JP2024071296A - 液状組成物、及び液状組成物を用いた積層体の製造方法 - Google Patents

液状組成物、及び液状組成物を用いた積層体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】透明性、電気特性、耐熱性、接着性等の物性に優れる成形物を形成できる、テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子を含み、分散安定性及び透明性に優れる、ポリイミド前駆体の液状組成物を提供する。【解決手段】ポリイミド前駆体と、熱処理された熱溶融性のテトラフルオロエチレン系ポリマーの、平均粒子径(D50)が0.1μm以上10μm未満である粒子と、含窒素有機溶媒とを含み、黄色度(YI)が5.0未満かつ色彩値(b*)が2.0未満である、液状組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子を含む、ポリイミド前駆体の液状組成物、及び該液状組成物を用いた積層体の製造方法に関する。
近年、携帯情報端末、スマートフォン等の電子機器の小型軽量化、省スペース化の進展に伴い、薄く軽量で可撓性を有し、耐屈曲性等の耐久性に優れるフレキシブルプリント基板(FPC)の需要が増大している。FPCを構成する絶縁樹脂層の材料としては、ポリイミドが汎用されている。ポリイミドは耐熱性、耐薬品性、柔軟性、機械的特性及び電気的特性に優れるが、一般に黄褐色を呈するため、構成モノマーの検討等による透明性改良が進められている。
一方、近年の通信機器における高速化や高周波化に対応するため、FPCの伝送損失を小さくすることが求められている。ポリイミド単体の誘電正接を下げるには分子の秩序構造形成が有効である半面、分子間での電荷移動錯体形成による相互作用が起きやすく、全光線透過率が低下し透明性が悪化する傾向となる。かかる観点から、FPCの材料として、低誘電率かつ低誘電正接で伝送損失が小さいテトラフルオロエチレン系ポリマーが注目されている(特許文献1参照)。特許文献2には、高透明性のポリイミド層にテトラフルオロエチレン系ポリマー層を積層した積層体を回路基板に適用することが提案されている。
国際公開第2016/017801号 特開2022-150086号公報
特許文献2に開示される積層体は伝送損失が小さいが、その透明性や基材間の接着性にはなお改善の余地がある。具体的には、得られる成形物に、透明性、電気特性、耐熱性、及び接着性をバランスさせて具備させるのが難しいことが判明した。
本発明者らは、ポリイミド前駆体、特に透明性に優れるポリイミド前駆体と、特定のテトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子と特定溶媒とを含む組成物は分散安定性及び透明性に優れ、取扱いやすいことを知見した。また、かかる組成物から形成されるポリマー層等の成形物は、テトラフルオロエチレン系ポリマーに基づく耐熱性、電気特性(低線膨張係数、低誘電率、低誘電正接及び低伝送損失)等の物性に優れ、また透明性及び接着性に優れることを見出し、本発明に至った。
本発明の目的は、透明性、電気特性、耐熱性、接着性等の物性に優れる成形物を形成できる、テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子を含み、分散安定性及び透明性に優れる、ポリイミド前駆体の液状組成物の提供である。
本発明は、下記の態様を有する。
[1] ポリイミド前駆体と、熱処理された熱溶融性のテトラフルオロエチレン系ポリマーの、平均粒子径(D50)が0.1μm以上10μm未満である粒子と、含窒素有機溶媒とを含み、黄色度(YI)が5.0未満かつ色彩値(b)が2.0未満である、液状組成物。
[2] 前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子と前記ポリイミド前駆体の合計量に対する前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子の割合が、25質量%超である、[1]の液状組成物。
[3] 前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子の平均粒子径が2.5μm未満である、[1]又は[2]の液状組成物。
[4] 前記テトラフルオロエチレン系ポリマーが、ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)に基づく単位を含む、溶融温度260~320℃のテトラフルオロエチレン系ポリマーである、[1]~[3]のいずれかの液状組成物。
[5] 前記テトラフルオロエチレン系ポリマーが、カルボニル基含有基を有する、溶融温度260~320℃のテトラフルオロエチレン系ポリマーである、[1]~[4]のいずれかの液状組成物。
[6] 前記テトラフルオロエチレン系ポリマーが、主鎖炭素数10個当たり10個以上2000個以下のカルボニル基を有する、溶融温度260~320℃のテトラフルオロエチレン系ポリマーである、[1]~[5]のいずれかの液状組成物。
[7] 前記熱処理における温度が、(前記テトラフルオロエチレン系ポリマーのガラス転移温度+50℃)~(前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの溶融温度-50℃)である、[1]~[6]のいずれかの液状組成物。
[8] 前記ポリイミド前駆体が、脂環構造又はフッ素原子を含む構造の少なくとも1種以上を有する、[1]~[7]のいずれかの液状組成物。
[9] 前記ポリイミド前駆体が、脂環構造若しくはフッ素原子を含む構造を有するテトラカルボン酸又はその二無水物に由来する構造単位の少なくとも1種以上を有する、[1]~[8]のいずれかの液状組成物。
[10] 前記ポリイミド前駆体が、脂環構造又はフッ素原子を含む構造を有するジアミンに由来する構造単位の少なくとも1種以上を有する、[1]~[9]のいずれかの液状組成物。
[11] 前記ポリイミド前駆体が、脂環構造を有するテトラカルボン酸又はその二無水物に由来する構造単位と、フッ素原子を含む構造を有するジアミンに由来する構造単位を有する、[1]~[10]のいずれかの液状組成物。
[12] 前記含窒素有機溶媒の黄色度(YI)が20以下であり、かつ、前記含窒素有機溶媒の色彩値(b)が1以下である、[1]~[11]のいずれかの液状組成物。
[13] 前記含窒素有機溶媒が、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルプロパンアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンからなる群より選ばれる1種以上である、[1]~[12]のいずれかの液状組成物。
[14] [1]~[13]のいずれかの液状組成物を基材の表面に配置し加熱して、前記テトラフルオロエチレン系ポリマーを含むポリイミド層を形成し、前記基材で構成される基材層と前記ポリイミド層とをこの順で有する積層体を得る、積層体の製造方法。
[15] [1]~[13]のいずれかの液状組成物をイミド化してなるポリイミドを含むポリイミド層と、該ポリイミド層の片面又は両面に金属層を有する、配線基板用積層体。
本発明によれば、分散安定性及び透明性に優れる、ポリイミド前駆体の液状組成物が提供できる。かかる液状組成物からは、テトラフルオロエチレン系ポリマーに基づく耐熱性、電気特性(低線膨張係数、低誘電率、低誘電正接及び低伝送損失)等の物性に優れ、その透明性及び接着性等の物性に優れる、塗膜(ポリマー層)等の成形物を形成できる。
以下の用語は、以下の意味を有する。
「平均粒子径(D50)」は、レーザー回折・散乱法によって求められる、粒子又はフィラーの体積基準累積50%径である。すなわち、レーザー回折・散乱法によって粒度分布を測定し、粒子の集団の全体積を100%として累積カーブを求め、その累積カーブ上で累積体積が50%となる点の粒子径である。
粒子又はフィラーのD50は、粒子を水中に分散させ、レーザー回折・散乱式の粒度分布測定装置(堀場製作所社製、LA-920測定器)を用いたレーザー回折・散乱法により分析して求められる。
「平均粒子径(D90)」は、D50と同様にして求められる、粒子の体積基準累積90%径である。
粒子又はフィラーの比表面積は、ガス吸着(定容法)BET多点法で粒子を測定し算出される値であり、NOVA4200e(Quantachrome Instruments社製)を使用して求められる。
