JP2024510873A - メガネレンズを着色するための方法及びレンズホルダ - Google Patents

メガネレンズを着色するための方法及びレンズホルダ Download PDF

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Abstract

本発明は、メガネレンズ(60)を着色する方法を提供している。方法は、メガネレンズの表面の予め選択された部分(62)上に表面処理を選択的に実行するステップと、メガネレンズに着色溶液(70)を提供するステップと、を有する。更には、メガネレンズ(60)を着色するレンズホルダ(10)が提供され、これは、予め定義された位置においてメガネレンズ(60)を保持するのに適したレセプションユニット(20)と、予め定義された位置においてレセプションユニット(20)によって保持された際にメガネレンズの表面の一部分(63)をマスキングするのに適したマスキングユニット(30)と、を有する。

Description

本発明は、メガネレンズの着色に関する。詳しくは、本発明は、メガネレンズの表面を選択的に処理することによってメガネレンズを着色する方法、これから得られる着色されたメガネレンズ、及びこの方法に使用されるレンズホルダに関する。また、これに加えて、本発明は、レンズホルダ、対応するコンピュータプログラム、及びコンピュータ可読データ有する着色システム、並びに、前記方法を実行するためのキットを対象としている。
メガネレンズの着色は、医療及び安全の理由を含む多くの理由から必要とされている。表面材料自体又は表面上において適用される被覆によってもたらされる表面の特性に起因して、単純な表面印刷は、しばしば、必要とされる品質、特に望ましい分解能及び耐久性、を有する着色を実現してはいない。
更には、マーク、数値、文字、単純な形状、などを表すパターンなどのメガネレンズの表面の選択された部分のみを効果的に着色するニーズも存在している。サングラスの場合には、べた一色に着色されたレンズが最も一般的に使用されているが、近年においては、更なる利点を提供する部分的な着色又は勾配を有する着色が益々重要になっている。
従来、メガネレンズの選択的な着色は、これまでのところ、染料を有する槽内においてレンズを浸漬することによって着色されることが望ましくないレンズ表面の部分をカバーするように接着テープ又は薄いフィルムなどのマスキング手段を設計及び適用することにより、実現されている。但し、この方法は、再現性及び均一性の関係において欠点を有する。
具体的には、接着テープを使用する従来の方法は、着色槽内へのレンズの浸漬の際に、特にメガネレンズの湾曲した表面(凸及び凹面の両方)上における着色の際に、レンズのマスキングされた部分の下方における望ましくない材料の浸潤という欠点を有する。テープがレンズに手作業で適用されていることから、メガネレンズの湾曲した表面上における従来の方法のこの不良な適用可能性は、テープを表面上に適用する際に形成される皺に起因し得る。更には、その形状がほとんどフラットであるテープを眼鏡レンズの湾曲した表面上に適用しなければならないことから、テープのエッジ上において皺が容易に形成され得る。更には、マスキングされる必要があるメガネレンズの部分が大きいほど、テープとメガネレンズの間の接着が不良なものとなる。これらの皺は、水浸潤をもたらし、且つ、従って、パターンの不鮮明なエッジを有する不均一な着色又は最終的には色汚れに結び付く。具体的には、メガネレンズが大きな曲がりを有する状態においては、従来の方法を使用して良好な品質を有する望ましい着色を得ることが困難であった。
更には、従来の選択的着色方法が提供し得るのは、限られた着色パターンのみであった。例えば、着色パターンを実現するために最も一般に使用されている方法は、型抜きプロセスであり、これによれば、望ましい形態にテープを調製するために、ダイプレス上において接着テープを切断するための型が使用されている。但し、型抜きプロセスは、小さなサイズ又は複雑なパターンを有するパターンの実現を許容してはおらず、その理由は、型抜き又はテープ適用ステップにおいては、小さなサイズのテープが容易に破損し得るからである。これに加えて、小さなサイズのマスキングテープは、着色浸潤が起こりやすい傾向をも有し得る。更には、型抜きされたテープをメガネレンズに適用するステップが手作業で実行されていることから、正確に同じ位置において複数のレンズにテープをアライメントすることは、手を使用することによっては、高精度で容易に反復することができず、従って、レンズエッジ(サイド)に接続されていない形状を有するテープを実現することが困難である。従って、従来の方法は、非効率的であり、且つ、場合によっては、選択的な、複雑な、且つ/又は小さなパターンをメガネレンズ上において着色するのに適してはいない。ゴルフメガネへのスリットの内蔵を対象とした米国特許第4991849号明細書は、ゴルフメガネのシェーディングの際にスリット部分をマスキングすることに言及しているが、これも、上述の同一の問題を伴っている。更に、これは、なんらの具体的なマスキング方法を提供してもいない。
最後に、テープ着色は、ほとんどのケースにおいて、まずは、個々のメガネレンズ上に適用される個々のテープ及びその後の型抜きされるテープの型による実現のための金属製の型の調製を必要としている。また、テープは、着色対象のメガネレンズの数と同じだけの数が必要とされていることから、これは、面倒なプロセスであり、且つ、高度な手作業労働と、レンズにテープをアライメントさせる操作者の巧みさと、を必要としている。更には、接着テープは、使用の後に廃棄されなければならない。更には、レンズ開発の初期ステージにおいて着色されたレンズの単一の又はわずかにいくつかのプロトタイプを製造する際にも、金属製の型を予め製造しておく必要があり、これには、関連する費用及び時間が伴っている。
眼科レンズの着色を改善するために、米国特許第9,677,222B2号明細書は、2つの異なる表面材料を使用することにより、レンズ基材表面の異なる部分の間において基材を選択的に着色する方法を開示している。ここでは、第1の材料によって形成された第1の表面部分及び第2の材料によって形成された第2の表面部分を有する基材が使用されており、この場合に、第1の材料と第2の材料は、異なっている。染料ソースは、加熱により、第1の材料を有する第1の表面部分内にのみ貫通するが、第2の材料を有する第2の表面内には貫通していない。これには、材料の凍結又は軟化温度の間の差が使用されている。但し、異なる表面を有する個々のメガネレンズにフィルムを付与する更なるステップ及び加熱温度のデリケートな調節が必要とされていることから、着色プロセスを改善するニーズが依然として存在している。更には、フィルム付与プロセスに伴って、2つの表面材料のプロパティの間における不十分な差に起因して、高品質の着色を得ることが容易ではない場合もある。
また、薄いフィルムの形態でレンズ基材上においてインクレセプタ層を適用する方式も存在している。日本特許第3075403号公報は、インクジェットプリンタ、熱処理、及び最終的にリンスによる除去を利用して、且つ、最後に水溶解可能ポリマー被覆により、メガネレンズに硬化被覆を適用し且つ硬化被覆上に分散染料を含むインク水性溶液を適用することにより、着色されたプラスチックレンズを製造する方法について記述している。国際公開第2006/079564A1号パンフレットは、多孔性のインクレセプタフィルムを形成する能力を有するインクレセプタ材料の層によって光学レンズの基材を被覆し、多孔性フィルムを形成するためにインクレセプタ材料内に存在している溶剤を蒸発させ、インク溶液がフィルム内において吸収されるような状態において多孔性フィルム上においてインクジェット装置を使用してインク溶液を適用し、且つ、基材が望ましい着色を実現する時点まで光学レンズを加熱し、且つ、次いで、インクレセプタフィルムを除去する、という単純化されたプロセスを提案している。従って、これらの方法の場合には、レンズ基材上において補助層を適用するニーズが存在している。特に、曇りを有していない透明な被覆及び薄いフィルム被覆を得ることが困難であり、且つ、補助層の適用及び適合は、レンズプロパティに悪影響を及ぼし得る。更には、これに関係する必要な更なるプロセスステップも、面倒且つ非効率的であり得る。
欧州特許出願公開第3266598A1号明細書は、最も近接した従来技術として考えられ、且つ、光学アイグラスの製造用のプロセスを開示している。第1のステップにおいて、非処理ゾーン内において表面被覆を除去するために、光学アイグラスの1つのエリアがレーザービームによって処理されている。アイグラス上において描かれる対象のパターン又はパターンの要素を生成するために、レーザービームの運動をプログラミングすることができる。その後に、インクを有するパターンを形成するために、例えば、インクジェット印刷により、インクが非処理ゾーン内において堆積されている。このプロセスにより、インクの保持を許容するプロパティを有する眼科レンズの層に到達するために、インクの接着を防止する表面被覆が局所的に除去されている。不利なことには、この方法は、更なる被覆を有する光学アイグラスに適用され、レーザービーム処理を必要とし、且つ、インクの不十分な接着に起因した損傷が発生し易い。
従って、産業的に効果的且つ単純な方法で且つ高品質を伴って望ましい着色されたパターンを提供し得る新しい選択的な着色方法に対するニーズが存在している。
メガネレンズを選択的に着色する改善された方法、方法によって取得可能な改善された着色されたレンズ、改善されたレンズホルダ、及び改善された着色装置を提供することが本発明の目的である。これに加えて、レンズホルダ、対応するコンピュータプログラム、コンピュータデータを有する着色システム、及び前記方法を実行するためのキットも提供され得る。
