JP2024066629A - 銅合金スパッタリング膜、銅合金スパッタリングターゲット、銅合金スパッタリング膜の製造方法、及び銅合金スパッタリングターゲットの製造方法 - Google Patents

銅合金スパッタリング膜、銅合金スパッタリングターゲット、銅合金スパッタリング膜の製造方法、及び銅合金スパッタリングターゲットの製造方法 Download PDF

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宏幸 渡辺
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Abstract

【課題】膜硬度の高い銅合金スパッタリング膜及びその製造方法を提供すること。また前記スパッタリング膜の成膜に好適な銅合金スパッタリングターゲット及びその製造方法を提供すること。【解決手段】銀(Ag)を5.0質量%以上30.0質量%以下の割合で含み、残部が銅(Cu)及び不可避不純物からなる組成を有し、結晶子サイズが30nm以下である、銅合金スパッタリング膜。【選択図】なし

Description

本発明は、銅合金スパッタリング膜、銅合金スパッタリングターゲット、銅合金スパッタリング膜の製造方法、及び銅合金スパッタリングターゲットの製造方法に関する。
従来から電子部品では、アルミニウム(Al)やその合金からなる薄膜が電極として多用されている。例えば、電子部品の一種であるSAWフィルターは金属アルミニウム系材料からなる櫛形電極を備えている。この櫛形電極は、圧電材料で構成された基板上に金属アルミニウム系薄膜をスパッタリング法で成膜し、フォトリソグラフ技術で不要部分をエッチング除去して作製される。金属アルミニウム系薄膜は、電気特性が良好であり、電極膜として好適とされている。
例えば、特許文献1には、所定のセラミック基板と圧電体基板とを備える積層体と、電極と、を備えるSAWデバイス(表面弾性波素子)の製造に関して、圧電体基板の露出面上にAlなどの導電体からなる導電体膜が形成されること、導電体膜の形成は、スパッタリングにより実施することが記載されている(特許文献1の特許請求の範囲及び[0034])。
しかしながら、SAWフィルターなどの電子部品を継続的に使用すると、動作時に繰り返し応力が加わり、電極膜が経時変化して、ヒロック(結果突起)やボイド(空隙)といった欠陥が発生する問題があった。このような欠陥はデバイス特性を劣化させるため望ましくない。この問題を解消するために、アルミニウム系材料に銅(Cu)、チタン(Ti)、及び/又はニッケル(Ni)などの添加成分を加えて電極膜の強化を図る技術が提案されている。しかしながら、上述した欠陥を完全に防ぐほど十分に高い強度は得られていない。
そこで、アルミニウム系材料の代替えとして、銅(Cu)に銀(Ag)などの成分を加えた銅合金が開発されている。銅は、アルミニウム系材料に比べて電気抵抗が小さく、且つ耐食性及び耐候性に優れるという特長がある。
例えば、特許文献2には、4~32%AgをCuに配合して鋳込んだ後に、急冷し、次いで所定条件で多段熱処理を施しつつ冷間加工する高強度・高導電性銅合金の製造方法が開示されている(特許文献2の請求項1)。また特許文献3には、銅を主成分とし、銀が10質量%を超えて25質量%未満、ニッケルが0.1質量%以上3質量%以下の割合で含有してなる、はんだ接合電極成膜用銅合金ターゲットの製造方法が開示されている(特許文献3の請求項1)。当該ターゲットは、電子部品や半導体素子の外部電極等の最外層膜として、はんだ接合するための銅合金膜形成に用いられる(特許文献3の[0001])。
特開2021-170782号公報 特開平6-73515号公報 特許第6213684号公報
