JP2024080356A - 機械的特性に優れる低熱膨張合金およびその製造方法 - Google Patents

機械的特性に優れる低熱膨張合金およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】伸線加工等の塑性加工を施すことなく、1000MPa以上の強度と5%以上の伸びを有し、複雑な形状の製品を得ることができる、機械的特性に優れる低熱膨張合金およびその製造方法を提供する。【解決手段】質量%で、C:0.05%以下、Si:0.4%以下、Mn:0.5%以下、Ti:2.0超~3.0%、Al:0.1~0.4%、Ni:30.0~37.0%、Co:20.0%以下、残部がFeおよび不可避不純物からなり、平均結晶粒径が80μm以下、常温における引張強さが1000MPa以上、伸びが5%以上であり、かつ、10~40℃間の平均熱膨張係数が5.0ppm/℃以下、10~200℃間の平均熱膨張係数が6.0ppm/℃以下、または、10~350℃間の平均熱膨張係数が7.0ppm/℃以下である。【選択図】 なし

Description

本発明は、精密機器部材等の用途に適した、機械的特性に優れる低熱膨張合金およびその製造方法に関する。
従来、実用的な低熱膨張合金としてインバー(36%Ni-Fe合金)、スーパーインバー(32%Ni-5%Co-Fe合金)等の合金が知られており、精密機器部品等の寸法精度が要求される用途に適用されている。
これらの低熱膨張合金で製造された精密機器部材等の熱変形は一般鋼材に比べ極めて小さく抑えられるものの、これらの低熱膨張合金はいずれも、室温での引張強さ(以下、「強度」という)が400MPa前後であり、汎用構造材料に比べて小さい。このため、これらの低熱膨張合金は高負荷がかかる部材には適用できない場合が多く、種々の高強度低熱膨張合金が検討されている。
低熱膨張合金の高強度化技術として、例えば、特許文献1には、Fe-Ni-Co合金に、IIa族元素のフッ素化合物その他を特定量添加し、それらの金属間化合物および加工誘起変態で生成するα´相を利用した、低熱膨張高強度合金が提案されている。
また、特許文献2には、Fe-NiおよびFe-Ni-Co合金を、(Mo、V)C系複合炭化物の時効析出によって強化した高強度低熱膨張の合金線が提案されている。
さらに、特許文献3には、Fe-Ni-Co系低熱膨張合金にTiを添加し、時効処理によって微細なNiTi系金属間化合物を析出させて強化した、高強度低熱膨張鋳造合金が提案されている。
特開2011-162820号公報 国際公開第2018/193810号 特開2003-286546号公報
しかし、特許文献1に開示された高強度低熱膨張合金は、線引き加工によって得られる加工誘起変態相や加工硬化ひずみを利用して、低熱膨張化と高強度化を図っているため、α´相の逆変態やひずみの解放に起因する長期間にわたる寸法変化、すなわち経年変化が起こると予想され、超精密装置に適用した場合、精度低下の可能性がある。これに加え、使用規制が強化されつつあるフッ素化合物を添加しており、将来的な供給性に懸念がある。その上、線引き加工が必須であることから、適用部材形状に対する制約が大きい、等々の課題がある。
また、特許文献2に開示された技術は、伸線加工により製造する合金線であり、特許文献1と同様、適用部材形状の制約が大きいほか、実施例の本発明例合金は引張試験の破断伸び(以下、「伸び」という)が最大のものでも3.1%であり、延性が低く、用途が制限される。
さらに、特許文献3に開示された技術は、鋳造合金であるため、複雑な製品形状に対応できるが、特許文献1および特許文献2のような線引き加工や伸線加工が行われないため強度が低く、用途が制限される。具体的には、特許文献1および特許文献2の実施例では線引き加工や伸線加工により1000MPa超の強度を有しているのに対し、特許文献3の実施例における本発明例では、強度が最大のものでも884MPaである。
したがって、本発明は、伸線加工等の塑性加工を施すことなく、1000MPa以上の強度と5%以上の伸びを有し、複雑な形状の製品を得ることができる、機械的特性に優れる低熱膨張合金およびその製造方法を提供することを課題とする。
