JP2024071712A - 屋根の補修方法及び屋根の保護構造 - Google Patents

屋根の補修方法及び屋根の保護構造 Download PDF

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Abstract

【課題】構造物の屋根の欠損部の補修を容易に、かつ、水の侵入を十分に防止できる屋根の補修方法及び屋根の保護方法を提供する。【解決手段】構造物の屋根の欠損部に補修シートを貼り付ける屋根の補修方法であって、前記補修シートは、前記構造物の屋根側に設けられる接着層及び機能層を備え、前記屋根の欠損部を覆うようにあて物を被せる工程1と、前記あて物上から前記補修シートの接着層側面を貼り付ける工程2とを有することを特徴とする、屋根の補修方法。【選択図】図1

Description

本発明は、住宅やビル等の構造物の屋根の補修方法に関する。
一般住宅や商業ビルなどの構造物の屋根は、長期間風雨に曝されることによる劣化や台風等の災害による破損が生じると、その劣化及び破損が雨漏りの原因となることがあった。構造物の屋根の劣化や破損が生じたときには応急処置が必要となるが、現在、構造物の屋根の応急処置としては、例えば、図7に示すように、屋根30の破損箇所を被うようにブルーシート31を置き、重りとして複数の土嚢32をブルーシート31の上に配置する方法が一般的である。また、土嚢32のような重りを用いてブルーシート31を配置する方法以外に、例えば、特許文献1や特許文献2等には、水を入れた袋を用いてブルーシートを固定する方法が提案されている。
実用新案登録第3225057号公報 実用新案登録第3116572号公報
近年、建物の屋根としてスレート屋根、鋼板屋根、アスファルトシングル屋根等の複数の屋根部材を配列して形成する屋根が広く普及しているが、これらの屋根の表面は段差が複数設けられた非平坦面である場合が多く、このような屋根に対し、従来のブルーシート31を用いた屋根の補修では、ブルーシート31のシワを防ぐことは難しく、また、ブルーシート31と屋根との間に隙間が存在し、この隙間からの水の侵入を防止できないという問題があった。また、通常、ブルーシートの耐候性は余り高くないため1年ほどで劣化して張り替えをする必要があった。
また、構造物の屋根の補修方法としてブルーシートに代えて補修シートを貼り付ける方法も知られているが、屋根の表面の補修に従来の補修シートを用いた場合、欠損部の凹凸で屋根の表面との間に隙間が形成され、水の侵入を十分に防止できないという問題は解決できなかった。
本発明は、このような従来の現状に鑑みてなされたものであり、その目的は、構造物の屋根の欠損部の補修を容易に、かつ、水の侵入を十分に防止できる屋根の補修方法及び屋根の保護方法を提供することにある。
本開示の屋根の補修方法は、構造物の屋根の欠損部に補修シートを貼り付ける屋根の補修方法であって、前記補修シートは、前記構造物の屋根側に設けられる接着層及び機能層を備え、前記屋根の欠損部を覆うようにあて物を被せる工程1と、前記あて物上から前記補修シートの接着層側面を貼り付ける工程2とを有するものである。
本開示によれば、構造物の屋根の欠損部の補修を容易に、かつ、水の侵入を十分に防止できる屋根の補修方法及び屋根の保護方法を提供することができる。
図1A及び図1Bは、本開示に係る補修シートの一例を示す断面構成図である。 図2A及び図2Bは、本開示に係る補修シートを屋根部材及び/又はあて物に貼り付ける様子を示す模式図である。 欠損部を有する屋根の一例を示す模式図である。 図4Aは、あて物の一例を示す模式図であり、図4B及び図4Cは、本開示の屋根の補修方法の一例を示す断面図である。 図5A及び図5Bは、本開示に係る補修シートの別の一例を示す断面構成図である。 図6Aは、本開示に係る補修シートのメッシュ層の一例を示す模式図であり、図6Bは図6Aのメッシュ層の拡大図である。 従来の屋根の補修方法の説明図である。 あて物の別の一例を示す模式図である。 本開示の屋根の補修方法の別の一例を示す断面図である。
以下、本開示の屋根の補修方法の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、本開示は、その技術的特徴を有する限り各種の変形が可能であり、以下の説明及び図面の形態に限定されない。
本発明者らは、構造物の屋根の欠損部の補修方法について鋭意検討した結果、該欠損部を覆う形状のあて物を用いることで屋根との間の隙間を無くすことができた。更に該補修シートに屋根の特性に応じた性能を付与すること、具体的には、屋根に生じたひび割れや膨張に追従できる追従性、水や塩化物イオン等の劣化因子を浸透させない防水性、遮塩性、及び中性化阻止性等を更に備えると共に、補修シート自身の強度を担保する層を設けることを実現した。そして、この技術思想は、構造物の屋根以外の部材、例えば、構造物の壁、軒、塀、門柱、門扉、門屋根等に対しても補修シートを用いた補修方法として応用可能である。
本開示は、構造物の屋根の欠損部に補修シートを貼り付ける屋根の補修方法(以下、本開示の補修方法ともいう)に関する。
本開示の屋根の補修方法は、構造物の屋根の欠損部に補修シートを貼り付ける屋根の補修方法であって、前記補修シートは、前記構造物の屋根側に設けられる接着層及び機能層を備え、前記屋根の欠損部を覆うようにあて物を被せる工程1と、前記あて物上から前記補修シートの接着層側面を貼り付ける工程2とを有するものである。なお、欠損部とは、欠け、貫通孔及び窪んだ穴等を含む元の状態の一部がなくなった部分をいう。
本開示の屋根の補修方法によれば、屋根に形成された欠損部を覆うあて物を介して補修シートを貼り付けることができるため、凹凸を有する欠損部上であっても屋根と補修シートとの間に隙間が形成されることなく貼り付けることができ、水の侵入を十分に防止できる。また、屋根の表面の欠損部の上に耐久性が非常に高く補修状態を長期間維持できる。欠損部が生じた屋根部材であっても廃棄することなく利用できるため、いわゆるサーキュラーエコノミーに貢献できる。