「溶融温度(Tm)」は、示差走査熱量測定(DSC)法で測定したポリマーの融解ピークの最大値に対応する温度である。
「ガラス転移点(Tg)」は、動的粘弾性測定(DMA)法でポリマーを分析して測定される値である。
「粘度」は、B型粘度計を用いて、25℃で回転数が30rpmの条件下で液状組成物を測定して求められる。測定を3回繰り返し、3回分の測定値の平均値とする。
「チキソ比」とは、液状組成物の、回転数が30rpmの条件で測定される粘度ηを、回転数が60rpmの条件で測定される粘度ηで除して算出される値である。それぞれの粘度の測定は、3回繰り返し、3回分の測定値の平均値とする。
ポリマーにおける「単位」とは、モノマーの重合により形成された前記モノマーに基づく原子団を意味する。単位は、重合反応によって直接形成された単位であってもよく、ポリマーを処理することによって前記単位の一部が別の構造に変換された単位であってもよい。以下、モノマーaに基づく単位を、単に「モノマーa単位」とも記す。
本発明の液状組成物(以下、「本組成物」とも記す。)は、ポリイミド前駆体と、熱処理された熱溶融性のテトラフルオロエチレン系ポリマー(以下、「Fポリマー」とも記す。)の、平均粒子径(D50)が0.1μm以上10μm未満である粒子(以下、「F粒子」とも記す。)と、含窒素有機溶媒とを含み、黄色度(YI)が5.0未満かつ色彩値(b)が2.0未満である。
本組成物は分散安定性及び透明性に優れ、取扱い性に優れる。そのため、本組成物から形成される塗膜(ポリマー層)等の成形物は、テトラフルオロエチレン系ポリマーに基づく耐熱性、電気特性(低線膨張係数、低誘電率、低誘電正接及び低伝送損失)等の物性に優れ、また透明性及び接着性に優れる。
本組成物が分散安定性及び透明性に優れる理由は必ずしも明確ではないが、以下の様に考えられる。
Fポリマーは、ラジカル重合により製造されるためその分子量分布が広く、オリゴマー成分を含む。かかるオリゴマー成分には、ラジカル重合開始剤、連鎖移動剤、重合媒体等を含めた使用剤に由来する、その末端基が塩又は塩基である副生成物や、又は重合時若しくは重合前後の外部環境への暴露、例えば空気雰囲気下への暴露時に発生し得る低分子量化合物も含まれる。このようなオリゴマー成分を多く含むF粒子を、ポリイミド前駆体を含む液状組成物に加えると、液状組成物自体の着色や、粘度等の液物性の低下の原因になり得ると考えられる。また、基材に液状組成物を塗工後、加熱により成形物を形成する際に、かかるオリゴマー成分が成形物表面にブリードアウトし、層物性を低下させてしまうとも推測される。
本組成物においては、熱処理されたF粒子を用いるため、上記したオリゴマー成分が揮発又は分解により、F粒子から除去できたと考えられる。そのため、本組成物の色彩や透明性を損なわない。また、本組成物中におけるF粒子とポリイミド前駆体(ポリアミック酸)との間に相互作用が生じにくく、凝集や成分の偏在が生じにくくなるため、本組成物の分散安定性を損なわないと推測される。
さらに、F粒子とポリイミド前駆体の合計量に対するF粒子の割合が高い場合もF粒子の凝集が抑制され、透明性を維持しつつ分散安定性を向上できると考えられる。したがって、塗工後の塗膜形成において、その透明性及び接着性に優れ、本組成物から形成されるポリマー層等の成形物中の物性を向上できたと考えられる。
かかる作用機構は、本組成物を構成するF粒子が、所定量のカルボニル基を有するFポリマーからなる粒子である場合、ポリイミド前駆体間の相互作用を緩和させ、本組成物の着色や透明性の低下の原因となる、ポリイミド前駆体又はポリイミドの分子間電荷移動錯体の形成を抑制しやすくなるとも推測され、より顕著となりやすい。
本発明におけるFポリマーは、テトラフルオロエチレン(以下、「TFE」とも記す。)に基づく単位(以下、「TFE単位」とも記す。)を含むポリマーである。
Fポリマーは、熱溶融性であっても非熱溶融性であってもよいが、熱溶融性であるのが好ましい。ここで、熱溶融性のポリマーとは、荷重49Nの条件下、溶融流れ速度が1~1000g/10分となる温度が存在するポリマーを意味する。
熱溶融性であるFポリマーの溶融温度は、200℃以上が好ましく、260℃以上がより好ましい。前記Fポリマーの溶融温度は、325℃以下が好ましく、320℃以下がより好ましい。この場合、本組成物から形成される塗膜(ポリマー層)等の成形物が耐熱性に優れやすい。
Fポリマーのガラス転移点(以下、「Tg」とも記す。)は、50℃以上が好ましく、75℃以上がより好ましい。FポリマーのTgは、150℃以下が好ましく、125℃以下がより好ましい。
Fポリマーのフッ素含有量は、70質量%以上が好ましく、72~76質量%がより好ましい。
Fポリマーは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、TFE単位とエチレンに基づく単位とを含むポリマー(ETFE)、TFE単位とプロピレンに基づく単位とを含むポリマー、TFE単位とペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)に基づく単位(PAVE単位)とを含むポリマー(PFA)、TFE単位とヘキサフルオロプロピレンに基づく単位とを含むポリマー(FEP)が好ましく、PFA及びFEPがより好ましく、PAVE単位を含む、溶融温度260~320℃のテトラフルオロエチレン系ポリマーであるのがさらに好ましい。これらのポリマーは、さらに他のコモノマーに基づく単位を含んでいてもよい。
PTFEとしては、低分子量PTFE、変性PTFEが挙げられる。
PAVEは、CF=CFOCF、CF=CFOCFCF及びCF=CFOCFCFCF(以下、「PPVE」とも記す。)が好ましく、PPVEがより好ましい。
Fポリマーは、酸素含有極性基を有するのが好ましく、水酸基含有基又はカルボニル基含有基を有するのがより好ましい。この場合、本組成物は分散安定性及び取扱い性に優れやすい。また、本組成物から形成される塗膜(ポリマー層)等の成形物が、耐熱性、電気特性(低線膨張係数、低誘電率、低誘電正接及び低伝送損失)、透明性等の物性に優れやすい。
水酸基含有基は、アルコール性水酸基を含有する基が好ましく、-CFCHOH及び-C(CFOHがより好ましい。
カルボニル基含有基は、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アミド基、イソシアネート基、カルバメート基(-OC(O)NH)、酸無水物残基(-C(O)OC(O)-)、イミド残基(-C(O)NHC(O)-等)及びカーボネート基(-OC(O)O-)が好ましく、酸無水物残基がより好ましい。
上記の中でも、Fポリマーは、カルボニル基を有する、溶融温度260~320℃のテトラフルオロエチレン系ポリマーであるのがさらに好ましい。
Fポリマーがカルボニル含有基を有する場合、Fポリマーにおけるカルボニル基の数は、主鎖の炭素数1×10個あたり、10~5000個が好ましく、100~2000個がより好ましい。なお、Fポリマーにおけるカルボニル基の数は、ポリマーの組成又は国際公開第2020/145133号に記載の方法によって定量できる。
カルボニル基は、Fポリマー中のモノマーに基づく単位に含まれていてもよく、Fポリマーの主鎖の末端基に含まれていてもよく、前者が好ましい。後者の態様としては、重合開始剤、連鎖移動剤等に由来する末端基としてカルボニル基を有するFポリマー、Fポリマーをプラズマ処理や電離線処理して得られるFポリマーが挙げられる。
Fポリマーは、TFE単位及びPAVE単位を含む、カルボニル基含有基を有するポリマーであるのが好ましく、主鎖炭素数10個当たり10個以上2000個以下のカルボニル基を有する、溶融温度260~320℃のテトラフルオロエチレン系ポリマーであるのがさらに好ましい。
換言すれば、TFE単位、PAVE単位及びカルボニル基含有基を有するモノマーに基づく単位を含み、全単位に対して、これらの単位をこの順に、90~99モル%、0.99~9.97モル%、0.01~3モル%含むポリマーであるのがさらに好ましい。かかるFポリマーの具体例としては、国際公開第2018/16644号に記載されるポリマーが挙げられる。
本発明において、F粒子のD50は0.1μm以上10μm未満である。F粒子は、中実状の粒子であってもよく、非中空状の粒子であってもよい。F粒子は、nmオーダーの微粒子から形成された二次粒子であってもよい。F粒子のD50は、6μm以下が好ましく、2.5μm未満であるのがより好ましい。
