JP2024518509A - Parp阻害剤抵抗性癌治療剤 - Google Patents

Parp阻害剤抵抗性癌治療剤 Download PDF

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Abstract

本発明は、PARP阻害剤に対する抵抗性を有する固形癌患者の治療又は予防のための薬学的組成物に関し、本発明による薬学的組成物は、PARP阻害剤に対する抵抗性を有する患者の腫瘍のサイズを効果的に縮小させることができる。【選択図】図4

Description

本出願は、2021年5月18日付韓国特許出願第10-2021-0064278号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は、本明細書の一部として含まれる。
本発明は、PARP阻害剤に抵抗性を有する固形癌患者の治療に使用できる癌治療剤に関する。
癌発生の代表的な原因の一つとしてDNA突然変異の蓄積が知られている。哺乳類は一つの細胞である受精卵から絶え間ない細胞分裂過程を経て成長及び発達し、この過程で必然的にDNAに突然変異(以下「DNA損傷」という)が生じるが、相同組換え(Homologous Recombination: HR)又は非相同末端結合(Non-Homologous End Joining: NHEJ)などの様々なDNA修復(DNA Repair)機序によってDNA損傷を修復している。それぞれのDNA修復機序には様々な種類のタンパク質が関与しており、もしこれらのタンパク質の一部に突然変異が発生する場合、DNA修復機序に問題が生じるため、癌発生確率は数倍から数百倍まで高くなる。一般的に相同組換え機能が失われると、ゲノムが不安定になり、これが様々な遺伝子変化を引き起こすことによって、最終的に腫瘍が発生する。
損傷したDNA修復に関わるBRCA1/2遺伝子は腫瘍発生を抑制する遺伝子であって、BRCA1/2遺伝子に突然変異が発生して機能が低下する場合、損傷したDNAが正しく修復されず、DNA損傷が累積的に発生することで癌を引き起こすことが知られている。これを相同組換え欠損(Homologous Recombination Deficiency: HRD)と呼ぶ。相同組換え欠損腫瘍としてBRCA1/2遺伝子突然変異に関連する乳癌及び卵巣癌がよく知られている。特に、BRCA1/2遺伝子突然変異を持つ女性の場合、乳癌又は卵巣癌の発症確率がそれぞれ最大80%、60%まで増大することが知られている。しかし、BRCA1/2遺伝子突然変異は、前述した乳癌及び卵巣癌だけでなく、胃癌、膵臓癌、前立腺癌、胆嚢癌、胆道癌、及び大腸癌とも関連することが知られている。
ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(Poly(ADP-Ribose) Polymerase: PARP)タンパク質は、DNA複製時に必然的に発生するエラーを修復するために必要なタンパク質であり、核で損傷したDNAを認識して活性化された後、DNA修復関連タンパク質を翻訳後(post-translation)過程(PARrylation)を通じて活性化させる酵素である。これまで17個のPARPファミリーが知られているが、PARP1/2だけがポリ(ADP-リボシル化)活性を持つDNA修復酵素として明らかになっており、細胞の生存に必ず必要な酵素として知られている。
相同組換え欠損腫瘍は、PARP阻害剤によるDNA損傷に敏感な反応を示すことが知られている。したがって、PARP阻害剤は癌治療剤として臨床で大きな可能性を有する。実際にオラパリブ(Olaparib; LynparzaTM)、ルカパリブ(Rucaparib: RubracaTM)、ニラパリブ(Niraparib: ZEJULATM)、タラゾパリブ(Talazoparib:TalzennaTM)などのPARP阻害剤が遺伝子にBRCA1/2突然変異(germ-line mutation)を有する卵巣癌、乳癌又は前立腺癌患者に処方されており、特に、ニラパリブは白金ベースの抗癌化学療法に完全または部分的に反応する再発性上皮卵巣癌、高度漿液性卵巣癌(卵管癌又は原発性腹膜癌)などを対象とした維持療法剤として使用されている。
PARP阻害剤として開発された6-{4-[(5-オキソ-1,2,3,4,5,6-ヘキサヒドロベンゾ[h][1,6]ナフチリジン-8-イル)メチル]ピペラジン-1-イル}ニコチノニトリルは、下記化学式1の構造を有する。下記化学式1の化合物又はその薬学的に許容される塩は、PARP1/2だけでなく、タンキラーゼ(tankyrase)1/2に対しても阻害能を示す。タンキラーゼはWnt/β-catenin信号経路、DNA修復過程及び細胞周期に関連性の高い有糸分裂に関与することが知られている。また、タンキラーゼ1/2はTRF-1をADP-リボシル化し、テロメア(telomere)の長さの陽性調節因子として機能し、テロメラーゼ(telomerase)によってテロメア(telomere)を伸長させる。また、下記化学式1の化合物又はその薬学的に許容される塩は、白金ベースの抗癌化学療法に完全または部分的に反応する再発性上皮卵巣癌、高度漿液性卵巣癌などに対する治療効果が期待されている。
<化学式1>
Figure 2024518509000002
このように様々なPARP阻害剤の癌治療用標的治療剤としての可能性や期待がある一方、オラパリブをはじめとするPARP阻害剤は他の抗癌剤と同様に先天的/後天的抵抗性又は不応性の比率が高い。相同組換え欠損腫瘍に対する薬物抵抗性の比率が高くなり、これに対する研究が行われているが、現在までに大きな進展はない。
また、前記化学式1の化合物が、化学式1を除外した他の抗癌剤に抵抗性を有する固形癌、特に、従来の標準治療に用いられるPARP阻害剤に抵抗性を有する固形癌を治療できるか否かについても知られていない。
このような背景下に、本発明の発明者らは、PARP阻害剤に対する抵抗性を示す患者の治療に使用できる抗癌剤を多角的に研究した結果、本発明の化学式1を含む化合物が、従来のPARP阻害剤(オラパリブなど)に抵抗性を有する患者の腫瘍のサイズを縮小させることを確認し、本発明を完成した。
韓国登録特許10-1136702(公告日: 2012. 4. 20.) 韓国登録特許10-1146806(公告日: 2012. 5. 22.) 韓国登録特許10-1837047(公告日: 2018. 3. 09.)