本開示によれば、構造物の欠損部を有する屋根の補修を、隙間を生じることなく容易に、かつ、長期間可能な補修シートを用いた屋根の補修方法及び屋根の保護方法を提供することができる。特に、屋根の欠損部上に隙間を生じさせることなく補修シートの貼り付けができ、また、補修シートに構造物の屋根の特性に応じた性能を付与し、屋根に生じたひび割れや膨張に追従させること、構造物の屋根に水や塩化物イオン等の劣化因子を浸透させないようにすること、構造物の屋根中の水分や劣化因子を排出できる透過性を持たせること、強度を向上させること等を実現した補修シートを用いた屋根の補修方法及び屋根の保護方法を提供することができる。更に、施工現場において、雨漏れ修理用の塗料にて、手塗りで層を複数積層する方法と比較して品質の安定性、均一性を改善できる利点を有する。
図3は、本開示の補修方法で補修可能な複数の屋根部材を配列して形成する屋根の一部を示す模式図であり、屋根30は、欠損部20を有する。屋根30としては特に限定されず、複数の屋根部材を配列して形成する屋根、並びに陸屋根等を含む従来公知のものが使用できる。
本開示の補修方法は、屋根の欠損部を覆うようにあて物を被せる工程1を有する。前記あて物の形状としては、屋根の欠損部を覆うことができる形状であれば、特に限定されるものではないが、例えば、平板及び前記平板に接続された側板を有する形状であってよい。
また、上記あて物は、平板及び前記平板に接続された側板を有し、前記平板及び前記側板が断面視でL字状の折り曲げ部を形成する形状であってよい。図4Aに、あて物の一例を示す模式図を示す。図4Aに示したあて物22は、平板24及び平板に接続された側板25により断面視L字状の折り曲げ部23が形成されている。これにより、折り曲げ部23のうち側板25で屋根部材の端部を引っかけることができるため、あて物を屋根の欠損部上に安定してかぶせることができ、補修シートにシワの発生することを好適に防止できる。
上記あて物の形状としては、平板及び前記平板に接続された側板を有する形状であって、前記平板が2つであってよく、2の平板及び前記2の平板に接続された側板を有し、前記2の平板及び前記側板が断面視で角形U字状の折り曲げ部を形成する形状であってもよい。図8にその一例を示す模式図を示す。図8に示したあて物22は、2つの平板24及び該2つの平板24に接続された側板25により断面視角形U字状の折り曲げ部23が形成されている。これにより、折り曲げ部23のうち側板25で屋根部材の端部を引っかけることができるため、あて物を屋根の欠損部上に安定してかぶせることができ、補修シートにシワの発生することを好適に防止できる。
本開示において、あて物の素材としては、ある程度の合成と折り曲げ加工性とを備えたものが好ましく、例えば、板金等の金属材料、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂等の樹脂材料等が挙げられる。なかでも安価で加工が容易である点で板金が好適に用いられる。
本開示において、あて物のサイズとしては、屋根の欠損部を覆い被せることができるサイズであれば特に限定されないが、特に複数の屋根部材を配列して形成する屋根の場合、屋根を構成する一の屋根部材よりも大きいことが好ましい。後述するが、屋根の欠損部上に安定してあて物を固定することができ、補修シートを貼り付けた際にシワが発生することを好適に防止できるためである。
上記工程1では、屋根の欠損部を覆うようにあて物を被せる。前記屋根が少なくとも1の屋根部材により構成される場合、前記工程1において、屋根部材の表面の少なくとも一部、並びに、端面を覆うようにあて物を被せること;並びに、前記工程1において、屋根部材の表面及び裏面の少なくとも一部、並びに、端面を覆うようにあて物を被せることが好ましい。このようにあて物で欠損部を被せることで、あて物を好適に固定させることができ、あて物の表面に補修シートを貼り付けた際にシワが発生することを好適に防止できる。
特に、このとき、図4Bに示すように、欠損部20を有する屋根部材21と前記欠損部20を有する屋根部材21の上方の屋根部材21との隙間にあて物22が有する平板を差し込むと共に、欠損部20を有する屋根部材21の端部にあて物が有する側板25が接するように、欠損部20にあて物22を被せることが好ましい。これにより、安定して上記あて物を欠損部に被せることができると共に、補修シートのシワの発生を好適に防止でき、水分の侵入を長期間にわたって防止できる。
前記工程1において、前記屋根部材の表面及び裏面の少なくとも一部、並びに、端面を覆うように前記あて物を被せる場合の具体例としては、図9に示すように、欠損部20を有する屋根部材21と該欠損部20を有する屋根部材21の上方の屋根部材21との隙間、及び欠損部20を有する屋根部材21と該欠損部20を有する屋根部材21の下方の屋根部材21との隙間に、それぞれあて物22の平板を差し込むと共に、欠損部20を有する屋根部材21の端部にあて物の側板25が接するように被せる場合(1);欠損部20を有する屋根部材21と該欠損部20を有する屋根部材21の上方の屋根部材21との隙間にはあて物22を差し込まずに、欠損部20を有する屋根部材21と該欠損部20を有する屋根部材21の下方の屋根部材21との隙間に、あて物22の平板を差し込むと共に、欠損部20を有する屋根部材21の端部にあて物の側板25が接するように被せる場合(2);前記(2)の場合であって、且つ、欠損部20の上下をあて物22で覆う場合(3)等が挙げられる。
また、本開示の屋根の補修方法における工程2を行うことで、屋根の欠損部上にあて物を介して補修シートの貼り付けができ、屋根の補修ができる。なお、補修シートの形状は、あて物の外部に露出している表面を被覆できる形状であることが好ましい。また、工程2の一例としては、図4Cに示すように、あて物22上から補修シート10の接着層側面を貼り付けてよい。また、あて物22及び屋根部材21の両方を覆うよう両方の上から補修シート10の接着層側面を貼り付けてよい。
