JP2024098034A - 被膜積層体及びその形成方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】低光沢で落ち着きのある仕上り感を呈することができ、耐擦り傷性等も具備する被膜を形成する。【解決手段】本発明は、内装材層、及び透明被覆材層を有する被膜積層体であって、上記内装材層は、樹脂成分100重量部に対し、体質顔料200~2000重量部を含む内装材によって形成されるものであり、内装材の塗付け量(固形分換算)は、80~3000g/m2であり、上記透明被覆材層は、透明被覆材によって形成されるものであり、その塗付け量が固形分換算で0.1~30g/m2であることを特徴とする。【選択図】なし

Description

本発明は、建築物内装の表面化粧に適用可能な被膜積層体に関するものである。
従来、建築物の内壁面等に対し、内装材の塗装によって美観性を付与することが行われている。このような内装材の一例として、粉粒体を主成分とするものが知られている。このような内装材では、低光沢で落ち着きのある仕上り感等を得ることができる。
特許文献1には、室内のクロス壁を改装する内装材として、粒状骨材、粉末状充填材、繊維状物質、水溶性糊料、合成樹脂バインダー等を含む塗材が記載されている。このような内装材では、聚楽調等の仕上げを得ることができるが、その被膜表面に擦り傷がつきやすい場合がある。
特許文献2には、内装材に対しクリヤー塗料による透明被膜を形成することが記載されている。このような透明被膜を設けることにより、内装材の耐擦り傷性向上が期待できる。
特開平11-141090号公報 特開平8-89887号公報
しかしながら、特許文献2のように、内装材を透明被膜で覆うと、内装材固有の仕上り感が損われるおそれがある。
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、低光沢で落ち着きのある仕上り感を呈することができ、耐擦り傷性等も具備する被膜を形成することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討の結果、特定の内装材層、及び透明被覆材層を有する被膜積層体に想到し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の特徴を有するものである。
1.内装材層、及び透明被覆材層を有する被膜積層体であって、
上記内装材層は、樹脂成分100重量部に対し、体質顔料200~2000重量部を含む内装材によって形成されるものであり、
内装材の塗付け量(固形分換算)は、80~3000g/m であり、
上記透明被覆材層は、透明被覆材によって形成されるものであり、その塗付け量が固形分換算で0.1~30g/mであることを特徴とする被膜積層体。
2.前記内装材層は、前記内装材を0~50℃で乾燥させて得られるものであることを特徴とする1.に記載の被膜積層体。
3.前記透明被覆材層は、前記透明被覆材を0~50℃で乾燥させて得られるものであることを特徴とする1.に記載の被膜積層体。
4.内装材層、及び透明被覆材層を有する被膜積層体の形成方法であって、
上記内装材層は、樹脂成分100重量部に対し、体質顔料200~2000重量部を含む内装材を塗付け量(固形分換算)が80~3000g/m となるように塗付して内装材層を形成し
上記内装材層に対し、透明被覆材を、その塗付け量が固形分換算で0.1~30g/mとなるように塗付して透明被覆層を形成することを特徴とする被膜積層体の形成方法。
5.前記内装材を塗付後、0~50℃で乾燥させて内装材層を形成することを特徴とする4.に記載の被膜積層体の形成方法。
6.前記透明被覆材を塗布後、0~50℃で乾燥させて透明被覆材層を形成することを特徴とする4.に記載の被膜積層体の形成方法。
本発明によれば、低光沢で落ち着きのある仕上り感を呈することができ、耐擦り傷性等も具備する被膜が得られる。
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
本発明は、内装材層、及び透明被覆材層を有する被膜積層体であり、内装材によって形成される被膜と、透明被覆材によって形成される被膜との積層によって得られるものである。本発明の被膜積層体は、建築物内装(内壁面等)の表面化粧に適用可能である。
[内装材層]
