JP2024501603A - フェルラ酸の精製 - Google Patents

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Abstract

本発明は、フェルラ酸と、溶媒と、少なくとも1種の不純物とを含む液体媒体の精製方法であって、第1の析出物P1及び液体媒体C1を得るために、液体媒体を第1の錯化剤と接触させる工程(a)、及び精製フェルラ酸を含む液体媒体F1を得るために、液体媒体C1から第1の析出物P1を分離する工程(b)を含む方法に関する。本発明は、フェルラ酸オリゴマーを分離する方法、並びにフリーラジカル又はラジカル種の捕捉剤としての、特に重合禁止剤、酸化防止剤、又はUV安定剤としてのそれらの使用にも関する。【選択図】なし

Description

本出願は、2020年10月2日に出願された仏国特許第2010088号及び2021年7月5日に出願された欧州特許出願公開第21183653.1号の特許出願に基づく優先権を主張するものであり、その内容は、参照により完全に援用される。
本発明は、フェルラ酸と、溶媒と、少なくとも1種の不純物とを含有する液体媒体の精製方法に関する。本発明は、90%以上の純度を示す精製フェルラ酸を含む組成物にも関する。さらに、本発明は、本発明の方法に従って精製されたフェルラ酸を使用する天然バニリンの製造方法に関する。本発明は、フェルラ酸のオリゴマーを分離する方法、及びフリーラジカル捕捉剤又はラジカル種の捕捉剤としての、特に重合禁止剤、酸化防止剤、又はUV安定剤としてのその使用にも関する。
本発明は、特に食品、化粧品、及びフレーバーの分野において用途を有する。
フェルラ酸又は3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)プロプ-2-エン酸は、植物、特に米、トウモロコシ、小麦、又はオーツ麦などの穀類の中に天然に存在する抗酸化物質である。これは、食品加工業、特に石油生産、穀物、砂糖、又はアルコールの分野の固体又は液体の副産物に存在することもある。
フェルラ酸は、化学合成によって、又は微生物発酵若しくは植物組織培養が関与するバイオテクノロジー経路によって調製することができる。これは、植物材料からフェルラ酸を抽出するために植物材料が処理される、天然及び/又は生物由来として説明される経路によって得ることもできる。例えば国際公開第2014/187784号パンフレットに記載の方法に従って、例えば食品加工産業の副産物又は穀物から抽出することができる。
フェルラ酸は、化粧品から食品産業に至る様々な分野で、特に非常に広く消費されているフレーバー付与物質であるバニリンの調製に使用されている。
バニリンは、化学合成によって製造することができるものの、消費者からは合成フレーバーよりも天然フレーバーが好まれる。現在の需要に応えるために、合成ではないバニリンの調製に特別な関心が向けられてきた。そのため、天然及び/又は生物由来の材料を使用する天然バニリンの調製方法の成長が見られており、これらの方法は現行の法律に従って天然と表現することが可能である。
特に、天然のバニラは、特に発酵基質のバニリンへのバイオコンバージョンを可能にすることができる微生物の培養を含むバイオテクノロジープロセスによって得ることができる。そのようなバイオテクノロジープロセスは、例えば微生物がフェルラ酸をバニリンに変換する欧州特許出願公開第0885968号明細書に記載されている。このようにして得られた天然バニリンは、一般的には抽出及び/又は精製の工程を経る。例えば、バニリンは、国際公開第2014/114590号パンフレット、欧州特許第2791098号明細書、又は国際公開第2018/146210号パンフレットに記載の方法に従って精製することができる。
生物由来のフェルラ酸、特に市販されているものは、不十分な程度の純度を示す場合がある。供給業者から供給されるフェルラ酸中に存在する不純物は、一般的には特定されておらず、フェルラ酸が使用される工業プロセスの有効性に影響を与える場合がある。この理由のため、特に天然バニリンのより優れた生産収率を得るためには、高純度の出発物質を入手できることが望ましい。
国際公開第2004/110975号パンフレットには、トウモロコシ粒を石灰を用いて蒸解することから得た液の処理が記載されており、その結果、フェルラ酸を含むネージャヨーテとして知られる廃液が得られ、この処理は、濾過、酸性化、マトリックスへのフェルラ酸の吸着、並びにその後のマトリックスの洗浄及び有機溶媒による溶離が含まれる。回収されたフェルラ酸は、その後再結晶化の追加工程を経る。
中国特許第104628553号明細書には、フェルラ酸のアルカリ溶液の精製が記載されており、この中では、溶液は、フェルラ酸の損失とフェルラ酸の収率の低下をもたらし得る膜分離システムに連続して通される。その後に得られる透過液は、遠心分離又は濾過によって回収されるフェルラ酸を析出させるために酸性化される。得られたフェルラ酸は、活性炭上での精製及び再結晶による精製の追加の工程を経る。
欧州特許第3612511号明細書には、農業から生じるバイオマスからのフェルラ酸の抽出及び精製が記載されている。抽出されたフェルラ酸は、有機溶媒を用いる抽出方法によって精製することができる。
本発明の目的は、発酵での使用に十分な純度を有するフェルラ酸を直接的に又は間接的に利用可能にする簡単で効果的な解決手段を提供することである。