本開示に係る屋根の補修方法は、従来のブルーシートを配置する方法が一時的に風雨をしのぐ方法であったのとは本質的に異なり、従前に比べて極めて簡便な作業によって長期間耐久し得る補修をし得る。なぜならば、本開示に係る補修シートは、耐水性、塩分の遮断性に優れるので屋根材料を侵す物質から屋根材を守ることができるからである。
本開示の屋根の補修方法においては、屋根の欠損部を覆うようにあて物を被せる工程1の前に、予め欠損部にウレタン樹脂、発泡ウレタン樹脂、及びポリウレア樹脂を含む樹脂材料、並びに、モルタル及びセメントを含む無機材料等を充填する等により大まかに回復してもよい。ウレタン樹脂及びポリウレア樹脂は、手軽に補修後の屋根の強度を高めることができる点で好適であり、発泡ウレタン樹脂は、補修後の屋根の強度を特に高めることができる点で好適である。このような発泡ウレタン樹脂としては、地球温暖化を引き起こすことなく環境に優しいノンフロン系発泡ウレタン樹脂が望ましい。ノンフロン系発泡ウレタン樹脂としては、ポリオールとイソシアネートから調製される硬質の発泡ウレタン樹脂などが挙げられる。具体的には、日本パフテム株式会社のノンフロンポリオールFF5020-UCと同社のイソシアネートNP-90の組み合わせが例示される。また、モルタル及びセメントを含む無機材料は、特に陸屋根の補修を行う場合に好適である。
本開示の屋根の補修方法は、構造物の屋根の一部に予め別のあて物が被せられている場合であって、前記別のあて物が被せられていない部分に生じた欠損部についても適用することができる。
[補修シート]
本開示の補修方法で使用する補修シートは、構造物の屋根側に設けられる接着層及び機能層を備える。
(接着層)
上記補修シートは、屋根側に接着層が形成されていることで、補修シートを貼り付ける工程2において、作業現場で接着剤を塗布して接着剤層を形成する必要がないため極めて作業効率に優れ、また、熟練の職人によらずに均一な厚みの接着層を介して補修シートを屋根の表面等に貼り付けることができる。また、接着層が設けられていることで、凹凸が形成された屋根の表面であっても凹みに接着層を埋め込んで補修シートの密着性を高めることができる。また、上記補修シートは工場の生産ラインでの塗工工程と乾燥工程により量産できるので、本開示によると、低コスト化、現場での作業工期の大幅削減、構造物の屋根の長期保護を実現することができる。そして、上記補修シートは、接着層を介して屋根に貼り付けられるため密着性等に優れ、機能層に、防水性、遮塩性、中性化阻止性等に優れる性能を付与できる。
上記接着層は、粘着剤を用いてなる粘着層であってもよく、接着剤を用いてなる接着層であってもよいが、上記接着層のポットライフを考慮すると粘着層が好ましい。ここで、粘着剤とは、当初より所定の弾性を有すると共に、表面にタックが生じているものであり、被着体に対して押し当てられることによって、当該被着体に対する密着性を発揮するものをいい、接着剤とは、硬化前において液体又は所定の流動性を有する状態であるのに対し、硬化によって固体又は所定の形状を維持する状態に変化し、これにより被着体に対する密着性を発揮するものをいう。
上記粘着剤としては特に限定されず、例えば、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤等公知のものが挙げられるが、本開示において接着層は、アクリル系粘着剤から構成されていることが好ましい。アクリル系粘着剤は、棟部や貫板を含む屋根に対する粘着力の調整が容易で材料設計の自由度が高く、また、透明性、耐候性及び耐熱性にも優れているため、補修シートによる棟部を含む屋根の補強をより好適に行うことができる。
上記アクリル系粘着剤としては特に限定されず市販品を使用するとことができ、例えば、オリバイン(登録商標)6574(トーヨーケム社製)等が挙げられる。
上記アクリル系粘着剤からなる接着層(以下、粘着層ともいう)の積層量としては、棟部を含む屋根表面への十分な付着力を発揮できることから、20g/m以上250g/m以下が好ましい。また、上記粘着層を介してあて物の表面に貼り付けたときの付着力が0.5N/mm以上あることが好ましい。0.5N/mm未満であると補修シートの屋根の表面等に対する密着性が不十分となることがある。
上記補修シートに形成された接着層が接着剤から構成される接着層である場合、上記接着剤としては特に限定されず、紫外線硬化型接着剤、熱硬化型接着剤等公知の接着剤が挙げられる。このような接着剤としては、例えば、ウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤、ゴム特性を示すアクリル系樹脂(例えばアクリル酸エステルを主成分に持つ合成ゴム)を用いた接着剤等が挙げられる。なかでも、補修シートが、前記接着層、中間層及び前記機能層をこの順に備えを有し、その中間層が後述するフィラー及び樹脂を含有する複合材料からなる層である場合、該中間層を構成する樹脂成分と同種の樹脂成分からなる接着剤は、中間層との接着強度が高くなるので好ましい。
上記補修シートにおいて、接着層は硬化剤を含むことが好ましい。上記硬化剤を含むことで棟部を含む屋根の表面等に対するより優れた付着力を有するものとなり、また、上記補修シートの押し抜き強度も優れたものとなる。
本開示において、上記補修シートは、JSCE-K-533に規定の押し抜き試験による押し抜き強度が1.5kN以上であることが好ましい。上記押し抜き強度が1.5kN以上であることで、上記補修シートにより補強された棟部を含む屋根の崩壊をより好適に防止できる。
上記硬化剤としては特に限定されず、イソシアネート系硬化剤、アミン系硬化剤、エポキシ系硬化剤、金属キレート系硬化剤等公知の硬化剤を使用できる。