このように銅合金膜を電極膜に適用することが従来から提案されるものの、従来の銅合金膜は膜硬度が小さく、改良の余地があった。すなわち、電極膜は、その膜硬度が高いほど、ヒロックやボイド等の欠陥が少なくなることが知られている。そのため電極膜の膜硬度は高いほど望ましい。しかしながら、本発明者らが調べたところ、従来の電極膜は、その膜硬度が十分ではなく、欠陥を完全に防ぐ上で限界のあることが分かった。
本発明者らは、このような問題に鑑みて鋭意検討を行った。その結果、銅合金スパッタリング膜の組成とともに結晶子サイズを適切に制御することで、膜硬度向上が可能となるとの知見を得た。また所定組成及び平均結晶粒径を有する銅合金スパッタリングターゲットを用いることで、上述した銅合金スパッタリング膜の成膜が可能になるとの知見を得た。
本発明は、そのような知見に基づき完成されたものであり、膜硬度の高い銅合金スパッタリング膜及びその製造方法の提供を課題とする。また本発明は、前記スパッタリング膜の成膜に好適な銅合金スパッタリングターゲット及びその製造方法の提供を課題とする。
本発明は、下記(1)~(6)の態様を包含する。なお本明細書において「~」なる
表現は、その両端の値を含む。すなわち「X~Y」は「X以上Y以下」と同義である。
(1)銀(Ag)を5.0質量%以上30.0質量%以下の割合で含み、残部が銅(Cu)及び不可避不純物からなる組成を有し、
結晶子サイズが30nm以下である、銅合金スパッタリング膜。
(2)前記銅合金スパッタリング膜は、その膜硬度が10.0HTL以上である、上記(1)の銅合金スパッタリング膜。
(3)銀(Ag)を5.0質量%以上30.0質量%以下の割合で含み、残部が銅(Cu)及び不可避不純物からなり、
平均結晶粒径が100μm以下である、銅合金スパッタリングターゲット。
(4)銅合金スパッタリング膜の製造方法であって、
銀(Ag)を5.0質量%以上30.0質量%以下の割合で含み、残部が銅(Cu)及び不可避不純物からなり、且つ平均結晶粒径が100μm以下である銅合金スパッタリングターゲットを用い、チャンバー内圧力が0.5Pa以上1.8Pa以下の条件でスパッタリングする工程を含む方法。
(5)銀(Ag)を5.0質量%以上30.0質量%以下の割合で含み、残部が銅(Cu)及び不可避不純物からなる銅合金スパッタリングターゲットの製造方法であって、
銅合金を真空溶解炉で溶解して溶湯を得る工程、及び
前記溶湯を鋳型に流し込んでから冷却して鋳塊を作製する工程を含み、
前記鋳塊を作製する際に、冷却速度を50℃/秒以上110℃/秒以下に調整する、方法。
(6)前記鋳塊を作製する工程の後に、
前記鋳塊を800℃以上に加熱して熱間加工する工程、
前記熱間加工した鋳塊を加工率5%以上の条件で冷間加工する工程、
前記冷間加工した鋳塊に500℃以上の熱処理を施す工程、及び
前記熱処理を施した鋳塊を機械加工する工程
をさらに含む、上記(5)の方法。
本発明によれば、膜硬度の高い銅合金スパッタリング膜及びその製造方法が提供される。また本発明によれば、前記スパッタリング膜の成膜に好適な銅合金スパッタリングターゲット及びその製造方法が提供される。
本発明の具体的実施形態(以下、「本実施形態」という)について説明する。なお本発明は実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において種々の変更が可能である。
<<1.銅合金スパッタリング膜>>
本実施形態の銅合金スパッタリング膜(以下、単に「スパッタリング膜」又は「膜」と呼ぶ場合がある)は、スパッタリング法で成膜された膜である。またこのスパッタリング膜は、銅(Cu)を主成分とする銅合金で構成されている。具体的には、銀(Ag)を5.0質量%以上30.0質量%以下の割合で含み、残部が銅(Cu)及び不可避不純物からなる組成を有する。したがって、本実施形態のスパッタリング膜は、銅(Cu)、銀(Ag)、及び不可避不純物以外の添加成分を含まない。ここで、不可避不純物とは、製造時に不可避的に混入する成分であり、典型的には、その含有量は1000ppm以下である。