Fe-NiまたはFe-Ni-Co(以下、「Fe-Ni(-Co)」という)低熱膨張合金の強度を向上させるための従来技術を整理すると、(1)ベースとなるFe-Ni(-Co)合金に、時効処理によって炭化物や金属間化合物を生成する元素を添加し、その析出硬化を利用するもの、(2)Fe-Ni(-Co)合金の冷間加工により、加工誘起変態や硬化ひずみを発生させ、その際の加工硬化を利用するもの、および(1)と(2)を組み合わせたものがある。
本発明者らによる確認試験によれば、上記(1)単独で1000MPa以上の強度を得ることは不可能ではないが、伸びが小さく、5%以上の伸びを併せ持つためには、鍛造や熱間圧延といった塑性加工が必要になることが判明した。結局、従来は、1000MPa以上の強度と5%以上の伸びを同時に有する低熱膨張合金を得るためには、塑性加工の適用が必須となり、適用部材形状に対する制約が大きく、用途が制限される。
そこで、本発明者らは、伸線加工等の塑性加工なしで1000MPa以上の強度と5%以上の伸びを同時に得られるFe-Ni(-Co)系低熱膨張合金を得るべく検討した。その結果、Fe-Ni(-Co)低熱膨張合金にTiやAlを添加して時効処理した合金の結晶粒径を微細化することにより、塑性加工を経ることなく、低熱膨張を維持しつつ強度と伸びが同時に増加することを見出した。具体的には、平均結晶粒径を80μm以下とすることにより、強度が1000MPa以上、伸びが5%以上の優れた機械的特性を有し、所望の熱膨張係数を有する低熱膨張合金が得られることを見出した。
本発明はこれらの知見に基づいて完成されたものであり、以下の(1)~(4)を提供する。
(1)質量%で、
C:0.05%以下、
Si:0.4%以下、
Mn:0.5%以下、
Ti:2.0超~3.0%、
Al:0.1~0.4%、
Ni:30.0~37.0%、
Co:20.0%以下、
残部がFeおよび不可避不純物からなり、平均結晶粒径が80μm以下、常温における引張強さが1000MPa以上、伸びが5%以上であり、
かつ、10~40℃間の平均熱膨張係数が5.0ppm/℃以下、10~200℃間の平均熱膨張係数が6.0ppm/℃以下、または、10~350℃間の平均熱膨張係数が7.0ppm/℃以下であることを特徴とする、機械的特性に優れる低熱膨張合金。
(2)質量%で、
C:0.05%以下、
Si:0.4%以下、
Mn:0.5%以下、
Ti:2.0超~3.0%、
Al:0.1~0.4%、
Ni:30.0~37.0%、
Co:20.0%以下、
さらに、Ni含有量(質量%)を[Ni]、Co含有量(質量%)を[Co]、Ti含有量(質量%)を[Ti]、およびAl含有量(質量%)を[Al]と表した場合に、[Ni]+0.8×[Co]-2.75×[Ti]-4.89×[Al]で表されるNi当量が、35.9-0.00025×[T]+0.0000375×[T]2.026-0.5~35.9-0.00025×[T]+0.0000375×[T]2.026+0.5%(ただし、[T]は、熱膨張測定の上限温度T(℃))であり、
残部がFeおよび不可避不純物からなり、平均結晶粒径が80μm以下、常温における引張強さが1000MPa以上、伸びが5%以上であり、
かつ、10~40℃間の平均熱膨張係数が2.0ppm/℃以下、10~200℃間の平均熱膨張係数が4.0ppm/℃以下、または、10~350℃間の平均熱膨張係数が6.0ppm/℃以下であることを特徴とする、機械的特性に優れる低熱膨張合金。
(3)上記(1)または(2)に記載の組成を有する低熱膨張合金素材を溶融し、100℃/sec以上の冷却速度で急速凝固させることを特徴とする、機械的特性に優れる低熱膨張合金の製造方法。
(4)前記低熱膨張合金素材として低熱膨張合金粉末を用い、前記低熱膨張合金粉末を、レーザーまたは電子ビームによって、溶融し、急速凝固させ、積層造形することを特徴とする、(3)に記載の機械的特性に優れる低熱膨張合金の製造方法。
本発明によれば、伸線加工等の塑性加工を施すことなく、1000MPa以上の強度と5%以上の伸びを有し、複雑な形状の製品を得ることができる、機械的特性に優れる低熱膨張合金およびその製造方法を提供することができる。
これにより、従来の低膨張合金では適用が制限されていた、高負荷下で稼働する各種精密装置部材への適用が可能となる。また、適用される温度範囲ごとに、所望の低熱膨張係数を実現することが可能であり、当該分野における高精度化に大きく貢献する。