本発明における内装材層は、樹脂成分100重量部に対し、体質顔料200~2000重量部を含むものである。このような内装材層は、低光沢で落ち着きのある仕上り感を表出することができるものであり、上記樹脂成分と体質顔料を含む内装材の塗付(塗装)によって形成することができる。なお、本発明において、「α~β」は「α以上β以下」と同義である。
内装材における樹脂成分は、体質顔料等の粉粒体を固定化する役割等を担う成分である。樹脂成分の種類としては、例えば、セルロース、ポリビニルアルコール、エチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリルシリコン樹脂、フッ素樹脂等、あるいはこれらの複合系等を挙げることができる。これらは1種または2種以上で使用することができる。樹脂成分の形態としては、例えば、水溶性樹脂、水分散性樹脂(樹脂エマルション)、溶剤可溶形樹脂、無溶剤形樹脂、非水分散形樹脂、粉末樹脂等が挙げられ、この中でも水溶性樹脂及び/または水分散性樹脂が好ましく、とりわけ水分散性樹脂を含む態様が好適である。水溶性樹脂及び/または水分散性樹脂の使用により、水性内装材を得ることができる。また、これら樹脂成分は、架橋反応性を有するもの、架橋反応性を有さないもののいずれであってもよい。
内装材における体質顔料は、低光沢化に寄与する成分であり、さらに、自然な質感の付与、塗装作業性向上化等にも寄与する成分である。体質顔料としては、例えば、重質炭酸カルシウム、軽微性炭酸カルシウム、カオリン、クレー、陶土、チャイナクレー、珪藻土、含水微粉珪酸、タルク、バライト粉、硫酸バリウム、沈降性硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、シリカ粉、樹脂粉、樹脂ビーズ、水酸化アルミニウム等が挙げられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。体質顔料の平均粒子径は、好ましくは50μm未満、より好ましくは0.5~45μm、さらに好ましくは1~40μmである。体質顔料の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置によって測定される値である。
体質顔料の構成比率は、樹脂成分の固形分100重量部に対し200~2000重量部であり、好ましくは300~1800重量部、より好ましくは400~1600重量部、さらに好ましくは500~1500重量部である。体質顔料の構成比率が、上記下限以上であることにより、低光沢化、自然な質感の付与、塗装作業性向上化等の点で好適であり、比較的薄膜で平坦な被膜を形成する場合にも有利である。体質顔料の構成比率が、上記上限以下であることにより、被膜割れ抑制等の点で好適である。
内装材は、上記成分に加え、さらに骨材を含むことができる。骨材は、自然な質感の付与、塗装作業性向上化等に寄与する成分である。骨材としては、例えば、大理石、御影石、蛇紋岩、花崗岩、蛍石、寒水石、長石、珪石、珪砂等の粉砕物、陶磁器粉砕物、セラミック粉砕物、ガラス粉砕物、ガラスビーズ、樹脂粉砕物、樹脂ビーズ、金属粒等、あるいは、これらの表面を着色コーティングしたもの等が挙げられる。これらは、1種または2種以上で使用できる。
本発明では、骨材として着色骨材を含むことができる。着色骨材としては、何らかの色が視認できる骨材が使用できる。着色骨材の色は、例えば、天然由来のものであってもよいし、人工的に付与されたものであってもよい。着色骨材の使用により、内装材層の発色性を高めることができ、所望の色彩を付与することが可能となる。
骨材は、前述の体質顔料や後述の着色顔料よりも、平均粒子径が大であるが、その平均粒子径は、好ましくは0.05~3mm、より好ましくは0.06~1mm、さらに好ましくは0.07~0.5mm、特に好ましくは0.075~0.2mmである。骨材がこのような平均粒子径を有することにより、比較的少ない塗付け量で美観性の高い内装材層を形成することができ、内装材層の薄膜化、軽量化等の点でも有利である。なお、骨材の平均粒子径は、JIS Z8801-1:2000に規定される金属製網ふるいを用いてふるい分けを行い、その重量分布の平均値を算出することによって得られる値である。
