JP2024160780A - レーザ溶接継手及び自動車用部材 - Google Patents

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Abstract

Figure 2024160780000001
【課題】水素脆化による割れを抑制できるレーザ溶接継手と自動車用部材を提供する。
【解決手段】少なくとも1つの高強度鋼材20と、少なくとも1つの低強度鋼材10と、前記高強度鋼材20と前記低強度鋼材10とを接合する溶接金属100とを備えるレーザ溶接継手1であって、前記高強度鋼材20の引張強度が980MPa以上であり、前記低強度鋼材10の引張強度が980MPa未満であり、前記溶接金属100の終端部101を、前記溶接金属100の延在方向に沿って前記溶接金属100の末端から10mmまでの範囲としたとき、前記溶接金属100の前記終端部101は、前記低強度鋼材10のみに接することを特徴とするレーザ溶接継手1とこれを用いた自動車用部材を提供する。
【選択図】図3

Description

本発明は、レーザ溶接継手及び自動車用部材に関する。
レーザ溶接継手は、複数の鋼材を重ね合わせたり鋼材の端部同士を突き合わせたりする等して配置し、接合部にレーザビームを照射し、レーザビームを照射した部位の鋼材やフィラーを溶融させ、溶融した金属を凝固させて溶接金属を形成することで作製され、複数の鋼材が溶接金属によって接合された構造を有する。
自動車の軽量化によるCO排出量の削減や衝突安全性の向上には高強度鋼材の適用やレーザ溶接を用いた連続溶接が有効である。しかし、高強度鋼材をレーザ溶接によって接合すると、溶接金属の終端部のクレータに生じる凝固割れを起点として水素脆化による割れ(低温割れや水素脆化割れとも称する)が生じることがある。
例えば、自動車の車体の強度及び剛性の向上を目的として近年用いられている980MPa以上の高強度鋼材のレーザ溶接部には炭素が多く含まれるため、溶接金属が硬化しやすく、溶接金属の終端部に水素脆化による割れが発生しやすいという問題がある。このような割れが発生すると、主に直線状に形成される溶接金属の全長に亘って割れが伝播するため、溶接継手のせん断強度や剥離強度といった静的強度が低下するだけでなく、疲労強度も著しく低下することになる。
溶接プロセスにおける割れ防止策としては、例えば特許文献1のように、溶接終端部の形状をJ字状とすることで、溶接割れを抑制できることが報告されているが、J字状を実現できるフランジ幅が必要になり、部材が重くなってしまうという問題がある。また特許文献2のように、溶接後に絶対湿度を低く保った環境下で、再度レーザを照射することで、低温割れの原因の一つである拡散性水素を積極的に抜く方法が報告されているが、2回の照射が必要となり、コストアップとなってしまう。
国際公開第2020/194669号 日本国特開2012-240083号公報
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、水素脆化による割れを抑制できるレーザ溶接継手と自動車用部材を提供することを課題とする。
(1)本発明の一態様に係るレーザ溶接継手は、
少なくとも1つの高強度鋼材と、少なくとも1つの低強度鋼材と、前記高強度鋼材と前記低強度鋼材とを接合する溶接金属とを備えるレーザ溶接継手であって、
前記高強度鋼材の引張強度が980MPa以上であり、
前記低強度鋼材の引張強度が980MPa未満であり、
前記溶接金属の終端部を、前記溶接金属の延在方向に沿って前記溶接金属の末端から10mmまでの範囲としたとき、前記溶接金属の前記終端部は、前記低強度鋼材のみに接することを特徴とする。
(2)上記(1)に記載のレーザ溶接継手は、
前記高強度鋼材が切欠きを有し、前記終端部の少なくとも一部が前記切欠きの内部に位置してもよい。
(3)上記(1)に記載のレーザ溶接継手は、
前記高強度鋼材が孔を有し、前記終端部が前記孔の内部に位置してもよい。
(4)本発明の一態様に係る自動車用部材は、上記(1)から(3)のいずれか1項に記載のレーザ溶接継手を用いる。
本発明に係るレーザ溶接継手と自動車用部材によれば、水素脆化による割れを抑制できる。
溶接金属の終端部を説明するための概略的な平面図である。 図1の溶接金属の中心線に沿って断面視した概略的な切断部端面図である。 切欠きを有する高強度鋼材を備える重ね合わせレーザ溶接継手の一例を説明するための概略的な平面図である。 図3のレーザ溶接継手を断面線A-Aで切断した切断部端面図である。 図3のレーザ溶接継手を断面線B-Bで切断した切断部端面図である。 切欠きを有する高強度鋼材を備える重ね合わせレーザ溶接継手の他の例を説明するための概略的な平面図である。 図6のレーザ溶接継手を断面線A-Aで切断した切断部端面図である。 図6のレーザ溶接継手を断面線B-Bで切断した切断部端面図である。 孔を有する高強度鋼材を備えるレーザ溶接継手の一例を説明するための概略的な平面図である。 図9のレーザ溶接継手を断面線A-Aで切断した切断部端面図である。 重ね合わせレーザ溶接継手の他の例を説明するための概略的な平面図である。 切欠きを有する高強度鋼材を備える重ねすみ肉レーザ溶接継手の一例を説明するための概略的な平面図である。 図12のレーザ溶接継手を断面線A-Aで切断した切断部端面図である。 図12のレーザ溶接継手を断面線B-Bで切断した切断部端面図である。 重ねすみ肉レーザ溶接継手の他の例を説明するための概略的な平面図である。