積層造形用粉末の外観を示す図である 純銅鋳型を示す図である。 発明例合金と比較例合金の光学顕微鏡組織を示す図である。 平均結晶粒径と引張強さの関係を示す図である。
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の説明において、特に断わらない限り成分における%表示は質量%である。また、熱膨張係数をαと表記する。
<第1の実施形態>
まず、基本的な実施形態である第1の実施形態について、その限定理由を項目に分けて説明する。
[化学成分]
C:0.05%以下
Cは本発明の低熱膨張合金のベースとなるFe-Ni(-Co)合金のαを著しく増加させる元素であり、その含有量が低いことが望ましい。Cの含有量が0.05%を超えると、後述する他の元素の含有量を調整してもαが所望の範囲の範囲を超えてしまう。したがって、C含有量を0.05%以下とする。
Si:0.4%以下
Siは合金中の酸素を低減する目的で添加する元素である。しかし、Siは本発明の低熱膨張合金のベースとなるFe-Ni(-Co)合金のαを著しく増加させる元素であり、その含有量が低いことが望ましい。Siの含有量が0.4%を超えると、Cと同様にαの増加が無視できなくなる。したがって、Si含有量を0.4%以下とする。
Mn:0.5%以下
MnはSiと同様に脱酸に有効な元素である。しかし、Mnは本発明の低熱膨張合金のベースとなるFe-Ni(-Co)合金のαを著しく増加させる元素であり、その含有量が低いことが望ましい。Mnの含有量が0.5%を超えると、Cと同様にαの増加が無視できなくなる。したがって、Mn含有量を0.5%以下とする。
Ti:2.0超~3.0%
Tiは、時効処理によりNi含有合金中で微細なNi-Ti金属間化合物を形成して高強度化に寄与し、本発明の中で特に重要な合金元素である。Tiの含有量が2.0%超になると顕しく高強度化し、1000MPa以上の引張強さが得られる。一方、3.0%超では、延性の低下が無視できなくなり、伸びが5%未満となるとともにαの増加が大きくなる。したがって、Ti含有量を2.0超~3.0%とする。
Al:0.1~0.4%
AlはTiと同様、時効処理により、Ni含有合金中で微細なNi-Al金属間化合物を形成して高強度化に寄与する合金元素であり、Tiと共存することにより、その効果が高まる。しかし、Alの含有量が0.1%未満ではその効果が小さく、0.4%超では延性の低下およびαの増加が無視できなくなる。したがって、Al含有量を0.1~0.4%とする。
Ni:30.0~37.0%
Niは合金の基本的なαを決定する元素であり、所望の低αを得るために重要な元素である。より低いαを得るためには、Co量に応じて後述の範囲に調整することが好ましい。Ni含有量が30.0%未満では、オーステナイトが不安定化し、異常膨張を伴うマルテンサイト変態が起こる温度が上昇して0℃を超える。また、Ni含有量が37.0%超では、αを所望の範囲にすることは困難である。したがって、Niの含有量を30.0~37.0%の範囲とする。
Co:20.0%以下
CoはNiとともにαを決定する重要な元素であり、Ni単独添加の場合より小さいαを得るために添加する元素であり、特に高温域のαの増加を小さくする効果がある。しかし、Coが20.0%超では、Niを上記範囲で含有した場合に、αを所望の範囲にすることは困難である。また、Coが20.0%を超えた場合に、後述のNi量とCo量の関係式に基づいて得られるNi量が減少するため、オーステナイトが不安定化し、異常膨張を伴うマルテンサイト変態が起こる温度が上昇して0℃を超える。したがって、Coの含有量を20.0%以下とする。また、よりαを低下させる観点から、Co含有量は3.0%以上が好ましい。
本発明において、C、Si、Mn、Ni、Co、Ti、Al以外の残部は、Feおよび不可避的不純物である。
[結晶粒径]
本発明では合金の平均結晶粒径を80μm以下とする。Fe-Ni(-Co)系低熱膨張合金は、従来、高強度と高い伸びを両立させるためには、塑性加工の適用が必須であったが、本発明では、平均結晶粒径を80μm以下と微細化することにより、所望の低αを維持しつつ、高強度と高い伸びを両立させることができる。