F粒子のD50は、0.3μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましい。
また、F粒子のD90は8μm以下が好ましく、6μm以下がより好ましい。F粒子のD90が上記範囲以下であると、上述した作用機構がより発現しやすくなり、粗大粒子の数が少ない本組成物が得られやすい。
F粒子の比表面積は、1~25m/gであるのが好ましく、6~15m/gがより好ましい。この場合、本組成物が取扱い性に優れやすい。
F粒子は、Fポリマーを含む粒子であり、Fポリマーからなるのが好ましい。
F粒子は、主鎖炭素数10個当たり10個以上2000個以下のカルボニル基を有する、溶融温度260~320℃のFポリマーの粒子であるのがより好ましい。この場合、上述した作用機構がより発現されてF粒子の凝集も抑制されやすい。
F粒子は、Fポリマー以外の樹脂や無機化合物を含んでいてもよく、FポリマーをコアとしFポリマー以外の樹脂又は無機化合物をシェルとするコア-シェル構造を形成していてもよく、FポリマーをシェルとしFポリマー以外の樹脂又は無機化合物をコアとするコア-シェル構造を形成していてもよい。
ここで、Fポリマー以外の樹脂としては、芳香族ポリエステル、ポリアミドイミド、ポリイミド、マレイミドが挙げられ、無機化合物としては、シリカ、窒化ホウ素が挙げられる。
F粒子は、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
F粒子は、TFE及び他の単量体を重合媒体中でラジカル重合させてFポリマーを製造し、重合媒体を除去して粒状Fポリマーを回収してジェットミル等で機械的粉砕処理を行い、さらに必要に応じ分級して得るのが好ましい。また、F粒子として、重合媒体中でラジカル重合させて得られた熱溶融性の含フッ素共重合体から形成された粉末である市販品の、PFA粉末(FluonPFA P-62X、FluopnPFA P-63等。いずれもAGC社製。)やETFE粉末を使用してもよい。
Fポリマーの熱処理は、好適には、F粒子を減圧雰囲気下にて所定の温度領域で処理することにより行える。熱処理により、Fポリマーが含有し得るオリゴマー成分、すなわち低分子量のFポリマーのほか、上記した、ラジカル重合開始剤、連鎖移動剤、重合媒体等を含めた使用剤に由来する、その末端基が塩又は塩基である副生成物、又は重合時若しくは重合前後の外部環境への暴露、例えば空気雰囲気下への暴露時に発生し得る低分子量化合物が揮発又は分解により、F粒子から除去でき、上記した作用機構が発現しやすいと考えられる。
減圧雰囲気は、オリゴマー成分の揮発を促しつつ、形状を含めたF粒子の物性を保持する観点から、30kPa以下が好ましい。減圧雰囲気は、0.1kPa以上が好ましい。
Fポリマーの熱処理の温度領域は、オリゴマー成分の揮発及び分解を促しつつ、形状を含めたF粒子の物性を保持する観点から、Fポリマーの溶融温度をTmとしたとき、Tm-50℃以下であるのが好ましい。
熱処理における温度領域は、Tg+50℃以上が好ましい。
換言すれば、Fポリマーの熱処理における温度は、(FポリマーのTg+50℃)~(FポリマーのTm-50℃)の範囲であるのが好ましい。
F粒子を減圧雰囲気下、所定の温度領域で熱処理する際、F粒子を流動させてもよい。かかる流動は、F粒子を振動又は回転させて行うことができる。このような熱処理には、ナウターミキサー、コニカルドライヤー、箱形乾燥器、バンド乾燥器、トンネル乾燥器、噴出流乾燥器、移動層乾燥器、回転乾燥器、流動層乾燥機、気流乾燥器、円盤乾燥器、円筒型撹拌乾燥器、逆円錐型撹拌乾燥器、マイクロウェーブ装置、真空熱処理装置、箱型電気炉、熱風循環装置、フラッシュ乾燥機、振動乾燥機、ベルト乾燥機、押出乾燥機、スプレードライヤー、赤外線ヒータ等の装置を使用できる。熱処理の時間は20分以上5時間以下が好ましい。
本組成物を構成するポリイミド前駆体は、テトラカルボン酸又はテトラカルボン酸無水物とジアミンとを反応させて得られ(ポリアミック酸)、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させて得られるポリイミド前駆体であるのが好ましい。
テトラカルボン酸二無水物としては、例えばビス(2,3-又は3,4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、1,1-ビス(2,3-又は3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、2,2-ビス(2,3-又は3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(2,3-又は3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)テトラフルオロプロパン二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸二無水物、4,4’-(ジメチルシラジイル)ジフタル酸二無水物、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、4,4’-ビス(2,3-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルメタン二無水物、2,2-ビス〔4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕プロパン二無水物、p-フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、エチレングリコールビストリメリット酸無水物、1,4-フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル)二無水物、2,3’,3,4’-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、1,2,7,8-、1,2,6,7-又は1,2,9,10-フェナントレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5-、1,2,5,6-、1,2,6,7-、1,4,5,8-又は2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、4,8-ジメチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロナフタレン-1,2,5,6-テトラカルボン酸二無水物、2,6-又は2,7-ジクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-テトラクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-テトラクロロナフタレン-2,3,6,7-テトラカルボン酸二無水物、p-ターフェニルテトラカルボン酸二無水物、m-ターフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,8,9-、3,4,9,10-、4,5,10,11-又は5,6,11,12-ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ピラジン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ピロリジン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、チオフェン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物等の、芳香族環構造又は複素環構造を有するテトラカルボン酸二無水物;