本発明は、6-{4-[(5-オキソ-1,2,3,4,5,6-ヘキサヒドロベンゾ[h][1,6]ナフチリジン-8-イル)メチル]ピペラジン-1-イル}ニコチノニトリル又はその薬学的に許容される塩を含む薬学的組成物を、PARP阻害剤に抵抗性を有する患者の固形癌治療用組成物として提供することを目的とする。
本発明の他の目的は、6-{4-[(5-オキソ-1,2,3,4,5,6-ヘキサヒドロベンゾ[h][1,6]ナフチリジン-8-イル)メチル]ピペラジン-1-イル}ニコチノニトリル又はその薬学的に許容される塩をPARP阻害剤に対する抵抗性を有する個体に投与することにより、個体の固形癌を治療する方法を提供することを目的とする。
本発明は、6-{4-[(5-オキソ-1,2,3,4,5,6-ヘキサヒドロベンゾ[h][1,6]ナフチリジン-8-イル)メチル]ピペラジン-1-イル}ニコチノニトリル又はその薬学的に許容される塩を、PARP阻害剤に対する抵抗性を有する患者の固形癌に対する治療用途として提供することを目的とする。
前記目的を達成するために、本発明は、6-{4-[(5-オキソ-1,2,3,4,5,6-ヘキサヒドロベンゾ[h][1,6]ナフチリジン-8-イル)メチル]ピペラジン-1-イル}ニコチノニトリル又はその薬学的に許容される塩を含むPARP阻害剤に対する抵抗性を有する患者の固形癌治療用薬学的組成物を提供する。
本発明の一実施態様として、前記PARP阻害剤は、オラパリブ、ルカパリブ、ニラパリブ、及びタラゾパリブから選択される1つ以上であってもよいが、これらに限定されない。
本発明の一実施態様として、前記患者はBRCA1/2突然変異を有してもよい。
本発明の一実施態様として、前記患者は生殖細胞(germline)BRCA1/2突然変異を有してもよい。
本発明の一実施態様として、前記患者は体細胞(somatic)BRCA1/2突然変異を有してもよい。
本発明の一実施態様として、前記患者はBRCA1/2突然変異を有し、初期にはPARP阻害剤に反応を示したが、治療過程で抵抗性を獲得してPARP阻害剤に反応を示さなかったか、癌が再発した患者であってもよい。
本発明の一実施態様として、前記患者はBRCA1/2突然変異を有するが、PARP阻害剤に反応を示さなかった患者であってもよい。
本発明の一実施態様として、前記患者はBRCA1/2突然変異を持たず、従来にPARP阻害剤に反応を示さなかったか、癌が再発した患者であってもよい。
本発明の一実施態様として、前記固形癌はBRCA1/2突然変異によって引き起こされると知られている卵巣癌、乳癌、前立腺癌、膵臓癌、大腸癌、胆嚢癌、胆道癌、胃癌であってもよいが、これらに限定されない。
本発明の一実施態様として、前記固形癌は進行性固形癌、再発性固形癌または転移性固形癌であってもよい。
本発明の一実施態様として、固形癌が卵巣癌である場合、進行性卵巣癌、再発性卵巣癌、高度漿液性卵巣癌(卵管癌または原発性腹膜癌を含む)であってもよく、原発癌が卵巣癌である転移癌の場合、乳癌、前立腺癌、膵臓癌、大腸癌、胆嚢癌、胆道癌、胃癌、肝癌、肺癌であってもよいが、これらに限定されない。
本発明の一実施態様として、前記6-{4-[(5-オキソ-1,2,3,4,5,6-ヘキサヒドロベンゾ[h][1,6]ナフチリジン-8-イル)メチル]ピペラジン-1-イル}ニコチノニトリルの薬学的に許容される塩は、クエン酸塩であってもよい。
また、本発明は
PARP阻害剤に抵抗性を有する固形癌患者治療用6-{4-[(5-オキソ-1,2,3,4,5,6-ヘキサヒドロベンゾ[h][1,6]ナフチリジン-8-イル)メチル]ピペラジン-1-イル}ニコチノニトリル又はその薬学的に許容される塩を提供する。
また、本発明は
6-{4-[(5-オキソ-1,2,3,4,5,6-ヘキサヒドロベンゾ[h][1,6]ナフチリジン-8-イル)メチル]ピペラジン-1-イル}ニコチノニトリル又はその薬学的に許容される塩を有効量で投与することにより、PARP阻害剤に抵抗性を有する固形癌患者を治療する方法を提供する。
また、本発明は
PARP阻害剤に抵抗性を有する固形癌患者の治療用薬剤の製造のための6-{4-[(5-オキソ-1,2,3,4,5,6-ヘキサヒドロベンゾ[h][1,6]ナフチリジン-8-イル)メチル]ピペラジン-1-イル}ニコチノニトリル又はその薬学的に許容される塩の用途を提供する。
本発明による6-{4-[(5-オキソ-1,2,3,4,5,6-ヘキサヒドロベンゾ[h][1,6]ナフチリジン-8-イル)メチル]ピペラジン-1-イル}ニコチノニトリル又はその薬学的に許容される塩を含む薬学的組成物は、PARP阻害剤に抵抗性を有する固形癌患者において腫瘍のサイズを効果的に縮小させることができるので、PARP阻害剤に抵抗性を有する固形癌患者の治療に有用である。
本発明の化学式1のクエン酸塩化合物の抗癌効果の分析結果(実施例2)を示すグラフである。 本発明の化学式1のクエン酸塩化合物のWnt信号伝達経路活性抑制の実験結果(実施例4)を示すグラフである。 Xenograftモデルを用いて評価した本発明の化学式1のクエン酸塩化合物の抗癌効果(実施例5)を示す図である。 Xenograftモデルを用いて評価した本発明の化学式1のクエン酸塩化合物の抗癌効果(実施例6)を示す図である。
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本開示内容の特定の特性を記述し、主張するにあたり、以下の用語は、別途指定されない限り、以下に記載された定義に従って使用される。
本願において、ある態様が「~を含む」という用語と共に記載されていても、「~で構成される」及び/又は「本質的に~で構成される」という用語で記載された他の類似態様もまた提供されると理解されるべきである。
用語「薬学的に許容される」とは、組成、剤形、安全性などについて、薬理学的/毒性学的観点から患者に許容される物質を意味し、「薬学的に許容される担体」とは、活性成分の生物学的活性の効果を阻止しない媒質を指し、投与時に対象体において無毒である。
用語「抵抗性」とは、薬物に対して所望の反応(抗癌効果)を持たない場合を意味する。具体的には、本発明では、PARP阻害剤の標準療法にもかかわらず、最初から薬物が反応しない場合(不応性)、最初は薬物に反応したが、ある時点から再発する場合(最初は癌病変が縮小したが、再発して増大する場合;獲得抵抗性)の全てを包括する意味である。本明細書では「抵抗性」及び「耐性」は区別せずに使用することができる。
用語「患者」又は「対象体」あるいは「個体」とは、本発明の薬学的組成物の投与により疾患が治療される可能性のある病態、例えば、固形癌を患っている有機体を指し、ヒトと動物の両方を含む。対象体としては、哺乳動物(例えば、マウス、猿、馬、牛、豚、犬、猫など)を含むが、これらに限定されず、好ましくはヒトである。また、本発明における「患者」または「対象体」あるいは「個体」は、PARP阻害剤に抵抗性を有する固形癌患者を含む。
用語「BRCA1/2突然変異」とは、BRCA1及び/又はBRCA2の突然変異を意味し、BRCA1及びBRCA2遺伝子の1つ以上の部位で自然に発生する突然変異を意味する。したがって、BRCA1及びBRCA2遺伝子の中から選択されるいずれか一つの遺伝子で突然変異が起こるか、又は両方の遺伝子で突然変異が起こる場合もあり、前記突然変異は各遺伝子の一つの部位又は二つ以上の部位で起こることがある。
前述したように、PARP阻害剤は相同組換え欠損性腫瘍の標的治療剤として臨床で大きな可能性を示したが、先天的または後天的抵抗性獲得率が高いと知られている。その理由については様々な説明があるが、i) ABC輸送体(ABC transporter)の増加による薬物流出(drug efflux)の増加、ii) PAR鎖の活性化、iii) 相同組換え機序に作用するp53などの腫瘍抑制遺伝子の突然変異による相同換え機序の再活性化、iv) 複製フォーク(replication fork)の安定化または保護、及びv) Wnt信号伝達経路の活性化などの機序がある。