骨材の構成比率は、樹脂成分の固形分100重量部に対し、好ましくは20~2000重量部であり、より好ましくは50~1600重量部、さらに好ましくは100~1400重量部、特に好ましくは200~1200重量部である。骨材の構成比率が、上記下限以上であることにより、自然な質感の付与、塗装作業性向上化等の点で好適である。骨材の構成比率が、上記上限以下であることにより、被膜割れ抑制等の点で好適であり、比較的薄膜で平坦な被膜を形成する場合にも有利である。このような観点から、体質顔料と骨材との重量比(体質顔料:骨材)は、好ましくは95:5~20:80、より好ましくは90:10~40:60、さらに好ましくは85:15~50:50である。
内装材は、上記成分に加え、さらに着色顔料を含むことができる。着色顔料は、内装材層の発色性、隠蔽性等に寄与する成分である。着色顔料の使用により、内装材層に所望の色彩を付与することが可能となる。
着色顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック、黒鉛、黒色酸化鉄、鉄‐マンガン複合酸化物、鉄‐銅‐マンガン複合酸化物、鉄‐クロム複合酸化物、鉄‐クロム‐コバルト複合酸化物、銅‐クロム複合酸化物、銅‐マンガン‐クロム複合酸化物、銅-マグネシウム複合酸化物、ビスマス-マンガン複合酸化物、弁柄、モリブデートオレンジ、パーマネントレッド、パーマネントカーミン、アントラキノンレッド、ペリレンレッド、キナクリドンレッド、黄色酸化鉄、チタンイエロー、ファーストイエロー、ベンツイミダゾロンイエロー、クロムグリーン、コバルトグリーン、フタロシアニングリーン、群青、紺青、コバルトブルー、フタロシアニンブルー、キナクリドンバイオレット、ジオキサジンバイオレット、アルミニウム顔料、パール顔料等が挙げられる。これらは、1種または2種以上で使用できる。着色顔料の平均粒子径は、好ましくは2μm以下、より好ましくは0.01~1μmである。着色顔料の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置によって測定される値である。
着色顔料の構成比率は、樹脂成分の固形分100重量部に対し、好ましくは1~200重量部であり、より好ましくは5~180重量部、さらに好ましくは10~160重量部、特に好ましくは20~150重量部である。着色顔料の構成比率が、上記下限以上であることにより、発色性、隠蔽性等の点で好適である。着色顔料の構成比率が、上記上限以下であることにより、被膜割れ抑制、自然な質感の付与等の点で好適である。着色顔料と着色骨材を併用した場合は、これらの複合的な発色が可能となり、質感、自然感、きめ細やかさ等を高めることもができる。
内装材は、本発明の効果を著しく損なわない限り、上記以外の成分を含むこともできる。このような成分としては、例えば、増粘剤、造膜助剤、レベリング剤、湿潤剤、可塑剤、凍結防止剤、pH調整剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、分散剤、消泡剤、吸着剤、繊維、撥水剤、親水化剤、架橋剤、カップリング剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、触媒、溶剤、水等が挙げられる。内装材は、上述の樹脂成分、体質顔料、及び必要に応じ上記各成分等を常法により均一に混合することで製造できる。
本発明における内装材層は、建築物の内壁面等の被塗面に上記内装材を塗付・乾燥することによって形成できる。内装材層は、透明被覆材と同時期に塗装して新設被膜として形成することができる。また、内装材層は、透明被覆材の塗装前に予め旧塗膜として存在するものであってもよい。
被塗面を構成する下地としては、例えば、コンクリート、モルタル、磁器タイル、繊維混入セメント板、セメント珪酸カルシウム板、スラグセメントパーライト板、セメント板、ALC板、サイディング板、石膏ボード、合板、押出成形板、鋼板、プラスチック板等が挙げられる。これら下地の表面は、何らかの表面処理(例えば、パテ、シーラー、サーフェーサー、フィラー等による処理)が施されたものでもよく、既に塗膜が形成されたものや、壁紙等が貼着されたもの等であってもよい。シーラー、サーフェーサー、フィラー等の下塗材を用いる場合は、その色調を内装材の近似色(共色)に設定することができる。