1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸-1,2:4,5-二無水物、[1,1’-ビ(シクロヘキサン)]-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物、[1,1’-ビ(シクロヘキサン)]-2,3,3’,4’-テトラカルボン酸二無水物、[1,1’-ビ(シクロヘキサン)]-2,2’,3,3’-テトラカルボン酸二無水物、4,4’-メチレンビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸無水物)、4,4’-(プロパン-2,2-ジイル)ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸無水物)、4,4’-オキシビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸無水物)、4,4’-チオビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸無水物)、4,4’-スルホニルビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸無水物)、4,4’-(ジメチルシランジイル)ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸無水物)、4,4’-(テトラフルオロプロパン-2,2-ジイル)ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸無水物)、オクタヒドロペンタレン-1,3,4,6-テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、6-(カルボキシメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3,5-トリカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクタン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクタ-5-エン-2,3,7,8-テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3;5,6-テトラカルボン酸二無水物、トリシクロ[4.2.2.02,5]デカン-3,4,7,8-テトラカルボン酸二無水物、トリシクロ[4.2.2.02,5]デカ-7-エン-3,4,9,10-テトラカルボン酸二無水物、9-オキサトリシクロ[4.2.1.02,5]ノナン-3,4,7,8-テトラカルボン酸二無水物、デカヒドロ-1,4:5,8-ジメタノナフタレン-2,3,6,7-テトラカルボン酸二無水物等の、脂環構造を有するテトラカルボン酸二無水物;
4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、3,3’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、5,5’-[2,2,2-トリフルオロ-1-[3-(トリフルオロメチル)フェニル]エチリデン]ジフタル酸無水物、5,5’-[2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-1-(トリフルオロメチル)プロピリデン]ジフタル酸無水物、1H-ジフロ[3,4-b:3’,4’-i]キサンテン-1,3,7,9(11H)-テトロン、5,5’-オキシビス[4,6,7-トリフルオロ-ピロメリット酸無水物]、3,6-ビス(トリフルオロメチル)ピロメリット酸二無水物、4-(トリフルオロメチル)ピロメリット酸二無水物、1,4-ジフルオロピロメリット酸二無水物、ジ(ヘプタフルオロプロピル)ピロメリット酸二無水物、ペンタフルオロエチルピロメリット酸二無水物、ビス[3,5-ジ(トリフルオロメチル)フェノキシ]ピロメリット酸二無水物、1,4-ビス(3,4-ジカルボキシトリフルオロフェノキシ)テトラフルオロベンゼン二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、5,5’-ビス(トリフルオロメチル)-3,3’,4,4’-テトラカルボキシビフェニル二無水物、2,2’,5,5’-テトラキス(トリフルオロメチル)-3,3’,4,4’-テトラカルボキシビフェニル二無水物、5,5’-ビス(トリフルオロメチル)-3,3’,4,4’-テトラカルボキシジフェニルエーテル二無水物、5,5’-ビス(トリフルオロメチル)-3,3’,4,4’-テトラカルボキシベンゾフェノン二無水物、ビス[(トリフルオロメチル)ジカルボキシフェノキシ]ベンゼン二無水物、ビス[(トリフルオロメチル)ジカルボキシフェノキシ]トリフルオロメチルベンゼン二無水物、ビス(ジカルボキシフェノキシ)トリフルオロメチルベンゼン二無水物、ビス(ジカルボキシフェノキシ)ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン二無水物、ビス(ジカルボキシフェノキシ)テトラキス(トリフルオロメチル)ベンゼン二無水物、2,2-ビス{(4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル}ヘキサフルオロプロパン二無水物、ビス{(トリフルオロメチル)ジカルボキシフェノキシ}ビフェニル二無水物、ビス{(トリフルオロメチル)ジカルボキシフェノキシ}ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル二無水物、ビス{(トリフルオロメチル)ジカルボキシフェノキシ}ジフェニルエーテル二無水物、ビス(ジカルボキシフェノキシ)ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル二無水物等の、フッ素原子を含む構造を有するテトラカルボン酸二無水物;
が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
ジアミンとしては、例えばp-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、o-フェニレンジアミン、4,6-ジメチル-m-フェニレンジアミン、2,5-ジメチル-p-フェニレンジアミン、2,4-ジアミノメシチレン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、2,4-ビス(β-アミノ-t-ブチル)トルエン、m-キシレン-2,5-ジアミン、p-キシレン-2,5-ジアミン、m-又はp-キシリレンジアミン、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-オキシジアニリン、3,4’-オキシジアニリン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、2,4-トルエンジアミン、2,5-トルエンジアミン、2,6-トルエンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルプロパン、3,3’-ジアミノジフェニルプロパン、4,4’-ジアミノジフェニルエタン、3,3’-ジアミノジフェニルエタン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノビフェニル(ベンジジン)、3,3’-ジヒドロキシ-4,4’-ジアミノビフェニル、ビス(4-アミノ-3-カルボキシフェニル)メタン、3,3’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-n-プロピル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ジアミノビフェニル、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[1-(3-アミノフェノキシ)]ビフェニル、2,2-ビス-[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)]ベンゾフェノン、4,4’-メチレン-ジ-o-トルイジン、4,4’-メチレン-ジ-2,6-キシリジン、4,4’-メチレン-2,6-ジエチルアニリン、4,4’-[1,4-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリン、4,4’-[1,3-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリン、ビス(p-β-アミノ-t-ブチルフェニル)エーテル、ビス(p-β-メチル-δ-アミノペンチル)ベンゼン、p-ビス(2-メチル-4-アミノペンチル)ベンゼン、p-ビス(1,1-ジメチル-5-アミノペンチル)ベンゼン、p-ビス(1,3-ジメチル-5-