現在、凝固割れに起因する水素脆化が生じる鋼材は、C量やSi量の多い超ハイテン材等が挙げられるが、自動車全体でみると使用量は多くない。また相手材は、自動車の特性から水素脆化のリスクの低い軟鋼や980MPa程度までのミドルハイテンとなることがほとんどである。また自動車部材ではスポット溶接の打点の配置などの制約から一部を切り欠くことが頻繁に行われる。
そこで、本発明者らは、水素脆化割れのリスクのある超ハイテン材とリスクの低い鋼材との重ね合わせによるレーザ溶接において、超ハイテン材を切り欠く等してレーザ溶接部の終端部を超ハイテン材を含まない位置に配置することで、凝固割れ起因の水素脆化を回避した自動車部材を作製することができるという知見を得た。
以下、本発明の実施形態について例を挙げて説明するが、本発明は以下で説明する例に限定されないことは自明である。以下の説明では、具体的な数値や材料を例示する場合があるが、本発明の効果が得られる限り、他の数値や材料を適用してもよい。また、以下の実施形態の各構成要素は、互いに組み合わせることができる。
また本明細書中において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。本明細書中において、「工程」との用語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
なお、以下の実施形態では、鋼材とは、鋼板、鋼板を平板以外の形状に機械加工した部品、異種の鋼板同士を接合した鋼板を含む。
[レーザ溶接継手]
本実施形態に係るレーザ溶接継手は、複数の鋼材と、複数の鋼材を接合する溶接金属とを備える、レーザ溶接継手である。
レーザ溶接継手は、複数の鋼材を重ね合わせて配置し、接合部にレーザビームを照射し、レーザビームを照射した部位の鋼材やフィラー(溶加材)を溶融させ、溶融した金属を凝固させて溶接金属を形成することで作製され、複数の鋼材が溶接金属によって接合された構造を有する。
レーザ溶接継手の形状は特に限定されず、例えば、複数の鋼材を重ね合わせて配置し、重ね合わせられた鋼材の板面にレーザを照射してレーザ溶接部を形成する重ね合わせレーザ溶接継手や複数の鋼材を重ね合わせて配置し、重ね合わせられた鋼材のうちの1つの鋼材の端面と隣り合う鋼材の板面との間にレーザ溶接部を形成する重ねすみ肉レーザ溶接継手などが挙げられる。
本実施形態のレーザ溶接継手では、少なくとも1つの高強度鋼材と、少なくとも1つの低強度鋼材とを備える。
鋼材の数は特に限定されず、2以上の任意の数とすることができる。
[高強度鋼材]
高強度鋼材は、引張強度が980MPa以上である鋼材である。鋼材の引張強度は引張試験により測定する。具体的には、JIS Z2241に準拠して、例えばJIS5号で規定される形状の試験片を鋼材から採取し、引張試験装置によって測定する。この測定を3箇所行い、その算術平均の値を高強度鋼材の引張強度として規定する。
高強度鋼材の化学組成が、C(炭素):0.1~0.7質量%、Si(シリコン):0.3~2.0質量%、Mn(マンガン):1.0~4.0質量%、N(窒素):0.00~0.05質量%、O(酸素):0.00~0.03質量%、及びP(リン)及びS(硫黄):合計0.001~0.050質量%、Ti:0.001~0.1質量%、Nb:0.001~0.1質量%、Cr:0.001~0.1質量%、Mo:0.001~0.1質量%、Al(アルミニウム):0.01~1.00質量%、Cu:0.001~0.1質量%、V:0.001~0.1質量%、B:0.0001~0.01質量%を含有し、残部がFe(鉄)および不純物を含んでもよい。このような化学組成を有する鋼材は、高い強度を有するので、レーザ溶接継手に優れた強度を付与することができるためより好ましい。
本実施形態に係るレーザ溶接継手では、レーザ溶接継手の強度を高める観点からは、高強度鋼材の引張強度は高いほど好ましい。高強度鋼材の引張強度は、1100MPa以上、又は1300MPa以上であってもよい。
[低強度鋼材]
低強度鋼材は、引張強度が980MPa未満である鋼材である。低強度鋼材の引張強度は上述のような高強度鋼材と同様の手法で測定する。