さらに、固体又は液体のフェルラ酸組成物中に存在する不純物は、組成物が接触する工業プラントのファウリングの一因となる。特に、これらの不純物は、工業スケールのプロセスでのフェルラ酸の使用を困難にする場合がある。例えば、固体形態で存在する不純物は、堆積物、部分的な若しくは完全な閉塞、又ファウリング事象を生じさせる場合があり、これはプロセスの実施を困難にし、最終製品の収率、生産性、又は品質の損失をもたらす。加えて、不純物は、フェルラ酸を有利な生成物へと変換する際の反応物、中間体、又は最終生成物と反応することがある。この結果、不純物の存在によって損失が生じ、例えばバニリンの生産収率が低下する。
したがって、フェルラ酸、特に天然又は生物由来のフェルラ酸を精製するための簡単で経済的に実行可能な方法を利用できるようにすることが求められている。
この目的のために、本発明の目的は、高収率のフェルラ酸で、特に90%を超えるフェルラ酸で、フェルラ酸、特に生物由来のフェルラ酸を精製する方法を提供することである。本発明に従って得られる精製フェルラ酸は、天然及び生物由来であってよく、液体媒体中に含まれていても固体形態であってもよい。
この目的のために、本発明の第1の態様は、フェルラ酸と、溶媒と、少なくとも1種の不純物とを含む液体媒体Cを精製するための方法であって、
- 第1の析出物及び液体媒体C1を得るために、液体媒体Cを第1の錯化剤と接触させる工程(a)、及び
- 精製フェルラ酸を含む液体媒体F1を得るために、液体媒体C1から第1の析出物P1を分離する工程(b)、
を含む方法を提供する。工程(b)は、第1の析出物P1を得ることも可能にする。
複数の実施形態は、単独で、又は組み合わせて、さらに以下を備える:
- フェルラ酸が生物由来のフェルラ酸であること、
- 液体媒体C1が90%を超える、好ましくは95%を超える純度を示す精製フェルラ酸を含むこと、
- 方法が、工程(a)の後に得られる液体媒体C1が40℃~70℃、好ましくは50℃の温度まで加熱される工程(a1)を含むこと、
- 工程(a)及び/又は(a1)で得られる液体媒体のpHが、6~9、好ましくは6~7であること、
- 第1の錯化剤が、遷移金属、金属若しくはアルカリ土類金属、又はこれらの混合物からなる群から選択される二価又は三価のカチオンであること、
- 第1の錯化剤が、アルミニウム又は亜鉛から選択されること、
- 方法が、第2の析出物及び液体媒体(C2)を得るための、液体媒体(F1)に第2の錯化剤を添加する工程(c)を含むこと、
- 第2の析出物P2が、第1の析出物P1とは異なること、
- 第2の錯化剤が、ホスフェートイオン、二水素ホスフェートイオン、又はジホスフェートイオンから選択されること、
- 方法が、精製フェルラ酸を含む液体媒体(F2)を得るための、液体媒体(C2)から第2の析出物P2を分離する工程(d)を含むこと、
- 溶媒が水であり、液体媒体が水性液体媒体であること、
- 方法が、液体媒体F1又は液体媒体F2を1~4のpHにし、固体フェルラ酸を液体媒体から分離する、固体形態のフェルラ酸を回収する工程を含むこと。
第2の態様では、本発明は、上で定義した方法によって得ることができる、精製された生物由来のフェルラ酸の水性組成物に関する。好ましくは、精製フェルラ酸は、90%以上、より好ましくは95%以上の純度を示す。
別の態様によれば、本発明は、上記方法によるフェルラ酸を含む液体媒体の精製と、得られた精製フェルラ酸の発酵プロセスによる天然バニリンへの変換とを含む、天然バニリンの製造方法に関する。
有利なことに、本発明による方法は少ない工程しか含まず、そのためフェルラ酸の損失が限定的である。
本発明は、固体又は液体のフェルラ酸組成物中に存在する不純物を精製するための方法にも関する。具体的には、これらの不純物は、食品及び化粧品業界、燃料安定剤、不飽和モノマー、又はポリマーにおける様々な用途で再利用することができる。これらの化合物は、特に、フリーラジカル捕捉剤又はラジカル種の捕捉剤として、特に具体的には重合禁止剤、酸化防止剤、又はUV安定剤として使用することができる。
これらの不純物の再利用は、一方でフェルラ酸を精製することを可能にすることのみならず、固体又は液体フェルラ酸組成物中に存在する不純物を再利用することも可能にすることによって、本発明の方法の経済的収率を改善する。
したがって、本発明は、析出物P1中に存在するフェルラ酸のオリゴマーを抽出するための方法に関する。
別の態様によれば、本発明は、食品又は化粧品産業、燃料安定剤、不飽和モノマー、又はポリマーの分野における、特に重合禁止剤、酸化防止剤、又はUV安定剤としての、析出物P1の、又は析出物P1中に存在するか若しくは本発明の抽出方法によって得られるフェルラ酸のオリゴマーの、使用に関する。
本発明のその他の特徴及び利点は、以下の説明を読むことでより明らかになるであろう。後者は純粋に例示であり、添付の図面を考慮して読む必要がある。
方法の一実施形態を示す工程図を示すスキームである。 一実施形態による方法の実施例である。 Trolox対照と比較したフェルラ酸のオリゴマーのフリーラジカル捕捉剤特性である。
本発明との関連で、及び別段の指示がない限り、表現「xとyの間」という表現は、値x及びyを含む。本発明との関係において、及び別段の指示がない限り、「ppm」という用語は「百万分率」を意味する。この単位は、重量による比率:1ppm=1mg/kgを表す。
本発明の主題は、フェルラ酸と、溶媒と、少なくとも1種の不純物とを含む液体媒体Cの精製方法であって、液体媒体Cを第1の錯化剤と接触させる少なくとも1つの工程(a)を含む方法である。
天然由来のフェルラ酸は、次の式に対応する:
Figure 2024501603000001