前記iii)の機序に関連して、相同組換え過程には様々なタンパク質が関与することが知られており、BRCA1/2突然変異が発見された癌患者においては、p53、ATM、ATR、p51などの相同組換え過程に関与する他のタンパク質の突然変異も同時に発見されているので、これらはPARP阻害剤に対する抵抗性獲得に関連していると説明されている。
PARP阻害剤が相同組換え欠損腫瘍患者に特異的な標的治療剤として作用するものの、これらは抵抗性を獲得しやすい特徴を有するため、PARP阻害剤に抵抗性を有する患者の治療に使用できる新しい抗癌剤の需要が高まっている。
抗癌剤治療の失敗をもたらす原因の一つである多剤耐性(multidrug resistance, MDR)は、抗癌剤治療分野で最近重要な問題として浮上している。このような能力は癌細胞にMDR遺伝子があるためであるが、MDR1(ABCB1)遺伝子はP-糖タンパク質(P-glycoprotein、以下P-gp)という物質を作り出す遺伝子である。P-gpは様々な種類の薬物が細胞膜を通過できるように助け、細胞内から細胞外へ排出させる役割を果たす酵素である。多くの抗癌剤が持続的に患者に投薬されると、薬物の耐性が現れるが、P-gpの過剰発現が耐性機序の一つである。したがって、P-gpの基質となる薬物は、P-gpの過剰発現時にP-gpによって細胞外に排出され、薬効を発揮できなくなる。抗癌剤の使用において、このような多剤耐性が重要な制限要因として作用しており、このような多剤耐性を克服するための研究が多様に行われている。このようにP-gpが過剰発現された癌細胞は、P-gpの機能を抑制させるか、P-gpの基質として用いられない抗癌剤を選択して耐性を克服することができる。
本発明の化学式1のクエン酸塩化合物は、P-gpによる流出率が従来のPARP阻害剤と比較して顕著に低いことが確認される。したがって、PARP阻害剤に抵抗性を有する患者の治療に有用である。
Wnt信号伝達経路は、胚発生、組織恒常性及び様々な疾患と関連している。過活性化された信号伝達はβ-cateninの蓄積を引き起こし、核内に移動して発癌遺伝子の転写及び細胞の成長を促進させる。そこで、Wnt信号経路を遮断する治療剤を開発しようとする試みが行われている。
PARP阻害剤の耐性機序がWnt信号伝達経路と関連しているという最近の研究が報告されている。つまり、PARP阻害剤はWnt信号伝達経路を活性化させ、このようなWnt信号伝達経路の活性化によって耐性が発生することが知られている。したがって、PARP阻害剤において耐性を獲得した癌細胞でWnt信号伝達経路を遮断できる抗癌剤を選択することで、PARP阻害剤の耐性を克服することができる。
本発明の化学式1のクエン酸塩化合物は、Wnt信号伝達経路を抑制することが確認されている。したがって、PARP阻害剤に抵抗性を有する患者の治療に有用である。
本発明では、PARP阻害剤に抵抗性を有する固形癌患者に6-{4-[(5-オキソ-1,2,3,4,5,6-ヘキサヒドロベンゾ[h][1,6]ナフチリジン-8-イル)メチル]ピペラジン-1-イル}ニコチノニトリル(化学式1の化合物)又はその薬学的に許容される塩を適用したとき、固形癌のサイズが小さくなることを見い出した。
このような事実は、例えば、PARP阻害剤(オラパリブ、ルカパリブ、ニラパリブ、またはタラゾパリブ)に抵抗性を有する細胞株またはPARP阻害剤に抵抗性を有する癌(例えば、卵巣癌)患者から分離したプライマリ(primary)細胞(CHA-OVA-13細胞)に化学式1の化合物又はその薬学的に許容される塩を適用する試験を通じて確認することができる。具体的には、BRCA突然変異陽性卵巣癌または乳癌細胞株としてHCC1937、SNU-251、BT474およびSNU-119などの細胞株のうちPARP阻害剤に抵抗性を有する細胞株(例えば、IC50 値が50 uM以上)を選別した後、細胞株に化学式1の化合物又はその薬学的に許容される塩を適用する試験を通じて細胞死が起こることを確認することができる。
また、化学式1の化合物又はその薬学的に許容される塩の適用によって細胞死が起こるPARP阻害剤抵抗性細胞株でpATR、pCHK1、pAKT、タンキラーゼ、切断されたカスパーゼ(caspase) 3、切断されたPARPタンパク質などの細胞死、相同組換え、および信号伝達に関連するタンパク質の発現程度を確認する実験を通じて、前記化学式1の化合物の抗癌活性メカニズム(機序)を確認することができる。
このような機序は、PARP阻害剤抵抗性細胞株を移植した動物モデルおよび実際のPARP阻害剤抵抗性癌患者を対象とした臨床試験結果からも確認できる。
本発明は、下記化学式1で表される化合物である「6-{4-[(5-オキソ-1,2,3,4,5,6-ヘキサヒドロベンゾ[h][1,6]ナフチリジン-8-イル)メチル]ピペラジン-1-イル}ニコチノニトリル」又はその薬学的に許容される塩を含む薬学的組成物をPARP阻害剤に対する抵抗性を有する患者の固形癌治療用として提供する。
<化学式1>
Figure 2024518509000003
前記化学式1の化合物はPARP1/2に阻害能を示すため、相同組換え欠損腫瘍患者の標的治療剤として使用できるだけでなく、タンキラーゼ1/2を同時に阻害できる抗癌剤である。
タンキラーゼは、テロメアの恒常性(homeostasis)、Wnt/β-catenin信号伝達、糖代謝、細胞周期進行(cell cycle progression)に関与する。特に、Wnt/β-cateninは癌関連遺伝子の転写過程に関与しており、消化器癌を含む様々な癌腫でWnt/β-cateninの信号伝達機序が活性化されているため、タンキラーゼを阻害する場合、Wnt/β-cateninの信号伝達の抑制により抗癌効果が得られることが報告されている。実際に、タンキラーゼ阻害剤を抗癌剤として開発しようとする試みが行われてきた。
したがって、前記化学式1の化合物又はその薬学的に許容される塩は、従来の標準治療として使用されるオラパリブと同様にPARP1/2を阻害すると同時に、さらにタンキラーゼも阻害することができるため、オラパリブ等とは同一ではない機序で作用することが分かる。
本発明において、化学式1の薬学的に許容可能な塩は、薬学的に許容可能な遊離酸(free acid)によって形成された酸付加塩が有用である。酸付加塩は、通常の方法、例えば化合物を過剰の酸水溶液に溶解し、この塩を水混和性有機溶媒、例えばメタノール、エタノール、アセトンまたはアセトニトリルを使用して沈殿させることによって製造する。すなわち、同じモル量の化合物及び水中の酸またはアルコール(例えば、グリコールモノメチルエーテル)を加熱し、続いて前記混合物から溶媒を蒸発させて乾燥させるか、または析出した塩を吸引濾過することによって製造することができる。
このとき、遊離酸としては有機酸と無機酸を使用してもよく、無機酸としては塩酸、リン酸、硫酸、硝酸などを使用してもよく、有機酸としてはメタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、マレイン酸(maleic acid)、コハク酸、シュウ酸、安息香酸、酒石酸、フマル酸(fumaric acid)、マンデル酸、プロピオン酸(propionic acid)、クエン酸(citric acid)、乳酸(lactic acid)、グリコール酸(glycollic acid)、グルコン酸(gluconic acid)、ガラクツロン酸、グルタミン酸、グルタル酸(glutaric acid)、グルクロン酸(glucuronic acid)、アスパラギン酸、アスコルビン酸、炭素酸、バニリック酸、ヨウ化水素酸を使用してもよいが、これらに限定されない。
特に、好ましくは化学式1のクエン酸塩が使用されてもよい。