本発明者らは、相対的に容易に適用可能且つ再現可能な方式による相対的に洗練された且つ高品質な着色に対する前記ニーズを認識した。従って、一方において、接着テープ着色方法との比較において、本発明は、費用効率性及び柔軟性を有する高品質の着色を有するメガネレンズを提供し、且つ、他方において、着色又は更なる処理のための補助薄膜層を使用した方法との比較において、本発明は、レンズプロパティを劣化されることなしに、高品質を有する着色と共に、容易に適用可能且つ再現可能な方式で着色を可能にしている。
数年間にわたって、表面処理、酸化、ポリマーエッチング、などのような様々な用途のためにプラズマ処理が使用されている。プラズマ処理は、主題材料のタイプ、プラズマ条件、又は使用されるプラズマのタイプに応じて、異なる効果を誘発し得る。例えば、CN105204180号明細書は、メガネレンズの表面上においてプラズマ層を堆積させるためにプラズマ処理をメガネレンズに対して適用しているが、それにも拘わらず、前記方法のなんらの実際的な用途をも提供してはいない。
メガネレンズの表面プロパティを意図的に調節することによってメガネレンズを着色するためにプラズマ処理を使用するという概念に基づいて、本発明者らは、従来技術の欠点に対処し得る本発明に到達した。
本発明の第1の態様によれば、メガネレンズを選択的に着色する方法が提供されている。方法は、(i)メガネレンズの表面の予め選択された部分を選択的にプラズマ処理するステップと、(ii)少なくともプラズマによって処理されていないメガネレンズの表面の部分に着色溶液を適用するステップと、を有する。
本発明の第2の態様によれば、メガネレンズを着色するのに適したレンズホルダが提供されており、これは、予め定義された位置においてメガネレンズを保持するのに適したレセプションユニットと、予め定義された位置においてレセプションユニットによって保持された際にメガネレンズの表面の一部分をマスキングするのに適したマスキングユニットと、を有する。
本発明の第3の態様は、プラズマ処理の際にレンズホルダによって保持されたメガネレンズの表面の一部分をカバーするのに適したメガネレンズの選択的着色用の第2の態様によるレンズホルダの使用である。
第4の態様によれば、着色用のシステム又は装置が提供されており、この場合に、システム又は装置は、第2の態様によるレンズホルダ、プラズマ処理用の装置、及び着色溶液を有する着色槽を有する。
本発明の第5及び第6の態様は、プログラムがコンピュータによって実行された際にコンピュータが本発明の第1の態様による方法のステップを実行するようにする命令を有するコンピュータプログラムと、コンピュータによって実行された際にコンピュータが本発明の第1の態様による方法を実行するようにする命令を有するコンピュータ可読データキャリア又はデータ信号と、を提供している。具体的には、コンピュータプログラムは、コンピュータ可読の一時的ではないデータキャリア上において保存することができる。従って、上述の方法ステップの任意のものは、好ましくはコンピュータプログラムを使用することにより、コンピュータ又はコンピュータネットワークを使用することによって実行することができる。具体的には、コンピュータプログラムは、プラズマ処理装置などのプラズマを処理するのに適した装置に命令を送信することができると共に、装置が相応してプラズマ処理を実行している。例えば、装置は、メガネレンズの予め選択された部分に対してプラズマ処理を実施するようにプログラミングすることができる。更には、コンピュータプログラムは、着色槽又は着色チャンバなどの着色溶液を提供するのに適した装置に命令を送信することができると共に、装置が命令に従って着色溶液をメガネレンズ上に適用している。
更には、本発明の第7の態様は、本発明の第2の態様によるレンズホルダと、本発明の第1の態様の方法によるレンズホルダの使用のための命令と、を有するキットを提供している。
本発明の基本的な概念は、プラズマ処理を経験しなかったメガネレンズの表面が着色されつつ、プラズマ処理に曝露された予め選択された部分が後続の着色ステップにおいて着色されないように、メガネレンズの表面の予め選択された部分を選択的にプラズマ処理することにより、表面を有するメガネレンズを着色する方法を提供するというものである。本発明者らは、プラズマ処理がメガネレンズの表面プロパティを変更することを見出した。プラズマ処理により、メガネレンズの露出した表面は、着色溶液によるその上部における着色が妨げられるような方式で変更され、これにより、メガネレンズに必要とされる表面プロパティが実質的に変更又は損傷されないように、メガネレンズの予め選択された表面の極めて薄い領域のみを変更しつつ、プラズマによって処理されなかったメガネレンズの表面に対する着色溶液の高度に選択的な適用を提供している。
本明細書の全体を通じて、以下の定義が適用される。
メガネレンズは、眼球との接触を伴うことなしに、眼球の前面において着用される眼科レンズであり(DIN ISO 13666:2019、第3.5.2節)、この場合に、眼科レンズは、眼の計測、矯正、及び/又は保護を目的として、或いは、その外観を変更するために、使用されるように意図されたレンズである(DIN ISO 13666:2019、第3.5.1節)。メガネレンズの非限定的な例は、セグメント化されていてもよく又はそうでなくてもよい単焦点又は複数焦点レンズのみならず、視力を矯正、保護、又は改善するために使用されるその他の要素を含む矯正又は非矯正メガネレンズ、拡大レンズ、及び保護レンズ、或いは、メガネ、グラス、ゴーグル、及びヘルメット内において見出されるものなどのバイザーを含む。特に、メガネレンズは、眼を保護する且つ/又は視力を矯正するようにメガネフレームにフィットするように設計されたレンズであり、且つ、(例えば、サングラス、スポーツ固有のアイグラス、又は特定の波長をフィルタリングするためのものなどの平面又はアフォーカルレンズとも呼称される)非矯正又は矯正眼科レンズであり得る。矯正レンズは、単焦点、二重焦点、三重焦点、又は累進多焦点レンズであってよい。従って、一般に、本発明の文脈においては、「レンズ」又は「複数のレンズ」という用語は、上述のメガネレンズの任意のものを意味している。
本発明のメガネレンズは、好ましくは、「メガネレンズ基材」である。「メガネレンズ基材」という用語は、メガネレンズの製造プロセスにおいて使用される光学材料の断片、即ち、仕上げられたメガネレンズのプレカーソル、を意味している。仕上げられたメガネレンズの適切なプレカーソルは、例えば、半仕上げ状態のレンズブランクであり、この場合に、「半仕上げ状態のレンズブランク」という用語は、メガネレンズを製造するために光学的に仕上げられた1つの表面を有する光学材料の断片を意味している(DIN ISO 13666:2019、第3.8.1節)。任意のケースにおいて、本明細書において使用されているメガネレンズ基材は、本明細書において記述されている方法において使用されるAR(反射防止)又はHC(ハードコート)被覆などの任意の被覆を有していない少なくとも1つの表面を有する。
「レンズ材料」という用語は、メガネを製造するために使用される材料を意味している。メガネレンズは、レンズ材料を有していてもよく、或いは、レンズ材料から構成されていてもよい。「表面」又は「メガネレンズ表面」という用語は、環境との直接的接触状態にある3次元メガネレンズの任意の層を意味している。表面は、その境界として見なされ得る。メガネレンズ基材の表面は、その前部表面、即ち、前面、側部表面、即ち、エッジ、並びに、後部表面、即ち、後面を含む。
「マスキング」という用語は、メガネレンズの表面の一部分をカバーすることと、その結果、その他の物質との接触又は処理の適用からメガネレンズの表面のマスキングされた部分を保護することと、を意味している。
「デマスキング」という用語は、メガネレンズの表面からカバー又は物質を取り除き又は除去し、これにより、予めマスキングされた部分がその他の物質又は処理に対する曝露を再取得することを可能にすることを意味している。
「カバー」という用語は、主題を保護するべく、主題上において、その上方において、又はその周りにおいてなにかを載置又は配置することを意味している。
「予め選択された部分」という用語は、着色されないように判定されたメガネレンズの表面の一部分を通知している。選択は、本方法を適用する前に実施されている。本方法においては少なくとも1つの予め選択された部分が存在し得る。
「(メガネレンズの表面の)一部分」という用語は、個別である又は別個である全体(メガネレンズの表面)の一部分又は分割を意味している。「少なくとも一部分(に対して)」という用語は、全体の一部分又はその分割及び/又は全体を通知し得る。
「着色」という用語は、着色をメガネレンズ表面に提供するプロセスを意味している。着色されたメガネレンズは、例えば、人間によって知覚可能な光スペクトル(380~780nm)、並びに/或いは、NIR(780~3000nm)、UV-A(315~380nm)、及びUV-B(280~315nm)範囲のようなその他のスペクトル範囲などの電磁スペクトルの少なくとも一部分が、ポリマーレンズ材料自体によってではなく、更なる物質の追加に起因して、減衰しているメガネレンズである。減衰の量は、例えば、6~99%であってよい。人間によって知覚可能である光スペクトル内の減衰のケースにおいては、これは、例えば、着色されたレンズエリア内において1~94%などのDIN EN ISO 8930-3:2013において定義されている視感透過率をもたらし得るであろう。視感透過率は、AR又はHC被覆などの被覆の後続の適用によって更に影響され得る。従来、着色は、基材を着色槽、即ち、液体染料溶液、中において浸す又は浸漬することにより、得ることができる。着色された物質は、均質な着色を示してもよく、即ち、着色されたエリアは、着色されたエリアの全体を通じて同一程度の透過を示すか、或いは、着色された基材は、着色勾配、即ち、着色されたエリア内における漸進的な透過の程度の変化、を示すこともできる。