本発明において、強化元素であるTiやAlの添加によりαが増加するが、合金組織を微細化すること、すなわち結晶粒径を小さくすることにより、その増加を抑えることができる。つまり、高強度を得るために添加する強化元素であるTiやAlを添加することによるαの増加を、金属組織の微細化により相殺することができる。このように、合金組織の微細化によりαの増加が抑えられるのは、合金組織の微細化によりNiおよびCoのミクロ偏析が軽減されるためである。また、合金組織を微細化することにより、塑性加工を経ることなく、強度と伸びを高めることができる。具体的には、平均結晶粒径を80μm以下とすることにより、以下に説明する所望の低αを維持しつつ、1000MPa以上の強度と5%以下の伸びを同時に満たすことができる。
なお、本発明において、機械的特性として、強度:1000MPa以上、伸び:5%以上をターゲットとしたのは、塑性加工を行わない加工方法である鋳造の規格として、低熱膨張材料ではないが、JIS G 5503-1995に、1000MPa以上の強度と5%以上の伸びを有する高強度および高延性のオーステンパー球状黒鉛鋳鉄規格があるからである。
[熱膨張係数]
本発明では、質量%で、C:0.05%以下、Si:0.4%以下、Mn:0.5%以下、Ti:2.0超~3.0%、Al:0.1~0.4%、Ni:30.0~37.0%、Co:20.0%以下の成分組成を満たし、かつ、平均結晶粒径:80μm以下を満たすことにより、10~40℃間の平均α:5.0ppm/℃以下、10~200℃間の平均α:6.0ppm/℃以下、10~350℃間の平均α:7.0ppm/℃以下を満たすことができる。このように、適用される温度範囲ごとに、所望の低αを実現することが可能であり、高負荷下で稼働する各種精密装置部材への適用が可能となるとともに、当該分野における高精度化に大きく貢献する。
[製造条件]
上記成分組成を有する低熱膨張合金素材を溶融させ、100℃/sec以上の冷却速度で急速凝固させる。これにより、塑性加工を経ることなく平均結晶粒径が80μm以下の微細なミクロ組織が得られる。このように溶融および急速凝固を実施する方法として、上記成分組成を有する合金素材、例えば合金粉末をレーザーまたは電子ビームによって溶融および急速凝固させて積層造形する積層造形法が、凝固する際の冷却速度が3000℃/sec以上であり好適であるが、上記冷却速度で急速凝固できればこれに限定されず、他の手法を用いてもよい。例えば、ダイカスト鋳造では、最大800℃/secの冷却速度が得られる。
このような方法によって合金のミクロ組織の平均結晶粒径を80μm以下の微細なものとすることにより、強化元素であるTiおよびAlの添加による熱膨張係数の増加を相殺することができ、所望の強度を有し、かつ所望の低αの合金を得ることができる。また、平均結晶粒径を80μm以下とすることにより、1000MPa以上の強度と5%以下の伸びを同時に満たすことができる。
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態は、基本的な実施形態である第1の実施形態の組成に、以下に示すNi当量の限定を付加したものである。
Ni当量:35.9-0.00025×[T]+0.0000375×[T]2.026-0.5~35.9-0.00025×[T]+0.0000375×[T]2.026+0.5%
Ni含有量(質量%)を[Ni]、Co含有量(質量%)を[Co]、Ti含有量(質量%)を[Ti]、およびAl含有量(質量%)を[Al]と表した場合に、[Ni]+0.8×[Co]-2.75×[Ti]-4.89×[Al]で表されるNi当量を、適用温度に応じて一定範囲に調整することによって合金のαを極めて小さくできる。Ni当量が、35.9-0.00025×[T]+0.0000375×[T]2.026-0.5~35.9-0.00025×[T]+0.0000375×[T]2.026+0.5%(ただし、[T]は、α測定の上限温度T℃である)の範囲にすることにより、10~T℃間の平均αを顕著に小さすることができ、後述するより低いαの範囲とすることができる。したがって、Ni当量を35.9-0.00025×[T]+0.0000375×[T]2.026-0.5~35.9-0.00025×[T]+0.0000375×[T]2.026+0.5%の範囲とすることが好ましい。