本発明の一実施態様として、前記化学式1の薬学的に許容可能な塩としては、前記化学式1のクエン酸塩の無水物、一水和物、または二水和物を使用してもよく、結晶形または無定形、または結晶形と無定形が混合された形態を使用してもよい。
化学式1の化合物の薬学的に許容可能な塩の様々な形態は、この分野に公知の方法で製造してもよい。
本発明の一実施態様として、前記固形癌患者が抵抗性を有するPARP阻害剤としては、標準治療に用いられる抗癌剤であるオラパリブ、ルカパリブ、ニラパリブ、タラゾパリブ等が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明の一実施態様として、前記PARP阻害剤はオラパリブであってもよい。
本発明の一実施態様として、前記固形癌患者は、BRCA1/2突然変異を有する相同組換え欠損腫瘍患者であってもよい。
本発明の一実施態様として、前記BRCA1/2突然変異は、生殖細胞(germline)突然変異又は体細胞(somatic)突然変異であってもよい。
本発明の一実施態様として、前記患者はBRCA1/2突然変異を有し、初期にはPARP阻害剤に反応を示したが、治療過程で抵抗性を獲得してPARP阻害剤に反応を示さなかったか、癌が再発した患者であってもよい。
本発明の一実施形態として、前記患者はBRCA1/2突然変異を有するが、PARP阻害剤に反応を示さなかった患者であってもよい。
本発明の一実施態様として、前記患者は、BRCA1/2突然変異を持たず、従来にPARP阻害剤に反応を示さなかったか、癌が再発した患者であってもよい。
本発明の一実施形態として、前記固形癌は、進行性固形癌、再発性固形癌または転移性固形癌であってもよい。
本発明の一実施態様として、前記固形癌は、乳癌、前立腺癌、膵臓癌、卵巣癌、進行性卵巣癌、高度漿液性卵巣癌(卵管癌または原発性腹膜癌を含む)、原発癌である卵巣癌から転移した転移癌、乳癌、前立腺癌、膵臓癌であってもよいが、これらに限定されない。
本発明の一実施態様として、前記固形癌は、卵巣癌であってもよく、原発癌である卵巣癌から転移した癌であってもよい。
本発明による薬学的組成物は、1つ以上の薬学的に許容される担体または1つ以上の賦形剤及び/又は希釈剤をさらに含んでもよい。
薬学的に許容される担体の例としては、固形物及び/又は液相物、例えば、エタノール、グリセロール、水などが含まれるが、これらに限定されない。本発明の薬学的組成物中の担体の量は、組成物の総重量を基準として、約5~約99重量%の範囲であってもよい。薬学的に許容される賦形剤及び希釈剤の種類には、非毒性の相溶性充填剤、結合剤、崩壊剤、緩衝剤、防腐剤、湿潤剤、増量剤、酸化防止剤、潤滑剤、香味剤、増粘剤、着色剤、界面活性剤、乳化剤、懸濁剤などを含んでもよいが、これらに限定されない。これらの賦形剤及び希釈剤としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、澱粉、アカシアゴム、アルギン酸、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、微結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、水、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、タルク、ステアリン酸マグネシウム及び鉱物油等が挙げられるが、これらに限定されず、他の薬学的に許容可能な全ての担体、賦形剤及び希釈剤が使用できることは当業者にとって自明である。
本発明の化合物またはその塩を含む薬学的組成物は、それぞれ通常の方法に従って、錠剤、酸剤、顆粒剤、丸剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、内服液剤、乳剤、シロップなどの経口型剤形、外用剤、坐剤または滅菌注射用液の形で剤形化して使用されてもよい。
本発明による薬学的組成物は、無菌注射用水性または油性懸濁液としての滅菌注射用製剤の形態であってもよい。この懸濁液は、適した分散剤または湿潤剤(例えば、ツイン80)および懸濁剤を使用して、この分野に公知の技術に従って剤形化してもよい。前記滅菌注射用製剤は、無毒の非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の滅菌注射溶液または懸濁液(例えば、1,3-ブタンジオール中の溶液)であってもよい。許容可能なビヒクル(媒体)および溶媒としては、マンニトール、水、リンゲル溶液または等張性塩化ナトリウム溶液などが挙げられる。さらに、滅菌不揮発性油は、通常、溶媒または懸濁化媒質として使用されてもよい。この目的のために、合成モノまたはジグリセリドを含む、刺激性の低い如何なる不揮発性油を使用してもよい。オレイン酸およびそのグリセリド誘導体などの脂肪酸が薬学的に許容される天然油(例えば、オリーブ油またはヒマシ油)、特にそれらのポリオキシエチル化されたものと同様に、注射製剤に有用である。
本発明による薬学的組成物は、これらに限定されないが、カプセル、錠剤および水性懸濁液および溶液を含み、経口的に許容される如何なる形態で経口投与されてもよい。
本発明の薬学的組成物の非経口投与用組成物は、直腸投与のための坐剤または注射剤の形で製造してもよい。坐剤組成物の場合、本発明の化合物を、室温では固形であるが直腸温度では液相である適切な非刺激性賦形剤と混合して調製してもよい。このような物質としては、これらに限定されないが、ココアバター、蜜蝋およびポリエチレングリコールが含まれてもよい。
注射剤組成物の場合、通常の注射剤用賦形剤に本発明の化合物を有効成分として含んでもよく、投与経路は静脈注射、筋肉注射、皮下注射などを用いてもよいが、これらに限定されない。
前記新規化合物は、本発明の薬学的組成物に治療学的有効量または予防学的有効量で含有される。本発明による化合物の好ましい投与量は、患者の状態および体重、疾患の重症度、薬物形態、投与経路および期間によって異なるが、当業者によって適宜選択されてもよい。しかし、望ましい効果のために、本発明の化学式1の化合物又はその薬学的に許容される塩は、0.0001~1000mg、0.01~500mg、0.1~300mg、1~200mg、または50~200mgの量を1日1回乃至数回に分けて投与してもよい。本発明の組成物のうち、前記化学式1の化合物は、全体の組成物総重量に対して0.0001~50重量%の含量で配合されてもよい。
本発明の前記薬学的組成物は、前記化学式1で表される化合物、その光学異性体、そのラセミ体又はその薬学的に許容可能な塩の他に、同一または類似の薬効を示す有効成分を1種以上さらに含んでもよい。
また、本発明は、PARP阻害剤に抵抗性を有する固形癌の予防又は治療用薬剤の製造のための前記化学式1又はその薬学的に許容される塩の用途を提供する。
薬剤の製造のための前記化学式1で表される化合物又はその薬学的に許容される塩は、薬学的に許容される補助剤、希釈剤、担体などと混合してもよく、その他の活性製剤と一緒に複合製剤として製造することで、相乗作用を得られる。
さらに、本発明は、前記化学式1又はその薬学的に許容される塩の有効量を、ヒトを含む哺乳類に投与することにより、PARP阻害剤に抵抗性を有する固形癌を予防又は治療する方法を提供する。
本発明の予防又は治療方法は、前記化学式1で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を投与することにより、症状の発現前に疾患を治療するだけでなく、その症状を阻害または回避することも含む。疾患の管理において、特定の活性成分の予防的または治療学的用量は、疾患または状態の性質(nature)と重症度、および活性成分が投与される経路によって異なる。容量及び投与の頻度は、個々の患者の年齢、体重および反応に応じて異なる。適切な用法用量は、これらの因子を当然考慮する当業者により容易に選択できる。さらに、本発明の予防又は治療方法は、前記化学式1で表される化合物と共に、疾患の治療に役立つ追加の活性製剤の治療学的有効量の投与をさらに含んでもよく、追加の活性製剤は、前記化学式1の化合物又はその薬学的に許容される塩と共に相乗効果または相加効果をもたらす。