内装材の塗装においては、例えば、スプレー、ローラー、刷毛、コテ、ヘラ等の器具を用いることができる。具体的に、内装材を被塗面に塗着させる際には、例えば、スプレー、ローラー、コテ、ヘラ等の器具を用いることができる。内装材を被塗面に塗着させたときの形状や量は、所望の仕上り状態、美観性等に応じて適宜設定することができる。次いで、塗着した内装材を塗り広げる場合には、例えば、コテ、ヘラ、ローラー等の器具を用いることができる。このうち、内装材を塗り広げる際に、コテ、ヘラ等を使用した場合は、塗面を均すことで平坦な内装材層が得られやすくなる。本発明では、少なくとも内装材を塗り広げる際に、コテを用いることが望ましく、内装材を被塗面に塗着させる際及び内装材を塗り広げる際に、コテを用いることがより望ましい。内装材を塗り広げる際には、霧吹き等で水や溶剤を塗面に供給しつつ塗面を均すこともできる。
内装材の塗付け量(固形分換算)は、好ましくは80~3000g/m、より好ましくは150~1000g/m、さらに好ましくは200~750g/m、特に好ましくは300~700g/mである。本発明では、比較的少ない塗付け量で美観性の高い内装材層を形成することができ、被膜の薄膜化、軽量化等を図ることもできる。
内装材塗装後の乾燥は、常温(好ましくは0~50℃、より好ましくは5~45℃)で行えばよく、必要に応じ加熱することもできる。
このような内装材によって形成される内装材層は、低光沢で落ち着きのある仕上り感を呈することができる。内装材層の鏡面光沢度(測定角度60度)は、好ましくは40以下、より好ましくは20以下、さらに好ましくは10以下である。
内装材層は、1種または2種以上の内装材を用いて形成することができる。2種以上の異色の内装材を用いた場合は、多色が混在する色彩豊かな内装材層を形成することもできる。
本発明では、内装材の塗装後、内装材層の表面に研磨処理を施すことができる。研磨処理は、例えば、被膜の平滑性向上等の目的で行うことができる。研磨処理は、研磨布紙等を用いて公知の方法により行えばよい。研磨布紙の粒度は、所望の平滑度合に応じて適宜選択することができる。2種以上の研磨布紙を使用して処理を行うこともできる。また、研磨処理においては、必要に応じ水等で被膜表面を湿潤させながら研磨を行うこともできる。研磨によって発生した粉は、エアブローやウエス等で除去すればよい。
[透明被覆材層]
本発明では、上記内装材層の表面に透明被覆材層を積層する。透明被覆材層は、その塗付け量が固形分換算で0.1~30g/mである。本発明では、このような内装材層と透明被覆材層との積層によって、低光沢で落ち着きのある仕上り感を呈することができ、耐擦り傷性も具備する被膜を得ることができる。
透明被覆材層は、樹脂成分を含む透明被覆材の塗付(塗装)によって得ることができる。透明被覆材における樹脂成分としては、例えば、セルロース、ポリビニルアルコール、エチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリルシリコン樹脂、フッ素樹脂等、あるいはこれらの複合系等を挙げることができる。これらは1種または2種以上で使用することができる。樹脂成分の形態としては、例えば、水溶性樹脂、水分散性樹脂(樹脂エマルション)、溶剤可溶形樹脂、無溶剤形樹脂、非水分散形樹脂、粉末樹脂等が挙げられ、この中でも水溶性樹脂及び/または水分散性樹脂が好ましく、とりわけ水分散性樹脂を含む態様が好適である。水溶性樹脂及び/または水分散性樹脂の使用により、水性透明被覆材を得ることができる。また、これら樹脂成分は、架橋反応性を有するもの、架橋反応性を有さないもののいずれであってもよい。
透明被覆材における樹脂成分のガラス転移温度は、好ましくは20℃以上、より好ましくは25~80℃、さらに好ましくは30~60℃である。透明被覆材がこのような樹脂成分を含むことにより、耐擦り傷性等をいっそう高めることができる。このガラス転移温度は、Foxの計算式により求めることができる。
透明被覆材における樹脂成分としては、アクリル樹脂エマルションが好適である。アクリル樹脂エマルションは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とする重合体粒子の水分散体である。このようなアクリル樹脂エマルションは、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、及び必要に応じその他のモノマーを含むモノマー群を、公知の方法で乳化重合することによって得ることができる。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは、1種または2種以上で使用できる。このような(メタ)アクリル酸アルキルエステルの構成比率は、アクリル樹脂エマルションを構成する全モノマーに対し、好ましくは30重量%以上、より好ましくは40~99.9重量%、さらに好ましくは50~99.5重量%である。なお、本発明では、アクリル酸アルキルエステルとメタクリル酸アルキルエステルを合わせて、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと表記している。