低強度鋼材の化学組成が、C(炭素):0.001~0.140質量%、Si(シリコン):0.01~0.50質量%、Mn(マンガン):0.1~2.0質量%、N(窒素):0.00~0.05質量%、O(酸素):0.00~0.03質量%、及びP(リン)及びS(硫黄):合計0.001~0.050質量%、Ti:0.001~0.1質量%、Nb:0.001~0.1質量%、Cr:0.001~0.1質量%、Mo:0.001~0.1質量%、Al(アルミニウム):0.01~0.50質量%、Cu:0.001~0.1質量%、V:0.001~0.1質量%、B:0.0001~0.01質量%を含有し、残部がFe(鉄)および不純物を含んでもよい。このような化学組成を有する鋼材は、加工性に優れるためより好ましい。
複数の鋼材は、レーザ溶接継手の母材である。溶接金属によって接合される部位の鋼材の厚さは、レーザ溶接に適したものである限り特に限定されないが、本実施形態のレーザ溶接継手では、高強度鋼材の厚さは、0.8~3.2mmであることが車体軽量化の観点から好ましい。一方、低強度鋼材の厚さは、0.4~3.2mmであることが好ましい。これは、低強度鋼材の厚さが0.4mmよりも薄くなると低強度鋼材のみ溶融した場合に欠陥が発生する可能性があるためである。また、低強度鋼材の厚さが3.2mmを超えると車体軽量化効果が小さくなる。
[溶接金属]
溶接金属は、レーザ溶接時にレーザビームの照射によって鋼材等が溶融・凝固した部位であり、溶接部の一部で、溶接中に溶融凝固した金属である。レーザ溶接時にフィラーを用いる場合には、溶接金属の材料の供給源は接合される複数の鋼材とフィラーである。
鋼材にめっきが施されている場合や酸化スケール付きの鋼材を用いる場合には、めっきの成分や酸化スケールも溶融し、溶接金属を構成する材料となる。溶接金属には、これらの供給源からの元素の他に、空気中の酸素や窒素が取り込まれ、また不可避的な不純物が取り込まれることがある。
図1に、溶接金属100の終端部近傍の概略的な平面図を示す。図1では、鋼材2に溶接金属100がレーザ溶接によって形成された例を示す。図1は、Z座標軸の正方向側からレーザ溶接継手1を見た概略的な平面図である。図1の例では、溶接金属100はY座標軸に沿って延在するように形成されている。
図1の例は、Z座標軸の正方向側からレーザビームを照射して溶接金属100を形成した例である。溶接金属100を形成する際のレーザビームの進行方向はY座標軸の正方向である。通常、溶接金属100の終端部101にはクレータ102の最凹部Pが存在している。クレータ102の最凹部Pとは、クレータ102における最も凹みが深い箇所を指す。
また図2に、図1の溶接金属100の中心線Cに沿って断面視した溶接金属100の終端部101近傍の概略的な切断部端面図を示す。図1の溶接金属100の中心線CはY座標軸と平行であり、図2における切断面はY座標軸及びZ座標軸と平行である。
なお、図1および図2のX座標軸、Y座標軸、Z座標軸はそれぞれが互いに直交する。
本実施形態のレーザ溶接継手では、溶接金属100の終端部101は、溶接金属100に沿って、溶接金属100の末端100eから10mmまでの範囲とする。
溶接金属100の末端100eは、レーザ溶接の終了位置における溶接金属100と鋼材2との境界である。溶接金属100の末端100eは、溶接金属100の外周と中心線Cとの終端部101側の交点とも換言できる。
レーザ溶接の終了位置は、レーザ溶接によって生じるクレータやビードの流れから判断することができる。一般的に、レーザ溶接においては、レーザビームの進行方向と反対の方向に、溶融金属の流れが生じる。そのため、通常、レーザ溶接によって形成された溶接金属(ビードとも称する)の終端部および終端部近傍には、クレータと呼ばれる凹みが生じる。レーザ溶接によって形成された溶接金属の終端部は、溶接金属の最終凝固部であり、この部位では最も溶融金属が不足するため、クレータの最凹部が形成される。
溶接金属と鋼材との境界は表面から目視観察によって確認することができる。
なお、レーザ照射により加熱される範囲はレーザのスポット(照射範囲)よりも広範囲であるため、レーザ溶接の終了位置は、溶接金属の末端と一致するわけではない。
本実施形態のレーザ溶接継手では、溶接金属の終端部が、低強度鋼材のみに接している。
溶接金属の終端部が低強度鋼材のみに接するとは、例えば、図3等に例示するように、溶接金属の終端部が低強度鋼材の板面上に位置し、この板面に垂直な方向からの平面視において溶接金属の終端部が存在する範囲に高強度鋼材が配置されていない状態を意味する。あるいは、溶接金属の終端部が低強度鋼材のみに接するとは、後述する図8に示すように、溶接金属の終端部が低強度鋼材の板面上に位置し、この板面に垂直な方向からの平面視において溶接金属の終端部が存在する範囲に高強度鋼材が配置されていたとしても、この高強度鋼材がレーザ照射によって溶融されずに、低強度鋼材のみが溶融・凝固されて溶接金属の終端部を形成している状態を意味する。ただし、溶接にフィラーを用いる場合は、低強度鋼材およびフィラーが溶融・凝固されて溶接金属の終端部を形成することを含む。
以下に、溶接金属の終端部が、低強度鋼材のみに接している状態を説明する。なお、以下の例では、鋼板を例に挙げて説明する。
本実施形態のレーザ溶接継手では、高強度鋼板が切欠きを有し、終端部の少なくとも一部が切欠きの内部に位置してもよい。