本発明の薬学的組成物、用途、治療方法において言及された事項は、互いに矛盾しない限り同一に適用される。
本発明の薬学的組成物は、説明書などを含むキットの形で提供してもよい。
別途示さない限り、本明細書及び特許請求の範囲に使用されるすべての数字は、言及有無にかかわらず、すべての場合において「約」という用語で修飾できるものと理解されるべきである。また、本明細書及び特許請求の範囲に使用される精密な数値は、本開示内容の追加の実施態様を形成するものと理解されるべきである。実施例に開示された数値の精度を保証するよう努めたが、測定されたすべての数値は、それぞれの測定手法で実測された標準偏差から生じる一定の誤差値を内在的に含む可能性がある。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。これらの実施例は、あくまでも本発明をより具体的に説明するためのものであり、本発明の要旨に従い、本発明の範囲がこれらの実施例によって制限されないことは、当業者にとって自明である。
本発明において、化学式1のクエン酸塩は、この分野に公知の方法または韓国特許出願第10-2021-0064416号に開示された方法又は前記出願を基礎とした優先権主張出願として本発明と同日付で出願された出願に開示された方法により製造してもよい。例えば、化学式1のクエン酸塩の製造方法は次の通りである。
製造例1:6-{4-[(5-オキソ-1,2,3,4,5,6-ヘキサヒドロベンゾ[h][1,6]ナフチリジン-8-イル)メチル]ピペラジン-1-イル}ニコチノニトリルクエン酸塩(化学式1のクエン酸塩)の製造
6-{4-[(5-オキソ-1,2,3,4,5,6-ヘキサヒドロベンゾ[h][1,6]ナフチリジン-8-イル)メチル]ピペラジン-1-イル}ニコチノニトリル(式1の化合物、7.34kg、18.32mol)にメタノール(25.7L)、精製水(25.7L)を加えた。クエン酸(5.28kg、27.49mol)をメタノールと精製水の1:1混合溶液(22L)に溶解した後、添加した。15~25℃で30分攪拌した後、60℃に昇温し、60~70℃で2時間攪拌した。常温に冷却後、濾過して化学式1のクエン酸塩一水和物(10.7kg、95.8%)を得た。
前記化学式1のクエン酸塩一水和物(500g, 0.82mol)にエタノール(2.5L)、アセトン(2.5L)、イソプロパノール(2.5L)を加え、精製水(20mL)を加えた。55℃に昇温後、55~75℃で4時間攪拌した。25℃以下に冷却後、30分間攪拌した。生成した固体を濾過して、化学式1のクエン酸塩(470g、収率96.7%)無水物を得た。
実施例1:化学式1の抗癌効果の分析(in vitro実験)
化学式1の化合物である6-{4-[(5-オキソ-1,2,3,4,5,6-ヘキサヒドロベンゾ[h][1,6]ナフチリジン-8-イル)メチル]ピペラジン-1-イル}ニコチノニトリル)クエン酸塩の相同組換え欠損腫瘍における抗癌効果を分析するために、様々な細胞株を用いた細胞分裂解析を行った。
本分析法に使用した細胞株としては、BRCA突然変異陽性卵巣癌または乳癌細胞株としてHCC1937、SNU-251、BT474及びSNU-119細胞株を使用し、BRCA突然変異陽性卵巣癌のプライマリ(primary)細胞として、実際のBRCA1突然変異陽性卵巣癌患者から分離したCHA-OVA-13細胞(オラパリブに獲得耐性を示す卵巣癌プライマリ細胞(primary cell))を使用した。
まず、それぞれの細胞がオラパリブに耐性を持つ細胞株であるかどうかを、IC50を測定して確認する。この時、オラパリブに対するIC50が50uM以上の細胞株は本研究に適したPARP阻害剤耐性細胞株として選択する。
前記オラパリブ耐性細胞株に様々なPARP阻害剤を用いて以下の実験を行う。具体的には、それぞれの細胞を培養培地に懸濁し、96 ウェルプレート(well plate)に分注した後、5% CO2、37℃の条件で24時間培養した後、オラパリブ、ニラパリブ、タラゾパリブ及び化学式1のクエン酸塩を用量依存的に投与して72時間後にMTT試薬を入れ、3時間後にstop buffer(10% SDS)を入れた。2~4時間反応後、595nmで吸光度を測定し、各薬剤が細胞成長を50%抑制した濃度でIC50値を算出する。
同時に、それぞれの薬剤が投与された細胞の細胞死機序及び抗癌活性メカニズムを分子レベルで確認するために、pATR、pCHK1、pAKT、タンキラーゼ、切断されたカスパーゼ3、切断されたPARPタンパク質などの細胞死に関連するタンパク質の量をイムノブロット(Immunoblot)法で分析する。
実施例2:抗癌効果の分析(in vitro実験)
化学式1の化合物である(6-{4-[(5-オキソ-1,2,3,4,5,6-ヘキサヒドロベンゾ[h][1,6]ナフチリジン-8-イル)メチル]ピペラジン-1-イル}ニコチノニトリルクエン酸塩のBRCA正常型(Wild type)および変異型(Mutation type)細胞に対する抗癌効果を分析するために、様々な細胞株を用いた細胞分裂分析を行った。
(1) 実験方法
本分析法では、それぞれ正常型(wild type)BRCA卵巣癌細胞株である OVCAR-3, OVCAR-5, SKOV3, NCI/ADR-RES, A2780. A2780 CR(カルボプラチン抵抗性誘発細胞株)及び OVCA433R(オラパリブ耐性細胞株)と変異型(mutation type)BRCA1卵巣癌細胞株である SNU-251 を使用した。前記該細胞株を37℃ 5% CO2 の条件下で培養液(RPMI-1640 + 10% 熱失活化(heat-inactivated) FBS + 1% 抗真菌抗生剤(antibiotic-antimycotic))で培養した後、細胞培養皿から取り出し、6ウェルプレートで一晩培養して細胞を付着させた。化学式1のクエン酸塩化合物、オラパリブ及びニラパリブをそれぞれ高濃度から順次希釈して様々な濃度を処理し、残りの空のウェル(well)には対照群(vehicle control)を処理した。その後14日にクリスタルバイオレット(crystal violet)で処理して生きた細胞のコロニー(colony)を染色した。PBSで洗浄し、室温で十分に乾燥した後、染色されたコロニーの数を数え、顕微鏡と肉眼を利用して記録した。IC50値の算出は、対照群(vehicle control)を100%と仮定した時、相対的な実験群のコロニー数を%に換算してコロニーの形成を50%抑制できる濃度(IC50 : an inhibitory concentration to achieve 50% colony formation inhibition)を基準とした。
(2) 実験結果
前記実験結果を下記表1及び図1に示す。
前記表1及び図1のグラフに示すように、化学式1のクエン酸塩化合物は、BRCAの突然変異の有無にかかわらず、オラパリブやニラパリブより顕著に低い濃度でも癌細胞の成長を抑制することが分かる。特に、薬物排出ポンプ(drug efflux pump)が過剰発現して薬物抵抗性を示すNCI/ADR-RES細胞株やカルボプラチン(carboplatin)抵抗性を誘発したA2780-CR細胞株で、他のPARP阻害剤と比較して顕著に低い濃度で効果的に癌の成長を抑制した。
実施例3:化学式1のクエン酸塩化合物のP-gpによる流出率の評価
P-糖タンパク質(P-gp)は、様々な薬物の吸収と流出を決定する薬物輸送体の一つである。これらの薬物の吸収と流出過程は、血漿および組織における薬物濃度と最終的に薬物の最終効果に影響を及ぼす。