フェルラ酸は、生物由来である場合、「天然物」と表される場合がある。欧州及び米国における規制によれば、これは、その製品が、植物性又は動物性の材料から出発して、物理的、酵素的、又は微生物学的なプロセスによって得られることを意味する。生物由来のフェルラ酸は、植物又は海洋由来のフェルラ酸の全部又は大部分を意味すると理解される。例えば、生物由来のフェルラ酸は、農業副産物、植物、種子、森林材料、又は藻類から生じる場合がある。特に、生物由来のフェルラ酸は植物由来である。したがって、生物由来のフェルラ酸は、化学合成から得られるものではない。
本発明の方法は、粗製フェルラ酸を含む液体媒体Cを精製することからなり、媒体は、少なくとも1種の未同定の不純物と溶媒とを含有する。本発明の方法は、粗製フェルラ酸を含む液体媒体Cを精製することからなり、この媒体は、少なくとも1種の未同定及び/又は既知の不純物と溶媒とを含む。精製される媒体Cは、「出発媒体又は組成物C」又は「初期媒体C」とも呼ばれる。
初期液体媒体Cは、固体形態の市販の粗製フェルラ酸を溶媒と混合することによって調製することができる。次いで、方法は、液体媒体Cを調製する予備工程を含み、ここで固体形態の出発フェルラ酸は溶媒と接触する。好ましくは、溶媒は水からなる。
好ましくは、精製される固体形態の又は液体媒体C中の粗製フェルラ酸は、87%以下、好ましくは85%以下、より好ましくは83%以下の純度を示す。通常、最初の粗製フェルラ酸は、60%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上の純度を示す。
好ましくは、媒体Cの溶媒は水からなる。
一実施形態によれば、精製される固体形態のフェルラ酸は生物由来である。例えば、生物由来のフェルラ酸は、トウモロコシ粒又は米又はオーツ麦粒の全部又は一部を処理することによって得られるフェルラ酸である。例として、生物由来のフェルラ酸は、国際公開第2004/187784号パンフレットに記載のプロセスに従って製造することができる。
好ましい実施形態によれば、最初の粗製フェルラ酸は天然フェルラ酸である。
固体形態のフェルラ酸と溶媒との混合に続いて、出発媒体Cは、液相と前記溶媒に不溶性な固相とを含む懸濁液の形態で得ることができる。
粗製フェルラ酸は、媒体Cの液相に溶解した形態であってもよく、及び/又は液体媒体の固相に含まれていてもよい。
不純物は、媒体Cの液相に溶解した形態であってもよく、及び/又は液体媒体Cの固相であってもよい。
液体媒体Cは、国際公開第2004/187784号パンフレットに記載されているもの、国際公開第2001/06789号パンフレットに記載されているもの、又は国際公開第04110975A1号パンフレットに記載されているものなど、少なくとも1つの植物材料が処理されたフェルラ酸の抽出方法から得られる液体組成物であってもよい。
最初の液体媒体C中の総不純物/フェルラ酸の重量比は、通常0.05~0.5、好ましくは0.20~0.25である。したがって、本発明による方法は、最初のフェルラ酸の純度を改善するために、これらの不純物の全て又は一部を除去することを特に目標としている。場合によっては、これらの不純物は様々な用途で再利用することができる。
本発明の方法によれば、精製されるフェルラ酸を含む液体媒体Cは、第1の錯化剤と接触させられる。「錯化剤」は、液体媒体の溶媒に不溶性である、特に水に不溶性である析出物を生成可能な物質を意味すると理解される。
一実施形態によれば、第1の錯化剤は、溶媒、好ましくは水又は溶媒混合物における溶液中のカチオンである。
例えば、第1の錯化剤は、有利には、一価、二価、三価、四価、又は五価のカチオン塩、特に二価又は三価のカチオン塩の溶液の形態である。
カチオン、特に二価又は三価のカチオンの塩は、硫酸塩、塩化物、硝酸塩、炭酸塩、リン酸塩、水酸化物、又は酢酸塩、又はこれらの混合物であってよい。
カチオン、特に二価又は三価のカチオンは、遷移金属、金属、アルカリ土類金属、及び希土類金属からなる群から選択することができ、カチオンは、出発媒体Cと接触させられたときに、媒体Cの溶媒、特に水に不溶性の析出物を形成可能であることが理解される。
一実施形態では、第1の錯化剤は、鉄、ニッケル、銅、チタン、ジルコニウム、又はこれらの混合物からなる群から選択される、好ましくは鉄又は銅から選択される遷移金属のカチオンである。
一実施形態によれば、第1の錯化剤は、アルミニウム及び亜鉛からなる群から選択される金属カチオンである。
別の実施形態によれば、第1の錯化剤は、カルシウム及びマグネシウムからなる群から選択されるアルカリ土類金属のカチオンである。
別の形態によれば、第1の錯化剤は、イットリウム又はランタニドなどの希土類金属、又はAl、TiO、SiO、及び/若しくはZnOなどの金属酸化物からなる群から選択される。
液体媒体Cが固体形態の粗製フェルラ酸から得られる場合、液体媒体Cに添加される第1の錯化剤の量は、固体形態の出発粗製フェルラ酸の総重量に対して1重量%以上、好ましくは5重量%以上であってよい。一態様によれば、第1の錯化剤の量は、固体形態の出発粗製フェルラ酸の総重量に対して12重量%以下、好ましくは10重量%以下である。
したがって、第1の錯化剤は、液体媒体Cの1種以上の不純物と錯体を形成して、第1の析出物を形成する。有利なことには、第1の錯化剤は、媒体Cの1種以上の不純物と選択的に相互作用するが、媒体C中に存在するフェルラ酸と相互作用しないか、又はわずかしか相互作用しない。
媒体Cを第1の錯化剤と接触させた後、第1の析出物P1が形成される。
液体媒体Cに第1の錯化剤を添加した後に得られる媒体を「液体媒体C1」と呼ぶ。媒体C1は、溶媒又は溶媒混合物と、フェルラ酸と、第1の析出物P1と、少なくとも1種の不純物とを含む。