このように、第1の実施形態の成分組成に加えて、[Ni]+0.8×[Co]-2.75×[Ti]-4.89×[Al]で表されるNi当量を、適用温度に応じて一定範囲に調整することによって、10~40℃間の平均α:2.0ppm/℃以下、10~200℃間の平均α:4.0ppm/℃以下、10~350℃間の平均α:6.0ppm/℃以下というさらなる低αを実現することができる。
第2の実施形態では、他の成分組成は第1の実施形態と同様であり、C、Si、Mn、Ni、Co、Ti、Al以外の残部は、Feおよび不可避的不純物である。また、結晶粒径も第1の実施形態と同様80μm以下であり、1000MPa以上の強度と5%以上の伸びを有する。さらに、製造条件も第1の実施形態と同様である。
以下、本発明の実施例について説明する。
表1に示す化学成分および組成の合金について試料を作製した。表1のうちNo.1~9は本発明の範囲内である本発明例、No.21~28は本発明の範囲を外れる比較例である。また、上記試料のうちNo.1~9、21~24の試験体は積層造形によって作製した積層造形試料であり、No.25~28は以下に説明するようにCO珪砂型または純銅鋳型を用いて鋳造により作製した鋳造試料である。なお、参考として示したNo.31はインバー、No.32はスーパーインバーであり、いずれもCO珪砂型を用いた鋳造により作製したものである。
積層造形試料は、以下のように製造した。各成分組成の合金を、アトマイズ装置を用いて、アルゴン雰囲気の高周波誘導炉で溶解した後、溶融金属を滴下しつつ、ノズルから不活性ガス(本例では窒素ガス)を噴霧することで液滴に分断して球状粉末とし、その後、その球状粉末をふるい分けして図1に示す粒径10~63μmの造形用粉末を得た。この造形用粉末を、レーザー式積層造形装置を用いて、出力200W、レーザー移動速度1050mm/秒、レーザー走査ピッチ0.11mm、粉末積層厚さ0.04mmの条件で積層造形し、φ22mm×130mmの引張試験試験片用素材、φ12mm×120mmの室温域熱膨張測定試験片用素材、φ12mm×70mmの高温域熱膨張測定試験片用素材およびφ20mm×10mmの結晶粒径測定試験片をそれぞれ作製した。なお、レーザーで造形用粉末を溶融後冷却する際の冷却速度は3000℃/sec以上である。
鋳造試料は、各成分組成の合金を高周波誘導炉で大気溶解し、130mm×100mm×25mm、130mm×100mm×50mm、130mm×100mm×100mmのキャビティーを有するCO珪砂型または図2に示す純銅鋳型に鋳造して作製した。なお、No.25~27はCO珪砂型を用いたものであり、No.28は純銅鋳型を用いたものである。また、CO珪砂型を用いた際の冷却速度は10℃/sec以下、純銅鋳型を用いた際の冷却速度は20℃/sec以下である。
上記のように作製した試料は、いずれも1050℃に加熱して1時間保持後水冷の溶体化処理および、700℃に加熱して1時間保持後空冷の時効処理を行った。
各試料を機械加工することにより、平行部φ10mm、標点間距離50mm、つかみ部φ16mm、長さ120mmの室温引張試験試験片、およびφ8mm×100mmの室温域熱膨張測定試験片またはφ8mm×50mmの高温域熱膨張測定試験片を作製した。
各特性の評価は以下の要領で行った。引張試験は、JIS Z 2241に準拠した方法により常温で測定し、引張強さと伸びを求めた。熱膨張試験は、差動トランス式押し棒型熱膨張計を用いて、10~T℃間を2℃/min.で昇温しながら熱膨張を測定し、得られた熱膨張曲線から平均αを求めた。平均結晶粒径は、積層造形試料では最終造形面を、また鋳造試料では肉厚中央部付近を、それぞれ鏡面研磨・硝酸アルコール腐食した後、光学顕微鏡観察を行って、結晶粒の円相当径を20カ所測定し、その平均値から求めた。
本発明例のNo.1~9は、成分組成が本発明の範囲内であり、積層造形により結晶粒径が80μm以下となり、いずれも、1000MPa以上の強度と5%以上の伸びを同時に有し、10~40℃間の平均α:5.0ppm/℃以下、10~200℃間の平均α:6.0ppm/℃以下、10~350℃間の平均α:7.0ppm/℃以下を満たしていた。また、Ni当量を35.9-0.00025×[T]+0.0000375×[T]2.026-0.5~35.9-0.00025×[T]+0.0000375×[T]2.026+0.5%の範囲に調整した第2の実施形態を満たすNo.7~9は、10~40℃間の平均α:2.0ppm/℃以下、10~200℃間の平均α:4.0ppm/℃以下、10~350℃間の平均α:6.0ppm/℃以下と、さらに低αとなった。