「着色溶液」という用語は、メガネレンズを着色するように構成された着色を有する液体として理解されたい。着色溶液は、レンズが特定の着色において出現するようにする又はメガネレンズの着色を変更するために使用される着色された物質である染料を有していてもよく、且つ、任意選択により、膨張剤、緩和溶液、界面活性剤、及び/又はバッファを有し得る。着色溶液は、必要に応じて、着色蒸気に変換され得る。「水性着色溶液」という用語は、主溶媒が水である着色溶液である。
「選択的着色」という用語は、着色がメガネレンズの表面の特定の望ましい部分においてのみ存在し、これにより、例えば、パターンの形態において、着色された且つ着色されていない表面を示していることを意味している。類似の文脈において、「選択的にプラズマ処理する」又は「選択的なプラズマ処理」という用語は、プラズマ処理がメガネレンズの表面の特定の望ましい(予め選択された)部分にのみ適用され、且つ、表面の残りの部分は、プラズマによって処理されないことを意味している。
「パターン」という用語は、任意の巨視的要素を意味している。例えば、メガネレンズの選択的に(局所的に)着色された部分、メガネレンズ上のマーク、勾配、数値、任意のタイプのグラフィックの文字、ドット、シンボル、などのようなグラフィック表現は、パターンとして見なされ得る。
「勾配」という用語は、具体的には、メガネレンズの表面に跨ったレンズの着色の強度分布を記述するために使用されている。具体的には、「勾配着色」という用語は、第1の方向において強度が増大し且つ反対方向において強度が減少する状態において、メガネレンズの表面に平行な方向におけるレンズのシェーディング、更に詳しくはレンズ上の着色の徐々に変化する強度、を記述するために使用されている。「境界線勾配着色」という用語は、メガネレンズの着色された表面及び着色されていない表面の境界線における勾配着色を記述するために使用されている。
「プラズマ」という用語は、電磁界又は電界内においてガスを励起することによって生成された等しい数の正イオン及び電子、遊離基、及び自然種を含む粒子のクラスタである。これは、イオン化された物質が長距離電界及び磁界がその振る舞いを支配するポイントまで高度な導電性を有する事物の状態である。プラズマは、帯電した粒子、即ち、イオン及び/又は電子、の大きな部分を含んでいる。プラズマは、中性ガスを加熱することにより、或いは、これに強力な電磁界を印加することにより、人工的に生成することができる。「プラズマ処理」又は「プラズマ処理ステップ」という用語は、プラズマ生成方法を使用してプラズマ状態によって主題を処理することを意味している。人工プラズマは、ガスを通じた電界及び/又は磁界の印加によって生成することができる。例えば、生成方法は、限定を伴うことなしに、グロー放電プラズマ、容量結合プラズマ(CCP)、カスケートアークプラズマソース、誘導結合プラズマ(ICP)、波加熱プラズマなどの低圧放電、或いは、アーク放電、コロナ放電、誘電体バリア放電(DBD)、容量性放電、大気圧グロー放電(APGD)、圧電直接放電プラズマ、又は場合によってはイオンガン(酸素、アルゴン、など)などの大気圧のものであり得る。
「レセプションユニット」という用語は、1つ又は複数のレンズを受け入れ且つ保持するように具体的に構成されたレンズホルダの一部分を定義している。レセプションユニットは、メガネレンズの表面の望ましい部分において望ましい着色パターンを実現するために予め定義された位置においてメガネレンズを保持するように構成されている。レセプションユニットは、メガネレンズの表面の少なくとも一部分上において取り付けられるように構成されたサブユニットを有することができる。これは、例えば、「環状取付手段」であることが可能であり、これは、着色対象のレンズの個々の形状及び表面プロファイル(曲がり)に適合された、レンズの上部周囲及び任意選択によって外側(エッジ)周囲において取り付けられるように構成された環状形態のサブユニットである。環状取付は、実質的にメガネレンズの周囲とマッチングしている。レセプションユニットは、予め定義された位置においてレンズを保持する手段、好ましくは、レンズを保持するための少なくとも2つの手段、を有し得る。但し、レンズを受け入れ且つ保持するのに適した任意のその他の構造をレセプションユニットとして定義することができる。「レンズを保持する手段」又は「保持手段」という用語は、例えば、スナップフィット結合部などのレンズのサイド(エッジ形状、厚さ)プロファイルにフィットするように設計されたプラズマ処理の際にレンズを保持し得る任意のサブユニットを意味している。
「マスキング手段」という用語は、レンズ表面の少なくとも一部分をマスキング又はカバーする構造である。メガネレンズの表面の一部分をマスキング又はカバーする且つプラズマ処理の際に眼鏡の表面の一部分を保護するのに適した任意の構造をマスキング手段として定義することができる。例えば、マスキング手段は、メガネレンズの表面上において配置され得る且つこれをカバーし得る任意のタイプのテープ(例えば、接着テープ)、メガネレンズの表面をカバーするのに適した任意の材料(例えば、マスキング剤、ダイカストカバー、又は3D印刷されたカバー、など)であり得る。ところで、本発明における「マスキングユニット」という用語は、具体的には、本発明の第2の態様によるレンズホルダのコンポーネントの1つを通知するように使用されている。マスキングユニットは、レンズホルダのコンポーネントであり、且つ、プラズマ処理の際にメガネレンズの表面をマスキングしている。
本発明における「開口部」という用語は、開口しており(即ち、孔又はアパーチャであり)、その結果、レンズホルダの開口部の位置に対応するメガネレンズの表面の部分がカバー及び保護されていないマスキング手段又はマスキングユニットの一部分を通知している。開口部の形状は、限定されてはおらず、且つ、望ましい着色パターンを考慮して選択することができる。
「空間突出部」という用語は、マスキングユニットの平均表面の上方において延在し、これにより、その間において空間的ギャップを形成しているレンズホルダのマスキングユニットの中空部分である。
本明細書及び添付の請求項において使用されている「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」という冠詞は、1つの参照物に明示的且つ明白に限定されていない限り、複数の参照物を含む。
本発明の第1の態様による表面を有するメガネレンズを着色する方法は、(i)メガネレンズの表面の予め選択された部分を選択的にプラズマ処理するステップと、(ii)少なくともプラズマによって処理されていないメガネレンズの表面の一部分において着色溶液を提供するステップと、を有する。
メガネレンズの表面の予め選択された部分を選択的にプラズマ処理するステップにおいて、プラズマは、予め選択された部分にのみ適用されている。プラズマによって処理されたメガネレンズの表面の予め選択された部分は、後続の着色ステップにおいて着色されることにならない一方で、プラズマによって処理されていないメガネレンズの表面の残りの部分(即ち、予め選択された1つ又は複数の部分以外の表面)は、着色されることになる。予め選択された部分は、予め選択された部分が着色されることにならず、且つ、レンズメガネの表面の残りの部分が着色されることになることに留意しつつ、望ましい着色パターンに応じて判定されることになる。
プラズマ処理は、AR(反射防止)又はHC(ハードコート)被覆などの任意の被覆を有していない、表面を有するメガネレンズの表面、具体的には前部、側部、及び/又は後部表面、上において実行することができる。このケースにおいては、メガネレンズは、好ましくは、メガネレンズ基材である。即ち、プラズマ処理は、必要とされた且つ従来技術のプロセス(例えば、レーザービーム処理)を非効率的なものとした任意の更なるレンズ被覆又はレンズ層を有していないメガネレンズの表面上において実行されている。被覆層の数の低減が、初期ステージにおける被覆装置への投資を減少させている。また、これは、インターフェイスの低減のみならず全体的な被覆積層体の接着に起因して、レンズの耐久性をも改善している。
プラズマ処理は、メガネレンズ又はメガネレンズの表面上に、好ましくはメガネレンズ表面の表面上において、更に好ましくはメガネレンズの表面の中心に対して垂直に、実行されている。
本発明において、プラズマによって処理された表面の予め選択された部分とプラズマによって処理されていない表面の部分の間の別個のプロパティを結果的にもたらすプラズマ処理のステップは、着色溶液をメガネレンズに提供する前に完了されていることから、不均一な着色をもたらすマスキング手段の下方において貫通した着色溶液によって生成されるマスキング手段の乏しい接着に起因した液体浸潤という欠点が存在してはいない。更には、選択的着色は、メガネレンズの表面の個々の部分の異なるプロパティによって実現されていることから、着色ステップにおいて生成される着色品質は、着色品質がマスキング手段の接着又は品質に依存している従来技術との比較において、マスキング自体の影響をあまり受けなくなる(むしろ、プラズマ処理状態の影響を受けることになる)。
一実施形態において、メガネレンズの表面の予め選択された部分を選択的にプラズマ処理するステップは、プラズマ処理の前に予め選択された部分以外のメガネレンズの表面の部分をマスキングするステップと、プラズマ処理の後に且つ着色溶液をメガネレンズに提供する前にメガネレンズの表面のマスキングされた部分をデマスキングするステップと、を有する。即ち、予め選択された部分に対する選択的プラズマ処理は、マスキングされた部分がプラズマ処理の際に保護されるように、予め選択された部分を除いてメガネレンズの表面の一部分をマスキングすることにより、実現されることになる。デマスキングステップは、プラズマ処理の後に且つ着色溶液をメガネレンズに提供する前に発生することになる。