したがって、液体媒体Cを第1の錯化剤と接触させる工程(a)により、第1の析出物P1及び液体媒体C1を得ることが可能であり、液体媒体C1は第1の析出物P1を含む。
液体媒体C1の溶媒は、出発媒体Cの溶媒と、任意選択的な第1の錯化剤の溶媒とを含み得る。好ましい実施形態では、溶媒は水を含むか、又は水からなる。
媒体C1のフェルラ酸は、媒体C1の溶媒に溶解した形態であってよい、及び/又は液体媒体C1の固相であってよい。
既知の又は未同定の不純物は、媒体C1の溶媒に溶解した形態であってよい、及び/又は液体媒体Cの析出物中にあってよい。
いずれか1つの理論にこだわることを望むものではないが、本発明者らは、第1の析出物P1が、少なくとも1種のカチオン(第1の錯化剤)と少なくとも1種の不純物との間で形成された錯体から部分的に又は完全に構成されると考えている。特に、形成される錯体は、二価又は三価のカチオンを含む錯体である。さらに、本発明者らは、少なくとも1種の不純物が、リグニン、セルロース、リグノセルロース、及びヘミセルロースからなる群から選択されるリグノセルロース材料であると考えている。
実施例では、少なくとも1種の不純物は、フェルラ酸の二量体、三量体、若しくは四量体、又はこれらの混合物などの、ヒドロキシケイ皮酸のオリゴマーである。驚くべきことに、第1の錯体は、出発液体媒体C中に存在するフェルラ酸に対して、第1の錯化剤と少なくとも1種の不純物との間で選択的に形成される。
リグノセルロース材料は、セルロース、ヘミセルロース、又はリグニンを含む材料を意味すると理解される。
リグニンは高分子化合物であり、植物細胞壁の主要な構造成分である。
フェルラ酸の二量体は、以下の構造のジヒドロフェルラ酸であってよい:
Figure 2024501603000002
Figure 2024501603000003
フェルラ酸の三量体は、以下構造のデヒドロトリフェルラ酸であってよい:
Figure 2024501603000004
Figure 2024501603000005
フェルラ酸の四量体は、以下の構造のデヒドロテトラフェルラ酸であってよい:
Figure 2024501603000006
したがって、特に、液体媒体Cは、フェルラ酸と、溶媒と、リグニン及びリグノセルロースからなる群から選択される少なくとも1種の不純物とを含む。好ましくは、フェルラ酸は80%以上の純度を示す。
別の形態によれば、液体媒体Cは、フェルラ酸と、溶媒と、フェルラ酸の二量体、三量体、及び四量体からなる群から選択される少なくとも1種の不純物とを含む。好ましくは、フェルラ酸は80%以上の純度を示す。
さらに、本発明者らは、液体媒体C中に存在する不純物がクマル酸を含み得ることを示した。
したがって、上で定義した液体媒体Cは、クマル酸をさらに含み得る。
別の形態によれば、液体媒体C1は、フェルラ酸、溶媒、又は溶媒とクマル酸との混合物を含む。
天然由来のクマル酸は、以下の式に対応する:
Figure 2024501603000007
本発明者らは、液体媒体Cが、固体形態の最初の粗製フェルラ酸の総重量に対して少なくとも0.5重量%のクマル酸、例えば少なくとも0.9重量%のクマル酸、特に2重量%未満のクマル酸を含み得ることを見出した。
一実施形態によれば、出発液体媒体Cは、固体形態の粗製フェルラ酸の総重量に対して少なくとも5重量%のリグニン、例えば12重量%超のリグニン、特に16重量%未満のリグニンを含む。
一態様によれば、出発液体媒体Cは、固体形態の最初の粗製フェルラ酸の総重量に対して、フェルラ酸の二量体、三量体、及び/又は四量体を少なくとも5重量%、例えばフェルラ酸の二量体、三量体、及び/又は四量体を12重量%超、特に16重量%未満含む。
好ましい実施形態によれば、工程(a1)において、工程(a)で得られた液体媒体C1は、40℃~70℃の温度、好ましくは50℃~60℃の温度に加熱される。有利なことには、操作が本発明による温度範囲で行われる場合、フェルラ酸の分解を防止することが可能である。媒体C1が含まれる容器は、熱交換流体などの適切な加熱手段によって加熱することができる。
好ましい実施形態によれば、液体媒体C1のpHは調整され、6~9、好ましくは6.5~7.5である。pHは、塩基、好ましくは強塩基で調整することができる。有利には、塩基は非水溶性無機塩基から選択される。特に、塩基は、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属炭酸水素塩、アルカリ土類金属炭酸水素塩、及びそれらの混合物からなる群から選択される。好ましくは、塩基は、NaOH、KOH、CaO、Ca(OH)、及びNaCOから選択される。さらに、pHを調整することにより、フェルラ酸塩形態のフェルラ酸を得ることが可能になり、その結果、フェルラ酸を液体媒体、特に水性液体媒体に溶解することができる。
工程(a)において形成された第1の析出物P1は、その後、工程(b)において、一方では液体媒体F1を、他方では第1の析出物P1を得るために、液体媒体C1から分離される。
好ましくは、固/液分離工程(b)は加温条件下で行われ、液体媒体C1は、40℃~70℃に加熱され、6~9のpHを示す。
液体媒体F1は、精製されたフェルラ酸と、1種以上の溶媒と、減少した量の少なくとも1種の不純物とを含み、前記不純物は、フェルラ酸の二量体、三量体、及び/又は四量体、クマル酸、並びにリグニンからなる群から選択される。液体媒体F1は均質な液体媒体であり、好ましくは、溶媒は水を含むか又は水からなる。
