらに熱処理後にPを添加し
て比容量の向上をはかること、あるいはMg等により酸素
を除去する手段を併用することも有効である。
【0014】
【作用】本発明はPを添加して焼結時の熱収縮性を改善
するに際し、熱処理後のタンタル粒子表面に偏析してい
るP化合物をHFにより除去し、陽極酸化皮膜の破壊を
防止し、もってコンデンサの比容量を向上させるもので
ある。
【0015】
【実施例】次に実施例あげて本発明を説明する。フッ化
タンタル酸カリウムをナトリウム還元して得たタンタル
粉末(A)を準備した。このタンタル粉末の比表面積
(SSA)は2400cm2 /g、325メッシュ以下
の微粉末の割合は70%であった。このタンタル粉末に
P:70ppm 相当のNa3PO4を添加し、均一に混合したの
ち10-4Torrの真空中で1500℃×1hr熱処理し、微
粉末を凝集させた。凝集したタンタル粉を解砕し、篩分
けし60メッシュ以下のタンタル粉末(B)を得た。
【0016】次に、このタンタル粉末(B)をHNO3:4
0 vol%、HF:5 vol%を含む混酸中に入れ30分間撹
拌して粉末表面をエッチング処理しリンを除去した。処
理後充分水洗し、乾燥して本発明のタンタル粉末(C)
を得た。比較のため従来知られていたナトリウム還元し
て得たタンタル粉末(A)にN3PO4 をP:30ppm 相当
添加し、10-4Torrの真空中で1450℃×1hr熱処理
した後解砕整粒したタンタル粉末(D)を準備した。こ
れらB〜Dの粉末特性を測定した結果を表1に示す。
【0017】
【表1】
【0018】次に、上記B〜Dのタンタル粉末を圧粉成
形してペレットとなし、タンタルのリード線を付して陽
極を形成し、1500℃×30min 真空中で焼結した
後、リン酸浴を用いて60℃、70Vで陽極酸化処理し
てコンデンサとした。このようにして得られたタンタル
コンデンサにつき、焼結体の収縮率と電気特性を測定し
た。これらの結果を表1に併記する。
【0019】表中収縮率とは{(焼結体密度−圧粉体密
度)/圧粉体密度}×100である。表から明らかなと
おり、本発明のタンタル粉末を使用した場合は、同じリ
ンの残留量で比較すると収縮率が減少し漏れ電流が著し
く小さくなり、比容量、絶縁破壊電流共良好な結果が得
られていることがわかる。
【0020】
【発明の効果】本発明によるタンタル粉末を使用してコ
ンデンサにすれば比容量の大きく、しかも漏れ電流が著
しく低いコンデンサが得られる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 船木 健一 福島県河沼郡河東町大字東長原字長谷地 111番地 昭和キャボットスーパーメタ ル株式会社 東長原工場内 (56)参考文献 特開 昭58−73708(JP,A) 特開 昭52−14503(JP,A) 特開 昭62−247001(JP,A) 特開 昭61−284501(JP,A)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 タンタル粉末に純分換算で40〜150
    ppm 相当のPまたはP化合物を添加したのち、真空中で
    1200〜1600℃で熱処理し、次いでHFを含む酸
    で処理することを特徴とするタンタル粉末の製造方法。
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