上記補修シートにおいて、屋根の表面やあて物の表面等に対する付着力及び押し抜き強度に優れることから、上記接着層はゲル分率が30%~70%であることが好ましく、より好ましい下限は40%、より好ましい上限は65%である。
上記補修シートにおいて、上記接着層の厚さとしては50~500μmであることが好ましい。50μm未満であると上記補修シートの屋根の表面やあて物の表面等に対する付着力が不十分となることがあり、500μmを超えると、厚みにバラツキが生じやすく、また、施工時に平滑な施工面を得るためにローラー等で馴らした時に、端部から余分な接着剤がはみ出てしまうことがある。上記接着層の厚みのより好ましい下限は90μm、より好ましい上限は200μmである。
上記補修シートは、図1A及び図1Bに示す補修シート10のように、中間層12と、中間層12上に設けられた機能層13とを少なくとも備えたものであることが好ましい。この中間層12と機能層13の両層が、図1Aに示すように、それぞれ単層で形成されてもよいし、図1Bに示すように積層として形成されてもよい。また、求められる性能によっては、中間層12と機能層13との間に別の層を設けてもよい。
このような構成の補修シートは、長期に亘って雨漏り等を防止することができ、屋根を長期にわたって保護することができる。また、機能層に、防水性、遮塩性、中性化阻止性等に優れる性能を付与できる。また、上記補修シートは、工場の生産ラインでの塗工工程と乾燥工程により量産できるので、低コスト化、現場での作業工期の大幅削減、構造物の屋根の長期保護を実現することができる。
上記補修シートは、上記接着層の表面保護のために、該接着層の表面に離型フィルムが貼り付けられていることが好ましい。図1A及び図1Bに示すように、補修シート10が中間層12を有する場合は、中間層12の機能層13側と反対側面に上述した構成の接着層15が形成され、離型フィルム16が形成されていることが好ましい。上記離型フィルムとしては特に限定されず、例えば、基材層と離型層とを有するフィルムが挙げられる。
上記基材層を構成する材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン;ナイロン6等のポリアミド;ポリ塩化ビニル等のビニル樹脂;ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂;セルロースアセテート等のセルロース樹脂;並びにポリカーボネートなどの合成樹脂が挙げられる。また、上記基材層は、紙を主成分として形成されてもよい。更に、上記基材層は、2層以上の積層体であってもよい。
上記離型層を構成する材料としては、例えば、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、フッ素化重合体等が挙げられる。上記離型層は、上記離型層を構成する材料及び有機溶剤を含む塗工液を上記基材層上にグラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法、リップコート法等の公知の方法によって塗布し、乾燥及び硬化させる塗工法によって形成することができる。また、上記離型層の形成に当たっては、基材層の積層面にコロナ処理や易接着処理を施してもよい。
本開示の補修シートに離型フィルムが貼り付けられている場合、図2A及びBに示すように、補修シート10から離型フィルム16を剥がして、屋根部材21及び又はあて物22に補修シート10の接着層側面を貼り付ければよい。
補修シートは、2枚以上重ねた状態で使用されてもよい。補修シートで補強した屋根の表面に対し、更に重ねて補強を行うことができるため、例えば、2枚の補修シートを並べて貼り付けた場合、これらの補修シート同士の境目を覆うように別の補修シートを貼り付けることができる。
本開示の補修シートが中間層を有する場合、上記補修シートの中間層がセメントと樹脂とを含有するものであることで、先に屋根の表面等に貼り付けた補修シートの機能層に対しても好適な接着性を示す。そのため、重ねた状態で補修シートは好適に使用できる。
(中間層)
本開示の補修シートは、前記構造物の屋根側に設けられる接着層及び機能層を備えていればよいが、前記構造物の屋根側に設けられる接着層、中間層及び機能層をこの順に備えることが好ましい。その場合、中間層は、補修シートの機能層及び接着層の間に配置される層であってよい。この中間層は、例えば、図1Aの中間層12に示すように重ね塗りしない単層であってもよいし、図1Bの中間層12に示すように重ね塗りした積層であってもよい。単層とするか積層とするかは、全体厚さ、付与機能(追従性、屋根への接着性等)、工場の製造ライン、生産コスト等を考慮して任意に設定され、例えば製造ラインが短くて単層では所定の厚さにならない場合は、2層以上重ね塗りして形成することができる。なお、例えば2層の重ね塗りは、1層目の層を乾燥した後に2層目の層を形成する。
また、中間層12が図1Bに示すような2層以上の積層構造を有する場合、その各層は性質の異なるもの同士が積層された構成であってもよい。中間層を構成する2層以上の層のうち、機能層側の層には、機能層を構成する材料と同種の材料の割合を、接着層側の層には、屋根と同種の材料の割合を高めることにより、機能層及び屋根の両方との接着性に優れるため好ましい。例えば、後述するように機能層が、樹脂から構成される層であり、屋根がスレート、特に人工スレートで構成される場合、機能層側の層に樹脂成分の割合をより高めた層とすることで、樹脂成分の高い層が機能層と接着し、接着層側の層にセメント成分の高い層が棟部を含む屋根等と接着することとなり機能層及び屋根の両方に対する接着性が優れたものとなりやすい。
中間層は、補修シートの剛性等に寄与する層であってよく、中間層は、フィラー及び樹脂を含有する複合材料からなる層であってよい。中間層がフィラー及び樹脂を含有する複合材料からなる層である場合、中間層は、例えば、フィラーを含有する樹脂(樹脂成分)を塗料状にした、この塗料を塗工して得られる。