更なる実施形態において、マスキング手段をマスキングのために使用することができる。マスキング手段は、プラズマ処理の際にメガネレンズの表面の一部分をカバーするのに且つこれをプラズマ処理から保護するのに適した任意の構造であり得る。例えば、マスキング手段は、レンズ表面上において配置され得る且つこれをカバーし得る任意のタイプのテープ(例えば、接着テープ)及びレンズ表面をカバーするのに適した任意の材料(例えば、マスキング剤、ダイカストカバー、又は3D印刷されたカバー、など)であり得る。この実施形態においては、マスキング手段は、プラズマ処理のステップにおいて、メガネレンズの表面の予め選択された部分以外のメガネレンズの表面の1つ又は複数の部分上において配置されている。マスキング手段は、デマスキングステップにおいて除去され、且つ、次いで、着色溶液がメガネレンズに提供されている。
例示用の一実施形態において、マスキング手段は、本発明の第2の態様によるレンズホルダであってもよく、これは、レセプションユニットと、マスキングユニットと、を有する。
この観点において、本発明は、マスキングテープ又はマスキング剤が着色ステップにおいてレンズに接着され且つ着色溶液との接触状態にあるという点において、接着テープ又はマスキング剤を使用する従来の着色又はマスキング方法とは完全に異なっている。更には、これは、また、着色されない部分が露出されており且つ着色される部分がカバーされているという点において、欧州特許出願公開第3266598A1号明細書のレーザービーム処理とも異なっている。
任意の従来の且つ既知の材料を有するメガネレンズを本方法のために使用することができる。好適な一実施形態において、メガネレンズは、ポリマーレンズ材料を有する。本発明の文脈において使用され得るポリマーレンズ材料は、光学及び眼科学において従来から使用されているものである。適するレンズ材料は、例えば、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリスルフォン、ポリ(エチレンテレフタレート)及びポリカーボネートのコポリマー、ポリオレフィン、ポリウレタン、及びポリチオウレタンというタイプを有する。特に適したレンズ材料の特定の例は、ポリカーボネート又はポリアミドである。プラズマ処理に曝露された際に、ポリマーは、メガネレンズの表面上においてポリマー鎖の架橋の形成を経験し、これにより、後のステージにおける着色溶液による着色の防止をもたらす。レンズ材料としてポリアミド又はポリカーボネートを有するメガネレンズは、プラズマ処理された且つ処理されていない表面の間においてこの観点における最大の区別を示すことが見出された。
プラズマ処理は、予め選択された部分における着色を防止するために、メガネレンズの表面の予め選択された部分において選択的に実行されている。一実施形態においては、マスキング手段又はレンズホルダによってマスキングされたメガネレンズがプラズマによって処理されている。材料表面のプラズマ処理は、制御された表面改質を生成するための十分に発達した技法である(Zhou et al.,Investigation of surface properties of plasma-modified polyamide 6 and polyamide 6/layered silicate nanocomposites,J Mater Sci(2011)46:3084-3093;Poncin-Epaillard,Illustration of surface crosslinking of different polymers treated in argon plasma,Macromol.Chem.Phys.198,2439-2456(1997))。プラズマ中の正イオン、電子、遊離基、及び自然種などの種の存在が主題材料内において表面プロパティの変化を誘発している。特に、ポリマーにおいては、プラズマがポリマー鎖内において遊離基の形成を誘発することが知られており、且つ、従って、例えば、架橋、エッチング、活性化、などによってポリマー表面を活性化するように機能している。表面上において発生する反応のタイプは、プラズマ状態、主題材料、プラズマソース、などに依存し得る。方法の好適な実施形態においては、着色溶液を提供する後続のステップのために、処理プラズマの強度は、メガネレンズの表面の露出した(予め選択された)部分の表面プロパティの変化を誘発するために十分なものであることを要する。例えば、ポリマーメガネレンズの場合には、プラズマは、表面上において架橋を誘発し、これにより、露出したレンズ表面の物理的な引き締めをもたらし、これにより、着色溶液がメガネレンズの表面の露出した(予め選択された)部分に進入することを防止することができると共に予め選択された部分が着色されないという結果をもたらすことができる。プラズマによって処理されたポリマーメガネレンズの表面の予め選択された部分上における架橋により、前記予め選択された部分は、後続の着色ステップにおいて着色されることが防止されることになる。
別個の着色パターン及び高品質を有する選択的な着色を許容するために、プラズマ状態は、適切に選択される必要がある。異なるプロパティを有する異なる材料が本発明の範囲内において組み合わせられ得ることから、すべての可能なレンズ材料及びプラズマ生成用のすべての可能な装置について使用され得る特定の条件を示すことは可能ではない。しかし、当業者は、以下の制限を考慮することにより、適切なプラズマ条件の組を判定し得ることになる。
この観点において、プラズマの直流が、50~1,000mA、更に好ましくは50~500mA、最も好ましくは100~300mA、であり得ることが好ましい。更には、好適な一実施形態において、直流の電圧は、100V~10,000V、更に好ましくは100V~1,000V、であり得る。別の実施形態において、プラズマ処理の際の圧力は、0.001Pa~100Pa、好ましくは0.001Pa~50Pa、更に好ましくは0.001Pa~10Pa、であり得る。プラズマの際の圧力は、プラズマ生成装置のタイプ及び/又はプラズマの直流又は電圧に応じて異なり得る。これらの範囲よりも弱いプラズマ状態は、予め選択された部分上における着色を妨げる且つ従って選択的な且つ別個の着色を許容する表面プロパティの変化を実現できないであろう。その一方において、過剰に強力なプラズマ状態は、予め選択された部分のレンズプロパティの損傷又は劣化をもたらし得る。
プラズマ処理の持続時間は、約10分以下、好ましくは10秒~5分、であることが好ましく、その理由は、プラズマに対する相対的に長時間の曝露は、レンズの相対的に乏しいプロパティを結果的にもたらし得るからである。但し、持続時間は、適用されるプラズマのタイプ及び/又は強度(例えば、プラズマ電流及びプラズマ電圧)に応じて異なり得る。プラズマ処理は、手段が上述の条件を提供し得る限り、任意の従来から使用されているプラズマを生成する産業的手段によって実行することができる。
特に好適なプラズマ生成手段は、限定を伴うことなしに、ガス放電を使用したものであり得る。好ましくは、ガスは、酸素(O)、窒素(N)、アルゴン(Ar)、二酸化炭素(CO)、ヘリウム(He)、キセノン(Xe)及び空気からなる群から選択された少なくとも1つ、好ましくは、酸素(O)、アルゴン(Ar)、及び空気、であり得る。具体的にこれらに限定されるものではないが、一実施形態においては、ガスを通じた電流の通過によって形成されるプラズマであるグロー放電プラズマを使用することができる。別の実施形態においては、相対的にコンパクトであるイオンガンプラズマを使用することもできる。
プラズマ処理の後に、着色溶液が、少なくともプラズマによって処理されていないメガネレンズの表面に提供されている。一実施形態において、着色溶液は、例えば、レンズを全体として着色溶液を有する着色槽に浸漬するなどにより、レンズの全体表面に提供することができる。これは、以前のステップにおいてプラズマによって選択的に処理されたレンズの表面の予め選択された部分のプロパティが着色溶液がもはや適用され得ないように変更されることになることから、可能である。別の実施形態においては、着色溶液は、例えば、レンズの一部分が着色に曝露される期間が長いほどより暗くなるように、メガネレンズを着色槽内に浸漬し且つ槽から徐々に除去することにより、着色勾配が得られるような方式で提供することができる。
メガネレンズを着色するのに適した任意の着色溶液を使用することができる。例えば、米国特許出願公開第20070294841号明細書、欧州特許第2966484B1号明細書、又は米国特許第5453100A号明細書において開示されている着色溶液を使用することが可能であり、これらの内容は、引用により、本明細書に包含される。一実施形態において、着色溶液は、着色蒸気に変換することができる。着色溶液は、選択的プラズマ処理又はマスキングに起因してプラズマによって処理されなかったメガネレンズの表面の一部分上において選択的着色を提供している。着色溶液は、露出した且つプラズマによって処理されたメガネレンズの表面の予め選択された部分を着色することができない。ポリマーレンズ材料を有するメガネレンズのケースにおいては、これは、プラズマ処理によってもたらされるポリマーメガネレンズの表面上の架橋に起因している。
好適な一実施形態において、着色溶液は、水性着色溶液である。水性着色溶液は、プラズマによって処理された表面の予め選択された部分との比較におけるプラズマによって処理されていない表面の部分に対するその相対的に高い反応性に起因して、相対的に効果的且つ別個の選択的着色パターンをメガネレンズの表面上において提供することとが見出された。相対的に好適な一実施形態においては、水性着色溶液をポリマーメガネレンズを着色するために使用することができる。