その他のモノマーとしては、例えばカルボキシル基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、ピリジン系モノマー、水酸基含有モノマー、ニトリル基含有モノマー、アミド基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、カルボニル基含有モノマー、アルコキシシリル基含有モノマー、芳香族モノマー、スルホン酸基含有モノマー、フッ素含有モノマー、ポリオキシアルキレン鎖含有モノマー、ジビニル系モノマー、トリビニル系モノマー、紫外線吸収性基含有モノマー、光安定性基含有モノマー等が挙げられる。これらは、1種または2種以上で使用できる。これらその他のモノマーの構成比率は、アクリル樹脂エマルションを構成する全モノマーに対し、好ましくは0.1~60重量%、より好ましくは0.5~50重量%である。
アクリル樹脂エマルションとしては、上記条件を満たすものが使用でき、例えば、アクリルスチレン樹脂エマルション、エポキシ変性アクリル樹脂エマルション、ウレタン変性アクリル樹脂エマルション、シリコン変性アクリル樹脂エマルション、フッ素変性アクリル樹脂エマルション等を使用することもできる。また、アクリル樹脂エマルションの形態は、例えば、多段階重合で得られる多層構造型エマルション(コアシェル型エマルション)等であってもよいし、架橋反応を生じる架橋反応型エマルション等であってもよい。
アクリル樹脂エマルションの平均粒子径は、好ましくは30~200nm、より好ましくは50~160nmである。この平均粒子径は、動的光散乱法により測定される値(測定温度は25℃)である。
透明被覆材における樹脂成分(固形分)の比率は、好ましくは1~50重量%、より好ましくは2~30重量%、さらに好ましくは3~15重量%である。
透明性被覆材は、本発明の効果を著しく損なわない限り、上記以外の成分を含むこともできる。このような成分としては、例えば、着色顔料、体質顔料、艶消し剤、増粘剤、造膜助剤、レベリング剤、湿潤剤、可塑剤、凍結防止剤、pH調整剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、分散剤、消泡剤、吸着剤、繊維、撥水剤、親水化剤、架橋剤、カップリング剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、触媒、溶剤、水等が挙げられる。透明被覆材は、上述の樹脂成分、及び必要に応じ上記各成分等を常法により均一に混合することで製造できる。
透明被覆材の加熱残分は、好ましくは1~50重量%、より好ましくは2~30重量%、さらに好ましくは3~15重量%である。これにより、透明被覆材の塗装によるムラを十分に抑制することができ、均一な透明被覆材層が得られやすくなる。なお、ここに言う加熱残分は、塗装時における透明被覆材の加熱残分であり、透明被覆材を希釈して塗装する場合は、希釈後の透明被覆材を対象とする。加熱残分は、JIS K5601-1-2「加熱残分」の方法に準じ、加熱温度135℃、加熱時間60分の条件にて測定したときの値である。
透明被覆材の塗装においては、例えば、スプレー、ローラー、刷毛等の器具を用いることができる。透明被覆材塗装後の乾燥は、常温(好ましくは0~50℃、より好ましくは5~45℃)で行えばよく、必要に応じ加熱することもできる。
透明被覆材の塗付け量は、固形分換算で0.1~30g/mであり、好ましくは0.5~20g/m、より好ましくは1~10g/mである。これにより、低光沢で落ち着きのある仕上り感が得られ、耐擦り傷性等を高めることができる。研磨処理を施した内装材層に対しては、研磨による白色化を抑制することもできる。また、研磨によって傷等が生じた場合は、その傷を補修することもできる。透明被覆材の塗付け量が上記下限を下回る場合は、耐擦り傷性等において十分な効果が得られ難い。透明被覆材の塗付け量が上記上限を上回る場合は、低光沢で落ち着きのある仕上り感が得られ難くなる。