アミノペンチル)ベンゼン、1,3-ビス[2-(4-アミノフェニル)-2-プロピル]ベンゼン、1,5-又は2,6-ジアミノナフタレン、4-アミノフェニル-4’-アミノベンゾエート、2,6-又は2,5-ジアミノピリジン、2,5-ジアミノ-1,3,4-オキサジアゾール、2’-メトキシ-4,4’-ジアミノベンズアニリド、4,4’-ジアミノベンズアニリド、N,N’-ビス(4-アミノフェニル)テレフタルアミド、N,N’-p-フェニレンビス(p-アミノベンズアミド)、4-アミノフェニル-4-アミノベンゾエート、ビス(4-アミノフェニル)テレフタル酸、1,4-ビス(4-アミノベンゾイルオキシ)ベンゼン、ピペラジン、6-アミノ-2-(4-アミノフェノキシ)ベンゾオキサゾール、5-アミノ-2-(4-アミノフェニル)ベンゾイミダゾール、9,9-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]フルオレン、3,3’-ジアミノ-p-テルフェニル、4,4’-ジアミノ-p-テルフェニル、2,4-ビス(4-アミノアニリノ)-6-アミノ-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(4-アミノアニリノ)-6-メチルアミノ-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(4-アミノアニリノ)-6-エチルアミノ-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(4-アミノアニリノ)-6-アニリノ-1,3,5-トリアジン等の、芳香族環構造又は複素環構造を有するジアミン;
1,3-プロパンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、1,10-デカメチレンジアミン、ポリオキシプロピレンジアミン、ジアミノプロピルテトラメチルジシロキサン等の、直鎖脂肪族構造を有するジアミン;
トランス又はシス-1,4-ジアミノシクロへキサン、1,4-ジアミノ-2-メチルシクロヘキサン、1,4-ジアミノ-2-エチルシクロヘキサン、1,4-ジアミノ-2-n-プロピルシクロヘキサン、1,4-ジアミノ-2-イソプロピルシクロヘキサン、1,4-ジアミノ-2-n-ブチルシクロヘキサン、1,4-ジアミノ-2-イソブチルシクロヘキサン、1,4-ジアミノ-2-sec-ブチルシクロヘキサン、1,4-ジアミノ-2-tert-ブチルシクロヘキサン、1,2-ジアミノシクロへキサン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(p-アミノシクロヘキシル)メタン、ビ(シクロヘキサン)-4,4’-ジアミン、4,4’-メチレンジシクロヘキサンアミン、4,4’-(プロパン-2,2-ジイル)ジシクロヘキサンアミン、4,4’-スルホニルジシクロヘキサンアミン、4,4’-(ジメチルシランジイル)ジシクロヘキサンアミン、4,4’-(パーフルオロプロパン-2,2-ジイル)ジシクロヘキサンアミン、4,4’-オキシジシクロヘキサンアミン、4,4’-チオジシクロヘキサンアミン、イソホロンジアミン等の、脂環構造を含む構造を有するジアミン;
2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル、2,3,5,6-テトラフルオロ-1,4-ジアミノベンゼン、2,4,5,6-テトラフルオロ-1,3-ジアミノベンゼン、2,3,5,6-テトラフルオロ-1,4-ベンゼン(ジメタンアミン)、2,2’-ジフルオロ-(1,1’-ビフェニル)-4,4’-ジアミン、2,2’,6,6’-テトラフルオロ-(1,1’-ビフェニル)-4,4’-ジアミン、4,4’-ジアミノオクタフルオロビフェニル、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス-[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス-[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’-オキシビス(2,3,5,6-テトラフルオロアニリン)、3’-トリフルオロメチル-4,4’-ジアミノベンズアニリド、2’-トリフルオロメチル-4,4’-ジアミノベンズアニリド等の、フッ素原子を含む構造を有するジアミン;
が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
無色透明性を有するポリイミドを得る観点から、ポリイミド前駆体又はポリイミド分子鎖間の充填を立体的に阻害する構造を有するか、又は残基の電子吸引性や電子供与性の制御により、分子間電荷移動錯体の形成を阻害する手法が挙げられる。すなわち、ポリイミド前駆体がビフェニル構造等の連結基や、折れ曲がり構造、非対称構造、嵩高い置換基が導入された構造単位を有するのが好ましい。中でも、ポリイミド前駆体が、脂環構造又はフッ素原子を含む構造の少なくとも1種以上を有するのがより好ましい。
具体的には、ポリイミド前駆体が、上記した脂環構造若しくはフッ素原子を含む構造を有するテトラカルボン酸又はその二無水物に由来する構造単位の少なくとも1種以上を有するか、上記した脂環構造又はフッ素原子を含む構造を有するジアミンに由来する構造単位の少なくとも1種以上を有するのが好ましく、ポリイミド前駆体が、脂環構造を有するテトラカルボン酸又はその二無水物に由来する構造単位と、フッ素原子を含む構造を有するジアミンに由来する構造単位を有するのがより好ましい。
ポリイミド前駆体は、上記したテトラカルボン酸二無水物と上記したジアミンとを、ジアミンに対するテトラカルボン酸のモル比を0.90~1.10、好ましくは0.95~1.05の範囲で、溶媒中で反応させて製造できる。
本組成物を構成する含窒素有機溶媒は、その黄色度(YI)が20以下であり、かつ、その色彩値(b)が1以下であることが好ましい。含窒素有機溶媒のYIは、10以下であるのがより好ましく、2以下であるのがさらに好ましい。含窒素有機溶媒のbは、0.90以下であるのがより好ましく、0.85以下であるのがさらに好ましい。
また、含窒素有機溶媒の色彩値Lは、90.0以上が好ましく、93.0以上がより好ましい。含窒素有機溶媒の色彩値aは、-0.10~-0.80の範囲であるのが好ましく、-0.20~-0.70の範囲がより好ましい。
さらに、含窒素有機溶媒の光路長1cm、400nm波長における光透過率が85%以上であることが好ましい。
そして、含窒素有機溶媒の全光線透過率は、80%以上が好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましい。含窒素有機溶媒の全光線透過率は99%以下であるのが好ましい。
このような含窒素有機溶媒を用いると、本組成物の黄色度(YI)及び色彩値(b)を、本発明で規定する範囲に制御しやすい。
含窒素有機溶媒のYI及びbは、後述する実施例に記載した方法により測定できる。
含窒素有機溶媒は、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルプロパンアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンからなる群より選ばれる1種以上であるのが好ましい。
本組成物は、さらにノニオン性界面活性剤を含有していてもよい。この場合、本組成物中のF粒子の分散安定性をより向上させる傾向となりやすい。ノニオン性界面活性剤としては、グリコール系界面活性剤、アセチレン系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、又はフッ素系界面活性剤が挙げられる。
本組成物は、無機フィラーをさらに含有していてもよい。この場合、本組成物から形成される塗膜(ポリマー層)等の成形物が、電気特性と低線膨張性とに優れやすい。
無機フィラーの形状は、球状、針状(繊維状)、板状のいずれであってもよく、具体的には、球状、鱗片状、層状、葉片状、杏仁状、柱状、鶏冠状、等軸状、葉状、雲母状、ブロック状、平板状、楔状、ロゼット状、網目状、角柱状であってもよい。