切欠きとは、鋼板端部をV字やU字状に除去した除去部であってもよく、除去する部分の形状は特に限定されない。
図3に、切欠きを有する高強度鋼板の一例を示す。図3は、低強度鋼板10の上に切欠き21を有する高強度鋼板20が重ねられ、これらの鋼板を接合する溶接金属が形成された状態を説明するための概略的な平面図である。
図3は、Z座標軸の正方向側からレーザ溶接継手1を見た概略的な平面図である。図3の例では、溶接金属100はY座標軸に沿って延在するように形成されている。図3は、重ね合わせレーザ溶接継手の一例である。
図3の例は、Z座標軸の正方向側からレーザビームを照射して溶接金属100を形成した例である。溶接金属100を形成する際のレーザビームの進行方向はY座標軸の正方向である。図3の例では、溶接金属100の終端部101が切欠き21の内部に位置している。
図4は、図3のレーザ溶接継手1を断面線A-Aで切断した切断部端面図である。図4に示すように、溶接金属100の終端部101から離れた箇所(定常部とも称する)では、低強度鋼板10と高強度鋼板20が溶接金属100によって接合されている。
図5は、図3のレーザ溶接継手1を断面線B-Bで切断した切断部端面図である。図5に示すように、溶接金属100の終端部101が存在する箇所では、切欠き21が形成されていることにより、高強度鋼板20が重ね合わせられていない。従って、溶接金属100の終端部101は、低強度鋼板10のみに接する。
切欠き21の端面21Aは高強度鋼板20の端面20Aと連続している。
このような切欠きを有していることで、低強度鋼板と高強度鋼板を接合する溶接金属の定常部の延長線上に溶接金属の終端部を配置することができ、溶接スペースを小さくできる。
なお、上記のような切欠きではなくとも、高強度鋼板の板面側から見た際に端部に凹部が形成され、終端部の少なくとも一部がこのような凹部の内部に位置していてもよい。
図4の例では、低強度鋼板10及び高強度鋼板20の板厚方向の全体に亘って溶接金属100が形成されている。しかし、重ね合わせレーザ溶接継手における溶接金属100の溶け込み深さは図4の例に限定されず、例えば、低強度鋼板10の板厚方向の全体に亘って溶接金属100が形成され、高強度鋼板20の一方の板面(低強度鋼板10側の板面)から他方の板面へ向けて、板厚方向の途中まで溶接金属100が形成されていてもよい。なお、この場合は、低強度鋼板10側から(図3でいうZ座標軸の負方向側から)レーザビームを照射して溶接金属100を形成する。
次に、図3に示すレーザ溶接継手に、さらに高強度鋼板を重ねた例を説明する。図6に示すレーザ溶接継手1では、図6のZ座標軸の正方向に、さらなる高強度鋼板30、低強度鋼板10、切欠き21を有する高強度鋼板20の順に重ね合わせられている。そのため、Z座標軸の正方向側からレーザ溶接継手1を見た図6の状態では、図3と同様に見える。
図7は、図6のレーザ溶接継手1を断面線A-Aで切断した切断部端面図である。図7に示すように、溶接金属100の終端部101から離れた箇所(定常部とも称する)では、低強度鋼板10、高強度鋼板20及び高強度鋼板30が溶接金属100によって接合されている。
図8は、図6のレーザ溶接継手1を断面線B-Bで切断した切断部端面図である。図6に示すように、溶接金属100の終端部101が存在する箇所では、高強度鋼板20が重ね合わせられていないが、高強度鋼板30が重ね合わせられている。しかし、図8に示すように、溶接金属100の終端部101では低強度鋼板10のみが溶融・凝固して溶接金属が形成されている。従って、溶接金属100の終端部101は、低強度鋼板10のみに接する。
本実施形態のレーザ溶接継手では、高強度鋼板が孔を有し、終端部が孔の内部に位置してもよい。
孔とは、高強度鋼板の端面から離隔されて設けられた箇所を意味する。すなわち、孔を構成する高強度鋼板の端面は、高強度鋼板の外形を構成する端面とは区別される。孔の形状は特に限定されず、真円、楕円、矩形、三角形等、溶接金属の終端部が収まる大きさであればよい。孔は鋼板の一部を除去した除去部であってもよい。
図9に、孔を有する高強度鋼板の一例を示す。図9は、低強度鋼板10の上に孔23を有する高強度鋼板20が重ねられ、これらの鋼板を接合する溶接金属が形成された状態を説明するための概略的な平面図である。
図9は、Z座標軸の正方向側からレーザ溶接継手1を見た概略的な平面図である。図9の例では、溶接金属100はY座標軸に沿って延在するように形成されている。図9は、重ね合わせレーザ溶接継手の一例である。
図9の例は、Z座標軸の正方向側からレーザビームを照射して溶接金属100を形成した例である。溶接金属100を形成する際のレーザビームの進行方向はY座標軸の正方向である。図9の例では、溶接金属100の終端部101が孔23の内部に位置(孔23を構成する高強度鋼板の端面を23Aとする)している。