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより明確にするが、本発明はこの実施例に限定されない。
内装材、透明被覆材の製造には、以下の原料を用いた。
・樹脂A:アクリル樹脂エマルション(固形分50重量%、ガラス転移温度30℃、平均粒子径120nm)
・樹脂B:アクリル樹脂エマルション(固形分50重量%、ガラス転移温度40℃、平均粒子径110nm)
・体質顔料A:重質炭酸カルシウム(平均粒子径15μm)
・体質顔料B:樹脂ビーズ(平均粒子径8μm)
・骨材A:白色珪砂(平均粒子径150μm)
・着色顔料A:黒色顔料分散液(カーボンブラック(平均粒子径0.05μm)の20重量%分散液)
・着色顔料B:黄色顔料分散液(黄色酸化鉄(平均粒子径0.5μm)の50重量%分散液)
・着色顔料C:赤色顔料分散液(弁柄(平均粒子径0.2μm)の50重量%分散液)
・着色顔料D:白色顔料分散液(酸化チタン(平均粒子径0.3μm)の60重量%分散液)
・繊維:無機系繊維(平均繊維長0.1mm)
・分散剤:ポリカルボン酸系分散剤
・造膜助剤:エーテル系造膜助剤
・増粘剤:ヒドロキシエチルセルロース3重量%水溶液
・消泡剤:シリコーン系消泡剤
・内装材1の製造
樹脂A200重量部(固形分換算100重量部)に対し、体質顔料A830重量部、骨材670重量部、着色顔料A0.2重量部、着色顔料B0.2重量部、着色顔料C0.05重量部、着色顔料D65重量部、繊維15重量部、分散剤5重量部、造膜助剤12重量部、増粘剤160重量部、水60重量部、消泡剤5重量部、を常法により混合・攪拌することによって内装材1(淡灰色)を製造した。
・内装材2の製造
樹脂A200重量部(固形分換算100重量部)に対し、体質顔料A980重量部、骨材520重量部、着色顔料A18重量部、着色顔料B18重量部、着色顔料C6重量部、着色顔料D35重量部、繊維15重量部、分散剤5重量部、造膜助剤12重量部、増粘剤160重量部、水60重量部、消泡剤5重量部、を常法により混合・攪拌することによって内装材2(濃灰色)を製造した。
・透明被覆材1の製造
樹脂B200重量部(固形分換算100重量部)に対し、造膜助剤18重量部、消泡剤2重量部を混合し、これに水を加えて、加熱残分5重量%の透明被覆材1を製造した。
・透明被覆材2の製造
樹脂B200重量部(固形分換算100重量部)に対し、体質顔料B20重量部、造膜助剤18重量部、消泡剤2重量部を混合し、これに水を加えて、加熱残分5重量%の透明被覆材2を製造した。
(実施例1)
被塗面として、予め灰色のシーラー塗装を施したスレート板を用意した。この被塗面上に、内装材1をコテで塗着させ、直ちにこれらをコテで塗り広げて均すことにより塗面を形成した。内装材1の塗付け量(固形分換算)は450g/mとした。24時間乾燥後、内装材被膜の右半面に対し、透明被覆材1を塗付け量(固形分換算)6g/mにてローラー塗装後、7日間乾燥養生した。以上の方法で得られた被膜外観を確認したところ、右半面(透明被覆材層あり)は、左半面(透明被覆材層なし)と同程度の低光沢であり、平坦な落ち着きのある仕上り感の淡灰色被膜であった。右半面の被膜表面を布で擦ったところ、特に異常は認められず耐擦り傷性は良好であった。
(実施例2)
実施例1と同様の被塗面上に、内装材1をコテで塗着させ、直ちにこれらをコテで塗り広げて均すことにより塗面を形成した。内装材1の塗付け量(固形分換算)は450g/mとした。24時間乾燥後、内装材被膜の表面を研磨布紙にて軽く研磨した。次いで、内装材被膜の右半面に対し、透明被覆材1を塗付け量(固形分換算)3g/mにてローラー塗装後、7日間乾燥養生した。以上の方法で得られた被膜外観を確認したところ、右半面(透明被覆材層あり)は、左半面(透明被覆材層なし)と同程度の低光沢であり、平坦な落ち着きのある仕上り感の淡灰色被膜であった。また、左半面は研磨によって若干白色化していたが、右半面ではその白色化が解消されていた。右半面の被膜表面について、実施例1と同様の方法で耐擦り傷性を確認したところ、特に異常は認められず良好であった。
(実施例3)