「精製フェルラ酸」は、固体又は液体媒体中にあるフェルラ酸を意味すると理解され、前記酸は、少なくとも1種の不純物を少なくとも部分的に除去されている。したがって、精製フェルラ酸は、出発粗製フェルラ酸に対して重量基準又はモル基準で減少した量の不純物を含むフェルラ酸である。そのため、精製フェルラ酸は、出発フェルラ酸の純度と比較して高い純度によって特徴付けられる。
有利なことには、工程(b)の後、少なくとも1種の不純物の乾燥重量は、媒体C中の同じ不純物の乾燥重量に対して少なくとも半分に減少する。
有利なことには、液体媒体F1中のフェルラ酸、特に生物由来のフェルラ酸の純度は、87%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上である。
液体媒体F1にも、カチオンの形態の第1の錯化剤が残留の形で含まれる。
液体媒体F1中の第1の錯化剤(カチオン)の重量基準の残留含有量は、媒体F1の重量に対して5ppm以上、好ましくは300ppm以上、より好ましくは400ppm以上である。一態様によれば、液体媒体F1中の第1の錯化剤の重量基準の残留含有量は、媒体F1の重量に関して2000ppm未満である。
したがって、本発明による方法の工程(b)の終了時に、精製された、好ましくは生物由来のフェルラ酸が、フェルラ酸の純粋ではない溶液から得られる。
別の形態によれば、方法は、80%以上の純度を有するフェルラ酸を含む液体媒体の精製方法に関し、この方法は、
- 第1の析出物P1及び液体媒体C1を得る工程(a)であって、液体媒体C1が、溶媒と、フェルラ酸と、第1の析出物P1と、少なくとも1種の不純物、例えばクマル酸とを含む工程、
- 工程(a)で得られた液体媒体C1を加熱する工程(a1)であって、媒体C1が40℃~70℃の温度にされ、液体媒体C1のpHが6~9である工程、並びに
- 精製フェルラ酸を含む液体媒体F1を得るために、第1の析出物P1と加温された媒体C1とを分離する工程(b)、
を含む。
本発明の特定の実施形態では、方法は、第2の錯化剤が液体媒体F1に添加される工程(c)をさらに含む。したがって、工程(c)は、析出物を分離する工程(b)の後に行われる。
第2の錯化剤は、ホスフェートPO -、二水素ホスフェートH(PO、ジホスフェートP 4-、オキサレート(COO) 2-、及びバナデートVO 3-イオン及びそれらの混合物からなる群から選択されるアニオンであってよい。有利には、第2の錯化剤は溶液、好ましくは水溶液である。
通常、第2の錯化剤/残留する第1の錯化剤のモル比は、1~3、好ましくは1.1~1.8である。
媒体F1への第2の錯化剤の添加に続いて、第2の析出物P2が形成される。第2の析出物P2は、第1の析出物P1とは異なる。さらに、第2の析出物P2と、溶媒と、精製フェルラ酸と、フェルラ酸の二量体、三量体、及び/又は四量体、クマル酸、並びにリグニンから選択される少なくとも1種の不純物とを含む液体媒体C2が得られる。液体媒体C2の溶媒は、出発媒体Cの溶媒と、任意選択的な第1の錯化剤の溶媒及び/又は第2の錯化剤の溶媒とを含み得る。好ましい実施形態では、媒体C2の溶媒は、水を含むか又は水からなる。
第2の析出物P2を形成する工程(c)に続いて、方法は、一方では第2の析出物P2を得るために、他方では液体媒体F2を得るために、液体媒体C2から第2の析出物P2を分離する工程(d)を含み得る。
液体媒体F2は、溶媒又は溶媒混合物と、精製フェルラ酸と、少なくとも1種の残留不純物、例えばフェルラ酸の二量体、三量体、及び/又は四量体、クマル酸、並びにリグニンとを含む。液体媒体F2の溶媒は、出発媒体Cの溶媒、第1の錯化剤の溶媒、及び/又は第2の錯化剤の溶媒を含み得る。好ましい実施形態では、媒体F2の溶媒は、水を含むか又は水からなる。有利なことに、本発明者らは、第2の錯化剤の添加により、第2の析出物の分離後に、フェルラ酸発酵によるバニリンの調製プロセスで直接使用することができる液体媒体F2を得ることが可能になることを見出した。
液体媒体F2中の第1の錯化剤の残留含有量は、媒体F2の重量に対して1ppm以上、好ましくは20ppm以上、より好ましくは40ppm以上である。有利なことには、組成物F2中の第1の錯化剤の残留含有量は、媒体F2の重量に対して70ppm未満である。
媒体C1からの第1の析出物P1の分離、又は液体媒体C2からの第2の析出物P2の分離は、限定するものではないが、濾過、遠心分離、沈降による分離などの任意の適切な固/液分離技術によって行うことができる。
本発明によれば、第1の析出物P1又は第2の析出物P2の、それが含まれる液体媒体からの分離は、濾過によって、例えば限外濾過若しくは精密濾過などの膜濾過によって、又は焼結ガラスを通しての濾過によって、又は工業技術、例えば濾布、フィルタープレス、又は濾過カートリッジを用いた濾過によって行われる。
したがって、媒体C1は濾過され、媒体F1に対応する得られた濾液は、90%以上、特に93%以上の純度を有するフェルラ酸を含む。
媒体C2の濾過により、90%以上、特に93%以上の純度を有するフェルラ酸を含む媒体F2に対応する濾液が得られる。
好ましい実施形態によれば、本発明による方法の液体媒体C及び/又はC1及び/又はC2及び/又はF1及び/又はF2は、水からなる水性液体媒体である。有利なことに、本発明による方法は、水性媒体中での操作を可能にし、有機溶媒の使用を含まない。