図10は、図9のレーザ溶接継手1を断面線A-Aで切断した切断部端面図である。図10に示すように、溶接金属100の終端部101から離れた箇所(定常部とも称する)では、低強度鋼板10と高強度鋼板20が溶接金属100によって接合されている。
図9のレーザ溶接継手1を断面線B-Bで切断した場合の切断部端面図は、図5と同様の図となるため省略する。
孔の内部に終端部を位置させることで、強度や剛性といった継手強度の力学特性を維持することができる。
図11を用いて、上述した切欠きや孔を有さなくとも、溶接金属の終端部が低強度鋼板のみに接している状態を説明する。
図11は、低強度鋼板10の上に高強度鋼板20が重ねられ、これらの鋼板を接合する溶接金属が形成された状態を説明するための概略的な平面図である。
図11は、Z座標軸の正方向側からレーザ溶接継手1を見た概略的な平面図である。図11の例では、溶接金属100はY座標軸に沿って延在する箇所と、Y座標軸に対して角度を有するように延在する箇所とを有するように形成されている。図11は、重ね合わせレーザ溶接継手の一例である。
図11の例は、Z座標軸の正方向側からレーザビームを照射して溶接金属100を形成した例である。溶接金属100を形成する際のレーザビームの進行方向は、途中までY座標軸の正方向であるが、途中からX座標軸の正方向にも進んでいる。そのため、図11の例では、溶接金属100の終端部101が高強度鋼板20上から逸れて、低強度鋼板10上に位置している。
図11のレーザ溶接継手1を断面線A-Aで切断した場合の切断部端面図は、図4と同様の図となるため省略する。また、図11のレーザ溶接継手1を断面線B-Bで切断した場合の切断部端面図は、図5と同様の図となるため省略する。
なお、図11の例では、レーザ溶接の進行方向を途中で変更することで、溶接金属100の終端部101が低強度鋼板10上にのみ位置する例を示した。しかし、溶接金属100の形状はこの例に限定されず、溶接金属100の形状が鋼板の板面上で滑らかに湾曲することで、溶接金属100の終端部101が低強度鋼板10上にのみ位置するようにしてもよい。あるいは、溶接金属100を、高強度鋼板20の端面に対して角度を有するように直線状に形成することで、溶接金属100の終端部101が低強度鋼板10上にのみ位置するようにしてもよい。
上記のように、溶接金属100の形状を調整することで、溶接金属100の終端部101が低強度鋼板10のみに接している状態とすることができるため、切欠きや穴を形成するために工数を増やすことなくレーザ溶接継手を製造することができる。
図12に、切欠きを有する高強度鋼板と低強度鋼板をレーザ溶接により接合する重ねすみ肉レーザ溶接継手の例を示す。図12は、低強度鋼板10の上に切欠き21を有する高強度鋼板20が重ねられ、これらの鋼板を接合する溶接金属が、高強度鋼板20の端面20Aと低強度鋼板10の板面10aの間に形成された状態を説明するための概略的な平面図である。
図12は、Z座標軸の正方向側からレーザ溶接継手1を見た概略的な平面図である。図12の例では、溶接金属100はY座標軸に沿って延在するように形成されている。
図12の例は、Z座標軸の正方向側からレーザビームを照射して溶接金属100を形成した例である。溶接金属100を形成する際のレーザビームの進行方向はY座標軸の正方向である。図12の例では、溶接金属100の終端部101が低強度鋼板10上に位置している。
図13は、図12のレーザ溶接継手1を断面線A-Aで切断した切断部端面図である。図13に示すように、溶接金属100の終端部101から離れた箇所(定常部とも称する)では、低強度鋼板10と高強度鋼板20が溶接金属100によって接合されている。
図13の例では、高強度鋼板20の端面20Aにおいて、高強度鋼板20の板厚方向の全体に亘って溶接金属100が形成され、低強度鋼板10の一方の板面10aから他方の板面10bへ向けて、板厚方向の途中まで溶接金属100が形成されている。なお、低強度鋼板10の板面10aから板面10bへ向けて、板厚方向全体に亘り溶接金属100が形成されていてもよい。
図14は、図12のレーザ溶接継手1を断面線B-Bで切断した切断部端面図である。図14に示すように、溶接金属100の終端部101が存在する箇所では、切欠き21が形成されていることにより、高強度鋼板20が重ね合わせられていない。
切欠き21の端面21Aは高強度鋼板20の端面20Aと連続している。切欠きの形態は、上述のような重ね合わせレーザ溶接継手の場合と同様である。
このような切欠きを有していることで、低強度鋼板と高強度鋼板を接合する溶接金属の定常部の延長線上に溶接金属の終端部を配置することができ、溶接スペースを小さくできる。
また、重ねすみ肉レーザ溶接継手の場合にも、図15に示すように、溶接金属100の終端部101を低強度鋼板10上に位置するようにできる。
図15は、低強度鋼板10の上に高強度鋼板20が重ねられ、これらの鋼板を接合する溶接金属100が、高強度鋼板20の端面20Aと低強度鋼板10の板面10aの間に形成された状態を説明するための概略的な平面図である。