更には、着色溶液は、少なくとも1つの染料を有する。染料は、メガネレンズを着色するのに適していることを要する。
着色溶液は、膨張剤(含浸溶剤とも呼称される)を更に有することができる。一般に、膨張剤は、染色プロセスを促進するために染料がメガネレンズの表面に進入するようにするが、プラズマ処理の後には、メガネレンズの表面は、プロパティの変化を経験し、且つ、膨張剤を無効化している。本発明の膨張剤は、プラズマによって処理されていないメガネレンズの表面の部分に対して選択的に機能するが、それに含浸ことにより、選択的にプラズマ処理されたメガネレンズの表面の予め選択された部分においては機能しない。従って、膨張剤は、結果的に、プラズマによって処理されていないメガネレンズの表面の部分上において相対的に別個の着色を更にもたらしている。選択される膨張剤は、部分的にレンズ材料のタイプに依存し得る。例示用の膨張剤は、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(DPM)、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(TPM)、及びプロピレングリコールモノメチルエーテル(PM)、などのようなグリコールエーテル、グリコール、芳香族アルコール、非芳香族アルコール、などのようなアルコール、及び/又は、キシレン、トルエン、ベンゼン、などのような芳香族化合物を含む。膨張剤としてのアルコール、更に好ましくは、o-フェニルフェノール、ベンジルアルコールなどの芳香族アルコール、は、プラズマ処理の後に最も選択的な着色を提供することが見出された。効果は、これらのタイプの膨張剤がポリマーメガネレンズを着色するための水性着色溶液中において使用された際に、なおさら顕著である。
別の実施形態において、着色溶液は、緩和溶剤を更に有することができる。膨張剤がメガネレンズの表面を攻撃し且つ染料の含浸を可能にするのに伴って、緩和溶剤は、膨張剤とブレンドされ且つ希釈剤及び湿潤剤として機能し、且つ、膨張剤の攻撃性を低減している。緩和溶剤は、例えば、プロピレングリコール(PG)、1,4ブタンジオール、又はエチレングリコールモノブチルエーテル(EB)であり得る。
前記染料と前記膨張剤の間のモル比は、制限されていないが、好ましくは、0.01mol%~5.00mol%、好ましくは0.05mol%~2.00mol%、において変化し得る。
更なる一実施形態において、着色溶液は、溶液の混合を促進するために且つメガネレンズの表面内への染料の含浸を更に改善するために、界面活性剤及び/又はバッファを更に有することができる。前記界面活性剤は、制限されてはいないが、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、リグニンスルホン酸塩、脂肪アルコールエトキシレート、及びアルカリフェノールエトキシレートからなる群から選択された少なくとも1つを有することができる。バッファは、着色溶液の攻撃性を低減するために又はpHを調節するために使用することができる。バッファの例は、クエン酸及び酢酸から構成された群から選択された少なくとも1つを有することができる。
この方法によれば、着色溶液及びパターンをメガネレンズの表面上において直接的に適用することができる。下塗層などの補助層は必要とされない。従って、方法は、容易に適用可能であり、且つ、実装するための費用効率に優れている。
本発明の方法は、メガネレンズの表面から着色溶液を除去するステップを更に有することができる。その後に、本発明の方法は、例えば、AR又はHC被覆、ミラー被覆、フォトクロミック被覆、偏光被覆、上塗被覆、などのような被覆ステップを更に有することができる。
本発明の第2の態様によるレンズホルダは、プラズマ処理からメガネレンズの表面の一部分を保護することを狙いとしている。レンズホルダは、予め定義された位置においてメガネレンズを保持するのに適したレセプションユニットと、前記予め定義された位置においてレセプションユニットによって保持された際にメガネレンズの表面の一部分をマスキングするのに適したマスキングユニットと、を有する。レンズホルダは、前記の必要とされている機能を提供し得る且つ任意の従来の方法を使用して製造され得る限り、任意の形態であり得る。
好適な一実施形態において、レンズホルダは、3D印刷とも呼称される付加製造(AM)によって製造することができる。これは、なんらの制限を伴うことなしにレンズホルダを設計することにおける高い柔軟性を提供しており、そして、これが、着色パターンの高い柔軟性をもたらしている。
3D印刷は、正確な幾何学的形状における幾層にも重ねた状態でのCAD(コンピュータ支援設計)モデル又はデジタル3Dモデルからの3次元物体の構築である。この製造プロセスは、化学的且つ/又は物理的プロセスを利用して無定形の材料(例えば、液体、パウダ、及びこれらに類似したもの)又は中性形の材料(バンド形状、ワイヤ形状)からコンピュータ内のデータモデルに直接的に基づいて実装されている。これらは、基礎的な成形方法であるが、被加工品の個々の形状を保存した特殊のツール(例えば、モールド)は、特定の製品のために必要とされていない。現時点の関係する技術については、VDI Statusreport AM 2014によって伝えられている。現時点の3D印刷方法の概要については、2022年2月15日に最後にアクセスされた3druck.com/grundkurs-3d-drucker/teil-2-uebersicht-der-aktuellen-3d-druckverfahren-462146/によって提供されている。
マルチジェットモデル化、マルチジェットフュージョン、又はポリジェット印刷の方法は、特に適することが見出された。この方法は、例えば、2022年2月15日においてそれぞれ検索されたde.wikipedia.org/wiki/Multi_Jet_ModelingというURL、https://www.materialise.com/en/manufacturing/3d-printing-technology/multi-jet-fusionというURL、www.materialise.com/de/manufacturing/3d-druck-technologien/polyjetというURL、又はwww.stratasys.com/polyjet-technologyというURLにおいて記述されている。或いは、この代わりに、ステレオリソグラフィ(SLA、https://en.wikipedia.org/wiki/Stereolithographyを参照されたい)、選択的レーザー焼結(SLS、https://en.wikipedia.org/wiki/Selective_laser_sinteringを参照されたい)、選択的レーザー溶解(SLM、https://en.wikipedia.org/wiki/Selective_laser_melting)、又は溶融堆積モデル化(FDM、https://de.wikipedia.org/wiki/Fused_Deposition_Modeling)も、使用され得る。好適な一実施形態において、3D印刷方法は、マルチジェットフュージョンであることが可能であり、これは、レーザーを必要とせず、且つ、従って、相対的に高いスループット及び非常に良好な表面品質を提供している。
レンズホルダを製造する際に3D印刷を適用することにより、レンズホルダを設計及び試験するための更に増大した柔軟性が提供されている。非常に複雑な且つ/又は小さなパターンを含む任意の着色パターンをなんらの技術的困難さを伴うことなしに実現することができる。
すべての印刷可能なプラスチック材料をレンズホルダのために使用することができる。金属は、一般に、レンズ上における可能な擦過傷を低減するために回避されている。レンズホルダは、AR(反射防止)又はHC(ハードコート)被覆などの更なる被覆を伴うことなしにメガネレンズ上において提供されていることから、プラスチック材料は、特に好ましい。更に詳しくは、マルチジェットフュージョンを使用してパウダから印刷可能であるプラスチック材料は、その低費用、相対的に大きな印刷スループット、及び支持部品の不要性に起因して好ましい。好適な一実施形態において、レンズホルダの材料は、その良好な熱及び機械的抵抗力、低費用、及びマルチジェットフュージョンとの互換性に起因してポリイミド又はポリウレタンであり得るが、これらに限定されるものではない。
その優れた耐久性に起因して、本発明のレンズホルダは、複数のレンズ上において複数回にわたって使用することが可能であり、且つ、テープ着色のために使用されている接着テープとは異なり、再使用可能である。これは、レンズホルダが、プラズマ処理を既に経験したメガネレンズから取り外された後に、プラズマ処理の複数のサイクルを経験し得ることを意味している。従って、対応する数のマスクを製造しなければならないテープ着色のケースにおいて且つ更には望ましいパターンのためにレーザービームによってそれぞれの且つすべてのレンズを処理することを要するレーザービーム処理を有するケースにおいてしばしば発生する着色対象のレンズの数に対応する数だけレンズホルダを製造するニーズが存在しなくなろう。このレンズホルダによれば、本発明は、費用効率に優れた、環境的な、且つ、効率的な着色を提供し得る。
レンズホルダのレセプションユニットは、望ましいパターンがメガネレンズの望ましい場所(マスキングユニットの位置に対応する部分)において取得され得るように、予め定義された位置においてメガネレンズを保持するのに適している。
例示用の一実施形態において、レンズホルダのレセプションユニット及びマスキングユニットは、互いに接続されている。互いに接続されることにより、レセプションユニット及びマスキングユニットは、レンズホルダを単一ユニットとして形成している。後述するように、これは、マスキングユニットとレセプションユニットの間の接続ユニット又は連続表面によって実施することができる。