中間層における複合材料のフィラーとしてセメントを含有する場合、複合材料は、ポリマーセメントと称する。中間層が、特に、ポリマーセメントからなる層である場合、中間層は、「ポリマーセメント硬化層」とも称される。
上記セメント成分としては、各種のセメント、酸化カルシウムからなる成分を含む石灰石類、二酸化ケイ素を含む粘度類等を挙げることができる。なかでもセメントが好ましく、例えば、ポルトランドセメント、アルミナセメント、早強セメント、フライアッシュセメント等を挙げることができる。何れのセメントを選択するかは、中間層が備えるべき特性に応じて選択され、例えば、屋根への追従性の程度を考慮して選択される。特に、JIS R5210に規定されるポルトランドセメントを好ましく挙げることができる。また、ポルトランドセメントの施工性もしくは施工後の物性を調整するために、ポルトランドセメントに、更に二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化チタン等が加えられた公知の組成も使用可能である。
中間層における複合材料の上記樹脂成分としては、アクリル樹脂、アクリルウレタン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、フッ素樹脂、柔軟エポキシ樹脂系、ポリブタジエンゴム系、ゴム特性を示すアクリル系樹脂(例えばアクリル酸エステルを主成分に持つ合成ゴム)等を挙げることができる。こうした樹脂成分は、後述の機能層を構成する樹脂成分と同じものであってもよい。
また、上記樹脂成分は熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂の何れを使用してもよい。中間層が「ポリマーセメント硬化層」である場合、その「硬化」の文言は、樹脂成分を熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂等、硬化して重合する樹脂に限定されるという意味ではなく、最終的な層となった場合に硬化する(層として固まる)ような材料を用いればよいという意味で用いている。
中間層が、フィラー及び樹脂を含有する複合材料からなる層である場合、前記複合材料における前記樹脂の含有量が10重量%以上、40重量%以下であることが好ましい。上記樹脂の含有量が10重量%未満であると、機能層に対する接着性の低下や中間層を層として維持することが難しくなる傾向となることがあり、40重量%を超えると、屋根の表面等に対する接着性が不十分となることがある。上記観点から上記樹脂の含有量のより好ましい範囲は15重量%以上、35重量%以下であるが、更に好ましくは20重量%以上、30重量%以下である。
また、フィラーと樹脂成分との比率を制御することで中間層を形成しやすくなると共に、中間層は追従性に優れた相溶性のよい層となりやすいので、層自体の密着性が改善される傾向となる。一例として、中間層がポリマーセメント硬化層である場合、コンクリート製の屋根に対してポリマーセメント硬化層が含有するセメント成分は密着性を高めるように作用する。
中間層の形成方法としては、例えば、中間層を構成する材料を溶媒で溶解した溶液を機能層上に塗布した後、溶媒を除去する方法が挙げられる。
特に、中間層がフィラー及び樹脂を含有する複合材料からなる層である場合、当該層を形成するための溶液(塗料)は、フィラーと樹脂成分とを溶媒で混合した塗工液である。樹脂成分については、エマルションであることが好ましい。例えば、アクリル系エマルションは、アクリル酸エステル等のモノマーを、乳化剤を使用して乳化重合したポリマー微粒子であり、一例としては、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの一種以上を含有する単量体又は単量体混合物を、界面活性剤を配合した水中で重合してなるアクリル酸系重合物エマルションを好ましく挙げることができる。
上記アクリル系エマルションを構成するアクリル酸エステル等の含有量は特に限定されないが、20~100質量%の範囲内から選択される。また、界面活性剤も必要に応じた量が配合され量も特に限定されないが、エマルションとなる程度の界面活性剤が配合される。
中間層は、中間層を構成する材料を溶媒で溶解した溶液(塗工液)を離型シート又は離型シート上に形成された後述する機能層上に塗布し、その後に溶媒を乾燥除去することで形成してもよい。中間層が、ポリマーセメント硬化層である場合、例えば、セメント成分とアクリル系エマルションと溶媒として水との混合組成物を塗工液として使用し、中間層を形成することが好ましい。なお、上記離型シート上には、中間層を形成した後に機能層を形成してもよいが、離型シート上に機能層を形成した後に中間層を形成してもよい。本開示においては、例えば、離型シートにエンボス加工又はマット加工(凹凸形状の付与)をした上で、この上に機能層(単層であっても2層以上の複層であってもよい。)、中間層(単層であっても2層以上の複層であってもよい。)の順番で形成し、機能層に意匠性を付与するという方法を用いて補修シートを製造してもよい。
本開示の屋根の補修方法において用いる補修シートは強度に優れる性能を付与できることから後述するメッシュ層を有していてもよい。機能層、中間層、又は接着層の内部又は各層の間に有していてもよい。中間層がメッシュ層を有する場合、例えば、離型シート上に機能層をコーティングし、乾燥後、中間層用の塗工液を塗工、乾燥前のウエットの状態でメッシュ層を貼り合わせた後乾燥させる。しかる後、メッシュ層を貼り合わせた面に更に中間層用の塗工液を塗工し、乾燥させることで中間層にメッシュ層が存在する補修シートを得ることができる。