図15は、Z座標軸の正方向側からレーザ溶接継手1を見た概略的な平面図である。図15の例では、溶接金属100はY座標軸に沿って延在する箇所と、Y座標軸に対して角度を有するように延在する箇所とを有するように形成されている。図15は、重ねすみ肉レーザ溶接継手の一例である。
図15の例は、Z座標軸の正方向側からレーザビームを照射して溶接金属100を形成した例である。溶接金属100を形成する際のレーザビームの進行方向は、途中までは高強度鋼板20の端面20Aに沿っているが、途中から高強度鋼板20の端面20Aを離れている。
図15のレーザ溶接継手1を断面線A-Aで破断した場合の切断部端面図は、図13と同様の図となるため省略する。また、図15のレーザ溶接継手1を断面線B-Bで破断した場合の切断部端面図は、図14と同様の図となるため省略する。
なお、図9~図15の例では、低強度鋼板10と高強度鋼板20が重ね合わせられた例を説明したが、さらに高強度鋼板が重ねられていたとしても、図8のように、溶接金属の終端部において低強度鋼板のみを溶融・凝固して溶接金属が形成されている状態であれば、本実施形態に係る効果を奏することができる。
また、上述した低強度鋼板10と高強度鋼板20に、さらに低強度鋼板が重ね合わせられている場合には、溶融金属の終端部において、低強度鋼板同士が溶融して接合されていても、水素脆化による割れが生じず、本実施形態に係る効果を奏することができる。これは、溶接金属の終端部において、水素脆化の原因となる高強度鋼板を含まないためである。
本実施形態のレーザ溶接継手では、溶接金属の末端が、溶接金属の末端から最も近い高強度鋼材の端面から20mm以下の範囲にあることがより好ましい。溶接金属の末端が、溶接金属の末端から最も近い高強度鋼材の端面から20mm以下の範囲から外れるためには、低強度鋼材のサイズを大きくしたり、高強度鋼材に設けた切欠きや孔のサイズを大きくしたりする必要がある。しかし、低強度鋼材のサイズを大きくすると高強度鋼材を用いる軽量化のメリットが相殺される。また、高強度鋼材に設けた切欠きや孔のサイズを大きくすると加工費用が増加する。以上のことから、溶接金属の末端は、溶接金属の末端から最も近い高強度鋼材の端面から20mm以下の範囲にあることがより好ましい。
本実施形態のレーザ溶接継手では、溶接金属の末端は鋼材の板面上に位置し、鋼材の端面までは延在していない。
本発明により、クレータに生じる凝固割れ起因の水素脆化割れが生じない高強度鋼材のレーザ溶接継手が作製可能となった.
上述の例において、レーザ溶接によって形成される溶接金属100の幅や長さは特に限定されず、所望の継手強度や接合する鋼材の形状に適宜合わせるように設計すればよい。また、溶接金属100は直線形状に限られず、例えば、鋼材の板面で湾曲、屈曲していてもよい。
レーザ溶接によって形成される溶接金属を含む溶接部は、溶け込み深さに比べて溶融幅が狭い特徴があり、アーク溶接のように表面溶融幅が広い溶接部とは区別できる。具体的には、溶け込み深さが溶融幅(表裏面ともに溶融している場合は広い側)に対して、1.5倍以上であればレーザ溶接によって形成される溶接金属を含む溶接部とみなす。ただし、ここで言う、溶け込み深さと溶接幅は、それぞれ高強度鋼材と低強度鋼材とが重ね合わされて接合された箇所で測定される。
本実施形態に係るレーザ溶接継手では、複数の鋼材の表面処理については、特に限定されないが、複数の鋼材の少なくとも一つがめっき鋼材であることがより好ましい。めっき鋼材であることで、鋼材の耐食性が向上するという利点がある。めっき鋼材は、アルミ系めっき鋼材や亜鉛系めっき鋼材などが挙げられる。特に、亜鉛系めっきは、化学組成として、Alを含まないため、溶接金属の化学組成を制御しやすいという利点がある。めっきの例として、GIめっき、GAめっき、EGめっき、Zn-Niめっき、Zn-Mgめっき等が挙げられる。また、これらのめっき鋼材は、ホットスタンプ処理されたものであってもよい。
複数の鋼材全てがめっき鋼材であってもよく、複数の鋼材のうちで任意の鋼材がめっき鋼材であってもよい。
[レーザ溶接継手の製造方法]
以下に、本実施形態に係るレーザ溶接継手の製造方法を説明する。この製造方法によれば、本実施形態に係るレーザ溶接継手を好適に製造することができる。しかし、以下に説明する製造方法以外の方法で得られたレーザ溶接継手であっても、上述の要件を満たす限り、本実施形態に係るレーザ溶接継手とみなされることは自明である。
本実施形態に係るレーザ溶接継手の製造方法は、
複数の鋼材を準備する工程(S1:準備工程)と、
複数の鋼材を配置する工程(S2:配置工程)と、
複数の鋼材を接合するための溶接金属を形成するレーザ溶接工程(S3:レーザ溶接工程)と、を含む。
準備工程では、接合する鋼材を準備する。接合する鋼材の厚さや化学組成などは、上述の実施形態のものを採用できる。