このように、銀を所定量含む銅合金でスパッタリング膜を構成することで、強度及び導電性を高めることができる。銀量が5.0質量%未満であると、膜の強度が不十分になる。一方で銀量が30.0質量%を超えると、高価な銀量が多くなるため、コスト増大につながる。また銀量が過度に多いと、膜の結晶子サイズが大きくなる結果、膜硬度が低下する。コスト低減及び膜硬度向上の観点から、銀量は25.0質量%以下が好ましく、15.0質量%以下がより好ましい。
本実施形態の銅合金スパッタリング膜は、その結晶子サイズが30nm以下である。本発明者らは、銅合金スパッタリング膜の結晶子サイズを30nm以下に微細化することで、膜硬度を、例えば10HTL以上に高めることが可能になることを見出した。これに対して、従来の銅合金スパッタリング膜は、結晶子サイズが30nmより大きく、膜硬度は10HTL未満と低い。膜硬度向上の観点から、結晶子サイズは小さい方が望ましい。結晶子サイズは25nm以下が好ましく、20nm以下がより好ましい。結晶子サイズの下限は特に限定されない。しかしながら、1nm以上、又は5nm以上であってよい。
なお結晶子サイズはX線回折法で求めることができる。具体的には、スパッタリング膜のX線チャートにおいて、所定のピークの半値幅を求め、この半値幅を用いて、下記(1)式に示すシェラーの式に従って結晶子サイズを算出する。なお、下記(1)式において、Lは結晶子サイズ、Kは定数(0.9)、λはX線波長、βは半値幅、θはピーク位置(角度)である。
Figure 2024066629000001
好ましくは、銅合金スパッタリング膜の膜硬度は10.0HTL以上である。膜硬度を高めることで、スパッタリング膜を電子部品の電極に適用した場合に、ヒロック(結果突起)やボイド(空隙)といった問題の発生を抑制することができる。膜硬度は11.0HTL以上がより好ましく、12.0HTL以上がさらに好ましく、13.0以上が特に好ましい。なお、膜硬度はナノインデーテーション法(計装化押し込み試験法)で求められる。ナノインデーテーション法は、薄膜などの微小領域における機械的特性評価に適した手法である。測定の際は、膜の5点について硬度を求め、その平均値を膜硬度として算出する。
銅合金スパッタリング膜の厚さは、スパッタリング成膜で得られる限り、特に限定されない。スパッタリング膜を電子部品の電極に用いる場合には、仕様に応じて決めればよい。しかしながら、典型的には0.5μm以上2.0μm以下であり、例えば1.0μm近傍である。
本実施形態の銅合金スパッタリング膜は膜硬度が高く且つ導電性に優れている。そのため、各種電子部品の電極に適用可能である。特に膜硬度が高いスパッタリング膜は、ヒロックやボイド等の欠陥抑制の効果が期待される。したがって、本実施形態の銅合金スパッタリング膜は、SAWフィルターの櫛形電極に特に好適である。
<<2.銅合金スパッタリングターゲット>>
本実施形態の銅合金スパッタリングターゲット(以下、単に「スパッタリングターゲット」又は「ターゲット」と呼ぶ場合がある)は、スパッタリング成膜に用いるターゲットである。このターゲットは、銅(Cu)を主成分とする銅合金で構成されている。具体的には、銀(Ag)を5.0質量%以上30.0質量%以下の割合で含み、残部が銅(Cu)及び不可避不純物からなる組成を有する。このような組成を有するスパッタリングターゲットによれば、強度及び導電性の高いスパッタリング膜を得ることができる。