また、離型シート上に機能層をコーティングし、乾燥後、中間層用の塗工液を塗工、乾燥前のウエットの状態でメッシュ層を貼り合わせた後、乾燥させるステップを経ずにメッシュ層を貼り合わせた面に更に中間層用の塗工液を塗工し、しかる後全体を乾燥させることで中間層にメッシュ層が存在する補修シートを得ることも可能である。
中間層の厚さは特に限定されないが、屋根部材の大きさ、経年度合い、形状等によって任意に設定される。具体的な中間層の厚さとしては、例えば0.5mm~1.5mmの範囲とすることができる。一例として1mmの厚さとした場合は、その厚さバラツキは、±100μm以内となることが好ましい。こうした精度の厚さは、現場での塗工では到底実現できないものであり、工場の製造ラインで安定して塗工されることにより実現することができる。なお、1mmより厚い場合でも、厚さバラツキを±100μm以内とすることができる。また、1mmよりも薄い場合は、厚さバラツキを更に小さくすることができる。
中間層における、フィラー、特にセメント成分は、例えばコンクリートを構成するセメント成分との相溶性がよく、コンクリート表面との密着性に優れたものとすることができる。また、この中間層は延伸性を付与できるので、屋根の表面にひび割れや膨張が生じた場合であっても、屋根の表面の変化に追従することができる。
(メッシュ層)
図5Aに示すように、補修シート10は、付着強度が優れたものとなることからメッシュ層17を接着層15と機能層13との間に備えることが好ましく、中間層12を有する場合は、中間層12と機能層13との界面に備えることが好ましい。上記付着強度とは、補修シートの中間層側の面をコンクリート表面に接着層を介して貼り付け、機能層の表面に引張治具を固定して該引張治具をコンクリート側と反対側に1500n/minの速度で引っ張ることで引張り層間剥離が生じる強度を測定することで得られる。
また、メッシュ層17は、中間層12を有する場合は、図5Bに示すように中間層12の内部に存在していてもよい。メッシュ層は、中間層の機能層と接する面の反対側の面に配設されていてもよいが、メッシュ層は中間層の内部に埋設されていることが好ましい。メッシュ層が中間層の内部に埋設されていることで、メッシュ層と中間層との接触面積が増大し、両者の接着強度が優れたものとしやすくなり、中間層全体の強度も確保しやすくなる。メッシュ層が中間層の内部に埋設されていないと、該メッシュ層と中間層との界面で剥離が生じ易くなる。
また、メッシュ層が中間層の内部に存在している場合、該メッシュ層は、中間層の厚みの半分の位置に存在していればよいが、より機能層側に存在することが望ましい。メッシュ層が中間層中で機能層側に存在している場合、付着力は平均的に1.3倍向上する。
本開示の補修シートが中間層を有する場合、メッシュ層に中間層を構成する材料(例えばフィラー又は樹脂成分)が含侵されていることが好ましい。メッシュ層に中間層を構成する材料が含侵されている状態とは、メッシュ層を構成する繊維間に中間層を構成する材料が充填された状態にあることを意味し、このような含侵状態にあることで、メッシュ層と中間層との接着強度が極めて優れたものとしやすくなる。また、メッシュ層と中間層の材料との相互作用がより強固となりやすく、補修シートの強度をより良好にしやすくなる。
メッシュ層17は、図6A及び図6Bに示すように、経糸、緯糸の繊維を格子状にした構造が挙げられる。上記繊維としては、例えば、ポリプロピレン系繊維、ビニロン系繊維、炭素繊維、アラミド繊維、ガラス繊維、ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ナイロン繊維及びアクリル繊維からなる群より選択される少なくとも1種の繊維から構成されたものである好ましく、なかでも、ポリプロピレン系繊維、ビニロン系繊維を好適に使用することができる。
またその形状は、特に限定されず、図6A及び図6Bに示すような二軸組布のほか、例えば、三軸組布等任意のメッシュ層17を用いることができる。
メッシュ層は、線ピッチ50mm~1.2mm(線密度0.2本~8.0本/cm)であることが望ましい。ピッチが1.2mm以下であると、本開示の補修シートが中間層を有する場合、メッシュの上下の中間層の結合が不十分になり、補修シートの表面強度が不十分となることがある。また、線ピッチが50mmを超えると、補修シートの表面強度に悪影響はないが、引張強度が弱くなることがある。
本開示において、補修シートの引張強度と表面強度はトレードオフの関係にあり、本開示の屋根の補修方法に適用するに適したメッシュ層は、線ピッチ50mm~1.2mmの範囲にあるものである。
メッシュ層は、中間層の上面側から見たときに、接着層、機能層又は中間層の全面をカバーする大きさであってもよく、接着層、機能層又は中間層よりも小さくてもよい。すなわち、メッシュ層の平面視したときの面積は、接着層、機能層又は中間層の平面視したときの面積と同じであってもよく、小さくてもよいが、メッシュ層の平面視面積は、接着層、機能層又は中間層の平面視面積に対し60%以上、95%以下であることが好ましい。60%未満であると補修シートの強度が不十分となることがあり、また、強度のバラツキが生じることもある。95%を超えると、本開示の補修シートが中間層を有する場合であって、メッシュ層を介して中間層が積層された構成において、中間層同士の接着強度が劣ることがあり、本開示に係る補修シートを構造物に施工したときに、中間層部分に剥離が生じる危険性が高まる。なお、上記メッシュ層等の平面視面積は、公知の方法で測定できる。
(機能層)
機能層は、屋根とは反対側に配置されて、表面に現れる層である。この機能層は、例えば、図1Aの機能層13に示すように単層であってもよいし、図1Bの機能層13に示すように少なくとも2層からなる積層であってもよい。単層とするか積層とするかは、全体厚さ、付与機能(防水性、遮塩性、中性化阻止性等)、工場の製造ラインの長さ、生産コスト等を考慮に設定され、例えば製造ラインが短くて単層では所定の厚さにならない場合は、2層以上重ね塗りして形成することができる。なお、重ね塗りは、1層目の層を乾燥した後に2層目の層を塗工する。2層目の層は、その後乾燥される。