高強度鋼材については、上述した切欠き又は孔を有するものを準備してもよい。例えば、プレス成形品では、予め切欠きなどを設けることができる。あるいは、レーザ切断や機械加工などでの加工によって高強度鋼材の一部を除去して切欠き又は孔を形成してもよい。切欠きや孔を設けることで、鋼板の板組を大きくずらしたり、レーザ溶接部を屈曲するように制御したりしなくても、溶接金属の終端部を高強度鋼材が重ね合わされていない箇所に設けることができる。
配置工程では、上記の準備工程で準備した鋼材同士を所定の位置に配置する。配置工程では、製造する製品の形状に合わせ、上述した、重ね合わせレーザ溶接継手や重ねすみ肉レーザ溶接継手などを構成するように、適宜鋼材が配置される。
レーザ溶接工程では、上記の配置工程で配置された複数の鋼材にレーザ溶接を施す。レーザ溶接工程では、鋼材に対してレーザビームを照射することで複数の鋼材を溶融し、溶融した金属が複数の鋼材の間で凝固して溶接金属を形成することで、複数の鋼材同士を接合する。
レーザ溶接工程では、フィラーを供給してレーザ溶接を施すことで、溶接金属を形成してもよい。フィラーとは、例えばソリッドワイヤ、およびフラックス入りワイヤ等のフィラーワイヤである。本実施形態において、溶接金属とは溶接部の一部であって、溶接中に溶融凝固した金属を意味する。ここで「溶融凝固した金属」とは、溶融した鋼材(母材)に由来する金属と溶融したフィラーに由来する金属の両方を意味する。従って、フィラーを使用した場合は、溶接金属とは、鋼材の一部とフィラーとが溶けて混ざり合った金属を指す。
レーザビームの条件は特に限定されないが、汎用性の観点から、COレーザのような10μm、もしくはファイバーレーザやディスクレーザなど1μmの波長を有するレーザ光を用いて、溶接速度が2m/min以上の条件で実施することが好ましい。また溶接安定性の観点から、レーザビーム周囲の雰囲気が大気、もしくはArやHeなどの環境でレーザ溶接を行うことが好ましいが、特に雰囲気は制御しなくてもよい。
上記の実施形態に係るレーザ溶接継手は、自動車用部材に好ましく利用することができる。上記の実施形態に係るレーザ溶接継手が適用される自動車部材の例としては、Aピラー、Bピラー、ルーフレール、サイドシル、フロアクロスメンバー、バンパー、クラッシュボックス、インパネリンフォース、シートフレーム、バッテリーケースなどが挙げられる。
以下、実施例を例示して、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
(実施例1)
種々の引張強度及び板厚を有する鋼板から採取した試験片(150mm×50mm)を準備した。また、各試験片には、表1に示す加工形状を付与した。試験片の加工形状は以下の通りである。
形状1:試験片に切欠きを形成した。
形状2:試験片に孔を形成した。
加工無し:試験片には加工を施さなかった。
表1に示す引張強度、板厚及び加工形状の組み合わせで各試験片を重ね合わせて、下記の条件でレーザ溶接を実施して重ね合わせレーザ溶接継手を作製した。
実験No.14および15については、1枚目の鋼板側にさらに3枚目の鋼板を重ね合わせた。すなわち、例えば、No.15は、図7に例示するように、2枚の高強度鋼板の間に低強度鋼板が挟まれる形態とした。また、No.15は2枚目の鋼板の切欠きと3枚目の鋼板の切欠きとが重なるように各鋼板を重ね合わせた。なお、レーザ照射は表1の1枚目の鋼板側から行った。ただし、実験No.14および15については、表1の3枚目の鋼板側からレーザ照射を行った。
溶接速度:6m/min
レーザの集光形状:鋼板表面で直径0.6mmの円形状とした。
レーザ出力:裏面まで十分貫通が得られるレーザ出力を、板厚によって適宜調整した(3kW~7kWの範囲)。
シールドガス:鋼板の表面側へArを付与した。
表1に示す溶接金属の終端部の形態は下記の通りとした。
溶接形態1:溶接金属の末端が2枚目の鋼板の切欠き又は孔の内部に位置し、2枚目の鋼板上に位置しないようにした。
溶接形態2:溶接金属の末端が2枚目の鋼板上に位置しないように、レーザ溶接の途中でレーザ溶接の方向を制御した。
溶接形態3:溶接金属の末端が1枚目および2枚目の鋼板上に位置するようにした。
すなわち、実験No.2、11および12では、図3に例示するような溶接形態とした。実験No.3、13では、図9に例示するような溶接形態とした。実験No.4では、図11に例示するような溶接形態とした。
また、各実験例における、2枚目の鋼板の端面から溶接金属に沿って溶接金属の末端までの距離Lを表1に示す。
レーザ溶接後の各試験片について、割れの評価試験を行った。具体的には、レーザ溶接後72時間以内に、鋼板表裏面側からの外観撮影および、鋼板表面方向からのX線透過試験により、割れの評価を行った。外観撮影で得られた写真とX線透過試験によって得られた写真とを同サイズに調整して重ね合わせることにより、X線透過試験により得られた写真から読み取ることができる割れ(筋)が、鋼板の重なり合った部分に存在するか否かで、割れ有無を判定した。表1の割れの評価では、鋼板の重なり合った部分に割れ(筋)が存在するものを割れ「あり」とし、割れ(筋)が無いものを割れ「なし」とした。