P-gp基質特異性の大きい化合物は、多剤耐性細胞で薬物蓄積の減少の原因となり、しばしば抗癌剤に対する耐性発達を媒介することが知られている。PARP阻害剤として知られているオラパリブ、ルカパリブ、ニラパリブ、タラゾパリブなどは、いずれもP-gp基質特異性が大きい化合物として知られている。
本実験において、本発明者らはP-gpにおける化学式1のクエン酸塩化合物の流出率(efflux ratio)と代表的なPARP阻害剤であるオラパリブの流出率を比較評価することにより、化学式1のクエン酸塩化合物がPARP阻害剤抵抗性を有する癌治療において優れた効果を示すメカニズムを明らかにしようとした。
(1) 実験方法
化学式1のクエン酸塩化合物及びオラパリブ(AZD-2281)の流出率(efflux ratio)を測定するために透過性試験(permeability study)を行った。24-ウェルプレート(24-well plate)内の直径6.5mmのトランスウェルインサート(transwell insert)に各インサート当たりCaCO2 細胞が5Х104個/wellの個数となる培養液200μLを上層部(apical side)に分注した。ウェルプレートの基底部(basolateral side)には800μLの培養液を入れ、インサートの下部が沈むようにした。21日間の培養後、インサートとプレートの培養液を除去し、化学式1のクエン酸塩化合物を培養液にそれぞれ1μM、10μM、および50μMの濃度に希釈して調製し、オラパリブ(AZD-2281)を培養液に10μMの濃度に希釈して調製した後、それぞれの希釈液250μLをトランスウェルインサートの上層部に適用し、薬物を含まない培養液を基底部に800μL入れた(Papp A→B測定)。P-gpポンプの影響を調べるために、同じ濃度の薬物を含む培養液800μLを基底部に適用し、薬物を含まない培養液をインサートの上層部に入れた(Papp B→A測定)。定められた時間である0、30、60、120、180分に各上層部または基底側部から100μLずつ採取したサンプルを分析した。
(2) 実験結果
実験結果を下表2に示す。
注) A:細胞上層部、B:細胞基底部
前記表2で確認されるように、化学式1のクエン酸塩の流出率(efflux rate)は、P-gp基質のPARP阻害剤であるオラパリブと比較して約1/10レベルであることが確認された。
(3) 実験結果の評価
前記実験結果から、本発明の化学式1のクエン酸塩化合物は、P-糖タンパク質(P-gp)基質ではないことが分かる。
このような作用メカニズムにより、化学式1のクエン酸塩化合物がP-糖タンパク質(P-gp)基質として知られているPARP阻害剤であるオラパリブ、ルカパリブ、ニラパリブ、タラゾパリブ等と異なり、多剤耐性を克服し、より優れた抗癌効果を発揮することができると考えられる。
具体的には、前記実施例2において、化学式1のクエン酸塩化合物は、様々な種類の正常型(wild type)BRCA卵巣癌細胞株及び変異型(mutation type)BRCA卵巣癌細胞株に対して、オラパリブやニラパリブよりも顕著に低い濃度でも癌細胞の成長を抑制したが、このような優れた効果は、P-gpの前記流出率による作用メカニズムも部分的に寄与したと考えられる。特に、前記実施例2の結果によると、薬物排出ポンプ(drug efflux pump)が過剰発現して薬物抵抗性を示すNCI/ADR-RES細胞株において、化学式1のクエン酸塩化合物は、他のPARP阻害剤と比較して顕著に低い濃度で効果的に癌の成長を抑制している。したがって、これらの実験結果は、化学式1の化合物がP-gp基質でないことが優れた抗癌効果に部分的に寄与していることをより明確に説明するものと判断される。
さらに、PARP阻害剤は、先天的又は後天的抵抗性の獲得比率が高いことが知られており、かかる原因を説明する機序として、ABC輸送体(ABC transporter)の増加による薬物流出(drug efflux)増加機序が知られている。
したがって、前記化学式1のクエン酸塩化合物の流出率に関する作用メカニズムは、他のPARP阻害剤であるオラパリブ、ルカパリブ、ニラパリブ、タラゾパリブ等に抵抗性を有する癌の治療に化学式1の化合物が効果的に使用できることを理論的に裏付けるものと判断される。そして、このような論理は、下記実施例4(抗癌効果解析-Xenograftモデル)、実施例5(抗癌効果解析-Xenograftモデル)、および下記実施例6(臨床第1相試験-NOV140201)の実験結果によって明らかに裏付けられている。
結論として、本発明の化学式1のクエン酸塩化合物は、他のPARP阻害剤であるオラパリブ、ルカパリブ、ニラパリブ、タラゾパリブ等と薬物の流出機序において、異なる作用メカニズムで優れた抗癌効果を提供し、これらのPARP阻害剤に対して抵抗性を有する癌に対しても優れた効果を提供する。
実施例4:オラパリブ耐性関連Wnt信号伝達活性抑制による有効性評価
(1)実験方法
卵巣癌細胞株であるPEO1及びオラパリブ耐性を獲得した卵巣癌細胞株であるPEO1-ORでWnt信号伝達活性化度を測定するためにTOP/FOP-flashルシフェラーゼレポーターアッセイ(luciferase reporter assay)を行った。オラパリブ耐性獲得株は、PEO1細胞株を低いオラパリブ濃度(10nM)から順次高濃度である8μM濃度まで上げて生き残った細胞株をPEO1-ORと呼ぶ。TOP/FOP-flashルシフェラーゼレポーターアッセイ(luciferase reporter assay)は、Wntが活性化されると生成されるβ-cateninが核内に移動してTCF/LEFプロモーター部位で結合し、Wntによって影響を受ける遺伝子を転写させる原理を用いて、この遺伝子をルシフェラーゼ(luciferase)で置換させ、非発光性基質がルシフェラーゼ(luciferase)によって転換される発光度を測定してWntの活性化度を測定するものである。TOP-flashはβ-cateninがTCFプロモーターに結合することで、ルシフェラーゼ(luciferase)の転写が起こる実験群プラスミドであり、FOP-flashは、作製したTCFプロモーターに突然変異を引き起こすことで、β-cateninがプロモーターに結合できないトランスフェクション(transfection)対照群プラスミドであり、蛍光の基底レベルを測定するために使用される。
卵巣癌細胞株であるPEO1及びオラパリブ耐性を獲得した卵巣癌細胞株であるPEO1-OR細胞株にTOP-flashまたはFOP-flashプラスミドをトランスフェクション(transfection)させた。トランスフェクションされたPEO1およびPEO1-ORの細胞株をトランスフェクションする72時間、ビヒクル対照群および化学式1のクエン酸塩化合物をそれぞれ400nM、10μM、および50μMで露出させた後、細胞を溶解(lysis)させ、ルシフェラーゼ基質(luciferase substate)を入れた。基質から離れる発光性の程度を、蛍光リーダー機を利用して計測して記録した。
(2) 実験結果
前記実験結果を図2に示す。
図2の左側のグラフに示すように、卵巣癌細胞株であるPEO1とオラパリブ耐性を獲得した卵巣癌細胞株であるPEO1-ORのTOP信号伝達の強度を相対的に比較した結果、オラパリブ耐性を獲得したPEO1-ORの細胞株がそうでない細胞株に比べて5倍高いTOP信号伝達強度を示した。これらの結果は、PEO1-OR細胞株でオラパリブ耐性の獲得によってWnt信号伝達の活性化が起こったことを示す。
また、図2の右側のグラフから、Wntが活性化されているPEO1-OR細胞株に化学式1のクエン酸塩化合物を処理した場合、対照群と比較して化学式1のクエン酸塩化合物の濃度に比例してWnt信号伝達が減少したことが確認できる。