別の例示用の実施形態においては、レセプションユニットは、メガネレンズの表面の少なくとも一部分上において取り付けられるように構成されたサブユニットを有することができる。更なる実施形態において、前記サブユニットは、レンズの少なくとも上部周囲表面を取り囲む環状取付手段であり得る。この環状取付手段は、取り付けられる対象のメガネレンズの上部及び/又は外側(サイド)周囲と実質的にマッチングするように設計することができる。環状取付手段は、メガネレンズの外側及び/又は上部周囲を保持することにより、メガネレンズを保持するためにレセプションユニットに剛性及び機械的強度を提供するように構成することができる。環状取付手段によってカバーされたメガネレンズの周囲部分は、プラズマ処理を経験することにならないことから、この部分は、後続の着色ステップにおいて着色されることになる。従って、レンズの前記部分は、必要に応じて、適切な仕上げステップにおいてメガネレンズから切断されることになる。一実施形態において、環状取付手段の幅は、最大で15mm、好ましくは1mm~10mm、であってよい。15mm超の幅は、非実際的なものとなり、且つ、1mm未満の幅は、レンズホルダの機械的強度を危うくすることになろう。
レセプションユニットは、メガネレンズを保持するための手段、好ましくはレンズを保持するための少なくとも2つの手段、を更に有していてもよく、これらは、レンズに装着可能であり且つこれから取り外し可能であり、或いは、レンズに組み付け可能であり且つこれから分解可能である。レンズを保持する手段は、レンズホルダがプラズマ処理の際に運動しないように、レンズに装着/組み付けされ得る且つ次いでこれから取り外し/分解され得る任意の形態であり得る。一実施形態において、保持手段は、着色対象のメガネレンズの個々の厚さ及びエッジプロファイルにフィットするように且つレンズを固定するように構成されている。
例示用の一実施形態において、保持手段は、スナップフィットであり得る。スナップフィットは、1つに結合するように2つの個々のコンポーネントを装着するために使用される組立方法である。このようなケースにおいては、レンズは、保持手段と結合される対応するコンポーネントを有するように設計することができる。例えば、メガネレンズがインジェクションモールディングによって製造され且つインジェクションモールディングに起因してユニークなエッジ形状を有するケースにおいては、保持手段は、レンズを保持するようにレンズのエッジプロファイルにマッチングするように構成することができる。この実施形態において、保持手段は、レンズホルダのアライメント位置をマーキングするマーキング手段としても機能し得る。即ち、レンズの対応する位置に保持手段を組み付けることにより、レンズホルダは、レンズとの望ましいアライメントに従って位置決めされることになるのみならず、プラズマ処理の際に、着色されることが望ましくない部分が露出され且つ着色されることが望ましい部分が露出されないように、レンズと固定されることになり、その結果、正確な位置における着色パターンがもたらされることになる。
保持手段は、プラズマ処理の際にレンズを留める且つ固定することを保証する互いと間の特定の角度により、位置決めすることができる。例えば、2つの手段は、環状取付手段の2つの対称的なポイントにおいて、換言すれば、互いから180°又は互いから90°~180において変位させることができる。
一実施形態において、レンズホルダは、少なくとも1つの、好ましくは少なくとも2つの、レンズ上においてアライメント位置をマーキングするマーキング手段を更に有することができる。このケースにおいては、レンズは、また、レンズの上部及び/又は外側周囲表面の対応する位置においてマーキングを有することもできる。これによれば、レンズホルダは、正しい位置においてレンズと容易にアライメントされ、これにより、望ましい位置において正確に望ましい着色パターンを得ることができる。一実施形態において、レンズがインジェクションモールディングによって製造され且つインジェクションモールディングに起因したユニークなエッジ形状を有するケースにおいては、マーキング手段は、望ましい位置においてレンズにフィットし得るように、レンズのエッジプロファイルにマッチングするように構成することができる。
レンズホルダは、メガネレンズの表面の一部分をマスキングするように且つプラズマ処理の際にメガネレンズの表面の一部分を保護するように構成されたマスキングユニットを更に有する。マスキングユニットは、望ましい着色が得られることを要する眼鏡レンズの表面の一部分において位置決めされるように設計されている。マスキングユニットは、メガネレンズの表面のマスキングされた部分のみが着色ステップにおいて後から着色されることを考慮することにより、任意の望ましい形状に設計することができる。
一実施形態において、マスキングユニットは、レセプションユニットとは別個に且つ独立的に配置された独立的ユニットであり得る。マスキングユニットは、レンズとの接触を有することなしにマスキングユニット及びレセプションユニットを接続するように構成された少なくとも1つの接続ユニットを通じてレセプションユニットに接続されることになる。例えば、接続ユニットは、橋の形態であることが可能であり、これは、レンズとの接触を有さないように、但し、レセプションユニット及びマスキングユニットとの間の接触のみを有するように、構成されている。この構成によれば、着色パターン設計の高い柔軟性を提供することができる。非常に小さな且つ/又は複雑なパターンであっても、高品質着色を伴って容易に得ることができる。これは、レンズ境界線に接続されていない着色パターンがアライメントにおける難しさに起因して高精度で実現され得ないテープ着色の制約を解決している。一実施形態において、接続ユニットは、レンズホルダの保持手段及び/又は環状取付手段上に存在し得る。
好適な一実施形態において、接続ユニットの厚さは、最大で10mm、更に好ましくは0.1mm~5mm、且つ、最も好ましくは0.5mm~1.5mm、である。ブリッジングユニットが過剰に厚い場合には、メガネレンズの対応する表面上の望ましくないシェーディングが結果的にもたらされることになる。別の実施形態において、メガネレンズの表面からの接続ユニットの高さは、最大で20mm、更に好ましくは5mm~15mm、であり得る。
別の実施形態において、マスキングユニット及びレセプションユニットは、連続表面を有する単一ユニットを形成している。マスキングユニットは、着色対象のメガネレンズの表面の一部分に対応する部分をカバーするように且つ着色されないことが望ましい且つ選択的プラズマ処理に晒されないメガネレンズの表面の予め選択された部分に対応する部分において少なくとも1つの開口部を有するように構成されている。開口部の形態は、任意の形態であることが可能であり、且つ、望ましい着色パターンを考慮して設計することができる。
更なる一実施形態において、レンズホルダは、着色された且つ着色されていない表面の境界線において勾配着色を有する着色パターンを提供するのに適することが可能であり、これは、以下においては、境界線勾配着色と呼称する。これを目的として、境界線勾配着色が提供されるマスキングユニットの一部分とメガネレンズの表面の間の高さを調節することができる。メガネレンズの表面からのマスキングユニットの一部分の高さが高いほど、パターンの勾配の遷移が滑らかなものになる。マスキングユニット内において空間突出部を提供し、これにより、マスキングユニットとメガネレンズの表面の間において空間的な垂直方向の余裕を生成することにより、空間突出部の場所に対応するメガネレンズの表面は、調節された強度のプラズマ処理を経験し、これにより、結果的に境界線勾配着色、即ち、境界線における勾配着色、が得られる。この観点において、この実施形態のレンズホルダによれば、境界線勾配着色を有するメガネレンズを得ることができる。この着色されたメガネレンズは、上述のメガネレンズの選択的着色のための方法の任意のもの及びこれに関連して記述されているレンズホルダによって得ることができる。
本発明の更なる特徴、プロパティ、及び利点については、添付図面との関連における実施形態の以下の説明から明らかとなろう。
本発明の第1の態様による選択的プラズマ処理によって処理された表面を有するメガネレンズを着色する方法のフローチャートを示す。 本発明の第2の態様によるレンズホルダ及びレンズホルダとアライメントされるレンズを示す。この場合には、レセプションユニットのみを有しており、マスキングユニットは、容易な理解のために省略されている。 図3A-3Bは、単一ユニットしてレセプションユニット及びマスキングユニットを有し、これにより、ポジティブ着色のために使用される本レンズホルダの第1の例示用の実施形態を示す。 図4A-4Bは、レセプションユニット、マスキングユニット、及び接続ユニットを別個のユニットとして有し、これにより、ネガティブ着色のために使用される本レンズホルダの第2の例示用の実施形態を示す。 図5A-5Bは、本レンズホルダの第3の例示用の実施形態を示し、この場合には、レセプションユニットは、少なくとも2つのマーキングユニット及びその対応するレンズを有する。 図6A-6Bは、本レンズホルダの第4の例示用の実施形態を示し、この場合に、レセプションユニットは、図5Aのものとは異なる形態の少なくとも2つのマーキングユニット及びその対応するレンズを有する。 図7A-7Bは、境界線勾配着色用の本レンズホルダ及び境界線勾配着色を有するレンズの第5の例示用の実施形態を示す。