無機フィラーとしては、例えば石英粉、シリカ、ウォラストナイト、タルク、窒化ケイ素、炭化ケイ素、雲母等のケイ素化合物;窒化ホウ素、窒化アルミニウム等の窒素化合物;酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウム、酸化ベリリウム、酸化マグネシウム、酸化ニッケル、酸化バナジウム、酸化銅、酸化鉄、酸化銀等の金属酸化物;炭素繊維;グラファイト、グラフェン、カーボンナノチューブ等の炭素同素体;銀、銅等の金属;が挙げられる。無機フィラーは、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
無機フィラーのD50は、0.1~50μmが好ましい。
無機フィラーの表面は、シランカップリング剤で表面処理されていてもよい。
本組成物が無機フィラーを含む場合、本組成物における無機フィラーの含有量は、1~25質量%が好ましい。
本組成物は、ポリイミド前駆体及びFポリマーとは異なる他の樹脂をさらに含んでいてもよい。かかる他の樹脂は、本組成物に非中空状の粒子として含まれていてもよく、本組成物を構成する含窒素有機溶媒、また必要に応じて含有する他の分散媒等(以下、含窒素有機溶媒及び他の分散媒等を総称して「液状分散媒」とも記す。)に溶解又は分散して含まれていてもよい。
他の樹脂としては、液晶性の芳香族ポリエステル等のポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、マレイミド樹脂、ウレタン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂が挙げられる。本組成物が他の樹脂をさらに含む場合、F粒子に対する他の樹脂の含有量は、1~25質量%が好ましい。
本組成物は、さらに、チキソ性付与剤、粘度調節剤、消泡剤、可塑剤、耐候剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、増白剤、着色剤、導電剤、離型剤、難燃剤等の添加剤を含有してもよい。
本組成物は、ポリイミド前駆体とF粒子と含窒素有機溶媒と、必要に応じて前記した他の分散媒、無機フィラー、他の樹脂、添加剤等を混合することで得られる。
本組成物は、ポリイミド前駆体とF粒子と含窒素有機溶媒を一括で混合して得てもよいし、別々に順次混合してもよいし、これらのマスターバッチを予め作成し、それと残りの成分を混合してもよい。混合の順は特に制限はなく、また混合の方法も一括混合でも複数回に分割して混合してもよい。
例えば、F粒子を含窒素有機溶媒の一部に予め分散し、次いでポリイミド前駆体を添加して混合し、得られた混合物を残余の含窒素有機溶媒に添加して本組成物を得るのが、F粒子の含有量が高い場合もその分散安定性を向上しやすい観点から好ましい。
ポリイミド前駆体は、そのまま又は含窒素有機溶媒の溶液として添加してもよく、他の分散媒に分散または溶解させた状態で添加してもよい。
また、前記した他の分散媒、無機フィラー、他の樹脂、添加剤等を必要に応じてさらに混合する場合、F粒子と含窒素有機溶媒との混合に際して混合してもよく、前記混合物を含窒素有機溶媒に添加するに際して混合してもよい。
本組成物におけるF粒子の含有量は、30質量%以上であり、40質量%以上であるのがより好ましい。F粒子の含有量は、75質量%以下であるのが好ましく、60質量%以下であるのがより好ましい。
本組成物において、本組成物の透明性、分散安定性及び取扱い性を良好とし、Fポリマーの物性をより発現させる観点から、通常、F粒子とポリイミド前駆体の合計量に対するF粒子の割合が25質量%超であるのが好ましく、50質量%超であるのがより好ましい。F粒子及びポリイミド前駆体の合計量に対するF粒子の割合は99質量%以下であるのが好ましい。換言すれば、F粒子とポリイミド前駆体の合計量に対するポリイミド前駆体の割合が75質量%未満であるのが好ましく、50質量%未満であるのがより好ましい。F粒子及びポリイミド前駆体の合計量に対するポリイミド前駆体の割合は1質量%以上であるのが好ましい。
本組成物における含窒素有機溶媒の含有量は、25質量%以上であるのが好ましく、40質量%以上であるのがより好ましい。含窒素有機溶媒の含有量は、70質量%未満であるのが好ましく、65質量%以下であるのがより好ましい。また、本組成物における含窒素有機溶媒の含有量は、F粒子の含有量に対して、60~180質量%であるのが好ましい。
本組成物の黄色度(YI)は5.0未満であり、かつ色彩値(b)が2.0未満である。YI、bの両者が上記の規定を満足すれば、本組成物から形成されるポリマー層等の成形物が透明性に優れる。
本組成物のYIは、4.0以下であるのが好ましく、3.0以下であるのがより好ましい。本組成物のbは、1.5以下であるのが好ましく、1.0以下であるのがより好ましい。
また、本組成物の色彩値Lは、90.0以上が好ましく、93.0以上がより好ましい。本組成物の色彩値aは、-2.0~2.0の範囲が好ましく、-1.0~1.0の範囲がより好ましい。
本組成物のYI及びbは、後述する実施例に記載した方法により測定できる。
本組成物の粘度は3000mPa・s以下であるのが好ましい。本組成物の粘度は、2000mPa・s以下がより好ましく、1000mPa・s以下がさらに好ましい。また、本組成物の粘度は、10mPa・s以上が好ましく、15mPa・s以上がより好ましく、25mPa・s以上がさらに好ましい。この場合、本組成物は塗工性に優れ、任意の厚さを有する塗膜(ポリマー層)等の成形物を形成しやすい。また、かかる範囲の粘度範囲にある本組成物は、それから形成される成形物において、Fポリマーの物性が高度に発現しやすい。
本組成物のチキソ比は、1.0~2.5が好ましい。この場合、本組成物は、塗工性及び均質性に優れ、より緻密な成形物を生成しやすい。
本組成物から形成される成形物の誘電率は2.4以下であるのが好ましく、2.0以下であるのがより好ましい。また、誘電率は1.0超であるのが好ましい。成形物の誘電正接は、0.0022以下であるのが好ましく、0.0020以下であるのがより好ましい。また、誘電正接は、0.0010超であるのが好ましい。成形物の熱伝導率は、1W/m・K以上であるのが好ましく、3W/m・K以上がより好ましい。
本組成物を例えばシート状に押出す等の成形方法に供すれば、Fポリマーを含む、シート等の成形物を形成できる。押出して得たシートは、さらにプレス成形、カレンダー成形等をして流延してもよい。シートは、さらに加熱して、液状分散媒を除去し、Fポリマーを焼成するのが好ましい。
本組成物から形成されるシートの厚さは、1~1000μmが好ましい。
シートの誘電率、誘電正接及び熱伝導率の好適な範囲は、それぞれ、上述した成形物の誘電率、誘電正接及び熱伝導率の範囲と同様である。なお、シートにおける熱伝導率とは、シートの面内方向における熱伝導率を意味する。
シートの線膨張係数は、100ppm/℃以下が好ましく、80ppm/℃以下がより好ましい。シートの線膨張係数の下限は、30ppm/℃である。なお、線膨張係数は、JIS C 6471:1995に規定される測定方法に従って、25℃以上260℃以下の範囲における、試験片の線膨張係数を測定した値を意味する。
かかるシートを基材に積層すれば積層体を形成できる。積層体の製造方法としては、前記基材上に本組成物を押出成形する方法、シートと前記基材とを熱圧着する方法等が挙げられる。
基材としては、銅、ニッケル、アルミニウム、チタン、それらの合金等の金属箔等の金属基板;ポリイミド、ポリアミド、ポリエーテルアミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリルエーテルケトン、ポリアミドイミド、液晶性ポリエステル、テトラフルオロエチレン系ポリマー等の耐熱性樹脂のフィルム;プリプレグ基板(繊維強化樹脂基板の前駆体)、炭化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素等のセラミックス基板;ガラス基板が挙げられる。金属箔としては、銅箔が好ましく、表裏の区別のない圧延銅箔又は表裏の区別のある電解銅箔がより好ましく、圧延銅箔がさらに好ましい。圧延銅箔は、表面粗さが小さいため、金属張積層体をプリント配線板に加工した場合でも、伝送損失を低減できる。なお、圧延銅箔は、炭化水素系有機溶剤に浸漬し圧延油を除去してから使用するのが好ましい。
基材の形状としては、平面状、曲面状、凹凸状が挙げられる。また、基材の形状は、箔状、板状、膜状、繊維状のいずれであってもよい。
基材の表面の十点平均粗さは、0.01~0.05μmが好ましい。この場合、Fポリマーを含むシートとの接着性が良好となり、伝送特性に優れたプリント基板が得られやすい。