本実施形態の銅合金スパッタリングターゲットは、平均結晶粒径が100μm以下である。このターゲットは多結晶状態であり、多数の結晶粒子から構成される。本発明者らは、スパッタリング膜の結晶子サイズは、スパッタリングに使用するターゲットの結晶粒径の影響を受けることを見出した。平均結晶粒径100μm以下のターゲットを用いることで、結晶子サイズが30nm以下と微細であり、且つ高硬度のスパッタリング膜を得ることができる。これに対して、従来のスパッタリングターゲットは、平均結晶粒径が150~300μm程度と大きい。このように平均結晶粒径の大きいスパッタリングターゲットでは、結晶子サイズが微細で高硬度のスパッタリング膜を得ることは困難である。
本実施形態の銅合金スパッタリングターゲットの平均結晶粒径は95μm以下、又は90μm以下であってもよい。しかしながら、粒径が過度に小さいと成膜速度が過度に遅くなる恐れがある。平均結晶粒径は50μm以上、60μm以上、又は70μm以上であってよい。なお平均結晶粒径は、JISH0501:伸銅品結晶粒度試験法で規定される求積法に従って求めた値である。
好ましくは、銅合金スパッタリングターゲットの硬度は80Hv以上である。硬度が過度に小さいと、スパッタリング時にターゲットの割れが発生する恐れがある。ターゲット硬度を80Hv以上に高めることで、割れ発生を防ぐことができ、スパッタリング成膜への適用が十分に可能となる。硬度は85Hv以上、90Hv以上、95Hv以上、又は100Hv以上であってもよい。なおターゲット硬度は、マイクロビッカース試験機を用い、荷重300gの条件で測定した値である。
好ましくは、銅合金スパッタリングターゲットの比抵抗は2.3μΩ・cm以上である。これにより安定したスパッタリングが可能となる。比抵抗は、例えば2.9μΩ・cm以上6.7μΩ・cm以下である。比抵抗の値は、ターゲット中の銀含有量の影響を受ける。銀含有量が少ないほど、比抵抗が小さくなる傾向にある。したがって、銀含有量を制御することで、ターゲットの比抵抗を調整できる。なお比抵抗は四端子法で測定された値である。
<<3.銅合金スパッタリング膜の製造方法>>
本実施形態の銅合金スパッタリング膜は、銀(Ag)を5.0質量%以上30.0質量%以下の割合で含み、残部が銅(Cu)及び不可避不純物からなり、且つ平均結晶粒径が100μm以下である銅合金スパッタリングターゲットを用い、チャンバー内圧力が0.5Pa以上1.8Pa以下の条件でスパッタリングする工程を含む。このような条件でスパッタリング膜を製造すると、結晶子サイズが小さく且つ硬度の高いスパッタリング膜を得ることができる。
スパッタリング装置は、特に限定されない。しかしながら、直流マグネトロンスパッタリング装置を用いることが好ましい。スパッタリング条件として、装置のチャンバー内の真空度を1×10-3Pa以下に調整することが好ましい。チャンバー内は不活性ガス雰囲気とすることが好ましい。不活性ガスとしてアルゴン(Ar)ガス等を使用することができ、その純度は99.999質量%以上が好ましい。
スパッタリング時のチャンバー内の圧力は0.5Pa以上1.8Pa以下である。圧力が0.5Pa未満であると、得られたスパッタリング膜の結晶子サイズが大きくなり、硬度が小さくなる傾向にある。また成膜速度が遅く、所定膜厚のスパッタリング膜を得るために必要となる成膜時間が長くなり、生産性が低下する問題もある。一方で、圧力が1.8Paを超えると、成膜速度は速くなるものの、膜の内部応力が高くなり基板から剥離する恐れがある。圧力は0.8Pa以上1.5Pa以下が好ましい。
成膜の際は、チャンバー内圧力を調整した後に、所定の直流電源を用いてスパッタリングターゲット及び基材間に電圧を印加して、直流パルシングによるプラズマを発生させる。これによりスパッタリングが開始され、成膜が行われる。スパッタリング膜の膜厚は、成膜時間を制御することで調整できる。
<<4.銅合金スパッタリングターゲットの製造方法>>