Figure 2024160780000002
表1の結果から理解されるように、実験No.1では、末端位置が高強度鋼板を含んでいたため、割れが生じた。
実験No.5~7では、2枚目の鋼板の端面から溶接金属に沿った溶接金属の末端までの距離が短く、溶接金属の終端部の一部が高強度鋼板である2枚目の鋼板上に位置していたため、割れが生じた。
実験No.8及び9では、低強度鋼板である2枚目の鋼板に加工を施したが、溶接金属の終端部が高強度鋼板である1枚目の鋼板上に位置していたため、割れが生じた。
実験No.10では、低強度鋼板である2枚目の鋼板上から溶接金属の終端部をずらしたが、溶接金属の終端部が高強度鋼板である1枚目の鋼板上に位置していたため、割れが生じた。
一方、その他の実験例では、割れの評価において、割れが観察されなかった。このことから、本発明の要件を満たすレーザ溶接継手では、水素脆化による割れを抑制できることが理解される。
(実施例2)
種々の引張強度及び板厚を有する鋼板から採取した試験片(150mm×50mm)を準備した。また、各試験片には、表2に示す加工形状を付与した。試験片の加工形状は以下の通りである。
形状1:試験片に切欠きを形成した。
加工無し:試験片には加工を施さなかった。
表2に示す引張強度、板厚及び加工形状の組み合わせで各試験片を重ね合わせて、下記の条件でレーザ溶接を実施して重ねすみ肉レーザ溶接継手を作製した。なお、レーザ照射は表2の2枚目の鋼板側から行った。
溶接速度:6m/min
レーザの集光形状:鋼板表面で直径0.6mmの円形状とした。
レーザ出力:裏面まで十分貫通が得られるレーザ出力を、板厚によって適宜調整した(3kW~7kWの範囲)。
シールドガス:鋼板の表面側へArを付与した。
表2に示す溶接金属の終端部の形態は下記の通りとした。
溶接形態1:溶接金属の末端が2枚目の鋼板の端面から離れ、2枚目の鋼板上に位置しないようにした。
溶接形態2:溶接金属の末端が2枚目の鋼板上に位置しないように、レーザ溶接の途中でレーザ溶接の方向を制御した。
溶接形態3:溶接金属の末端が1枚目および2枚目の鋼板上に位置するようにした。
すなわち、実験No.17では、図12に例示するような溶接形態とした。実験No.18では、図15に例示するような溶接形態とした。
また、各実験例における、2枚目の鋼板の端面から溶接金属の末端までの距離Lを表2に示す。
レーザ溶接後の各試験片について、割れの評価試験を行った。具体的には、レーザ溶接後72時間以内に、鋼板表裏面側からの外観撮影および、鋼板表面方向からのX線透過試験により、割れの評価を行った。外観撮影で得られた写真とX線透過試験によって得られた写真とを同サイズに調整して重ね合わせることにより、X線透過試験により得られた写真から読み取ることができる割れ(筋)が、鋼板の重なり合った部分に存在するか否かで、割れ有無を判定した。表2の割れの評価では、鋼板の重なり合った部分に割れ(筋)が存在するものを割れ「あり」とし、割れ(筋)が無いものを割れ「なし」とした。
Figure 2024160780000003
表2の結果から理解されるように、実験No.16では、終端部が高強度鋼板に配置されるため、割れが生じた。
一方、その他の実験例では、割れの評価において、割れが観察されなかった。このことから、本発明の要件を満たすレーザ溶接継手では、水素脆化による割れを抑制できることが理解される。
本発明に係るレーザ溶接継手と自動車用部材によれば、水素脆化による割れを抑制できるため、産業上極めて有用である。
1 レーザ溶接継手
10 低強度鋼板(低強度鋼材)
20 高強度鋼板(高強度鋼材)
30 高強度鋼板(高強度鋼材)
100 溶接金属
101 終端部

Claims (4)

  1. 少なくとも1つの高強度鋼材と、少なくとも1つの低強度鋼材と、前記高強度鋼材と前記低強度鋼材とを接合する溶接金属とを備えるレーザ溶接継手であって、
    前記高強度鋼材の引張強度が980MPa以上であり、
    前記低強度鋼材の引張強度が980MPa未満であり、
    前記溶接金属の終端部を、前記溶接金属の延在方向に沿って前記溶接金属の末端から10mmまでの範囲としたとき、前記溶接金属の前記終端部は、前記低強度鋼材のみに接する
    ことを特徴とするレーザ溶接継手。
  2. 前記高強度鋼材が切欠きを有し、前記終端部の少なくとも一部が前記切欠きの内部に位置する
    ことを特徴とする請求項1に記載のレーザ溶接継手。
  3. 前記高強度鋼材が孔を有し、前記終端部が前記孔の内部に位置する
    ことを特徴とする請求項1に記載のレーザ溶接継手。
  4. 請求項1から3のいずれか1項に記載のレーザ溶接継手を用いた自動車用部材。
JP2023076127A 2023-05-02 レーザ溶接継手及び自動車用部材 Pending JP2024160780A (ja)

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