機能層は、柔軟性を有し、棟部を含む屋根に発生したひび割れや亀裂に追従できると共に防水性、遮塩性、及び中性化阻止性に優れた機能層を形成できる塗料を塗工して得ることが好ましい。機能層を構成する樹脂としては、ゴム特性を示すアクリル系樹脂(例えばアクリル酸エステルを主成分に持つ合成ゴム)、アクリルウレタン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、フッ素樹脂、柔軟エポキシ樹脂、ポリブタジエンゴム等を挙げることができる。この樹脂材料は、本開示の補修シートが中間層を有する場合、上述した中間層を構成する樹脂成分と同じものであること好ましい。特にゴム等の弾性膜形成成分を含有す樹脂であることが好ましい。
これらのうち、ゴム特性を示すアクリル系樹脂は、安全性と塗工性に優れている点で、アクリルゴム系共重合体の水性エマルションからなることが好ましい。なお、エマルション中のアクリルゴム系共重合体の割合は例えば30~70質量%である。アクリルゴム系共重合体エマルションは、例えば界面活性剤の存在下で単量体を乳化重合することにより得られる。界面活性剤は、アニオン系、ノニオン系、カチオン系の何れも使用できる。
機能層を形成するための塗料は、樹脂組成物と溶媒との混合塗工液を作製し、その塗工液を離型シート上に塗布し、その後に溶媒を乾燥除去することで、機能層を形成できる。溶媒は、水又は水系溶媒であってもよいし、キシレン・ミネラルスピリット等の有機系溶媒であってもよい。なお、離型シート上に形成される層の順番は制限されず、例えば、上記のとおり機能層、中間層の順番であってもよいし、中間層、機能層の順番であってもよい。
機能層の厚さは、屋根の経年度合い、形状等によって任意に設定される。一例としては、50~150μmの範囲内の何れかの厚さとし、その厚さバラツキは、±50μm以内とすることが好ましい。こうした精度の厚さは、現場での塗工では到底実現できないものであり、工場の製造ラインで安定して実現することができる。
また、機能層は、補修シート10のカラーバリエーションを豊富にできる観点から顔料を含有していてもよい。
また、機能層は、無機物を含有していてもよい。無機物を含有することで機能層に耐擦傷性を付与することができる。上記無機物としては特に限定されず、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア等の金属酸化物粒子等従来公知の材料が挙げられる。
また、補修シートは、機能層の中間層側と反対側の表面をカーボン粒子含有オイルで汚染した後垂直に設置し、2メートル程度離れた位置から汚染された面に水道水を、ホースを用いてほぼ水平に勢いよくかけることで清掃したときの汚染物の除去率が95%以上であることが好ましい。機能層の表面の清掃性が優れたものとなる。上記汚染物の除去率が95%未満の場合、防汚性が不十分となることがあり、感覚的にも『汚れている』という印象を受けやすくなる。他方、汚染物の除去率は高ければ高い方がよいが、通常は98%以下となる。
なお、このような汚染物の除去率を有する補修シートは、例えば、機能層の樹脂として、アクリルシリコーン樹脂等の汚染物の除去をしやすい材料を選択するか、機能層にシリコーン樹脂又はシリコーン微粒子等の汚染物の除去をしやすい材料(防汚剤)を含有させる等によって得ることができる。
また、機能層は様々な機能を付与できる添加剤を含有していてもよい。このような添加剤としては、例えば、セルロールナノファイバー等が挙げられる。
(下塗り層)
本開示の屋根の補修方法において、前記あて物と前記補修シートの接着層との間に下塗り層を設けてもよい。あて物と接着層との間に設ける下塗り層は、相互の密着を高めるように作用するので、補修シートにより長期間安定して屋根を保護することができる。
また、あて物と接着層との間に設ける下塗り層は、相互の密着を高めるように作用するので、補修シートにより長期間安定して屋根を保護することができる。
下塗り層を設ける場合の屋根の補修方法の一例としては、屋根の欠損部を覆うようにあて物を被せる工程1によりあて物を屋根に設けた後、あて物の表面に下塗り層を形成し、形成した下塗り層上から前記補修シートの接着層側面を貼り付ける工程2を経る方法が挙げられる。
下塗り層の形成方法としては、エポキシ樹脂等の樹脂と溶媒とを混合した塗工液を、あて物に塗工し、その後、塗工液中の溶媒を揮発乾燥させて形成することができる。このときの溶媒としては水等を挙げることができる。
下塗り層の厚さは特に限定されないが、例えば100~150μmの範囲内とすることができる。あて物と補修シートの接着層との間に設ける下塗り層は、相互の密着を高めるように作用するので、補修シートは、長期間安定して屋根を保護することができる。
(屋根)
本開示の屋根の補修方法が適用できる屋根は、特に限定されるものではないが、スレート屋根、鋼板屋根、及びアスファルトシングル屋根等の複数の屋根部材を配列して形成する屋根、並びに陸屋根等が挙げられる。これらの屋根の中でも、スレート屋根に好適に適用でき、更にはスレート屋根には天然スレート屋根及び人工スレート屋根が存在するところ、人工スレート屋根に特に好適に適用できる。また、天窓等の別の部材が接する屋根部材の補修、並びに、前記各屋根の先端部の補修にも適用できる。
本開示は、構造物の屋根にシートを貼り付けて屋根を保護する方法にも関する(以下、本開示の屋根の保護方法ともいう)にも関する。
本開示の第一の屋根の保護方法は、構造物の屋根にシートを貼り付けて屋根を保護する方法であって、前記シートは、前記構造物の屋根側に設けられる接着層及び機能層を備え、前記屋根にあて物を被せる工程1と、前記あて物上から前記シートの接着層側面を貼り付ける工程2とを有するものである。