本実施形態の銅合金スパッタリングターゲットの製造方法では、銀(Ag)を5.0質量%以上30.0質量%以下の割合で含み、残部が銅(Cu)及び不可避不純物からなる銅合金スパッタリングターゲットが製造される。この製造方法は、銅合金を真空溶解炉で溶解して溶湯を得る工程(溶解工程)、及び得られた溶湯を鋳型に流し込んでから冷却して鋳塊を作製する工程(鋳造工程)を含む。また鋳塊を作製する際に、冷却速度を50℃/秒以上110℃/秒以下に調整する。
<溶解工程>
本実施形態のスパッタリングターゲットは溶解・鋳造法で作製される。具体的には、高周波真空溶解炉等の炉の密閉可能なチャンバーの内部を真空引きする。その後、アルゴン(Ar)ガスや窒素(N)ガス等の不活性ガスをチャンバー内に導入して、金属材料を溶解し、それにより銅合金溶湯を作製する。この際、上述した組成のターゲットが得られるように金属材料の組成を調整する。
<鋳造工程>
続いて、鋳造工程では、この溶湯を所定の鋳型に流し込んで鋳塊を作製する。鋳型は特に限定されず、例えば黒鉛製の鋳型を用いればよい。鋳型の大きさや形状も特に限定されず、例えば100mm×100mm×50mmの直方体が挙げられる。鋳造工程では、溶湯を鋳型に流し込み、得られた鋳塊を200℃以下の温度にまで冷却する。溶湯が冷却及び凝固する際に、鋳塊中に結晶が析出する。したがってターゲットの平均結晶粒径を制御する上で、鋳塊作製時の冷却速度が重要である。本実施形態の製造方法では、冷却速度を50℃/秒以上110℃/秒以下に調整している。これにより平均結晶粒径が100μm以下のターゲットを得ることができる。また、冷却速度は、溶湯流し込みにかける時間を制御することで調整できる。溶湯を短時間で流し込めば、冷却速度は大きくなり、長時間をかけて流し込めば、冷却速度は小さくなる。溶湯流し込みにかける時間と冷却速度は、下記(2)式の関係を満たす。
Figure 2024066629000002
冷却速度が50℃/秒未満であると、冷却が遅く進行するため、ターゲットの結晶粒が粗大化し、平均結晶粒径が100μmを超える恐れがある。一方で冷却速度が110℃/秒超であると、冷却が過度に速く進行する。溶湯を鋳型に流し込む際に、酸素等のガス成分が溶湯中に巻き込まれるとともに、このガス成分が凝固した鋳塊から抜けにくくなる。その結果、鋳塊内部に巣、つまり内部欠陥が形成しやすくなる。冷却速度は80℃/秒以上110℃/秒以下が好ましい。
<後処理工程>
好ましくは、鋳塊を作製する工程(鋳造工程)の後に後処理工程を設ける。後処理工程として、鋳塊を800℃以上に加熱して熱間加工する工程(熱間加工工程)、熱間加工した鋳塊を加工率5%以上の条件で冷間加工する工程(冷間加工工程)、冷間加工した鋳塊に500℃以上の熱処理を施す工程(熱処理工程)、及び熱処理を施した鋳塊を機械加工する工程(機械加工工程)が挙げられる。
熱間加工時の熱間加工温度は、好ましくは800℃以上、より好ましくは850℃以上1100℃以下、さらに好ましくは900℃以上1000℃以下である。この範囲内の温度で熱間加工することで、銅合金が塑性変形しやすくなる。また熱間加工は、圧延機等の装置を用いて、加工率40%以上60%以下の条件で行うことが好ましい。
熱間加工に続いて冷間加工を行う。冷間加工は、圧延機等の装置を用いて、加工率5%以上7%以下の条件で行うことが好ましい。この範囲内の加工率となるように加工することで、加工処理物の表面状態(凹凸状態)や厚さ精度の調整が容易になる。
冷間加工に続いて熱処理を行う。熱処理温度は、好ましくは500℃以上、より好ましくは500℃以上900℃以下である。この範囲内の温度で熱処理することで、金属組織の調整を行うことができ、それにより圧延組織を無くすことが可能となる。また冷間加工で生じた内部歪を除去することができる。その上、500℃以上の温度で熱処理することで、合金組織の再結晶化が促進され、結晶粒径の調整が容易となる。