一般に、液体媒体中では、フェルラ酸は溶解した塩形態、すなわちフェルラ酸塩形態である。フェルラ酸が液体媒体中でフェルラ酸塩形態である場合、本発明による方法は、フェルラ酸を析出させるために液体媒体のpHを調整する工程をさらに含む。pHの調整は、強酸又はルイス酸などの酸の添加によって行うことができる。好ましくは、酸は、HCl、HSO、HPO、又はパラトルエンスルホン酸からなる群から選択される。析出したフェルラ酸は、上述した方法に従って液体媒体から分離され、固体形態の精製されたフェルラ酸を得るために乾燥される。得られる固体形態のフェルラ酸は、従来の技術に従って、例えば大気圧又は減圧下で接触乾燥機を使用することによって乾燥される。
一実施形態によれば、本発明は、フェルラ酸と、溶媒と、少なくとも1種の不純物とを含む液体媒体Cを精製するための方法であって、
- 第1の析出物及び液体媒体C1を得るために、液体媒体Cを第1の錯化剤と接触させる工程(a)、
- 精製フェルラ酸を含む液体媒体F1を得るために、液体媒体C1から第1の析出物P1を分離する工程(b)、
- 固体形態のフェルラ酸を回収する工程、
を含む方法に関する。
有利なことには、本発明による方法は、出発液体媒体Cを濾過する予備工程を必要とせず、そのため多すぎる工程による損失を最小限に抑えることができる。さらに、本発明による方法は、有機溶媒を使用せずに、したがってより環境に優しい方法で行うことができる。したがって、フェルラ酸の天然組成物を得るために、穏やかな条件下で精製プロセスを実施することが可能である。
さらに、有利なことには、媒体F1中又は媒体F2中又は固体形態の精製フェルラ酸の収率は、85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上である。
工程(b)の最後に、一方では媒体F1が単離され、他方では析出物P1が単離される。
したがって、本発明は、析出物P1中に存在するフェルラ酸のオリゴマーを抽出する方法に関する。析出物P1は、通常、一般には塩の形態の少なくとも1種のフェルラ酸のオリゴマーを含む。
したがって、析出物P1中に存在するフェルラ酸のオリゴマーを抽出する方法は、酸を析出物P1と混合する工程(A)を含む。酸は、析出物P1中に存在するフェルラ酸のオリゴマーをプロトン化することを可能にする。好ましくは、使用される酸はリン酸HPOである。酸は、通常、5%~25%、好ましくは7%~15%、例えば8%、9%、10%、11%、12%、13%、又は14%の重量濃度で使用される。工程(A)は、通常15℃~25℃の温度で行われる。工程(A)は、通常撹拌しながら行われる。
工程(A)の完了後、液-液抽出の工程(B)が行われる。工程(B)は、溶媒、好ましくはフェルラ酸のオリゴマーが溶解する溶媒の存在下で行われる。好ましくは、溶媒は非プロトン性溶媒である。溶媒は、通常中程度の極性である。溶媒は、酢酸エチルであってよい。
フェルラ酸のオリゴマーを含む有機相は、分離され、回収される。
任意選択的には、液-液抽出を繰り返すために酸が添加されてもよい。この酸はリン酸であってよい。
このようにして回収された有機相は、溶媒を蒸発させるために蒸留される。
工程(B)の完了後、少なくとも1種のフェルラ酸のオリゴマーを含む組成物(O)が得られる。
任意選択的には、フェルラ酸のオリゴマーを抽出するためのプロセスは、上述した工程(A)の前に、析出物P1を洗浄する少なくとも1つの工程(i)を含んでいてもよい。工程(i)は、塩基、好ましくは強塩基の存在下で行われる。特に、塩基はNaOH又はKOHであってよい。好ましくは、添加される塩基は溶液であり、塩基の濃度は通常10重量%~50重量%、好ましくは20重量%~40重量%である。濃度は30重量%であってもよい。
工程(i)のpHは、通常7以上、好ましくは8以上、非常に好ましくは8.2以上である。工程(i)のpHは、通常10以下、好ましくは9以下、非常に好ましくは8.5以下である。工程(i)は、好ましくは撹拌下で行われる。
理論に拘束されることを望むものではないが、工程(i)は、フェルラ酸のオリゴマーを、通常はフェルラ酸塩の形態で、例えばフェルラ酸亜鉛又はフェルラ酸アルミニウムの形態で析出物P1中に存在するフェルラ酸から分離することを可能にするであろう。
工程(i)の完了後、工程(ii)において、液体媒体は濾過により固相から分離される。この固相に対して新たな工程(i)が行われてもよい。
工程(i)及び(ii)は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10回繰り返されてもよく、それにより少なくとも1種のフェルラ酸のオリゴマーを含む組成物Oを得ることが可能になる。
工程(A)、(B)、並びに任意選択的な(i)及び(ii)は、通常上述した工程(b)の完了後に行われる。工程(A)、(B)、並びに任意選択的な(i)及び(ii)は、工程(c)及び(d)とは独立して実施することができる。したがって、方法により、精製されたフェルラ酸と少なくとも1種のフェルラ酸のオリゴマーとを含む組成物(O)を調製することが可能になる。
本発明は、少なくとも1種のフェルラ酸のオリゴマーを含む組成物(O)にも関する。有利には、組成物(O)は生物由来である。
本発明は、本発明による方法によって得ることができるフェルラ酸の精製された組成物にも関する。通常、組成物のフェルラ酸は塩の形態、すなわちフェルラ酸イオンの形態である。
一態様によれば、本発明によるフェルラ酸の精製された組成物は、精製フェルラ酸と、液相と、フェルラ酸の二量体、三量体、及び/若しくは四量体、クマル酸、並びに/又はリグニンから選択される少なくとも1種の不純物とを含み得る。例えば、フェルラ酸の精製された組成物は、液体媒体F1又は液体媒体F2であってよい。
一態様によれば、本発明によるフェルラ酸組成物は、組成物の重量に対して1重量%~15重量%、好ましくは5重量%~10重量%の精製フェルラ酸を含む水性液体組成物である。