また、本開示の第二の屋根の保護方法は、構造物の屋根にシートを貼り付けて屋根を保護する方法であって、前記シートは、前記構造物の屋根側に設けられる接着層及び機能層を備え、前記屋根はあて物が被せられているものであって、前記あて物上から前記シートの接着層側面を貼り付ける工程を有するものである。本開示の第二の屋根の保護方法は、前記あて物が被せられていない部分に欠損部がある場合にも適用でき、前記あて物及び前記あて物が被せられていない部分の欠損部を覆うよう両方の上から前記シートの接着層側面を貼り付けてもよい。
第一及び第二の屋根の保護方法は、欠損部を有しない構造物の屋根に適用するという以外は、本開示の屋根の補修方法と同様であるため、詳細な説明を省略するが、例えば、本開示の保護方法のシート及びあて物としては、前記屋根の補修方法で用いる補修シート及びあて物と同じ構成のものを用いることができ、適用できる屋根についても同じである。
本開示の屋根の保護方法によれば、構造物の屋根を補強することにより、欠損部を生じにくくできるため、屋根の欠損を予防し、欠損部の補修機会を低減できる。
以下の各項目では、本開示における好ましい態様を列挙するが、本発明は以下の項目に限定されるものではない。
[項目1]
構造物の屋根の欠損部に補修シートを貼り付ける屋根の補修方法であって、
前記補修シートは、前記構造物の屋根側に設けられる接着層及び機能層を備え、
前記屋根の欠損部を覆うようにあて物を被せる工程1と、
前記あて物上から前記補修シートの接着層側面を貼り付ける工程2とを有することを特徴とする、屋根の補修方法。
[項目2]
前記あて物は、平板及び前記平板に接続された側板を有する、項目1記載の屋根の補修方法。
[項目3]
前記あて物は、平板及び前記平板に接続された側板を有し、前記平板及び前記側板が断面視でL字状の折り曲げ部を形成する、項目1又は2記載の屋根の補修方法。
[項目4]
前記あて物は、2の平板及び前記2の平板に接続された側板を有し、前記2の平板及び前記側板が断面視で角形U字状の折り曲げ部を形成する、項目1~3の何れか一項記載の屋根の補修方法。
[項目5]
前記屋根が少なくとも1の屋根部材により構成され、
前記工程1が、前記屋根部材の表面の少なくとも一部、並びに、端面を覆うように前記あて物を被せる、項目1~4の何れか一項記載の屋根の補修方法。
[項目6]
前記屋根が少なくとも1の屋根部材により構成され、
前記工程1が、前記屋根部材の表面及び裏面の少なくとも一部、並びに、端面を覆うように前記あて物を被せる、項目1~5の何れか一項記載の屋根の補修方法。
[項目7]
前記屋根が少なくとも1の屋根部材により構成され、
前記工程1が、前記欠損部を有する屋根部材と前記欠損部を有する屋根部材の上方の屋根部材との隙間に、前記あて物が有する平板を差し込むと共に、
前記欠損部を有する屋根部材の端部に前記あて物が有する側板が接するように前記あて物を被せる、項目1~6の何れか一項記載の屋根の補修方法。
[項目8]
前記補修シートは、前記接着層、中間層及び前記機能層をこの順に備え、前記中間層が、フィラー及び樹脂を含有する複合材料からなる層である、項目1~7の何れか一項記載の屋根の補修方法。
[項目9]
前記複合材料における前記樹脂の含有量が10重量%以上、40重量%以下である、項目8記載の屋根の補修方法。
[項目10]
前記あて物と前記補修シートの接着層との間に下塗り層を設ける、項目1~9の何れか一項に記載の屋根の補修方法。
[項目11]
前記屋根が、スレート屋根、鋼板屋根、アスファルトシングル屋根、又は陸屋根である、項目1~10の何れか一項に記載の屋根の補修方法。
[項目12]
構造物の屋根にシートを貼り付けて屋根を保護する方法であって、
前記シートは、前記構造物の屋根側に設けられる接着層及び機能層を備え、
前記屋根にあて物を被せる工程1と、
前記あて物上から前記シートの接着層側面を貼り付ける工程2とを有することを特徴とする、屋根を保護する方法。
[項目13]
構造物の屋根にシートを貼り付けて屋根を保護する方法であって、
前記シートは、前記構造物の屋根側に設けられる接着層及び機能層を備え、
前記屋根はあて物が被せられているものであって、
前記あて物上から前記シートの接着層側面を貼り付ける工程を有することを特徴とする、屋根を保護する方法。
10 補修シート
12 中間層
13 機能層
15 接着層
16 離型フィルム
17 メッシュ層
20 欠損部
21 屋根部材
22 あて物
23 折り曲げ部
24 平板
25 側板
30 屋根
31 ブルーシート
32 土嚢

Claims (5)

  1. 構造物の屋根の欠損部に補修シートを貼り付ける屋根の補修方法であって、
    前記構造物の屋根側に設けられる接着層、及び、機能層を備える前記補修シートを用い、
    ウレタン樹脂、発泡ウレタン樹脂、及び、ポリウレタン樹脂のいずれかを含む樹脂材料により、前記屋根の欠損部を覆う工程1と、
    前記樹脂材料に覆われた前記欠損部の上から前記補修シートの接着層側の面を貼り付ける工程2と、を有することを特徴とする、屋根の補修方法。
  2. 欠損部を有する構造物の屋根と、
    前記欠損部を覆う被覆物と、
    前記欠損部を補修する補修シートと、を備え、
    前記補修シートは、前記屋根側に設けられる接着層、及び、機能層を有し、前記被覆物に覆われた前記欠損部の上から前記欠損部に重ねて配置されている、屋根の保護構造。
  3. 前記補修シートは、前記接着層、中間層及び前記機能層をこの順に備え、前記中間層が、フィラー及び樹脂を含有する複合材料からなる層である、請求項2記載の屋根の保護構造。
  4. 前記複合材料における前記樹脂の含有量が10重量%以上、40重量%以下である、請求項3に記載の屋根の保護構造。
  5. 前記屋根が、スレート屋根、鋼板屋根、アスファルトシングル屋根、又は陸屋根である、請求項2に記載の屋根の保護構造。
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