必要に応じて、熱処理後に、所定寸法が得られるように処理物を機械加工する。機械加工は、ターゲット製造において用いられる公知の手段、例えば研削や研磨等で行えばよい。このようにして、本実施形態の銅合金スパッタリングターゲットを得ることができる。
本発明を以下の実施例を用いてさらに詳細に説明する。しかしながら本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(1)銅合金スパッタリングターゲットの作製
[例T1~T21]
銅合金溶湯を調製して銅合金試料を鋳造した。具体的には、表1に示す組成を有するターゲットが得られるように、合金溶湯の組成を調製した。次いで、高周波真空溶解炉を用いて、内圧が0.009Pa以下となるまでチャンバーを真空引きした後に内圧が400Paになるようにアルゴン(Ar)ガスを導入して銅合金溶湯を作製した。400Paの圧力下で10分間保持した後に溶湯を黒鉛鋳型に鋳込んで鋳塊を作製した。次いで、得られた鋳塊に、冷却、熱間加工、冷間加工、熱処理、及び機械加工を施してスパッタリングターゲットを作製した。冷却、熱間加工、冷間加工、及び熱処理は、下記表2-1~2-3に示す条件で行った。得られたターゲットは、厚さ5mmで直径75mmの円盤形状を有していた。
(2)銅合金スパッタリング膜の作製
[例F1~F9]
次いで、得られたスパッタリングターゲットから銅合金膜を成膜した。成膜は、スパッタリング装置(芝浦メカトロニクス株式会社、型式:CFS-4ES-2)を用いて行った。具体的には、チャンバー内を真空引きし真空度が1×10-3Paに到達した後、チャンバー内圧力が所定圧力となるように、導入量を調整しながらアルゴン(Ar)ガスを供給し、その状態でスパッタリングを行った。成膜の際は、1mm×25mm×25mmのサイズを有するガラス板をターゲットに対向する基板ホルダーに固定し、基板ホルダーを公転させてガラス板の前面に1.0μm厚の膜を成膜した。
(3)評価
例T1~T21で得られたスパッタリングターゲット、及び例F1~F9で得られたスパッタリング膜について、各種特性の評価を以下のとおり行った。
<スパッタリングターゲット>
ターゲットの結晶組成を蛍光X線分光法により求めた。平均結晶粒径は、JISH0501:伸銅品結晶粒度試験方法に規定される求積法に従って求めた。比抵抗は四端子法により測定した。硬さは、マイクロビッカース硬さ試験機を用いて、荷重300gの条件で測定した。得られた評価結果を表1及び表2-1~2-3に示す。
<スパッタリング膜の評価>
スパッタリング膜の結晶子サイズをX線回折法で測定した。具体的には、X線回折により得られた回折チャートにおける(111)回折ピークの半値幅を求めた。なお、X線回折測定は、以下の条件で行った。
‐X線回折装置:X’Pert-PRO(MalvernPanalytical社製)
‐線源:Cu
‐管電圧:45kV
‐管電流:40mA
‐スキャン速度:22°/分
‐スキャン範囲(2θ):10~120°
次いで、得られた半値幅を用いて、下記(1)式に示すシェラーの式に従って結晶子サイズを求めた。なお、下記(1)において、Lは結晶子サイズ、Kは定数(0.9)、λはX線波長、βは半値幅、θはピーク位置(角度)である。
Figure 2024066629000003
また膜の組成はICP発光分光分析法により測定した。膜硬度はナノインデンテーション法で測定した。それぞれについて、膜の5か所で測定を行い、その平均値を求めた。
(4)評価結果
<スパッタリングターゲット>
表1にターゲットの組成分析結果を、表2-1~2-3にターゲットの製造条件と特性を示す。ここで、例T1~T4、例T8~T11、及び例T15~18が実施例であり、それ以外は比較例である。