一態様によれば、組成物中のリグニン、又はフェルラ酸の二量体、若しくは三量体、及び/若しくは四量体の残留含有量は、組成物の重量に対して1500~9000ppm、好ましくは2500~8000ppmである。
一態様によれば、第1の錯化剤の残留含有量は、組成物の重量に対して10ppm~650ppm、好ましくは70ppm~200ppmである。
特に、本発明による精製フェルラ酸組成物は固体形態であってもよい。例えば、これは、媒体F1又は媒体F2の酸性化工程後に得られる固体の精製フェルラ酸に対応し得る。
一態様によれば、水性精製フェルラ酸組成物は、90%以上、好ましくは95%以上の純度を有するフェルラ酸を含む。有利なことには、本発明による組成物は、水に不溶性の粒子を示さないか、ほとんど示さない。有利なことには、精製フェルラ酸組成物又は精製フェルラ酸は、微生物によって天然バニリンに変換するためにバイオコンバージョン発酵槽で直接的に又は間接的に使用することができる。非常に有利なことには、液体媒体F2からなる組成物は、例えば欧州特許第0885968号明細書に記載の方法に従って、微生物によってバニリンに変換するために、発酵槽で直接使用することができる。
一態様によれば、本発明による固体フェルラ酸組成物は、85%以上、好ましくは90%以上の純度を示す。例えば、純度は、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、又は98%であってよい。本発明による方法のため、バニリンの製造及び/又は精製に使用される機器の物品は、大幅に減少したレベルの目詰まりを示す。したがって、工業的に容易に使用することができ、特にバニリンの製造中により優れた収率の実現を可能にする、精製されたフェルラ酸組成物を得ることが可能である。
方法の特に好ましい実施では、得られるフェルラ酸組成物は天然フェルラ酸である。
本発明は、フェルラ酸が上で定義した精製プロセスに従って精製される、フェルラ酸の調製方法にも関する。
本発明は、バニリン、特に天然バニリンの調製のための、フェルラ酸の組成物の使用、又はその酸が上述したプロセスによって精製され、得られるフェルラ酸の使用にも関する。
本発明は、上述した方法によりフェルラ酸を含む媒体を精製すること、発酵プロセスによって得られた精製フェルラ酸を天然バニリンに変換することを含む、天然バニリンの製造方法にも関する。
本発明は、本発明の抽出方法によって得ることが可能なフェルラ酸のオリゴマーの組成物にも関する。組成物は、組成物Oであってよい。
本発明は、析出物P1、又は析出物P1中に存在するフェルラ酸のオリゴマーの組成物、又は本発明の抽出方法により得られる組成物の、食品又は化粧品産業の分野における、特に酸化防止剤又はUV安定剤としての使用にも関する。特に、食品又は化粧品産業の分野における、特にフリーラジカル捕捉剤又はラジカル種の捕捉剤としての、特に重合禁止剤、酸化防止剤、又はUV安定剤としての組成物Oの使用である。
図1のスキームを参照すると、出発液体媒体Cは、市販の生物由来の粗製フェルラ酸をその重量の7倍の水と混合することによって調製される。出発粗製フェルラ酸は、82%の純度を示し、同定済みの及び未同定の不純物を含む。得られた混合物は、水性液体媒体Cと、液体媒体Cに懸濁した固体粒子(図示せず)とを含む懸濁液の形態で提供される。工程(a)において、出発液体媒体Cは、第1の錯化剤を含む水溶液と接触させられる。最初の媒体Cと第1の錯化剤の水溶液との混合に続いて、水性液体媒体C1が得られ、第1の析出物P1が形成される。得られる媒体C1は、特に水性液相と第1の析出物P1とを含む懸濁液である。工程(a1)では、水性媒体C1が50℃に加熱され、その後媒体C1のpHが6.8にされる。工程(b)では、第1の析出物P1を分離及び/又は単離するために、加温された液体媒体C1が濾過装置で濾過される。任意選択的には、第1の析出物P1は、アルカリ性pHで50℃の温水で洗浄される。濾過の結果、水と、精製フェルラ酸と、減少した量の少なくとも1種の不純物とを含む液体媒体F1が得られる。さらに、第1の析出物P1は濾過装置によって保持される。有利なことには、このようにして得られた液体媒体C1に含まれるフェルラ酸塩の純度は、出発媒体Cのフェルラ酸の純度よりも高い。最後に、任意選択的な工程において、フェルラ酸を固体形態で得るために、媒体C1がpH2~3まで酸性化される。媒体C1の液体は、濾過によって得られた固体のフェルラ酸から分離される(図示せず)。
図2を参照すると、図1による実施形態の工程(a)、(a1)、及び(b)が行われる。濾過工程(b)に続いて、水性液体媒体F1が得られる。その後、工程(c)において、液体媒体F1は、第2の錯化剤の水溶液と接触させられる。すると、第2の析出物P2が形成される。得られる組成物は、第2の析出物P2と、水性溶媒と、少なくとも1種の残留不純物とを含む媒体C2である。一方では第2の析出物P2を、他方では濾液F2を得るために、媒体C2は工程(d)で濾過される。濾液は回収され、媒体F2に対応し、F2は析出物又は粒子を含まない液体媒体である。有利なことには、組成物F2は、バニリンの調製のための微生物学的プロセスにおいて直接使用することができる。
参照により本明細書に引用される特許、特許出願、及び刊行物の開示が、用語を不確実にするリスクがあるほどに本特許出願の説明と矛盾する場合には、本説明が優先するものとする。
以下の実施例は、本発明を例示することを意図するが、それを限定しない。
実施例1:市販の生物由来のフェルラ酸の精製