一方、比較例のNo.21~24は積層造形により製造されたものであるが、成分組成が本発明範囲外のものであり、強度、伸び、αのいずれかの値が所定範囲から外れた。
また、比較例であるNo.25~28は、成分組成は本発明範囲内であるが、CO珪砂型または純銅鋳型による鋳造を用いたことにより冷却速度が100℃/secよりも小さく、平均結晶粒径が80μm超であったため、いずれも強度が1000MPa未満であり、No.26、27では伸びが5%未満であった。図3は本発明例であるNo.1の合金と比較例であるNo.28の合金の光学顕微鏡写真である。これらから、本発明例であるNo.1の合金は、純銅鋳型に鋳造した比較例であるNo.28より結晶粒が微細であることが確認された。図4は本発明例であるNo.1~9の合金と比較例であるNo.25~28の合金について、平均結晶粒径と強度の関係をプロットしたものである。図4から平均結晶粒径が80μm以下において1000MPa以上の強度が得られることがわかる。なお、図4における強度のばらつきは、強化元素の量の影響が現れたものである。
以上の結果から、本発明により、1000MPa以上の強度と5%以上の伸び、および所望のαを有する低熱膨張合金を、塑性加工を経ることなく得ることができ、複雑な形状の製品に対応できることが確認された。

Claims (4)

  1. 質量%で、
    C:0.05%以下、
    Si:0.4%以下、
    Mn:0.5%以下、
    Ti:2.0超~3.0%、
    Al:0.1~0.4%、
    Ni:30.0~37.0%、
    Co:20.0%以下、
    残部がFeおよび不可避不純物からなり、平均結晶粒径が80μm以下、常温における引張強さが1000MPa以上、伸びが5%以上であり、
    かつ、10~40℃間の平均熱膨張係数が5.0ppm/℃以下、10~200℃間の平均熱膨張係数が6.0ppm/℃以下、または、10~350℃間の平均熱膨張係数が7.0ppm/℃以下であることを特徴とする、機械的特性に優れる低熱膨張合金。
  2. 質量%で、
    C:0.05%以下、
    Si:0.4%以下、
    Mn:0.5%以下、
    Ti:2.0超~3.0%、
    Al:0.1~0.4%、
    Ni:30.0~37.0%、
    Co:20.0%以下、
    さらに、Ni含有量(質量%)を[Ni]、Co含有量(質量%)を[Co]、Ti含有量(質量%)を[Ti]、およびAl含有量(質量%)を[Al]と表した場合に、[Ni]+0.8×[Co]-2.75×[Ti]-4.89×[Al]で表されるNi当量が、35.9-0.00025×[T]+0.0000375×[T]2.026-0.5~35.9-0.00025×[T]+0.0000375×[T]2.026+0.5%(ただし、[T]は、熱膨張測定の上限温度T(℃))であり、
    残部がFeおよび不可避不純物からなり、平均結晶粒径が80μm以下、常温における引張強さが1000MPa以上、伸びが5%以上であり、
    かつ、10~40℃間の平均熱膨張係数が2.0ppm/℃以下、10~200℃間の平均熱膨張係数が4.0ppm/℃以下、または、10~350℃間の平均熱膨張係数が6.0ppm/℃以下であることを特徴とする、機械的特性に優れる低熱膨張合金。
  3. 請求項1または請求項2に記載の組成を有する低熱膨張合金素材を溶融し、100℃/sec以上の冷却速度で急速凝固させることを特徴とする、機械的特性に優れる低熱膨張合金の製造方法。
  4. 前記低熱膨張合金素材として低熱膨張合金粉末を用い、前記低熱膨張合金粉末を、レーザーまたは電子ビームによって、溶融し、急速凝固させ、積層造形することを特徴とする、請求項3に記載の機械的特性に優れる低熱膨張合金の製造方法。
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