表1に示されるように、全てのターゲットは、その成分組成が本実施形態で規定する範囲(銀含有量が5.0質量%以上30.0質量%以下)を満足していた。また鋳造工程での冷却速度が本実施形態で規定する範囲(50℃以上110℃以下)を満足する条件で作製した実施例サンプルは、その平均結晶粒径が100μm以下であった。これに対して、冷却速度が過度に小さい条件で作製した比較例サンプルは、その平均粒径が100μm超であった。
<スパッタリング膜>
表3にスパッタリング膜の組成分析結果を、表4にスパッタリング膜の製造条件と特性を示す。ここで、例F1~F4が実施例であり、それ以外は比較例である。
表3に示されるように、全てのスパッタリング膜は、その成分組成が本実施形態で規定する範囲(銀含有量が5.0質量%以上30.0質量%以下)を満足していた。また平均結晶粒径が100μm以下のターゲットを用い、チャンバー内圧0.5Pa以上の条件で作製した実施例サンプルは、その結晶子サイズが30nm以下と小さく、且つ膜硬度が10.0HTL以上と高かった。これに対して、平均結晶粒径の大きいターゲットを用いて作製した比較例サンプル(例F6~F9)やチャンバー内圧が低い条件で作製した比較例サンプル(例F5)は、結晶子サイズが大きく、且つ膜硬度が低かった。
以上の結果より、本実施形態によれば、膜硬度の高い銅合金スパッタリング膜及びその製造方法が提供されること、並びにこのスパッタリング膜の成膜に好適な銅合金スパッタリングターゲット及びその製造方法が提供されることが分かる。
Figure 2024066629000004
Figure 2024066629000005
Figure 2024066629000006
Figure 2024066629000007
Figure 2024066629000008
Figure 2024066629000009

Claims (6)

  1. 銀(Ag)を5.0質量%以上30.0質量%以下の割合で含み、残部が銅(Cu)及び不可避不純物からなる組成を有し、
    結晶子サイズが30nm以下である、銅合金スパッタリング膜。
  2. 前記銅合金スパッタリング膜は、その膜硬度が10.0HTL以上である、請求項1に記載の銅合金スパッタリング膜。
  3. 銀(Ag)を5.0質量%以上30.0質量%以下の割合で含み、残部が銅(Cu)及び不可避不純物からなり、
    平均結晶粒径が100μm以下である、銅合金スパッタリングターゲット。
  4. 銅合金スパッタリング膜の製造方法であって、
    銀(Ag)を5.0質量%以上30.0質量%以下の割合で含み、残部が銅(Cu)及び不可避不純物からなり、且つ平均結晶粒径が100μm以下である銅合金スパッタリングターゲットを用い、チャンバー内圧力が0.5Pa以上1.8Pa以下の条件でスパッタリングする工程を含む方法。
  5. 銀(Ag)を5.0質量%以上30.0質量%以下の割合で含み、残部が銅(Cu)及び不可避不純物からなる銅合金スパッタリングターゲットの製造方法であって、
    銅合金を真空溶解炉で溶解して溶湯を得る工程、及び
    前記溶湯を鋳型に流し込んでから冷却して鋳塊を作製する工程を含み、
    前記鋳塊を作製する際に、冷却速度を50℃/秒以上110℃/秒以下に調整する、方法。
  6. 前記鋳塊を作製する工程の後に、
    前記鋳塊を800℃以上に加熱して熱間加工する工程、
    前記熱間加工した鋳塊を加工率5%以上の条件で冷間加工する工程、
    前記冷間加工した鋳塊に500℃以上の熱処理を施す工程、及び
    前記熱処理を施した鋳塊を機械加工する工程
    をさらに含む、請求項5に記載の方法。
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