基材の表面は、シランカップリング剤により表面処理されていてもよく、プラズマ処理されていてもよい。かかるシランカップリング剤としては、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等の官能基を有するシランカップリング剤が好ましい。
シートと基材との剥離強度は、10~100N/cmが好ましい。
また、本組成物を基材の表面に配置し加熱して、Fポリマーを含むポリイミド層(以下、「F層」とも記す。)を形成すれば、基材で構成される基材層とF層とをこの順で有する積層体が得られる。
F層は、本組成物を基材の表面に配置し、加熱して液状分散媒を除去し、さらに加熱してポリイミド前駆体をイミド化し、それと共にFポリマーを焼成して形成するのが好ましい。かかる積層体から基材を分離すれば、Fポリマーを含むシートを得られる。
基材としては、上述のシートと積層できる基材と同様のものが挙げられ、その好適態様も同様である。
かかるF層は、厚み10μm換算値としてのYIが30以下で、全光線透過率が80%以上となり、透明性に優れる。なお、全光線透過率はJIS K 7136に準じて測定できる。
本組成物の配置の方法としては、塗布法、液滴吐出法、浸漬法が挙げられ、ロールコート法、ナイフコート法、バーコート法、ダイコート法又はスプレー法が好ましい。
液状分散媒の除去に際する加熱は、100~200℃にて、0.1~30分間で行うのが好ましい。この際の加熱において液状分散媒は、完全に除去する必要はなく、F粒子のパッキングにより形成される層が自立膜を維持できる程度まで除去すればよい。また、加熱に際しては、空気を吹き付け、風乾によって液状分散媒の除去を促してもよい。
ポリイミド前駆体のイミド化及びFポリマーの焼成に際する加熱は、Fポリマーの溶融温度以上の温度にて行うのが好ましく、360~400℃にて、0.1~30分間行うのがより好ましい。
それぞれの加熱における加熱装置としては、オーブン、通風乾燥炉が挙げられる。装置における熱源は、接触式の熱源(熱風、熱板等)であってもよく、非接触式の熱源(赤外線等)であってもよい。
また、それぞれの加熱は、常圧下で行ってもよく、減圧下で行ってもよい。
また、それぞれの加熱における雰囲気は、空気雰囲気、不活性ガス(ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、窒素ガス等)雰囲気のいずれであってもよい。
F層は、本組成物の配置、加熱の工程を経て形成される。これら工程は1回ずつ行ってもよく、2回以上繰り返してもよい。例えば、基材の表面に本組成物を配置し加熱してF層を形成し、さらに前記F層の表面に本組成物を配置し加熱して2層目のF層を形成してもよい。また、基材の表面に本組成物を配置し加熱して液状分散媒を除去した段階で、さらにその表面に本組成物を配置し加熱してF層を形成してもよい。
本組成物は、基材の一方の表面にのみ配置してもよく、基材の両面に配置してもよい。前者の場合、基材層と、かかる基材層の片方の表面にF層を有する積層体が得られ、後者の場合、基材層と、かかる基材層の両方の表面にF層を有する積層体が得られる。
F層の厚さは、積層体の用途によっても異なるが、1~1000μmの範囲が好ましい。
積層体の好適な具体例としては、金属箔と、その金属箔の少なくとも一方の表面にF層を有する金属張積層体、すなわち、本組成物をイミド化してなるポリイミドを含むポリイミド層と、該ポリイミド層の片面又は両面に金属層を有する、配線基板用積層体が挙げられる。また、ポリイミドフィルムと、そのポリイミドフィルムの両方の表面にF層を有する多層フィルムが挙げられる。
金属箔の厚さは、金属張積層体の用途において充分な機能が発揮できる観点から、20μm未満が好ましく、2~15μmがより好ましい。
また、基材としてのポリイミドフィルムは、YIが30以下であり、かつ全光線透過率が80%以上であるのが、本組成物の特性をより活かした、透明性、耐熱性、電気特性、接着性に優れた積層体が得られる観点から好ましい。
F層の厚さ、誘電率、誘電正接、熱伝導率、線膨張係数、F層と基材層との剥離強度の好適範囲は、上述の本組成物から形成されるシートにおける、厚さ、誘電率、誘電正接、熱伝導率、線膨張係数、シートと基材との剥離強度の好適範囲と同様である。
本組成物は、絶縁性、耐熱性、対腐食性、耐薬品性、耐水性、耐衝撃性、熱伝導性を付与するための材料として有用である。
本組成物は、具体的には、プリント配線板、熱インターフェース材、パワーモジュール用基板、モーター等の動力装置で使用されるコイル、車載エンジン、熱交換器、バイアル瓶、注射筒(シリンジ)、アンプル、医療用ワイヤー、リチウムイオン電池等の二次電池、リチウム電池等の一次電池、ラジカル電池、太陽電池、燃料電池、リチウムイオンキャパシタ、ハイブリッドキャパシタ、キャパシタ、コンデンサ(アルミニウム電解コンデンサ、タンタル電解コンデンサ等)、エレクトロクロミック素子、電気化学スイッチング素子、電極のバインダー、電極のセパレーター、電極(正極、負極)に使用できる。
また、本組成物は部品を接着する接着剤としても有用である。具体的には、本組成物は、セラミックス部品の接着、金属部品の接着、半導体素子やモジュール部品の基板におけるICチップや抵抗、コンデンサ等の電子部品の接着、回路基板と放熱板の接着、LEDチップの基板への接着に使用できる。
本組成物から形成されるシート等の成形物、及び積層体は、フレキシブルプリント配線基板、リジッドプリント配線基板等の電子基板材料、保護フィルムや放熱基板として有用である。
特に、本組成物から形成される積層体は、透明性に優れた積層体として各種のフレキシブルデバイスに適用でき、具体的には液晶表示装置、有機EL表示装置、タッチパネル、液晶表示ディスプレイ、有機ELディスプレイ、カラーフィルター、電子ペーパー等の表示装置、ガラス積層透明アンテナ、透明アンテナフィルム、アンテナオンディスプレイ、太陽電池パネル用表面保護膜、太陽電池用基板材料、フォルダブルディスプレイ又はこれらの構成部品として有用である。
以上、本組成物、及び本組成物から形成されるポリマー層を有する積層体の製造方法について説明したが、本発明は、前述した実施形態の構成に限定されない。例えば、本組成物は上記実施形態の構成において他の任意の構成を追加してもよいし、同様の機能を発揮する任意の構成と置換されていてよい。また、本組成物から形成されるポリマー層を有する積層体の製造方法は、上記実施形態の構成において、他の任意の構成を追加で有してもよいし、同様の機能を発揮する任意の構成と置換されていてよい。
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
1.各成分の準備
[Fポリマー]
Fポリマー1:TFE単位、NAH単位及びPPVE単位を、この順に97.9モル%、0.1モル%、2.0モル%含み、カルボニル基含有基を主鎖炭素数1×10個あたり1000個有するテトラフルオロエチレン系ポリマー(溶融温度:300℃)
Fポリマー2:TFE単位及びPPVE単位を、この順に97.5モル%、2.5モル%含み、酸素含有極性基を有さないテトラフルオロエチレン系ポリマー(溶融温度:300℃)
[Fポリマーの粒子]
F粒子1:Fポリマー1からなり、減圧乾燥機を用いて180℃、5kPa、3時間の熱処理条件で熱処理された粒子(D50:2.0μm)
F粒子2:Fポリマー2からなり、前記熱処理条件で熱処理された粒子(D50:2.3μm)
F粒子3:Fポリマー2からなり、前記熱処理条件で熱処理された粒子(D50:2.6μm)
F粒子4:Fポリマー2からなり、前記熱処理条件で熱処理された粒子(D50:10.1μm)
F粒子5:Fポリマー2からなり、熱処理をしなかった粒子(D50:2.3μm)
[ポリイミド前駆体]
PAA1:等モルの1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物と2,2-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンとから調製されたポリイミド前駆体
[含窒素有機溶媒]
NMP:N-メチル-2-ピロリドン(YI=1.86、b=0.97)
2.液状組成物の製造例
[例1]
ポットに、F粒子1、PAA1溶液及びNMPを投入し、次いでジルコニアボールを投入した。その後、150rpmにて1時間、ポットを転がして、F粒子1(40質量部)、PAA1(4質量部)及びNMP(56質量部)を含む液状組成物1(粘度:300mPa・s)を得た。