結論として、前記実験から、PEO1細胞株がオラパリブ抵抗性を獲得すると、Wnt信号伝達が増加し(図2の左側のグラフ参照)、この増加した信号伝達は、化学式1のクエン酸塩化合物のタンキラーゼの阻害能により、用量に比例して減少することが分かる(図2の右側のグラフ参照)。
(3) 実験結果の評価
PARP阻害剤の耐性機序がWnt信号伝達経路と関連しているという研究が最近報告されている。つまり、PARP阻害剤による耐性発達の機序としてWnt信号伝達経路が活性化されることが知られている。したがって、PARP阻害剤に耐性を獲得した癌細胞でWnt信号伝達経路を遮断できる抗癌剤を選択することで、PARP阻害剤の耐性を克服することができる。
本発明の化学式1のクエン酸塩化合物は、オラパリブなどの従来のPARP阻害剤とは異なり、PARP及びタンキラーゼ(Tankyrase, TNK)を二重阻害する特徴を有する。すなわち、従来のPARP阻害剤が耐性が発達するに従ってWnt信号伝達経路を活性化することが知られているのに対し、本発明の化学式1のクエン酸塩化合物はTNK抑制作用によりWnt信号伝達を効果的に抑制する。
したがって、これらの事実から、本発明の化学式1のクエン酸塩化合物が、PARP阻害剤に耐性を獲得した癌の治療に効果的に使用できることが分かる。
実施例5:抗癌効果の分析(Xenograftモデル)
化学式1のクエン酸塩化合物が実際にPARP阻害剤に抵抗性を有する固形癌の治療に使用できることを証明するために、BRCA突然変異陽性卵巣癌に由来の細胞を用いたxenograftモデル(model)を作製し、PARP阻害剤(オラパリブ)と化学式1のクエン酸塩化合物の効果を比較した。
(1) 実験方法
PDX-GFTP 1016は、stage IIIC高度漿液性卵巣癌患者のプライマリ組織(primary tissue)に由来の細胞であって、TP53、BRCA2突然変異を有する。この癌細胞の追跡を容易にするために緑色蛍光タンパク質/ルシフェラーゼ(green fluorescent protein/luciferase)を発現させ(PDX-1016 GTFP 1016 GFP/luc)、嚢内(intrabursal)間の右卵巣に手術により注入し、薬物投与前4週間、癌細胞の定着有無をモニタリングした。4週間後、50mg/Kgのオラパリブを28日間投与したマウスにおいて癌細胞が再び増殖する細胞をオラパリブ抵抗性PDX-1016 GTFP 1016 GFP/luc(Ola-R-GTFP-1O16)と定義した。
前記方法で確立されたオラパリブ抵抗性PDXであるOla-R-GTFP-1O16の細胞を、図3のAに模式図で示したように、1x106細胞数/ml濃度で手術により原癌と同じ場所である右卵巣の上部の滑液包(bursa)に注入し、4週間安定化させた。
前記4週間の安定化後、in vivo flux imaging(IVIS spectrum in vivo imaging system, PerkinElmer)を通じて癌が発現するGFP/ルシフェラーゼ(Luciferase)の光の強度などの画像データを収集したflux(フォトン/秒(photons per second))に基づいて癌の分布及び癌の成長を観察した。
この時、in vivo flux imagingを用いて癌の成長速度が類似した移植マウスをランダムに対照群(vehicle処理群)及び化学式1のクエン酸塩化合物25mg/kg処理群に分けて毎日1回経口投与を行い、1週間ごとにfluxの変化を記録し、4週間後にマウスを犠牲にして腹水の容積、腹水内細胞の容積及び癌のリンパへの転移数などを測定して抗癌能を測定した。
(2) 実験結果
前記実験結果は、図3のB~Eに示す。
図3のB画像で腹部の蛍光が強いスペクトルの色で見られるものは、腹水で癌の増殖が活発に起こっていることを示す。つまり、図3のB画像は、対照群(vehicle処理群)と比較して、化学式1のクエン酸塩化合物処理群において癌の増殖が効果的に抑制されていることを示している。
図3のCのグラフには、薬物処理2週後から生体内蛍光を記録したものを基底(basal)レベルの基準にして、相対的な蛍光の変化推移を薬物処理4週まで移植マウスの腹部部分でin vivo imagingを通じて観察した結果を示した。
図3のCのグラフから、化学式1のクエン酸塩化合物処理群において対照群(vehicle処理群)より癌細胞の成長が顕著に抑制されることが分かる。
化学式1のクエン酸塩化合物の処理が癌の成長を対照群より効果的に抑制する相関関係があることを裏付けるデータとして、癌の結節生成数および腹水の細胞数を計測し、癌の転移能について判断した。
図3のDに示すように、癌の結節生成能は、化学式1のクエン酸塩化合物処理群において対照群より顕著に減少した。また、図3のEに示すように、腹水に生成された全体の細胞数も化学式1のクエン酸塩化合物処理群において対照群より顕著に減少した。
これらの結果から、化学式1のクエン酸塩化合物処理群は、対照群より効果的に癌の生成および転移能を抑制することが確認できる。
実施例6:抗癌効果の分析(xenograftモデル)
(1) 実験方法
CHA-OVA-13は、オラパリブ獲得耐性を示す卵巣癌患者の腹水細胞から確立したプライマリ細胞(primary cell)で、BRCA1突然変異を有する。このCHA-OVA-13をNOD/SCIDマウスに注入して原癌のサイズが成長するようにした後、一定サイズに成長したときに癌を摘出し、小さく切った後、再びヌードマウス(nude mice)の皮下層に腫瘍を移植してマウスモデルを確立した。腫瘍のサイズが80mm3に達したところで、類似なサイズの腫瘍を持つマウスを選択し、ランダムにオラパリブ処理群及び化学式1の化合物のクエン酸塩処理群に分けた。
その後、オラパリブ処理群の場合は50mg/kgを1日2回経口投与し、化学式1の化合物のクエン酸塩処理群は50mg/kgを1日1回経口投与し、2日間隔で腫瘍のサイズをキャリバーで縦横を計り記録した。腫瘍容積は下記数式により計算した。
オラパリブ処理群及び化学式1のクエン酸塩化合物処理群は18日間腫瘍のサイズを観察し、前記オラパリブ処理群は10日間の薬物処理後、2つのグループにランダムに半分に分け、一方のグループは8日間オラパリブを同一に継続して投与し(オラパリブ処理群)、残りのグループは化学式1のクエン酸塩化合物に薬物を変えて8日間50mg/kgで1日1回経口投与し(オラパリブ-化学式1のクエン酸塩化合物交替処理群)、腫瘍のサイズに与える影響を観察した。
(2) 実験結果
前記実験結果を図4に示す。図4(b)のグラフに示すように、総18日間の観察で、化学式1のクエン酸塩化合物処理群の腫瘍形成は、オラパリブ処理群と比較して明らかに遅くなったことが確認できる。
また、オラパリブ処理群を半分に分けて10日時点でオラパリブを化学式1のクエン酸塩化合物に置き換えて処理したオラパリブ-化学式1のクエン酸塩化合物交替処理群の場合、腫瘍の成長速度が単一オラパリブ処理群に比べて徐々に遅くなり、13日頃から化学式1のクエン酸塩化合物単一処理群と類似な腫瘍成長抑制効果を示した。
この結果は、オラパリブに抵抗性を示す患者のプライマリ細胞(primary cell) xenograftにオラパリブを継続して処理する場合、腫瘍の成長が抑制されないが、化学式1のクエン酸塩化合物を処理すると腫瘍の成長が顕著に遅くなることを示す。
すなわち、これらの結果から、化学式1のクエン酸塩化合物は、オラパリブ抵抗性癌組織の成長抑制に優れた効果を提供することが確認できる。
実施例7:臨床第1相試験
化学式1の化合物6-{4-[(5-オキソ-1,2,3,4,5,6-ヘキサヒドロベンゾ[h][1,6]ナフチリジン-8-イル)メチル]ピペラジン-1-イル}ニコチノニトリルのクエン酸塩の安定性、薬剤耐性及び薬物動態・薬力学的特性と有効性を評価するための臨床第1相試験を実施した。患者群は、満19歳以上の組織学的(histologically)または細胞学的(cytologically)に確診された進行性固形癌患者であり、標準治療法に対して不応するか、標準治療法を受けることができない状態である。予想生存期間が12週以上であり、一般的な血液検査などで正常な血液学的機能および肝機能が確認された患者を選別した。