フェルラ酸を含む媒体Cは、市販の固体形態のフェルラ酸(55g)と水(409g)とを混合することによって調製した。得られた媒体Cを周囲温度で30分間撹拌する。29mlの硫酸亜鉛水溶液(100g/l)を媒体Cに添加し、次いで媒体を50℃の温度にし、pHを6.8に調整する。得られた媒体C1を濾布を通して濾過し、濾液F1を回収する。このようにして、精製フェルラ酸を含む液体媒体F1が得られる。析出物P1は単離される。
実施例1の結果を以下の表1に示す。
Figure 2024501603000008
実施例2:比較
実施例2は、第1の錯化剤又は第2の錯化剤を添加する工程を含まない。フェルラ酸を含む媒体Cは、市販の固体形態のフェルラ酸(50g)と水(413g)とを混合することによって調製した。得られた媒体Cを周囲温度で30分間撹拌する。媒体を50℃の温度にし、pHを6.8に調整する。得られた媒体C1を濾布を通して濾過し、濾液F1を回収する。このようにして、精製フェルラ酸を含む液体媒体F1が得られる。
実施例2の結果を以下の表に示す。
Figure 2024501603000009
その結果、表2に示されるように、本発明による方法は、フェルラ酸を含む液体媒体の精製を可能にする。
実施例3:実施例1の析出物P1を回収する
析出物P1を水に分散し、30%水酸化ナトリウムでpHを8.2に調整した後、濾過して乾燥する。次いで、この新しい析出物を10重量%のリン酸と接触させる。その後酢酸エチルによる抽出を行う。
有機相を乾燥し、溶媒を蒸発させる。少なくとも1種のフェルラ酸のオリゴマーを含む組成物(O)が得られる。
ラジカル種を捕捉する能力の測定を行った。これは表3及び図3に示されている。Troloxは対照として使用され、これは点線で表されている。組成物(O)は、図3では実線で表されている。
Figure 2024501603000010
この結果は、析出物P1及びフェルラ酸オリゴマー組成物(O)が有利なラジカル種捕捉特性を示すことを示している。特に、析出物P1及び組成物(O)は有利な酸化防止特性を有する。
酸化防止力を測定するためのプロトコル:
6×10-5mol/LのDPPH溶液3mLと、酸化防止活性を測定することが望まれる化合物(様々な濃度のTrolox、析出物P1、及び組成物O)の溶液77μLを分光光度計のキュベットに入れる。
515nmにおける吸光度を5時間かけて定期的に測定する。その後、用量効果曲線をプロットし、次いで有効濃度EC50を決定する。この測定値は、最初のDPPHを50%減少させるために必要な酸化防止剤の濃度を示す。EC50が低いほど、酸化防止剤の効果が高い。

Claims (13)

  1. フェルラ酸と、溶媒と、少なくとも1種の不純物とを含む液体媒体Cの精製方法であって、
    - 第1の析出物及び液体媒体C1を得るために、前記液体媒体Cを第1の錯化剤と接触させる工程(a)、及び
    - 精製フェルラ酸と第1の析出物P1とを含む液体媒体F1を得るために、前記液体媒体C1から前記第1の析出物を分離する工程(b)、
    を含み、
    前記第1の錯化剤が、遷移金属、金属若しくはアルカリ土類金属、又はこれらの混合物からなる群から選択される二価又は三価のカチオンである、方法。
  2. 前記フェルラ酸が生物由来のフェルラ酸である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記液体媒体C1が、90%を超える、好ましくは95%を超える純度を示す精製フェルラ酸を含む、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 工程(a)の後に得られた前記液体媒体C1を40℃~70℃の温度、好ましくは50℃に加熱する工程(a1)を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 工程(a)及び/又は(a1)で得られる組成物のpHが6~9、好ましくは6~7である、請求項4に記載の方法。
  6. 前記第1の錯化剤がアルミニウム又は亜鉛から選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
  7. 第2の析出物及び液体媒体(C2)を得るために、前記媒体F1に第2の錯化剤を添加する工程(c)をさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
  8. 前記第2の錯化剤が、ホスフェートイオン、二水素ホスフェートイオン、又はジホスフェートイオンから選択される、請求項7に記載の方法。
  9. 前記精製フェルラ酸を含む液体媒体(F2)を得るために、前記液体媒体(C2)から前記第2の析出物を分離する工程(d)を含む、請求項7又は8に記載の方法。
  10. 酸を請求項1に記載の方法により得られた前記析出物P1と混合する工程(A)を含む、前記析出物P1中に存在するフェルラ酸のオリゴマーの抽出方法。
  11. 少なくとも1種のフェルラ酸のオリゴマーを含む組成物(O)を得るための液-液抽出工程(B)を含む、請求項10に記載のフェルラ酸のオリゴマーの抽出方法。
  12. 請求項10及び11に記載の方法により得ることが可能な、少なくとも1種のフェルラ酸のオリゴマーを含む組成物(O)。
  13. 食品又は化粧品産業の分野における、特にフリーラジカル捕捉剤又はラジカル種の捕捉剤としての、特に重合禁止剤、酸化防止剤、又はUV安定剤としての、析出物P1、又は前記析出物P1中に存在するフェルラ酸のオリゴマー組成物、又は本発明の抽出方法によって得られる組成物の使用。
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