[例2~6]
Fポリマーの粒子、ポリイミド前駆体及び含窒素有機溶媒の種類と使用量を表1のとおり変更した以外は例1と同様にして、液状組成物2~6を得た。
3.液状組成物の評価
3-1.黄色度(YI)及び色彩値(b
上記した例1~8で得られた各液状組成物を、SHIMADZU UV-3600分光光度計、光路長1cmの石英標準セルを用い、超純水をブランクとして、400nmにおける光透過率を測定した。下記式で表される計算式(1)に基づいてYIを算出した。
YI=100×(1.2879X-1.0592Z)/Y ・・・(1)
計算式(1)において、X,Y,Zは、JIS Z 8722で規定する試験片の三刺激値である。三刺激値X,Y,Zからbを求め、YI及びbの値から、液状組成物の透明性を下記の基準に従って評価した。
[液状組成物の透明性の評価基準]
○:YIが3.0以下であり、かつ、bが1.5以下である
△:YIが3.0超5.0未満であり、かつ、bが2.0未満である
×:YIが5.0超であり、かつ、bが2.0超である
3-2.分散安定性
上記した例1~8で得られた各液状組成物における分散安定性を目視で観察し、以下の基準で評価した。結果を表2に示す。
[分散安定性の評価基準]
○:当初、F粒子の凝集や沈降は見られず良好に分散しており、その状態が経時的に維持される。
△:当初、F粒子の凝集や沈降は見られず良好に分散しているが、経時的に粘稠かつ凝集傾向がある。
×:スラリー状となり、一部ゲル化も見られ分散しない
4.積層体の作成とポリマー層の評価
液状組成物1~6をそれぞれ用いて積層体を製造し、そのポリマー層の透明性、ポリマー層と基材との剥離強度、及び誘電損失を評価した。
4-1.積層体の製造例
ロール・ツー・ロールプロセスにより、基材(ポリイミドフィルム(PI Advanced Materials社製「FG-100」:厚さ25μm)の一方の表面に、各液状組成物を小径グラビアリバース法で塗工して塗工層を形成し、通風乾燥炉(炉温150℃)に3分間で通過させて、NMPを除去してドライ膜を形成した。また、基材の他方の表面にも同様に各液状組成物を塗工して塗工層を形成し、乾燥してドライ膜を形成した。次いで、両面にドライ膜が形成された基材を、遠赤外線炉(炉内入口、出口付近の炉温度300℃、中心付近の炉温度360℃)に5分間で通過させてF粒子を溶融焼成し、基材の両面にポリマー層(厚さ25μm)を有する積層体を得た。
4-2.ポリマー層の透明性及び剥離強度
上記で得た積層体を長さ150mm、幅10mmの大きさに切断し、試験片を作製した。該試験片の長さ方向の一端から50mmの位置までポリマー層と基材との間を剥離し、次いで引張試験機を用いて、引張り速度50mm/分でポリマー層と基材が90°になるように剥離させた際の最大荷重(N/cm)を測定して剥離強度とし、下記の基準に従って評価した。
[剥離強度の評価基準]
○:剥離強度が10N/cm以上である
△:剥離強度が5~10N/cmの範囲内である
×:剥離強度が5N/cm未満である
また、剥離したポリマー層の308nm及び500nmにおける光透過率を、分光光度計(島津製作所製「SHIMADZU UV-3600」)を用いて測定し、前記計算式(1)に基づいてYIを算出した。そして、下記計算式(2)によって、厚み10μmに換算したYI(10)を算出した。
YI(10)=YI/厚み×10 ・・・(2)
計算式(2)において、厚みは、ポリマー層の実際の厚みである。
下記の基準に従って透明性を評価した。結果を表2に併せて示す。
[透明性の評価基準]
○:YIが5未満である
△:YIが5~10の範囲である
×:YIが10超である
4-3.誘電正接の測定
それぞれの積層体について、ファブリペロー共振器及びベクトルネットワークアナライザ(キーコム社製)を使用して、積層体のポリマー層について10GHzの誘電正接を測定し、以下の基準で伝送損失を評価した。
[伝送損失の評価基準]
○:0.0015以下
△:0.0015超0.0030以下
×:0.0030超
本発明の液状組成物は分散安定性に優れており、Fポリマーの物性を高度に発現し、透明性、電気特性、耐熱性、接着性等に優れる成形物を形成できる。そのため、かかるポリマー層を含む積層体は、透明性に優れた積層体としてアンテナ部品、プリント基板、航空機用部品、自動車用部品等に加工して使用でき、また、液晶表示装置、有機EL表示装置、タッチパネル、液晶表示ディスプレイ、有機ELディスプレイ、カラーフィルター、電子ペーパー等の各種のフレキシブルデバイスに適用できる。

Claims (15)

  1. ポリイミド前駆体と、熱処理された熱溶融性のテトラフルオロエチレン系ポリマーの、平均粒子径(D50)が0.1μm以上10μm未満である粒子と、含窒素有機溶媒とを含み、黄色度(YI)が5.0未満かつ色彩値(b)が2.0未満である、液状組成物。
  2. 前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子と前記ポリイミド前駆体の合計量に対する前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子の割合が、25質量%超である、請求項1に記載の液状組成物。
  3. 前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子の平均粒子径が2.5μm未満である、請求項1に記載の液状組成物。
  4. 前記テトラフルオロエチレン系ポリマーが、ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)に基づく単位を含む、溶融温度260~320℃のテトラフルオロエチレン系ポリマーである、請求項1に記載の液状組成物。
  5. 前記テトラフルオロエチレン系ポリマーが、カルボニル基含有基を有する、溶融温度260~320℃のテトラフルオロエチレン系ポリマーである、請求項1に記載の液状組成物。
  6. 前記テトラフルオロエチレン系ポリマーが、主鎖炭素数10個当たり10個以上2000個以下のカルボニル基を有する、溶融温度260~320℃のテトラフルオロエチレン系ポリマーである、請求項1に記載の液状組成物。
  7. 前記熱処理における温度が、(前記テトラフルオロエチレン系ポリマーのガラス転移温度+50℃)~(前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの溶融温度-50℃)である、請求項1に記載の液状組成物。
  8. 前記ポリイミド前駆体が、脂環構造又はフッ素原子を含む構造の少なくとも1種以上を有する、請求項1に記載の液状組成物。
  9. 前記ポリイミド前駆体が、脂環構造若しくはフッ素原子を含む構造を有するテトラカルボン酸又はその二無水物に由来する構造単位の少なくとも1種以上を有する、請求項1に記載の液状組成物。
  10. 前記ポリイミド前駆体が、脂環構造又はフッ素原子を含む構造を有するジアミンに由来する構造単位の少なくとも1種以上を有する、請求項1に記載の液状組成物。
  11. 前記ポリイミド前駆体が、脂環構造を有するテトラカルボン酸又はその二無水物に由来する構造単位と、フッ素原子を含む構造を有するジアミンに由来する構造単位を有する、請求項1に記載の液状組成物。
  12. 前記含窒素有機溶媒の黄色度(YI)が20以下であり、かつ、前記含窒素有機溶媒の色彩値(b)が1以下である、請求項1に記載の液状組成物。
  13. 前記含窒素有機溶媒が、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルプロパンアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンからなる群より選ばれる1種以上である、請求項1に記載の液状組成物。
  14. 請求項1~13のいずれか1項に記載の液状組成物を基材の表面に配置し加熱して、前記テトラフルオロエチレン系ポリマーを含むポリイミド層を形成し、前記基材で構成される基材層と前記ポリイミド層とをこの順で有する積層体を得る、積層体の製造方法。
  15. 請求項1~13のいずれか1項に記載の液状組成物をイミド化してなるポリイミドを含むポリイミド層と、該ポリイミド層の片面又は両面に金属層を有する、配線基板用積層体。

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