図1は、本発明の第1の態様による着色用の方法のフローチャートを示している。第1のステップS202において、メガネレンズの表面の予め選択された部分が望ましい着色パターンを考慮して選択されている。即ち、着色されることが望ましくないメガネレンズの表面の一部分が、予め選択された部分として選択されている。メガネレンズの表面の一部分が選択的プラズマ処理のためにマスキングされている一実施形態においては、1つのメガネレンズ(或いは、複数のレンズ)は、マスキング手段又はレンズホルダに組み付けられ/装着され、この場合に、マスキング手段は、予め選択された部分以外のメガネレンズの表面の一部分(或いは、複数の部分)をカバーしている。
第2のステップS204において、メガネレンズの表面の予め選択された部分がプラズマによって選択的に処理されている。マスキングステップを使用する実施形態においては、マスキング手段又はレンズホルダに組み付けられた/装着されたメガネレンズは、プラズマ処理を経験し、これにより、予め選択された部分のみがプラズマに曝露されている。
第3のステップS206において、メガネレンズを染色するのに適した染料を有する着色溶液が提供されている。レンズは、望ましい着色を取得するために着色溶液中に(部分的に又は全体として)浸漬されることになる。マスキングステップ又はマスキング手段を使用する実施形態においては、マスキング手段は、着色溶液が提供される前にレンズから除去されることになる。即ち、メガネレンズのみが着色溶液中に浸漬されている。
このステップは、勾配着色のために、着色溶液内に且つこれから外にレンズを往復運動させるステップを更に有することができる。選択的勾配着色が望ましいケースにおいては、レンズが着色溶液内において完全に又は部分的に浸漬される場合には、レンズは、その後に、色相及び強度の観点において望ましい色劣化を実現するために、着色溶液内への且つこれから外へのスイング運動により、着色溶液から少なくとも部分的に外に運動している。
第4のステップS208において、望ましい着色パターンを有するメガネレンズが得られている。
第4のステップS208の後には、メガネレンズの表面から着色溶液を除去するステップと、例えば、AR又はHC被覆などの最終的且つ任意選択の被覆ステップと、が発生している。
図2は、選択的プラズマ処理の際にメガネレンズ60の表面を保護するように構成されたメガネレンズ60を着色するためのレンズホルダ10を示している。レンズホルダは、レセプションユニット20と、マスキングユニット(図示されてはいない)と、を有する。図2において、マスキングユニットは、レセプションユニットの明瞭な構成を示すために省略されている。レンズホルダ10及びメガネレンズ60は、予め定義された位置においてメガネレンズ60を保持するように構成されたレセプションユニット20により、図2において描かれているように着色対象のメガネレンズの表面上においてアライメントされることになる。レンズホルダ10は、レセプションユニット20と、マスキングユニット(図示されてはいない)と、を有する。レセプションユニット20は、環状取付手段21を有することができる。環状取付手段21は、レンズ60の上部周囲表面61とマッチングするようにアライメントされている。厚さは、0.1mm~20mmであってよい。レンズ60の上部周囲表面61は、不要な場合には着色の後に切断又は除去され得るレンズの一部分である。レンズホルダ10がメガネレンズ60から取り外された後に、着色溶液70をメガネレンズ60の表面の少なくとも一部分に適用することができる。
図3Aは、本レンズホルダ10の第1の例示用の実施形態を提供しており、この場合に、レンズホルダ10は、(i)環状取付手段21及び少なくとも2つの保持手段22a、22bを有する、予め定義された位置においてメガネレンズ60を保持するように構成されたレセプションユニット20と、(ii)マスキングユニット30aと、を有する。ここで、マスキングユニット30a及びレセプションユニット20は、連続表面を有する単一ユニットとして構成されている。マスキングユニット30aは、メガネレンズの対応する表面がプラズマ処理に曝露されることになる開口部31aを有する。ここで、開口部31aは、簡潔性のために円形形状として描かれているが、開口部31aが柔軟な方式で設計され得ることは、既に提供されている詳細から容易に理解され得る。これによれば、開口部31aを有していないマスキングユニット30aの形状と同一の望ましい着色パターンが着色ステップにおいて取得されることになる。レンズホルダ10は、環状取付手段21及びマスキングユニット30aによってカバーされたメガネレンズ61、63の表面の一部分が後の着色ステップにおいて着色されるポジティブ着色を提供している。ここで、レセプションユニット10は、例示を目的としてプラズマ処理の際にレンズ表面のカバーされた部分を保護するためにレンズの固定された保持を提供する2つの保持手段22a、22bを有する。保持手段22a、22bは、レンズのエッジプロファイルとフィットするように設計されている。
3D印刷を使用することにより、場合によっては非常に小さな開口部又は複雑な形状を有する開口部を有するレンズホルダ10の相対的に柔軟な設計を得ることができる。開口部の数及び/又は形状は、望ましい着色パターンに応じて変化し得る。開口部31aに対応するメガネレンズ60の表面は、プラズマ処理の際に露出されることになり、且つ、その結果、後の着色ステップにおいて着色されない。プラズマ処理の後に、レンズホルダ10は、レンズ60から除去されることになり、且つ、着色溶液70がメガネレンズ60に提供されることになる。その結果、図3Bに示されているように、着色パターン61、63及び着色されていない表面62を有するレンズ60が得られる。
図4Aは、本レンズホルダ10の第2の例示用の実施形態を提供しており、この場合に、レンズホルダ10は、(i)環状取付手段21及び少なくとも2つの保持手段22a、22bを有するレセプションユニット20と、(ii)レセプションユニット20とは独立的に且つ別個に位置決めされたユニットであるマスキングユニット30bと、を有する。マスキングユニット30bは、少なくとも1つの接続ユニット40a、40bによってレセプションユニット20に接続されている。マスキングユニット30bは、環状取付手段21及び/又は保持手段22a、22bに接続することができる。接続ユニット40a、40bは、接続ユニット40a、40bの下方のレンズ表面がプラズマ処理に曝露されるように、且つ、従って、後の着色ステップにおいて着色されないように、レンズ表面との接触を有さないように又はこれをカバーしないように、構成されている。これを目的として、接続ユニット40a、40bの厚さ及び高さは、以上の関連する部分において記述されているように調節することができる。接続ユニット40a、40bの数及び/又は形状は、変化することができると共に、レセプションユニット20とマスキングユニット30bの間の堅固な接続を可能にするように選択することが可能であり、これにより、マスキングユニット30bは、高品質の着色パターンを固定するために、プラズマ処理の際に運動してはいない。図4Aにおいては、円形形状を有する1つのマスキングユニット30bのみが提供されているが、これは説明を目的としたものであることを理解されたい。マスキングユニット30bの数及び/又は形状(従って、同様に接続ユニットのもの)は、望ましい着色パターンに応じて自由に調節することができることが容易に理解され得る。残りの部分は、レンズホルダ10の開口部31bとなる。レンズホルダ10の開口部31bに対応するメガネレンズの表面62の一部分は、プラズマ処理に晒されることになり、且つ、従って、着色されていない表面62を有することになる一方で、表面61、63のマスキングされた部分は、プラズマ処理に晒されることにならず、且つ、従って、着色された表面61、63を有することになる。これによれば、本発明は、図4Bに示されているように、ポジティブ着色のみならず、ネガティブ着色をも提供することができる。レンズ61の着色された上部周囲部分は、必要に応じて仕上げステップにおいて切断することができる。
図5A及び図5Bは、メガネレンズ上においてレンズホルダ10のアライメント位置をマーキングするように構成された少なくとも1つのマーキングユニット50a、50bを更に有する、第1又は第2の実施形態によるレンズホルダ10の第3の例示用の実施形態を提供している。マーキングユニット50a、50bは、これらの図においてここで描かれている実施形態に限定されるものではなく、且つ、望ましい位置において望ましい着色パターン63を提供するためにレンズ60上におけるレンズホルダ10の正確なアライメントを支援し得る限り、任意の形態であり得る。また、この実施形態において、レンズ60は、レンズ60の上部及び/又は外側周囲表面においてマーキングユニット50a、50bのものに対応する部分66a、66bを有することになる。これによれば、レンズホルダ10は、正しい位置において容易且つ正確にレンズ60とアライメントされ、これにより、正確に望ましい位置において望ましい着色パターンを得ることができる。
図6A及び図6Bは、レンズホルダの第4の例示用の実施形態を示しており、この場合に、第1又は第2の実施形態のレンズホルダは、メガネレンズのエッジプロファイルにフィットするように設計されたマーキングユニット50a’、50b’を更に有する。例えば、メガネレンズがインジェクションモールディングによって製造された場合に、レンズは、例えば、図6Bに示されているように、例示を目的として描かれた丸い突出部66a’(左)及び正方形突出部66b’(右)などのサイドエッジにおけるユニークな形状を有し得る。この実施形態においては、マーキングユニット50a’、50b’は、レンズ66a’、66b’の既存のエッジプロファイルにフィットするように設計することが可能であり、好ましくは、3D印刷を使用することによって設計することができる。これは、レンズに更なるマーキングが提供される必要がなく、且つ、正確な位置において、マーキングユニット50a’、50b’と、従って、レンズホルダ10と、をアライメントさせるために初期のレンズ設計がそのまま使用され得る、という点において利点を有する。いくつかのケースにおいて、マーキングユニット50a’、50b’は、更には、保持ユニットとして機能してもよく、且つ、このようなケースにおいては、別個の保持ユニット22a、22bは、不要となり得る。