選別された患者は、試験機関および食品医薬品安全処の規定に従い、書面による同意を提供した。22人の患者が用量漸増コホートに登録し、40人の患者が用量拡大コホート(6-{4-[(5-オキソ-1,2,3,4,5,6-ヘキサヒドロベンゾ[h][1,6]ナフチリジン-8-イル)メチル]ピペラジン-1-イル}ニコチノニトリルのクエン酸塩)に登録した。用量拡大コホートは50mg/day、100mg/day、150mg/day、200mg/dayを投与された。
すべてのコホートの患者は、規定に従って安全性評価、一定周期ごとの採血、生検によるバイオマーカー分析(腫瘍検体)、遺伝子分析(採血されたPBMCおよび腫瘍検体)、腫瘍反応(6週間ごと)を評価した。また、投与終了後も試験機関及び食品医薬品安全処の規定に従って追跡観察した。
用量拡大コホート(150mg/day)に登録された患者のうち、64歳の女性患者は、初回診断名は転移性卵巣癌(ステージ3)で、外科的処置により卵巣等を含む固形癌組織が広範囲に切除された状態で、germline BRCA1遺伝子突然変異が確認された相同組換え欠損腫瘍患者である。
前記患者はゲムシタビンを始め、シスプラチン、パクリタキセルなど様々な抗癌剤にほとんど反応を示さず、特にオラパリブの投与直後に残存する癌組織(Target lesion)のサイズの拡大及び新たな病変(progressive disease)が観察され、オラパリブに抵抗性を有すると判断し、その後シスプラチン系であるネオプラチンを2ヶ月間投与したが不応となった。その後、本臨床試験に登録し、化学式1のクエン酸塩を150mg/day単独で服用を開始し、服用中の定期的なCT検査により病変サイズ(肝に転移した固形癌)がベースライン(baseline)比30%以上縮小することを確認した。
実施例8:臨床第2相試験
化学式1の化合物(6-{4-[(5-オキソ-1,2,3,4,5,6-ヘキサヒドロベンゾ[h][1,6]ナフチリジン-8-イル)メチル]ピペラジン-1-イル}ニコチノニトリル)のクエン酸塩のPARP阻害剤に抵抗性を有する患者の治療に使用できるか否かを評価するための臨床第2相試験を実施する。患者群は、満19歳以上の組織学的(histologically)または細胞学的(cytologically)に確診された固形癌患者であり、腫瘍の相同組換え欠損(HRD、homologous recombination deficiency)陽性が確認された者である。具体的には、高悪性度(Grade 2又は3)の漿液性上皮性卵巣癌、卵管癌又は原発性腹膜癌の患者であり、本臨床試験の参加前に腫瘍に対して2次 (2lines)以上の抗癌剤治療を受け、再発または進行した患者である。
前記抗癌剤治療とは、具体的には、ゲムシタビン、ドキソルビシン、トポテカン、カルボプラチン、オキサリプラチン、シスプラチン、ベバシズマブまたはPARP阻害剤等のいずれかまたは組み合わせの治療を意味する。
被験者として予想生存期間が12週以上であり、一般的な血液検査などで正常な血液学的機能、腎臓機能および肝機能が確認された患者を選別する。
選別された患者は、試験機関および食品医薬品安全処の規定に従って書面による同意を提供する。前記患者には、以前の治療歴で白金ベースの治療剤に敏感性を示す者、または白金ベースの治療剤に敏感性を示したが、オラパリブ、ニラパリブなどのような従来のPARP阻害剤による治療に失敗した者が含まれ、患者は約60人を登録するが、変動可能である。
化学式1のクエン酸塩の投与用量は100mg/dayで投与し、場合により用量調節が可能である。
すべてのコホートの患者は、規定に従い、安全性の評価、一定周期ごとの採血、遺伝子分析(採血されたPBMC及び腫瘍検体)及び腫瘍反応(8週間ごと)を評価する。また、投与終了後も試験機関および食品医薬品安全処の規定に従い、追跡観察する。
本臨床第2相試験により、有効性、安全性、薬剤耐性、PKなどを測定・評価することができる。
前記有効性は、「従来のPARP阻害剤などによる治療に失敗したHRD突然変異陽性腫瘍患者」に対して「本発明の化学式1のクエン酸塩」が有する治療効果を含み、より具体的には、本臨床第2相試験により、従来のPARP阻害剤などによる治療に失敗した患者において、固形癌のサイズを効果的に縮小することができるだろう。

Claims (16)

  1. 6-{4-[(5-オキソ-1,2,3,4,5,6-ヘキサヒドロベンゾ[h][1,6]ナフチリジン-8-イル)メチル]ピペラジン-1-イル}ニコチノニトリル又はその薬学的に許容可能な塩を含む、PARP阻害剤に抵抗性を有する固形癌患者の癌治療又は予防用薬学的組成物。
  2. 前記固形癌患者は、相同組換え欠損(Homologous Recombination Deficiency:HRD)腫瘍を有する、請求項1に記載の薬学的組成物。
  3. 前記固形癌患者は、BRCA1/2突然変異を有する、請求項2に記載の薬学的組成物。
  4. 前記BRCA1/2突然変異は、生殖細胞突然変異(germline mutation)である、請求項3に記載の薬学的組成物。
  5. 前記BRCA1/2突然変異は、体細胞突然変異(somatic mutation)である、請求項3に記載の薬学的組成物。
  6. 前記固形癌患者は、BRCA1/2突然変異を持たない、請求項1に記載の薬学的組成物。
  7. 前記PARP阻害剤は、オラパリブ、ルカパリブ、ニラパリブ、及びタラゾパリブから選択される1つ以上である、請求項1に記載の薬学的組成物。
  8. 前記PARP阻害剤は、オラパリブである、請求項7に記載の薬学的組成物。
  9. 前記固形癌は、乳癌、前立腺癌、膵臓癌、卵巣癌、進行性卵巣癌、高度漿液性卵巣癌(卵管癌又は原発性腹膜癌を含む)、原発癌である卵巣癌から転移した転移癌から選択される1つ以上である、請求項1に記載の薬学的組成物。
  10. 前記固形癌は、卵巣癌である、請求項9に記載の薬学的組成物。
  11. 前記固形癌は、原発癌である卵巣癌から転移した転移癌である、請求項9に記載の薬学的組成物。
  12. 前記6-{4-[(5-オキソ-1,2,3,4,5,6-ヘキサヒドロベンゾ[h][1,6]ナフチリジン-8-イル)メチル]ピペラジン-1-イル}ニコチノニトリルの薬学的に許容される塩はクエン酸塩である、請求項1~11のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
  13. 前記薬学的組成物は、薬学的に許容される担体または賦形剤をさらに含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
  14. PARP阻害剤に抵抗性を有する固形癌患者の治療用6-{4-[(5-オキソ-1,2,3,4,5,6-ヘキサヒドロベンゾ[h][1,6]ナフチリジン-8-イル)メチル]ピペラジン-1-イル}ニコチノニトリル又はその薬学的に許容される塩。
  15. 6-{4-[(5-オキソ-1,2,3,4,5,6-ヘキサヒドロベンゾ[h][1,6]ナフチリジン-8-イル)メチル]ピペラジン-1-イル}ニコチノニトリル又はその薬学的に許容される塩を有効量で投与することにより、PARP阻害剤に抵抗性を有する固形癌患者を治療する方法。
  16. PARP阻害剤に抵抗性を有する固形癌患者の治療用薬剤製造のための6-{4-[(5-オキソ-1,2,3,4,5,6-ヘキサヒドロベンゾ[h][1,6]ナフチリジン-8-イル)メチル]ピペラジン-1-イル}ニコチノニトリル又はその薬学的に許容される塩の用途。

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