実施例1と同様の被塗面上に、内装材1と内装材2が隣接しつつ一部重なり合った状態で混在するように、コテで塗着させ、直ちにこれらをコテで塗り広げて均すことにより塗面を形成した。内装材1の塗付け量(固形分換算)は250g/m、内装材2の塗付け量(固形分換算)は200g/mとした。24時間乾燥後、内装材被膜の表面を研磨布紙にて軽く研磨した。次いで、内装材被膜の右半面に対し、透明被覆材1を塗付け量(固形分換算)2g/mにてローラー塗装後、7日間乾燥養生した。以上の方法で得られた被膜外観を確認したところ、右半面(透明被覆材層あり)は、左半面(透明被覆材層なし)と同程度の低光沢であり、平坦な落ち着きのある仕上り感の被膜であった。得られた被膜は、淡灰色と濃灰色の領域が混在し、さらにこれらの中間的な色調による濃淡変化が視認されるモルタル調の美観性を呈していた。また、左半面は研磨によって若干白色化していたが、右半面ではその白色化が解消されていた。右半面の被膜表面について、実施例1と同様の方法で耐擦り傷性を確認したところ、特に異常は認められず良好であった。
(実施例4)
実施例1と同様の被塗面上に、内装材1をコテで塗着させ、直ちにこれらをコテで塗り広げて均すことにより塗面を形成した。内装材1の塗付け量(固形分換算)は450g/mとした。24時間乾燥後、内装材被膜の表面を研磨布紙にて軽く研磨した。次いで、内装材被膜の右半面に対し、透明被覆材2を塗付け量(固形分換算)3g/mにてローラー塗装後、7日間乾燥養生した。以上の方法で得られた被膜外観を確認したところ、右半面(透明被覆材層あり)は、左半面(透明被覆材層なし)と同程度の低光沢であり、平坦な落ち着きのある仕上り感の淡灰色被膜であった。また、左半面は研磨によって若干白色化していたが、右半面ではその白色化が解消されていた。右半面の被膜表面について、実施例1と同様の方法で耐擦り傷性を確認したところ、特に異常は認められず良好であった。
(比較例1)
実施例1と同様の被塗面上に、内装材1をコテで塗着させ、直ちにこれらをコテで塗り広げて均すことにより塗面を形成した。内装材1の塗付け量(固形分換算)は450g/mとした。24時間乾燥後、内装材被膜の右半面に対し、透明被覆材1を塗付け量(固形分換算)0.05g/mにてローラー塗装後、7日間乾燥養生した。以上の方法で得られた被膜外観を確認したところ、右半面(透明被覆材層あり)は、左半面(透明被覆材層なし)と同程度の低光沢であり、平坦な落ち着きのある仕上り感の淡灰色被膜が得られたが、右半面の被膜表面について、実施例1と同様の方法で耐擦り傷性を確認したところ、一部擦り傷が生じた。
(比較例2)
実施例1と同様の被塗面上に、内装材1をコテで塗着させ、直ちにこれらをコテで塗り広げて均すことにより塗面を形成した。内装材1の塗付け量(固形分換算)は450g/mとした。24時間乾燥後、内装材被膜の右半面に対し、透明被覆材1を塗付け量(固形分換算)50g/mにてローラー塗装後、7日間乾燥養生した。以上の方法で得られた被膜外観を確認したところ、右半面(透明被覆材層あり)は、左半面(透明被覆材層なし)に比べ光沢が発現し、内装材1の被膜とは異なる仕上り感となった。

Claims (6)

  1. 内装材層、及び透明被覆材層を有する被膜積層体であって、
    上記内装材層は、樹脂成分100重量部に対し、体質顔料200~2000重量部を含む内装材によって形成されるものであり、
    内装材の塗付け量(固形分換算)は、80~3000g/m であり、
    上記透明被覆材層は、透明被覆材によって形成されるものであり、その塗付け量が固形分換算で0.1~30g/mであることを特徴とする被膜積層体。
  2. 前記内装材層は、前記内装材を0~50℃で乾燥させて得られるものであることを特徴とする請求項1に記載の被膜積層体。
  3. 前記透明被覆材層は、前記透明被覆材を0~50℃で乾燥させて得られるものであることを特徴とする請求項1に記載の被膜積層体。
  4. 内装材層、及び透明被覆材層を有する被膜積層体の形成方法であって、
    上記内装材層は、樹脂成分100重量部に対し、体質顔料200~2000重量部を含む内装材を塗付け量(固形分換算)が80~3000g/m となるように塗付して内装材層を形成し
    上記内装材層に対し、透明被覆材を、その塗付け量が固形分換算で0.1~30g/mとなるように塗付して透明被覆層を形成することを特徴とする被膜積層体の形成方法。
  5. 前記内装材を塗付後、0~50℃で乾燥させて内装材層を形成することを特徴とする請求項4に記載の被膜積層体の形成方法。
  6. 前記透明被覆材を塗布後、0~50℃で乾燥させて透明被覆材層を形成することを特徴とする請求項4に記載の被膜積層体の形成方法。
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