図7A及び図7Bは、ユニークなレンズホルダ10及び前記レンズホルダ10を使用して製造された境界線勾配着色64を有するレンズ60の第5の例示用の実施形態を示している。この実施形態において、マスキングユニット30cは、開口部31cに隣接した状態において空間突出部32を更に有することができる。マスキングユニット30cの空間突出部32とメガネレンズ60の表面又はマスキングユニット30cの表面の平均高さの間の空間的ギャップに起因して、レンズ60は、着色された表面63から着色されていない表面62までの着色強度の滑らかな遷移64を有する境界線を有する境界線勾配着色64を有することができる。メガネレンズ60の表面からの空間突出部32の高さに応じて、着色強度及び遷移の程度は変化し得る。対照的に、空間突出部32を有していないマスキングユニット30a、30bを有するレンズホルダ10を使用して製造された着色された部分及び着色されていない部分の境界線は、着色された表面から着色されていない表面への着色強度の鋭い(勾配を有していない)遷移を有することになる。
図7Bに示されているように、マスキングユニット30によって完全にカバーされた境界線65(左側の、着色された表面63と着色されていない表面62の間)においては、着色強度の遷移が鋭いものとなる(勾配を有していない)一方で、レンズホルダ10の対応する部分が空間突出部32とメガネレンズ60の表面の間の空間ギャップを有する境界線64(右側の、着色された表面63と着色されていない表面62の間)においては、着色された表面63から着色されていない表面62への着色強度の遷移は、滑らかなものとなろう。

Claims (24)

  1. 表面を有するメガネレンズ(60)を着色する方法であって、
    (i)前記メガネレンズの前記表面の予め選択された部分(62)を選択的にプラズマ処理するステップと、
    (ii)前記プラズマ処理によって処理されていない前記メガネレンズの前記表面の少なくとも一部分(63)に着色溶液(70)を提供するステップと、
    を特徴とする方法。
  2. -前記プラズマ処理の前に前記予め選択された部分(62)以外の前記メガネレンズの前記表面の一部分(63)をマスキングするステップと、
    -前記プラズマ処理の後に且つ前記着色溶液(70)を前記メガネレンズ(60)に提供する前に、前記メガネレンズの前記表面の前記マスキングされた部分(63)をデマスキングするステップと、
    を有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  3. 前記メガネレンズ(60)は、ポリマーレンズ材料を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記プラズマ処理は、ガス放電を利用して実行されていることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 前記着色溶液(70)は、水性着色溶液であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 前記メガネレンズ(60)の前記表面の前記予め選択された部分(62)以外の前記部分(63)をマスキングする前記ステップは、前記メガネレンズ(60)を保持するように構成されたレセプションユニット(20)と、前記プラズマ処理の際に前記メガネレンズ(60)の前記表面の前記予め選択された部分(62)以外の前記部分(63)を保護するためのマスキングユニット(30)と、を有する予め定義された位置におけるレンズホルダ(10)によって実行されていることを特徴とする、請求項2~5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 表面を有するメガネレンズ(60)用のレンズホルダ(10)であって、
    -予め定義された位置において前記メガネレンズ(60)を保持するように構成されたレセプションユニット(20)と、
    -前記予め定義された位置において前記レセプションユニット(20)によって保持された際に前記メガネレンズの前記表面の一部分(63)をマスキングするように構成されたマスキングユニット(30)と、
    を有するレンズホルダ(10)において、
    前記レセプションユニット(20)及び前記マスキングユニット(30)は、互いに接続されていることを特徴とするレンズホルダ(10)。
  8. 前記レセプションユニット(20)は、前記メガネレンズの前記表面の少なくとも一部分上において取り付けられるように構成されたサブユニットを有することを特徴とする、請求項7に記載のレンズホルダ(10)。
  9. 前記サブユニットは、環状取付手段(21)であることを特徴とする、請求項8に記載のレンズホルダ(10)。
  10. 前記マスキングユニット(30)及び前記レセプションユニット(20)は、一緒に連続表面を有する単一ユニットを形成していることを特徴とする、請求項7~9のいずれか1項に記載のレンズホルダ(10)。
  11. 前記マスキングユニット(30)及び前記レセプションユニット(20)を接続し、これにより、前記メガネレンズ(60)の前記表面に接触することなしに独立した且つ別個のユニットを形成するように構成された少なくとも1つの接続ユニット(40a、40b)を有することを特徴とする、請求項7~9のいずれか1項に記載のレンズホルダ(10)。
  12. 前記マスキングユニット(30)は、開口部(31)に隣接した状態において空間突出部(32)を有することを特徴とする、請求項7~11のいずれか1項に記載のレンズホルダ(10)。
  13. メガネレンズ(60)を着色するのに適したシステムであって、
    -着色溶液(70)を有する着色槽、
    を有するシステムにおいて、
    -プラズマ処理用の装置と、
    -請求項7~12のいずれか1項に記載のレンズホルダ(10)と、
    を更に有することを特徴とするシステム。
  14. プラズマ処理の際に前記レンズホルダ(10)によって保持されたメガネレンズの表面の一部分(63)をカバーするように構成されたメガネレンズの選択的着色用の請求項7~12のいずれか1項に記載のレンズホルダ(10)の使用。
  15. 前記レンズホルダ(10)は、前記プラズマ処理の前に前記予め選択された部分(62)以外の前記メガネレンズの前記表面の一部分(63)をマスキングするように構成されており、且つ、前記レンズホルダ(10)は、プラズマ処理の後に且つ着色溶液(70)を前記メガネレンズ(60)に提供する前に除去されていることを特徴とする、請求項14に記載のメガネレンズ(63)の選択的着色用のレンズホルダ(10)の使用。
  16. コンピュータによって実行された際に、前記コンピュータが請求項1~6のいずれか1項に記載の方法のステップを実行するようにする命令を有するコンピュータ可読データキャリア又はデータ信号であって、前記プラズマ処理のステップは、プラズマ処理に適した装置によって実行され、且つ、前記着色溶液を提供するステップは、着色溶液を提供するのに適した装置によって実行されている、コンピュータ可読データキャリア又はデータ信号。
  17. 請求項7~12のいずれか1項に記載のレンズホルダと、請求項1~6のいずれか1項に記載の使用のための命令と、を有するキット。
  18. 表面を有するメガネレンズ(60)を着色する方法であって、
    (i)プラズマ処理の前に予め選択された部分(62)以外の前記メガネレンズの前記表面の一部分(63)をマスキングするステップと、
    (ii)前記プラズマ処理の後に且つ着色溶液(70)を前記メガネレンズ(60)に提供する前に、前記メガネレンズの前記表面の前記マスキングされた部分(63)をデマスキングするステップと、
    を有することを特徴とする方法。
  19. 前記メガネレンズ(60)は、ポリマーレンズ材料を有することを特徴とする、請求項18に記載の方法。
  20. 前記プラズマ処理は、ガス放電を利用して実行されていることを特徴とする、請求項18又は19に記載の方法。
  21. 前記着色溶液(70)は、水性着色溶液であることを特徴とする、請求項18~20のいずれか1項に記載の方法。
  22. 前記メガネレンズ(60)の前記表面の前記予め選択された部分(62)以外の前記一部分(63)の前記マスキングステップは、前記メガネレンズ(60)を保持するのに適したレセプションユニット(20)と、前記プラズマ処理の際に前記メガネレンズ(60)の前記表面の前記予め選択された部分(62)以外の前記部分(63)を保護するためのマスキングユニット(30)と、を有する予め定義された位置におけるレンズホルダ(10)を利用して実行されていることを特徴とする、請求項18~21のいずれか1項に記載の方法。
  23. コンピュータによって実行された際に、前記コンピュータが請求項18~22のいずれか1項に記載の方法のステップを実行するようにする命令を有するコンピュータ可読データキャリア又はデータ信号であって、前記プラズマ処理のステップは、プラズマ処理に適した装置によって実行され、且つ、前記着色溶液を提供するステップは、着色溶液を提供するのに適した装置によって実行されている、コンピュータ可読データキャリア又はデータ信号。
  24. 請求項7~12のいずれか1項に記載のレンズホルダと、請求項18~22のいずれか1項に記載の使用のための命令と、を有するキット。
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